(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護フィルムが有する前記セルロースエステルフィルムにおける面内方向のリタデーションRoが、0nm〜10nmであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
前記保護フィルムが有する前記セルロースエステルフィルムにおける面内方向のリタデーションRoが、60nm〜150nmであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
前記対向フィルムの前記光学フィルムは、環状ポリオレフィンまたはアクリルからなる樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタッチパネル付き表示装置。
前記対向フィルムの前記光学フィルムにおける面内方向のリタデーションRoが、0nm〜10nmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタッチパネル付き表示装置。
前記対向フィルムの前記光学フィルムにおける面内方向のリタデーションRoが、120nm〜150nmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタッチパネル付き表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
【0030】
〔タッチパネル付き表示装置〕
図1は、本実施形態のタッチパネル付き表示装置の概略の構成を示す断面図である。同図に示すように、タッチパネル付き表示装置は、表示装置10とタッチパネル20とを粘着剤層30を介して貼り合わせて構成されている。
【0031】
表示装置10は、表示パネル1上に偏光板2を積層して構成されている。表示パネル1は、液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイで構成することができるが、その詳細については後述する。有機EL表示パネルは、OLED(Organic light-Emitting Diode)とも呼ばれる。LCDやOLEDは、マトリクス状に配置される複数の画素を有しており、各画素の駆動をTFTなどのスイッチング素子によってON/OFFすることにより、表示を行う。
【0032】
偏光板2は、所定の直線偏光を透過する偏光子3と、偏光子3の表面(タッチパネル20側)に積層されるフィルム4と、偏光子3の裏面(表示パネル1側)に積層されるフィルム5とで構成されている。偏光子3は、例えばポリビニルアルコールフィルムを二色性色素で染色し、高倍率延伸することで得られ、アルカリ処理(鹸化処理ともいう)された後に、上記のフィルム4・5を、偏光子3の表面および裏面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として貼り合わせられる。
【0033】
フィルム4は、フィルム基材4aの上にハードコート層4bを積層したハードコートフィルムとして構成されており、偏光板2(偏光子3)の表面を保護する保護フィルムとしての機能を有している。フィルム基材4aは、種々の材料で構成することができるが、本実施形態では、その中でも、厚さ15〜30μmのセルロースエステルフィルムで構成されている。
【0034】
ハードコート層4bは、例えば活性エネルギー線硬化型樹脂で構成されており、その厚さは数μmである。フィルム4は、フィルム基材4a単独で(ハードコート層を積層せずに)保護フィルムとして構成されてもよいが、フィルム基材4a上にハードコート層4bを形成したハードコートフィルムとすることで、偏光板2の表面を保護する機能を高めることができる。特に本実施の形態においては、フィルム基材4aが薄膜である為、タッチパネルを押圧した場合に、表示パネル1が損傷し易いが、フィルム4をハードコートフィルムとすることで、このような損傷の発生を抑制することができる。
【0035】
さらに、フィルム4において、フィルム基材4a(セルロースエステルフィルム)に対してタッチパネル20側の表面(ハードコート層4bが形成されている場合はハードコート層4bのタッチパネル20側の表面)には、導電層40が形成されている。この導電層40は、表示パネル1からの電気的ノイズを遮断する目的で設けられており、例えば銀や銅などの金属ナノワイヤーを分散した塗液を基材表面に塗布(水系塗布)し、乾燥させることによって形成されている。
【0036】
なお、表示パネル1が液晶表示パネルの場合、表示パネル1に対して偏光板2とは反対側にも別の偏光板(図示せず)が配置される。一方、表示パネル1が有機EL表示パネルの場合、偏光板2は、外光反射防止のための円偏光板(または楕円偏光板)として構成されることが好ましい。円偏光板とする場合は、偏光子3の表示パネル1側のフィルム5は、透過光に対して波長の1/4程度の面内位相差を付与する光学フィルムであり、偏光子3の光学軸(透過軸又は吸収軸)とフィルム5の遅相軸とがおよそ45°の角度で交差するように、偏光子3とフィルム5とを貼り合わせることで構成されることが好ましい。
【0037】
フィルム5は、偏光子3を介してフィルム4と対向する対向フィルムであり、透湿度が200g/m
2/24h以下である光学フィルムで構成されている。このような光学フィルムとしては、アクリル、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)の樹脂からなるフィルムを用いることができる。ちなみに、アクリルの透湿度は100g/m
2/24h.40μmであり、COPの透湿度は0.1g/m
2/24h.40μmであり、PCの透湿度は100g/m
2/24h.40μmである。なお、本発明における透湿度とは、試験条件40℃、90%RHで測定されたものを表す。
【0038】
タッチパネル20は、静電容量型のタッチパネルであり、カバーガラスとなるガラス基板21上に、粘着剤層22を介して導電フィルム23を接着することで形成されている。ガラス基板21の表面(導電フィルム23側とは反対側の面)は、タッチパネル20のタッチ面である。粘着剤層22は、例えば透明な光学的両面テープ(OCA;Optical Clear Adhesive tape )やUV硬化樹脂(OCR)などの接着層で構成されている。
【0039】
導電フィルム23は、フィルム基材上に、透明導電膜(例えばITO)からなる第1の電極パターンと、絶縁層と、透明導電膜(例えばITO)からなる第2の電極パターンとを積層して構成されたものであり、フィルムセンサーとも呼ばれる。上記のフィルム基材は、ガラス基板21の飛散を防止する飛散防止フィルムとしての機能を持つ。第1の電極パターンおよび第2の電極パターンは、フィルム基材に平行な面内で互いに直交するX方向およびY方向に延びている。第2の電極パターン上には、必要に応じて絶縁層が形成されてもよい。
【0040】
なお、導電フィルム23は、フィルム基材の表面に第1の電極パターンを貼り合わせ、裏面に第2の電極パターンを貼り合わせて構成されてもよい。また、上記フィルム基材には、表面保護の目的でハードコート層が形成されていてもよい。
【0041】
タッチパネル20の表面を指で押圧すると、導電フィルム23の第1電極パターンと第2電極パターンとの間の静電容量が変化する。その静電容量の変化を第1電極パターンおよび第2電極パターンを介して検出することにより、押圧位置(座標)を特定することができる。
【0042】
粘着剤層30は、粘着剤層22と同様に、OCAやOCRなどの接着層で構成されており、導電層40の表面全体に形成されて、タッチパネル20と表示装置10とを接合している。
【0043】
上記の構成において、偏光板2の保護フィルムとしてのフィルム4は、セルロースエステルフィルムからなるフィルム基材4aを含んでいる。セルロースエステルフィルムは、透湿度が厚さ80μm換算で約800〜1000g/m
2/24hと非常に高く、吸湿性に優れている。このため、導電層40が金属ナノワイヤーの水系塗布によって形成されていても、導電層40の水分を、上記のセルロースエステルフィルムで吸収することができる。
【0044】
したがって、本実施形態のように、タッチパネル20の最外層(表示パネル1とは反対側)にガラス基板21が位置する構成では、導電層40の水分はガラス基板21を透過することができず、タッチパネル20の外部には抜けないが、そのような構成であっても、導電層40の水分を、ガラス基板21よりも内側のセルロースエステルフィルム(フィルム4)で吸収して、導電層40に水分が溜まるのを抑えることができる。これにより、導電層40のシールド性が、上記の水分によって低下するのを抑えることができ、表示パネル1からのノイズを導電層40で確実に遮断することができる。その結果、上記ノイズによってタッチパネル20が誤動作するのを抑えることができる。このような効果は、水系塗布に用いる金属ナノワイヤーの金属材料に関係なく得ることができ、例えば金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーであっても、上記の効果を得ることができる。
【0045】
また、対向フィルムとしてのフィルム5は、透湿度200g/m
2/24h以下の光学フィルムを含んでいる。このように上記光学フィルムの透湿度が低く、吸湿性が低く抑えられているため、導電層40の水分がフィルム基材4a(セルロースエステルフィルム)および偏光子3を介してフィルム5側に移動しにくくなり、フィルム基材4aでの吸湿性をさらに高めることができる。その結果、導電層40の水分による偏光子3の劣化を抑えることができ、黒表示時でも赤みがかった表示となるのを抑えることができる。特に、COPやアクリルからなる樹脂は、上述したように透湿度が低いので、このような樹脂を用いて上記光学フィルムを構成することにより、偏光子3の劣化を確実に抑えることができる。
【0046】
また、フィルム4のフィルム基材4aを構成するセルロースエステルフィルムの厚さが15〜30μmと薄いので、吸湿又は乾燥した場合における収縮や膨張により発生する応力が小さくなり、これによって、偏光板2に反りが生じるのを抑えることができる。
【0047】
ところで、上記したフィルム4のセルロースエステルフィルムにおいて、面内方向のリタデーションRoは、0nm〜10nmであってもよい。この場合、面内方向の位相差による干渉が少ないため、タッチパネル20を介して表示装置10を裸眼で視認するときの視認性を向上させることができる。
【0048】
なお、フィルム4のセルロースエステルフィルムのリタデーションRoを0nm〜10nmとする場合は、偏光子3に対するセルロースエステルフィルム(フィルム基材4a)の貼り合わせ角度を0°〜15°とすることによって実現することが好ましい。ここで、上記の貼り合わせ角度とは、偏光子3の吸収軸と、セルロースエステルフィルムの遅相軸とのなす角度である。このときのセルロースエステルフィルムの遅相軸の方向は、アッベ屈折率計(1T)により、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下、光波長590nmでの試料の面内の平均屈折率を測定して求めることができる。このような角度とすることで、面内方向のリタデーションが多少変動した場合でも光学的な影響を低減させることができる。
【0049】
また、上記したフィルム4のセルロースエステルフィルムにおいて、面内方向のリタデーションRoは、60nm〜150nmであってもよい。この場合、偏光子3の光学軸(透過軸又は吸収軸)に対して前記保護フィルムの遅相軸が10〜80°の方向となるように配置されることが好ましい。このような構成とすることで、偏光子3を透過した直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えることができる為、偏光サングラスをかけて表示装置10を見る際の視認性を向上させることができる。
【0050】
また、対向フィルムとしてのフィルム5は、表示パネル1がLCDの場合、単に偏光子の保護フィルムとして設けられてもよく、所望の光学補償機能を有する位相差フィルムを兼ねた保護フィルムとされてもよく、面内方向のリタデーションRoは、0nm〜10nmであることが好ましい。また、フィルム5は、透過波長の1/4程度の面内位相差、好ましくは、面内方向のリタデーションRoを120nm〜150nm付与する光学フィルムであることが好ましい。
【0051】
表示パネル1がOLEDディスプレイである場合、例えば波長550nmの入射光に対しては、上記光学フィルムは1/4波長板として機能し、この光学フィルムと偏光子3との組み合わせで円偏光板を構成し、外光反射防止機能を付与することができる。また、表示パネル1が例えば液晶表示パネルの場合、液晶のディスクリネーション部分(液晶の配向が不連続となる部位)が存在することによる輝度低下を、上記光学フィルム(1/4波長板)によって改善することができる。
【0052】
〔表示パネル〕
図2は、表示パネル1としての液晶表示パネル50の構成例を模式的に示す断面図である。液晶表示パネル50は、2枚の基板51・52で液晶層53を挟持して構成されている。液晶層53は、2枚の基板51・52間でシール材54によってシールされている。一方の基板51には、各画素に対応する画素電極と、各画素における表示のON/OFFを制御するためのスイッチング素子であるTFTと、TFTと接続される各種配線(走査線、信号線を含む)と、液晶分子を配向させるための配向膜とが形成されている。他方の基板52には、共通電極と、カラー表示を行うためのカラーフィルタと、配向膜とが形成されている。このような液晶表示パネル50に対して、一方の側に上記の偏光板2が配置され、他方の側に、偏光板2とクロスニコル状態で別の偏光板(図示せず)およびバックライト(図示せず)が配置される。
【0053】
上記の構成において、バックライトから出射された光のうち、裏側の偏光板を透過した光(直線偏光)は、基板51を介して液晶層53に入射し、液晶層53の厚み方向に伝播しながら、液晶のもつ屈折率異方性(複屈折)に応じて偏光状態が変化する。液晶層53および基板52を通過した光のうち、表側の偏光板2によって特定方向の偏光成分の光だけが表示光として出射される。液晶層53に印加する電圧を変化させて液晶分子の配向を変化させることにより、表示が行われる。
【0054】
一方、
図3は、表示パネル1としての有機EL表示パネル60の構成例を模式的に示す断面図である。有機EL表示パネル60は、ガラスやポリイミド等を用いた基板61上に、順に、金属電極62、発光層63、透明電極(ITO等)64、封止層65を有して構成されている。なお、金属電極62は、反射電極と透明電極とで構成されていてもよい。
【0055】
上記の構成において、金属電極62と透明電極64とに電圧を印加すると、発光層63に対して、金属電極62および透明電極64のうちで陰極となる電極から電子が注入され、陽極となる電極から正孔が注入され、両者が発光層63で再結合することにより、発光層63の発光特性に対応した可視光線の発光が生じる。発光層63で生じた光は、直接、または金属電極62で反射した後、透明電極64を介して外部に取り出されることになる。
【0056】
〔偏光板ついて〕
以下、上記した偏光板2を構成する各層の詳細について説明する。なお、以下で示すフィルム基材およびハードコート層については、タッチパネル20の導電フィルム23のフィルム基材およびハードコート層にも適用することができる。
【0057】
[フィルム基材]
偏光板2のフィルム基材4aおよびフィルム5(以下、これらを区別する必要がない場合はこれらをまとめて単にフィルム基材と称する)としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0058】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のことをいう。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、一般的汎用樹脂としては、セルロースエステル、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等を用いることができる。
【0060】
特に、強度や壊れにくさが要求される場合、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を用いることができる。
【0061】
さらに、高い熱変形温度と長期使用できる特性が要求される場合は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を用いることができる。
【0062】
本実施形態においては、本実施形態の効果発現の観点から、フィルム基材4aとしては、セルロースエステル樹脂を用いることが好ましく、フィルム5としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂またはポレオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0063】
以下、本実施形態において、特に好適な樹脂について詳細な説明をする。
【0064】
〈セルロースエステル樹脂〉
本実施形態で用いることができるセルロースエステル樹脂は、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0065】
これらの中で特に好ましいセルロースエステルは、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0066】
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂であることが好ましい。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 1.0≦X≦2.5
【0067】
このうち、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0068】
更に、本実施形態で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0069】
本実施形態で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよい。木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは、綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは、適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
【0070】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30のものを用いることができる。
【0071】
本実施形態において、セルロースエステル樹脂は、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌した時のpHが6〜7、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。
【0072】
〔フィルム製造方法〕
フィルム基材の製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、溶液流延製膜法、溶融流延製膜法などの流延法が好ましく用いられる。以下、フィルム基材の好ましい製造方法について説明する。
【0073】
<溶液流延製膜法による基材の製造方法>
1)溶解工程
溶解工程は、熱可塑性樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で熱可塑性樹脂、熱収縮材料、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。なお、良溶媒とは、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂に対して良好な溶解性を有する有機溶媒をいい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0074】
熱可塑性樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0075】
返材も再使用される。返材とは、フィルムを細かく粉砕した物で、フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたフィルム原反のことをいう。
【0076】
2)流延工程
流延工程は、ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0077】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0078】
3)溶媒蒸発工程
溶媒蒸発工程は、ウェブ(流延用支持体上にドープを流延して形成されたドープ膜)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0079】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法および/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法の乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0080】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
【0081】
4)剥離工程
剥離工程は、金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0082】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
【0083】
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0084】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0085】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mである。剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、さらには、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0086】
本実施形態においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0087】
5)乾燥および延伸工程
乾燥および延伸工程は、剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置を用いて、ウェブを乾燥する工程である。
【0088】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるものが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は、でき上がるフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0089】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0090】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0091】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0092】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0093】
a)流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
b)幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
【0094】
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は、幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲とすることができる。
【0095】
延伸を行う場合のウェブの残留溶媒量は、延伸開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になるまで延伸を掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0096】
延伸を行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
【0097】
延伸工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、延伸工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0098】
6)巻き取り工程
巻き取り工程は、ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0099】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0100】
本実施形態に係るフィルム基材は、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0101】
<溶融流延製膜法による基材の製造方法>
次に、フィルム基材を溶融流延製膜法により製造する場合の方法について説明する。
【0102】
〈溶融ペレット製造工程〉
溶融押出に用いる、樹脂を含む組成物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0103】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥した熱可塑性樹脂と熱収縮材料等からなる添加剤をフィーダーで押出機に供給し、1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることで、ペレット化できる。
【0104】
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
【0105】
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。また、粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0106】
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、熱可塑性樹脂に含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
【0107】
乾燥と混合を同時にできる点から、真空ナウターミキサーなどを用いることが好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したN
2ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
【0108】
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0109】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0110】
〈溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程〉
まず、作製したペレットを1軸や2軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に共押出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
【0111】
供給ホッパーから押出機へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0112】
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
【0113】
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
【0114】
冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えたロールであればよい。冷却ロールの大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
【0115】
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0116】
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0117】
弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97/028950号、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号の各公報に記載されているような、表面が薄膜金属で被覆されたシリコンゴムロールを使用することができる。
【0118】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0119】
〔複合樹脂フィルムの製造方法〕
本実施形態のフィルム基材は、複合樹脂フィルムで構成することができる。複合樹脂フィルムを製造する方法としては、共押し出し法による製膜工程を有する態様の製造方法によって製造することができる。
【0120】
〈共押し出し法〉
本実施形態においては、共押し出し法により、積層構造のフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tgと定義して同様に扱うこともできる。また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
【0121】
なお、上記の共押し出し法とは、複数の押出機を用いて、それぞれから積層する樹脂を加熱溶融し、それぞれの樹脂を合流させた後にTダイのスリット状の吐出口から共押出し、チルドロールで冷却固化させてキャストシート(未延伸状態)を形成する方法である。溶融樹脂を合流させて、Tダイよりシートを押出する方法としては、溶融樹脂を合流させてからマニュホールドを広げるフィードブロック法と、溶融樹脂をそれぞれマニュホールドで広げてから合流させるマルチマニュホールド法があるが、そのどちらを用いてもよい。
【0123】
(酸化防止剤)
フィルム基材は、添加剤として酸化防止剤を含むことが好ましい。好ましい酸化防止剤は、リン系またはフェノール系であり、リン系とフェノール系を同時に組み合わせるとより好ましい。以下、本実施形態において好適に用いることができる酸化防止剤について説明する。
【0124】
〈フェノール系酸化防止剤〉
本実施形態においては、フェノール系の酸化防止剤が好ましく用いられ、特にヒンダードフェノール化合物が好ましく用いられる。
【0125】
〈リン系酸化防止剤〉
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、ホスフィナイト(phosphinite)、または第3級ホスファン(phosphane)等のリン系化合物を使用することができる。リン系化合物としては、従来既知の化合物を用いることができる。例えば、特開2002−138188号、特開2005−344044号段落番号0022〜0027、特開2004−182979号段落番号0023〜0039、特開平10−306175号、特開平1−254744号、特開平2−270892号、特開平5−202078号、特開平5−178870号、特表2004−504435号、特表2004−530759号、および特願2005−353229号の各公報の明細書中に記載されているものが好ましい。
【0126】
リン系化合物の添加量は、樹脂100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
【0127】
(その他の酸化防止剤)
また、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等の耐熱加工安定剤、特公平08−27508号記載の3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン系化合物、3,3′−スピロジクロマン系化合物、1,1−スピロインダン系化合物、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンオキシド、チオモルホリンジオキシド、ピペラジン骨格を部分構造に有する化合物、特開平03−174150記載のジアルコキシベンゼン系化合物等の酸素スカベンジャー等が挙げられる。これら酸化防止剤の部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0128】
(その他の添加剤)
本実施形態に係るフィルム基材には、上記の化合物等の他に、目的に応じて種々の化合物等を添加剤として含有させることができる。
【0129】
〈酸捕捉剤〉
酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は、当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。
【0130】
〈光安定剤〉
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。さらに、特開2007−63311号公報に記載されている光安定剤を用いることができる。
【0131】
〈紫外線吸収剤〉
紫外線吸収剤としては、紫外線による劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0132】
本実施形態においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜10質量%添加することが好ましく、さらに1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0133】
〈マット剤〉
本実施形態のフィルム基材には、マット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素が樹脂基板のヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものは樹脂基板のヘイズを低下できるため好ましい。
【0134】
〈可塑剤〉
セルロースエステルフィルムには、透湿性及び組成物の流動性やフィルムの柔軟性を向上させるために、可塑剤を併用することもできる。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、糖エステル系、アクリル系ポリマー等が挙げられる。この中では、透湿性の観点からポリエステル系、及び糖エステル系ポリマーの可塑剤が好ましく用いられる。
【0135】
これらの可塑剤は、セルロースエステルフィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
【0136】
〔ハードコート層〕
フィルム基材の表面には、表面保護の目的でハードコート層を形成してもよい。ハードコート層は、例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂で構成されることが好ましい。
【0137】
(活性エネルギー線硬化型樹脂)
活性エネルギー線硬化型樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいい、具体的にはエチレン性不飽和基を有する樹脂である。さらに具体的には、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0138】
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、およびジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
【0139】
ハードコート層組成物中における、上記活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量は、組成物全体を100質量部とすると、通常、10〜99質量部、好ましくは35〜99質量部である。活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量が少ないと、ハードコート層の膜強度が十分に得られにくい。また、配合量が多いと、後述する公知の塗布方法で塗布した際の膜厚均一性や塗布筋などの故障が発生するため好ましくない。
【0140】
(カチオン重合性化合物)
ハードコート層は、さらにカチオン重合性化合物を含有してもよい。カチオン重合性化合物とは、エネルギー活性線照射や熱によってカチオン重合を起こして樹脂化するものである。具体的には、エポキシ基、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル化合物、ビニルオキソ基等が挙げられる。中でもエポキシ基やビニルエーテル基などの官能基を有する化合物が、本実施形態において好適に用いられる。
【0141】
ハードコート層組成物に上記カチオン重合性化合物が含まれる場合、ハードコート層組成物中における、カチオン重合性化合物の配合量は、組成物全体を100質量部とすると、通常、1〜90質量部、好ましくは1〜50質量部である。
【0142】
(微粒子)
ハードコート層は、微粒子を含有してもよい。微粒子としては無機微粒子と有機微粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができる。これら微粒子の平均粒径は、ハードコート層塗布組成物の安定性やクリア性から、30nm〜200nmが好ましい。また、ハードコート層には粒径が異なる2種以上の微粒子を含有させてもよい。所望の鉛筆硬度を達成しやすい点から、ハードコート層にはシリカ微粒子を含有させることが好ましい。
【0143】
また、本実施形態の作用効果をより良く発揮する点から、ハードコート層には重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面処理された反応性シリカ微粒子(Xa)を含有させることが好ましい。以下、重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面処理された反応性シリカ微粒子(Xa)について説明する。
【0144】
また、ハードコート層は、前述した活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子とを含有し、含有質量比で、活性エネルギー線硬化型樹脂:微粒子=90:10〜20:80であることが好ましい。
【0145】
(その他の添加剤、ハードコート層の製造方法)
ハードコート層には、前記活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化促進のため、さらに光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤の配合量としては、質量比で、光重合開始剤:活性エネルギー線硬化型樹脂=20:100〜0.01:100であることが好ましい。
【0146】
光重合開始剤としては、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは市販のものを使用してもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
【0147】
また、ハードコート層は、上述の紫外線吸収剤と同様の紫外線吸収剤を含有していてもよい。
【0148】
さらには、ハードコート層が2層以上で構成され、かつフィルム基材と接するハードコート層に紫外線吸収剤を含有することが、本実施形態の目的効果が良好に発揮され、かつハードコート層の膜強度(耐擦傷性)や鉛筆硬度が良好に得られる点から好ましい。紫外線吸収剤の含有量としては、質量比で、紫外線吸収剤:ハードコート層組成物=0.01:100〜10:100であることが好ましい。
【0149】
ハードコート層を2層以上設ける場合、フィルム基材と接するハードコート層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成してもよい。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上のハードコート層をwet on wetで塗布して、ハードコート層を形成することである。第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
【0150】
また、ハードコート層の作製方法としては、セルロースエステルフィルムを膨潤または一部溶解をする溶剤で希釈したハードコート層塗布組成物を、以下の方法でセルロースエステルフィルム上に塗布、乾燥、硬化して設ける方法が、ハードコート層とセルロースエステルフィルムとの層間密着が得られやすい点から好ましい。
【0151】
セルロースエステルフィルムを膨潤または一部溶解する溶剤としては、ケトンおよび/または酢酸エステルを含む溶剤が好ましい。具体的には、ケトンとしてはメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。また、酢酸エステルとしては酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。ハードコート層塗布組成物は、その他の溶剤として、アルコール系溶剤を含んでもよい。
【0152】
ハードコート層塗布組成物の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜40μmが好適で、さらに好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚5〜20μm程度、好ましくは7〜12μmが好ましい。
【0153】
ハードコート層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイ(押し出し)コーター、インクジェット法等公知の塗布方法を用いて、ハードコート層を形成するハードコート塗布組成物を塗布し、塗布後、乾燥し、活性線を照射(UV硬化処理とも言う)し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理することで形成できる。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、ハードコート層の機械的強度(耐擦性、鉛筆硬度)がより良好となる。
【0154】
<機能性層>
本実施形態のハードコートフィルムには、上記のハードコート層以外に、バックコート層、反射防止層、防眩層等の機能性層を設けることができる。
【0155】
(バックコート層)
本実施形態のセルロースエステルフィルムにおけるハードコート層を設けた側とは反対側の面に、カールやブロッキング防止のためにバックコート層を設けてもよい。
【0156】
カールやブロッキング防止の点から、バックコート層には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等の粒子を添加することができる。
【0157】
バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。バインダーとしては、セルロースエステル樹脂が好ましい。また、バックコート層を形成するための塗布組成物には、アルコール類、ケトン類および/または酢酸エステル類糖の溶媒を含有することが好ましい。
【0158】
(反射防止層)
本実施形態のハードコートフィルムは、ハードコート層の上層に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることもできる。
【0159】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体であるフィルム基材よりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層とを組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
【0160】
反射防止層を有するフィルムの層構成としては、下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0161】
セルロースアセテートフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースアセテートフィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
セルロースアセテートフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースアセテートフィルム/ハードコート層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
セルロースアセテートフィルム/ハードコート層/防眩性層/低屈折率層
【0162】
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0163】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0164】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率の調整は、金属酸化物微粒子等を添加することで行うことができる。用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
【0165】
(防眩性層)
ハードコート層上には、機能性層として防眩層を設けることもできる。防眩性層は、フィルム表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に、反射像の映り込みが気にならないようにする層のことである。防眩層は、具体的には、前記したハードコート層に微粒子等の添加や前記鋳型を押し当てて表面に突起を形成する方法などによって、層表面の算術平均粗さRaを0.1〜1μmに調整した層であることが好ましい。
【0166】
〔粘着剤層〕
タッチパネルを表示装置に接着する際に用いる粘着剤層(
図1の粘着剤層30に相当)を構成する粘着剤としては、特に制限なく、公知の粘着剤を使用でき、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが使用できるが、粘着力や貯蔵弾性率の制御が比較的容易なアクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0167】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル等の炭素数1〜20アクリル酸アルキルエステルの一種または二種以上と、前記アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の官能基モノマーとの共重合体に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の架橋剤を反応させたものが挙げられる。
【0168】
粘着剤層の厚さは、1μm〜13μmであることが好ましい。粘着剤層の厚さが1μm以上の場合、十分な粘着力が得られ、13μm以下の場合、抜き加工時や裁断加工時に糊のはみ出しを抑制することができ、かつ高い鉛筆硬度が維持される。好ましい粘着剤層の厚さは、3〜12μmである。
【0169】
粘着剤層の貯蔵弾性率としては、0℃における貯蔵弾性率が1.0×10
6〜1.0×10
8Paであることが好ましい。粘着剤層の貯蔵弾性率が1.0×10
6Pa以上の場合、十分な抜き加工適性、裁断加工適性及び高い鉛筆硬度が得られ、1.0×10
8Pa以下の場合、十分な粘着力が得られる。好ましい粘着剤層の貯蔵弾性率は、1.5×10
6〜1.0×10
7Paである。
【0170】
フィルム上に粘着剤層を設ける方法としては、剥離シートに粘着剤含有組成物を塗布し、乾燥させて作製した粘着剤層に、フィルムを積層する方法が挙げられる。上記粘着剤含有組成物の塗布方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法などの従来公知の方法が挙げられる。また、上記粘着剤含有組成物をフィルムの表面に直接塗布し、乾燥させることで、粘着剤層を積層するようにしてもよい。
【0171】
上記の剥離シートは、種々の剥離シートを使用できるが、代表的には剥離性を表面に有する基材シートから構成される。基材シートとしては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのフィルムや、これらのフィルムに填料などの充填剤を配合したフィルムや合成紙などが挙げられる。また、グラシン紙、クレーコート紙、上質紙などの紙基材が挙げられる。
【0172】
基材シートの表面に剥離性を持たせるには、その表面に熱硬化性シリコーン樹脂や、紫外線硬化型シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布等により付着させればよい。剥離剤の塗布量は、0.03〜3.0g/m
2が好ましい。剥離シートは、剥離剤を有する表面を粘着剤層に接して積層される。
【0173】
〔導電層〕
シールド層としての導電層(
図1の導電層40に相当)は、少なくとも導電性物質を含有し、バインダー、感光性化合物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなることが望ましい。
【0174】
〔導電性物質〕
導電性物質の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中実構造及び中空構造のいずれかの繊維や導電性ポリマーを含有するであることが好ましい。
【0175】
ここで、中実構造の繊維をワイヤーと呼ぶことがあり、中空構造の繊維をチューブと呼ぶことがある。
【0176】
また、平均短軸長さが5nm〜1,000nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmの導電性繊維を「ナノワイヤー」と呼ぶことがある。
【0177】
また、平均短軸長さが1nm〜1,000nm、平均長軸長さが0.1μm〜1,000μmであって、中空構造を持つ導電性繊維を「ナノチューブ」と呼ぶことがある。
【0178】
導電性物質の材料としては、導電性を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属及びカーボンの少なくともいずれかであることが好ましい。これらの中でも、導電性繊維は、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ、及びカーボンナノチューブの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0179】
<金属ナノワイヤー>
金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0180】
上記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、及び銀との合金が好ましい。
【0181】
上記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0182】
金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができる。高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0183】
金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)は、1nm〜50nmであることが好ましい。上記平均短軸長さが、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、50nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。なお、上記平均短軸長さは、10nm〜40nmであることがより好ましく、15nm〜35nmであることが更に好ましい。
【0184】
金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求める。なお、金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとする。
【0185】
金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)は、1μm〜40μmであることが好ましい。上記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。なお、上記平均長軸長さは、3μm〜35μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましい。
【0186】
金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求める。なお、金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとする。
【0187】
金属ナノワイヤーの製造方法としては、例えば特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報に記載の方法を用いることができる。金属ナノワイヤーの製造方法は、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
【0188】
<金属ナノチューブ>
金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、上記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
【0189】
金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層であることが好ましい。
【0190】
金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)は、3nm〜80nmであることが好ましい。上記厚みが、3nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、80nmを超えると、金属ナノチューブ起因の散乱が生じることがある。なお、上記厚みは、3nm〜30nmであることがより好ましい。
【0191】
金属ナノチューブの平均長軸長さは、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましい。
【0192】
上記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の方法などを用いることができる。
【0193】
<カーボンナノチューブ>
カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本実施形態で用いられる導電性繊維において、カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層であることが好ましい。
【0194】
カーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法(high-pressure carbon monoxide process )等の公知の手段を用いることができる。
【0195】
また、これらの方法で得られたカーボンナノチューブは、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、クロマトグラフ等の方法により、副生成物や触媒金属等の残留物を除去することが、高純度化されたカーボンナノチューブを得ることができる点で好ましい。
【0196】
上記導電性繊維のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。上記アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
【0197】
アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
【0198】
導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、導電性繊維の長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
【0199】
なお、導電性繊維がチューブ状の場合、アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0200】
導電性繊維のアスペクト比は、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000であることが好ましい。上記アスペクト比が10未満であると、導電性繊維によるネットワーク形成がなされず、導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維の形成時やその後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。なお、上記アスペクト比は、100〜1,000,000であることがより好ましい。
【0201】
全導電性組成物中における、上記アスペクト比が10以上の導電性繊維の割合(比率)は、体積比で50%以上であることが好ましい。上記比率が50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少して導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため、好ましくなく、特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には、透明度が悪化してしまうことがある。なお、上記比率は、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。
【0202】
ここで、上記比率は、例えば、導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性繊維の比率を求めることができる。ろ紙に残っている導電性繊維をTEMで観察し、300個の導電性繊維の短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である導電性繊維であることを確認する。なお、ろ紙は、上記サイズの導電性繊維以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ導電性繊維の長軸の最短長以下の長さの粒子を通過させるものを用いることが好ましい。
【0203】
ここで、上記導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができる。本実施形態においては、導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の導電性繊維を観察し、その平均値から求める。
【0204】
<バインダー>
上記導電性繊維を固定化するためのバインダーとしては、有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
【0205】
これらの中でも、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。なお、酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0206】
上記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。上記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0207】
線状の上記有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー(酸性基を有する感光性樹脂)が好ましい。
【0208】
側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0209】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
【0210】
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0211】
上記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0212】
<導電性ポリマー>
導電性ポリマーとしては、例えばポリスチレンスルホン酸を含むポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene):Poly(styrenesulfonate))を用いることができる。
【0213】
〔実施例〕
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。また、本発明との比較のため、比較例についても併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下での説明において、「部」あるいは「%」の表示は、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表すものとする。
【0214】
<タッチパネルモジュールの作製>
カバーガラスとしてのガラス基板上に、粘着剤層を介して、以下のようにして作製される導電フィルムを貼り付けて、タッチパネルモジュールを作製した。このとき、粘着剤層としてはOCAを用いた。
【0215】
(導電フィルムの作製)
後述する保護フィルムのセルロースエステルフィルムA−1と同じフィルム上に、ハードコート層組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、マイクログラビアコーターを用いて塗布した。そして、恒率乾燥区間温度95℃、減率乾燥区間温度95℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い、照射部の照度が100mW/cm
2で、照射量を0.1J/cm
2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚3μmのハードコート層を形成した。そして、形成後のフィルムを巻き取り、ロール状のハードコートフィルムとした。
【0216】
次に、作製したハードコートフィルムのセルロースエステルフィルム上に、厚さ20nmのITO膜をスパッタリング法を用いて成膜し、これをエッチングして、X方向に延びる第1電極パターンを形成した。そして、第1電極パターン上に、厚さ200nmのSiO
2からなる絶縁層をスパッタリング法を用いて成膜した。その後、絶縁層上に、厚さ20nmのITO膜をスパッタリング法を用いて成膜し、これをエッチングして、Y方向に延びる第2電極パターンを形成した。さらに、第2電極パターン上に、厚さ200nmのSiO
2からなる絶縁層をスパッタリング法を用いて成膜した。
【0217】
導電フィルムをガラス基板上に貼り付けた後、導電フィルムの第1電極パターンおよび第2電極パターンにAgペーストを塗布、及び焼結し、第1電極パターンおよび第2電極パターンと制御回路とをリード線を介して接続し、タッチパネルモジュールを完成させた。
【0218】
<偏光板の作製>
偏光板は、偏光子としての偏光膜の一方の面に保護フィルムを貼り合わせ、他方の面に対向フィルムを貼り合わせることで作製される。
【0219】
(保護フィルムの作製)
〔セルロースエステルフィルムA−1の作製〕
〈セルロースエステル樹脂〉
セルロースエステル樹脂CE−1を以下のものとする。
CE−1:セルローストリアセテート
(アセチル基置換度:2.91、重量平均分子量Mw:30万)
【0220】
〈微粒子分散液1〉
シリカ微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)
11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0221】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
【0222】
〈主ドープA〉
下記組成の主ドープAを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。次に溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープAを調製した。
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
CE−1 100質量部
ポリエステル系化合物 6質量部
糖エステル化合物 6質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープを調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0223】
次に、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0224】
剥離したセルロースエステルフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に10%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。乾燥後、フィルムを1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、ロール状に巻き取り、乾燥膜厚15μmのセルロースエステルフィルムA−1を得た。巻長は5200mであった。
【0225】
セルロースエステルフィルムA−1において、面内方向の位相差(リタデーションRo)は、0nmであった。なお、上記リタデーションRoは、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて測定した。ちなみに、フィルムの面内方向におけるリタデーションRo(nm)は、以下の式によって求められる。
Ro=(nx−ny)×d
ただし、dはフィルムの厚さ(nm)、nxは遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率、である。
【0226】
〔セルロースエステルフィルムA−2〜A−6の作製〕
表1に記載のように膜厚およびリタデーションRoを変化させた以外は、セルロースエステルフィルムA−1と同様にして、セルロースエステルフィルムA−2〜A−6を作製した。
【0228】
〔導電層の形成〕
〈銀ナノワイヤー〉
特表2009−505358号公報の例1(銀ナノワイヤーの合成)に開示されている方法にて銀ナノワイヤー(AgNW)を得た。すなわち、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で、エチレングリコールに溶解される硫酸銀の還元によって、銀ナノワイヤーを合成した。なお、ポリオール(多価アルコール)の還元力により、金属イオンを還元し、ナノサイズの金属粒子を析出させる方法は、ポリオール方法とも呼ばれる。
【0229】
次いで、同特表2009−505358号公報の例8(ナノワイヤー分散)に開示されている方法にて、銀ナノワイヤー分散塗液を得た。すなわち、約0.08%wt.のHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、約0.36%wt.の銀ナノワイヤー、約0.005%wt.のZonyl(登録商標)FSO−100、および約99.555%wt.の水を混合して、銀ナノワイヤー分散塗液を得た。この銀ナノワイヤー分散塗液を松尾産業(株)製 バーコーターを使用してセルロースエステルフィルムA−1、A−3〜A−6上に塗布し、120℃で2分間乾燥し、銀ナノワイヤー塗膜を設けた。
【0230】
〈銅ナノワイヤー〉
特開2002−266007号公報に記載の方法で銅ナノワイヤー(CuNW)を作製した。すなわち、双頭型ペプチド脂質0.1ミリモルをサンプル瓶にとり、これに2倍当量の水酸化ナトリウム8.0mg(0.20ミリモル)を含む蒸留水100mlを加え、超音波照射(バス型)を施すことにより双頭型ペプチド脂質を溶解させた。この水溶液をホットスターラー上において、激しく撹拌しながら、常温で保持しておき、これに0.1モル/リットルの酢酸銅(II)を1ml加えた。すると、徐々に溶液が濁り、青色のコロイド状分散液が形成された。
【0231】
次に、この青色コロイド状分散液を常温、大気中で撹拌しておき、5ミリモル/リットルの水素化ホウ素ナトリウム水溶液100ml(0.5ミリモル)を加えた。すると、溶液がすぐ黒褐色化し、およそ6時間後に暗灰色の綿状沈殿が生じた。綿状沈殿を透過型電子顕微鏡で観察し、直径が数十から数百ナノメートルの球状構造体と、銅ナノワイヤーの形成とを確認した。透過型電子顕微鏡写真より、銅ナノワイヤーの平均径は10〜20nmであり、平均長さは1〜10μm又はそれ以上であることがわかった。
【0232】
(対向フィルムの作製)
〈アクリルフィルムの作製〉
以下の方法で、アクリルフィルムB−1を作製した。
【0233】
(アクリルフィルムの調製)
ラクトン環単位を含む下記アクリル樹脂の調製を行った。すなわち、特開2008−9378号公報の段落〔0222〕〜〔0224〕の製造例1に従い、メタクリル酸メチル7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル樹脂を得た。
【0234】
(アクリルフィルムの製膜)
調製した前記アクリル樹脂を90℃の真空乾燥機で乾燥して含水率を0.03%以下とした後、安定剤(イルガノックス1010(チバガイギ(株)製)0.3重量%を添加し、230℃において窒素気流中下、ベント付2軸混練押出し機を用い、水中に押出しストランド状にした後、裁断し、直径3mm長さ5mmのペレットを得た。
【0235】
これらのペレットを90℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.03%以下とした後、1軸混練押出し機を用い、供給部210℃、圧縮部230℃、計量部230℃で混練し、ハンガーコートダイから押出した。このとき押出し機とダイとの間に300メッシュのスクリーンフィルター、ギアポンプ、濾過精度7μmのリーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。さらにスタチックミキサーをダイ直前のメルト配管内に設置した。
【0236】
この後、3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。このとき、最上流側のキャストロール(チルロール)にタッチロールを接触させた。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの、但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)を用いた。なお、チルロールを含む3連のキャストロールの温度は、上流から順に、タッチロール温度+3℃、タッチロール温度−2℃、タッチロール温度−7℃とした。
【0237】
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅1.5mとし、製膜速度30m/分で3000m巻き取った。製膜後の未延伸フィルムの厚みは20μmとした。
【0238】
また、表1に記載のように膜厚や面内リタデーションRoを変化させた以外は、アクリルフィルムB−1と同様にして、アクリルフィルムB−5を作製した。
【0239】
〈COPフィルムの作製〉
以下の方法で、COPフィルムB−2〜B−4を作製した。
【0240】
《COPフィルムB−2の作製》
エチレン雰囲気下、容量1.6lのオートクレーブに、フェニルノルボルネン濃度が20mol/lで、総液量が640mlとなるように、トルエンとフェニルノルボルネン−トルエン溶液を入れた。次に、メチルアルミノキサン(アルベマール社製、MAO20%トルエン溶液)をAl基準で5.88mmol、メチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1.5μmolを添加し、エチレンを導入して圧力を0.2MPaに保持しながら、80℃で60分間反応させた。
【0241】
反応終了後、放冷しながらエチレンを脱圧し、系内を窒素で置換した。その後、吸着水分量を10質量%に調整したシリカ(富士シリシア社製、グレード:G−3粒径:50μm)を3.0g加えて1時間反応させた。その反応液を、濾紙(5C、90mm)とセライト(和光純薬工業社)をセットした加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社、型式KST−90−UH)に入れ、窒素で加圧ろ過して重合液を回収した。その重合液を5倍量のアセトン中に少量ずつ滴下して析出させ、脂環式構造を有する重合体樹脂COP1を得た。COP1の重量平均分子量は142000であり、またガラス転移温度は140℃であった。
【0242】
上記で合成した脂環式構造を有する重合体樹脂COP1を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後に、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押し出し成形機(Tダイ幅500mm)を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイ温度240℃の成形条件にて、膜厚100μmのCOPフィルムを押し出し成形した。
【0243】
次いで、剥離したCOPフィルムを、200℃の熱をかけながらテンターを用いて幅手方向に90%延伸した。次いで、乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。乾燥後、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、ロール状に巻き取り、乾燥膜厚25μmのCOPフィルムB−2を得た。巻長は5000mであった。COPフィルムB−2の位相差については、リタデーションRoが120nmであった。
【0244】
《COPフィルムB−3、B−4、A−7の作製》
表1に記載のように膜厚およびリタデーションRoを変化させた以外は、COPフィルムB−2と同様にして、COPフィルムB−3、B−4、A−7を作製した。
【0245】
〈セルロースエステルフィルム〉
上述した保護フィルムのセルロースエステルフィルムA−2と同じものを、対向フィルムのセルロースエステルフィルムB−6として用いた。
【0246】
(偏光子の作製)
鹸化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
【0247】
得られたPVAフィルムは、平均厚さが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光子としての偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった
【0248】
(偏光子へのフィルムの貼合)
下記工程1〜4に従って、偏光膜の表面に保護フィルムを貼り合わせ、偏光膜の裏面に対向フィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0249】
[工程1]
前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0250】
[工程2]
セルロースエステルフィルムA−1に対して、下記条件でアルカリ処理を実施した。
(アルカリ処理)
鹸化工程 2.5mol/L−KOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
鹸化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥する。
【0251】
次いで、工程1で用いたポリビニルアルコール接着剤溶液に偏光膜を浸漬した。浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜をセルロースエステルフィルムA−1およびアクリルフィルムB−1で挟み込んで、積層配置した。このとき、各フィルムと偏光膜との貼り合わせ角度、すなわち、各フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度はそれぞれ、表1に記載の貼付角度とした。
【0252】
[工程3]
積層物を、2つの回転するローラにて、20〜30N/cm
2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意した。
【0253】
[工程4]
工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、ロール状の偏光板を作製した。
【0254】
セルロースエステルフィルムA−2〜A−6についても上記と同様の条件でアルカリ処理を実施した後、偏光膜に表1の貼付角度で貼り付けた。また、対向フィルム(COPフィルムB−2〜B−4、アクリルフィルムB−5、セルロースエステルフィルムB−6)についても、偏光膜に表1の貼付角度で貼り付けた。
【0255】
実施例1〜5、比較例1〜4に係る偏光板における、保護フィルムおよび対向フィルムの組み合わせは、表1に記載の通りである。
【0256】
<タッチパネル付き表示装置の組み立て>
タッチパネルの導電フィルムと、液晶表示装置の偏光板とを、粘着剤層を介して貼り合わせ、タッチパネル付きの液晶表示装置を構成した。より具体的には、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム(導電層)の表面に、粘着剤として、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製のSVR1240を塗布し、塗布した粘着剤を介して偏光板と導電フィルムとを貼り合わせた。そして、粘着剤の一部分に紫外線を照射して両者を仮固定した。その後、界面に気泡が生じていないか検査した後、粘着剤の全体に紫外線を照射して完全に硬化させた。
【0257】
<タッチパネル付き表示装置の評価>
(1)シールド性の評価
作製したタッチパネル付き液晶表示装置を相対湿度50%RHの環境下で、−20℃から80℃までの温度変化を30分間隔で200サイクル実施した。その後、タッチパネルモジュールのタッチ試験を行い、誤作動が起こるかを確認した。このときの評価基準は、以下の通りである。
○:100回押圧を行ったときに誤作動が0回。
△:100回押圧を行ったときに誤作動が1回以上5回未満。
×:100回押圧を行ったときに誤作動が5回以上。
【0258】
(2)偏光子劣化について
作製したタッチパネル付き表示装置を、60℃90%の環境下に500h静置させた後、黒表示の状態を観察した。このときの評価基準は、以下の通りである。
○:表示が黒である(赤みがかっていない)。
△:わずかに赤みがかっている。
×:表示が赤みを帯びている。
【0259】
(3)偏光板のカールについて
作製した偏光板をA4サイズ(29.7×21.0cm)にチップカットし、一般環境下(23℃、50%RH)、及び多湿環境下(30℃、90%RH)にて24時間調湿後、フィルムカール高さの測定を実施した。そして、四隅の高さの平均値を算出し、以下の基準に基づいて偏光板のカールの程度を評価した。
○:平均高さが0mm以上15mm未満である。
△:平均高さが15mm以上30mm未満である。
×:平均高さが50mm以上である。
【0260】
[評価結果]
比較例2では、偏光板の保護フィルムが導電層を含んでいないため、表示パネルからの電気的ノイズを遮断することができず、タッチパネルの誤作動が多い結果となっている。これに対して、実施例1等では、保護フィルムが導電層を含んでおり、導電層にて電気的ノイズを遮断できるため、シールド性が良好となっている。しかも、保護フィルムは吸湿性および透湿性の高いセルロースエステルフィルムを含んでいるため、導電層が銀ナノワイヤーの水系塗布によって形成されていても、導電層の水分を上記のセルロースエステルフィルムで吸収できる。このため、導電層の水分によるシールド性の低下を抑えることができるものと考えられる。
【0261】
また、保護フィルムの対向フィルムがセルロースエステルフィルムである比較例1では、偏光子劣化が生じている。これは、セルロースエステルフィルムは透湿度が高く、吸湿性が良いことから、導電層の水分が保護フィルムおよび偏光子を介して対向フィルム側に移動しやすくなり、上記水分が偏光子を透過するためと思われる。これに対して、実施例1等では偏光子の劣化が生じていないが、これは、対向フィルムがセルロースエステルフィルム以外の透湿度の低いフィルムであり、偏光子における上記水分の透過が抑えられるためと思われる。
【0262】
さらに、比較例3では、偏光板にカールが生じているが、これは、保護フィルムのセルロースエステルフィルムの厚さが40nmと厚く、吸湿や乾燥による収縮や膨張による応力が大きくなるためと思われる。一方、実施例1等では、偏光板にカールが生じていないが、これは、保護フィルムのセルロースエステルフィルムの厚さは、15〜30nmであり、発生する応力が小さい為と思われる。
【0263】
また、比較例4では、保護フィルムが吸湿性の低いCOPフィルムを含んでおり、COPフィルムにて導電層の水分を吸収することができないため、水分による導電層のシールド性の低下が生じているものと思われる。また、偏光子の両側に吸湿性の低いCOPフィルムが存在するため、導電層の水分がこれらのフィルム間で閉じ込められ、この水分によって偏光子の劣化が生じているものと考えられる。
【0264】
以上より、実施例1〜5では、偏光板の保護フィルムが、厚さが15〜30μmのセルロースエステルフィルムと、ナノワイヤーの水系塗布によって形成される導電層とを含んでおり、対向フィルムは、透湿度200g/m
2/24h以下の光学フィルムを含んでいるため、導電層の水分によるシールド性の低下および偏光子の劣化を抑えることができるとともに、偏光板に反りを抑えることができると言える。
【0265】
なお、実施例では、表示パネルとして液晶表示パネル(LCD)を用いているが、OLEDを用いた場合でも同様の結果が得られるものと考えられる。