(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリットが前記ヒートシール層非積層部を跨いで前記導電層を切断し、前記スリットの両端が前記ヒートシール層上で前記周方向切断線に接する請求項1又は2に記載の誘導加熱発熱体。
前記中央部領域が、中心側から外周縁側に向かって放射状に前記導電層を切断する複数の放射状切断線によって複数の領域に区画された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘導加熱発熱体。
前記中央部領域が、周方向に沿って前記導電層を切断する一又は複数の周方向切断線によって複数の領域に区画された請求項1乃至6のいずれか一項に記載の誘導加熱発熱体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、電磁調理器から生じる渦電流により、0.10〜100μmのアルミニウム箔を発熱させる電磁調理器を用いる加熱方法が提案されており、非磁性の容器の内容物を電磁調理器によって加熱することが開示されている。
しかしながら、このような加熱方法においては、誤って空焚きした場合などに、アルミニウム箔が急激に昇温して容易に燃えて飛散する危険や、アルミニウム箔が急激に昇温したときの熱により容器が損傷する虞がある。
【0007】
これに対して、特許文献2には、空焚き状態となった場合に、選択的に過剰に発熱して破断する部位を有するヒューズ機能部を設けて、当該部位が破断することによって電磁調理器の安全機構が働いて、電磁調理器が停止して加熱を終えるようにした誘導加熱発熱体が提案されている。
しかしながら、特許文献2では、ヒューズ機能部の破断する部位を、導電性材料を折り曲げて立ち上げた部位の上縁側に形成しており、調理する際や、容器を重ねて保管、搬送する際に、この立ち上げた部位を損傷してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、非磁性(又は非導電性)の容器本体に誘導加熱発熱体を取り付けて、収容された被加熱物を電磁調理器などにより加熱する誘導加熱容器として使用され、調理する際や、容器を重ねて保管、搬送する際に、ヒューズ機能部が損傷することなく、空焚きなどの発熱体の昇温時の熱による容器本体の損傷を有効に回避して、容器の安全性を高めた誘導加熱発熱体、及びこの誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る誘導加熱発熱体は、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する導電層に、ヒートシール層を積層した積層体から成る誘導加熱発熱体であって、周方向に沿って前記導電層を切断する複数の周方向切断線によって、中央部領域と、一又は複数の加熱領域と、周縁部領域とに区画されるとともに、前記ヒートシール層が非積層とされたヒートシール層非積層部を、前記加熱領域と交差させて帯状に設け、前記加熱領域の少なくとも一つに、前記ヒートシール層非積層部における前記導電層を切断し、前記加熱領域を区画する内周側又は外周側の少なくとも一方の前記周方向切断線に両端が接するスリットを形成して、前記加熱領域を区画する内周側の前記周方向切断線と外周側の前記周方向切断線との間に、平面状のヒューズ機能部を形成した構成としてある。
【0010】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、上記した誘導加熱発熱体を、非導電性材料からなる容器本体に取り付けた構成としてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘導加熱発熱体によれば、調理する際や、容器を重ねて保管、搬送する際に、ヒューズ機能部の損傷が防止される。この結果、空焚き状態となった場合のヒューズ機能部の機能を低下させることなく、電磁調理器が備える安全機構に異常を検知させ、電磁調理器を自動的に停止させて空焚きなどの発熱体の昇温時の熱による容器本体の損傷等を防止できる。
また、本発明の誘導加熱容器によれば、上記誘導加熱発熱体を備えることにより、安全性が高められた誘導加熱容器とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態における誘導加熱容器1は、非導電性材料からなる容器本体2と、容器本体2に取り付けて電磁調理器による誘導加熱を可能とする誘導加熱発熱体3とを備えている。容器本体2は、水などの液状の被加熱物を収容できるように内底面21の周りを囲むように立設された側壁を有しており、誘導加熱発熱体3は、このような容器本体2の内底面21側に取り付けられる。
【0015】
誘導加熱容器1は、通常、市販の電磁調理器の上に置いて使用される。このことから、容器本体2の内底面21や、容器本体2の内底面21側に取り付けられる誘導加熱発熱体3の大きさは特に限定されず、使用する電磁調理器が備える電磁誘導加熱コイルの大きさに応じて設定することができる。例えば、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な電磁誘導加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度であり、業務用のものであれば、これよりも大きいものもあるが、使用が想定される電磁調理器に応じて大きさを適宜定めることができる。
【0016】
容器本体2の内底面21の形状も、図示するような正方形状に限定されない。例えば、矩形状、円形状とするほか、三角形、五角形、六角形などの多角形状としても良い。容器本体2の全体的な形状も、使い勝手などを考慮して種々の形状とすることができる。
【0017】
容器本体2に取り付ける誘導加熱発熱体3は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルが発する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱する導電性材料からなる導電層30に、容器本体2に対してヒートシール性を有するヒートシール層31を積層してなる積層体を平板状の所定形状に切り抜くことによって形成されている(
図6、
図7、及び
図8参照)。
【0018】
導電層30を形成する導電性材料としては、例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛などの金属、又はこれらの合金など、高周波磁界による誘導加熱によって発熱する種々の導電性材料を用いて形成することができる。より具体的には、例えば、導電性材料としてアルミニウムを用いる場合、好ましくは0.10〜100μm程度、より好ましくは1〜40μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて導電層30を形成することができる。アルミニウム箔などの金属箔を用いて導電層30を形成すれば、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付ける際に、ヒートシール層31を介して容易に取り付けることができ、また、容器本体2の形状に適合させることができる。
【0019】
ヒートシール層31は、容器本体2に対してヒートシール性を有するものであれば特に限定されず、容器本体2を形成する非導電性材料に応じて適宜選択することができる。成形加工し易く、ヒートシール性が良好で、適度な耐熱性を有する樹脂が好ましく、特に、後述する容器本体2と同種の樹脂が好ましい。導電層30とヒートシール層31とは、直接、又は適宜の接着剤を介して、公知のラミネート技術により積層することができる。誘導加熱発熱体3を積層体として構成することにより、従来公知の多層フィルム、多層シートの製造技術が応用できるため、その製造が容易になる。
【0020】
容器本体2を形成する非導電性材料としては、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料を好適に使用できる。容器本体2は、単層、又はこれらの樹脂同士或いは他の機能性樹脂と組み合わせた多層構成であっても良い。非導電性材料としては、紙、ガラスなども使用できるが、誘導加熱発熱体3のヒートシール層31とのヒートシール性を考慮して、内面に前記の合成樹脂がラミネート或いはコートされているのが好ましい。これらの材料にて容器本体2を形成することにより、電磁調理器を用いた加熱調理が可能な誘導加熱容器1を安価に提供することが可能となる。
【0021】
本実施形態において、誘導加熱発熱体3は、ほぼ円形に形成されており、ヒートシール層非積層部31aが径方向に延在して設けられているが、これについては後述する。誘導加熱発熱体3の形状は、誘起される渦電流の特性から円形が最も効率が良いが、容器本体2の形状に対応させて、正方形状、矩形状などでも良く、「径方向」とは、これらの図形の中心側から外周縁側に向かう方向をいうものとする。
【0022】
本実施形態における誘導加熱発熱体3は、
図1、
図5、
図7、及び
図8に示すように、同心円状に周方向に沿って導電層30を切断する周方向切断線33a,33bによって、中央部領域CFと、主加熱領域HFと、周縁部領域OFとに区画されている。そして、周方向切断線33a,33bの間に位置する主加熱領域HFは、周方向切断線33a,33bと同心円状に周方向に沿って導電層30を切断する周方向切断線33c,33d,33eによって径方向に複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画されるとともに、周方向切断線33c,33dの間の領域が、径方向に延在する径方向切断線34bによって周方向に複数の領域に区画されている。
【0023】
また、周方向切断線33aに対して内側に位置する中央部領域CFは、誘導加熱発熱体3の中心側から外周縁側に向かって放射状に導電層30を切断する複数の放射状切断線34aによって周方向に複数の領域に区画されるとともに、周方向切断線33aと同心円状に周方向に沿って導電層30を切断する周方向切断線33fによって径方向にも複数の領域に区画されている。さらに、切断線33bに対して外側に位置する周縁部領域OFは、径方向に延在する径方向切断線34cによって周方向に複数の領域に区画されている。
【0024】
導電層30の切断に際しては、刃物により導電層30側から切断したり、YAGレーザー、半導体レーザーなどを用いて導電層30を選択的に切断したりすれば良い。誘導加熱発熱体3を一体のものとして取り扱うのに支障がない範囲で、ヒートシール層31の一部まで切断が及んでもよいが、ヒートシール層31を切断せずに繋がった状態とすれば、誘導加熱発熱体3を一体のものとして取り扱うことができるため、製造時の取り扱いがきわめて容易になる。
【0025】
誘導加熱発熱体3の導電層30を切断して切断線33a,33b,33c,33d,33e,33f,34a,34b,34cを形成することによって、導電層30に誘起された渦電流は、切断線33a,33b,33c,33d,33e,33f,34a,34b,34cを横切る方向には流れなくなる。このため、切断線33a,33b,33c,33d,33e,33f,34a,34b,34cによって区画された、それぞれの領域ごとに渦電流が誘起される。
【0026】
電磁誘導加熱コイル上に置かれた誘導加熱発熱体3に誘起される渦電流は、電磁誘導加熱コイルの形状に則して誘起される。通常、中央部領域CFに誘起される渦電流はそれほど強くはならないが、電流密度の分布がやや不安定で、より外側を流れる渦電流を乱す場合がある。このため、周方向切断線33aによって中央部領域CFと主加熱領域HFとに区画することで、主加熱領域HFへの影響を低減することができる。
尚、主加熱領域HFを区画する周方向切断線33a,33bを形成する位置は、誘起される渦電流の電流密度分布が安定していて、導電層30を効率良く発熱させることができる領域を主加熱領域HFとして区画できるように、誘導加熱発熱体3の大きさや形状などに応じて適宜調整することができる。
【0027】
また、誘起される渦電流の電流密度分布は、一般には、電磁誘導加熱コイルの半径方向に沿って均一ではなく、半径方向中央に対してやや外周寄りの位置に電流密度のピークを有し、その位置で被加熱物が強く加熱される傾向にある。このような渦電流の電流密度の分布を考慮して、本実施形態では、主加熱領域HFを径方向に複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画している。主加熱領域HFを径方向に複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画する周方向切断線33c,33d,33eを形成する位置は、誘起される渦電流を制御して被加熱物に対する加熱の均等化を図ることができるように適宜調整することができる。
【0028】
このように、本実施形態にあっては、周方向に沿って導電層30を切断する周方向切断線33a,33bによって主加熱領域HFを区画するとともに、周方向に沿って導電層30を切断する周方向切断線33c,33d,33eによって主加熱領域HFを複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画することで、主加熱領域HFに誘起される渦電流を制御して、主加熱領域HFができるだけ均等に発熱するようにしてある。
【0029】
このようにすることで、被加熱物の加熱ムラを抑制して、水などの液状の被加熱物が局所的に急激に加熱されないようにし、突沸の発生を抑止することができる。さらに、主加熱領域HF(加熱領域HF1,HF2,HF3)における周方向切断線33a,33b,33c,33d,33eの端縁は、水などの液状の被加熱物が沸騰して気泡が発生する際の起点となる。このため、加熱時には沸騰石を入れた時のように小さな気泡が継続的に多数生成され、突発的な大きな気泡の発生が防止されることによっても突沸の発生が抑止される。これにより、突沸によって飛散した被加熱物により使用者が火傷を負ってしまったり、電磁調理器周辺を汚したりするような事態を避けることができる。
【0030】
また、前述したように、中央部領域CFは、放射状切断線34aによって周方向に複数の領域に区画されるとともに、周方向切断線33fによって径方向にも複数の領域に区画されており、周縁部領域OFも、径方向切断線34cによって周方向に複数の領域に区画されている。このようにして、中央部領域CFと周縁部領域OFとを複数の小さな領域に区画することで、それぞれの領域には、電磁調理器が備える電磁誘導加熱コイルの中心回りの強い渦電流は誘起されなくなり、中央部領域CFと周縁部領域OFは、それほど高温にならない。したがって、中央部領域CFと周縁部領域OFにおけるヒートシール層31でヒートシールして、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付ければ、容器本体2への伝熱を抑制でき、容器本体2の損傷を防止することができる。
【0031】
さらに、主加熱領域HFに形成した切断線33c,33dの間の領域にあっても、切断線34bによって周方向に複数に区画することで、当該領域での発熱を抑制し、当該領域におけるヒートシール層31で容器本体2とヒートシールしている。
このように、誘導加熱発熱体3の中央部領域CFと周縁部領域OFだけでなく、主加熱領域HFの切断線33c,33dの間に発熱が抑制された領域を形成し、当該領域におけるヒートシール層31でも容器本体2とヒートシールすることで、被加熱対象物の対流や流動、又は電磁誘導加熱コイルとの斥力による誘導加熱発熱体3の浮き上がり、又は波打ちを有効に抑止することができ、より安定した加熱が可能になる。
【0032】
また、本実施形態にあっては、誘導加熱発熱体3がほぼ円形に形成されていることから、この誘導加熱発熱体3の中心を通る径方向に沿ってヒートシール層31を所定の幅で除去し、主加熱領域HF(加熱領域HF1,HF2,HF3)と交差する帯状のヒートシール層非積層部31a(導電層30)を設けてある。そして、加熱領域HF1,HF2,HF3のそれぞれのヒートシール層非積層部31aと交差する領域に、加熱調理の際に、液状の被加熱物が沸騰し蒸発して減少したときや、容器内に被加熱物が収容されていない場合など、被加熱物への熱移動がなされない空焚きの状態となったときに、選択的に過剰に発熱して破断する平面状のヒューズ機能部32が形成されている。
【0033】
平面状のヒューズ機能部32は、導電層30の導電性材料を折り曲げて立ち上げる立体的な加工を伴わない形状で上記した機能を呈するように、渦電流の電流密度に偏りを生じさせ、電流密度が最も高くなる部位として形成する。
本実施形態では、
図1、及び
図5に示すように、主加熱領域HFの切断線33a,33c、切断線33d,33e、及び切断線33e,33bによって区画された加熱領域HF1,HF2,HF3のそれぞれに、ヒートシール層非積層部31aを跨いで導電層30を切断し、これらの加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側に位置する一方の周方向切断線33a,33d,33eに、ヒートシール層31上で両端が接する円弧状のスリット35a,35b,35cを形成してある。そして、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する外周側に位置する他方の周方向切断線33c,33e,33bと、スリット35a,35b,35cとの間の幅を狭くして、この部分が平面状のヒューズ機能部32として機能する。
このようすることで、加熱領域HF1,HF2,HF3に誘起される渦電流の電流密度に偏りが生じ、ヒューズ機能部32における電流密度が最も高くなる。その結果、被加熱物への熱移動がなされない空焚きの状態となったときに、ヒューズ機能部32が選択的に過剰に発熱して破断する。
【0034】
尚、誘起される渦電流に乱れが生じ難くする上で、スリット35a,35b,35cは円弧状に形成するのが特に好ましいが、これに限定されない。スリット35a,35b,35cは、対向する外周側に位置する他方の周方向切断線33c,33e,33bとの間の幅を狭くして、平面状のヒューズ機能部32として機能する部分を形成できれば良く、好ましくは、スリット35a,35b,35cの両端が接する内周側に位置する一方の周方向切断線33a,33d,33eから離間する方向に突出するように形成する。
【0035】
また、スリット35a,35b,35cは、
図9(a)に示すように、ヒートシール層非積層部31aを跨いで導電層30を切断し、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する外周側に位置する一方の周方向切断線33c,33e,33bに、ヒートシール層31上で両端が接する円弧状のスリット35a,35b,35cを形成して、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側に位置する他方の周方向切断線33a,33d,33eと、スリット35a,35b,35cとの間の幅を狭くして、この部分を平面状のヒューズ機能部32としても良い。
【0036】
さらに、スリット35a,35b,35cは、
図9(b)に示すように、ヒートシール層非積層部31aを跨いで導電層30を切断し、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側に位置する一方の周方向切断線33a,33d,33eと、外周側に位置する他方の周方向切断線33c,33e,33bの両方に、それぞれヒートシール層31上で両端が接する円弧状のスリット35a,35b,35cを形成して、このスリット35a,35b,35c同士間の幅狭部を平面状のヒューズ機能部32としても良い。
【0037】
すなわち、ヒューズ機能部32は、ヒートシール層非積層部31aを跨いで導電層30を切断し、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側又は外周側の少なくとも一方の周方向切断線に両端が接するスリット35a,35b,35cを形成することにより、内周側の周方向切断線33a,33d,33eと外周側の周方向切断線33c,33e,33bとの間に平面状に形成されていれば良い。
尚、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な電磁誘導加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度で加熱コイル径が小さく、このような場合は、渦電流を外周側の周方向切断線33c,33e,33bとスリット35a,35b,35cとの間に流すことにより、ヒューズ機能部32がより安全に作動して容器本体2の損傷が防止される。
尚、
図9は、
図1中鎖線で囲む部分を拡大して、スリット35aの変形例を示している。
【0038】
ヒューズ機能部32が破断すると渦電流の導通が遮断され、電磁調理器の安全装置がその異常を検知し、これによって電磁調理器が停止して加熱が終了するので、空焚きによる容器本体2の損傷を防止することができる。さらに、収容する被加熱物の量により加熱時間を制御することもできるので、誘導加熱容器1を使い捨て容器として蒸し調理に利用する場合などには、ヒューズ機能部32をクッキングタイマー的に応用することもできる。
また、誘導加熱発熱体3にヒートシール層非積層部31aを設け、このヒートシール層非積層部31aにヒューズ機能部32を形成することで、ヒューズ機能部32が破断する際の熱によって、ヒートシール層31が損傷してしまうこともない。
【0039】
このようにすることで、ヒューズ機能部32は、導電層30を折り曲げて立ち上げたりすることなく平面状に形成されるため、調理する際や、
図10に示すように容器を重ねて保管、搬送する際に、ヒューズ機能部32の損傷が防止される。
【0040】
また、本実施形態では、スリット35a,35b,35cの両端を、ヒートシール層非積層部31aを跨ぎ、ヒートシール層31上で内周側の周方向切断線33a,33d,33eに接するように形成することで、導電層30が切り取られて脱落することがない。これに対し、スリット35a,35b,35cの両端を、ヒートシール層非積層部31aを跨がずに、ヒートシール層非積層部31a内で内周側の周方向切断線33a,33d,33eに接するように形成すると、かかるスリット35a,35b,35cによって導電層30が切り取られて脱落してしまう。誘導加熱発熱体3を製造する際に、導電層30が切り取られて脱落した脱落片は、切断屑として処理しなければならず、その処理に手間を要するが、本実施形態によれば、このような手間を要することなく誘導加熱発熱体3を製造することができる。
ただし、製造時に切断屑の処理が特に問題にならなければ、スリット35a,35b,35cは、前述したように、その両端を、ヒートシール層非積層部31aを跨がずに、ヒートシール層非積層部31a内で内周側の周方向切断線33a,33d,33eに接するように形成しても良く、他方の外周側の周方向切断線33c,33e,33bとの間にヒューズ機能部32が形成されていれば、上記態様に限定されない。
【0041】
このような誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるにあたり、誘導加熱発熱体3は、容器本体2の内底面21から離間させて取り付けるのが好ましい。
誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21から離間させて取り付けることで、容器本体2に収容された水などの液状の被加熱物が、誘導加熱発熱体3と容器本体2の内底面21との間にも行き渡るようになる。これによって、被加熱物に対する加熱効率を高めるとともに、誘導加熱発熱体3からの熱によって容器本体2が損傷するのを有効に回避することができる。さらに、容器本体2の損傷を防止するため、誘導加熱発熱体3の裏面側に被加熱物が停滞せずに対流を促すように、導加熱発熱体3を貫通する抜き孔やスリット38などを形成することができる。
【0042】
本実施形態にあっては、
図4に示すように、容器本体2の内底面21の中央付近に突出して設けた第一支持部22aと、その外周側に突出して設けた第二支持部22bと、さらにその外周側に突出して設けた第三支持部22cに、誘導加熱発熱体3をヒートシールする。これによって、誘導加熱発熱体3を、容器本体2の内底面21から離間させて取り付けている。これらの支持部22a,22b,22cと誘導加熱発熱体3とのヒートシール部を
図3に斜線で示す。
【0043】
また、誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21から離間させて取り付ける際に、支持部22a,22b,22cの高さを、第一支持部22a、第二支持部22b、第三支持部22cの順に、外周側に向かって順に低くし、容器本体2に取り付けられた誘導加熱発熱体3の内底面21に対する高さが、中央側が高く、周縁に向かって低くなるように傾斜した状態とするのが好ましい。このような形態とすることにより、被加熱物が水等の場合、容器内の水が所定量よりも少なくなると、被加熱物が誘導加熱発熱体3の中央からその周囲に流動し、誘導加熱発熱体3の周縁部領域OFの容器本体2との未ヒートシール部分から、容器本体2の内底面21と誘導加熱発熱体3のヒートシール層31の間隙に滞留する。このように、被加熱物を滞留させることにより、被加熱物の減少によって生じる誘導加熱発熱体3の過加熱による容器1の損傷を、被加熱物を介して防止することができる。
【0044】
さらに、本実施形態にあっては、例えば、
図4に示すように、容器本体2の開口部周縁に段部23を設けて、蒸して食する食材が載置されるトレイ4を支持又は嵌合できるようにすることができる。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、前述した実施形態では、主加熱領域HFの切断線33a,33b、切断線33c,33d、及び切断線33d,33eによって区画された加熱領域HF1,HF2,HF3のそれぞれにヒューズ機能部32が形成されるようにしているが、これに限定されない。
主加熱領域HFを複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画した場合には、区画された加熱領域HF1,HF2,HF3の少なくとも一つに、前述したようなスリットを形成して、対向する周方向切断線との間に、平面状のヒューズ機能部32を形成すればよい。
【0047】
また、誘導加熱発熱体3の大きさや形状などに応じて、主加熱領域HFは、一つの加熱領域として区画してもよい。換言すれば、前述した実施形態において、主加熱領域HFを複数の加熱領域HF1,HF2,HF3に区画する周方向切断線33c,33d,33eを省略してもよい。このような場合には、主加熱領域HFを区画する内周側の周方向切断線33a又は外周側の周方向切断線33bの少なくとも一方に、その両端が接するようにスリットを形成して、内周側の周方向切断線33aと外周側の周方向切断線33bとの間に、平面状のヒューズ機能部32を形成すれば良い。
【0048】
さらに、前述した実施形態では、誘導加熱発熱体3を円形に形成し、誘導加熱発熱体3の中心を通る径方向に沿ってヒートシール層非積層部31aを設けているが、ヒートシール層非積層部31aは、主加熱領域HFと交差して帯状に延在して設けられていれば、これに限定されない。
【0049】
また、前述した実施形態では、中央部領域CFは、放射状切断線34aによって周方向に八つの領域に区画されるとともに、周方向切断線33fによって径方向に二つの領域に区画して、中央部領域CFを十六分割しているが、これに限定されない。
中央部領域CFの発熱を抑制できれば、誘導加熱発熱体3の大きさや形状などに応じて、中央部領域CFを周方向に複数の領域に区画する放射状切断線34aの数を増減したり、中央部領域CFを径方向に区画する周方向切断線33fを省略、又は増減したりしてもよい。
【課題】収容された被加熱物を電磁調理器などにより加熱する誘導加熱容器として使用され、調理する際や、容器を重ねて保管、搬送する際に、ヒューズ機能部が損傷することなく、空焚きなどの発熱体の昇温時の熱による容器本体の損傷を有効に回避して、容器の安全性を高める。
【解決手段】加熱領域HF1,HF2,HF3の少なくとも一つに、ヒートシール層非積層部31aにおける導電層30を切断し、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側又は外周側の少なくとも一方の周方向切断線33a,33d,33e(33c,33e,33b)に両端が接するスリット35a,35b,35cを形成して、加熱領域HF1,HF2,HF3を区画する内周側の周方向切断線33a,33d,33eと外周側の周方向切断線33c,33e,33bとの間に、平面状のヒューズ機能部32を形成する。