(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る画像処理装置の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
〔1〕プリンターの全体構成
図1は、プリンター100の全体の構成を示す図である。
【0028】
同図に示すように、プリンター100は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、全体制御部50と、搬送制御部60を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0029】
画像プロセス部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y,10M,10C,10Kを備えている。
作像部10Yは、感光体ドラム11と、その周囲に配設された帯電部12、露光部13、現像部14、一次転写ローラー15、感光体ドラム11を清掃するためのクリーナ16などを備えており、感光体ドラム11上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部10M,10C,10Kについて同様であり、同図では符号を省略している。各感光体ドラム11上にその対応する色のトナー像が作像される。
【0030】
中間転写部20は、矢印方向に周回走行される中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を張架する駆動ローラー22と従動ローラー23と、中間転写ベルト21を挟んで駆動ローラー22と対向する位置に圧接状態で配置される二次転写ローラー35を備える。
給送部30は、シート搬送装置として機能し、記録用のシートとしての用紙Sを収容する給紙カセット31と、給紙カセット31から用紙Sを搬送路39に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー32と、繰り出しローラー32により搬送路39に繰り出された用紙Sを矢印Aで示す方向(用紙搬送方向)に搬送する一対の搬送ローラー(第1ローラー)33と、搬送ローラー33よりも用紙搬送方向下流側に配され、搬送ローラー33により搬送されて来た用紙Sを二次転写ローラー35に送り出すタイミングをとるための一対のレジストローラー(第2ローラー)34を備える。
【0031】
搬送ローラー33は、搬送モーターM1により回転駆動され、レジストローラー34は、レジストモーターM2により回転駆動され、両モーターは、搬送制御部60により回転制御される。搬送制御部60は、用紙Sの搬送方向先端部にループRを形成するレジスト動作を実行する。レジスト動作の内容については、後述する。
搬送モーターM1は、DCブラシレスモーターであり、モーターの回転軸を、周方向に間隔をおいた所定の複数の回転角度位置(例えば、18箇所)のうち、いずれかの位置で停止、維持させるホールド機能を有している。
【0032】
レジストモーターM2は、ステッピングモーターであり、搬送モーターM1と同様のホールド機能を有するが、搬送モーターM1よりも分解能が高く、回転方向に停止可能な回転角度位置の数が多く、例えば5倍などであり、停止位置精度が高い特性を有する。
搬送モーターM1の回転駆動力は、ギア列を含む駆動伝達部1を介して搬送ローラー33に伝達され、レジストモーターM2の回転駆動力は、ギア列を含む駆動伝達部2を介してレジストローラー34に伝達される構成になっている。駆動伝達部1,2のそれぞれには、歯合する2つのギアを含むギア列が設けられ、その2つのギア間には所定の大きさのバックラッシが存在する構成になっている。
【0033】
上記の「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、上流側である搬送モーターM1の回転軸のホールド機能による停止位置のずれと、下流側であるレジストモーターM2の駆動力を伝達する駆動伝達部2に存在するバックラッシの双方が、用紙Sに形成されるループRのループ量の変動要因になり得る。
そこで、本実施の形態では、ループ形成時に用紙1枚単位で、搬送モーターM1のホールド機能による回転軸の本来の目標停止位置に対するずれ量を推定し、用紙Sの搬送方向先端がレジストローラー34に突入する前に、推定したずれ量の大きさに基づいて、停止しているレジストモーターM2を逆転駆動してバックラッシを吸収する(詰める)動作と、レジストモーターM2を停止したままバックラッシを吸収しない動作とを切り替えることにより、ループ量の変動を抑制する制御を行っている。この制御の詳細については、後述する。
【0034】
なお、搬送ローラー33とレジストローラー34とは別の二次転写ローラー35などのローラーについては、感光体ドラム11や中間転写ベルト21などと同じ駆動系を介して回転駆動されるようになっている。
定着部40は、定着ローラーと加圧ローラーを備え、所定の定着温度で用紙Sを加熱、加圧してトナー像を定着させる。
【0035】
全体制御部50は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、作像部10Y〜10K毎に、その露光部13を駆動させるための駆動信号を生成して、その駆動信号により露光部13を駆動させる。これにより各露光部13からレーザービームが出射され、感光体ドラム11が露光走査される。
この露光走査を受ける前に作像部10Y〜10K毎に、その感光体ドラム11が帯電部12により一様に帯電されており、レーザービームの露光により感光体ドラム11上に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像部14に設けられた現像ローラー19に担持されている現像剤により現像されて、感光体ドラム11上にトナー像が形成される。
【0036】
各感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、一次転写ローラー15により中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に多重転写されるようにタイミングをずらして実行される。
中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により、二次転写ローラー35が中間転写ベルト21に圧接される位置である二次転写位置351に移動する。
【0037】
上記の作像動作のタイミングに合わせて、給送部30からは、レジストローラー34を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、周回走行する中間転写ベルト21と二次転写ローラー35の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラー35に供給される二次転写電圧により生じる電界による静電力の作用を受けて、二次転写位置351において、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括して用紙Sに二次転写される。
【0038】
二次転写位置351を通過した用紙Sは、定着部40に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧により用紙Sに定着された後、排出ローラー対36を介して排出され、収容トレイ37に収容される。
搬送路39の近傍であり、搬送ローラー33よりも用紙搬送方向下流かつレジストローラー34よりも用紙搬送方向上流の位置には、搬送されている用紙Sを検出するためのレジストセンサー38が配置されている。
【0039】
レジストセンサー38は、用紙Sを1枚ごとに、その用紙Sの搬送方向先端(以下、「用紙の先端」という。)を検出すると、その検出信号を搬送制御部60に送る。
搬送制御部60は、全体制御部50からの用紙搬送指示とレジストセンサー38からの検出信号に基づき、搬送モーターM1とレジストモーターM2の回転と停止、レジスト動作の実行などの制御を行う。
【0040】
〔2〕レジスト動作
図2は、1枚の用紙Sに対するレジスト動作のタイミングチャートを示す図であり、(a)がバックラッシを吸収しない場合の例を、(b)がバックラッシを吸収する場合の例を示している。なお、
図2(b)については、
図2(a)と異なる部分だけを抜き出して示している。
【0041】
図2(a)の時点t0より前では、レジストモーターM2が停止しつつ、搬送モーターM1が回転駆動されており、レジストローラー34が停止した状態で搬送ローラー33の回転により用紙Sがレジストローラー34に向けて搬送されている状態を示している。
時点t0でレジストセンサー38からの用紙先端検出信号(ON)を受信すると、搬送制御部60は、バックラッシ吸収の要否を判断する。この判断方法については後述する。
【0042】
バックラッシ吸収が不要と判断されると、時点t0から所定時間taの経過時(時点t2)で搬送モーターM1を停止させる。この搬送モーターM1の停止と同時にホールド指示により搬送モーターM1のホールド機能を作用させる。
所定時間taは、1枚の用紙Sの先端がレジストセンサー38により検出されてから、停止中のレジストローラー34のニップ(対向するローラーが相互に当接する部分)に到達(突入)して(時点t1)、用紙Sの先端部に所定の大きさのループRを形成するのに要する時間として予め決められた時間である。時点t0〜t1までの時間tbが用紙Sの先端がレジストセンサー38により検出されてからその先端がレジストローラー34に突入するまでに要する時間に相当する。また、時点t1〜t2までの時間がループ形成時間に相当し、用紙Sの先端部(搬送ローラー33とレジストローラー34の間に存する用紙部分)にループR(
図1)が形成される。
【0043】
搬送制御部60は、時点t2から時点t3までの間に、搬送モーターM1とレジストモーターM2の停止により搬送ローラー33とレジストローラー34の両方を停止させて、用紙Sを一旦停止させる。なお、図示していないが二次転写ローラー35は、搬送ローラー33とレジストローラー34の停止に関わりなく、画像形成開始からシステム速度で回転が継続されている。
【0044】
時点t3は、作像部10Y〜10Kによる作像動作(画像形成)のタイミングに基づく用紙Sの搬送再開タイミング、すなわち中間転写ベルト21(像担持体に相当)上の1ページ分に相当する画像形成領域の先端が二次転写位置351に到達する時点と、搬送再開された後の用紙Sの先端が二次転写位置351に到達する時点とが一致するように、画像形成のタイミングを基準に決められた用紙Sの搬送再開の開始時を示している。ここでは、全体制御部50から1枚の用紙Sごとに、用紙Sの搬送再開の開始時が到来すると、その旨を示す搬送再開指示信号が搬送制御部60に送信されるようになっている。
【0045】
搬送制御部60は、全体制御部50からの搬送再開指示信号を受け付けると(時点t3)、ホールド指示を解除して搬送モーターM1とレジストモーターM2を起動させ、搬送ローラー33とレジストローラー34の両方の回転により、一旦停止されている用紙Sの搬送を再開し、その用紙Sを二次転写位置351に搬送する。
これに対し、バックラッシ吸収が必要と判断されると、
図2(b)に示すように用紙Sの先端がレジストローラー34に突入する時点t1までの間に、停止しているレジストモーターM2を、バックラッシの吸収に必要な量だけ逆転させることによりバックラッシを吸収するバックラッシ吸収動作を行う。なお、時点t1以降は、バックラッシを吸収しない場合と同タイミングになる。
【0046】
時点t0でのバックラッシ吸収要否の判断は、時点t0で、これ以降の時点t2における搬送モーターM1の回転軸のホールド機能による停止位置のずれ量を推定し、推定されたずれ量の大きさが所定の閾値より大きければ不要、所定の閾値以下であれば必要と判断することにより行われる。
以下、搬送制御部60によるバックラッシ吸収要否判断の方法を、搬送制御部60と駆動伝達部2の構成と共に
図3〜
図9を用いて説明する。
【0047】
〔3〕搬送制御部60の構成
図3は、搬送制御部60の構成を示すブロック図である。
同図に示すように搬送制御部60は、レジストモーター制御部61と、搬送モーター制御部62と、STMドライバー63を有する。
〔3−1〕搬送モーター制御部62の構成
搬送モーター制御部62は、位相検出部81と位置ずれ推定部82を有し、DCブラシレスモーターである搬送モーターM1に制御信号を出力して搬送モーターM1を回転駆動する。制御信号は、所定のシステム速度Vに相当する回転速度を示す信号である。また、ホールド機能を作用させるためのホールド指示(
図2)を搬送モーターM1に出力する。
【0048】
搬送モーターM1は、搬送モーター制御部62からの制御信号を受信するとシステム速度Vに相当する回転速度で回転する。また、停止時にホールド信号を受信し続けている間、回転軸をロックするホールド機能を実行する。さらに、搬送モーターM1は、回転中にエンコーダーパルスとホールパルスu,v,wを搬送モーター制御部62に出力する。
〔3−1−1〕ホールパルスの説明
図4(a)は、ホールパルスu,v,wの波形図であり、
図4(b)は、エンコーダーパルスとホールパルスの関係を示す波形図である。
【0049】
図4(a)に示すようにホールパルスu,v,wは、それぞれが同じ周期(1/3回転の角度120°に相当)かつ位相が相互に40°ずれてなる矩形波である。本実施の形態の搬送モーターM1は、3相6極のDCブラシレスモーターであり、内蔵される3つのホール素子(不図示)からの出力が3相を示すホールパルスu,v,wになる。
3つのホールパルスu,v,wの立ち上がりエッジと立下りエッジを合成してなる波形が3相合成のパルス波形であり、3相合成のパルス波形の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを時間順にB0、B1・・B17、B0、B1・・とすると、B0から次のB0までの時間が搬送モーターM1の回転軸が1回転するのに要する時間に相当し、隣り合うエッジ同士の間隔Tが20°(=360°/18)の回転に要する時間に相当する。
【0050】
搬送モーターM1の回転に伴い、3つのホールパルスu,v,wが出力され、3つのホールパルスu,v,wのそれぞれの立ち上がりエッジと立下りエッジの出力時点であるB0、B1・・B17が、3相6極の搬送モーターM1のホールド機能により回転方向に停止可能な、1回転(1周)を18等分した18箇所の回転角度位置に対応している。
〔3−1−2〕回転角度位置の説明
図5は、ホールド機能により停止可能な搬送モーターM1の回転角度位置を示す模式図であり、1周を20°間隔で18等分した0°、20°、40°・・340°が停止可能角度位置を示している。同図では、0°がB0、20°がB1・・340°がB17に対応しており、例えば回転中にホールパルスのエッジB0が出力される時点の回転角度を0°とすると、エッジB1が出力される時点で回転角度が20°に、エッジB17が出力される時点で回転角度が340°まで回転していることになる。
【0051】
仮に同図のMaを回転軸、Mbを回転軸の回転方向における基準位置とすると、ホールド機能を作用させた場合、回転軸Maは、その基準位置Mbが停止可能角度位置B0〜B17のうち、いずれかの位置に停止した状態で維持(ロック)される。
例えば、レジストセンサー38による用紙Sの先端検出時t0(
図2のt0に相当)における回転軸Maの回転角度位置を、回転軸Maの基準位置Mbが位置B0から角度Hだけ回転したときの角度位置Bsとして、先端検出時t0から回転軸Maが所定角度Qだけ回転して停止したときに所定の大きさのループRを得られることが構成上、予め決められているとする。
【0052】
所定の大きさのループRは、
図2の時点t0からt2までの時間taだけ搬送モーターM1が回転することにより得られることから(
図2の斜線で示すS1とS2の面積が搬送量に相当)、所定角度Qは、時間taに亘って搬送モーターM1が回転するときのその回転角に相当するものといえる。
従って、所定の大きさのループRを得るには、搬送モーターM1を角度位置Bsから角度Qだけ回転したときの角度位置Bp(本来の停止位置)に至った時点で停止してその角度位置Bpでホールド機能により回転軸Maをロックさせれば良い。
【0053】
ところが、本来の停止位置Bpが
図5のように停止可能角度位置B10とB11の間に位置している状態でホールド機能を作用させれば、B10とB11の近い方、ここではB11まで回転軸Maが回転してしまう。このホールド機能によりロックされる停止位置をホールド位置とすると、ホールド位置B11と、本来の停止位置Bpとの角度差がホールド機能による回転軸の回転方向における停止位置のずれ量になる。
【0054】
本実施の形態では、1つの停止可能角度位置とこれの隣の停止可能角度位置との間の角度が20°なので、本来の停止位置Bpに対して回転方向に進む側をプラス、戻る側をマイナスとすると、最大でプラス、マイナス10°のずれが生じる。
停止位置のずれがプラスになるということは、上流側の搬送ローラー33が本来の停止位置から搬送方向に余分に回転することになるので、ホールド機能が作用する直前に形成されていたループRのループ量がホールド機能の作用により所定の大きさよりも増える方向になる。逆に、停止位置のずれがマイナスになるということは、搬送ローラー33が搬送方向とは逆方向に戻るように回転することになるので、ループ量が所定の大きさよりも減る方向になる。
【0055】
この停止位置のずれは、レジストセンサー38による用紙Sの先端検出時(t0)にその時点での搬送モーターM1の回転軸Maの回転角度位置Bsを検出できれば、搬送モーターM1が停止する前に、時点t0で推定することができる。
搬送モーターM1の回転軸Maの回転角度位置Bsの検出は、搬送モーターM1に内蔵されたエンコーダー(不図示)から出力される矩形波のエンコーダーパルスをカウントすることにより行われる。エンコーダーパルスは、ホールパルスより分解能が高く、ここでは10倍とされ、2°の回転角に対して1P(パルス)が出力される関係になっている。
【0056】
本実施の形態では、エンコーダーパルスの1Pが用紙搬送距離の0.1〔mm〕に相当しており、停止位置のずれ量の最大値(10°)を用紙搬送距離に換算すると、プラス、マイナスで最大1〔mm〕の搬送距離の相当分、用紙Sのループ量が増減する。
エンコーダーパルスとホールパルスの関係は、
図4(b)に示すように、ホールパルス(3相合成)の立ち下がりエッジB0と次の立ち上がりエッジB1との間に10個のエンコーダーパルスが存在する関係になる。この関係は、他のエッジB1とB2間、B2とB3間などについて同じである。
【0057】
エンコーダーパルスが入力されるとその立ち上がりエッジの数を1、2・・というように1ずつインクリメントしてカウントすると共に、ホールパルス(3相合成)の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのそれぞれを、インクリメントされたカウント値のリセット信号として、リセット信号があると、カウント値を0にリセットする構成をとることにより、レジストセンサー38による用紙Sの先端検出時(t0)における搬送モーターM1の回転軸Maの回転角度位置Bsを検出することができる。
【0058】
例えば、用紙Sの先端検出時(t0)におけるカウント値hが7であれば、エンコーダーパルスの1Pが2°であるので、停止可能角度位置B0から14°(=角度H)だけ進んだ位置を回転角度位置Bsとして検出することができる。ここでは、角度Hの大きさと所定角度Q(
図5)とから本来の停止位置Bp(
図5)を求め、求めた停止位置Bpと、これに最も近い停止可能角度位置との角度差を用紙搬送距離に換算した値を、ホールド機能による本来の停止位置Bpに対する停止位置のずれ量Eとして推定する。
【0059】
角度Hの検出は、位相検出部81が実行し、停止位置のずれ量Eの推定は、位置ずれ推定部82が実行する。
〔3−1−3〕位相検出部81の構成
図6は、位相検出部81の構成を示すブロック図である。
同図に示すように位相検出部81は、エッジ検出部91,92,93と、カウンター94と、位相値保持部95を有する。
【0060】
エッジ検出部91は、エンコーダーパルスの立ち上がりエッジを検出するごとに、その検出を示すパルスエッジ信号をカウンター94に送信し、エッジ検出部92は、ホールパルスu,v,wの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを検出するごとに、その検出を示すリセット信号(3相合成の信号)をカウンター94に送信する。
カウンター94は、エッジ検出部91からのパルスエッジ信号を受信する度に、その数を1,2・・と1つずつ値が加算されようにカウントしつつ(
図4(b))、エッジ検出部92からのリセット信号を受信する度に、現在のカウント値を0にリセットする処理を繰り返し実行する(
図4(b))。
【0061】
エッジ検出部93は、レジストセンサー38により1枚の用紙Sの先端が検出されるときのオフからオンへの信号の切り替わりエッジを検出し(
図4(b))、その検出を示すロード信号をカウンター94に送信する。
カウンター94は、上記のカウントを行いつつ、ロード信号を受信した時点でのカウント値(
図4の例では、7)を位相値hとして位相値保持部95に書き込む。この位相値hの書き込みは、用紙Sの1枚ごとに、その用紙Sに対する位相値hが上書きされる(過去のものを消去して当該用紙Sの位相値hに書き換える)ことにより実行される。書き込まれた位相値hは、位置ずれ推定部82による停止位置のずれ量Eの推定に用いられる。
【0062】
〔3−1−4〕停止位置のずれ量Eの推定方法
停止位置のずれ量Eの推定は、以下の方法によって行われる。
(a)位相値保持部95に書き込まれている位相値hを読み出して、読み出した位相値(カウント値)hから回転角Hを求める。
回転角H=位相値h×(360/d)・・・(式1)
ここで、dは、搬送モーターM1の回転軸Maが1周するときのエンコーダーパルスの立ち上がりエッジの合計数であり、上記の例であれば、d=180になる。
【0063】
(b)用紙Sの先端検出時から、搬送モーターM1の回転軸Maが所定角度Qだけ回転した場合の停止位置Bpの、停止可能角度位置に対するずれ量e〔°〕を求める。
ずれ量e〔°〕=(H+Q)mod(360/k)・・・(式2)
ここで、kは、搬送モーターM1のホールド機能による停止可能な停止可能角度位置の数であり、ここでは3相6極のモーターにより18になる。これにより、(360/k)は、20°になる。
【0064】
図5において仮に回転角Hを14°、所定角度Qを200°とすれば、停止可能角度位置B0を起点に214°(=H+Q)だけ回転したときの位置が所定量のループを形成するための本来の停止位置Bpになる。上記の(式2)では、ずれ量eとして、(H+Q)を20°で除したときの余りを求めている。この余りは、
図5の角度Dに相当し、停止位置Bpの、停止可能角度位置B10からの進み角を示している。
【0065】
ずれ量e〔°〕は、0≦e<20の範囲内の値になり、e=10〔°〕のときが、隣り合う関係にある停止可能角度位置B10とB11の丁度、中間の角度位置に当たる。
(c)搬送モーターM1のホールド機能を作用させた場合、位置B10とB11のうち、停止位置Bpと近い方の位置がホールド位置になる。ここでは、中間の角度位置である10〔°〕を境に、0≦e<10の関係を満たせばホールド位置がB10になり、10≦e<20の関係を満たせばホールド位置がB11になるとして、次の(式3)と(式4)を用いて停止位置のずれ量E〔°〕を求める。
【0066】
0≦e<10のとき ずれ量E=−e・・・・・(式3)
10≦e<20のとき ずれ量E=(360/k)−e・・・(式4)
なお、(360/k)は、ここでは20°である。
例えば、
図5の例でH=14°の場合、(式4)から停止位置のずれ量E=+6になり、H=6°の場合、(式3)から停止位置のずれ量E=−6になる。ずれ量Eが+6の場合、本来の停止位置Bpよりもホールド機能により搬送モーターM1の回転軸が6°だけ進んだ位置B11がホールド位置になり、ずれ量Eが−6の場合、停止位置Bpよりも6°だけ戻った位置B10がホールド位置になることを示している。
【0067】
なお、停止位置のずれ量E〔°〕の算出は、用紙Sの先端検出時の直後、具体的には
図2の時点t0から数ミリ秒経過時のt5までの間に行われ、搬送モーターM1が本来の停止位置Bpに実際に停止するよりも前になるので、停止位置のずれ量E〔°〕は、推定値になる。以下、この推定値を停止位置推定ずれ量Eという。
(d)停止位置推定ずれ量E〔°〕を求めると、式(5)を用いて、単位を角度から用紙搬送距離に換算する。
【0068】
停止位置推定ずれ量E〔mm〕=係数a×停止位置推定ずれ量E〔°〕・・(式5)
ここでは、1°の角度が用紙搬送距離の0.05〔mm〕に予め対応しており、係数aが0.05になる。これにより、本実施の形態では、ずれ量Eがプラス、マイナスの最大で0.5〔mm〕ということになる。換算後の停止位置推定ずれ量Eを示す情報は、レジストモーター制御部61に送信される。
【0069】
〔3−2〕レジストモーター制御部61の構成
図3に戻り、レジストモーター制御部61は、バックラッシ吸収制御切替部71を有しており、STMドライバー63に対し、ステッピングモーターであるレジストモーターM2を駆動させるための駆動パルス、ホールド機能の指示と解除を示す信号、回転方向指示を出力する。
【0070】
駆動パルスの出力が駆動指示に相当し、駆動パルスの出力停止が駆動停止に相当する。また、回転方向指示には、用紙搬送方向を示す正転と、その逆方向を示す逆転がある。
STMドライバー63は、レジストモーター制御部61からの駆動パルスと回転方向指示に基づきレジストモーターM2を回転駆動させる。
例えば、用紙Sを搬送する場合、レジストモーター制御部61は、システム速度Vに相当する周波数の駆動パルスと正転を示す回転方向指示を出力する。STMドライバー63は、受信した駆動パルスの周波数に基づきレジストモーターM2をシステム速度Vに相当する回転速度で正転させるための駆動電流を生成し、生成した駆動電流をレジストモーターM2に供給して、レジストモーターM2を回転駆動させる。
【0071】
また、逆転させる場合には、レジストモーター制御部61は、逆転を示す回転方向指示と、逆転時の回転速度に相当する周波数の駆動パルスを出力する。STMドライバー63は、受信した駆動パルスの周波数に対応する回転速度で逆転させるための駆動電流を生成し、生成した駆動電流をレジストモーターM2に供給する。
さらに、レジストモーターM2の停止時に、レジストモーター制御部61は、ホールド指示を出力する。STMドライバー63は、ホールド指示を受信している間、レジストモーターM2の回転軸をロックさせるための駆動電流を生成し、生成した駆動電流をレジストモーターM2に供給し続ける。
【0072】
バックラッシ吸収制御切替部71は、位置ずれ推定部82からの停止位置推定ずれ量Eの大きさに基づきバックラッシを吸収する制御と吸収しない制御を切り替えて実行する。
〔3−3〕バックラッシ吸収の説明
図7は、駆動伝達部2のギア列に含まれるギア1Aと1Bが歯合している様子を示す図であり、(a)は、ギア1Aと1B間に存在するバックラッシの吸収を行っていない場合の例を示し、(b)は、バックラッシの吸収を行っている場合の例を示している、
ギア1Aは、レジストモーターM2の回転駆動力をギア1Bに伝達し、ギア1Bは、ギア1Aからの回転駆動力をレジストローラー34に伝達する構成になっている。例えば、ギア1AをレジストモーターM2の回転軸に取り付けられたモーターギアとし、ギア1Bをレジストローラー34の軸の一方端に取り付けられたローラーギアとすることができるが、これに限られず、3以上のギアを有するギア列とすることもできる。
【0073】
また、ベルトを含める構成とすることもできる。
具体的には、ベルトを張架する2つのプーリーAとBのうち、プーリーAをレジストモーターM2の回転軸に取り付け、プーリーBの軸と同軸上にギア1Aを設け、ギア1Aに歯合するギア1Bをレジストローラー34の軸に取り付ける構成が考えられる。レジストモーターM2の回転駆動力は、その回転軸からプーリーA、ベルト、プーリーB、ギア1A、ギア1Bを介してレジストローラー34に伝達される。
【0074】
なお、同図では、ギア1Aと1Bが平歯車の例を示しているが、2つのギアの間にバックラッシを有するものであれば、これに限られず、他の種類のギアであっても良い。
ギア1Aが同図に示す時計周りの方向に回転するときをレジストモーターM2の正転、反時計周りの方向に回転するときをレジストモーターM2の逆転としたときに、レジストモーターM2を正転させると、レジストローラー34が用紙Sを搬送する方向に回転するようになっている。
【0075】
レジストモーターM2を正転している状態から停止させると、
図7(a)に示すようにギア1A、1B間に存在するバックラッシにより、駆動側のギア1Aの1つの歯における正転方向上流側の歯面1Aaと、被駆動側のギア1Bの1つの歯における搬送方向下流側の歯面1Baとの間に隙間BLがあく場合があり、ここでは隙間BLの最大が、用紙搬送距離の換算値で0.5〔mm〕相当に設計されている。
【0076】
このようなバックラッシにより生じる隙間BLは、用紙Sに形成されるループRのループ量の変動要因になる。
すなわち、搬送ローラー33による搬送される用紙Sの先端が停止中のレジストローラー34に突入して、用紙Sの先端部にループが形成されるときに、用紙Sにおけるループ形成部分には、その腰の強さによりループの撓みを解消しようとする復元力が生じる。
【0077】
この復元力がレジストローラー34に対し、レジストローラー34を搬送方向に回転させようとする力として作用すると、その力がレジストローラー34から駆動伝達部2のギア1Bに伝達される。
このとき、ギア1Aと1B間に隙間BLが介在していれば、ギア1Bは、ギア1Aとの間で用紙搬送方向への回転負荷を受けない、いわばブレーキがかかっていない状態になっているので、停止中のレジストローラー34が用紙Sの復元力を受けて、隙間BL分だけ用紙搬送方向に回転してしまうことが発生し易い。
【0078】
停止しているべきレジストローラー34が隙間BL分だけ用紙搬送方向に回転してしまうということは、用紙Sを隙間BL分だけ余分に搬送することを意味するので、余分の搬送量だけ、用紙Sに形成されるべき所定の大きさのループ量が少なくなることになる。
この余分な搬送をなくす方法として、
図7(b)に示すようにバックラッシを吸収、すなわちレジストモーターM2の逆転によりギア1Aを、隙間BLの最大量、上記例では0.5〔mm〕相当分、逆転させた後、停止させることにより、ギア1Aの1つの歯における歯面1Aaと、ギア1Bの1つの歯における歯面1Baとを当接させて隙間BLが生じない状態にする方法がある。
【0079】
用紙Sの先端が停止中のレジストローラー34に突入する前(用紙先端突入前)に、バックラッシを吸収しておけば、用紙Sの先端がレジストローラー34に突入した時点で、ギア1Bは、用紙搬送方向にギア1Aの回転負荷を受けた状態になっており、この回転負荷が、ギア1Bの用紙搬送方向への回転力に対するブレーキになる。これにより、ループ形成された用紙Sの復元力がレジストローラー34に作用しても、停止中のレジストローラー34が用紙搬送方向に回転してしまうことが発生し難くなり、バックラッシによるループ量の変動を抑えることができる。
【0080】
このループ量の変動の抑制という点だけをみれば、必ずバックラッシを吸収する制御を行えば良いことになるが、上記のように搬送モーターM1のホールド機能による停止位置のずれを考慮すると、バックラッシを吸収しない方が吸収するよりもループ量の変動を抑制することができる場合が生じる。
具体的には、搬送モーターM1のホールド機能による停止位置推定ずれ量Eがプラスになる場合、すなわち停止位置推定ずれ量Eだけ搬送モーターM1により用紙Sが余分に搬送される場合である。この場合、ギア1Aと1B間のバックラッシを吸収していれば、1枚の用紙Sは、その先端が下流側のレジストローラー34で停止されつつ、上流側の搬送ローラー33では停止位置推定ずれ量Eだけ余分に搬送されることになり、用紙Sの先端部に形成されたループRのループ量が所定の大きさよりも増えることになる。
【0081】
これに対し、バックラッシを吸収していなければ、用紙Sの先端が最大で隙間BL分だけレジストローラー34により搬送されることになる。つまり、上流側の搬送ローラー33により余分な搬送が行われても、下流側のレジストローラー34でも最大で隙間BL分だけ搬送されることにより、バックラッシを吸収している場合よりもループ量が大きくなるのを抑制して、ループ量の、所定の大きさからの変動量(ループずれ量)を抑えることができるからである。
【0082】
そこで、搬送モーターM1のホールド機能による停止位置推定ずれ量Eの大きさに応じて、バックラッシ(遊び)を吸収する第1制御と吸収しない(許容する)第2制御とを切り替えるバックラッシ吸収切替制御を実行して、ループずれ量を抑えるようにしている。
〔3−2−2〕停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係
図8は、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図であり、(a)は、バックラッシ吸収切替制御を実行しない場合の例を示しており、(b)は、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合の例を示している。
【0083】
両図において横軸が停止位置推定ずれ量E、縦軸がループずれ量Δであり、それぞれ用紙搬送距離〔mm〕の単位に換算された値が示されている。ここで、停止位置推定ずれ量Eは、搬送モーター制御部62の位置ずれ推定部82により推定されたものである。
本実施の形態では、停止位置推定ずれ量Eが、−0.5≦E≦+0.5〔mm〕の範囲になり、バックラッシを吸収しない場合の余分な搬送量(バックラッシによるずれ量)の最大(隙間BLに相当)が用紙搬送距離の単位に換算した場合、0.5〔mm〕の一定値になっている。なお、バックラッシによるずれ量は、ループ量が減る方向に働くので、ホールド機能による停止位置のずれと正負の符号を合わせれば、−0.5〔mm〕になる。
【0084】
ループずれ量Δは、用紙Sに所定の大きさのループRを形成するのに必要な用紙Sの搬送量(所定値)に対する、実際の搬送量との差分(ずれ量)の予測値であり、0であれば、ループ量が所定の大きさと同じになり、プラスであれば、所定の大きさよりも大きくなり、マイナスであれば、所定の大きさよりも小さくなるであろうことを示している。
図8(a)の破線のグラフ101は、バックラッシを吸収しない場合のずれ量の関係を示しており、実線のグラフ102は、用紙先端突入前にバックラッシを吸収する場合のずれ量の関係を示している。
【0085】
例えば、バックラッシを吸収しないとすれば、停止位置推定ずれ量Eが−0.5〔mm〕の場合、ループずれ量Δは、グラフ101から−1〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが0〔mm〕の場合、ループずれ量Δは−0.5〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが+0.5〔mm〕の場合、ループずれ量Δは0〔mm〕になることが判る。
すなわち、停止位置推定ずれ量Eが−0.5〔mm〕であれば、ホールド機能による停止位置のずれとバックラッシによるずれの双方がループ量を小さくする方向に働くことにより、停止位置推定ずれ量Eとバックラッシによるずれ量を足し合わせた値である−1〔mm〕がループずれ量Δになる。
【0086】
また、停止位置推定ずれ量Eが0〔mm〕であれば、ホールド機能による停止位置のずれがループ量を変動する要因にはならず、バックラッシによるずれだけがループ量を少なくする方向に働くので、バックラッシによるずれ量の最大値である−0.5〔mm〕がループずれ量Δになる。
さらに、停止位置推定ずれ量Eが+0.5〔mm〕であれば、ホールド機能による停止位置のずれがループ量を大きくする方向に働きつつ、逆にバックラッシによるずれがループ量を少なくする方向に働いて、双方が相殺されることにより、ループずれ量Δが0になるものである。
【0087】
バックラッシによるずれ量が一定(=0.5〔mm〕)なので、停止位置推定ずれ量Eからバックラッシによるずれ量の0.5〔mm〕を差し引いた値がループずれ量Δになり、グラフ101は、比例直線で示される。グラフが比例直線になることは、グラフ102や後述の他のグラフについて同じである。
一方、グラフ120で示すようにバックラッシを吸収する場合には、ループずれ量Δは、停止位置推定ずれ量Eが−0.5〔mm〕の場合、−0.5〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが0〔mm〕の場合、0〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが+0.5〔mm〕の場合、+0.5〔mm〕になっている。
【0088】
停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δが同じ値になっているのは、用紙先端突入前にバックラッシを吸収しておけば、用紙先端突入時にバックラッシの分、ループ量が減ることがなく、ループ量の変動要因が搬送モーターM1のホールド機能による停止位置のずれだけになり、停止位置推定ずれ量Eがそのままループずれ量Δになるからである。
図8(a)において、バックラッシを一切吸収しなければ、グラフ101からループずれ量Δは、ホールド機能による停止位置のずれとバックラッシによるずれの影響を受けて、−1.0≦Δ≦0〔mm〕の範囲内で、最大1〔mm〕幅でばらつくことが判る。
【0089】
仮に、必ずバックラッシを吸収するとすれば、グラフ102からループずれ量Δは、ホールド機能による停止位置のずれの影響を受けて、−0.5≦Δ≦+0.5〔mm〕の範囲内で、最大1〔mm〕幅でばらつくことになる。
これに対し、
図8(b)の実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御を行う場合のグラフ100は、停止位置推定ずれ量Eを所定の閾値th1を境に、閾値th1以下の領域Z1のグラフ112と、閾値th1よりも大きい領域Z2のグラフ111とからなる。ここで、閾値th1は、0である。また、グラフ112は、グラフ102における閾値th1以下の直線部分と同じであり、グラフ111は、グラフ101の閾値th1よりも大きい直線部分と同じものである。
【0090】
すなわち、グラフ100は、停止位置推定ずれ量Eが閾値th1以下の領域Z1では、バックラッシを吸収する制御を実行し、閾値th1よりも大きい領域Z2では、バックラッシを吸収しない制御を実行する場合のループずれ量Δと停止位置推定ずれ量Eの関係を示すものといえる。
このようにバックラッシ吸収切替制御を行うことにより、ループずれ量Δは、−0.5≦Δ≦0〔mm〕の範囲内に収まることになり、
図8(a)のバックラッシ吸収切替制御を行わない場合よりも、ループ量の変動を抑制することができる。
【0091】
なお、閾値th1は、予め決められる固定値であり、0とすることが最もループ量の変動を抑えられることになるが、これに限られない。ばらつきの幅が1〔mm〕よりも小さくなれば、
図8(a)のバックラッシ吸収切替制御を行わない場合よりもループ量の変動を抑制することができる。例えば、−0.25≦th1≦0の範囲内に設定すれば、ループずれ量Δをよりマイナス側に片寄らせる、すなわちループ量の変動があったとしてもループ量を所定の大きさよりも小さめにした状態にすることができる。
【0092】
搬送路39の構成上、仮に、ループRが所定の大きさよりも大きめに変動した場合に、その変動量によっては用紙Sが搬送路39を構成する搬送ガイド(不図示)に押し付けられて用紙Sの屈曲が生じて搬送性が低下し易いような装置に有利になる。
ループずれ量Δをマイナス側に片寄らせることにより、ループRが所定の大きさよりも大きめに変動することを抑制して、用紙Sが屈曲するのを防止して搬送性を向上することができるからである。
【0093】
また、停止位置推定ずれ量Eの最小値(
図8の例では−0.5)をEmin、その最大値(
図8の例では、+0.5)をEmaxとしたとき、Emin<th1<Emaxの範囲内に設定するとしても良い。少なくとも
図8(a)の場合よりもループの変動量を抑制することができる。
〔3−4〕バックラッシ吸収切替制御の処理内容
図9は、バックラッシ吸収切替制御の処理内容を示すフローチャートであり、搬送制御部60において1枚の用紙Sが搬送される毎に繰り返し実行される。
【0094】
同図に示すように、レジストセンサー38により用紙Sの先端が検出されたか否かを判断する(ステップS1)。
用紙Sの先端が検出されたことを判断すると(
図2の時点t0)(ステップS1で「YES」)、位相値hを取得する(ステップS2)。位相値hの取得は、現に位相値保持部95に書き込まれている位相値hを示す情報を読み出すことにより行われる。
【0095】
取得した位相値hを用いて、搬送モーターM1の回転軸Maの、本来の停止位置Bpに対する停止位置推定ずれ量Eを算出する(ステップS3)。この停止位置ずれ量Eの算出は、上記(式1)〜(式5)により行われる。
停止位置推定ずれ量Eが閾値th1以下であるか否かを判断する(ステップS4)。ステップS1〜S4までの処理は、
図2の時点t0〜t5間に実行される。
【0096】
停止位置推定ずれ量E≦閾値th1であることを判断すると(ステップS4で「YES」)、用紙Sの先端の、レジストローラー34への突入前に(
図2の時点t1前に)、レジストモーターM2の逆転によるバックラッシを吸収する第1制御を実行し(ステップS5)(
図2の時点t5〜t6間)、ステップS6に移る。この時点t5〜t6間は、例えば数十ミリの単位の時間である。
【0097】
一方、停止位置推定ずれ量E>閾値th1であることを判断すると(ステップS4で「NO」)、ステップS6に移る。この場合、バックラッシ吸収は行われない。これがバックラッシを吸収しない第2制御となる。
ステップS6では、レジストセンサー38による用紙Sの先端検出時(時点t0)から時間taが経過したか否かを判断する。この時間taは、
図2に示す時間taに等しく、
図5に示す角度Qだけ搬送モーターM1が回転するのに要する時間に相当する。
【0098】
時間taが経過したことを判断すると(ステップS6で「YES」)(
図2の時点t2)、搬送モーターM1を停止させ、ホールド機能の指示によりホールド機能を作用させて(ステップS7)、当該処理を終了する。
搬送モーターM1は、本来の停止位置Bp(
図5)まで回転した時点で停止が実行され、停止してからホールド機能の作用により、停止位置Bpに近い側の停止可能角度位置まで回転した状態でロックされ、最終的に搬送モーターM1は、そのロックされた停止可能角度位置で停止状態が維持されることになる。
【0099】
このように停止位置推定ずれ量Eが閾値th1以下であるか否かによりバックラッシを吸収する第1制御と吸収しない第2制御とを切り替える制御を行うことにより、このような切り替えを行わない構成に比べて、用紙1枚ごとに、用紙Sに形成されたループRのループ量のばらつきを抑制することができる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th1以下の場合には、バックラッシを吸収する第1制御を行い、閾値th1よりも大きい場合には、バックラッシを吸収しない第2制御を行うとしたが、本実施の形態2では、閾値より大きい場合に第1制御を行い、閾値以下の場合に第2制御に加えて第3制御を行うとしており、この点で実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0100】
図10は、本実施の形態2における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図であり、(a)は、バックラッシ吸収切替制御を実行しない場合の例を示しており、(b)は、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合の例を示している。
図10(a)の破線のグラフ101は、バックラッシを吸収しない場合のずれ量の関係を示しており、実線のグラフ102は、用紙先端突入前にバックラッシを吸収する場合のずれ量の関係を示しており、
図8(a)のグラフ101,102と同じものである。
【0101】
図10(a)の一点鎖線のグラフ103は、バックラッシを吸収しない場合であり、かつ、搬送モーターM1の回転軸Maにおける本来の停止位置Bpを、隣り合う関係にある2つの停止可能角度位置Bnと停止可能角度位置B(n+1)との間の停止可能位置間角度γだけ進めた位置に変更した場合のずれ量の関係を示している。ここで、nは、0〜17までの整数であり、nが17の場合に限り、(n+1)が0になるものとする。
【0102】
停止可能位置間角度γは、360°を、上記(式2)の係数k(ホールド機能による停止可能な停止可能角度位置の数:ここでは18)で除した所定値であり、上記例では20°である。以下、搬送モーターM1の本来の停止位置Bpを変更することを、停止位置を1つ進めるといい、この停止位置を1つ進める制御を第3制御という。
図11は、停止位置Bpを1つ進める制御の内容を説明するための図である。
【0103】
同図では、本来の停止位置Bpが停止可能角度位置B10とB11の間にある場合に、停止位置Bpを停止可能位置間角度γである20°だけ進めた位置Bp1(停止可能角度位置B11とB12の間の位置)が変更後の停止位置になることを示している。
この停止位置を1つ進める第3制御は、上記の所定角度Qを、これに停止可能位置間角度γ(=20°)を加算してなる角度Q1に変更することにより行うことができ、ここでは後述のようの上記の時間taを、搬送モーターM1が所定角度Qだけ回転するのに要する時間に、停止可能位置間角度γだけ回転するのに要する時間td分、長くした時間(角度Q1だけ回転するのに要する時間に相当)に変更することにより行われる。
【0104】
搬送モーターM1の停止位置を1つ進めるということは、停止位置ずれを考慮しなければ、用紙Sのループ量が元の所定の大きさに対して、搬送モーターM1の回転角の20°相当分(用紙Sの搬送距離に換算すると1〔mm〕相当分)だけ増えることを意味する。
下流側の駆動伝達部2のバックラッシを吸収しない場合、用紙Sのループ量が減る方向に働くことから、バックラッシを吸収せず、かつ上流側の搬送モーターM1の停止位置を1つ進める制御を行えば、バックラッシを吸収しないことによるループ量の減少分(マイナス)と、停止位置を1つ進めることによるループ量の増加分(プラス)が相殺されて、形成後の用紙Sのループ量の変動が抑制されることになる。
【0105】
図10(a)に戻り、一点鎖線のグラフ103は、バックラッシを吸収せず停止位置を1つ進める場合のずれ量の関係を示すものであるので、バックラッシを吸収せず停止位置を進めない場合のグラフ101に対し、搬送モーターM1が停止可能位置間角度γだけ回転する場合の回転量を用紙搬送距離に換算した値、ここでは1〔mm〕だけループずれ量Δが大きくなる関係になっている。
【0106】
例えば、停止位置推定ずれ量Eが0のとき、グラフ101からバックラッシを吸収せず停止位置を進めなければ、ループずれ量Δが−0.5〔mm〕であるのに対し、バックラッシを吸収せず停止位置を1つ進める場合には、グラフ103からループずれ量Δが+0.5〔mm〕になっている。この関係は、ループずれ量Δが−0.5〔mm〕〜+0.5〔mm〕の範囲で同じである。
【0107】
図10(a)において、バックラッシを吸収せず停止位置を1つ進める場合(グラフ103)、バックラッシを吸収し停止位置を進めない場合(グラフ102)、バックラッシを吸収せず停止位置を進めない場合(グラフ101)のいずれも、ループずれ量Δは、0に対して最大1〔mm〕のずれが生じてしまう。
これに対し、
図10(b)のバックラッシ吸収切替制御を行う場合のグラフ200は、停止位置推定ずれ量Eを所定の閾値th2を境に、閾値th2以下の領域Z21のグラフ201と、閾値th2よりも大きい領域Z22のグラフ202とからなる。ここで、閾値th2は、−0.25である。グラフ201は、グラフ103における閾値th2以下の直線部分と同じであり、グラフ202は、グラフ102の閾値th2よりも大きい直線部分と同じものである。
【0108】
すなわち、グラフ200は、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下の領域Z21では、バックラッシを吸収しない第2制御と停止位置を1つ進める第3制御を実行し、閾値th2よりも大きい領域Z22では、バックラッシを吸収する第1制御(停止位置は進めない)を実行する場合のループずれ量Δと停止位置推定ずれ量Eの関係を示すものである。
このようにバックラッシ吸収切替制御を行うことにより、ループずれ量Δは、−0.25≦Δ≦+0.5〔mm〕の範囲内に収まることになり、
図10(a)のバックラッシ吸収切替制御を行わない場合よりも、ループ量の変動を抑制することができる。
【0109】
なお、閾値th2は、予め決められる固定値であるが、実施の形態1と同様に上記の値に限られることはない。このことは、後述の他の閾値についても同様である。
閾値th2を、例えば0にすれば、ループずれ量Δが、0≦Δ≦+0.5〔mm〕の範囲内に収まることになり、ループずれ量Δをプラス側に片寄らせる、すなわちループ量の変動があったとしてもループ量を所定の大きさよりも大きめにした状態にすることができる。このことは、0<th2<+0.5の範囲内に設定することでも同じである。
【0110】
実施の形態1とは逆に、搬送路39の構成上、仮に、ループRが所定の大きさよりも小さめに変動した場合に、その変動量によってはループ量が低減して、補正されていたスキューが再発し易くなるような装置に有利になる。
図12は、本実施の形態2に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容を示すフローチャートである。当該処理では、実施の形態1のステップS4〜S5に代えて、ステップS21〜S23を実行しており、この点が実施の形態1と異なっている。
【0111】
ステップS3に続いて、ステップS21では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下であるか否かを判断する。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th2ではない、すなわち停止位置推定ずれ量E>閾値th2であることを判断すると(ステップS21で「NO」)、用紙先端突入前にレジストモーターM2の逆転によるバックラッシを吸収する制御(第2制御)を実行し(ステップS23)、ステップS6に移る。このステップS23の処理は、実施の形態1のステップS5と同じものである。
【0112】
一方、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS21で「YES」)、第3制御として、時間taを、搬送モーターM1の停止位置を1つ進めるのに要する時間td分(360°/kの回転角度相当分)、長くした時間に変更して(ステップS22)、ステップS6に移る。
ステップS6では、変更後の時間taの経過を判断し、変更後の時間taが経過すると、ステップS7で搬送モーターM1が停止、ホールド機能が実行される。
【0113】
このときの搬送モーターM1の停止は、本来の停止位置Bpから停止可能位置間角度γ分だけ進んだ位置Bp1(
図11)まで回転した時点で実行される。搬送モーターM1が位置Bp1で停止してからホールド機能の作用により、位置Bp1に近い側の停止可能角度位置まで回転した状態でロックされ、そのロックされた停止可能角度位置で停止した状態が維持される。
【0114】
このようにバックラッシを吸収する第1制御と、バックラッシを吸収しない第2制御に停止位置を1つ進める第3制御を組み合わせた制御とを切り替えることにより、このような切り替えを行わない構成に比べて、用紙1枚ごとに、用紙Sに形成されたループRのループ量のばらつきを抑制することができる。
なお、
図12では、ステップS22において時点taを、時間tdだけ長くした時間に変更するとしたが、時間taを変更する構成に限られない。
【0115】
図13は、時間taを変更しない構成の処理内容を示すフローチャートであり、
図12のフローチャートと異なる部分を中心に抜き出して示している。
図13に示すように停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS21で「YES」)、用紙Sの先端検出時から時間taが経過したか否かを判断する(ステップS221)。時間taが経過したときは、搬送モーターM1が用紙先端検出時から所定角度Qだけ回転して本来の停止位置Bpに到達したときに一致する。
【0116】
時間taが経過したことを判断すると(ステップS221で「YES」)、時間taの経過時から時間tdが経過したか否かを判断する(ステップS222)。時間tdは、上記のように搬送モーターM1の停止位置を1つ進めるのに要する時間であり、時間tdが経過したときは、搬送モーターM1が本来の停止位置Bpから停止可能位置間角度γだけ回転した位置Bp1に到達したときに一致する。
【0117】
時間tdが経過したことを判断すると(ステップS222で「YES」)、ステップS7に移り、搬送モーターM1が停止される。時間tdが経過した時点であるので、位置Bp1に到達したときに搬送モーターM1の停止が実行される。
なお、停止位置推定ずれ量E>閾値th2の場合(ステップS21で「NO」)、ステップS23を介して、ステップS6に移ることは、上記と同じである。
【0118】
このように構成すれば、時間taの経過の判断は、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2の場合にステップS221で実行され、停止位置推定ずれ量E>閾値th2の場合にステップS6で実行され、時間tdの経過の判断は、ステップS222だけで実行される。従って、時間taを変更する処理を行わずとも、時間taとtdを予め設定しておくことにより、バックラッシ吸収切替制御を実行することが可能になる。
【0119】
<実施の形態3>
本実施の形態3は、実施の形態1と2を組み合わせる、具体的には第1制御〜第3制御を2つの閾値との大小関係に基づき切り替える構成になっている。
図14は、本実施の形態3における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図である。
【0120】
同時に示すように2つの閾値を閾値th2とこれよりも大きい閾値th3としたとき、グラフ300は、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下の領域Z31のグラフ301と、閾値th2よりも大きく閾値th3以下の領域Z32のグラフ302と、閾値th3よりも大きい領域Z33のグラフ303とからなる。ここで、閾値th2は、−0.25であり、閾値th3は、+0.25である。
【0121】
グラフ301は、
図10のグラフ103における閾値th2以下の直線部分に相当し、グラフ302は、グラフ102の閾値th2〜th3間の直線部分に相当し、グラフ303は、グラフ101の閾値th3よりも大きい直線部分に相当する。
このことから、グラフ300は、(a)停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下の領域Z31では、バックラッシを吸収しない第2制御と停止位置を1つ進める第3制御を実行し、(b)閾値th2よりも大きく閾値th3以下の領域Z32では、バックラッシを吸収する第1制御を実行し、(c)閾値th3よりも大きい領域Z33では、バックラッシを吸収しない第2制御をそれぞれ切り替えて実行する場合のループずれ量Δと停止位置推定ずれ量Eの関係を示すものといえる。
【0122】
このような制御切り替えを行うことにより、ループずれ量Δは、−0.25≦Δ≦+0.25〔mm〕の範囲内に収まり、よりループ量の変動を抑制することができ、またループ量の変動をプラス側とマイナス側の一方に片寄らせずに均すことができる。
図15は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態1と異なる部分を抜き出して示している。具体的には、実施の形態1のステップS4〜S5に代えて、本実施の形態3では、ステップS31〜S34を実行しており、この点が実施の形態1と異なっている。
【0123】
ステップS31では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下であるか否かを判断する。停止位置推定ずれ量E≦閾値th2を判断すると(ステップS31で「YES」)、第3制御として、時間taを、搬送モーターM1の停止位置を1つ進めるのに要する時間td分、長くした時間に変更して(ステップS32)、ステップS6に移る。ステップS32は、上記のステップS22と同じ内容の処理である。
【0124】
停止位置推定ずれ量E>閾値th2を判断すると(ステップS31で「NO」)、停止位置推定ずれ量E≦閾値th3であるか否かを判断する(ステップS33)。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th3を判断すると(ステップS33で「YES」)、用紙先端突入前にレジストモーターM2の逆転によるバックラッシを吸収する第1制御を実行し(ステップS34)、ステップS6に移る。ステップS34は、上記ステップS5と同じ内容の処理である。一方、停止位置推定ずれ量E>閾値th3を判断すると(ステップS33で「NO」)、そのままステップS6に移る。この場合、バックラッシを吸収しない第2制御が実行される。
【0125】
このように実施の形態1と2を組み合わせる構成をとることにより、用紙Sのループ量の変動をより抑制することができる。
<実施の形態4>
上記実施の形態1〜3では、1枚の用紙Sの先端がレジストローラー34に突入する前にレジストモーターM2によりバックラッシを吸収する制御と吸収しない制御を切り替える構成例を説明したが、本実施の形態4では、この制御切り替えに加えて、レジストモーターM2に対して別の回転制御を施すことにより、ループずれ量Δを0にするとしており、この点で実施の形態1〜3と異なっている。
【0126】
図16は、本実施の形態4における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図である。
同図に示す一点鎖線のグラフ401は、バックラッシを吸収せず、かつ搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合のグラフ(
図10のグラフ103に相当)における閾値th2以下の直線部分に相当する。
【0127】
破線のグラフ402は、バックラッシを吸収しない場合のグラフ(
図10のグラフ101に相当)における閾値th2よりも大きい直線部分に相当する。なお、閾値th2は、ここでは0になっている。
停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下の領域Z41の場合に、バックラッシを吸収しない第2制御と停止位置を1つ進める第3制御を実行すれば、上記実施の形態2のようにループずれ量Δを、0≦Δ≦+0.5の範囲内に抑制することはできるが、抑制されたとはいえ、その範囲内で未だループずれ量Δが存在していることになる。このループずれ量Δは、プラスであり、ループ量が増える方向のずれ量になる。
【0128】
そこで、本実施の形態では、領域Z41に対しては、バックラッシを吸収しない第2制御と停止位置を1つ進める第3制御を実行しつつ、これに加えて、用紙Sの先端のレジストローラー34への突入後(用紙先端突入後)に、存在しているループずれ量Δ分に相当する分だけ、レジストモーターM2を回転させる第4制御(用紙送り込み動作)を実行して、ループRの形成後の用紙Sのそのループ量を減らすことにより、ループずれ量Δを0にするようにしている(矢印Y41)。
【0129】
例えば、停止位置推定ずれ量Eが−0.1〔mm〕であれば、グラフ401からループずれ量Δが+0.4〔mm〕になるので、レジストモーターM2の回転により、その0.4〔mm〕分、ループ形成後の用紙Sの先端部をレジストローラー34で搬送する用紙送り込み動作を行えば、+0.4〔mm〕分のずれ量をなくすことができるはずである。
この意味で、第4制御は、第2制御と第3制御を実行したならば、過剰になる(大きくなる)であろうループ量の相当分をレジストローラー34で搬送する制御といえる。
【0130】
この用紙送り込み動作の開始時点では、これよりも前の用紙先端突入時に、レジストローラー34に対して用紙Sから用紙搬送方向の力が作用することにより、ギア1A,1B間のバックラッシが吸収されている。従って、用紙突入後に、バックラッシによる隙間BLがない状態、すなわちバックラッシによるループ量のずれの要因をなくした状態で用紙送り込み動作を実行することができる。
【0131】
用紙Sの先端部をループずれ量Δの分、レジストローラー34で搬送するのに、レジストモーターM2の回転軸をどれだけ回転させる必要があるのかを、ループずれ量ΔとレジストモーターM2の回転量とを対応付けた情報として予め記憶しておくことにより、ループずれ量Δに相当する分だけ、用紙突入後に用紙Sの先端部をレジストローラー34で搬送することができる。これにより、ループずれ量Δが0になる。
【0132】
これと同じ制御を停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下の場合に適用することにより、閾値th2以下の全ての範囲においてループずれ量Δを0にすることが可能になる。
なお、用紙送り込み動作は、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δがプラスの場合にだけ効果を発揮するので、この意味で第4制御は、ループずれ量Δ>0の範囲に適用されるものといえる。
【0133】
一方、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2よりも大きい領域Z42の場合には、バックラッシを吸収しない第2制御を実行すれば、上記実施の形態1のようにループずれ量Δを、−0.5≦Δ≦0の範囲内に抑制することはできるが、領域Z41と同様にその範囲内でループずれ量Δが存在していることになる。
領域Z42は、搬送モーターM1の停止位置のずれによりループ量が0〜0.5〔mm〕増えるが、バックラッシを吸収しないことにより、バックラッシによる隙間BLが最大の場合にそのバックラッシにより生じるループずれ量の最大値BM(0.5〔mm〕)分、ループ量が減ることになり、その相殺により、ループずれ量Δがマイナス、すなわちループ量が減る方向のずれ量になっている。
【0134】
このようにループずれ量Δがマイナスになるのは、搬送モーターM1の停止位置のずれにより増えるループ量(0〜0.5〔mm〕)よりも、バックラッシの吸収により減るループ量(0.5〔mm〕)の方が大きいからであり、バックラッシの吸収により減るループ量が、搬送モーターM1の停止位置のずれにより増えるループ量と同じになれば、両者が相殺してループずれ量Δが0になるはずである。
【0135】
そこで、領域Z42に対しては、用紙Sのレジストローラー34への突入前にバックラッシを吸収するが、その吸収量BLaを、ループずれ量Δの絶対値に相当する量に制限する、すなわちバックラッシの吸収が終わった時点で停止位置推定ずれ量Eに相当する分だけバックラッシが残るようにバックラッシを一部だけ吸収する第5制御を実行する。
一部を吸収した後のバックラッシによる隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分と同じ大きさになり、隙間BLのバックラッシにより減るループ量と、停止位置推定ずれ量Eにより増えるループ量とが相殺されて、ループずれ量Δが0になる(矢印Y42)。
【0136】
具体的に、停止位置推定ずれ量E=+0.1〔mm〕、ループずれ量Δ=−0.4〔mm〕、最大値BM=0.5〔mm〕とすれば、バックラッシの吸収量BLaは、0.4〔mm〕になる。バックラッシの吸収前にバックラッシによる隙間BLが最大値BM(=0.5〔mm〕)存在していたとして、0.4〔mm〕だけ吸収すれば、その吸収後、隙間BLが0.1〔mm〕になる。この隙間BLの0.1〔mm〕がバックラッシにより減るループ量になるので、搬送モーターM1の停止位置ずれにより増える停止位置推定ずれ量E(=+0.1〔mm〕)と相殺され、ループずれ量Δが0になる。これと同じ制御を停止位置推定ずれ量Eが閾値th2よりも大きい場合に適用することにより、ループずれ量Δを0にすることができる。
【0137】
なお、この第5制御は、バックラッシを吸収可能な範囲に限られ、ループずれ量Δ<0の範囲、ここではバックラッシの最大値BMが0.5〔mm〕であることから、−0.5〔mm〕〜0〔mm〕までの範囲に適用される。
領域Z41に対する第2制御と第3制御と第4制御を組み合わせた制御と、領域Z42に対する第5制御を実行することにより、グラフ400に示すように停止位置推定ずれ量Eの値に関わらずループずれ量Δが0になり、用紙Sに所定の大きさのループを形成することができるようになる。
【0138】
図17は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収制御における搬送モーターM1とレジストモーターM2の動作のタイミングチャートを示す図であり、(a)が停止位置推定ずれ量E≦閾値th2の場合の例を、(b)が停止位置推定ずれ量E>閾値th2の場合の例を示している。
図17(a)に示すように停止位置推定ずれ量E≦閾値th2の場合、バックラッシを吸収しない第1制御と、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める第3制御を実行しつつ、用紙先端突入後に第4制御としての用紙送り込み動作が実行される。
【0139】
ここで、用紙先端突入後の用紙送り込み動作(第4制御)は、用紙突入時(時点t1)から所定時間(数十ミリ秒程度)経過後の時点t7に、ループずれ量Δに相当する時間だけレジストモーターM2を回転させることにより実行される。この用紙送り込み動作に要する時間は、例えば数十ミリ秒程度である。
また、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める処理(第3制御)は、時点t0〜t2間の時間taを、停止可能位置間角度γだけ回転するのに要する時間td(
図17(b))だけ長くした時間に変更することにより実行される。
【0140】
図17(b)に示すように停止位置推定ずれ量E>閾値th2の場合、第5制御が実行される。すなわち、バックラッシ吸収後の隙間BLが用紙搬送距離に換算して停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさになるようにループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収する制御が実行される(時点t5〜t6)。なお、
図17(b)では、第3制御が実行されないので、時間taが変更されることはない。
【0141】
図18は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容を示すフローチャートであり、実施の形態1と異なる部分を抜き出して示している。具体的には、実施の形態1のステップS4〜S5に代えて、本実施の形態4では、ステップS41〜S48を実行しており、この点が実施の形態1と異なっている。
ステップS3に続いて、ステップS41では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下であるか否かを判断する。
【0142】
停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「YES」)、時間taを、搬送モーターM1の停止位置を1つ進めるのに要する時間td分、長くした時間に変更して(ステップS42)、ステップS43に移る。
ステップS43では、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δを取得する。この取得は、例えば
図16のグラフ401で示されるような停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δとの対応関係を示す情報を予め記憶しておいて、その情報を参照することにより行うことができる。例えば、テーブル形式や計算式などを用いるとしても良い。
【0143】
用紙先端突入を判断すると(
図17の時点t1)(ステップS44で「YES」)、その直後(
図17の時点t7)にレジストモーターM2を回転して、停止位置推定ずれ量Eに対応するループずれ量Δに相当する分だけ、用紙Sの先端部をレジストローラー34で搬送する用紙送り込み動作を実行して(ステップS45)、ステップS6に移る。このステップS45の処理が第4制御に相当する。
【0144】
用紙先端突入時にギア1A,1B間のバックラッシが吸収されており、用紙先端突入後に、隙間BLが0の状態で用紙Sの先端部がレジストローラー34により搬送される。
この用紙送り込み動作によりループ量が減少するが、搬送モーターM1の停止時に停止位置が1つ進むことによりループ量が増加する分と相殺されて、搬送モーターM1のホールド機能が作用した後では、ループずれ量Δが0になる。
【0145】
一方、停止位置推定ずれ量E>閾値th2を判断すると(ステップS41で「NO」)、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δを取得する(ステップS46)。
そして、用紙先端突入前に、ループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収する制御を実行する(
図17の時点t5)(ステップS47)。このステップS47のバックラッシの一部だけを吸収する処理が第5制御に相当する。
【0146】
第5制御によるバックラッシの吸収により、ギア1Aと1B間の隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさに調整される。バックラッシ吸収後に用紙先端突入を判断すると(ステップS48で「YES」)、ステップS6に移る。
バックラッシ吸収後にギア1Aと1B間の隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさに調整されているので、用紙Sの先端がレジストローラー34に突入すると(ステップS48で「YES」)、その隙間BLだけレジストローラー34の回転によりループ量が減る。しかしながら、停止位置推定ずれ量Eがプラスであり、搬送モーターM1のホールド機能が作用すればループ量が停止位置推定ずれ量Eの分、増えることになるので、搬送モーターM1のホールド機能が作用した後には、隙間BLによる減少分と、ホールド機能による増加分との相殺により、ループずれ量Δが0になる。
【0147】
このように停止位置推定ずれ量Eと閾値th2との大小関係に応じて、第2制御と第3制御と第4制御を組み合わせる制御と、第5制御とを切り替えて実行することにより、用紙1枚ごとに、ループRのループ量のばらつきを0にすることが可能になる。
なお、上記では、第4制御(用紙送り込み動作)により、ループ形成後の用紙Sの先端部をループずれ量Δの分だけ搬送するとしたが、この搬送量は、最大値でも0.5〔mm〕にすぎず、二次転写位置351における転写位置のずれの公差は、通常、3〜5〔mm〕程度あるので、用紙送り込み動作を行っても二次転写位置のばらつきに至ることはなく、二次転写ずれによる画質低下が生じることはない。
【0148】
また、レジストモーターM2により、ループずれ量Δの相当分だけ用紙Sの先端部を搬送し、またバックラッシの一部だけを吸収する場合に、その搬送量と吸収量をよりきめ細かに制御するには、レジストモーターM2をできるだけ高分解能で停止位置を維持可能なホールド機能を有するステッピングモーターなどを用いることが望ましい。
例えば、停止位置推定ずれ量Eとバックラッシの最大値BMが共に0.5〔mm〕の場合、HB型のステッピングモーターを使用すれば、その分解能が2相駆動で1.8°、1−2相駆動で0.9°、W1−2相駆動で0.45°、2W駆動で0.225°、4W駆動で0.1125°になるため、DCブラシレスモーターの上記の20°に対して10倍〜170倍程度の精度を実現することができる。
【0149】
<実施の形態5>
上記実施の形態4では、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2の場合に第2、3、4制御を組み合わせた制御を、停止位置推定ずれ量E>閾値th2の場合に第5制御を実行するとしたが、本実施の形態5では、第1制御と第4制御を組み合わせた制御を別途、実行するとしており、この点で実施の形態4と異なっている。
【0150】
図19は、本実施の形態5における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図である。
同図に示すように停止位置推定ずれ量Eの範囲を、閾値th2以下の領域Z41、閾値th2よりも大きく閾値th3以下の領域Z51、閾値th3よりの大きい領域Z42の3つに分けた場合に、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を、領域Z41では、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合をグラフ401で示し、領域Z42では、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を進めない場合をグラフ402で示し、領域Z51では、バックラッシを吸収し、搬送モーターM1の停止位置を進めない場合をグラフ501で示している。
【0151】
領域Z41,Z42に対する制御は、実施の形態4と同じであり、領域Z41に対して第2、3、4制御を組み合わせた制御を実行し、領域Z42に対して第5制御を実行することにより、形成された用紙Sのループずれ量Δを0にすることができる。
一方、領域Z51に対しては、用紙先端突入前にバックラッシを吸収する第1制御と、搬送モーターM1の停止位置を進めることなく、さらに、用紙突入後にループずれ量Δの分だけ用紙先端部をレジストローラー34で搬送する第4制御を実行する。
【0152】
すなわち、用紙先端突入前にバックラッシを吸収するが、搬送モーターM1の停止位置を進めない場合、バックラッシの吸収によりバックラッシによりループ量が減ることはなくなるが、グラフ501で示すように、搬送モーターM1のホールド機能により停止位置推定ずれ量Eの分だけループ量が増えることになる。バックラッシが吸収されているので、ループずれ量Δは、バックラッシの影響を受けず、停止位置推定ずれ量E(>0)に等しくなり、停止位置推定ずれ量Eが大きくなるほど、ループずれ量Δも大きくなる。
【0153】
そこで、ホールド機能によりループ量が増える分だけ、用紙先端突入後に用紙Sの先端部をレジストローラー34により搬送してループ量を減らすことにより(矢印Y5)、ループ量の増加分と減少分を相殺させて、ループずれ量Δを0にしようとするものである。
これによりグラフ500で示すように、領域Z41,Z51,Z42に亘ってループずれ量Δを0にすることができる。
【0154】
なお、閾値th3は、閾値th2と停止位置推定ずれ量Eの最大値Emax(プラス)との間の値であれば良いが、例えばバックラッシの最大値BMの半分の値、ここでは0.25〔mm〕に設定することができる。
図20は、本実施の形態5に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、上記実施の形態4におけるバックラッシ吸収切替制御にステップS51〜S55の処理が追加された内容になっている。
【0155】
すなわち、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「YES」)、ステップS42に移る。ステップS42以降の処理は、実施の形態4と同じである。この場合、第2、3、4制御が実行される。
停止位置推定ずれ量E>閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「NO」)、停止位置推定ずれ量E≦閾値th3であるか否かを判断する(ステップS51)。
【0156】
停止位置推定ずれ量E>閾値th3であることを判断すると(ステップS51で「NO」)、ステップS46に移る。ステップS46以降の処理は、実施の形態4と同じである。この場合、第5制御が実行される。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th3であることを判断すると(ステップS51で「YES」)、第1制御と第4制御を組み合わせた制御を開始する。
【0157】
すなわち、用紙先端の突入前に、レジストモーターM2の逆転によるバックラッシを吸収する制御を実行する(ステップS52)。このバックラッシ吸収は、
図9のステップS5の処理と同じ方法で実行される(第1制御)。
そして、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δを取得し(ステップS53)、用紙先端の突入を判断すると(ステップS54で「YES」)、レジストモーターM2を回転して、停止位置推定ずれ量Eに対応するループずれ量Δに相当する分だけ、用紙Sの先端部をレジストローラー34で搬送する用紙送り込み動作(第4制御)を実行して(ステップS55)、ステップS6に移る。
【0158】
このように、実施の形態4に対して、第1制御と第4制御を組み合わせる制御の実行を加えることによっても、用紙1枚ごとに、用紙Sのループ量のばらつきを0にすることができるようになる。
<実施の形態6>
上記実施の形態1〜5では、停止位置推定ずれ量Eの絶対値の最大値Emとバックラッシの最大値BMとが用紙搬送距離の換算値で等しい構成例を説明したが、本実施の形態6では、Em<BMの関係になっており、この点で実施の形態1〜5と異なっている。
【0159】
図21は、本実施の形態6における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図であり、(a)は、バックラッシ吸収切替制御を実行しない場合の例を示しており、(b)は、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合の例を示している。
図21(a)の破線のグラフ601は、バックラッシを吸収しない場合のずれ量の関係を示しており、停止位置推定ずれ量Eからバックラッシの最大値BMを差し引いた値がループずれ量Δになることを示している。
【0160】
具体的には、停止位置推定ずれ量Eの絶対値の最大値Emが0.5〔mm〕であり、バックラッシの最大値BMが0.6〔mm〕の場合に、例えば停止位置推定ずれ量Eが+0.5〔mm〕のときループずれ量Δが−0.1〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが0のときループずれ量Δが−0.6〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが−0.5〔mm〕のときループずれ量Δが−1.1〔mm〕になっている。
【0161】
一点鎖線のグラフ602は、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合のずれ量の関係を示しており、グラフ601に対して、停止位置を1つ進める分、すなわち搬送モーターM1が停止可能位置間角度γだけ回転する場合の回転量を用紙搬送距離に換算した値、ここでは1〔mm〕だけ大きくなる関係を有する。
グラフ602では、例えば停止位置推定ずれ量Eが0のときループずれ量Δが+0.4〔mm〕になり、停止位置推定ずれ量Eが−0.5〔mm〕のときループずれ量Δが−0.1〔mm〕になっている。
【0162】
バックラッシを吸収しない場合、グラフ601からループずれ量Δが−1.1〔mm〕〜−0.1〔mm〕の範囲になり、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合、グラフ602からループずれ量Δが−0.1〔mm〕〜+0.9〔mm〕の範囲になり、いずれにしてもループずれ量Δが大きくなる。
これに対して、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合、
図21(b)に示すように停止位置推定ずれ量Eの範囲を、閾値th4以下の領域Z61、閾値th4よりも大きく閾値th2以下の領域Z62、閾値th2よりも大きい領域Z63の3つに分けた場合に、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を、領域Z61では、グラフ611で示し、領域Z62では、グラフ621で示し、領域Z63では、グラフ631で示している。ここで、閾値th4は、−0.4であり、閾値th2は、0である。
【0163】
なお、閾値th4は、停止位置推定ずれ量Eの最小値から最大値までの範囲のうち、第2制御と第3制御を実行したならばループ量が目標の大きさに一致することになるずれ量に相当する。
グラフ611は、グラフ602の閾値th4以下の直線部分に相当し、グラフ621は、グラフ602の閾値th4〜th2までの間の直線部分に相当し、グラフ631は、グラフ601の閾値th2よりも大きい直線部分に相当する。
【0164】
領域Z62に対しては、実施の形態4における領域Z41と同じ第2、3、4制御を実行し、領域Z63に対しては、実施の形態4における領域Z42と同じ第5制御を実行することにより、形成された用紙Sのループずれ量Δを0にすることができる。
一方、領域Z61に対しては、第5制御と第3制御を組み合わせた制御を実行する。
すなわち、用紙先端突入前に、搬送モーターM1のホールド機能による停止位置推定ずれ量Eに対応するループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収する第5制御を実行し(矢印Y6)、用紙先端突入後に搬送モーターM1を停止させるときに停止位置を1つ進める第3制御を行うものである。
【0165】
用紙先端突入前にバックラッシをループずれ量Δの絶対値に相当する分だけ吸収しておけば、バックラッシによる隙間BLが停止位置ずれ量Eに相当する大きさになる。例えば、停止位置推定ずれ量Eが−0.45〔mm〕であれば、これに対応するループずれ量Δが−0.05〔mm〕になり、バックラッシの最大値BMが0.6〔mm〕であるから、吸収後のバックラッシによる隙間BLは、0.55〔mm〕になる。
【0166】
用紙先端突入時に用紙Sのループ量が隙間BLに相当する分だけ減るが、用紙先端突入後に、搬送モーターM1の停止位置が1つ進められるので、その1つ進められる分、ここでは1〔mm〕だけ停止時にループ量が増え、さらに搬送モーターM1のホールド機能により停止位置推定ずれ量Eだけループ量が減ることになる。
上記の例では、用紙先端突入時に隙間BLの相当分である0.55〔mm〕だけループ量が減り、停止位置が1つ進められることにより、ループ量が1〔mm〕増え、ホールド機能により停止位置推定ずれ量Eの相当分である0.45〔mm〕だけループ量が減ることから、これらの増減を合計すると、ループずれ量Δが0になる。
【0167】
これによりグラフ600で示すように、Em<BMの関係であっても、領域Z61,Z62,Z63に亘ってループずれ量Δを0にすることができる。
なお、領域Z61に対する第5制御と第3制御を組み合わせた制御は、停止位置推定ずれ量E<0かつループずれ量Δ<0の範囲に適用することができる。
図22は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態4に係るバックラッシ吸収切替制御と異なる部分だけを示している。具体的には、実施の形態4のステップS41に代えて、ステップS61,S66が実行され、S62〜S65の処理が追加された内容になっている。
【0168】
ステップS3に続いて、ステップS61では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th4以下であるか否かを判断する。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th4であることを判断すると(ステップS61で「YES」)、時間taを時間td分、長くした時間に変更する(ステップS62)。これにより、搬送モーターM1の停止時における停止位置が1つ進んだ位置に設定される(第3制御)。
【0169】
続いて、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δを取得する(ステップS63)。ステップS62,S63の処理内容は、上記ステップS42,S43と同じである。
そして、用紙先端突入前に、ループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収する第5制御を実行する(ステップS64)。このバックラッシの吸収により、ギア1Aと1B間の隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさに調整される。ステップS64の処理内容は、上記ステップS47と同じである。
【0170】
バックラッシの吸収後に用紙先端突入を判断すると(ステップS65で「YES」)、ステップS6に移る。
用紙先端突入前のバックラッシの吸収により、ギア1Aと1B間の隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさに調整されているので、用紙先端突入時に、その隙間BLだけ用紙Sのループ量が減るが、用紙先端突入後の搬送モーターM1の停止位置が1つ進むことにより用紙Sのループ量が増え、その後の搬送モーターM1のホールド機能によりループ量が減って、この増減が相殺されることにより、ループずれ量Eが0になる。
【0171】
停止位置推定ずれ量E≦閾値th4ではなく(ステップS61で「NO」)、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS66で「YES」)、ステップS42に移り、第2、3、4制御を実行する。一方、停止位置推定ずれ量E>閾値th2であることを判断すると(ステップS66で「NO」)、ステップS46に移り、第5制御を実行する。
【0172】
このように停止位置推定ずれ量の最大値Em<バックラッシの最大値BMの関係がある場合に、閾値th4と閾値th2を用いて、第5制御と第3制御の組み合わせと、第2、第3、第4制御の組み合わせと、第5制御とを切り替えることにより、用紙1枚ごとに、用紙Sに形成されたループRのループ量のばらつきを0にすることが可能になる。
<実施の形態7>
上記実施の形態6では、停止位置推定ずれ量Eの絶対値の最大値Em<バックラッシの最大値BMの関係を有する構成例を説明したが、本実施の形態7では、Em>BMの関係になっており、この点で実施の形態6と異なっている。
【0173】
図23は、本実施の形態7における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図であり、(a)は、バックラッシ吸収切替制御を実行しない場合の例を示しており、(b)は、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合の例を示している。
図23(a)の破線のグラフ701は、バックラッシを吸収しない場合のずれ量の関係を示しており、一点鎖線のグラフ702は、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合のずれ量の関係を示している。
【0174】
ここでは、停止位置推定ずれ量Eの絶対値の最大値Emが0.5〔mm〕、バックラッシの最大値BMが0.4〔mm〕になっており、この差分の大きさから、グラフ701,702は、実施の形態6のグラフ601,602に対して、ループずれ量Δが0.2〔mm〕分だけ、上側にシフトした形状になっている。
バックラッシを吸収しない場合、グラフ701からループずれ量Δが−0.9〔mm〕〜+0.1〔mm〕の範囲になり、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合、グラフ702からループずれ量Δが+0.1〔mm〕〜+1.1〔mm〕の範囲になり、いずれにしてもループずれ量Δが大きくなる。
【0175】
これに対して、バックラッシ吸収切替制御を実行する場合、
図23(b)に示すように停止位置推定ずれ量Eの範囲を、閾値th2以下の領域Z71、閾値th2よりも大きく閾値th5以下の領域Z72、閾値th5よりも大きい領域Z73の3つに分けた場合に、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を、領域Z71では、グラフ711で示し、領域Z72では、グラフ721で示し、領域Z73では、グラフ731で示している。ここで、閾値th2は、0であり、閾値th5は、+0.4である。
【0176】
なお、閾値th5は、停止位置推定ずれ量Eの最小値から最大値までの範囲のうち、第2制御だけを実行したならばループ量が目標の大きさに一致することになるずれ量の指標値に相当する。
グラフ711は、グラフ702の閾値th2以下の直線部分に相当し、グラフ721は、グラフ701の閾値th2〜th5までの間の直線部分に相当し、グラフ731は、グラフ701の閾値th5よりも大きい直線部分に相当する。
【0177】
領域Z71に対しては、実施の形態4における領域Z41と同じ第2、第3、第4制御を実行し、領域Z72に対しては、実施の形態4における領域Z42と同じ第5制御を実行することにより、形成された用紙Sのループずれ量Δを0にすることができる。
一方、領域Z73に対しては、第2制御と第4制御を組み合わせた制御を実行する。
すなわち、用紙先端突入前に、バックラッシを吸収せず(第2制御)、用紙先端突入後に搬送モーターM1の停止位置を1つ進めることを行わず、さらに用紙先端突入後にループずれ量Δの分、レジストローラー34により用紙Sの先端部を搬送する用紙送り込み動作(第4制御)(矢印Y7)を行う。
【0178】
これにより、領域Z73においてもループずれ量Δを0にすることができる。なお、この組み合わせの制御は、ループずれ量Δ>0の範囲に適用することができる。
図24は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態4に係るバックラッシ吸収切替制御と異なる部分だけを示している。具体的には、実施の形態4のステップS41に代えて、ステップS71,S72が実行され、S73〜S75の処理が追加された内容になっている。
【0179】
ステップS3に続いて、ステップS71では、停止位置推定ずれ量Eが閾値th2以下であるか否かを判断する。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS71で「YES」)、ステップS42に移る。これにより、第2、第3、第4制御が実行される。
停止位置推定ずれ量E≦閾値th2ではなく(ステップS71で「NO」)、停止位置推定ずれ量E≦閾値th5であることを判断すると(ステップS72で「YES」)、ステップS46に移る。これにより、第5制御が実行される。
【0180】
停止位置推定ずれ量E>閾値th5であることを判断すると(ステップS72で「NO」)、停止位置推定ずれ量Eに対するループずれ量Δを取得する(ステップS73)。ステップS73の処理内容は、上記ステップS43と同じである。
用紙先端突入を判断すると(ステップS74で「YES」)、レジストモーターM2により、停止位置推定ずれ量Eに対応するループずれ量Δに相当する分だけ、用紙Sの先端部をレジストローラー34で搬送する用紙送り込み動作(第4制御)を実行して(ステップS75)、ステップS6に移る。ステップS75の処理内容は、上記ステップS45と同じである。
【0181】
用紙先端突入によりギア1A,1B間のバックラッシが吸収されており、用紙先端突入後に、隙間BLが0の状態で、用紙Sの先端部がループずれ量Δに相当する分、レジストローラー34により搬送される。
Em>BMの関係から、バックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める動作を行わない場合に、ループずれ量Δが0よりも大きくなる領域Z73に対して、ループずれ量Δの分、用紙先端突入後に用紙送り込み動作によりループ量を減らすことにより、ループずれ量Δを0にすることができる。
【0182】
このように停止位置推定ずれ量の最大値Em>バックラッシの最大値BMの関係がある場合に、2つの閾値th2と閾値th5を用いて、第2、第3、第4制御の組み合わせと、第5制御と、第2制御と第4制御の組み合わせとを切り替えることにより、用紙1枚ごとに、ループRのループ量のばらつきを0にすることが可能になる。
<実施の形態8>
上記実施の形態5では、
図19に示すように停止位置推定ずれ量Eを正の範囲で領域Z51と領域Z42に分けて、領域Z51に対し第1制御と第4制御を実行し、領域Z42に対し第5制御を実行するとしたが、本実施の形態8では、第1制御と第4制御を実行し、第5制御を実行しないとしており、この点で実施の形態5と異なっている。
【0183】
図25は、本実施の形態8における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図である。
同図に示すように停止位置推定ずれ量Eの範囲を、閾値th2(ここでは、0)以下の領域Z41、閾値th2よりも大きい領域Z81の2つに分けた場合に、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を、領域Z41ではバックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合をグラフ401で示し、領域Z81ではバックラッシを吸収し、搬送モーターM1の停止位置を進めない場合をグラフ801で示している。
【0184】
領域Z41に対する制御は、実施の形態5における第2、第3、第4制御の組み合わせと同じであり、領域Z81に対する制御は、実施の形態5における第1制御と第4制御の組み合わせと同じである。
このように停止位置推定ずれ量Eが正の範囲全体である領域Z81に対して、第5制御を実行せず、第1制御と第4制御の組み合わせだけを実行するのは、次の理由による。
【0185】
すなわち、第5制御は、レジストモーターM2が停止している状態でギア1Aと1B間のバックラッシが最大値BMになっていることを前提に、停止位置推定ずれ量Eの相当分だけバックラッシによる隙間BLが残るように、バックラッシを吸収する制御である。
このバックラッシが最大値BMになっていることの前提は、駆動しているレジストモーターM2が停止したときに、
図7(a)に示すように駆動側のギア1Aの回転が停止した時点では、ギア1Aの1つの歯の正転方向下流側の歯面1Azと、被駆動側のギア1Bの1つの歯の搬送方向上流側の歯面1Bzとが当たった状態になっていることが多く、この状態でバックラッシが最大値BMになることによる。
【0186】
ところが、駆動側のギア1Aが停止した時点でレジストローラー34の慣性力により被駆動側のギア1Bがわずかに回転すれば、その回転分だけバックラッシが吸収されたようになり、最大値BMよりも小さくなっていることがあり得る。
レジストローラー34の慣性力が常時一定であるとは限らないことから、レジストローラー34の停止の度にバックラッシが最大値BMになるときもあれば、最大値BMよりも小さくなることもあり、このようになると、上記の前提が崩れて、第5制御では、ループずれ量Δを0にすることができなくおそれが生じる。
【0187】
このようにバックラッシが最大値BMにならない蓋然性がある程度、存在する場合、バックラッシによる隙間BLを停止位置推定ずれ量Eの相当分だけ残す制御を行うよりも、バックラッシを完全に吸収して隙間BLを0にした方が、ギア1Aと1Bの歯の噛み合わせの状態をレジストローラー34の慣性力に関わりなく一定にすることができる。
そこで、本実施の形態8では、領域Z81に対しては、用紙先端突入前にバックラッシを吸収し(第1制御)、そのバックラッシの吸収により増える分のループずれ量Δを、用紙先端突入後に用紙Sの先端部をレジストローラー34の搬送により減らす用紙送り込み(第4制御)を実行して(矢印Y8)、ループずれ量Δを0にするようにしている。
【0188】
これにより、グラフ800で示すように、領域Z41だけでなく、領域Z81において、レジストローラー34の停止の度にバックラッシによる隙間BLの大きさがばらつくことがあっても、ループずれ量Δを安定的に0にすることができる。
図26は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態4におけるバックラッシ吸収切替制御のステップS46〜S48に代えて、ステップS52〜S55が実行される内容になっている。
【0189】
すなわち、停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「YES」)、ステップS42に移る。ステップS42以降において、第2、第3、第4制御が実行される。
停止位置推定ずれ量E>閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「NO」)、ステップS52に移り、ステップS52〜S55の処理を実行して、ステップS6に移る。ステップS52〜S55は、実施の形態5のステップS52〜S55と同じものであり、ステップS52以降において、第1制御と第4制御が実行される。
【0190】
このような制御の組み合わせの構成をとることにより、用紙1枚ごとに、用紙Sのループ量のばらつきを0にすることができるようになる。
<実施の形態9>
上記実施の形態8では、停止位置推定ずれ量Eが正の範囲において第1と第4制御を実行するとしたが、本実施の形態9では、これに代えて第6制御を実行するとしており、この点で実施の形態8と異なっている。
【0191】
図27は、本実施の形態9における停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を説明するための図である。
同図に示すように停止位置推定ずれ量Eの範囲を、閾値th2(ここでは、0)以下の領域Z41、閾値th2よりも大きい領域Z91の2つに分けた場合に、停止位置推定ずれ量Eとループずれ量Δの関係を、領域Z41ではバックラッシを吸収せず、搬送モーターM1の停止位置を1つ進める場合をグラフ401で示し、領域Z91ではバックラッシによる最大値BMのずれ量が形成されている場合をグラフ901で示している。
【0192】
領域Z41に対しては、第2、第3、第4制御が実行される。
一方、領域Z91に対しては、第6制御が実行される。
第6制御は、用紙Sの先端がレジストローラー34に突入する前(用紙先端突入前)に、バックラッシを最大値BMになるように形成してから(矢印Y9)、バックラッシによる隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさになるようにループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収する(矢印Y91)制御である。
【0193】
このような第6制御を実行するのは、次の理由による。
すなわち、上記の実施の形態8で説明したように、レジストローラー34が停止した時点でバックラッシによるずれ量が常時、最大値BMになっているとは限られないことから、実施の形態8では、用紙先端突入前にバックラッシを完全に吸収し(第1制御)、用紙先端突入後に用紙Sの先端部をループずれ量Δの分だけレジストローラー34で搬送することにより(第4制御)、ループずれ量Δを0にするようにした。
【0194】
これに対し、本実施の形態9では、バックラッシによるずれ量が最大値BMになっていない蓋然性があるのであれば、第6制御として、まず(a)用紙先端突入前にバックラッシによる隙間BLを最大値BMまで拡大、具体的にはレジストモーターM2を一定時間、例えばギア1Aの歯の1ピッチに相当する回転角だけギア1Aが回転するのに要する時間だけ正転させた後、停止させる(矢印Y9)。1ピッチ程度の回転角の正転では、レジストローラー34の回転に至ることがないので、レジストローラー34の慣性力によりバックラッシによる隙間BLの大きさがばらつくことがなく、バックラッシによるずれ量を最大値BMにすることができる。
【0195】
そして、用紙先端突入前に、(b)バックラッシによる隙間BLが停止位置推定ずれ量Eの相当分の大きさになるようにループずれ量Δの絶対値に相当する分だけバックラッシを吸収するものである(矢印Y91)。このバックラッシの吸収は、第5制御と同じである。このことから第6制御は、バックラッシによるずれ量が最大値BMまで拡大するようにバックラッシを生成後、第5制御を実行する制御といえる。
【0196】
これにより、グラフ900で示すように、領域Z41だけでなく、領域Z91において、ループずれ量Δを安定的に0にすることができる。
図28は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態4におけるバックラッシ吸収切替制御のステップS41とS46の間に、ステップS91が実行される内容になっている。
【0197】
停止位置推定ずれ量E≦閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「YES」)、ステップS42に移る。ステップS42以降において、第2、第3、第4制御が実行される。
停止位置推定ずれ量E>閾値th2であることを判断すると(ステップS41で「NO」)、第6制御として、レジストモーターM2を正転させてバックラッシによるずれ量が最大値BMになるようにバックラッシを生成し(ステップS91)、ステップS46に移る。ステップS46以降では、第5制御が実行される。
【0198】
このように、第1制御と第4制御の組み合わせに代えて、第6制御の実行によっても、用紙1枚ごとに、用紙Sのループ量のばらつきを0にすることができるようになる。
上記の実施の形態1〜9において実行される制御をまとめると、次のようになる。
実施の形態1では、停止位置推定ずれ量E≦閾値th1の場合に第1制御が実行され、閾値th1<停止位置推定ずれ量Eの場合に第2制御が実行される。
【0199】
実施の形態2では、E≦閾値th2の場合に第2、第3制御が実行され、閾値th2<Eの場合に第1制御が実行される。
実施の形態3では、E≦閾値th2の場合に第2、第3制御が実行され、閾値th2<E≦閾値th3の場合に第1制御が実行され、閾値th3<Eの場合に第2制御が実行される。
【0200】
実施の形態4では、E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<Eの場合に第5制御が実行される。ここで、第5制御は、第1制御を、バックラッシの吸収量を制限(バックラッシを一部だけ吸収)して実行する制御である。
実施の形態5では、E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<E≦閾値th3の場合に第1、第4制御が実行され、閾値th3<Eの場合に第5制御が実行される。
【0201】
実施の形態6(Em<BM)では、E≦閾値th4の場合に第5、第3制御が実行され、閾値th4<E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<Eの場合に第5制御が実行される。
実施の形態7(Em>BM)では、E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<E≦閾値th5の場合に第5制御が実行され、閾値th5<Eの場合に第2、第4制御が実行される。
【0202】
実施の形態8では、E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<Eの場合に第1、第4制御が実行される。
実施の形態9では、E≦閾値th2の場合に第2、第3、第4制御が実行され、閾値th2<Eの場合に第6制御が実行される。
<実施の形態10>
上記実施の形態では、搬送モーターM1のホールド機能によるホールド位置が、隣り合う2つの停止可能角度位置BnとB(n+1)のうち、本来の停止位置Bpに近い方の角度位置になるとみなして、停止位置推定ずれ量Eを求める方法を説明した。
【0203】
ところが、例えば
図29に示すように本来の停止位置Bpが丁度、2つの停止可能角度位置B10とB11との中間位置Bcに位置するような場合、本来の停止位置Bpに対する位置B10とB11との角度差θが同じになるので、厳密に見れば近い方が存在せず、ホールド位置がB10になったりB11になったりして、ばらつくことが起こり得る。
仮に、近い方の停止可能角度位置をB11とみなして停止位置推定ずれ量Eを求めても、ホールド位置がB10になったならば、停止位置推定ずれ量Eが推定値ではプラスのところ、実際のずれ量がマイナスになることになる。これでは、上記の第1制御などを実行しても所期の効果を達し得ない場合が生じ、用紙搬送性の低下に繋がるおそれもある。
【0204】
そこで、本実施の形態10では、本来の停止位置Bpが、隣り合う2つの停止可能角度位置BnとB(n+1)の間に存する中間位置Bcを含む所定の範囲Δp(角度位置Pa〜Pbの範囲)内にある場合に限り、本来の停止位置Bpを、所定の角度(θ/2)分だけ位置B(n+1)側にシフトした(回転方向に進んだ)位置Bpaに変更して、ホールド位置が確実に位置B(n+1)になるようにして、ホールド位置がばらつくことを防止する制御を行っている。
【0205】
なお、この制御では、所定の大きさのループ量を得るための本来の停止位置Bp自体を、ホールド前に(θ/2)分だけ大きな値に変更することになり、所定の大きさのループ量を確保できなくなるように思われないではないが、本来の停止位置Bpのままにして停止後、ホールド機能が作用して位置B11まで進んで停止すれば、結果的に同じになることから、所定の大きさのループを形成できなくなることはない。
【0206】
図30は、停止位置Bpの変更前後の関係を示す図であり、停止可能角度位置B10の例を示しており、変更前の位置は、隣接する停止可能角度位置間の角度γを10等分したときの各角度位置を回転方向に1ずつ増えていく数値で表している。
例えば、角度位置〔10〕が停止可能角度位置B10、角度位置〔20〕が停止可能角度位置B11、角度位置〔15〕が丁度、停止可能角度位置B10とB11の中間位置Bcに相当し、変更前の位置〔14〕〜〔16〕が所定の範囲Δp(
図29)に相当する。
【0207】
本来の停止位置Bpが所定の範囲Δp内である場合には、停止位置Bpが数値の5(
図29の角度θ=γ/2に相当)だけ加算された位置に変更される。例えば、本来の停止位置Bpが〔15〕の場合、変更後の位置Bpa(
図29)は、〔20〕になり、この位置〔20〕は、停止可能角度位置B11と同じ位置になる。
停止位置Bpが変更されると、その変更後の停止位置まで搬送モーターM1の回転軸Maの回転が行われ、変更後の停止位置で停止した後にホールド機能が作用する。上記の例の場合、停止可能角度位置B11まで回転して停止するので、この停止可能角度位置B11が最も近い停止可能角度位置になり、停止可能角度位置B11がホールド位置になる。
【0208】
このことは、本来の停止位置Bpが〔14〕,〔16〕の場合も同様であり、
図30の例であれば、本来の停止位置Bpが角度位置〔13〕までの場合には、ホールド位置が停止可能角度位置B10になり、角度位置〔14〕〜〔23〕までの場合には、ホールド位置が停止可能角度位置B11になるはずである。これにより、中間位置Bc付近のためにホールド位置がばらつくことを防止することができる。
【0209】
図31は、本実施の形態に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、実施の形態1に係るバックラッシ吸収切替制御と異なる部分だけを示している。具体的には、実施の形態1のステップS3とS4の間に、ステップS101,S102が実行される内容になっている。
すなわち、本来の停止位置Bpが所定の範囲Δp内に入っているか否かを判断する(ステップS101)。この判断は、本来の停止位置Bpの停止可能角度位置B0〜B17に対する位置と所定の範囲Δpとの位置関係を、上記の(式2)などにより求めることにより実行することができる。
【0210】
本来の停止位置Bpが所定の範囲Δp内に入っていることを判断すると(ステップS101で「YES」)、時間taを、搬送モーターM1が〔(360/3P)/2〕の角度だけ回転するのに要する分だけ長くした時間に変更して(ステップS102)、ステップS4に移る。〔(360/3P)/2〕は、上記の角度θ(=γ/2)に相当する。この時間taの変更は、
図30で示す角度位置で本来の停止位置Bpが数値の5だけ回転が進んだ位置に変更されることと同じことを意味する。
【0211】
ステップS102で時間taが変更されると、その変更後の時間taが、ステップS4以下の処理、具体的にはステップS6(
図9)の処理に適用される。また、実施の形態2でもステップS22(
図12)の時間taに、ステップS102で変更された時間taが適用される。すなわち、ステップS102で変更された時間taが、その後のステップS22でさらに変更されることになる。
【0212】
一方、停止位置Bpが所定の範囲Δp内ではないことを判断すると(ステップS101で「NO」)、ステップS102をスキップして(実行せずに)、ステップS4に移る。
このように本来の停止位置Bpが停止可能角度位置BnとB(n+1)との中間位置Bcを含む所定の範囲Δp内にあるときに限り、停止位置Bpを、B(n+1)側に進んだ位置に変更することにより、ホールド位置がばらつくことを防止することができる。
【0213】
なお、上記では所定の範囲Δpを、中間位置Bcを含む3つの角度位置〔14〕〜〔16〕の範囲としたが、これに限られない。例えば、中間位置Bcだけとしても良い。また、本来の停止位置Bpを数値の5(γ°/2に相当)だけ加算した位置に変更するとしたが、この加算する数値が5に限られることもなく、適した値が予め設定される。
例えば、0よりも大きく(γ/2)以下の範囲の角度などとすることができる。隣り合う2つの停止可能角度位置BnとB(n+1)間の角度差γよりも小さい角度としても、一定の効果は得られる。
【0214】
また、上記の停止位置Bpの変更制御では、停止位置Bpを、停止可能角度位置B(n+1)側にシフトするように変更するとしたが、これに限られない。例えば、停止可能角度位置Bn側にシフトする(回転方向とは逆方向に戻る)ように停止位置Bpを変更する制御をとることもできる。
搬送モーターM1の回転軸Maの慣性力が大きければ、本来の停止位置Bpからわずかに行き過ぎて(進んで)停止する場合もあり得る。
【0215】
この場合、停止位置Bpの変更を行わなければ、例えば本来の停止位置Bpが
図30に示す角度位置〔14〕のとき、行き過ぎにより〔15〕で停止することもあり得ることになる。角度位置が〔14〕であれば、近い方の停止可能角度位置B10がホールド位置になり、停止位置推定ずれ量Eがマイナスの値で求められるはずである。
ところが、仮に、角度位置の〔15〕まで進んで停止してしまうと、ホールド位置が停止可能角度位置B11になり、推定された停止位置推定ずれ量Eがマイナスであるのに対し、実際の停止位置推定ずれ量Eがプラスになって大きく相違することになってしまう。
【0216】
そこで、搬送モーターM1の回転軸Maが行き過ぎて停止することが生じるおそれがあるような構成では、停止位置Bpを、停止可能角度位置Bn側にシフトするように変更する制御をとることが望ましい。
具体的には、上記の
図30において、中間位置Bcよりも回転方向上流側に所定の領域Δqをとり、これを例えば角度位置〔13〕、〔14〕とすれば、本来の停止位置Bpが所定の領域Δq内に入る場合に、本来の停止位置Bpを、数値の4だけ減算した位置に変更する構成としても良い。上記の例において、本来の停止位置Bpが〔14〕の場合、変更後の位置Bpaは、〔10〕になり、この角度位置〔10〕は、停止可能角度位置B10と同じ位置になる。
【0217】
図32は、本実施の形態10の変形例に係るバックラッシ吸収切替制御の処理内容の一部を示すフローチャートであり、上記のステップS101,102の代わりにS103,104が実行される内容になっている。
すなわち、本来の停止位置Bpが所定の範囲Δq内に入っていることを判断すると(ステップS103で「YES」)、時間taを、搬送モーターM1が〔(360/3P)/2〕の角度だけ回転するのに要する分だけ短くした時間に変更して(ステップS104)、ステップS4に移る。
【0218】
一方、停止位置Bpが所定の範囲Δq内ではないことを判断すると(ステップS103で「NO」)、ステップS104をスキップして、ステップS4に移る。
このように停止位置Bpを、Bn側に戻るように変更する制御を行うことでも、ホールド位置がばらつくことを防止することができる。
本発明は、画像形成装置や画像読取装置を含む画像処理装置に限られず、モーターを制御する制御方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。さらに、本発明に係るプログラムは、例えばフレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROMなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0219】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、搬送モーターM1をDCブラシレスモーター、レジストモーターM2をステッピングモーターとする構成例を説明したが、使用するモーターの種類はこれに限られない。例えば、搬送モーターM1とレジストモーターM2の両方をDCブラシレスモーターとする構成をとることもできる。
【0220】
また、上記実施の形態では、搬送制御部60に、レジストモーター制御部61と搬送モーター制御部62が設けられる構成例を説明したが、これに限られず、例えば搬送モーター制御部62が搬送モーターM1に内蔵される構成であっても良い。このようにすれば、搬送モーターM1から出力されるエンコーダーパルスやホールパルスを搬送制御部60に伝送するための配線が不要になり、装置構成を簡略化することができる。
【0221】
さらに、レジストモーター制御部61と搬送モーター制御部62は、CPU(Central Processing Unit)に内蔵する構成であっても良いし、CPUとは別のASIC(Application Specific Integrated Circuit)に内蔵される構成であっても良い。
(2)上記実施の形態では、搬送モーターM1における本来の停止位置Bpとホールド機能による停止位置(ホールド位置)との差により生じるループずれ量を指標する指標値として、停止位置推定ずれ量Eを用紙搬送距離に換算したものを用いる構成例を説明したが、これに限られることはない。例えば、回転角度などの他の単位を用いて、その単位でホールド機能によるずれ量やバックラッシによるずれ量を統一するとしても良い。
【0222】
また、
図8などにおいてループずれ量Δと停止位置推定ずれ量Eを、ループRの目標の大きさを基準に、この基準(0)に対するずれ量をプラスとマイナスの範囲で表すとしたが、これに限られることもない。
例えば、ずれ量の単位に代えて、ループ量そのものの単位を用いるとしても良い。具体的には、目標の大きさを例えば10としたとき、ループ量が目標よりも小さくなるにつれて数値が9、8・・というように小さくなり、大きくなるにつれて数値が11、12・・というように大きくなるようにした場合に、ずれ量をその数値(ループ量)で規定する方法をとることができる。この方法を用いれば、マイナスの範囲をとる必要がなくなる。
【0223】
また、搬送モーターM1を3相6極のものを用いるとしたが、これに限られない。なお、ホールド機能による停止位置のずれは、相数、極数の多いほうが少なくなることが一般的であるから、相数、極数の多いモーターを用いることが望ましい。さらに、所定角度Q、バックラッシの最大値BM、停止位置推定ずれ量Eの最大値、閾値th1〜th5などの各値が上記に限られることもなく、装置構成に応じて適した値が予め設定される。
【0224】
(3)上記実施の形態では、レジストモーターM2の回転駆動力をレジストローラー34に伝達する駆動伝達部2に設けられるギア1Aを駆動側伝達部材、ギア1Bを被駆動側伝達部材とした場合に、ギア1A,1B間のバックラッシにより、ループ量が変動する場合がある例を説明したが、ループ量の変動は、ギアのバックラッシの存在に限られるものではない。レジストモーターM2の回転駆動力をレジストローラー34に伝達する駆動伝達経路に回転方向の遊びを有する部分があれば、その遊びの分、用紙先端突入時にレジストローラー34の回転によりループ量の変動が生じ易くなる。
【0225】
このことからギア駆動に限られず、レジストモーターM2の回転駆動力を、駆動側伝達部材から当該伝達部材との間に回転方向の遊びを有する被駆動側伝達部材を介してレジストローラー34に伝達する駆動伝達機構一般に適用することができる。なお、搬送モーターM1と搬送ローラー33を駆動伝達部1を介して接続するとしたが、これに限られず、例えばバックラッシを有する駆動伝達部1を介さずに搬送モーターM1と搬送ローラー33を直結する構成をとることもできる。
【0226】
(4)上記実施の形態6と7では、停止位置推定ずれ量Eの絶対値の最大値Em(=Emaxに相当)と、バックラッシの最大値BMとが異なる構成であることから、Em=BMを前提にしている実施の形態4とは切替制御を異ならせるとしたが、これに限られることはない。EmとBMが異なる構成に対しても実施の形態4に係る切替制御を適用するとしても良い。この場合、ループ量のばらつきを0にすることができない領域、例えば
図21(b)の領域Z61が存在することになるが、切替制御を実行しない従来相当に比べるとループずれ量のばらつきを抑制することができる。このことは、Em=BMである構成に対して実施の形態6,7に係る切替制御を適用する場合も同じである。
【0227】
(5)上記実施の形態では、画像形成装置の一例としてのタンデム型のカラープリンター100に設けられる給紙カセット31から繰り出された用紙Sにループを形成する構成例を説明したが、これに限られない。画像形成装置としては、例えば複写機やファクシミリ装置、複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)等などに適用できる。
また、タンデム型のカラープリンターの場合、感光体ドラム11と中間転写ベルト21を像担持体、二次転写位置351を像担持体の転写位置と捉えて、この転写位置に画像形成のタイミングに合わせて用紙Sをレジストローラー34により搬送する構成となるが、例えば、1つの感光体ドラム上に形成された画像を直接、用紙に転写するモノクロの画像形成装置の場合、感光体ドラムが像担持体、感光体ドラムの転写位置を像担持体の転写位置と捉えることもできる。
【0228】
(6)さらに、画像形成装置に限られず、スキャナーなどの画像読取装置にセットされた原稿の読取位置への搬送に適用することもできる。
具体的には、原稿トレイにセットされた原稿を1枚ずつ搬送路に繰り出して、繰り出された原稿を一対の第1ローラー(搬送ローラー33に相当)と、これよりも搬送方向下流側の一対の第2ローラー(レジストローラー34に相当)により、原稿の先端部にループを形成した後、その原稿を画像読取のタイミングに合わせて読取位置に搬送し、搬送される原稿が読取位置を通過する際にその原稿の画像を光学的に読み取る画像読取装置において、第1ローラーを回転駆動する第1モーター(搬送モーターM1に相当)と第2ローラーを回転駆動する第2モーター(レジストモーターM2に相当)をそれぞれ制御する場合に、上記と同様の制御方法をとることができる。
【0229】
すなわち、画像処理の対象となる用紙や原稿などの1枚のシートを、一対の第1ローラーと、当該第1ローラーよりもシート搬送方向下流側かつ当該第1ローラーとの間隔が当該シートの搬送方向長さよりも短い位置に配される一対の第2ローラーとで搬送する構成であり、一対の第1ローラーを回転させる第1モーターと、一対の第2ローラーを回転させる第2モーターとを回転制御する画像形成装置や画像読取装置などを含む画像処理装置一般に適用可能である。
【0230】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。