(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954179
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】非水系二次電池用電極、それを備えた非水系二次電池及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/60 20060101AFI20160707BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20160707BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20160707BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20160707BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20160707BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20160707BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20160707BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20160707BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20160707BHJP
【FI】
H01M4/60
H01M4/137
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0525
H01M10/0569
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-539749(P2012-539749)
(86)(22)【出願日】2011年10月19日
(86)【国際出願番号】JP2011074054
(87)【国際公開番号】WO2012053553
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-115093(P2011-115093)
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-236765(P2010-236765)
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 信宏
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−287976(JP,A)
【文献】
特開2009−037868(JP,A)
【文献】
特表2007−508709(JP,A)
【文献】
特開2010−118320(JP,A)
【文献】
特開2004−342605(JP,A)
【文献】
特開2004−111374(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/035648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、前記
ジカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を電極活物質として備え、
前記アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、Liであり、
前記有機骨格層は、次式(1)〜(3)のうちいずれか1以上の芳香族化合物を備えている、非水系二次電池用電極。
【化1】
【請求項2】
前記層状構造体は、前記芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有する、請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項3】
前記有機骨格層は、前記ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが前記芳香族環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含む、請求項1又は2に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項4】
前記層状構造体は、負極活物質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項5】
前記層状構造体は、アルミニウム金属の集電体に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用電極であって、
アルカリ金属を吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極合材と、
前記アルカリ金属を吸蔵及び放出する前記層状構造体を負極活物質として含む負極合材と、
一方の面に前記正極合材が形成され、且つ他方の面に前記負極合材が形成されており、前記正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりも前記アルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属で形成された集電体と、
を備えた非水系二次電池用電極。
【請求項7】
前記集電体は、前記集電体金属がアルミニウム金属である、請求項6に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項8】
前記正極合材は、一般式LiNixMn2-xO4(但し0≦x≦0.5である。)で表されるスピネル構造を有する前記正極活物質、及び一般式LiNi1-yMyO2(但し0≦y≦0.5であり、Mは、Mg,Ti,Cr,Fe,Co,Cu,Zn,Al,Ge,Snから選ばれる1以上である。)で表される層状構造を有する前記正極活物質、のうち少なくとも一方を含んでいる、請求項6又は7に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項9】
前記正極合材が形成された正極側と前記負極合材が形成された負極側との平均充放電電位差が4.0V以上である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用電極と、
アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えた非水系二次電池。
【請求項11】
前記イオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを含有している、請求項10に記載の非水系二次電池。
【請求項12】
前記イオン伝導媒体は、環状構造のハロゲン化カーボネートと鎖状構造のハロゲン化カーボネートとを含有している、請求項10又は11に記載の非水系二次電池。
【請求項13】
前記非水系二次電池用電極は、2以上の芳香族環が縮合した縮合多環構造の有機骨格層を有する前記層状構造体を電極活物質として備えており、
前記イオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを前記イオン伝導媒体の全体に対して60体積%以上100体積%以下の範囲で含有している、請求項10〜12のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
【請求項14】
前記非水系二次電池用電極は、2以上の芳香族環が結合した結合多環構造の有機骨格層を有する前記層状構造体を電極活物質として備えており、
前記イオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを前記イオン伝導媒体の全体に対して40体積%以上100体積%以下の範囲で含有している、請求項10〜12のいずれか1項に記載の非水系二次電池。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の非水系二次電池を複数接続して構成した、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用電極、それを備えた非水系二次電池及び組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンと電気の両方のエネルギーで駆動することのできるハイブリッド自動車や、無停電電源、移動体通信機器、携帯電子機器等の電源を必要とする機器の普及に伴い、その電源として、充放電可能な蓄電デバイスの高性能化の要求は非常に大きくなっている。具体的には、出力、容量、繰り返し寿命等の特性において高性能であることが要求されている。
【0003】
このような特性を有する蓄電デバイスを実現するために、有機化合物を電極活物質に用いる検討が行われている。最近、高速の充放電が期待できるリチウムの吸蔵放出が可能な新しい活物質として、π電子共役雲を有する有機化合物が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、有機骨格をトランスムコン酸ジリチウム又はテレフタル酸ジリチウムとしたジカルボン酸リチウムを含む共役系有機活物質が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この活物質は、有機骨格の共役構造を特徴としており、その共役構造により酸化還元(リチウムの吸蔵・放出)を可能としている。
【0004】
また、酸化マンガンや酸化鉄などの金属酸化物(例えば、MOx、MはFe,Co,Ni,Cu,Mnなど)のコンバージョン反応を用いた負極が提案されている(例えば、非特許文献2〜4参照)。この負極は、MOx+xe
-+2xLi
+→M+xLi
2Oという反応式により充放電する。
【特許文献1】特開2004−111374号公報
【特許文献2】特開2004−342605号公報
【非特許文献1】Nature Material Vol.8,120−125(2009)
【非特許文献2】Nature Material Vol.5,567−573(2006)
【非特許文献3】J.Power Sources.196,3346−3349(2011)
【非特許文献4】Electrochm.Commu.8,383−388(2006)
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1,2の電池では、リチウム金属基準で作動電位が2.8V〜3.7Vであり、エネルギー密度がまだ十分ではなかった。また、非特許文献1の電池では、共役構造によりリチウムの吸蔵・放出を可能としているが、充放電容量がまだ十分ではなく、充放電特性をより高めることが求められていた。また、リチウム電池用負極材料は現在のところ主に黒鉛などの炭素材料が用いられており、金属リチウム基準で約50mVにて酸化還元反応が起こる。この電位では金属リチウムの電位に近いため、リチウム金属の電位より十分高く、且つ電池自体の作動電圧をより大きく確保可能な二次電池が求められている。
【0006】
また、コンバージョン反応を用いる負極においては、負極としては充電反応に相当するリチウム吸蔵電位が金属リチウム基準において0.5V〜1.0Vで反応するものの、負極としては放電反応に相当するリチウム放電電位が金属リチウム基準において1.5V〜2.0Vとなり、分極が大きいことがあった。このため、コンバージョン反応を用いる電極を負極として用いる場合は、放電時に電池電圧が低下してしまう問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、充放電特性をより高めることができる非水系二次電池用電極及びそれを備えた非水系二次電池を提供することを主目的とする。
【0008】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、ジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を用い、このカルボン酸に含まれる酸素にリチウムを配位させて構造体を作製したところ、化学的に安定でリチウム金属基準での電位が好適であり、充放電特性をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の非水系二次電池用電極は、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、前記カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を電極活物質として備えたものである。
【0010】
本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。
【0011】
また、本発明の非水系二次電池用電極は、アルカリ金属を吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極合材と、前記アルカリ金属を吸蔵及び放出する前記層状構造体を負極活物質として含む負極合材と、一方の面に前記正極合材が形成され、且つ他方の面に前記負極合材が形成されており、前記正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりも前記アルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属で形成された集電体と、を備えたものとしてもよい。
【0012】
また、本発明の非水系二次電池は、上述したいずれかの非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備え、前記イオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを含有しているものとしてもよい。
【0013】
本発明の組電池は、上記集電体金属を用いた非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を複数接続して構成したものである。
【0014】
本発明の非水系二次電池用電極及び非水系二次電池は、充放電特性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、活物質である層状構造体は、ジカルボン酸の酸素とアルカリ金属元素(例えばリチウム)とが4配位を形成しており、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことで充放電サイクル特性の安定性がより高められるものと推察される。この層状構造体は、有機骨格層が酸化還元部位として機能し、アルカリ金属元素層が充放電するアルカリ金属イオンの吸蔵部位として機能するものと推察される。また、例えば、リチウムイオンを用いる非水系二次電池の負極活物質について考察すると、本発明の電極は、充放電電位がリチウム金属基準で0.5V以上1.0Vの範囲であるので、電池の作動電圧低下にともなう大幅なエネルギー密度の低下を抑えることができる一方、リチウム金属基準に対し0V付近でのリチウム金属の析出も抑制することができる。この新規な層状構造体(結晶性有機・無機複合材料)により、充放電特性をより高めることができるものと推察される。
【0015】
また、層状構造体を電極活物質として備え、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりもアルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属で形成された集電体を備えた非水系二次電池用電極及び組電池では、集電体金属とアルカリ金属との合金化反応が抑制されるため、集電体の表裏に正極合材層と負極合材層とを形成することができる。このため、集電体金属を用いた非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を効率よく複数接続することができる。したがって、高エネルギー密度を有する非水系二次電池を提供することができる。
【0016】
また、層状構造体を電極活物質として備えた非水系二次電池用電極と、ハロゲン化カーボネートを含有しているイオン伝導媒体とを備えた非水系二次電池は、充放電のサイクル特性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、層状構造体の電極活物質の初期のアルカリ金属イオンの吸蔵時に、ハロゲン化カーボネートが還元され、ハロゲン化アルカリ(例えばフッ化リチウム)が生成し、層状構造体のカルボン酸基とハロゲン化アルカリとの間で強固な分子間力的な相互作用が生じることで電極活物質の界面を安定化させることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の層状構造体の構造の一例を示す説明図。
【
図2】本発明の非水系二次電池20の一例を示す模式図。
【
図6】実施例1,2及び比較例1,2のX線回折測定結果。
【
図7】実施例1,2及び比較例1,2の示差熱熱質量同時測定結果。
【
図14】実験例9の2,10サイクル目の充放電曲線。
【
図15】実験例15の2,10サイクル目の充放電曲線。
【
図16】実験例10の2,10サイクル目の充放電曲線。
【
図17】実験例16の2,10サイクル目の充放電曲線。
【
図18】ハロゲン化カーボネートの体積割合と容量維持率との関係を表す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の非水系二次電池は、アルカリ金属を吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、アルカリ金属を吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しアルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。本発明の非水系二次電池は、負極及び正極の少なくとも一方に、本発明の層状構造体を電極活物質として備えている。本発明の層状構造体は、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有している。この本発明の層状構造体は、負極活物質とするのが好ましい。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。また、充放電により吸蔵・放出されるアルカリ金属は、アルカリ金属元素層のアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。ここでは、説明の便宜のため、層状構造体を負極活物質とし、アルカリ金属元素層にLiを含み、充放電により吸蔵・放出されるアルカリ金属をLiとした非水系二次電池を以下主として説明する。
【0019】
本発明の負極は、層状構造体を負極活物質として備えている。
図1は、本発明の層状構造体の構造の一例を示す説明図である。この層状構造体は、有機骨格層とアルカリ金属元素層とを備えている。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(1)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(1)において、Rは2以上の芳香族環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属元素である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
有機骨格層は、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含んでいる。この2以上の芳香族環構造は、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香族環が結合した芳香族多環化合物としてもよいし、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香族環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。この芳香族環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香族環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香族環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香族環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香族環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。こうすれば、有機骨格層とアルカリ金属元素層とによる層状構造を形成しやすい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香族環構造がナフタレンであれば2,6位が挙げられ、ピレンであれば2,7位が挙げられる。この有機骨格層は、一般式(2)で示される構造を含む芳香族化合物により構成されているものとしてもよい。但し、Rは2以上の芳香族環構造を有する上記芳香族環構造であるものとしてもよい。具体的には、この有機骨格層は、次式(3)〜(5)のうちいずれか1以上の芳香族化合物を備えているものとしてもよい。但し、式(3)〜(5)において、nは2以上5以下の整数、mは0以上3以下の整数であることが好ましい。nが2以上5以下では、有機骨格層の大きさが好適であり、より充放電容量を高めることができる。また、mが0以上3以下では、有機骨格層の大きさが好適であり、より充放電容量を高めることができる。この式(3)〜(5)において、これらの芳香族化合物は、その構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
アルカリ金属元素層は、
図1に示すように、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成している。このアルカリ金属元素は、Li,Na及びKのうちいずれか1以上としてもよいが、このうちLiが好ましい。アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないものと推察される。このように構成された層状構造体は、
図1に示すように、構造においては、有機骨格層とこの有機骨格層の間に存在するLi層(アルカリ金属元素層)とにより形成されている。また、エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e
-)サイトとして機能する一方、Li層はLi
+吸蔵サイトとして機能するものと考えられる。即ち、この層状構造体は、次式(6)に示すようにエネルギーを貯蔵・放出すると考えられる。更に、この層状構造体において、有機骨格層にはLiが入り込み可能な空間が形成されていることがあり、式(6)におけるアルカリ金属層以外の部分にもLiを吸蔵放出可能であり、充放電容量をより高めることができると推察される。
【0025】
【化4】
【0026】
本発明の非水系二次電池の負極は、例えば層状構造体からなる負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。導電材は、負極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。負極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。このうち、負極の集電体は、アルミニウム金属とすることがより好ましい。即ち、層状構造体は、アルミニウム金属の集電体に形成されていることが好ましい。アルミニウムは、豊富に存在し、耐食性に優れるからである。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0027】
本発明の非水系二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS
2、TiS
3、MoS
3、FeS
2などの遷移金属硫化物、Li
(1-a)MnO
2(0<a<1など、以下同じ)、Li
(1-a)Mn
2O
4などのリチウムマンガン複合酸化物、Li
(1-a)CoO
2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li
(1-a)NiO
2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV
2O
3などのリチウムバナジウム複合酸化物、V
2O
5などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiV
2O
3などが好ましい。また、正極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ負極で例示したものを用いることができる。正極の集電体には、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、負極と同様のものを用いることができる。
【0028】
本発明の非水系二次電池のイオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
【0029】
また、本発明のイオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを含有していることが好ましい。こうすれば、層状構造体の電極活物質の初期のアルカリ金属イオンの吸蔵時に、ハロゲン化カーボネートが還元され、ハロゲン化アルカリ(例えばフッ化リチウム)が生成することで電極活物質の界面を安定化させることができる。このため、非水系二次電池の充放電のサイクル特性をより向上することができる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、このうち、化学的安定性の高いフッ素がより好ましい。このイオン伝導媒体は、環状構造のハロゲン化カーボネートと鎖状構造のハロゲン化カーボネートとを含有していることがより好ましい。環状構造のハロゲン化カーボネートは、例えば、環状構造及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートの全体に対して、20体積%以上80体積%以下で配合されていることが好ましく、40体積%以上60体積%以下で配合されていることがより好ましい。20体積%以上80体積%以下の範囲では、充放電サイクル特性をより向上することができる。また、鎖状構造のハロゲン化カーボネートは、例えば、環状構造及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートの全体に対して、20体積%以上80体積%以下で配合されていることが好ましく、40体積%以上60体積%以下で配合されていることがより好ましい。20体積%以上80体積%以下の範囲では、充放電サイクル特性をより向上することができる。また、環状構造及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートは、環状構造及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートの全体に対して、50体積%で配合されていてもよい。環状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネートや、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネートのいずれかの官能基の一部をハロゲン化したものなどが挙げられる。具体的には、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)や、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のほか、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−[1,3]−ジオキソラン−2−オン、4−(2,2,3,3−テトラフルオロ−プロポキシメチル)−[1,3]−ジオキソラン−2−オン、4−(2,3,3,3−テトラフルオロ−2−トリフルオロメチル−プロピル)−[1,3]−ジオキソラン−2−オン、トリフルオロプロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどが挙げられ、このうち1,2−ジフルオロエチレンカーボネートがより好ましい。充放電のサイクル特性をより向上することができるからである。鎖状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネートのいずれかの官能基の一部をハロゲン化したものなどが挙げられる。具体的には、トリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートや、3−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン(CHF
2CF
2CH
2OCF
2CF
2H)、3−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン(CHF
2CF
2CH
2OCF
2CFClH)、エチル−2,2−ジフルオロアセテート(CHF
2COOCH
2CH
3)、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(CF
3CH
2OCOOCH
2CF
3)、ビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート(CF
3CH
2OCOOCH
2CF
3)、ビス−(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)カーボネート(CHF
2CF
2CH
2OCOOCH
2CF
2CF
2H)などが挙げられ、このうちトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートがより好ましい。その他、例えば、2−トリフルオロメチル−3−メトキシパーフルオロペンタン(CF
3CF(CF
3)CF(OCH
3)CF
2CF
3)、2−トリフルオロ−2−フルオロ−3−ジフルオロプロポキシ−3−ジフルオロ−4−フルオロ−5−トリフルオロペンタン(CF
3CHFCF
2CH(CH
3)OCF
2CHFCF
3)などが挙げられる。
【0030】
非水系二次電池用電極が、2以上の芳香族環が縮合した縮合多環構造の有機骨格層を有する層状構造体を電極活物質として備えている場合には、このイオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを、イオン伝導媒体の全体に対して60体積%以上100体積%以下の範囲で含有していることが好ましく、70体積%以上がより好ましく、75体積%以上が更に好ましい。60体積%以上100体積%以下の範囲では、充放電のサイクル特性を一層向上することができる。ここで、縮合多環構造の有機骨格層は、例えば、ナフタレンやアントラセンなど2以上の芳香族環が縮合したものをいい、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの構造を有するものが含まれる。また、縮合多環構造の有機骨格層を有する層状構造体を電極活物質として備えている場合には、環状構造のハロゲン化カーボネート及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートのうち少なくともいずれか一方を、非水電解液の全体に対して30体積%以上50体積%以下の範囲で含有していることが好ましい。この30体積%以上50体積%以下の範囲では、更に高いサイクル特性とすることができる。環状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートが挙げられ、鎖状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、トリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートなどが挙げられる。
【0031】
非水系二次電池用電極が、2以上の芳香族環が結合した結合多環構造の有機骨格層を有する層状構造体を電極活物質として備えている場合には、このイオン伝導媒体は、ハロゲン化カーボネートを、イオン伝導媒体の全体に対して40体積%以上100体積%以下の範囲で含有していることが好ましく、50体積%以上がより好ましく、60体積%以上が更に好ましい。40体積%以上100体積%以下の範囲では、充放電のサイクル特性を一層向上することができる。結合多環構造の有機骨格層は、例えば、ビフェニルやトリフェニルなど2以上の芳香族環が結合したものをいい、例えば、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの構造を有する有機骨格層が含まれる。また、結合多環構造の有機骨格層を有する層状構造体を電極活物質として備えている場合には、環状構造のハロゲン化カーボネート及び鎖状構造のハロゲン化カーボネートのうち少なくともいずれか一方を、非水電解液の全体に対して20体積%以上50体積%以下の範囲で含有していることが好ましい。この20体積%以上50体積%以下の範囲では、充放電のサイクル特性を一層向上することができる。環状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートが挙げられ、鎖状構造のハロゲン化カーボネートとしては、例えば、トリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートなどが挙げられる。
【0032】
本発明の非水系二次電池に含まれている支持塩は、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiSbF
6、LiSiF
6、LiAlF
4、LiSCN、LiClO
4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl
4などが挙げられる。このうち、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4などの無機塩、及びLiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この電解質塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。電解質塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
【0033】
また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、固体のイオン伝導性ポリマーをイオン伝導媒体として用いることもできる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
【0034】
本発明の非水系二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、非水系二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明の非水系二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
図2は、本発明の非水系二次電池20の一例を示す模式図である。この非水系二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この非水系二次電池20は、正極22と負極23との間の空間にアルカリ金属塩(リチウム塩)を溶解したイオン伝導媒体27が満たされている。この負極23は、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含み、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香族化合物の対角位置に結合されている有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素に配位したアルカリ金属元素層と、を備えた層状構造体を負極活物質として含んでいる。
【0036】
本発明の非水系二次電池は、活物質である層状構造体が、ジカルボン酸の酸素とLi元素とが4配位を形成しており、非水系に溶けにくく、結晶構造を保つことで充放電サイクル特性の安定性がより高められるものと推察される。この層状構造体は、有機骨格層が酸化還元部位として機能し、Li層がLiイオンの吸蔵部位として機能するものと推察される。また、負極は、充放電電位がリチウム金属基準で0.5V以上1.0Vの範囲を示すため、電池の作動電圧低下に伴う大幅なエネルギー密度の低下を抑えることができる一方、リチウム金属の析出も抑制することができる。この新規な層状構造体(結晶性有機・無機複合材料)により、充放電特性をより高めることができるものと推察される。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば上述した実施形態では、非水系二次電池として説明したが、非水系二次電池用電極としてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、正極活物質を含む正極合材が正極の集電体に形成され、負極活物質を含む負極合材が負極の集電体に形成された電極を一例として説明したが、正極活物質を含む正極合材が集電体の一方の面に形成され、負極活物質を含む負極合材が集電体の他方の面に形成された双極型電極としてもよい。即ち、本発明の非水系二次電池用電極は、アルカリ金属を吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極合材と、このアルカリ金属を吸蔵及び放出する上述の層状構造体を負極活物質として含む負極合材と、一方の面に正極合材が形成され、且つ他方の面に負極合材が形成されており、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりも上記アルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属で形成された集電体と、を備えたものとしてもよい。こうすれば、正極及び負極の集電体を別の材料とする必要が無く、材料調達や正極、負極の造り分けなど製造工程における煩雑さをより低減することができ、二次電池の集電体の占める体積をより低減することができる。また、この双極型電極をイオン伝導媒体を介して複数積層させることにより、非水系二次電池を効率よく複数接続することができる。
【0040】
この双極型電極において、充放電により吸蔵及び放出されるアルカリ金属は、層状構造体におけるアルカリ金属元素層のアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができ、このうち、エネルギー密度の観点からはLiが好ましい。なお、説明の便宜のため、吸蔵及び放出されるアルカリ金属がLiである場合を1例として以下説明する。この双極型電極において、集電体は、集電体金属がアルミニウム金属であることが好ましい。アルミニウムとリチウムとの合金化反応は、リチウム金属基準で0.27Vにて起きる。本発明の層状構造体は、リチウム金属基準で0.7V以上0.85V以下の範囲で主として充放電反応する。したがって、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりもアルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属としてアルミニウム金属を用いることができる。
【0041】
この双極型電極において、正極合材は、本発明の非水系二次電池用負極活物質を負極に用いた場合に、作動可能な正極活物質を含むものとすればよい。例えば、正極合材は、一般式LiNi
xMn
2-xO
4(但し0≦x≦0.5である。)で表されるスピネル構造を有する正極活物質、及び一般式LiNi
1-yM
yO
2(但し0≦y≦0.5,より好ましくはy≦0.2であり、Mは、Mg,Ti,Cr,Fe,Co,Cu,Zn,Al,Ge,Snから選ばれる1以上である。)で表される層状構造を有する正極活物質、のうち少なくとも一方を含んでいるものとしてもよい。具体的には、LiMn
2O
4やLiNi
0.5Mn
1.5O
4などのスピネル型構造のもの、LiCoO
2やLiNiO
2、LiNi
0.5Mn
0.5O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2などの層状岩塩構造のものなどが挙げられる。このうち、スピネル構造のものが電池電圧をより高めることができ、より好ましい。この双極型電極において、正極合材が形成された正極側と負極合材が形成された負極側との平均充放電電位差が3.0V以上とすることが好ましく、4.0V以上であることがより好ましい。例えば、層状構造体の負極活物質と上記層状構造を有する正極活物質とを用いると、平均充放電電位差を3.0V以上とすることができる。また、層状構造体の負極活物質と上記スピネル構造を有する正極活物質とを用いると、平均充放電電位差を4.0V以上とすることができる。
【0042】
上述した実施形態では、正極と、負極と、イオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池として説明したが(
図2参照)、上記双極型電極である非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を複数接続して構成した組電池としてもよい。
図3は、本発明の組電池30の一例を示す模式図である。また、
図4は、本発明の組電池30Bの一例を示す模式図である。また、
図5は、本発明の組電池30Cの一例を示す模式図である。
図3に示すように、組電池30は、一端に負極集電端子35を有し、他端に正極集電端子36を有し、双極型電極38とイオン伝導媒体34とを複数積層した構造を有している。双極型電極38は、集電体31と、正極合材層32と、負極合材層33と、を備え、集電体31には、一方の面に正極合材層32が形成され、他方の面に負極合材層33が形成されている。そして、隣り合う双極型電極38の集電体31と集電体31との間には、正極合材層32、イオン伝導媒体34、負極合材層33が順に配置されており、この配置により単電池37が形成されている。このようにして、組電池30は、集電体31を共有した複数の単電池37が複数積層した構造を有している。こうすれば、双極型電極38を用いて、より効率的に複数の単電池37を積層することができる。
【0043】
本発明の組電池において、イオン伝導媒体34は、液体でも構わないが、ポリマーゲル電解質や全固体電解質など、固形状又は固形状に近いものとすることがより好ましい。こうすれば、双極型電極38とイオン伝導媒体34とをより容易に積層することができる。全固体電解質としては、無機化合物では、例えば、ガーネット型酸化物Li
7La
3Zr
2O
12、ガラスセラミックスLi
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3、ガラスセラミックスLi
1+bTi
2Si
bP
3-bO
12・AlPO
4、などが挙げられる。ガーネット型酸化物としては、例えば一般式Li
5+zLa
3(Zr
z,A
2-z)O
12(但し1.4≦z<2であり、AはSc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,Ga及びGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素)とするのがより好ましい。電位窓が広く、リチウム伝導度がより高いからである。また、本発明の組電池において、集電体31は、上述したように、アルミニウムとすることが好ましい。また、充放電により吸蔵放出されるアルカリ金属は、リチウムであることがより好ましい。
【0044】
本発明の組電池において、例えば、一般式LiNi
1-yM
yO
2(但し0≦y≦0.5であり、Mは、Mg,Ti,Cr,Fe,Co,Cu,Zn,Al,Ge,Snから選ばれる1以上である。)で表される層状構造を有する正極活物質を含む正極合材層32Bを形成した双極型電極38Bを用いた場合、
図4に示すように、単電池37Bを4層に積層した組電池30Bとすることにより、12V級の積層型組電池とすることができる。また、本発明の組電池において、例えば、一般式LiNi
xMn
2-xO
4(但し0≦x≦0.5である。)で表されるスピネル構造を有する正極活物質を含む正極合材層32Cを形成した双極型電極38Cを用いた場合、
図5に示すように、単電池37Cを3層に積層した組電池30Cとすることにより、12V級の積層型組電池とすることができる。このように、所望の正極活物質と、積層数を変更することにより、所望の電池電圧の組電池を容易に設計することができる。
【0045】
以上詳述した、双極型電極(非水系二次電池用電極)及び双極型電極を備えた組電池では、集電体金属とアルカリ金属との合金化反応が抑制されるため、集電体の表裏に正極合材と負極合材とを形成することができる。このため、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く且つ負極活物質の酸化還元電位よりも上記アルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属を用いた双極型電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を効率よく複数接続することができる。したがって、高エネルギー密度を有する組電池(非水系二次電池)をより容易に実現することができる。
【実施例】
【0046】
以下には、本発明の非水系二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。
【0047】
[実施例1]
層状構造体としての2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウム(式(7)参照)を合成した。2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムは、出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H
2O)を用いた。まず、水酸化リチウム1水和物0.556gにメタノール100mLを加え、撹拌した。水酸化リチウム1水和物を溶解したのち、2,6−ナフタレンジカルボン酸1.0gを加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより白色の粉末試料を得た。得られた白色粉末試料を実施例1の活物質粉体とした。
【0048】
【化5】
【0049】
[塗工電極の作製]
実施例1の活物質粉体を用いて、非水系二次電池用電極を作製した。実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムを60質量%、導電材としてカーボンブラックを30質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10質量%の割合で混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
【0050】
[二極式評価セルの作製]
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比で30:40:30の割合となるよう混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで二極式評価セルを作製した。得られたものを実施例1の二極式評価セルとした。
【0051】
[実施例2]
実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムの代わりに4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム(式(8)参照)とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られた白色粉末試料を実施例2の活物質粉体とした。また、実施例2の活物質粉体を用い、実施例1と同様の工程を経て、実施例2の非水系二次電池用電極を作製すると共に、この実施例2の非水系二次電池用電極を用いて二極式評価セルを作製した。
【0052】
【化6】
【0053】
[比較例1]
実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムの代わりにテレフタル酸リチウム(式(9)参照)とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られた白色粉末試料を比較例1の活物質粉体とした。また、比較例1の活物質粉体を用い、実施例1と同様の工程を経て、比較例1の非水系二次電池用電極を作製すると共に、この比較例1の非水系二次電池用電極を用いて二極式評価セルを作製した。
【0054】
【化7】
【0055】
[比較例2]
実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムの代わりに2,3−ナフタレンジカルボン酸リチウム(式(10)参照)とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られた白色粉末試料を比較例2の活物質粉体とした。また、実施例2の活物質粉体を用い、実施例1と同様の工程を経て、比較例2の非水系二次電池用電極を作製すると共に、この比較例2の非水系二次電池用電極を用いて二極式評価セルを作製した。
【0056】
【化8】
【0057】
(X線回折測定)
実施例1,2及び比較例1,2の活物質粉体の粉末X線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製RINT2200)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、4°/分の走査速度で2θ=10°〜90°の角度範囲で行った。
図6は、実施例1,2及び比較例1,2のX線回折測定結果である。
図6に示すように、実施例1,2及び比較例1は、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶を仮定した時の(001)、(111)、(102)、(112)ピークが明確に現れていることから、
図1に示した、リチウム層と有機骨格層からなる層状構造を形成していると推察された。また、実施例1,2及び比較例1は、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶であることから、4つの異なる芳香族ジカルボン酸分子の酸素とリチウムとが4配位を形成する構造を形成し、有機骨格の部分でπ電子共役雲による相互作用が働いているものと推察された。一方、比較例1では、ジカルボン酸アニオンの結合位置から構造的にアルカリ金属層を形成しにくく、空間群P2
1/cに帰属されるピークが現れておらず、異なる結晶構造であることが明らかである。
【0058】
(示差熱熱質量同時測定)
実施例1,2及び比較例1,2の活物質粉体の示差熱熱質量同時測定を行った。測定は示差熱熱質量同時測定装置(リガク製Thermo Mass)を用いた。測定は、測定温度範囲を室温から750℃とし、昇温速度10℃/分で行った。
図7は、実施例1,2及び比較例1,2の示差熱熱質量同時測定結果である。比較例1の材料は、質量減少が450℃付近から起きるのに対し、実施例1,2及び比較例1は、550℃へと熱的安定性が向上している。この理由は、実施例1,2及び比較例1の空間群P2
1/cに帰属される単斜晶の結晶構造ではπ電子相互作用による組織化と4つの異なる芳香族ジカルボン酸の酸素とリチウムとが4配位を形成することにより、熱的安定性に優れた結晶となっているものと推察された。
【0059】
(充放電試験)
実施例1,2及び比較例1,2の二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.02mAで0.5Vまで還元(充電)したのち、0.02mAで3.0Vまで酸化(放電)させた。この充放電操作の1回目の還元容量をQ(1st)
red、酸化容量をQ(1st)
oxiとした。
図8は、実施例1の充放電曲線であり、
図9は、実施例2の充放電曲線であり、
図10は、比較例1の充放電曲線であり、
図11は、比較例2の充放電曲線である。また、表1に実施例1,2及び比較例1,2の二極式評価セルの充放電試験結果をまとめた。
図8〜11及び表1に示すように、本発明の実施例1,2のセルは、比較例1に比べ大きな酸化容量を発現することがわかった。例えば、実施例2においては、理論容量200mAh/gよりも高い容量が得られたが、この理由としては、有機骨格層に形成された空間にもリチウムの吸蔵・放出が起きているためではないかと推察された。また、実施例1,2のセルでは電位平坦部分であるプラトー領域をもつのに対し、比較例2のセルでは明確なプラトー領域が見られなかった。このことから、実施例1,2ではリチウム層と有機骨格層とを備えた層状構造をとることによりリチウム金属基準で0.7V以上0.85V以下の範囲で平坦な電位が現れるものと推察された。比較例1は、実施例1,2に比して充放電容量が小さかった。これは、芳香環が1つしかなく導電性が低いなどに起因していると推察された。芳香環が1つしかない場合には、リチウム吸蔵時の僅かな体積変化に伴い、芳香環によるπ電子相互作用が弱くなり、π電子の重なりが少なくなることで導電性が低下し、充放電容量が減少すると考えられる。一方、芳香環が2つ以上ある場合には、リチウム吸蔵時に体積変化が生じてもπ電子の重なりが多いため、安定した導電性を示し、充放電容量も減少しないものと推察された。芳香環が多いとリチウムの吸蔵サイトに比して有機骨格層が過大となることから、芳香環の数は、2以上5以下程度が好ましいものと推察された。また、実施例1,2では、比較例1に比べてプラトー領域での電位が低電位側にあることから、高電圧な電池設計を期待することができる。実施例1,2では、プラトー領域がリチウム金属基準の電位で0.7V以上0.85V以下の範囲にあり、例えば負極活物質としての黒鉛に比してリチウム金属基準の電位が高く、負極上へのリチウム金属の析出を抑制することができる。また、実施例1,2では、負極活物質としての複合酸化物(例えばリチウムチタン複合酸化物)などの1.5Vに比してリチウム金属基準の電位が低く、電池電圧をより高めることができる。また、実施例1,2では、負極活物質としての金属Siに比して構造的及び熱的に安定であり、充放電サイクル特性がより高いものと推察された。本発明の層状構造体(結晶性有機・無機複合材料)は、充放電サイクル特性に優れた電極活物質として利用することができることが明らかとなった。
【0060】
【表1】
【0061】
次に、本発明の双極型電極について検討した。アルミニウム集電体に負極合材層を形成した負極と、アルミニウム集電体に正極合材層を形成した正極とを別々に作製し、この負極及び正極を用いて二極式セルを組み、充放電特性について検討した。
【0062】
[実施例3]
実施例1の活物質粉体を用いて、非水系二次電池用電極を作製した。実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムを60質量%、導電材としての気相成長炭素繊維(VGCF)を10質量%、導電材としてのカーボンブラック(粒子状導電材)を20質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10質量%の割合で混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。なお、VGCFは、窒素吸着によるBET比表面積が13m
2/gであり、SEM観察した画像に含まれる繊維の長さを計測し平均した平均繊維長が15μmであった。また、カーボンブラックは,窒素吸着によるBET比表面積が225m
2/gであり、SEM観察した画像に含まれる粒子の大きさを計測し平均した平均粒径が25nmであった。このスラリー状合材を10μm厚のアルミニウム集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の負極とした。
【0063】
実施例3の正極は、以下のように作製した。正極活物質としてLiNi
0.5Mn
1.5O
4を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%の割合で混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚のアルミニウム集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の正極とした。
【0064】
[二極式評価セルの作製]
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比で30:40:30の割合となるよう混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記負極及び正極を用い、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで二極式評価セルを作製した。得られたものを実施例3の二極式評価セルとした。
【0065】
[実施例4]
正極活物質としてLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を用いた以外は、実施例3と同様の工程を経て得られたものを実施例4の二極式評価セルとした。
【0066】
[実施例5]
実施例3の負極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータを挟んで作製したものを実施例5の二極式評価セルとした。
【0067】
[比較例3]
負極活物質として黒鉛と易黒鉛化炭素とを混合したものを95質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%の割合で混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。なお、負極活物質は、黒鉛がd
002=0.388nm以下であり、易黒鉛化炭素はd
002=0.34nm以上であり、黒鉛が60質量%、易黒鉛化炭素が40質量%の割合で混合したものを用いた。このスラリー状合材を10μm厚のアルミニウム集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の負極とした。この負極を用いた以外は実施例3と同様の工程を経て得られたものを比較例3の二極式評価セルとした。
【0068】
[比較例4]
比較例3の負極及び実施例4の正極を用いた以外は、実施例3と同様の工程を経て得られたものを比較例4の二極式評価セルとした。
【0069】
[比較例5]
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)を用いた以外は、実施例3と同様の工程を経て得られたものを比較例5の二極式評価セルとした。
【0070】
[比較例6]
比較例5の負極及び実施例4の正極を用いた以外は、実施例3と同様の工程を経て得られたものを比較例6の二極式評価セルとした。
【0071】
[比較例7]
比較例3の負極を用いた以外は、実施例5と同様の工程を経て得られたものを比較例7の二極式評価セルとした。
【0072】
(充放電試験)
実施例3〜5及び比較例3〜7の二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、充放電試験を行った。実施例3では、0.02mAで4.3Vまで充電したのち、0.02mAで3.5Vまで放電させた。実施例4では、0.02mAで3.4Vまで充電したのち、0.02mAで2.5Vまで放電させた。実施例5では、0.02mAで0.5Vまで還元(充電)したのち、0.02mAで3.0Vまで酸化(放電)させた。比較例3では、0.02mAで5.0Vまで充電したのち、0.02mAで4.2Vまで放電させた。比較例4では、0.02mAで4.1Vまで充電したのち、0.02mAで3.2Vまで放電させた。比較例5では、0.02mAで3.5Vまで充電したのち、0.02mAで2.5Vまで放電させた。比較例6では、0.02mAで2.7Vまで充電したのち、0.02mAで1.5Vまで放電させた。比較例7では、0.02mAで0.5Vまで還元(充電)したのち、0.02mAで3.0Vまで酸化(放電)させた。
【0073】
(結果と考察)
図12は、比較例7の充放電曲線であり、
図13は、実施例5の充放電曲線である。また、表2に実施例3,4及び比較例3〜6の二極式評価セルの充放電試験結果をまとめた。表2には、正極材料、負極材料、集電体、動作結果、満充電時の電圧及び放電末電圧、残容量SOC50%での電池電圧を示した。
図12に示すように、黒鉛を含む負極にアルミニウム集電体を用いた比較例7では、還元過程においてリチウム金属基準で0.27Vあたりに電位平坦なプラトー領域を示したが、その後の充放電を示さなかった。この充放電試験後に、セルを解体したところ、電極に腐食が起きており、活物質である黒鉛の充電ではなく、集電体であるアルミニウムの合金化反応が起きたものと考えられた。また、同様に、表2に示すように、集電体をアルミニウム金属とし負極活物質に黒鉛を含む負極を用いた比較例3,4では、電池として動作しなかった。このように、負極活物質を黒鉛とし、集電体をアルミニウムとした電極では、充放電反応電位よりも高い電位でアルミニウムとリチウムとの合金化反応が起きることにより、電極が腐食し、可逆的に動作しないことがわかった。このため、黒鉛を含む負極では、アルミニウム集電体の表裏に負極合材層と正極合材層とを形成した双極型電極を作製しても電池として動作しないものと推察された。一方、集電体をアルミニウム金属とし負極活物質にチタン酸リチウムを含む負極を用いた比較例5,6では、動作はするものの、残容量SOC50%での電圧がそれぞれ3.2V,2.2Vであり、実施例3,4の4.0V,3.0Vに比してそれぞれ低いことがわかった。即ち、実施例3,4では、それぞれ比較例5,6に比して高電圧になることがわかった。また、
図13に示すように、層状構造体を含む負極にアルミニウム集電体を用いた実施例5では、リチウム金属基準で0.7V〜0.8Vあたりに電位平坦なプラトー領域を示し、可逆的に充放電することがわかった。このように、集電体をアルミニウムとし負極活物質を層状構造体とした電極では、アルミニウムとリチウムとの合金化反応が起きる0.27Vよりも高い電位で充放電反応するため、アルミニウム集電体を腐食することなく可逆的に動作することがわかった。このため、アルミニウムを集電体とし負極活物質を層状構造体として作製した双曲型電極が電池として動作可能であり、正極と負極とを別々の材料の集電体とするものに比して、より高エネルギー密度の電池を提供することができることがわかった(
図3〜5参照)。また、層状構造体は、チタン酸リチウムよりもリチウム基準の電位が低く、より高電圧な電池とすることができ、高エネルギー密度の電池を提供することができることがわかった。
【0074】
【表2】
【0075】
次に、本発明の非水系二次電池において、イオン伝導媒体を具体的に検討した例を実験例として説明する。
【0076】
[塗工電極の作製]
実施例1の活物質粉体を用いて、非水系二次電池用電極を作製した。実施例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムを60.0質量%、導電材として比表面積が13m
2/g、繊維長が平均15μmであるVGCF(気相成長炭素繊維)の繊維状導電材を10.0質量%、更に導電材として比表面積が225m
2/g、粒子径が平均25nmであるカーボンブラックの粒子状導電材を20.0質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10.0質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚のアルミ箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
【0077】
(実験例1の二極式評価セルの作製)
環状構造のハロゲン化カーボネートとしての1,2−ジフルオロエチレンカーボネート(以下物質Aとも称する)と、鎖状構造のハロゲン化カーボネートとしてのトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネート(以下物質Bとも称する)とを体積比で50:50の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加して非水電解液(イオン伝導媒体)を作製した。上記作製した塗工電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで二極式評価セルを作製した。得られたものを実験例1の二極式評価セルとした。
【0078】
(実験例2〜4)
実験例1の非水電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で40:40:20の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加した非水電解液を用いた以外は実験例1と同じ工程により得られたものを実験例2の二極式評価セルとした。ここで、非フッ素系カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比で30:40:30の割合で混合したものを用いた。また、実験例2の電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で30:30:40の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例2と同じ工程により得られたものを実験例3の二極式評価セルとした。また、実験例2の電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で20:20:60の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例2と同じ工程により得られたものを実験例4の二極式評価セルとした。
【0079】
(実験例5〜8)
実験例1の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムの代わりに、実施例2の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを電極活物質として用いた以外は実験例1と同じ工程により得られたものを実験例5の二極式評価セルとした。また、実験例5の非水電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で40:40:20の割合で混合した、実験例2と同様の非水電解液を用いた以外は実験例5と同じ工程により得られたものを実験例6の二極式評価セルとした。また、実験例6の電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で30:30:40の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例6と同じ工程により得られたものを実験例7の二極式評価セルとした。また、実験例6の電解液の代わりに、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で20:20:60の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例6と同じ工程により得られたものを実験例8の二極式評価セルとした。
【0080】
(実験例9の非水系二次電池)
正極活物質としてLiNi
0.5Mn
1.5O
4を85.0質量%、導電材としてカーボンブラックを10.0質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10.0質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚のアルミ箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。負極活物質として実験例1に示した2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウム電極を用いた。これら正極、負極と、実験例1と同様の非水電解液とを用いて、両電極間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで実験例9の非水系二次電池を作製した。
【0081】
(実験例10)
実施例9の2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウム電極の代わりに、実験例5の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム電極を用いた以外は実施例9と同じ工程により得られたものを実験例10の非水系二次電池とした。
【0082】
(実験例11,12)
実験例2の電解液の代わりに1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で10:10:80の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例2と同じ工程により得られたものを実験例11の二極式評価セルとした。また、実験例2の電解液の代わりに1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で0:0:100の割合で混合した非水電解液、即ち非フッ素系カーボネート100体積%の非水電解液を用いた以外は実験例2と同じ工程により得られたものを実験例11の二極式評価セルとした。
【0083】
(実験例13,14)
実験例5の電解液の代わりに1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で10:10:80の割合で混合した非水電解液を用いた以外は実験例5と同じ工程により得られたものを実験例13の二極式評価セルとした。また、実験例5の電解液の代わりに1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートと非フッ素系カーボネートとを体積比で0:0:100の割合で混合した非水電解液、即ち非フッ素系カーボネート100体積%の非水電解液を用いた以外は実験例5と同じ工程により得られたものを実験例14の二極式評価セルとした。
【0084】
(実験例15,16)
実験例9の電解液の代わりに、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水電解液、即ち非フッ素系カーボネート100体積%の非水電解液を用いた以外は実験例9と同じ工程により得られたものを実験例15の非水系二次電池とした。また、実験例10の電解液の代わりに、非フッ素系カーボネート100体積%の非水電解液を用いた以外は実験例10と同じ工程により得られたものを実験例16の非水系二次電池とした。
【0085】
(実験例17,18)
実験例1の電解液の代わりに、フルオロエチレンカーボネート(以下物質Cとも称する)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で50:50の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加した非水電解液を用いた以外は実験例1と同じ工程により得られたものを実験例17の二極式評価セルとした。また、実験例5の電解液の代わりに、フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で50:50の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加した非水電解液を用いた以外は実験例5と同じ工程により得られたものを実験例18の二極式評価セルとした。
【0086】
(充放電試験)
上述した実験例1〜18のセルを用い、20℃の温度環境下、0.02mAで4.2Vまで充電したのち、0.02mAで3.2Vまで放電を行った。この充放電操作の10サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の割合を容量維持率(%)とした。
【0087】
(結果と考察)
表3に実験例1〜18の二極式評価セル及び非水系二次電池の構成と充放電試験結果をまとめた。表3には、正極活物質、負極活物質、非水電解液の体積比、非水電解液に含まれるハロゲン化カーボネートの体積割合(%)、10サイクル目の容量維持率(%)を示した。また、
図14は、実験例9の2,10サイクル目の充放電曲線であり、
図15は、実験例15の2,10サイクル目の充放電曲線であり、
図16は、実験例10の2,10サイクル目の充放電曲線であり、
図17は、実験例16の2,10サイクル目の充放電曲線である。また、
図18は、非水電解液に含まれるハロゲン化カーボネートの体積割合と容量維持率との関係を表す説明図である。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示すように、実験例1〜18では、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートやトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど、ハロゲン化カーボネートが非水電解液に含まれていると、総じて容量維持率が高い傾向を示すことがわかった。
特に、実験例1〜3,5〜10,18などが極めて良好な容量維持率を示した。
ここで、実験例では、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートとが同等の割合で含まれているが、検討した0.5Vから1.5Vの電位範囲ではトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートが分解されにくく、例えば黒鉛電極を用いた場合、トリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートの分解によるプラトーは確認されないことが知られている(J. Electrochem. Soc., 157 A707-A712 2010)。よって、2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムおよび4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム電極の初期リチウム吸蔵時に、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートが還元されてフッ化リチウムを生成することにより、電極/電解液界面を安定化させるために、更なる電解液の分解が抑制されてサイクル性が向上することが考えられた。
【0090】
また、表3,実験例9、15、
図14,15に示すように、LiNi
0.5Mn
1.5O
4の正極と2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウム負極とを用いた電池では、ハロゲン化カーボネートを非水電解液の全体に対して60体積%以上100体積%以下の範囲で含有しているものとすると、より高い容量維持率を示すことがわかった。更に、この実験例の非水系二次電池は、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートやトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートを、非水電解液の全体に対して30体積%以上50体積%以下の範囲で含有しているものとすると、より高い容量維持率を示すことがわかった。また、表3,実験例10、16、
図16,17に示すように、LiNi
0.5Mn
1.5O
4の正極と4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウム負極とを用いた電池では、ハロゲン化カーボネートを非水電解液の全体に対して40体積%以上100体積%以下の範囲で含有しているものとすると、より高い容量維持率を示すことがわかった。更に、この実験例の非水系二次電池は、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートやトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートを、非水電解液の全体に対して20体積%以上50体積%以下の範囲で含有しているものとすると、より高い容量維持率を示すことがわかった。更に、ハロゲン化カーボネートとして環状構造の1,2−ジフルオロエチレンカーボネートと、鎖状構造のトリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネートとを含有しているとより高い容量維持率を示すことがわかった。また、実験例17,18の測定結果より、電解液の溶媒としてフルオロエチレンカーボネートを50体積%含有する電解液においても高い容量維持率を示すことがわかった。なお、電解質としてはアルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導溶媒として、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチルトリフルオロプロピルカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートなどのハロゲン化カーボネートを含有する高分子ゲル電解質を用いた場合でも同様の効果が得られると推察された。
【0091】
本出願は、2010年10月21日に出願された日本国特許出願第2010−236765号、及び2011年5月23日に出願された日本国特許出願第2011−115093号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、電池産業に利用可能である。