(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
元圧を入力する入力ポート、出力ポート及び排出ポートを有し、自動変速機への入力トルクに応じて調圧したスロットル圧を前記出力ポートから出力するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの出力ポートに連通する制御油室、オイルポンプからのライン圧油路に連通する調圧ポート及び該ライン圧油路からのフィードバック圧が供給されるフィードバック圧ポートを有し、スプールの一端に前記制御油室の油圧及びスプリングの付勢力が作用し、該スプールの他端に前記フィードバック圧ポートからのフィードバック圧が作用して前記調圧ポートの油圧をライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブと、を備えた自動変速機の油圧制御装置において、
前記スロットル圧を出力不能な前記スロットルバルブのフェール時に切換えられる第1のソレノイドバルブを有し、前記第1のソレノイドバルブの切換えに基づく所定油圧を前記プライマリレギュレータバルブの前記制御油室に導くフェール回路を備えてなる、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
前記フェール回路は、前記スロットルバルブの排出ポートに連通する第1のポートと、ドレーンポートと、前記所定油圧が供給される入力ポートとを有し、前記第1のソレノイドバルブにより切換えられる切換えバルブを備え、
前記切換えバルブは、前記スロットル圧を出力不能な前記スロットルバルブのフェール時に、前記第1のソレノイドバルブの切換えにより該切換えバルブの前記入力ポートと前記第1のポートとを連通するように切換えられ、前記所定油圧が、該切換えバルブの前記入力ポート及び前記第1のポートを介して前記スロットルバルブの排出ポートに供給され、更に該スロットルバルブの排出ポートから前記出力ポートを介して前記プライマリレギュレータバルブの前記制御油室に供給される、
請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記プライマリバルブは、例えばスロットルバルブをリニアソレノイドバルブで構成し、該リニアソレノイドバルブが全閉フェールしてスロットル圧が出力しない場合、駆動力不足が懸念される関係上、前記スプリングの付勢力を、前記退避駆動力が確保されるように強めに設定されている。このため、上記1次関数からなるライン圧の最低圧が高目に設定され、その結果、ライン圧全体も高目に設定され、通常走行時に必要とされる油圧に対して過剰な油圧設定となっていた。ここで、ライン圧が高くなるほど、作動油を圧送するオイルポンプにて発生するエンジンに対する抵抗(即ち、エンジンに対する負荷)が高くなるため、結果として燃費向上の妨げになっている。
【0006】
そこで、本発明は、ライン圧の最低圧を低目に設定することを可能とするものでありながら、スロットルバルブのフェール時には、車両走行駆動力を確保することを可能とし、もって上記課題を解決した自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば
図1,
図11〜
図13を参照して、本発明は、元圧(P
mod)を入力する入力ポート(22a)、出力ポート(22b)及び排出ポート(22c)を有し、自動変速機への入力トルクに応じて調圧したスロットル圧(P
SLT)を前記出力ポート(22b)から出力するスロットルバルブ(SLT,22)と、
前記スロットルバルブの出力ポート(22b)に連通する制御油室(20c)、オイルポンプからのライン圧油路(21)に連通する調圧ポート(20a)及び該ライン圧油路からのフィードバック圧が供給されるフィードバック圧ポート(20b)を有し、スプール(20p)の一端に前記制御油室(20c)の油圧及びスプリング(20s)の付勢力が作用し、該スプールの他端に前記フィードバック圧ポート(20b)からのフィードバック圧が作用して前記調圧ポート(20a)の油圧をライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブ(20)と、を備えた自動変速機の油圧制御装置において、
前記スロットル圧を出力不能な前記スロットルバルブ(22)のフェール時に切換えられる第1のソレノイドバルブ(S1)を有し、前記第1のソレノイドバルブの切換えに基づく所定油圧(P
S1,P
mod)を前記プライマリ
レギュレータバルブ(20)の前記制御油室(20c)に導くフェール回路(F
1〜F
4)を備えてなる、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置にある。
【0008】
例えば
図12を参照して、
前記フェール回路(F
3)は、前記プライマリレギュレータバルブ(20)の前記制御油室(20c)に連通する連通ポート(26m)と、前記所定油圧が供給される入力ポート(26l)と、を有し、前記第1のソレノイドバルブ(S1)の切換えにより切換えられる切換えバルブ(26’)を備え、
前記切換えバルブ(26’)は、前記スロットル圧を出力不能な前記スロットルバルブ(22)のフェール時に、前記第1のソレノイドバルブ(S1)の切換えにより該切換えバルブの前記入力ポート(26l)と前記連通ポート(26m)とを連通するように切換えられ、前記所定油圧が、該切換えバルブの前記入力ポート(26l)及び前記連通ポート(26m)を介して前記プライマリレギュレータバルブ(20)の前記制御油室(20c)に供給される。
【0009】
例えば
図1,
図11を参照して、前記フェール回路(F
1)(F
2)は、前記スロットルバルブ(22)の排出ポート(22c)に連通する第1のポート(26
j)と、ドレーンポート(26
k)と、前記所定油圧(P
mod)(P
S1)が供給される入力ポート(26l)とを有し、前記第1のソレノイドバルブ(S1)により切換えられる切換えバルブ(26)を備え、
前記切換えバルブ(26)は、前記スロットル圧を出力不能な前記スロットルバルブ(22)のフェール時に、前記第1のソレノイドバルブ(S1)の切換えにより該切換えバルブの前記入力ポート(26l)と前記第1のポート(26j)とを連通するように切換えられ、前記所定油圧が、該切換えバルブの前記入力ポート(26l)及び前記第1のポート(26j)を介して前記スロットルバルブ(22)の排出ポート(22c)に供給され、更に該スロットルバルブ(22)の排出ポート(22c)から前記出力ポート(22b)を介して前記プライマリレギュレータバルブ(20)の前記制御油室(20c)に供給される。
【0010】
例えば
図11,
図12,図13を参照して、前記所定油圧が、前記第1のソレノイドバルブ(S1)の出力圧(P
S1)である。
【0011】
例えば図
1を参照して、前記スロットルバルブ(22)は、モジュレータ圧(P
mod)を元圧とする
スロットル圧調圧用リニアソレノイドバルブ(22)からなり、前記所定油圧は、前記
スロットル圧調圧用リニアソレノイドバルブの元圧と同じモジュレータ圧(P
mod)である。
【0012】
例えば
図12,
図13を参照して、前記フェール回路(F
2)(F
3)は、前記所定油圧(P
mod)(P
S1)を逆止弁(35)を介して前記プライマリレギュレータバルブ(20)の前記制御油室(20c)に導く油路を有する。
【0013】
例えば
図7〜
図10を参照して、第2のソレノイドバルブ(S2)と、
前進1速段でエンジンブレーキを作用させる際に係合されるエンジンブレーキ用摩擦係合要素の油圧サーボ(B2)に対して、前記第2のソレノイドバルブ(S2)からの出力圧(P
S2)により、所定リニアソレノイドバルブ(SL3)の制御圧(P
SL3)の給排を切換える給排切換えバルブ(27)と、を備え、
前記所定油圧は、前記第2のソレノイドバルブ(S2)からの前記出力圧(P
S2)である。
【0014】
前記給排切換えバルブ(27)は、前進1速段よりギヤ比の小さい高速段で前進走行時には、前記第2のソレノイドバルブ(S2)からの出力圧(P
S2)により、前記エンジンブレーキ用摩擦係合要素の油圧サーボ(B2)に対して前記制御圧(P
SL3)の供給を遮断する遮断状態となり、
前進1速段、又は、後進段で走行時には、前記エンジンブレーキ用摩擦係合要素の油圧サーボ(B2)に対して前記制御圧(P
SL3)の供給可能な供給状態となる、ように構成されてなる。
【0015】
前記所定リニアソレノイドバルブ(SL3)の制御圧(P
SL3)を、前進所定変速段(例えば3速、7速)で係合する前記第1摩擦係合要素の油圧サーボ(C3)と、
前記給排切換えバルブ(27)を介して前記エンジンブレーキ用摩擦係合要素の油圧サーボ(B2)と、に選択的に供給する振分けバルブを備え、
前記切換えバルブ
(26)は、前記振り分けバルブに兼用して一体に構成されてなる。
【0016】
例えば図
5を参照して、前記入力ポート(22a)と前記出力ポート(22b)が全閉状態となる前記スロットルバルブ(22)のフェールを検出する手段(50
1)を備え、
該検出手段がフェールを検出すると、前記第1のソレノイドバルブ(S1)が出力圧を出力するように切換えられる。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明によると、スロットルバルブが全閉フェールした場合、第1のソレノイドバルブが切換えられて、所定油圧がフェール回路からプライマリレギュレータバルブの制御油室に供給され、ライン圧は、車両が走行し得る駆動力以上の油圧を確保することができる。またこれにより、ライン圧の最低圧は上記スロットルバルブの全閉フェール時を考慮することなく適正な値に設定することが可能となり、圧力損失(オイルポンプにて発生する抵抗、即ち、エンジンに対する負荷)を低減して燃費向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、第1のソレノイドバルブにより切換えバルブが切換えられて、所定油圧がプライマリレギュレータバルブの制御油室に供給される。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、切換えバルブからの所定油圧は、スロットルバルブの排出ポートから出力ポートを介してプライマリレギュレータバルブの制御油室に供給されるので、プライマリレギュレータバルブへのスロットル圧供給油路を兼用でき、逆止弁などが不要となる為にコストを抑制できると共に油路構造が簡単になる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、スロットルバルブの全閉フェール時に作動する第1のソレノイドバルブの出力圧をプライマリレギュレータバルブに供給する所定油圧とするので、必要時にのみ上記所定油圧を切換えバルブ等に供給して、オイルの無駄を抑制することができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、スロットルバルブの全閉フェール時に供給される所定油圧は、リニアソレノイドバルブからなるスロットルバルブの元圧と同じモジュレータ圧なので、スロットルバルブの全開時と同じライン圧に調圧し、どのような状況にあっても走行可能な駆動力を保証するライン圧を確保することができる。また、
スロットル圧調圧用リニアソレノイドバルブの入力ポートに通常と同じ元圧を供給する為、入力ポートに通常より高い圧が供給される場合(例えば、スロットルバルブの全閉フェール時にライン圧を供給する場合)等に比べて、
スロットル圧調圧用リニアソレノイドバルブの耐久性に対する影響を少なくすることが出来る。
【0023】
請求項6に係る本発明によると、スロットルバルブの出力ポートからプライマリレギュレータバルブの制御油室へ導かれるスロットル圧が他のバルブに流れることを防止できる。
【0024】
請求項7又は8に係る本発明によると、所定油圧を、第2のソレノイドバルブからの出力圧とする。そのため、給排切換えバルブを切換えるための第2のソレノイドバルブを、スロットルバルブの全閉フェール時に駆動力を保証するライン圧を確保する為の油圧回路において共用することできる。従って、専用のソレノイドバルブを追加する必要が無く、油圧制御装置の部品点数が増加することを抑制することが出来る。
【0025】
請求項9に係る本発明によると、所定のリニアソレノイドバルブの制御圧を、前進所定変速段用の油圧サーボと、1速エンジンブレーキ時の油圧サーボとに振分ける振分けバルブに、前記切換えバルブを兼用して一体に構成したので、油圧制御装置の構成が複雑化することを防止できる。
【0026】
請求項10に係る本発明によると、検出手段によりスロットルバルブの全閉フェールが検出される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、
図1及び
図2に沿って本発明に係るフェール回路F
1を有する油圧制御装置Uの基本構成について説明する。プライマリレギュレータバルブ20は、
図1に示すように、オイルポンプからの油圧がライン圧調圧ポート20aに供給されてライン圧P
Lに調圧され、ライン圧油路21からがスプールにフィードバック圧として作用する。フィードバック圧ポート20bから上記スプールの一端に作用するフィードバック圧と、制御油室20cから上記スプールの他端に作用するスプリング20sの付勢力及びスロットルバルブ22からのスロットル圧P
SLTにより、上記調圧ポート20aの油圧はドレーンされつつライン圧P
Lに調圧され、またドレーンされた油圧をセカンダリ圧P
secとして排出する。上記ライン圧P
Lは、ライン圧油路21及びマニュアルバルブ23等を介して各摩擦係合要素の油圧サーボに供給される。
【0029】
上記スロットルバルブ22は、ライン圧調圧用リニアソレノイドバルブ(SLT)からなり、通常時にあっては、運転者のアクセル操作に応じて、入力ポート22aに対する出力ポート22bと排出ポート22cとの連通割合いを制御してスロットル圧P
SLTを制御する。従って、入力ポート22aからのモジュレータ圧P
modは、出力ポート22bからスロットル圧P
SLTとして出力し、一部は排出ポート22cから排出される。出力ポート22bからのスロットル圧P
SLTは、プライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給されて、ライン圧P
Lを調圧制御し、排出ポート22cからの排出油は、切換えバルブ26を介してドレーンされる。即ち、上記スロットル圧P
SLTは、自動変速機への入力トルクに応じて調圧され、該自動変速機への入力トルクは、エンジンの動作状態から推定されるエンジン出力トルク、エンジンE
CUから受信されるエンジン出力トルク信号、スロットル開度から推定される。
【0030】
切換えバルブ26は、正常時にあっては、第1のソレノイドバルブS1のOFFにより、第1のポート26jがドレーンポート26kに連通した第1の状態にあるが、上記スロットルバルブ22が全閉フェールした場合、ソレノイドバルブS1がオンに切換えられることにより、第1のポート26jが入力ポート26lに連通する第2の状態に切換えられる。これにより、モジュレータ圧P
modが、ポート26l、26jを介してスロットルバルブ22の排出ポート22cに供給される。なお、好ましくは、後述するように第2のソレノイドバルブS2がONとされ、当該ソレノイドバルブS2からのモジュレータ圧P
modがポート26lに供給される。また、上記切換えバルブ26の入力ポート26lに供給される所定油圧は、上記モジュレータ圧P
modに限らず、最低限の車両走行駆動力を確保できる油圧(最低退避圧)以上であればよい。
【0031】
この状態では、上記スロットルバルブ22は、スロットル圧が出力不能な全閉状態、即ち入力ポート22aと出力ポート22bとが全閉となり、出力ポート22bと排出ポート22cとが連通した状態にあり、従って上記切換えバルブ26の第1のポート26jからのモジュレータ圧P
modは、上記排出ポート22cから出力ポート22bに導かれる。該モジュレータ圧が上記プライマリレギュレータバルブ20のスプール下端の制御油室20cに作用する。
【0032】
従って、従来の技術にあっては、
図2(A)に示すように、スロットルバルブ(リニアソレノイドバルブSLT)が全閉フェールになった場合に備えて、ライン圧P
Lの最低保証圧Aが最低退避時駆動力を確保する油圧Aに設定され、該最低保証圧Aを基準として、最高保証圧Bまで上記スロットルバルブからのスロットル圧P
SLTに比例するようにライン圧P
Lが設定される。本発明は、スロットルバルブ(SLT)22が全閉フェールした場合、上述したように、スロットルバルブ22の排出ポート22cからのモジュレータ圧がプライマリレギュレータバルブ20に作用して、スロットルバルブ22の全開時と同じライン圧(P
L=B)に調圧され、どのような走行状態にあっても駆動力を確保することができる。
【0033】
これにより、本発明のプライマリレギュレータバルブ20は、
図2(B)に示すように、上記最低退避時駆動力(A)に縛られることがなくなり、そのスプリング20sの付勢力を弱く設定して、該スプリングに基づく最低圧A’が上記従来のものの最低保証圧Aより低く設定することが可能となり(A>A’)、従って通常使用時のライン圧P
Lは、上記最低圧A’と最高圧Bとの間を結ぶ1次関数からなり、ライン圧P
Lを従来のものに比して低目に設定することが可能となる。
【0034】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に沿って説明する。なお、本発明に係る自動変速機は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプ等の車両に搭載されて好適な自動変速機であり、
図3中における左右方向は実際の車両搭載状態における左右方向に対応するが、説明の便宜上、エンジン等の駆動源側である図中右側を「前方側」、図中左方側を「後方側」というものとする。
【0035】
本発明を適用し得る自動変速機1の概略構成について
図3に沿って説明をする。例えばFFタイプの車両に用いて好適な自動変速機1は、エンジンに接続し得る自動変速機の入力軸5を有しており、該入力軸5の軸方向に並設してトルクコンバータ2と、自動変速機構3とを備えている。
【0036】
上記トルクコンバータ2は、自動変速機1の入力軸5に接続されたポンプインペラ2aと、作動流体を介してポンプインペラ2aの回転が伝達されるタービンランナ2bとを有しており、タービンランナ2bは、上記自動変速機構3の入力軸7に接続されている。また、トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2cが備えられており、このロックアップクラッチ2cが係合されると、自動変速機1の入力軸5の回転が、自動変速機構3の入力軸7に直接伝達される。
【0037】
上記自動変速機構3は、入力軸7上において、プラネタリギヤ(減速プラネタリギヤ)DPと、該プラネタリギヤDPの伝動後流側に設けられたプラネタリギヤユニットPUと、を備えている。プラネタリギヤDPは、第1のサンギヤSu1、第1のキャリヤCR1、及び第1のリングギヤR1を有し、第1のキャリヤCR1に、第1のサンギヤSu1に噛合するピニオンP2及び第1のリングギヤR1に噛合するピニオンP1を互いに噛合する形で備えている、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
【0038】
一方、プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素として、第2のサンギヤSu2、第3のサンギヤSu3、第2のキャリヤCR2及び第2のリングギヤR2を有し、該第2のキャリヤCR2に、第2のサンギヤSu2及び第2のリングギヤR2に噛合するロングピニオンギヤP3と、第3のサンギヤSu3に噛合するショートピニオンギヤP4とを互いに噛合する形で備えている、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0039】
上記プラネタリギヤDPの第1のサンギヤSu1は、ミッションケース6に対して回転が固定されている。また、上記第1のキャリヤCR1は、上記入力軸7に接続されて、該入力軸7の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4のクラッチC
―4に接続されている。更に、第1のリングギヤR1は、固定された第1のサンギヤSu1と入力回転する第1のキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1のクラッチC−1及び第3のクラッチ(第2摩擦係合要素)C―3に接続されている。
【0040】
プラネタリギヤユニットPUの第2のサンギヤSu2は、第1のブレーキB―1に接続されてミッションケース6に対して固定自在になっている。また、第2のサンギヤSu2は、第4のクラッチC―4及び上記第3のクラッチC―3に接続されており、第4のクラッチC―4を介して上記第1のキャリヤCR1の入力回転が、第3のクラッチC―3を介して第1のリングギヤR1の減速回転が、それぞれに入力自在となっている。更に、第3のサンギヤSu3は、第1のクラッチC―1に接続されており、第1のリングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
【0041】
また、上記第2のキャリヤCR2は、入力軸7の回転が入力される第2のクラッチC―2に接続され、該第2のクラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっていると共に、ワンウェイクラッチF−1及び第2のブレーキ(第1摩擦係合要素)B−2に接続されている。そのため、第2のキャリヤCR2は、ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース6に対して一方向の回転が規制されると共に、第2のブレーキB−2を介してミッションケース6に回転が固定自在となっている。また、上記第2のリングギヤR2は、カウンタギヤ8に接続されており、該カウンタギヤ8は、不図示のカウンタシャフト及びディファレンシャル装置を介して駆動車輪に接続されている。
【0042】
そして、上述した自動変速機1は、
図4の作動表に示された組み合わせで各クラッチ及び各ブレーキを作動させることにより、前進1速〜8速の変速段と、後進1速の変速段を形成する。なお、作動表には示されていないが、上記自動変速機1は、第4のクラッチC−4を係合すると共に、第2のブレーキB−2を係止することによって、後進2速の変速段を形成することもできる。
【0043】
図5に示すように、自動変速機1の各クラッチC−1,C−2,C−3,C−4及びブレーキB−1,B−2は、油圧制御装置51の多数のバルブにより制御される。油圧制御装置51は、多数のリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4,SL5、スロットルバルブSLT及びON,OFFソレノイドバルブS1,S2(
図6参照)を有しており、これらリニアソレノイドバルブは、制御部(ECU)50からの油圧制御信号により制御される。制御部50は、油圧センサ52、入力回転センサ53及び出力回転センサ55等からの各種信号が入力され、変速判断の外、リニアソレノイドバルブ
からなるスロットルバルブ22の入力ポート22aと出力ポート22bが全閉状態となるフェールを判断するSLT全閉フェール検出手段50
1を有する。
【0044】
SLT全閉フェール検出手段50
1は、後述する
図12,
図13に示すスロットル圧(P
SLT)油路37に設けた油圧センサ52によりスロットル圧P
SLTを検出することにより、全閉フェール(即ち、スロットル圧を出力不能なスロットルバルブのフェール)を判断する。例えば、スロットル圧を出力するように油圧制御信号が出ている場合に、油圧センサ52が油圧を検出しないときにスロットルバルブの全閉フェールと判断する。また、他のフェール判断として、現在の変速段及び該変速段に応じたギヤ比を取得し、かつ入力回転センサ53及び出力回転センサ55により現実のギヤ比を算出し、該現実のギヤ比と変速段によるギヤ比とを比較することにより、その差が所定範囲以上ある場合、摩擦係合要素(クラッチ及びブレーキ)が滑って所定変速段を達成しないことが判断される。該判断において、ソレノイド異常等の他の異常検出状況を取得しない状況では、ライン圧が正常値に上昇していないと判断して、スロットルバルブ22が全閉フェールであることを検出する。
【0045】
ついで、
図6〜
図10に沿って、本自動変速機用の油圧制御装置について説明する。詳しくは省略するが、本油圧制御装置は、基本的に、
図5に示すように、各リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4,SL5が、それぞれクラッチC−1,C−2,C−3,C−4及びブレーキB−1を制御するように対応しており、
図6に示すように作動する。エンジンブレーキ用の第2ブレーキB−2用のリニアソレノイドは省かれており、代りに、
図7〜
図10に示すように、第1及び第2のソレノイドバルブS1,S2で操作されるC3−B2アプライコントロールバルブ26及びソレノイドリレーバルブ27が配置されている。
【0046】
C3−B2アプライコントロールバルブ26は、
図7に示すように、通常時、振分けバルブとして機能し、スプール26pと、該スプール26pを図中上方に付勢するスプリング26sとを有していると共に、該スプール26pの図中上方に作動油室26aを有しており、マニュアルバルブの後進レンジ圧出力ポートと接続し、後進レンジ圧P
Rが入力されるリバースレンジ圧入力ポートとしての第1及び第2の入力ポート26c,26gと、リニアソレノイドバルブSL3からの制御油圧P
SL3が入力される制御圧入力ポートとしての入力ポート26eと、出力ポート(第1出力ポート)26bと、出力ポート(第2出力ポート)26dと、出力ポート(第3出力ポート)26fと、ドレーンポート26hとを有して構成されている。更に加えて、該C3−B2アプライコントロールバルブ26は、前述したスロットル圧切換えバルブとしての機能が付加されており、スロットルバルブ(SLT)22の排出ポート22cに連通する第1のポート26j、ドレーンポート26k及び第2のソレノイドバルブS2の出力ポートcに連通する入力ポート26lを有している。
【0047】
また、C3−B2アプライコントロールバルブ26は、作動油室26aが、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなる第1のオン・オフソレノイドバルブS1(通電時にモジュレータ圧P
modを略々そのまま該バルブ26を切換え得る出力圧P
S1として出力するソレノイドバルブ)の出力ポートfに接続しているため、該第1オン・オフソレノイドバルブS1から作動油室26aに出力圧(第1切換え圧)P
S1が出力されると第1の状態(左半位置)から第2の状態(右半位置)へと切換わる。
【0048】
前記C3−B2アプライコントロールバルブ26は、第1の状態(左半位置)にあって、第1出力ポート26bとドレーンポート26h、後進レンジ圧第1入力ポート26cと第1出力ポート26d、制御圧入力ポート26eと第3出力ポート26f、第1のポート26jとドレーンポート26kと、がそれぞれ連通し、第2の状態(右半位置)にあって、後進レンジ圧第1入力ポート26cと第1出力ポート26b、入力ポート26eと第2出力ポート26d、後進レンジ圧第2入力ポート26gと第3出力ポート26f、第1のポート26jと入力ポート26lと、がそれぞれ連通する。
【0049】
ソレノイドリレーバルブ(給排切換えバルブ)27は、スプール27pと、該スプール27pを図中上方に付勢するスプリング27sとを有していると共に、該スプール27pの図中上方に作動油室27aを有しており、更に入力ポート(第1入力ポート)27bと、入力ポート(第2入力ポート)27cと、第2のブレーキB−2の油圧サーボに接続する出力ポート27dと、を有して構成されている。
【0050】
該ソレノイドリレーバルブ(給排切換えバルブ)27は、作動油室27aに、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなる第2のオン・オフソレノイドバルブS2(即ち通電時にモジュレータ圧P
modを略々そのまま該バルブ27を切換え得る出力圧P
S2として出力するソレノイドバルブ)からの出力圧P
S2が出力されると、左半位置から右半位置へと切換わる。
【0051】
前記ソレノイドリレーバルブ(給排切換えバルブ)27は、左半位置にあって、第1入力ポート27bと出力ポート27dが連通し、右半位置にあって、第2入力ポート27cと出力ポート27dが連通する。
【0052】
リニアソレノイドバルブからなるスロットルバルブ(SLT)22は、モジュレータ圧P
modが入力される入力ポート22aと、スロットル開度に応じて調圧、制御されたスロットル圧P
SLTを出力する出力ポート22bと、排出ポート22cとを有している。前記出力ポート22bは、プライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに連通し、また上記排出ポート22cは、C3−B2アプライコントロールバルブ26の第1のポート26jに連通している。第3のリニアソレノイドバルブSL3は、同様に、モジュレータ圧を調圧、制御して出力ポートhから制御油圧P
SL3を出力し、出力ポートhは、C3−B2アプライコントロールバルブ26の入力ポート26eに連通している。
【0053】
プライマリレギュレータバルブ20は、スプール20pと、前記制御油室20cに配置され、スロットル圧P
SLTと共に該スプール20pを一方に付勢するスプリング20sを有している。更に、オイルポンプの吐出側に連通しているライン圧油路21が、調圧ポート20aに連通していると共に、フィードバック圧として上記スプール20pを他方に付勢するようにフィードバック圧ポート20bに連通しており、また該プライマリレギュレータバルブ20は、上記オイルポンプの入力側に連通する戻しポート20d及びセカンダリレギュレータバルブに供給されるポート20eを有している。なお、上記ライン圧の一部は、モジュレータバルブに供給されて、略一定圧からなるモジュレータ圧P
modに調圧される。
【0054】
本油圧制御装置Uの作用について説明する。Dレンジにおける前進時、
図6に示すように、1速段から8速段のすべての変速段において、第1のソレノイドバルブS1がオフ(非通電)、第2のソレノイドバルブS2がオン(通電)にある。なお、1速段エンジンブレーキ状態では、第2のソレノイドバルブS2がオフとなるため、Dレンジにあってはソレノイドリレーバルブ27の動きは何等関与しないので、第2のソレノイドバルブS2は、Dレンジ1速段でも、エンジンブレーキに備えてオフにあってもよい。この状態にあっては、
図7に示すように、C3−B2アプライコントロールバルブ26は、作動油室26aに油圧(第1切換え圧)が供給されず、スプリング26sにより第1の状態(左半位置)にあり、ソレノイドリレーバルブ27は、作動油室27aに出力圧(第2切換え圧)が供給されて、右半位置にある。
【0055】
スロットルバルブ22は、正常に作動しており、モジュレータ圧P
modを調圧して、スロットル開度に応じたスロットル圧P
SLTを出力ポート22bから出力し、プライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに作用して、
図2(B)に示すように、スロットル圧P
SLTに比例したライン圧P
Lを出力する。この際、スプリング20sは弾力の小さいものが用いられ、最低圧A’が従来のもの(
図2(A)のA参照)に比して低く設定される。従って、通常使用時(A’〜B、最高圧Bは従来のものと同じ)のライン圧P
L全体が低目となってその分油圧損を減少して低燃費化を図ることが可能となる。なお、スロットルバルブ22の排出ポート22cからの排出油は、C3―B2アプライコントロールバルブ(切換えバルブ)26の第1のポート26j及びドレーンポート26kを通って排出される。また、第2のソレノイドバルブS2は、オン位置にあって出力ポートcからモジュレータ圧P
modを出力しているが、C3−B2アプライコントロールバルブ26のポート26lにて遮断され、スロットルバルブ22に影響を与えることはない。
【0056】
この状態では、3速段、7速段にあっては、第3のリニアソレノイドバルブSL3から出力される制御油圧P
SL3は、振分けバルブとして機能する上記C3−B2アプライコントロールバルブ26の入力ポート26e及び第3出力ポート26fを通って第3のクラッチC−3用油圧サーボC3に供給される。従って、
図6に示す各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5が、制御部からの信号に基づき各変速段に応じてそれぞれ制御されることにより、
図4に示すように各クラッチC−1〜C−4、ブレーキB−1が制御されて各変速段が達成される。
【0057】
運転者がシフトレバーをリバースレンジに操作した通常後進時、第1及び第2のソレノイドバルブS1,S2は、共にオフ(非通電)となる。この状態では、
図8に示すように、C3−B2アプライコントロールバルブ26は、第1の状態(左半位置)にあり、ソレノイドリレーバルブ27は、スプリング27sにより左半位置となる。スロットルバルブ22からのスロットル圧P
SLTによりライン圧が制御されることは同じであり、また第3のリニアソレノイドバルブSL3からの制御油圧P
SL3が、C3−B2アプライコントロールバルブ26のポート26e,26fを介して第3のクラッチC−3の油圧サーボC3に供給される。また、マニュアルバルブからの後進レンジ圧P
Rが、上記C3−B2アプライコントロールバルブ26の第1入力ポート26c及び第2出力ポート26d、更にソレノイドリレーバルブ27の第1入力ポート27b及び出力ポート27dを介して第2のブレーキB−2用油圧サーボB2に供給される。これにより、第3のクラッチC−3及び第2のブレーキB−2が係合される後進段となる。
【0058】
また、上記運転者のリバースレンジの操作が、車両が後進許可以上の速度での前進域にある場合、第2のソレノイドバルブS2はオン状態を保持する。この状態では、ソレノイドリレーバルブ27は、右半位置にあり、C3−B2アプライコントロールバルブ26のポート26c,26dを介して供給される後進レンジ圧は、上記リレーバルブ27のポート27bにより遮断されると共に、第2のブレーキ用油圧サーボB2は、該リレーバルブ27のポート27d及び27c、上記C3−B2アプライコントロールバルブ26のポート26b及び26hを介してドレーンされる。これにより、車両が後進許可速度以下になるまで上記後進段になることは阻止される(リバースインヒビット)。
【0059】
運転者がシフトレバーを前進1速段に操作してエンジンブレーキを要求する場合、第1のソレノイドバルブS1がオン(通電)になり、第2のソレノイドバルブS2がオフ(非通電)となる。この状態では、
図9に示すように、振分けバルブとして機能するC3−B2アプライコントロールバルブ26は、作動油室26aにP
SL圧(モジュレータ圧)が供給されて第2の状態(右半位置)にあり、ソレノイドリレーバルブ27は、左半位置にある。
【0060】
従って、第3のリニアソレノイドバルブSL3からの制御油圧P
SL3は、上記C3−B2アプライコントロールバルブ26の入力ポート26e及び第2出力ポート26d、リレーバルブ27の第1入力ポート27b及び出力ポート27dを介して第2のブレーキB−2用の油圧サーボB2に供給される。これにより、上記第3のリニアソレノイドバルブSL3による第2のブレーキB−2が係合制御され、第1のリニアソレノイドバルブSL1による第1のクラッチC−1の係合制御と相俟って、1速エンジンブレーキ状態となる。上記C3−B2アプライコントロールバルブ(切換えバルブ)26の第2の状態(右半位置)により、後進レンジ圧第2入力ポート26gが第3出力ポート26fと連通するが、後進レンジ圧は発生していないので、第3のクラッチ用油圧サーボC3に油圧が供給されることはない。
【0061】
前記C3−B2アプライコントロールバルブ26の第2の状態(右半位置)により、スロットルバルブ22の排出ポート22cに連通する第1のポート26jとドレーンポート26kとが遮断されるが、上記排出ポート22cからのスロットル圧排出油は、オリフィス30を介して排出されると共に、上記第1のポート26jと入力ポート26lとの連通により、ドレーン位置にある第2のソレノイドバルブS2の出力ポートcに導かれてドレーンポートnから排出される。これにより、スロットルバルブ22は、スロットル開度に応じた適正なスロットル圧P
SLTを出力して、プライマリレギュレータバルブ20により適正なライン圧が制御される。
【0062】
リニアソレノイドバルブからなるスロットルバルブ(SLT)22からスロットル圧が出力しないことを検出して、制御部50のSLT全閉フェール検出手段50
1が、前述したようにスロットルバルブ22の全閉フェールを判断した場合、
図6に示すように、第1及び第2のソレノイドバルブS1,S2が共にオン(通電)となるように制御される。これにより、
図10に示すように、切換えバルブとして機能するC3−B2アプライコントロールバルブ26は、第2の状態(右半位置)に切換えられ、ソレノイドリレーバルブ27は、右半位置に切換えられる。
【0063】
上記全閉フェールしたスロットルバルブ22は、入力ポート22aと出力ポート22bが全閉(遮断)したスロットル圧の出力不能状態となり、出力ポート22bと排出ポート22cとが連通した状態にある。前記第2のソレノイドバルブS2は、入力ポートeと出力ポートcとを連通したオン位置にあってモジュレータ圧P
modが出力ポートcから出力しており、該出力圧(第1切換え圧)P
S2は、C3−B2アプライコントロールバルブ(切換えバルブ)26の入力ポート26l及び第1のポート26jを介して上記スロットルバルブ22の排出ポート22cに供給される。該排出ポート22cに供給されたモジュレータ圧は、連通状態にある出力ポート22bを通ってプライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給される。
【0064】
これにより、プライマリレギュレータバルブ20は、上記モジュレータ圧、即ちスロットルバルブ22の元圧であるモジュレータ圧が、該スロットルバルブ22の全通状態(全開状態)である最高圧Bにより制御された状態となり、ライン圧P
Lは、最高圧(B)状態となる。従って、プライマリレギュレータバルブ20は、従来のもの(
図2(A)参照)のように、スロットルバルブ全閉フェール時の最低退避時駆動力を確保するための最低保証圧を設定する必要がなく、
図2(B)に示すように、最低圧を低くした(A>A’)ライン圧を設定することが可能となる。
【0065】
この状態でも、前進時は、第3のリニアソレノイドバルブSL3を除いた他のリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4,SL5により、3速段及び7速段を除いた各変速段を達成することが可能となる。
【0066】
また、シフトレバーを後進段に操作したリバース状態では、後進レンジ圧P
Rが、C3−B2アプライコントロールバルブ(切換えバルブ)26の第1の入力ポート26c及び第1出力ポート26b、更にソレノイドリレーバルブ27の第1入力ポート27b及び出力ポート27dを介して第2のブレーキ用の油圧サーボB2に供給されると共に、上記C3−B2アプライコントロールバルブ26の第2入力ポート26g及び第3出力ポート26fを介して第3のクラッチC−3用の油圧サーボC3に供給される。これにより、後進段が達成されて、車両は後進可能となる。なお、修理工場に行くまでの最低退避時として、前進状態では5速段が設定される。
【0067】
ついで、
図11ないし図13に沿って、一部変形した他の実施の形態によるフェール回路を有する油圧制御装置について説明する。なお、
図1と同様な部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図11に示すフェール回路F
2は、切換えバルブ26の入力ポート26lに第1のソレノイドバルブS1の出力圧P
S1を供給する。従って、スロットルバルブ22の全閉フェール(及び1速時エンジンブレーキ)以外、第1のソレノイドバルブS1は閉状態にあり、上記切換えバルブ26の入力ポート26lに無駄に所定油圧(出力圧P
S1=モジュレータ圧P
mod)が供給されることはない。これにより、油圧の流量を抑制することが出来る。例えば、モジュレータ圧を直接入力ポート26lに供給するようにすると、隣接して配置されたドレーンポート26kから常時油圧が漏れ出るため、モジュレータ圧の必要流量が増加してしまうが、第1ソレノイドバルブS1からの油圧を供給するため、上述の効果が得られる。そして、スロットルバルブ22の全閉フェール時、第1のソレノイドバルブS1がONに切換えられ、出力圧P
S1により切換バルブ26が切換えられると共に、上記出力圧P
S1は、入力ポート26lに供給され、更に第1のポート26jを介してスロットルバルブ22の排出ポート22cに供給される。そして、全閉状態にあるスロットルバルブ22の出力ポート22bからプライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給される。
【0069】
図12に示すフェール回路F
3は、切換えバルブ26’の連通(第1の
)ポー
ト26mが逆止弁35を介してスロットル圧油路37に連通している。な
お、入力ポート26lにモジュレータ圧P
modが供給されて
もよいが
、第1のソレノイドバルブS1の出力圧P
S1でもよい。また、スロットル圧油路37における上記連通ポート26mとの連通部の上流側に逆止弁36が介在している。
【0070】
本実施の形態では、スロットルバルブ22の正常時は、出力ポート22bからのスロットル圧P
SLTが逆止弁36を介してプライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給される。その際、スロットル圧P
SLTは、逆止弁35により切換バルブ26’の連通ポート26mに流れることはない。なお、切換バルブ26’は、この状態では閉塞状態となるように構成すれば、逆止弁35はなくてもよい。そして、スロットルバルブ22の全閉フェール時、第1のソレノイドバルブS1がONに切換えられ、入力ポート26lと連通ポート26mとが連通する。この状態では、所定油圧(モジュレータ圧P
mod)が入力ポート26l、連通ポート26m、逆止弁35及び油路37を介してプライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給される。この際、油路37の所定油圧は、逆止弁36によりスロットルバルブ22の出力ポート22bに流れることが阻止され、排出ポート22cから漏れることはない。
【0071】
図13に示すフェール回路F
4は、切換バルブをなくして、第1のソレノイドバルブS1の出力圧P
S1を逆止弁35を介して直接スロットル圧油路37に連通している。従って、スロットルバルブ22の全閉フェール時、第1のソレノイドバルブS1がONに切換えられると、該ソレノイドバルブS1の出力圧P
S1が所定油圧となって、逆止弁35及び油路37を介してプライマリレギュレータバルブ20の制御油室20cに供給される。スロットルバルブの正常時、スロットル圧油路37のスロットル圧P
SLTは、逆止弁35により第1のソレノイドバルブS1に逆流することはない。
【0072】
即ち、本発明は、スロットルバルブの全閉フェールを検出した場合、フェール回路を介してプライマリレギュレータバルブの制御油室に油圧を供給することにある。特に切換えバルブを有し、当該切換えバルブが切換えられ、該切換えに基づく所定油圧がプライマリレギュレータバルブの制御油室に供給されるようにすると、より好適である。