(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.面状発熱体
面状発熱体は、導電性樹脂組成物からなる面状成形物と、面状成形物に接続された一対の板状金属電極とを含み;さらに、面状成形物を覆う補強層や、弾性体層や、離型層を有していてもよい。面状発熱体の構成の一例が、
図1A〜Bに示される。
図1Aは面状発熱体100の外観斜視図であり、
図1Bは、
図1における面状発熱体100のX−X線の断面図である。
図1A〜Bに示される面状発熱体100はパイプ状であり、その内層側から、板状金属電極110-1および110-2、面状成形物120、補強層130、弾性体層140、離型層150の順に積層されている。
【0013】
図1に示されるようなパイプ状の面状発熱体100の内径は、その用途に応じて適宜設定されるが、通常の画像定着装置の定着部材として用いられる場合には、例えば10〜120mmである。
【0014】
一対の板状金属電極は、それぞれ面状発熱体の端部に結合していることが好ましい。一対の板状金属電極に電位差を設けることで、面状発熱体を発熱することができる。板状金属電極の材質の例には、ステンレス(SUS),アルミニウム,銅,ニッケルなどが含まれる。
図1に示されるようなパイプ状の面状発熱体100における板状金属電極110-1および110-2は、リング状であることが好ましい。リング状の板状金属電極の厚みは、面状成形物の厚みよりも薄いことが好ましく、例えば40〜100μmであればよい。
【0015】
面状成形物は、導電性物質と樹脂とを含む導電性樹脂組成物からなる。面状成形物を構成する導電性樹脂組成物における樹脂の含有量は50〜80体積%であることが好ましく、導電性物質の含有量は20〜50体積%であることが好ましい。
【0016】
導電性樹脂組成物に含まれる樹脂は、耐熱性樹脂であることが好ましく、例えばポリイミド樹脂であるが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリエーテルサルフォンなどであってもよい。ポリイミド樹脂とは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との縮合重合体である。
【0017】
ポリイミド樹脂を構成するためのジアミンは芳香族ジアミンであることが好ましく;芳香族ジアミンの例には、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニル、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4'-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4'-ジアミノジフェニルシラン、4,4'-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどが含まれる。
【0018】
ポリイミド樹脂を構成するためのテトラカルボン酸二無水物は芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく;芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、および9,9-ビス[4-(3,4'-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物などが含まれる。
【0019】
導電性樹脂組成物に含まれる導電性物質は、樹脂中に分散されている。導電性物質の例には、各種形状および粒径の黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルなどのカーボン材料粒子、ニッケル粉や銀粉などの金属粒子、ステンレス粉などの金属合金粒子、炭化タングステンや炭化タンタル、硼化タングステン等の金属間化合物、銀コートカーボンなどの金属被覆粉等の導電性粒子が含まれる。導電性物質の形状は、例えば繊維状であってもよい。
【0020】
面状成形物は発熱体層として機能するので、その厚みは目的とする発熱量を得るように設定されればよく;面状成形物に含まれる導電性物質の量および種類、板状金属電極との接触幅などに応じて設定されることが好ましい。ただし前述の通り、面状成形物の厚みは板状金属の厚みよりも厚いことが好ましい。
【0021】
板状金属電極と面状成形物との接合界面には、以下の式(1)または式(2)で表される化合物の残渣が存在する。式(1)におけるXはフェニル基またはアミノ基を表し、式(2)におけるYはメチルアミノ基を表す。
【化2】
【0022】
式(1)または式(2)で表される化合物の残渣とは、シランカップリング剤として板状金属電極と面状成形物と反応した当該化合物の熱分解物である。
【0023】
式(1)および式(2)で表される化合物はトリメトキシシリル基を有し、トリメトキシシリル基と置換基XおよびYとを連結する基が比較的長く、3以上のメチレン基を含む。このような化合物を板状金属電極と樹脂を含む面状成形物との接着のためのカップリング剤として用いることで、両者の接着強度を高めることができ;特に、発熱を繰り返したときの接着強度の低下や、剥離を抑制することができる。
【0024】
面状発熱体は、面状成形物を覆う補強層を有していてもよい。補強層は、耐熱性樹脂を含むことが好ましく、例えば面状成形物に含まれる耐熱性樹脂と同様の樹脂から構成されていればよい。面状成形物は導電性物質の影響で、面状発熱体の機械的強度が十分に得られない場合などに、補強層を設けることで面状発熱体の強度を得ることができる。
【0025】
面状発熱体は、面状成形物を覆う弾性体層を有していてもよい。弾性体層は、硬度の低く柔らかいゴム、例えばシリコーンゴムを含むことが好ましい。より具体的には、例えばJIS−A硬度で3〜50度のシリコーンゴムなどが好適である。弾性層の厚さは100〜500μmの範囲が好ましい。弾性層を設けることで、面状発熱体を画像定着装置の定着部材としたときに、定着ムラや光沢ムラのない、より高い画像を得ることができる。
【0026】
面状発熱体は、面状成形物を覆う離型層を有することが好ましい。離型層は面状発熱体の最外層に配置されている。離型層は、フッ素樹脂またはフッ素ゴムを含むことが好ましく、特にフッ素樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが含まれ、単体で又は混合して用いることがより好ましい。離型層の厚みは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。離型層を設けることで、面状発熱体を画像定着装置の定着部材としたときに、離型層が画像に直接接触するので、画像が定着部材に転写することが抑制される。
【0027】
2.面状発熱体の製造方法
面状発熱体の製造フローには、一対の板状金属の表面に、式(1)または式(2)で表される化合物を塗布する工程Aと;一対の板状金属を支持材にセットする工程Bと;一対の板状金属と支持材の外表面に、導電性樹脂ドープを塗布して発熱層(面状成形物に相当)を成膜する工程Cとを含みうる。さらに、発熱層に補強層、弾性層、離型層を積層する工程Dと、支持材を除去する工程Eと、を含んでいてもよい。もちろん、本発明の面状発熱体が得られる限り、その製造方法は限定されない。
【化3】
【0028】
図2A〜Eには、
図1に示される面状発熱体100を製造するためのフローが示される。
図2Aには、式(1)または式(2)で表される化合物が塗布されたリング状の板状金属210-1および210-2が示される。
図2Bには、芯金からなる支持材300に、リング状の板状金属210-1および210-2をセットした状態が示される。
図2Cには、
図2Bに示された支持材300およびリング状の板状金属210-1および210-2に、導電性樹脂ドープを塗布して発熱層220を成膜した状態が示される。
図2D(断面図)には、発熱層220に、補強層230、弾性層240、離型層250を積層した状態が示される。
図2E(断面図)は、
図2Dに示される構造物から支持体300を抜き取って、面状発熱体100を得た状態を示す。
【0029】
工程Aにおける一対の板状金属とは、面状発熱体における一対の板状金属電極となる部材であり、例えば
図2Aに示されるようにリング状の部材であるが特に限定されない。工程Aにおいて、板状金属の表面に式(1)または式(2)で表される化合物を塗布する。化合物の塗布は、化合物を含む溶液に板状金属を浸漬させたり、化合物を含む溶液を板状金属にスプレーしたりすればよい。
【0030】
一対の板状金属の全表面ではなく、一部の表面に式(1)または式(2)で表される化合物を塗布してもよい。具体的には、板状金属の少なくとも一方の面に化合物を塗布すればよく、より具体的には工程Cで導電性樹脂ドープを塗布される領域に化合物を塗布すればよい(
図2Aにおける領域αおよび領域βを参照)。式(1)または式(2)で表される化合物は、板状金属の表面で単分子膜を形成していることが好ましいが、その塗布量は特に限定されない。
【0031】
工程Bにおいて、一対の板状金属がセットされる支持材は、板状金属電極を支持できる形状を有していれば特に限定されない。支持材の材質は特に制限されないが、例えばステンレスなどの金属である。支持材は、その表面を清浄かつ平滑に処理しておくことが好ましい。工程Fにおいて支持材を除去するためである。
【0032】
板状金属がリング状である場合には、支持材は金属製の芯(芯金)などであり、リンク状の板状金属が隙間なく嵌め込める径を有することが好ましい。支持材である芯金の両端に、リンク状の板状金属を嵌め込めばよい(
図2B参照)。
【0033】
工程Cにおいて、支持体の表面と、支持体にセットされた一対の板状金属の表面とに、導電性樹脂ドープを塗布する。導電性樹脂ドープには、樹脂またはその前駆体と、導電性物質と、溶媒とが含まれる。導電性樹脂ドープに含まれる導電性物質は、前記面状成形物に含まれる導電性物質と同様である。樹脂ドープに含まれる樹脂は、前記面状成形物に含まれる樹脂と同様であり、ポリイミドなどである。ポリイミド前駆体とは、例えばポリアミック酸である。
【0034】
導電性樹脂ドープに含まれる溶媒は特に限定されないが、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸に組み合わせる溶媒の好ましい例には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム及びトリグライムなどが含まれる。
【0035】
導電性樹脂ドープの塗布膜を形成したら乾燥させて、さらに硬化させることで、発熱層とする。硬化とは、例えばポリアミック酸をポリイミドとすることである。
【0036】
工程Cにおける導電性樹脂ドープの塗布は、画像形成装置の定着装置の定着ベルトの一般的な製造方法を参照して行えばよいが、例えば、
図3に示される塗布装置を用いておこなうことができる。
図3に示される塗布装置は、塗布装置9c1は、保持部9c11と塗布部9c12と硬化部9c13とを具備する。
【0037】
保持部9c11は、第1保持台9c111と第2保持台9c112と駆動用モーター9c113と駆動受け部9c114とを有する。芯金9c2と芯金9c2の保持部材9c21および9c22は、駆動用モーター9c113および駆動受け部9c114とによって、回転可能に構成されている。芯金9c2は、
図2B〜Dにおける支持材300に相当する。
【0038】
塗布部9c12は、塗布手段9c121と駆動部9c122とを有する。塗布手段9c121は、導電性樹脂ドープ供給管9c123を通じて導電性樹脂ドープを供給され、導電性樹脂ドープをノズルなどを通じて芯金9c2に向けて吐出することができる。塗布手段9c121は、取付け部9c124によって、ガイドレール9c128に取付けられている。
【0039】
硬化部9c13は、加熱源(赤外線ランプ、ニクロム線、熱風装置など)である。
【0040】
工程Bで得られたリング状の板状金属(
図2B参照,支持体300が保持部の芯金9c2に相当する)を、保持部9c11に取付ける。板状金属を回転さながら、回転軸方向に移動させられる塗布手段9c121から導電性樹脂ドープを吐出して、板状金属に塗布する。塗布膜は、硬化部9c13で加熱されて硬化する。それにより、板状金属に発熱層が形成される(
図2C参照)。
【0041】
工程Cにおいて、導電性樹脂ドープは、支持体にセットされた板状金属表面の外面(露出面)の全面に塗布してもよいし、一部に塗布してもよい。いずれにしても、導電性樹脂ドープが塗布される面には、工程Aにおいて式(1)または式(2)で表される化合物が塗布されている。また、板状金属表面と発熱層との接着力を高めるために、金属表面と発熱層との重なり面積は、一定以上とすることが好ましい。一方、板状金属のうち、導電性樹脂ドープが塗布されない領域は、外部デバイス(電源など)と接続するための接続部となる。
【0042】
工程Dでは、発熱層に、補強層、弾性層および離型層を積層すればよい。各層の前駆体溶液を、
図3に示される塗布装置を用いて塗布、乾燥、必要に応じて硬化させる。
【0043】
工程Eでは、支持材を除去して面状発熱体を得る。支持材と、一対の板状金属および発熱層とは接触している。支持材の除去を容易にするためには、支持材と一対の板状金属および発熱層とが固着しないようにする必要がある、そのため、支持材と接触する板状金属表面には、式(1)または式(2)で表される化合物を塗布しないほうがよい場合がある。
【0044】
3.面状発熱体の用途
面状発熱体は、画像定着装置の一部材として用いられうる。画像定着装置は、例えば電子写真画像形成装置において、未定着のトナー画像を熱定着させる装置である。
【0045】
画像定着装置の一例が、
図4に示される。
図4に示される画像定着装置は、パイプ状の面状発熱体400と、加圧ロール410と、加圧ロール410のシャフト420と、電源430と、リード線440とを有する。加圧ロール410のシャフト420は駆動モーター(図示せず)に連結されている。
【0046】
本発明の面状発熱体は、
図4に示される画像定着装置の面状発熱体400として用いられうる。面状発熱体400の両端部に設けた一対の電極(板状金属電極)450−1および450−2は、面状発熱体400の発熱層に給電をし、発熱層を発熱させる。
図4に示される画像定着装置では、加圧ロール410の回転によって、加圧ロール410と圧接された面状発熱体400も従動して回転し、加圧ロール410と面状発熱体400とのニップ部に、未定着の画像が形成された複写紙が順次送り込まれて熱定着がなされる。
【実施例】
【0047】
[比較例1]
電極の調製:幅20mm、内径30.05mm、厚み50μmのSUS304製金属リングを、アセトン中で30分間超音波洗浄した。洗浄された金属リングを、10%塩酸水溶液に接触させて10分間室温でエッチングして、水道水、イオン交換水の順で洗浄して、電極1を得た。
【0048】
導電性樹脂ドープの調製:ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液(宇部興産社製 U−ワニスS301)100gに、黒鉛化炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製、XN−100)18gを投入し、攪拌混合した。攪拌混合は、プライミックス社製TKホモディスパー2.5型を用いて行い、攪拌混合条件は5,000rpmで15分間とした。
【0049】
導電性樹脂ドープの塗布:一対の電極1を、長さ380mm、外径30.0mmのステンレス製芯金の両端に装着した(
図2B参照)。一対の電極1を装着したステンレス製芯金に、導電性樹脂ドープを、
図3に示す装置で塗布した。塗布条件を以下の通りとして、塗布膜厚みを0.8mmとした。ただし、給電用となる電極部には、塗布しなかった。
【0050】
(導電性樹脂ドープの塗布条件)
導電性樹脂ドープの温度:25℃
吐出ノズルの形状:円錐状ノズル
吐出ノズルの口径:2mm
吐出ノズルと、芯金の周面との間隔:5mm
吐出ノズルからのポリアミド酸溶液の吐出量:5ml/min
吐出ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/sec
芯金の回転速度:40rpm((株)小野測器製HT−4200製で測定した)
【0051】
その後、回転速度40rpmで回転させながら、塗布膜を120℃で40分間加熱乾燥させた。
【0052】
補強層の積層:その後、ポリアミド酸溶液(宇部興産社製 U−ワニスS301)を
図3に示す装置で塗布した。塗布条件は、導電性樹脂ドープの塗布条件と同様にして、厚さ0.8mmの塗膜を形成した。その後、回転速度40rpmで回転させながら、120℃で40分間加熱乾燥させた。その後、450℃で20分間加熱乾燥して、発熱層および補強層を積層した。
【0053】
弾性層形成用塗布液の調製:シリコーンゴム(信越化学(株)製、KE1379)の液状ゴムと、シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン社製、DY356013)とを、質量比2:1の割合で混合して、弾性層形成用塗布液を得た。弾性層形成用塗布液の粘度は、50Pa・s(温度25℃)であった。粘度は、東機産業(株)製TVB10形で測定した。
【0054】
弾性層形成用塗布液の塗布:弾性層形成用塗布液を発熱層上に、
図3に示す製造装置を使用して塗布した。塗布条件を以下の通りとした。乾燥後の弾性層形成用塗膜の膜厚は200μmであった。ただし、給電用となる電極部には、塗布しなかった。
【0055】
(弾性層形成用塗布液の塗布条件)
弾性層形成用塗布液の温度:25℃
吐出ノズルの形状:円錐状ノズル
吐出ノズルのの口径:2mm
吐出ノズルと発熱層の周面との間隔:5mm
吐出ノズルからの弾性層形成用塗布液の吐出量:5ml/min
吐出ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/sec
芯金の回転速度:40rpm((株)小野測器製HT−4200製で測定した)
【0056】
その後、芯金を回転速度40rpmで回転させながら、150℃で30分間一次加硫し、さらに200℃で4時間ポスト加硫を行い、発熱層の上に弾性層を形成した。
【0057】
離形層形成用塗布液の準備:PTFE樹脂とPFA樹脂を7:3の割合で混合し、固形分濃度45%、粘度:110mPa・sに調整したフッ素樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名“855−510”)を離形層形成用塗布液として準備した。
【0058】
離形層形成用塗布液の塗布:離形層形成用塗布液を弾性層上に、
図3に示す製造装置を使用して塗布した。塗布条件を以下の通りとした。その後、室温で30分間乾燥した。乾燥後の離形層形成用塗膜の膜厚は30μmであった。ただし、給電用となる電極部には塗布しなかった。
【0059】
(離形層形成用塗布液の塗布条件)
離形層形成用塗布液の温度:25℃
吐出ノズルの形状:円錐状ノズル
吐出ノズルの口径:2mm
吐出ノズルと発熱層の周面との間隔:5mm
吐出ノズルからの離形層形成用塗布の吐出量:5ml/min
吐出ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/min
芯金の回転速度:40rpm((株)小野測器製HT−4200製で測定した)
【0060】
その後、芯金を回転速度(周速度)0.1m/secで回転させながら、230℃で30分間加熱し、さらに270℃で10分間加熱し、弾性層の上に離形層を形成した(
図2D参照)。
【0061】
形成した離形層の引張強度は10MPaであった。離形層の引張強度は、インストロン ジャパン カンパニイ リミテッド製5988を用いて測定した。また、離形層の摩擦係数(μ)は0.1であった。摩擦係数は、ポータブル摩擦計「ミューズ TIPE:94i−II(新東科学株式会社製)」を用いて測定した。また、離形層の摩擦係数の測定は、ランダムに設定した10点から30点で行い、それらの平均値を摩擦係数とした。
【0062】
芯金の抜き取り:離形層を形成した後、芯金を冷却し抜き取ることで
図1および
図2Eに示す構成(発熱層/弾性層/離形層)の面状発熱体を得た。
【0063】
[実施例1]
比較例1において得た電極1を、下記式で示される化合物に1分間浸漬し、その後、熱風炉中で3分間乾燥させて電極2を得た。電極2を電極1の代わりに用いた以外は、比較例1と同様にして面状発熱体を得た。
【化4】
【0064】
[実施例2]
比較例1において得た電極1を、下記式で示される化合物に1分間浸漬し、その後、熱風炉中で3分間乾燥させて電極3を得た。電極3を電極1の代わりに用いた以外は、比較例1と同様にして面状発熱体を得た。
【化5】
【0065】
[実施例3]
比較例1において得た電極1を、下記式で示される化合物に1分間浸漬し、その後、熱風炉中で3分間乾燥させて電極4を得た。電極4を電極1の代わりに用いた以外は、比較例1と同様にして面状発熱体を得た。
【化6】
【0066】
[比較例2]
比較例1において得た電極1を、下記式で示される化合物に1分間浸漬し、その後、熱風炉中で3分間乾燥させて電極5を得た。電極5を電極1の代わりに用いた以外は、比較例1と同様にして面状発熱体を得た。
【化7】
【0067】
[比較例3]
比較例1において得た電極1を、下記式で示される化合物に1分間浸漬し、その後、熱風炉中で3分間乾燥させて電極6を得た。電極6を電極1の代わりに用いた以外は、比較例1と同様にして面状発熱体を得た。
【化8】
【0068】
(評価)
各実施例および比較例で得られた面状発熱体の発熱定着ベルトとしての評価を以下の方法で行った。コニカミノルタカラー複合機(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製bizhubC360)の画像定着装置の発熱定着ベルトを、各実施例および比較例で得られた面状発熱体に取り替えた。それぞれのカラー複合機を用いて、印字率5%の画像を60万コピーした。その後、面状発熱体を取り出した。画像形成前の面状発熱体の一対の電極間の抵抗と、画像形成後の面状発熱体の一対の電極間の抵抗とをそれぞれ求めて、変化率を求めた。変化率に応じて、以下の基準で評価した。
○:抵抗変化が5%未満
△:抵抗変化が5%以上10%未満
×:抵抗変化が10%以上
【0069】
【表1】
【0070】
実施例で得られた面状発熱体は、画像形成前後の抵抗の変化率が抑制されていることがわかる。これは、金属電極と発熱層との接合状態が変化しなかったためであると考えられる。