(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の触媒付きパティキュレートフィルタでは、触媒層表面のPM堆積量が少ないときは、そのPMが比較的効率良く燃焼除去されるが、PM堆積量が多くなると、PMの燃焼除去に時間がかかる傾向がみられる。その理由は、本発明者の実験・研究に基づく知見によれば、次の通りである。
【0007】
すなわち、
図1のグラフは触媒層に堆積したPMが燃焼していくときのPM残存割合の経時変化を模式的に示す。当初はPMの燃焼が急速に進むが、その急速燃焼領域(例えば、PM残存割合が100%から50%になるまでの燃焼前期)を経た後、PMの燃焼が緩慢になる緩慢燃焼領域(PM残存割合が50%から0%になるまでの燃焼後期)に移る。この点を以下詳述する。
【0008】
図2の写真に示すように、燃焼当初はPMがフィルタの表面に担持された触媒層に接触している。このため、例えば触媒層がCe含有酸化物粒子やZr含有酸化物粒子を含んでいる場合、
図3に模式的に示すように、それら酸化物粒子から放出される活性な内部酸素が触媒層に接触しているPMに高活性状態で供給される。その結果、触媒層表面のPMが急速に燃焼していく。
【0009】
しかし、上述の如く、触媒層表面のPMが燃焼除去される結果、
図4の写真に示すように、触媒層とPM堆積層との間に数十μm程度の隙間を部分的に生ずる。そのため、
図5に模式的に示すように、酸化物粒子内部から放出される活性酸素は、ごく短時間であれば活性を維持するが、ほとんどの活性酸素がPMに到達する前に活性が低下し、例えば、気相中の酸素と同じ通常の酸素となる。その結果、PMの燃焼が緩慢になる。もちろん、
図5左上及び左下に示すように排ガス中の酸素もPMの燃焼に寄与するが、上述の活性酸素による燃焼に比べると、その燃焼は緩慢である。
【0010】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタに堆積したPMの急速燃焼領域及び緩慢燃焼領域の双方において、その燃焼が効率良く進むようにして、トータルのPM燃焼速度を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の目的を達成するために、さらに実験・研究を進めた結果、活性アルミナ粒子、及びZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物を含む粒子材に、触媒金属としてPt及びPdが担持されてなる触媒材は、前記粒子材にPtのみが担持された触媒材と比較して、NOを酸化してNO
2を生成するNO酸化性能が顕著に高いことを見出した。さらに、そのような触媒材のうち、Ptが担持された活性アルミナ粒子と、Pdが担持されたZrCe系複合酸化物とを含む触媒材が、特にPM燃焼性能が高いことを見出して本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明に係る触媒付パティキュレートフィルタは、排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、触媒層が設けられており、触媒層は、ジルコニウム(Zr)とセリウム(Ce)とを含むZrCe系複合酸化物に触媒金属としてパラジウム(Pd)が担持されたPd担持ZrCe系複合酸化物と、活性アルミナ粒子に触媒金属として白金(Pt)が担持されたPt担持活性アルミナ粒子とを含
み、触媒層は、ZrCe系複合酸化物にロジウム(Rh)が含有されたRh含有ZrCe系複合酸化物をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
上記の通り、活性アルミナとZrCe系複合酸化物とを含む粒子材に触媒金属としてPdとPtとが担持された触媒材は、NO酸化性能が高い。このため、例えばリーン排ガス中のNOを酸化してNO
2の生成を促進でき、その結果、生成されたNO
2が酸化剤としてPMの燃焼のために働くので、PM燃焼速度が向上する。
【0014】
また、ZrCe系複合酸化物は、酸素吸蔵放出能を有し、酸素交換反応を起こしてPM燃焼に有効に働く活性酸素を多く放出できる。さらに、触媒金属としてPtの代わりにPdを用いると急速燃焼領域における燃焼促進に有効な貴金属の活性点が増加すると考えられ、このため、PdをZrCe系複合酸化物に担持することで、PdがZrCe系複合酸化物により活性の高い酸化状態に保たれ、特に急速燃焼領域における燃焼速度を向上できる。なお、本発明の触媒付パティキュレートフィルタにおいて、Pd担持ZrCe系複合酸化物には、さらにPtが担持されていてもよい。
【0015】
また、活性アルミナ粒子は、貴金属の分散性が高いため、活性アルミナ粒子を触媒材に用いると触媒金属の凝集等を防止でき、触媒効果の低減を防止できる。
【0016】
これらにより、本発明に係る触媒付パティキュレートフィルタは、トータルのPM燃焼速度を向上することができ、上述したエンジン噴射制御が短時間となる、換言すると、燃料消費量が少なくなり、燃費性能が向上する。さらに、触媒金属としてPtの代わりにPdを一部用いるため、用いるPtの量を低減できて、コストを低減することが可能となる。
【0017】
ZrCe系複合酸化物は、上記の通り、高い酸素吸蔵放出能を有し、酸素交換反応を起こして反応活性が高い酸素を放出できると考えられている。このため、PMの燃焼に伴ってその燃焼部位の酸素が局部的に消費されても、ZrCe系複合酸化物によって酸素が速やかに補われてPM燃焼が維持される。また、Rhを含むことにより酸素吸蔵放出及び酸素交換反応を促進できて、且つ、触媒と接触しないPMに対して、活性の持続性が高い脱離散素を供給する効果により、触媒層とPMとの間に隙間が形成された後の緩慢燃焼領域のPM燃焼速度を特に向上できる
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパティキュレートフィルタによると、急速燃焼領域及び緩慢燃焼領域におけるPM燃焼性能を向上できるため、PMの燃焼が効率良く進めることができ、燃費性能も向上できる。さらに、触媒金属として用いられるPtの量を低減できるため、コストを低減することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでない。
【0021】
<パティキュレートフィルタの構造>
以下、PMを捕集するためのパティキュレートフィルタの構造について説明する。
【0022】
図6はディーゼルエンジンの排ガス通路11に配置されたパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)10を示す。フィルタ10よりも排ガス流の上流側の排ガス通路11には、酸化物等からなるサポート材にPt、Pd等に代表される触媒金属を担持した酸化触媒(図示省略)を配置することができる。配置される酸化触媒に、本実施形態に係る排ガス成分浄化触媒材を用いることができる。このような酸化触媒をフィルタ10の上流側に配置するときは、該酸化触媒によって排ガス中のHC、COを酸化させ、その酸化燃焼熱でフィルタ10に流入する排ガス温度を高めてフィルタ10を加熱することができ、PMの燃焼除去に有利になる。また、NOが酸化触媒でNO
2に酸化され、該NO
2がフィルタ10にPMを燃焼させる酸化剤として供給されることになる。
【0023】
図7及び
図8に模式的に示すように、フィルタ10は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路12、13を備えている。すなわち、フィルタ10は、下流端が栓14により閉塞された排ガス流入路12と、上流端が栓14により閉塞された排ガス流出路13とが交互に設けられ、排ガス流入路12と排ガス流出路13とは薄肉の隔壁15を介して隔てられている。なお、
図7においてハッチングを付した部分は排ガス流出路13の上流端の栓14を示している。
【0024】
フィルタ10は、前記隔壁15を含むフィルタ本体がコージェライト、SiC、Si
3N
4、サイアロン、AlTiO
3のような無機多孔質材料から形成されている。排ガス流入路12内に流入した排ガスは
図8において矢印で示したように周囲の隔壁15を通って隣接する排ガス流出路13内に流出する。すなわち、
図9に示すように、隔壁15は排ガス流入路12と排ガス流出路13とを連通する微小な細孔(排ガス通路)16を有し、この細孔16を排ガスが通る。PMは主に排ガス流入路12及び細孔16の壁部に捕捉され堆積する。
【0025】
上記フィルタ本体の排ガス通路(排ガス流入路12、排ガス流出路13及び細孔16)を形成する壁面には触媒層17が形成されている。なお、排ガス流出路13側の壁面に触媒層を形成することは必ずしも要しない。
【0026】
<触媒材について>
次に、本発明の実施形態に係るパティキュレートフィルタに用いられる触媒材について説明する。
【0027】
本発明者らは、PM燃焼性能が良好な触媒材について、実験・研究を進めた結果、ZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物が活性アルミナ粒子に担持された複合粒子に、Pd及びPtが担持されたPdPt担持複合粒子を触媒材として用いることを見出した。ここで、このPdPt担持複合粒子と、上記複合粒子(ZrCe系複合酸化物が活性アルミナ粒子に担持された複合粒子)にPtのみを担持したPt担持複合粒子とを用いて行ったNO酸化性能試験及びその結果について以下に説明する。
【0028】
NO酸化性能試験では、PdPt担持複合粒子又はPt担持複合粒子をそれぞれ触媒材として担持したサンプルフィルタを作製し、このサンプルフィルタを用いてそれぞれのNO酸化性能を評価した。なお、サンプルフィルタは、コージェライト担体(25cc、4.5mil/400cpsi)に上記の各触媒を100g/L(2.5g)コーティングした後に、500℃で2時間焼成することにより作製した。なお、触媒金属の含有量は、0.3g/Lとし、PdPt担持複合粒子においてPt:Pdは、2:1(質量比)とした。また、ZrCe系複合酸化物として、ランタン(La)及びイットリウム(Y)を含むZrCeLaYO
xを用い、上記複合粒子におけるZrCeLaYO
x:Al
2O
3(活性アルミナ)を20:80(質量比)とした。
【0029】
このようにして得られたサンプルフィルタを模擬ガス流通反応装置に取り付け、模擬排ガス(CO;400ppm、HC(C
3H
6);200ppm、NO;500ppm、H
2O:10%、残N
2)をフィルタに通した。このときの模擬排ガスの流量を35L/minとし、空間速度を84000/hとした。また、温度条件としては、フィルタ入口の温度で100℃から30℃/minの昇温速度で600℃にまで上昇させた。このような条件で温度を上げながら、ガス中のNO濃度をフィルタ出口においてリアルタイムで測定した。そして、以下の式を用いてNO酸化率を算出した。
【0030】
NO酸化率(%)
=100×{[初期(100℃時)NO濃度(ppm)]−[NO濃度(ppm)]}/[初期NO濃度(ppm)]
その結果、
図10に示すように、PdPt担持複合粒子は、Pt担持複合粒子よりもNO酸化性能が顕著に高いことが認められた。すなわち、触媒材として、PdPt担持複合粒子を用いると、排ガス中のNOを高効率でNO
2に酸化できるため、このNO
2が酸化剤として働き、PM燃焼性能を向上できる。
【0031】
本発明者らは、さらに、触媒材の粒子の表面積を増大して排ガスとの接触効率を向上できるようにするために、上記のようなNO酸化性能が高い複合粒子において、活性アルミナ粒子にZrCe系複合酸化物を担持せずに、それぞれに触媒金属を担持するようにした。具体的に、ZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物にPdが担持されたPd担持ZrCe系複合酸化物と、活性アルミナ粒子にPtが担持されたPt担持活性アルミナ粒子とを含む触媒材を用いて、PM燃焼性能を向上できる触媒層を有する触媒付パティキュレートフィルタを構成した。以下に、本実施形態に係る触媒付パティキュレートフィルタにおける触媒層の構成について説明する。
【0032】
図11に示すように、本実施形態では、フィルタの排ガス通路壁における壁面(フィルタ担体21)の表面に触媒層22が形成されており、触媒層22には、活性アルミナ粒子23にPt24が担持されたPt担持活性アルミナ粒子と、ZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物25にPd26が担持されたPd担持ZrCe系複合酸化物とが含まれている。なお、
図11に示すように、ZrCe系複合酸化物25にはPd26及びPt24の両方が担持されていても構わない。なお、ZrCe系複合酸化物25は、Zr及びCe以外のイットリウム(Y)及びランタン(La)等の希土類元素を含んでいても構わない。ここで、触媒層22に含まれる活性アルミナ粒子23、Pt24、ZrCe系複合酸化物25及びPd26の構成比率は、特に限定されず、適宜調製することができる。
【0033】
また、触媒層22には、上記の粒子の他に、ZrCe系複合酸化物28にロジウム(Rh)27が含有されたRh含有ZrCe系複合酸化物をさらに含んでいてもよい。このようにすると、上述の通り、Rh含有ZrCe系複合酸化物は、触媒と接触しないPMに対して、活性の持続性が高い脱離散素を供給できるため、触媒層とPMとの間に隙間が形成された後の緩慢燃焼領域のPM燃焼速度を特に向上できる。なお、Rh27は、ZrCe系複合酸化物28に含まれていれば表面に担持されることに限らず、例えば固溶されてZrCe系複合酸化物28に含まれていてもよい(ドープ型)。また、Rh27を含有するZrCe系複合酸化物28の組成は、ZrとCeとを含んでいれば、上記のPd26を担持するZrCe系複合酸化物25の組成と同一でなくても構わない。また、粒径も同一でなくても構わない。
【0034】
また、この触媒層22には、バリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属が含まれていてもよい。このようにすると、Pdが排ガス中の硫黄(S)成分により被毒されるのを防止することができる。
【0035】
<触媒材の調製方法>
次に、本発明の実施形態に係るパティキュレートフィルタに設けられる触媒材の調製方法について説明する。ここでは、ZrとCeとを含むZrCe系複合酸化物として、ZrCeLaY複合酸化物を調製する。
【0036】
まず、オキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ランタンと硝酸イットリウムとをイオン交換水に溶かす。これに28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、ZrCeLaY複合酸化物を含む前駆体(共沈体)を得る。この共沈物を遠心分離し、上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより平均粒子径100nm程度まで粉砕を行う。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりZrCeLaY複合酸化物(ZrCeLaYO
x)を得ることができる。
【0037】
次に、得られたZrCeLaY複合酸化物にPd及びPtを担持する方法について説明する。ここでは、担持方法として蒸発乾固法を説明する。
【0038】
まず、上記ZrCeLaY複合酸化物にイオン交換水を加えてスラリー状にし、それをスターラー等により十分に撹拌する。続いて、撹拌しながらそのスラリーに所定量のジニトロジアミンPd硝酸溶液、及びジニトロジアミンPt硝酸溶液を滴下し、十分に撹拌する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、大気中において500℃で2時間焼成することにより、上記ZrCe系複合酸化物にPd及びPtが担持されたPdPt担持ZrCe系複合酸化物として、PdPt担持ZrCeLaY複合酸化物が得られる。なお、Pdのみを担持させる場合は、ジニトロジアミンPd硝酸溶液のみを用いて上記の方法を行えばよい。
【0039】
また、活性アルミナ粒子にPtを担持させる方法は、上述の蒸発乾固法において、触媒金属溶液としてジニトロジアミンPt硝酸溶液を採用することによって得ることができる。
【0040】
次に、CeとZrとを含み、さらにRhを含有するRh含有ZrCe系複合酸化物として、RhドープCeZrNdO
x複合酸化物の調製方法について説明する。
【0041】
まず、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより平均粒子径100nm程度まで粉砕する。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりRhドープCeZrNdO
x複合酸化物粒子材を得ることができる。なお、ここにPtを担持するには、ジニトロジアミンPt硝酸溶液のみを用いて、上記と同様に、蒸発乾固法を用いればよい。
【0042】
上記のようにして得られた各粒子材に、イオン交換水及びバインダを加え、混合してスラリー状にする。このスラリーをフィルタにコーティングし、乾燥させた後、500℃で2時間焼成することにより、触媒付パティキュレートフィルタが得られる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明に係る触媒付パティキュレートフィルタを詳細に説明するための実施例を示す。
【0044】
本実施例では、触媒材として上記のPt担持Al
2O
3と、Pd担持ZrCeLaYO
x又はPdPt担持ZrCeLaYO
xと、RhドープCeZrNdO
x複合酸化物又はこれにPtを担持したPt/RhドープCeZrNdO
x複合酸化物とを用い、触媒材に含まれるPdとPtとの比率を変えて、それぞれのカーボン燃焼速度を検討した。また、比較例として、PdでなくPtのみがZrCeLaYO
xに担持されているPt担持ZrCeLaYO
xと、Pdが活性アルミナ粒子に担持されたPd担持Al
2O
3粒子とを用いた場合について検討した。各実施例
、参考例及び比較例の触媒材の組成を以下の表1に示す。なお、表1に示す各比率は、質量比を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
参考例1〜
14及び実施例15,16の触媒材に含まれるPt担持Al
2O
3と、Pd担持ZrCeLaYO
x又はPdPt担持ZrCeLaYO
xと、実施例15の触媒材に含まれるRhドープCeZrNdO
xと、実施例16の触媒材に含まれるPt/RhドープCeZrNdO
xとは、上述の通りに調製した。各実施例
及び参考例では、それらをフィルタにコーティングすることによりサンプルフィルタ(触媒付パティキュレートフィルタ)を得た。なお、触媒材に含まれるZrCeLaYとAl
2O
3との構成比率は、20:80(質量比)とした。まt、Pd担持又はPdPt担持ZrCeLaYO
xにおけるZrCeLaYO
xの構成比率は、ZrO
2:CeO
2:La
2O
3:Y
2O
3=39:54:5:2(質量比)とした。また、RhドープCeZrNdO
x及びPt/RhドープCeZrNdO
xでは、Rhが0.1質量%であり、他のCeZrNdO
xの構成比率は、CeO
2:ZrO
2:Nd
2O
3=28:62:10(質量比)とした。
【0047】
また、各実施例
、参考例及び比較例において、フィルタへの複合粒子のコーティング量は、20g/Lとし、Pd、Pt及びRhの総貴金属量は、0.3g/Lとした。それらの貴金属の構成比は、表1の通りであり、Pt、Pd及びRhを含む場合は、Pt:Pd:Rhを0.045:0.045:0.01(質量比)とした。
【0048】
各実施例
、参考例及び比較例の触媒材をフィルタにコーティングして得られたサンプルフィルタに、カーボン(カーボンブラック)を堆積させてカーボン燃焼速度を測定した。
【0049】
カーボンの堆積は、担体容量1L当たり5g/Lのカーボンが堆積するように行った。5g/L相当のカーボンをイオン交換水中でスターラーを用いて撹拌した後、サンプルフィルタの入口側を浸漬させ、出口側からアスピレータを用いて吸引した。吸水性のシートの上に載せて余分な水分を除去した後、150℃、2時間の乾燥処理を行った。
【0050】
得られた各サンプルフィルタを模擬ガス流通反応装置に取り付け、N
2ガスを流通させながらそのガス温度を上昇させた。フィルタ入口温度が540℃で安定した後、N
2ガスから模擬排ガス(O
2;7.5%,NO;300ppm,残N
2)に切り換え、該模擬排ガスを空間速度40000/hで流した。そして、カーボンが燃焼することにより生じるCO及びCO
2のガス中濃度をフィルタ出口においてリアルタイムで測定し、それらの濃度から、下記の計算式を用いて、所定時間毎に、カーボン燃焼速度(単位時間当たりのPM燃焼量)を計算した。
【0051】
カーボン燃焼速度(g/h)
={ガス流速(L/h)×[(CO+CO
2)濃度(ppm)/(1×10
6)]}×12(g/mol)/22.4(L/mol)
上記所定時間毎のカーボン燃焼速度に基づいてカーボン燃焼量積算値の経時変化を求め、カーボン燃焼率が0%から50%、50%から90%及び0%から90%に達するまでに要した時間とその間のカーボン燃焼量の積算値とからカーボン燃焼速度(フィルタ1Lでの1分間当たりのPM燃焼量(mg/min-L))を求めた。その結果を
図12に示す。
【0052】
図12に示すように、
参考例1〜
14及び実施例15,16と比較例1及び2とを比較すると、Pt担持Al
2O
3と、Pd担持ZrCeLaYO
x又はPdPt担持ZrCeLaYO
xとを含む
参考例1〜
14及び実施例15,16の方が、それらを含まない比較例1及び2よりも、明らかにカーボン燃焼性能が優れている。
【0053】
Pt担持Al
2O
3と、Pd担持ZrCeLaYO
xとを含み、PdとPtとの質量比が異なる
参考例1〜7を互いに比較すると、Pdの量が多いほど急速燃焼領域(カーボン燃焼率が0%〜50%)における燃焼速度が向上し、緩慢燃焼領域(カーボン燃焼率が50%〜90%)における燃焼速度が低減する傾向が見られた。その結果、トータルのカーボン燃焼速度は、
参考例1〜7ではほぼ同一であった。
【0054】
Pt担持Al
2O
3と、PdPt担持ZrCeLaYO
xとを含み、PdとPtとの質量比が異なる
参考例8〜14を互いに比較すると、
参考例1〜7と同様に、Pdの量が多いほど急速燃焼領域における燃焼速度が向上し、緩慢燃焼領域における燃焼速度が低減する傾向が見られ、トータルのカーボン燃焼速度は、
参考例1〜7ではほぼ同一であった。また、
参考例1〜7と
参考例8〜14とにおける、互いにPdとPtとの構成比が同一のものを比較すると、何れの場合もPdPt担持ZrCeLaYO
xとを含む
参考例8〜14の方がカーボン燃焼速度が高かった。すなわち、ZrCeLaYO
xとにPdだけでなく、Ptも担持することによって、カーボン燃焼性能を向上できることが示唆された。
【0055】
参考例1〜14と、RhドープCeZrNdO
xを含む実施例15とを比較すると、実施例15では、RhドープCeZrNdO
xにより、緩慢燃焼領域における燃焼速度が向上したため、トータルのカーボン燃焼速度が
参考例1〜14よりも高かった。さらに、Pt/RhドープCeZrNdO
xを含む実施例16では、実施例15よりもさらにトータルのカーボン燃焼速度の向上が認められた。
【0056】
これらに対して、Ptの代わりにPdが担持されたPd担持Al
2O
3と、Pdの代わりにPtが担持されたPt担持ZrCeLaYO
xとを含んでいる比較例1及び2では、急速燃焼領域及び緩慢燃焼領域の両方において、燃焼速度が小さい結果が得られ、
参考例1〜
14及び実施例15,16よりもトータルのカーボン燃焼速度は小さかった。
【0057】
以上の通り、Pd担持又はPdPt担持ZrCe系複合酸化物と、Pt担持活性アルミナ粒子とを含む粒子材を触媒材として用いることにより、トータルのPM燃焼性能を向上できることが示唆された。