(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1輻射面と前記第2輻射面は、前記被焼成物の搬送方向に隣り合って配され、前記搬送方向における前記第1輻射面と前記第2輻射面との間に位置し、前記搬送方向に垂直な方向において前記第1輻射面および前記第2輻射面よりも前記被焼成物の近くまで延び、前記第1輻射面と前記第2輻射面の少なくとも一方に対して垂直、または、傾斜する面を有する遮蔽部をさらに備える請求項1に記載の連続加熱炉。
前記第1輻射面と前記第2輻射面は、前記被焼成物の搬送方向に隣り合って配され、隣り合う前記第1輻射面と前記第2輻射面は、前記搬送方向の両端のうち、互いに近い一端側の方が、他端側よりも前記搬送部に近くなるように、前記搬送方向に対して傾斜している請求項1に記載の連続加熱炉。
前記第1輻射面と前記第2輻射面は、前記被焼成物の搬送方向に隣り合って配され、隣り合う前記第1輻射面と前記第2輻射面は、前記搬送方向の両端のうち、互いに近い一端側の方が、他端側よりも前記搬送部に近くなるように、前記搬送方向に対して傾斜している請求項2に記載の連続加熱炉。
前記被焼成物の表面温度が、前記被焼成物の中心温度以上で維持されるように、前記被焼成物の表面から前記第2輻射面への輻射熱による伝熱量を調整する調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の連続加熱炉。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
本実施形態の連続加熱炉は、炉内に複数の燃焼加熱システムが設けられている。まず、炉内に配された燃焼加熱システムについて説明し、その後、全体的な連続加熱炉の構成について説明する。
【0015】
(燃焼加熱システム100(加熱部))
図1は、燃焼加熱システム100の外観例を示した斜視図であり、
図2は、
図1のII‐II線に沿った断面を示した斜視図である。本実施形態における燃焼加熱システム100は、都市ガス等と燃焼用酸化剤ガスとしての空気とが本体容器に供給される前に混合される予混合タイプとするが、かかる場合に限定されず、所謂、拡散燃焼を行う拡散タイプであってもよい。
【0016】
図1および
図2に示すように、燃焼加熱システム100は、複数(ここでは2つ)の燃焼加熱器110を連設してなり、都市ガス等と空気との混合ガス(以下、「燃料ガス」という)の供給を受けて、それぞれの燃焼加熱器110で燃料ガスが燃焼することで発熱する。そして、燃焼加熱システム100では、その燃焼によって生じた排気ガスが回収される。
【0017】
また、両燃焼加熱器110間の接続部位には、連設された燃焼加熱器110内の密閉空間を連通する火移り部102が形成されている。ただし、気体中で用いる場合、密閉空間を必ずしも完全に密閉する必要はない。
【0018】
本実施形態の燃焼加熱システム100では、例えば、イグナイタ(図示せず)等の点火装置による1回の点火によって、火移り部102を通じて連設する燃焼加熱器110に火炎が広がって点火される。上記したように、燃焼加熱システム100には2つの燃焼加熱器110が設けられるが、両燃焼加熱器110は同一の構成であるため、以下では、一方の燃焼加熱器110についてのみ説明する。
【0019】
図3Aおよび
図3Bは、燃焼加熱器110を説明するための説明図である。
図3Aは、
図1のIII(a)‐III(a)線に沿った断面図であり、
図3Bは、
図3Aの破線で囲った部分の拡大図である。
図3B中、白抜き矢印は燃料ガスの流れを、ハッチングした矢印は排気ガスの流れを、黒色で塗りつぶした矢印は熱の移動を示す。
【0020】
図3Aおよび
図3Bに示すように、燃焼加熱器110は、加熱板120と、配置板122と、仕切板124と、断熱部126と、燃焼室128と、密閉部130と、封止部132と、断熱材134と、第1配管部136と、第2配管部138と、導入部140と、導出部142とを含んで構成される。
【0021】
加熱板120は、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼(SUS)や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される薄板状の部材である。加熱板120は、第1輻射面120aを有する。第1輻射面120aは、略矩形に形成され(
図1参照)、燃焼によって生じる熱によって加熱され、被焼成物に輻射熱を伝熱する。
【0022】
加熱板120の外壁部120bは、第1輻射面120aの外周で屈曲して第1輻射面120aに垂直かつ第1輻射面120aから離隔する方向(
図3A中、下方向)に起立し(延び)、燃焼加熱システム100の側面を形成する。
【0023】
本実施形態においては、2つの燃焼加熱器110の加熱板120を一体に成形している(
図2参照)。そして、加熱板120は、外壁部120bの内面を側面とし、第1輻射面120aの裏面120cを底面とする穴を形成し、この穴の内部に、2つの燃焼加熱器110それぞれの構成要素が配される。
【0024】
配置板122は、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が低い素材等で形成される平板状の部材である。配置板122は、加熱板120の外壁部120bの内側において、加熱板120の第1輻射面120aの裏面120cと略平行に対向して配置される。
【0025】
仕切板124は、加熱板120と同様、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される薄板状の部材である。仕切板124は、加熱板120の外壁部120bの内側において、加熱板120の裏面120cと、配置板122との間に、配置板122と略平行に対向して配置される。
【0026】
配置板122と仕切板124は、互いに対向する面の外周(外形)の輪郭が大凡等しく、それぞれ、トラック形状(長方形の2つの短辺それぞれを線対称な円弧(半円)に変えた形状)をなしている。
【0027】
加熱板120、配置板122、および仕切板124は、それらの間に空隙が形成されれば、互いに傾いて対向するよう配置されてもよい。また、加熱板120、配置板122、および仕切板124の厚みに制限はなく、平板に限らず凹凸に形成されてもよい。
【0028】
断熱部126は、断熱性が高い(断熱性を有する)素材、例えば、セラミックなどで形成される薄板状の部材である。断熱部126は、外周部126aと、底面部126bとを有する。
【0029】
外周部126aは、仕切板124の外周側に位置し、仕切板124の外周に沿って、加熱板120と配置板122の対向方向(
図3A中、上下方向)に延びている。底面部126bは、外周部126aの配置板122側(
図3A中、下側)の部位から屈曲して連続する部位であって、配置板122の中心に向かって延在し、加熱板120と対向するよう配置される。
【0030】
なお、断熱部126は、底面部126bを底面、外周部126aの内面を側面とする穴126cを形成しており、この穴126cの輪郭は、配置板122および仕切板124の外形と相似となるトラック形状をなしている。そして、外周部126aは、配置板122の外周面122aおよび仕切板124の外周面124aと、穴126cを介して一定間隔を維持して離れている。
【0031】
燃焼室128は、
図3Bに示すように、外周部126aと、配置板122および仕切板124それぞれの外周面122a、124aとの間に位置し、外周面122a、124aに面する。すなわち、燃焼室128は、外周面122a、124a、加熱板120、および断熱部126で囲まれ、外周部126aに沿った、外周部126aの内側に位置する空間(すなわち穴126cと重なる空間)となっている。
【0032】
密閉部130は、断熱部126よりも断熱性が低い素材、例えば、ステンレス鋼などで形成される薄板状の部材で構成することができる。本実施形態においては、2つの燃焼加熱器110の密閉部130を一体に成形している(
図2参照)。
【0033】
また、密閉部130は、
図3Bに示すように、第1輻射面120aの裏面120cとの接触部分に、裏面120cの面方向(以下、単に「面方向」と称す)に延びる屈曲部130aを有し、屈曲部130aが、加熱板120の裏面120cに溶接やロウ付けなどで接合されている。そのため、密閉部130によって、燃焼室128の断熱部126側へのガス漏れが防止または抑制される。
【0034】
一方、断熱部126は、接触するいずれの部材とも接合されておらず、密閉部130によって、断熱部126の外周部126aおよび底面部126bを、燃焼室128の反対側から覆われて支持されている。その結果、断熱部126は、接触するいずれの部材とも接合されていないものの、配置板122や密閉部130によって、密閉部130との相対的な位置ずれがないように、その移動が規制されている。
【0035】
封止部132は、加熱板120の第1輻射面120aと反対側に配される平板状の部材である。本実施形態においては、加熱板120と同様、2つの燃焼加熱器110の封止部132を一体に形成している(
図2参照)。そして、封止部132は、密閉部130と離れた位置で、加熱板120の外壁部120bの延びる方向(
図3A中、下方向)の端部に固定され、密閉部130との間の空間に断熱性を有するウールなどの断熱材134を封止する。
【0036】
このように、燃焼加熱システム100の本体容器は、加熱板120の穴126cを封止部132で閉塞してなり、外周面(加熱板120の外壁部120bの外表面)の面積より上下壁面(加熱板120の第1輻射面120aおよび封止部132の外表面)の面積の方が大きい。つまり、上下壁面は、本体容器の外表面の大部分を占める。
【0037】
第1配管部136は、燃料ガスが流通する配管であり、第2配管部138は、排気ガスが流通する配管である。第2配管部138は、第1配管部136内部に配される。すなわち、第1配管部136と第2配管部138は、燃焼加熱器110との接続部分において二重管を形成する。
【0038】
配置板122、断熱部126、密閉部130、封止部132には、厚さ方向に貫通する貫通孔122d、126d、130d、132dが設けられている。貫通孔122d、126d、130d、132dは、配置板122、断熱部126、密閉部130、封止部132それぞれの面方向の中心部において、互いに重なり合う位置関係となっている。貫通孔122d、126d、130d、132dには、第1配管部136が挿通される。そして、第1配管部136の端部は、配置板122の仕切板124側の面と同一面をなす位置で置板122の貫通孔122dに固定され、第1配管部136のうち、密閉部130の貫通孔130dに挿通された部分は、貫通孔130dに溶接やロウ付けなどで接合される。
【0039】
また、仕切板124には、配置板122の貫通孔122dと重なり合う位置に、貫通孔122dよりも径が小さく、厚さ方向に貫通する排気孔124bが設けられている。排気孔124bには、第2配管部138が挿通され、第2配管部138の端部は、仕切板124の第1輻射面120a側の面と同一面をなす位置で排気孔124bに固定されている。
【0040】
第2配管部138の端部は、第1配管部136の端部よりも第1輻射面120a側に突出し、かつ、加熱板120から離れており、仕切板124は、面方向の中心側において第2配管部138の端部に固定されることで、加熱板120および配置板122と一定間隔を維持しつつ離れている。
【0041】
導入部140は、配置板122と仕切板124との間の空隙によって形成され、第1配管部136に連通している。燃料ガスは、第1配管部136を通って配置板122の貫通孔122dから導入部140に流入する。すなわち、配置板122の貫通孔122dは、燃料ガスを導入部140に流入させる流入孔となっている。そして、導入部140は、配置板122の貫通孔122d(流入孔)から流入した燃料ガスを、燃焼室128に向けて放射状に導く。
【0042】
また、導入部140の出口側(燃焼室128側)の流路は、仕切板124の外周端部に配された突起部124cによって複数に仕切られている。
【0043】
図4は、突起部124cを説明するための図であり、燃焼室128の斜視図および燃焼室128を囲む部材の断面図を示す。なお、ここでは、理解を容易とするため、加熱板120を取り除いて示し、仕切板124の隠れている部分の輪郭線を破線で示す。
【0044】
図4に示すように、突起部124cは、仕切板124の周方向に一定間隔で設けられており、隣接する突起部124c間に流路124dが形成されている。これにより、導入部140と燃焼室128とは、その連通部分の断面積が狭められた流路124dによって連通する。このとき、隣接する突起部124cの間隔、すなわち、流路124dの幅が流路断面の代表寸法となる。ここで、燃料ガスの消炎距離dは、管壁モデルの径の大きさで表され、下記の数式1により求められる。
d=2λ・Nu
1/2/(Cp・ρu・Su) …数式1
【0045】
数式1において、λは熱伝導率、Nuはヌセルト数、Cpは定圧比熱、ρuは燃料ガスの密度、Suは燃焼速度である。流路124dの幅が消炎距離d以下となるように設計されているため、燃焼室128において安定した燃焼が可能となっている。
【0046】
流路124dから燃焼室128に流入した燃料ガスは、
図3Bに示すように、燃焼室128において外周部126aに衝突して一時的に滞留する。上記の点火装置は、2つの燃焼加熱器110のうちの一方の燃焼加熱器110における燃焼室128に設けられており、点火装置が導入部140から導入される燃料ガスに点火すると、火移り部102を介して他方の燃焼加熱器110における燃焼室128内の燃料ガスにも点火する。
【0047】
こうして、燃焼室128では、流入孔(配置板122の貫通孔122d)から流入した燃料ガスが燃焼する。そして、双方の燃焼室128で燃焼が継続し、燃焼によって生成された排気ガスは、導出部142に導かれる。
【0048】
導出部142は、加熱板120と仕切板124とを側壁とし、加熱板120と仕切板124との間の空隙によって形成された流路である。導出部142は、燃焼室128に連続するとともに第2配管部138に連通しており、燃焼室128における燃焼によって生じた排気ガスを、燃焼室128から面方向の中心側に集約し、仕切板124の排気孔124bから第2配管部138を介して燃焼加熱器110外に導く。
【0049】
加熱板120は、第1輻射面120aの裏面120cから、燃焼室128における燃焼熱と、燃焼室128および導出部142を流通する排気ガスの熱によって加熱される。そして、第1輻射面120aからの輻射熱によって被焼成物が加熱される。
【0050】
また、仕切板124は比較的熱伝導し易い素材で形成されているため、導出部142を流通する排気ガスは、仕切板124を介して導入部140を流通する燃料ガスに伝熱する(
図3B参照)。特に、導出部142を流れる排気ガスと導入部140を流れる燃料ガスとが、仕切板124を挟んで対向流(カウンタフロー)となっているため、排気ガスの熱で燃料ガスを効率的に予熱することが可能となり、高い熱効率を得ることができる。
【0051】
同様に、第2配管部138を流通する排気ガスは、第2配管部138を通じて第1配管部136を流れ、対向流となっている燃料ガスに伝熱して予熱する。このように燃料ガスを予熱してから燃焼する、所謂、超過エンタルピ燃焼によって、燃料ガスの燃焼を安定化し、不完全燃焼によって生じるCO(一酸化炭素)の濃度を極低濃度に抑えることができる。
【0052】
続いて、上述した燃焼加熱システム100を複数配置した連続加熱炉200について説明する。
【0053】
図5は、連続加熱炉200を説明するための図であり、連続加熱炉200における被焼成物Wの搬送方向に平行かつ鉛直方向の断面の概略図を示す。
図5に示すように、連続加熱炉200は、搬送部210と、炉本体212と、複数の燃焼加熱システム100(加熱部)と、複数の冷却予熱部214とを含んで構成される。
【0054】
搬送部210は、例えば、ベルト等の搬送帯210a、搬送帯210aを張架支持するローラ210b、ギヤやモータを有するモータ機構210cなどを含んで構成され、モータ機構210cの動力によって搬送帯210aが回転し、
図5中、白抜き矢印の方向に被焼成物Wを搬送する。この被焼成物Wは、
図5では搬送部210の上に載置されているが、例えば、搬送部210に設けられた吊持機構(図示せず)によって吊持されてもよい。また、搬送帯210aは、例えば、鉛直下方に配された燃焼加熱システム100または冷却予熱部214と被焼成物Wの間の輻射伝熱を阻害しないようにメッシュ構造等にしてもよい。
【0055】
また、ローラ210bは、炉本体212内において搬送帯210aの一部を鉛直下側から支持する。なお、被焼成物Wの反りを抑えるため、被焼成物Wの上下を挟む一対の網によって搬送帯が構成される場合には、一対の網の外側にローラ210bを設けるとよい。
【0056】
炉本体212は、搬送帯210aの一部または全部を囲み、内部に焼成空間を形成する。また、燃焼加熱システム100は、炉本体212内のうち、搬送部210の鉛直上方と鉛直下方に、第1輻射面120aを炉本体212内の搬送帯210aに対向させつつ、第1輻射面120aを、被焼成物Wの搬送方向(以下、「搬送方向」と略称する)に平行にして、複数配される。
すなわち、第1輻射面120aは、被焼成物Wは、搬送部210で搬送されている被焼成物Wと遮蔽物を介さずに対向したとき被焼成物Wを加熱する。
【0057】
冷却予熱部214は、炉本体212内にて、1つの燃焼加熱システム100(燃焼加熱器110)に対し、搬送方向の下流(
図5中、右側)に2つずつ並設される。
【0058】
また、冷却予熱部214は、被焼成物Wを冷却する第2輻射面214aを有する。第2輻射面214aは、搬送部210で搬送されている被焼成物Wと遮蔽物を介さずに対向したとき被焼成物Wから輻射熱を受ける。
このように、燃焼加熱システム100および冷却予熱部214は、搬送部210で搬送されている被焼成物Wと遮蔽物を介さずに対向したとき(被焼成物Wが燃焼加熱システム100または冷却予熱部214の直上または直下にあるとき)、被焼成物Wとの間で熱交換を行う。よって、燃焼加熱システム100および冷却予熱部214と被焼成物Wとの距離が、上記熱交換時に最短となり、燃焼加熱システム100および冷却予熱部214と被焼成物Wとの熱交換が、直接的かつ効果的に行われる。
【0059】
燃焼加熱システム100と同様、冷却予熱部214は、第2輻射面214aを炉本体212内の搬送帯210aに対向させつつ、第2輻射面214aを搬送方向に平行にして配される。すなわち、燃焼加熱システム100の第1輻射面120aと、冷却予熱部214の第2輻射面214aは、被焼成物Wの搬送方向に隣り合って配され、第1輻射面120aと第2輻射面214aが平行となっている。
【0060】
また、連続加熱炉200では、上述したように、少なくとも燃焼加熱システム100と冷却予熱部214との組み合わせが、炉本体212内(焼成空間内)の雰囲気中にある。
【0061】
図6Aおよび
図6Bは、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214の配置を説明するための図であり、
図6Aには燃焼加熱システム100および冷却予熱部214の斜視図を示し、
図6Bには、
図6AのVI(b)‐VI(b)線における冷却予熱部214の断面を示す。なお、
図6Aでは、冷却予熱部214と第1配管部136との接続関係の理解を容易とするため、第2配管部138の一部を省略して示し、燃料ガスの流れを実線の矢印で示す。
【0062】
図6Aに示すように、燃焼加熱システム100は、炉本体212の幅方向(搬送方向と直交し、かつ水平な方向であって、
図6A中、白抜きの両矢印で示す方向。以下、「幅方向」と略称する)が、燃焼加熱器110が連設された方向となるように配される。また、炉本体212内においては、幅方向に2つの燃焼加熱システム100が連設される。したがって、幅方向には、燃焼加熱器110が4つ並置される。
【0063】
また、冷却予熱部214の幅方向の長さは、2つの燃焼加熱システム100の幅方向の長さの合計と大凡等しい。そして、
図6Bに示すように、冷却予熱部214の内部には、ガス流路214bが形成されている。ガス流路214bを燃料ガスが流通することで、第2輻射面214aが冷却されるとともに、第2輻射面214aからの熱により燃料ガスが予熱される。
ここで、
図6Bに示すように、冷却予熱部214は、搬送方向及び幅方向に延びた扁平な形状をなしている。その結果、第2輻射面214aを介したガス流路214bの予熱面積を相対的に広くとることが可能となり、ガス流路214b内における燃料ガスの予熱を効果的に行うことができる。
【0064】
供給管216aは、冷却予熱部214に接続され、外部から供給される燃料ガスをガス流路214bに供給する。供給管216aの、冷却予熱部214側の端部が、第2輻射面214aのうち、幅方向の一端214c側、または、他端214d側のいずれかに配される。その結果、隣り合う冷却予熱部214のうち、搬送方向の下流に並設された冷却予熱部214と上流に並設された冷却予熱部214とでは、連通管216bの冷却予熱部214側の端部の位置が、幅方向において逆となっている。
【0065】
そして、供給管216aの向きは、第2輻射面214aに対して、平行ではなく、垂直となっている。すなわち、供給管216aは、第2輻射面214aに対して垂直に、冷却予熱部214と接続されている。そのため、供給管216aから冷却予熱部214の内部に流入した燃料ガスは、第2輻射面214aの裏側に衝突し、燃料ガスと第2輻射面214aの熱交換が促進される。
【0066】
連通管216bは、第1配管部136と冷却予熱部214(ガス流路214b)とを連通させる。連通管216bの、冷却予熱部214側の端部の位置は、幅方向において、供給管216aの接続位置と逆となっている。
【0067】
このように、冷却予熱部214(ガス流路214b)は、連通管216bを介して、搬送方向に並設された燃焼加熱システム100の第1配管部136と連通している。詳細には、冷却予熱部214は、燃焼加熱システム100を構成する燃焼加熱器110の配置板122に設けられた貫通孔122d(
図3A参照)と連通している。
【0068】
また、幅方向に連設された2つの燃焼加熱システム100のうちの一方の第1配管部136が、燃焼加熱システム100の搬送方向の下流に並設された冷却予熱部214と連通するとともに、他方の第1配管部136が、上流に並設された冷却予熱部214と連通している。
【0069】
すなわち、炉本体212内には、燃焼加熱システム100と同数の冷却予熱部214が設けられ、冷却予熱部214は、互いに異なる燃焼加熱システム100に接続された第1配管部136と連通している。
【0070】
上述したように、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214を搬送方向に交互に配することで、搬送される被焼成物Wの焼成と冷却を交互に繰り返す。そのため、被焼成物Wの表面を加熱し過ぎることなく、被焼成物Wの内部まで十分に伝熱させることが可能となる。また、炉本体212内に燃焼加熱システム100と冷却予熱部214が配され、冷却予熱部214が冷却に伴う被焼成物Wの熱を燃料ガスに伝熱することから、炉本体212の外部で被焼成物Wを空冷する構成に比べて熱損失が抑制される。
また、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214とを搬送方向に隣接して配することで、燃焼加熱システム100および冷却予熱部214の配置がコンパクトになり、連続加熱炉200の搬送方向の全長を短縮することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、被焼成物Wを、第1輻射面120a(燃焼加熱システム100)からの輻射熱で加熱し、第2輻射面214a(冷却予熱部214)への輻射による放熱で冷却する。
【0072】
ここで、比較例として、例えば、被焼成物Wを、空気や排気ガスなどの対流によって加熱および冷却する連続加熱炉を想定する。対流伝熱では、被焼成物Wの表面と対流する流体(空気や排気ガスなど)が接触するため、すぐに被焼成物Wの表面温度と流体の温度差が小さくなる。すると、温度差に比例する熱流束(伝熱量)が極端に下がってしまい、被焼成物Wの内部に対する十分な伝熱がなされない。一方、輻射伝熱は、被焼成物Wと輻射面(第1輻射面120aおよび第2輻射面214a)が非接触であり、温度差が縮まり難いため、被焼成物Wと輻射面それぞれのケルビン温度の4乗の差分に比例する熱流束が、比較的安定して維持される。そのため、被焼成物Wの内部に対する十分な伝熱が可能となる。
【0073】
また、輻射伝熱の熱流束は、被焼成物Wの雰囲気の温度の影響をほとんど受けない。そのため、燃焼加熱システム100によって暖められた空気が冷却予熱部214側に影響したとしても、上述した比較例よりも、被焼成物Wの冷却性能が低下し難い。さらに、連続加熱炉200は、被焼成物Wの雰囲気によらない伝熱形態であるため、被焼成物Wの周囲が真空であっても、被焼成物Wの加熱や冷却が可能となっている。
【0074】
図7は、連続加熱炉200の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図7に示すように、連続加熱炉200は、上記の搬送部210、燃焼加熱システム100、冷却予熱部214に加え、調整部218を含んで構成される。
【0075】
調整部218は、例えば、輻射率が第2輻射面214aよりも低いカバー部材などで構成され、第2輻射面214aの一部を被覆することで、被焼成物Wの表面から第2輻射面214aへの輻射熱による伝熱量を調整する。
【0076】
図8Aおよび
図8Bは、調整部218の機能を説明するための図であり、いずれも炉本体212内を搬送される被焼成物Wへの熱流束の変化を示している。
図8Aは、調整部218による調整処理がなされた場合を示し、
図8Bは、調整部218による調整処理がなされなかった場合を示す。なお、
図8Aおよび
図8Bにおいては、横軸に時間を示し、縦軸に熱流束と温度を示す。
図8Aおよび
図8B中、凡例aは被焼成物Wへの熱流束を示し、凡例bは被焼成物Wの表面温度を示し、凡例cは被焼成物Wの中心温度を示す。
【0077】
上述したように、被焼成物Wに対しては、燃焼加熱システム100による加熱と冷却予熱部214による冷却が交互に繰り返される。こうして、被焼成物Wの表面温度の上昇を抑制しつつ、被焼成物Wの内部の温度(中心温度)を上昇させている。
図8Aおよび
図8Bに示すように、最終的には、被焼成物Wの表面温度と中心温度が大凡一定となる。
【0078】
また、
図8A、
図8Bのいずれの場合も、被焼成物Wの加熱時、被焼成物Wの表面温度は、被焼成物Wの中心温度よりも高く、被焼成物Wの表面から内部に向かう熱流束は正の値をとる。
【0079】
一方、被焼成物Wの冷却時、冷却予熱部214による冷却性能が強すぎると、
図8Bに示すように、被焼成物Wの表面温度は、被焼成物Wの中心温度よりも低く、被焼成物Wの表面から内部に向かう熱流束は負の値をとる。これは、被焼成物Wから放熱されるほど冷却してしまったことを示す。この場合、被焼成物Wの焼成に必要な熱量を加熱するには、放熱された分、燃焼加熱システム100による加熱量(加熱時間や出力)を多くしなければならず、熱損失が生じる。
【0080】
本実施形態では、冷却予熱部214による冷却性能が調整部218によって適切に抑制されており、
図8Aに示すように、被焼成物Wの冷却時、被焼成物Wの表面温度は、被焼成物Wの中心温度よりも高いまま維持され、被焼成物Wの表面から内部に向かう熱流束は正の値をとる。すなわち、被焼成物Wからの放熱は生じていない。
【0081】
このように、調整部218は、被焼成物Wの表面温度が、被焼成物Wの中心温度以上で維持されるように、被焼成物Wの表面から第2輻射面214aへの輻射熱による伝熱量を調整する。そのため、被焼成物Wからの放熱分を補填するための加熱が不要となり、熱損失を抑制することが可能となる。
【0082】
図9Aおよび
図9Bは、本発明に係る連続加熱炉の変形例を説明するための図であって、
図9Aには第1変形例を示し、
図9Bには第2変形例を示す。なお、
図9Aおよび
図9Bでは、連続加熱炉300、400の、
図5に対応する断面の概略を、搬送方向の上流側の端部を拡大して示している。
【0083】
図9Aに示す連続加熱炉300は、上述した実施形態の連続加熱炉200と同様の構成要素に加え、遮蔽部302を備える。遮蔽部302は、搬送方向における焼加熱システム100の第1輻射面120aと冷却予熱部214の第2輻射面214aとの間に位置する。さらに、遮蔽部302は、搬送方向の最上流に配された燃焼加熱システム100の第1輻射面120aの上流側にも配される。
【0084】
また、遮蔽部302は、第1輻射面120aと第2輻射面214aの双方に対して垂直な面302aを有し、搬送方向に垂直な方向において、第1輻射面120aおよび第2輻射面214aよりも被焼成物W(炉本体212内の搬送帯210a)の近くまで延びている。
【0085】
そして、遮蔽部302は、被焼成物Wの加熱時、すなわち、第1輻射面120aに対向する位置に被焼成物Wが搬送されたとき、被焼成物Wと第2輻射面214aとの間を遮蔽する。そのため、被焼成物Wから第2輻射面214aへの輻射による熱損失が抑制され、被焼成物Wを効率的に加熱することが可能となる。また、遮蔽部302は、被焼成物Wの冷却時、すなわち、第2輻射面214aに対向する位置に被焼成物Wが搬送されたとき、被焼成物Wと第1輻射面120aとの間を遮蔽する。そのため、第2輻射面214aから被焼成物Wへの輻射による伝熱が抑制され、被焼成物Wの表面温度の上昇を効果的に抑えることが可能となる。かかる構成により、被焼成物Wに対する加熱と冷却の抑揚を大きくし、被焼成物Wの内部までの十分な加熱が可能となる。
【0086】
図9Bに示す連続加熱炉400は、上述した連続加熱炉200と同様の構成要素を備える。ただし、連続加熱炉200とは異なり、燃焼加熱システム100は幅方向に1つのみ配され、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214が搬送方向に2つずつ交互に配されている。
【0087】
そして、隣り合う第1輻射面120aと第2輻射面214aは、搬送方向の両端のうち、互いに近い一端120d、214e側の方が、他端120e、214f側よりも、搬送部210の炉本体212内における搬送帯210aに近くなるように、搬送方向に対して傾斜している。
【0088】
すなわち、隣り合う2つの燃焼加熱システム100が、第1輻射面120a同士が互いに平行な状態よりも、第1輻射面120aを対向させる向きに傾斜している。同様に、隣り合う2つの冷却予熱部214が、第2輻射面214a同士が互いに平行な状態よりも、第2輻射面214aを対向させる向きに傾斜している。
【0089】
その結果、被焼成物Wの加熱時(被焼成物Wが第1輻射面120aの下方にある時)、第2輻射面214aが被焼成物Wと異なる方向に向いているため、被焼成物Wから第2輻射面214aへの輻射による熱損失が抑制され、被焼成物Wを効率的に加熱することが可能となる。また、被焼成物Wの冷却時(被焼成物Wが第2輻射面214aの下方にある時)、第1輻射面120aが被焼成物Wと異なる方向に向いているため、第1輻射面120aから被焼成物Wへの輻射による伝熱が抑制され、被焼成物Wの表面温度の上昇を効果的に抑えることが可能となる。かかる構成により、被焼成物Wに対する加熱と冷却の抑揚を大きくし、被焼成物Wの内部までの十分な加熱が可能となる。
【0090】
また、連続加熱炉の構造上、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214からなるユニットを、搬送方向に間隔を空けて設ける場合がある。このような場合、ユニットから連続加熱炉内におけるユニットの未設置部位への放熱を、極力防止することが望ましい。
図10に示す連続加熱炉500では、燃焼加熱システム100の搬送方向上流側および下流側にそれぞれ冷却予熱部214を隣接させ、被焼成物Wに対する加熱と冷却とを行うユニットUを形成している。また、個々のユニットの上流側および下流側には、それぞれ遮蔽部502が設けられ、これらの遮蔽部502により、ユニットUの上流側および下流側への放熱、特に輻射による放熱を防止している。ここで、個々の遮蔽部502の具体的な構成は、
図9Aに示す遮蔽部302と同様である。
この連続加熱炉500では、ユニットUを遮蔽部502で囲い、ユニットUからの放熱、特に輻射による放熱を防止することにより、ユニットUにおける加熱効率の向上と、冷却予熱部214による過冷却の防止とを図っている。
すなわち、燃焼加熱システム100と冷却予熱部214からなるユニットUを搬送方向に間隔を空けて設けた場合でも、ユニットUから、連続加熱炉500内におけるユニットUの未設置部位(
図10における符号Sで示す部位)への放熱、特に輻射による放熱が、遮蔽部502により防止される。その結果、被焼成物Wに対する効果的な加熱および徐冷、ならびに冷却予熱部214における燃焼ガスの効果的な予熱が可能となる。
【0091】
なお、本実施形態の連続加熱炉による被焼成物は特に限定されないが、例えば食品が挙げられる。すなわち、本実施形態の連続加熱炉は、菓子等の食品の製造工程における焼成に用いてもよい。例えば、本実施形態の連続加熱炉は、焼き菓子の製造に使用され、より具体的には、例えば、煎餅や、かき餅を始めとする、穀物の粉(米等)を原料とする菓子(薄い形状をしている場合が多い。)の製造に好適に使用可能である。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
例えば、燃焼加熱器110は、上述した構成に限らず、ラジアントチューブバーナ、ラインバーナ、赤外線セラミックバーナなど、空気、都市ガス、および、空気と都市ガスの混合ガス(予混合ガス)が供給される他の燃焼加熱器(加熱部)を用いてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態および変形例では、冷却予熱部214のガス流路214bには、燃料ガスとして予混合ガスが流れる場合について説明したが、空気のみ、または、都市ガスのみを流すこととし、ガス流路214bから燃焼加熱システム100までの流路で、空気と都市ガスが混合されてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態および変形例では、加熱部として、燃焼加熱器110が2つ連設された燃焼加熱システム100を例に挙げたが、加熱部としては、燃焼加熱器110を単体で用いてもよいし、燃焼加熱器110が3つ連設された燃焼加熱システムを適用してもよい。
【0096】
また、上述した実施形態および変形例では、調整部218が第2輻射面214aを被覆するカバー部材である場合について説明したが、調整部218は、被焼成物Wの表面温度が、被焼成物Wの中心温度以上で維持されるように、被焼成物Wの表面から第2輻射面214aへの輻射熱による伝熱量を調整できればカバー部材に限定されない。
【0097】
また、上述した第1変形例では、第1輻射面120aと第2輻射面214aが平行であって、遮蔽部302が第1輻射面120aと第2輻射面214aの双方に対して垂直な面302aを有する場合について説明した。しかし、第1輻射面120aと第2輻射面214aは平行でなくともよく、遮蔽部302は、第1輻射面120aと第2輻射面214aの少なくとも一方に対して平行ではない(垂直、または、傾斜した)面を有していればよい。このような変形は、第3変形例における遮蔽部502にも適用可能である。
【0098】
また、第1および第3変形例における遮蔽部302、502の効果をさらに高めるためには、遮蔽部302、502の(特に燃焼加熱システム100に面する側における)断熱性を高めるか、もしくは輻射率を下げることが望ましい。
遮蔽部302、502の断熱性を上げるためには、断熱材を挟み込んだ鋼板パネルや真空パネル、またはセラミック等の断熱ボードの使用が考えられる。また、遮蔽部302、502の輻射率を下げるためには、光沢性のSUS板を使用したり、より高温で使用する場合(SUSでは酸化する場合)には、低輻射のガラスや白金等の金属コーティングを施す方法が考えられる。
【0099】
また、上述した第2変形例では、隣り合う2つの燃焼加熱システム100が第1輻射面120aを対向させる向きに傾斜し、隣り合う2つの冷却予熱部214が、第2輻射面214aを対向させる向きに傾斜して配する場合について説明した。しかし、第1輻射面120aと第2輻射面214aを、搬送方向の中心側が窪むように屈曲した形状としてもよい。