特許第5954168号(P5954168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954168
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】後部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20160707BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20160707BHJP
   B60G 7/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
   B62D21/02 A
   B62D21/00 B
   B60G7/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-286728(P2012-286728)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128991(P2014-128991A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】安藤 文隆
(72)【発明者】
【氏名】平松 大弥
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−044551(JP,A)
【文献】 特開平08−104251(JP,A)
【文献】 特開平08−058615(JP,A)
【文献】 実開昭57−029476(JP,U)
【文献】 特開2000−264245(JP,A)
【文献】 特開2008−114652(JP,A)
【文献】 特開2006−347338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ前後方向に延び、前端部が車体キックアップ部付近の低い位置において車体に連結される共に、後端部が該キックアップ部後方の高い位置でもってかつ前端部よりも車幅方向内方側において車体に連結されて、側面視において該キックアップ部付近から後方に車体フロアと共働して環状の構造を形成する左右一対のサイドメンバと、
前記左右一対のサイドメンバの前端と後端との間の位置において車体下面に連結され、かつ両端部が前記サイドメンバよりも高い位置とされた前クロスメンバと、
上下方向に延び、前記前クロスメンバの両端部と前記左右一対のサイドメンバとを連結して前記環状の構造の潰れ変形を防止する左右一対のブラケットと、
を備えていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記サイドメンバには、前後方向に間隔をあけて複数のサスペンションリンク取付部が設けられ、
前記サイドメンバは、側面視において下方に凸となるように湾曲されている、
ことを特徴とする後部車体構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記左右一対のサイドメンバの前端部が、左右一対のリアフレームに連結され、
前記前クロスメンバが、前記左右一対のリアフレーム同士を連結している、
ことを特徴とする後部車体構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記左右一対のサイドメンバの後端部同士を連結すると共に前記左右一対のリアフレーム同士を連結する後クロスメンバが設けられている、ことを特徴とする後部車体構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記サイドメンバおよび前記前クロスメンバはそれぞれ、弾性部材を介することなく車体に連結されている、ことを特徴とする後部車体構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記前クロスメンバは、正面視において、中央部が下方へ膨出された略V字形状に形成されている、ことを特徴とする後部車体構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
車体がオープンカー用とされている、ことを特徴とする後部車体構造。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、車体後部にサブフレームが取付けられて、このサブフレームに対してサスペンションリンク等が取付けられることになる。そして、サスペンションリンクがあらかじめ組み付けられた状態のサブフレームを、車体後部に対して下方から取付けることも一般に行われている。
【0003】
サスペンションリンクが取付けられる付近の車体剛性を向上させることにより、自動車が旋回等の挙動を生じた際に、運転者が感じる応答性や剛性感を向上させることも行われている。特許文献1には、サブフレーム取付付近の剛性向上のために、別途ブレース部材を設けて補強することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、走行時の応答性向上等のための剛性向上に加えて、燃費向上も強く要求されるようになっている。このため、車体の必要な剛性を確保した上で軽量化することが望まれることになる。特許文献1に記載のものでは、補強部材としてのブレース部材を別途設けることから、剛性向上の点では望ましいものの、軽量化という点では不利となる。特に、ルーフを利用した車体剛性の向上が期待できないオープンカーにあっては、プラットフォームのみによって十分な剛性を確保する必要がある。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、大幅な重量増加を伴うことなく、車体後部の剛性を十分に向上できるようにした後部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
それぞれ前後方向に延び、前端部が車体キックアップ部付近の低い位置において車体に連結される共に、後端部が該キックアップ部後方の高い位置でもってかつ前端部よりも車幅方向内方側において車体に連結されて、側面視において該キックアップ部付近から後方に車体フロアと共働して環状の構造を形成する左右一対のサイドメンバと、
前記左右一対のサイドメンバの前端と後端との間の位置において車体下面に連結され、かつ両端部が前記サイドメンバよりも高い位置とされた前クロスメンバと、
上下方向に延び、前記前クロスメンバの両端部と前記左右一対のサイドメンバとを連結して前記環状の構造の潰れ変形を防止する左右一対のブラケットと、
を備えているようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、サイドメンバによって、車体の後部側部には、平面視においてトラス構造が形成されて、剛性が向上される。また、左右一対のサイドメンバの前端と後端との間の位置を、車体に連結される前クロスメンバで連結して、剛性をより一層向上させることができる。さらに、側面視において、キックアップ部付近からサイドメンバに渡って環状の構造が形成されて、剛性向上が図られ、しかも上下方向に延びるブラケットにより上記環状の構造が潰れ変形されにくいようにしてあるので、さらに一層剛性の向上が図られることになる。そして、上記剛性向上のために、トラス構造や潰れ変形しにくい環状構造を構成することにより達成して、大幅な重量増加を必要としないものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記サイドメンバには、前後方向に間隔をあけて複数のサスペンションリンク取付部が設けられ、
前記サイドメンバは、側面視において下方に凸となるように湾曲されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、側面視におけるサイドメンバの形状を、サスペンションリンク取付用として好適な形状としつつ、サイドメンバをサスペンションリンク取付用として兼用させて、軽量化の上でも好ましいものとなる。
【0010】
前記左右一対のサイドメンバの前端部が、左右一対のリアフレームに連結され、 前記前クロスメンバが、前記左右一対のリアフレーム同士を連結している、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、強度的に優れた左右一対のリアフレームを利用して、前述した車体剛性向上を十分に発揮させることができる。
【0011】
前記左右一対のサイドメンバの後端部同士を連結すると共に前記左右一対のリアフレーム同士を連結する後クロスメンバが設けられている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、左右一対のリアフレーム同士を連結する後クロスメンバに対して左右一対のサイドメンバの後端部を連結することにより、飛躍的に車体剛性を向上させることができる。
【0012】
前記サイドメンバおよび前記前クロスメンバはそれぞれ、弾性部材を介することなく車体に連結されている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、連結強度を高めて、車両の応答性向上と共に、車体剛性をさらに高める上でも好ましいものとなる。
【0013】
前記前クロスメンバは、正面視において、中央部が下方へ膨出された略V字形状に形成されている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、正面視において、前クロスメンバと車体(フロア)とによってトラス構造が形成されて、車体剛性向上の上でさらに好ましいものとなる。
【0014】
車体がオープンカー用とされている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、ルーフを利用した車体剛性の向上が期待できないオープンカーにおいて、車体後部の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大幅な重量増加を伴うことなく、車体後部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用されたサブフレーム構造の一例を示す斜視図。
図2図1に示すサイドフレーム構造を上方から見た平面図。
図3図1のサブフレーム構造を前方から見た正面図。
図4図1のサブフレーム構造を左側方から見た側面図。
図5図1のサブフレーム構造からリンク類等を取外して示す斜視図。
図6図5のサブフレーム構造を前方から見た正面図。
図7図5のサブフレーム構造を左側方から見た側面図。
図8】サイドメンバと前クロスメンバとの連結部位の前側部分を示す要部斜視図。
図9】サイドメンバと前クロスメンバとの連結部位の後側部分を示す要部斜視図。
図10図5に示すサブフレーム構造の分解斜視図。
図11図5のサブフレーム構造が取付けられた車体後部を下方から見た図。
図12図5のサブフレーム構造が取付けられた車体後部を上方から見た図で、サブフレーム構造付近のリアフロアパネルを一部切り欠いて示す。
図13図12のX13−X13線相当断面図。
図14図12のX14−X14線相当断面図。
図15図5に示すサブフレーム構造が取付けられた状態での車体後部の左側面図。
図16図12のX16−X16線相当断面図。
図17図12のX17−X17線相当断面図。
図18図17よりも車若干幅方向内方側にずれた位置での車体後部の状態を示す断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図4には、本発明が適用されたサブフレーム1に対して、サスペンションリンク等のサスペンション関連部品が組み付けられた状態が示され、図5図7には、サスペンション関連部品が取外された状態でのサブフレーム1が示される。図中、Wは車輪、Rは路面である。
【0018】
図1図7において、2は左右一対のサイドメンバ、3は前クロスメンバ、4は後クロスメンバ、5はブラケットである。サイドメンバ2、前クロスメンバ3、後クロスメンバ4はそれぞれ、金属製(例えば鉄系金属あるいはアルミニウム合金等の軽金属)によって閉断面状に形成されている。
【0019】
左右一対のサイドメンバ2は、前後方向に延びて、その前端部同士の間隔は、その後端部同士の間隔よりも大きくされている。すなわち、左右一対のサイドメンバ2は、前後方向略中間部付近から、前方へ向かうにつれて徐々に車幅方向外方側に向かうように湾曲形成されている。また、サイドメンバ2は、側面視において、下方に向けて凸となるように緩やかに湾曲されている。
【0020】
前クロスメンバ3は、左右一対のサイドメンバ2の前後方向略中間部、より具体的には前後方向中中間位置よりも若干前側の位置において、左右一対のサイドメンバ2同士を連結している。より具体的には、前クロスメンバ3は、前方から見た正面視において、中央部が下方へ膨出されて全体的に略V字形状とされていて、前クロスメンバ3の両端部の高さ位置は、サイドメンバ2よりも高くされている(特に図3図6参照)。そして、上下方向に延びる前記ブラケット5によって、前クロスメンバ3の両端部とサイドメンバ2の前後方向略中間部が連結されている。なお、ブラケット5は、金属製(例えば鉄系金属あるいはアルミニウム合金等の軽金属)とされて、好ましくは閉断面状として形成されている(特に図8図9参照)。
【0021】
後クロスメンバ4は、左右一対のサイドメンバ2の後端部同士を連結している。この後クロスメンバ4の各端部は、サイドメンバ2の後端部よりも若干車幅方向外方側にまで延びていて、サイドメンバ2の後端部よりも高い位置とされている。そして、前クロスメンバ3の両端部の高さ位置と、後クロスメンバ4の両端部の高さ位置とは、ほぼ等しくなるようにされている(特に図6図7参照)。なお、サイドメンバ2に対するブラケット5および後クロスメンバ4の連結や、ブラケット5と前クロスメンバ3との連結は、例えば溶接接合等により接合されている。なお、図中6は、小型・軽量とされた板状の補強ブラケットである。
【0022】
図1図4に示すように、サブフレーム1は、5本のサスペンションリンク11〜15を介して、車輪支持部材16を支持している。サスペンションリンク11〜15は、実施形態では、3本のロアリンク11〜13と、2本のアッパリンク14、15とから構成されている。また、車輪支持部材16には、サスペンションダンパ17の下端部が連結されている。
【0023】
サブフレーム1には、上記5本のサスペンションリンク11〜15の車幅方向内端部の取付部が構成されている。すなわち、まず、サイドメンバ2と前クロスメンバ3との連結部位となるブラケット5の低位置において、中央取付部21が構成されている。この中央取付部21に対して、3本のロアリンク11〜13のうち真ん中のロアリンク11が取付けられる。
【0024】
また、サイドメンバ2のうち、前端部つまりブラケット5よりも前方位置において、前取付部22が構成され、この前取付部22に対して前ロアリンク12が取付けられる。さらに、サイドメンバ2の後端部つまりブラケット5よりも後方位置において、後取付部23が構成され、この後取付部23に対して後ロアリンク13が取付けられる。
【0025】
前クロスメンバ3の両端部には、前上取付部24が構成され、この前上取付部24に対して前側のアッパリンク14が取付けられる。後クロスメンバ4の両端部には、後上取付部25が構成され、この後上取付部25に対して後側のアッパリンク15が取付けられる。図4には、上述した5本のリンク11〜15のサブフレーム1への取付位置が丸印でもって示される。
【0026】
サブフレーム1は、図1図4に示すように、サスペンションリンク11〜15を介して車輪支持部材16を支持し、かつサスペンションダンパ17が車輪支持部材16に連結された状態で、車体下方から車体後部に対して組み付けられる。サブフレーム1の車体への取付けは、左右一対のサイドメンバ2の前端部と、前クロスメンバ3の両端部と、後クロスメンバ4の両端部との合計6箇所で行われる。この6箇所の取付け位置は、車体の強度部材となるリアフレームに対して行われる。なお、図4において、サブフレーム1の車体への取付位置が星印で示される。また、図4において、一点鎖線でもって、車室フロア部が符合31で示され、リアパネル部が符合33で示され、上下方向に延びるキックアップ部が符合32で示される。
【0027】
次に、図1図4に示すようなサスペンション部品が組み付けられたサブフレーム1の車体への取付けについて説明するが、まず、車体後部の構造例について、図11以下をも参照しつつ説明することとする。実施形態では、車体は、オープンカー用、より具体的には左右2座席とされたオープンカー用とされている。
【0028】
車体は、低い位置とされた車室フロア部31と、車室フロア部31の後端から上方へ延びて車室後壁部となるキックアップ部32と、キックアップ部32の上端から後方へ延びるリアパネル部33とを有する。なお、車室フロア部31の車幅方向中央部には、上方へ膨出されると共に前後方向に延びるトンネル部31aが形成され、このトンネル部31aは、キックアップ部32まで延びている。
【0029】
車室フロア部31の車幅方向外端部は、前後方向に延びると共に閉断面状とされた強度部材としての左右一対のサイドシル34に連結されている。リアパネル部33の下面には、前後方向に延びる左右一対のリアフレーム(リヤサイドフレーム)35が接合されている。リアフレーム35は、リアパネル部33と協働して閉断面状の強度部材を構成している。リアフレーム35は、その前端部が、前方に向かうにつれて徐々に車幅方向外方側に位置するように湾曲されて、サイドシル34の後端部に連結されている。なお、サイドシル34とリアフレーム35との連結部位は、閉断面面積が大きくされたトルクボックス部36とされている。
【0030】
リアパネル部33の左右側方には、サスペンションタワー部37が形成されている。このサスペンションタワー部37に対して、サスペンションダンパ17の上端部が連結される。また、左右一対のリアフレーム35(の車幅方向内方側側面)同士が、リアパネル部33の下面に接合されたクロスメンバによって連結されている。より具体的には、少なくとも、前クロスメンバ3および後クロスメンバ4と上下方向に重なるように配設されたクロスメンバ38A、38B(図13図14参照)や、キックアップ部32の状態部と莉オフィスアクションパネル部33の境界付近に配設されたクロスメンバ38Cを有する。このように、サブフレーム1の車体への連結部位となる部分に対応させてクロスメンバ38A、38Bを配設することにより、サブフレーム1の車体への連結付近の車体剛性をも大幅に向上させることができる。
【0031】
図1図4に示すようなサブフレーム1は、そのサイドメンバ2の前端部が、固定具41によって、リアフレーム35の前端部下面に連結されている(特に図11参照)。また、前クロスメンバ3の両端部が、固定具42によって、リアフレーム35の下面に対して連結されている(特に図11図13参照)。さらに、後クロスメンバ4の両端部が、固定具43によって、リアフレーム35の下面に連結されている(特に図11図14参照)。サスペンションダンパ17の上端部は、サスペンションタワー部37に連結される。なお、実施形態では、上記固定具41〜43を利用したサブフレーム1の車体への取付けは、ゴム等の弾性部材を介在させることなく行うようになっており、これにより、ハンドル操作したとき等の車体応答性が極めて良好なものとなっている。
【0032】
図16図18に示すように、自動車は後輪のみが駆動される後輪駆動車とされていて、車体後部には、デファレンシャルギアボックス51が配設されている。このデファレンシャルギアボックス51は、その前端部51a(回転入力部)が前クロスメンバ3上に位置するように、かつ差動ギアを内蔵したギアケース部51bが、前クロスメンバ3と後クロスメンバ4との間の空間に位置するように配設される。デファレンシャルギアボックス51の上方には、燃料タンク52が配設される(図16参照)。なお、図16中、53は排気管、54はプロペラシャフトである。また、図17図18中55はパワープラントフレームである。
【0033】
ここで、3本のロアリンク11〜13には、特に旋回時等には車輪支持部材16に取付けられた車輪(後輪)からの外力が作用し、特に中央に位置するロアリンク11には、他のサスペンションリンク12〜15に比して、より大きな外力が入力される。このロアリンク11に入力された外力は、サイドメンバ2と前クロスメンバ3との連結部位に設けた中央取付部21という剛性の優れた部分でしっかりと受け止められることになる。また、ロアリンク11から中央取付部21に入力された外力は、サイドメンバ2と前クロスメンバ3とに効果的に分散されることになる。ロアリンク12、13は、サイドメンバ2のうち車体への連結部位に近い位置に取付けられるので、このロアリンク12、13の支持剛性も十分高いものとされる。これにより、ロアリンク11〜13に対するリンク支持剛性を高いものとして確保することができる。
【0034】
サブフレーム1のうちアッパリンク14、15に対する取付部位は、前クロスメンバ3、後クロスメンバ4という剛性に優れた部分となり、アッパリンク14、15の支持剛性も十分に確保される。また、サブフレーム1には、別途大型のブレース部材のような車体と連結する補強部材を必要としないので、軽量化の上でも好ましいものとなる。
【0035】
略V字形状とされた前クロスメンバ3は、図3一点鎖線で示すように、車体フロアと共働して三角形状のトラス構造を構成するので、サブフレーム1の車体への連結部位付近の剛性が大幅に向上される。
【0036】
図15に示す側面視において、車体フロア(キックアップ部32、リアパネル部33)とサブフレーム1とによって、図中一点鎖線で示すように、強度的に好ましい楕円形状で囲まれた剛性の優れた部分が構成される。ただし、楕円形状の場合、その長径方向に延びるように変形しやすいものとなるが、この楕円形状部分の略中心を連結するように上下方向に延びるブラケット5が位置されているので、この楕円形状が潰れ変形するのが効果的に防止され、サブフレーム1を車体へ取付けた後の状態でのサブフレーム1付近の車体剛性が大幅に向上されることになる。
【0037】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。後クロスメンバ4は存在しないようにしてもよく、この場合は、サイドメンバ2の後端部を直接的に車体に連結すればよい。なお、車体取付前にサスペンション関連部品を組み付けた状態を維持するために、例えば、左右一対のサイドメンバ2の後端部下面同士を仮に連結しておく治具を用い、サブフレーム1を車体へ組み付けた後に、この治具を除去するようにすればよい。また、後クロスメンバ4を設けない場合は、この後クロスメンバ4に相当する位置付近にある車体側のクロスメンバ(38C)に対して、左右一対のサイドメンバ2の後端部を連結するようにしてもよい。サブフレーム1の車体への取付に際して、ゴム等の弾性部材を別途介在させるようにしてもよい(乗り心地改善や振動改善)。自動車としては、前輪および後輪が共に駆動される4輪駆動車であってもよく、前輪のみが駆動される前輪駆動車であってもよい。オープンカーとしては、少なくともル−フそのものを有しない態様をとり得るフルオープン形式であってもく、ル−フの前後方向一部が車幅方向全長に渡って存在しないセミオープン形式であってもよい。サイドフレーム1に取付けられるサスペンション形式は、マルチリンク式に限らず、適宜の形式のものを採択することができ、例えば、ロアアームとアッパアームとを有するダブルウイッシュボーン式や、サスペンションダンパ37がアッパアームを兼用したストラット式等であってもよい。勿論、本発明はオープンカーに限定されないものであり、ルーフを有する一般的な自動車用の車体であってよい。本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、自動車の後部車体構造として好適である。
【符号の説明】
【0039】
W:車輪
R:路面
1:サブフレーム
2:サイドメンバ
3:前クロスメンバ
4:後クロスメンバ
5:ブラケット
11〜13:ロアリンク(サスペンションリンク)
14、15:アッパリンク(サスペンションリンク)
16:車輪支持部材
17:サスペンションダンパ
21:中央取付部
22:前取付部
23:後取付部
24:前上取付部
25:後上取付部
31:車室フロア部
32:キックアップ部
33:リアパネル部
34:サイドシル
35:リアフレーム
36:トルクボックス部
37:サスペンションタワー部
41〜43固定具(サブフレーム取付用)
51:デファレンシャルギアボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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