(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケース内に内部回路が収容されていると共に、前記ケースの下面に開口形成されて前記内部回路に接続される電気部品が装着される下方部品装着部を備えた電気接続箱において、
前記下方部品装着部の周壁から外周側に離隔して、前記下方部品装着部の前記周壁を囲んで突設された防水壁を備え、該防水壁が斜め外方に傾斜して下方に突出しており、
前記防水壁の突出端部が、前記下方部品装着部の前記周壁の最下部を超えて下方には突出しないように構成されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系においては、ヒューズやリレー等の電気部品をスペース効率良く配設した電気接続箱が適所に用いられており、バッテリーから各種電装品への給配電や制御が効率的に行われるようになっている。このような電気接続箱は、例えば、特開2009−290941号公報(特許文献1)に記載のように、ケース内にプリント基板等から構成された内部回路が収容されており、該内部回路に接続されるコネクタやヒューズ等の電気部品が装着される部品装着部がケース表面に開口形成された構造とされている。
【0003】
このような電気接続箱においては、近年の小型化や高密度化等の要求に応えるべく、ケースの上面に開口する上方部品装着部のみならず、ケースの下面に開口する下方部品装着部をも開口形成することが行われている。特に、ケースの下方に開口する下方部品装着部においては、ケースの表面に被着して下方に流下される水が、ケース下端縁から下方部品装着部の開口部に至り、当該水が下方部品装着部と装着された電気部品との隙間から毛細管現象によってケース内に浸入するおそれがある。それにより、ケースの内部回路の短絡や腐食の問題が発生することが懸念されている。
【0004】
そこで、特許文献1の
図12に例示されているように、下方部品装着部の周囲に、ケース等で構成される防水壁を下方部品装着部の下端縁よりも下方に突出して形成し、ケースの下方に流下された水が下方部品装着部の開口部に到達することを阻止する構造が提案されている。
【0005】
しかしながら、下方部品装着部の周囲に、下方部品装着部の下端縁を超えて下方に突出する防水壁が設けられると、下方部品装着部への電気部品の着脱作業がやり難くなるという問題があった。特に、下方部品装着部と略平行な状態で防水壁が下方に突出していることから、少しの位置ずれで電気部品が防水壁と干渉してしまい、電気部品の端子部分等を傷つけるおそれもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、下方部品装着部を備えた電気接続箱において、下方部品装着部への電気部品の着脱作業性の向上を図ると共に、下方部品装着部への水入りを有利に防止することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、ケース内に内部回路が収容されていると共に、前記ケースの下面に開口形成されて前記内部回路に接続される電気部品が装着される下方部品装着部を備えた電気接続箱において、前記下方部品装着部の周壁から外周側に離隔して、前記下方部品装着部の前記周壁を囲んで突設された防水壁を備え、該防水壁が斜め外方に傾斜して下方に突出して
おり、前記防水壁の突出端部が、前記下方部品装着部の前記周壁の最下部を超えて下方には突出しないように構成されていることを、特徴とする。
【0009】
本発明においては、下方部品装着部の周囲に突設された防水壁が、斜め外方に傾斜しつつ下方に突出して形成されていることから、下方部品装着部の開口端部(下端縁)と防水壁の突出端部との離隔距離を大きく確保することができる。それ故、下方部品装着部の周囲に大きなスペースが確保されて、下方部品装着部への電気部品の着脱作業が容易となって作業性の向上が図られる。しかも、下方部品装着部の開口端部から防水壁の突出端部を大きく離隔させることができることから、ケース表面を流下して防水壁の突出端部に至った水を、下方部品装着部の開口端部から離れた位置で下方に向かってケースから離脱させることができる。これにより、下方部品装着部への水入りを有利に阻止することができるのである。
【0010】
なお、防水壁は、下方部品装着部の周囲において、ケースの下面から突出する壁部を別途形成することにより構成してもよいし、特許文献1に記載されているように、ケースの側壁を延出させて構成してもよい。また、防水壁は下方部品装着部の全周に亘って連続して形成されていることが望ましいが、他部材との関係でケース表面を流下される水が通過する可能性が無い若しくは低い等の周方向の任意の箇所において、分断されていてもよい。
【0011】
また、防水壁がケースの下面から突出する壁部により構成される場合には、防水壁の外周面とケースの下面の為す角を鋭角にすることができる。かかる鋭角部分の角度がある程度小さい場合には、ケース表面を流下して防水壁の基端部にまで至った水を当該鋭角部分の隙間に水の表面張力を利用してトラップすることもできる。それ故、鋭角部分を安全な排水領域に繋いで、トラップした水を排水領域まで導くことも可能となるのである。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記防水壁の外周面と突出端面との為す角が鋭角とされているものである。
【0013】
本態様によれば、防水壁の外周側端部が鋭角とされており、防水壁の突出端面が外周側から内周側に向かって斜め上方に傾斜する傾斜面とされている。これにより、防水壁の外周面を伝って防水壁の突出端面に至った水が、鋭角とされた外周側端部で下方に流下され易くなって、かかる水が突出端面を伝って防水壁の内周面まで回り込むことを有利に阻止することができる。これにより、下方部品装着部への水入りを一層有利に防止できるのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、下方部品装着部の周囲から斜め外方に傾斜して下方に突出する防水壁が設けられていることから、下方部品装着部の周囲に大きなスペースが確保されて、下方部品装着部への電気部品の着脱作業性の向上が図られる。しかも、ケース表面を流下して防水壁の突出端部に至った水を、下方部品装着部の開口端部から離れた位置で下方に向かってケースから離脱させることができる。これにより、下方部品装着部への水入りを有利に阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
先ず、
図1に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、本体部12とカバー14を備えており、本体部12にカバー14が外挿されることにより、本体部12がカバー14に収容されて組み付けられるようになっている。電気接続箱10は、例えば、リレーボックス等の他の電気接続箱に収容されて、自動車等の車両に搭載される。
【0018】
図2〜
図3に、本体部12を示す。本体部12は、全体として長手矩形のブロック形状とされている。本体部12は、合成樹脂から形成された枠体16に内部回路としてのプリント基板18が組み付けられ収容された構造とされている。なお、内部回路はプリント基板18に限定されることはなく、バスバー等でも良い。本体部12は、
図2中の上下方向を鉛直上下方向として車両に搭載されるようになっている。以下の説明において、上下方向とは、
図2中の上下方向を言うものとする。なお、上記の説明から明らかなように、本実施形態では、電気接続箱10の外殻を構成するケースが、カバー14と枠体16により構成されているのである。
【0019】
枠体16は、中央に中央孔20が貫設された略長手矩形の枠形状とされており、4つの側壁22a,22b,22c,22dを有している。
図2に示すように、枠体16の上面における長手方向の略半分には、後述するヒューズ端子38が挿通される図示しない複数のヒューズ端子挿通孔が形成されている。また、枠体16の下側部分には、後述するコネクタ端子40が挿通される複数のコネクタ装着部24が、枠体16の長手方向に並んで形成されている。これら複数のコネクタ装着部24は、ケースを構成する枠体16の下面25に開口形成されて、全体として下方部品装着部26を構成している。
【0020】
また、本体部12を構成する枠体16の側壁22a,22b,22c,22dの下端部分には、それぞれフランジ部28が形成されている。
図1〜
図3から明らかなように、フランジ部28は、枠体16の側壁22a,22b,22c,22dから外方に向かって鍔状に突出すると共に枠体16の略全周に亘って連続して形成されている。
【0021】
また、枠体16の側壁22b(
図2参照)と側壁22d(
図3参照)には、フランジ部28のやや上方に、複数のロック爪32が形成されている。ロック爪32は、枠体16の外方に突出して形成されている。ロック爪32は、枠体16の周方向で適当な間隔を隔てて形成されており、枠体16の側壁22bに2つ、側壁22dに3つ形成されている。
【0022】
このような枠体16の側壁22d(
図3参照)に、プリント基板18が組み付けられている。プリント基板18は、枠体16の背面の略全体に亘る長手矩形の板形状とされている。
図1に示すように、プリント基板18には、図示しないヒューズと接続される複数のヒューズ端子38、図示しないコネクタと接続される複数のコネクタ端子40が設けられている。これらヒューズ端子38、コネクタ端子40は、L字の屈曲形状とされている。また、プリント基板18の中央部分には、複数のリレー42が設けられている。
【0023】
プリント基板18の枠体16への組み付けは、例えば、予め枠体16の図示しないヒューズ端子挿通孔およびコネクタ装着部24に、ヒューズ端子38およびコネクタ端子40が挿通された状態で、リレー42が設けられたプリント基板18が枠体16の側壁22dに重ね合わされる。なお、
図3に示すように、プリント基板18の周上には切欠44が形成されており、枠体16に設けられた位置決め突起46が切欠44に入り込むことでプリント基板18が枠体16に対して位置決めされるようになっている。これにより、ヒューズ端子38およびコネクタ端子40がプリント基板18の対応するスルーホールにそれぞれ挿通される。そして、プリント基板18が複数(本実施形態においては、3つ)のボルト48によって枠体16に固定された後に、ヒューズ端子38およびコネクタ端子40がプリント基板18に半田で固定される。このようにして、本体部12が構成されている。
【0024】
次に、
図4に本体部12の底面図を示す。本体部12の底面は、枠体16の下面25により構成されており、図示しない種々のコネクタが装着される複数のコネクタ装着部24が開口している。そして、各コネクタ装着部24の底面には、複数のコネクタ端子40が挿通されて突設されており、コネクタ装着部24に装着された電線端末に設けられたコネクタが、プリント基板18に電気的に接続されるようになっている。
【0025】
また、
図4から明らかなように、下方部品装着部26を構成するコネクタ装着部24では、枠体16の下面25から下方に突出する周壁52が、隣接するコネクタ装着部24,24間で連接されており、全体として下方部品装着部26の全周を囲うように全周に亘って設けられている。さらに、枠体16の下面25には、下方部品装着部26の周壁52の全周を囲うように矩形・筒体状の防水壁56が突設されている。そして、
図6から明らかなように、防水壁56は、下方部品装着部26の周囲から斜め外方に傾斜して設けられている。
【0026】
より詳細には、
図6に示すように、下方部品装着部26の周壁52は、枠体16の下面25に対して略直交する角度を持って下方に突出されている。これに対して、下方部品装着部26の周壁52の周囲に設けられた防水壁56は、枠体16の下面25に対して斜め外方に傾斜して突出されている。この結果、下方部品装着部26の周壁52と防水壁56の外周面60の為す角:αが、0°<α<90°の範囲で設定されている。また、防水壁56の斜め外方への傾斜により、防水壁56の外周面60とフランジ部28の下面58の為す角:βが鋭角とされている。また、防水壁56の外周面60と突出端面62との為す角:γも鋭角とされている。
【0027】
さらに、防水壁56の突出端部64は、下方部品装着部26すなわち下方部品装着部26の周壁52の最下部を超えて下方には突出しないように形成されていると共に、カバー14すなわちカバー14の後述する周壁70b,70dを超えて幅方向外方に突出しないように形成されている。
【0028】
このような本体部12に外挿されるカバー14は、合成樹脂からなる一体成形品とされている。
図1に示すようにカバー14は、下方に開口する長手矩形の箱体形状とされている。カバー14の上面には、複数のヒューズ装着部66が、カバー14の上面の長手方向の略半分に亘って一列に並んで形成されている。各ヒューズ装着部66には、カバー14の上面を貫通する一対の端子挿通孔68,68が対向して形成されている。
【0029】
図1から明らかなように、カバー14の周壁70bの下端部において、本体部12のロック爪32と対応する位置には、カバー14を貫通する矩形のロック孔72が形成されている。本実施形態においては、カバー14において、本体部12の枠体16における側壁22bと重なる周壁70bに、2つのロック孔72が形成されている。同様に、図示は省略するが、本体部12枠体16における側壁22dと重なる周壁70
dに、3つのロック孔72が形成されている。
【0030】
そして、
図1に示したように、カバー14が、本体部12に対して上方から外挿装着される。カバー14の本体部12への外挿量は、カバー14の周壁端面74が本体部12のフランジ部28に当接保持されることで規定されるようになっている。そして、カバー14の周壁70b等に設けられた複数のロック孔72が、本体部12の対応するロック爪32とそれぞれ係合することによって、カバー14が本体部12に固定される。これにより、
図5に示すように、本体部12のフランジ部28より上方の部分がカバー14に収容された状態で、本体部12とカバー14が相互に組み付けられて、電気接続箱10が形成されている。そして、本体部12に設けられた複数のヒューズ端子38(
図1等参照)が、カバー14に設けられたヒューズ装着部66内に配設される。
【0031】
このような構造とされた電気接続箱10は、各ヒューズ装着部66に図示しないヒューズが装着される。そして、電気接続箱10は、図示しない例えばリレーボックス等の他の電気接続箱に収容されて、カバー14に設けられた外部ロック76,76を介して固定される。
【0032】
本実施形態に従う構造とされた電気接続箱10においては、
図6に示すように、下方部品装着部26の周壁52の周囲から突設された防水壁56が、斜め外方に傾斜しつつ下方に突出して形成されている。これにより、下方部品装着部26の開口端部(下端縁)78と防水壁56の突出端部64との離隔距離を大きく確保することができる。それ故、下方部品装着部26の周囲に大きなスペースが確保されて、下方部品装着部26への電気部品の着脱作業が容易となって作業性の向上が図られる。しかも、下方部品装着部26の開口端部78から防水壁56の突出端部64を大きく離隔させることができることから、本体部12あるいはカバー14表面を流下して防水壁56の突出端部64に至った水を、下方部品装着部26の開口端部78から離れた位置で下方に向かって本体部12から離脱させることができる。これにより、下方部品装着部26への水入りを有利に阻止することができるのである。
【0033】
なお、本体部12の外面と防水壁56の外周面60の為す角:αは、好ましくは5°≦α≦40°、より好ましくは10°≦α≦30°の範囲内に設定されている。αが5°未満だと、防水壁56と下方部品装着部26が略平行に近接して下方に突出することとなり、それらの隙間が小さくなりすぎて電気部品の着脱容易性の向上が図れなくなる。一方、αが40°を超えると、防水壁56の設置に要するスペースが大きくなりすぎて、小型化の要求を満足できなくなると共に、防水性の低下も懸念される。
【0034】
また、防水壁56の外周面60とフランジ部28の下面58の為す角:βを鋭角にすることができる。これにより、本体部12あるいはカバー14表面を流下して防水壁56の基端部にまで至った水を当該鋭角部分の隙間に水の表面張力を利用してトラップすることもできる。それ故、当接鋭角部分を図示しない排水領域に繋いで、トラップした水を排水領域まで導くことも可能となるのである。
【0035】
加えて、防水壁56の外周面60が斜め外方に傾斜して下方に延出していると共に、防水壁56の突出端面62が外周側から内周側に向かって斜め上方に傾斜する傾斜面とされている。すなわち、防水壁56の外周面60と突出端面62との為す角:γが鋭角とされている。これにより、防水壁56の外周面60を伝って防水壁56の突出端面62に至った水が、鋭角とされた突出端部64で下方に流下され易くなって、かかる水が突出端面62を伝って防水壁56の内周面まで回り込むことを有利に阻止することができる。これにより、下方部品装着部26への水入りを一層有利に防止できるのである。なお、防水壁56の外周面60と突出端面62との為す角:γは、好ましくは20°≦γ≦50°、より好ましくは30°≦γ≦40°の範囲内に設定されている。γが20°未満だと、防水壁56の肉厚が確保できず耐久性が低下してしまうおそれがある。一方、γが50°を超えると、防水壁56の突出端面62を伝って水が防水壁56の内周面まで回り込むおそれがある。
【0036】
さらにまた、防水壁56は、下方部品装着部26の周壁52の最下部を超えて下方には突出しないように形成されていると共に、カバー14の周壁70b,70dを超えて幅方向外方に突出しないように形成されている。これにより、防水壁56を設けたことによる電気接続箱10のサイズの増加を有利に防止することができるのである。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。防水壁56は下方部品装着部26の全周に亘って連続して形成されていることが望ましいが、他部材との関係で本体部12あるいはカバー14表面を流下される水が通過する可能性が無い若しくは低い等の周方向の任意の箇所において、分断されていてもよい。
【0038】
また、下方部品装着部26の周囲に突設された防水壁56は複数でもよく、それらの下方への突出角度は、排水性と防水性の観点から、個別の事情を考慮して任意に設定可能である。また、例示の実施形態では、隣接するコネクタ装着部24の周壁52が連接されて一体化されていたが、各コネクタ装着部24毎に単独の周壁52を設け、さらに各コネクタ装着部24の周壁52の周囲にそれぞれ別個の防水壁56を設けるようにしてもよい。