特許第5954534号(P5954534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954534
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】サイクロン及び循環流動層ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/10 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   F23C10/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-161386(P2012-161386)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-20711(P2014-20711A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 玲
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−110850(JP,U)
【文献】 実公平02−007436(JP,Y2)
【文献】 特公昭46−012880(JP,B1)
【文献】 特開平06−101977(JP,A)
【文献】 特開2005−282996(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/098199(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/00 − 10/32
15/00
F02C 1/00 − 9/58
F16L 9/00 − 11/26
F16L 51/00 − 55/24
F23G 5/30
F23R 3/00 − 7/00
F27D 7/00 − 15/02
B04C 1/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスが導入される円筒部を有するサイクロン本体と、
このサイクロン本体の前記円筒部の中心に位置する円筒状の内筒を備えたサイクロンにおいて、
前記サイクロン本体の前記円筒部には、内向きの内筒受け部が設けられ、
前記内筒には、該内筒の周壁を内外に貫通して該周壁から内側の部分が溶接により取り付けられる外向きの張り出し体が円周方向に複数配置され、
前記サイクロン本体と前記内筒との間において前記サイクロン本体の前記内筒受け部で前記内筒の前記複数の張り出し体を受けることで、該内筒が前記サイクロン本体に支持されている
ことを特徴とするサイクロン。
【請求項2】
前記サイクロン本体の前記内筒受け部上に、前記内筒の前記複数の張り出し体をそれぞれ摺動可能に載置させてある
請求項1に記載のサイクロン。
【請求項3】
前記内筒の前記複数の張り出し体の各間に、前記内筒の周壁を貫通する開口が設けられている
請求項1又は2に記載のサイクロン。
【請求項4】
燃料をベッド材とともに流動化して燃焼させる火炉と、
この火炉内での燃焼により発生した燃焼ガス中に含まれる灰及びこの灰とともに流動してきた前記ベッド材を捕集して前記火炉に戻すサイクロンを備えた循環流動層ボイラにおいて、
前記サイクロンとして、請求項1〜3のいずれかに記載のサイクロンが採用されている
ことを特徴とする循環流動層ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、循環流動層ボイラにおいて、燃焼ガス中に含まれるきめの粗い灰とこの灰とともに流動するベッド材の一部を捕集するサイクロン及び循環流動層ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したサイクロンを備えた循環流動層ボイラとしては、例えば、特許文献1に開示された循環流動層ボイラがある。
この循環流動層ボイラは、石炭やゴミ固形化燃料等の燃料及び砂や石灰石等のベッド材を流動させながら燃焼させる火炉を備えており、サイクロンは、この火炉の火炉出口に接続して配置されて、火炉からの燃焼ガス中に含まれるきめの粗い灰及びベッド材の一部を捕集して火炉に戻すようになっている。
【0003】
サイクロンは、円筒部及びこの円筒部の下端に連続する円錐部を有するサイクロン本体と、このサイクロン本体の中心に配置された内筒とを具備している。サイクロン本体の円筒部には、円周接線方向に開口するガス導入口が設けられており、このガス導入口が火炉の火炉出口に接続されている。
【0004】
このサイクロンにおいて、サイクロン本体のガス導入口から導入した燃焼ガスは、円筒部の内周壁に沿って流れ、遠心力及び重力を受けることでらせん状に降下する。この際、きめの粗い重い灰及びベッド材は、円筒部及び円錐部の各内周壁に沿って落下し、一方、きめの細かい軽い灰は、サイクロン本体の中心から周囲に広がりつつ落下する。そして、サイクロン本体の中心に位置する内筒は、軽い灰の一部を含んだ燃焼ガスを取り込んでサイクロンの下流側の後部伝熱部に供給するようになっている。
【0005】
このサイクロンの内筒は、その上端に溶接により固定された外向きの環状フランジをサイクロン本体側に取り付けられたフランジ受けに乗せることで、サイクロン本体側に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-314623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1に開示された循環流動層ボイラのサイクロンにおいて、運転時には内筒を通過して後部伝熱部に向かう燃焼ガス温度は約900℃であり、一方、この内筒を支持するサイクロン本体側の温度は約20℃である。
【0008】
したがって、内筒をサイクロン本体に支持させるための外向きの環状フランジと内筒の上端との間の溶接部分に熱応力が生じる可能性があり、熱応力が生じ難く、また、熱応力が生じたとしてもボイラの運転に支障を来すことのない内筒の支持構造の構築が望まれており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、熱応力の有無にかかわりなく、長期にわたって安定したボイラの運転を行うことが可能であるサイクロン及び循環流動層ボイラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、燃焼ガスが導入される円筒部を有するサイクロン本体と、このサイクロン本体の前記円筒部の中心に位置する円筒状の内筒を備えたサイクロンにおいて、前記サイクロン本体の前記円筒部には、内向きの内筒受け部が設けられ、前記内筒には、該内筒の周壁を内外に貫通して該周壁から内側の部分が溶接により取り付けられる外向きの張り出し体が円周方向に複数配置され、前記サイクロン本体と前記内筒との間において前記サイクロン本体の前記内筒受け部で前記内筒の前記複数の張り出し体を受けることで、該内筒が前記サイクロン本体に支持されている構成としたことを特徴としており、このサイクロンの構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0011】
本発明の請求項2に係るサイクロンは、前記サイクロン本体の前記内筒受け部上に、前記内筒の前記複数の張り出し体をそれぞれ摺動可能に載置させてある構成としている。
【0012】
本発明の請求項3に係るサイクロンは、前記内筒の前記複数の張り出し体の各間に、前記内筒の周壁を貫通する開口が設けられている構成としている。
【0013】
一方、本発明の請求項4に係る発明は、燃料をベッド材とともに流動化して燃焼させる火炉と、この火炉内での燃焼により発生した燃焼ガス中に含まれる灰及びこの灰とともに流動してきた前記ベッド材を捕集して前記火炉に戻すサイクロンを備えた循環流動層ボイラにおいて、前記サイクロンとして、請求項1〜3のいずれかに記載のサイクロンが採用されている構成としている。
【0014】
本発明に係るサイクロンにおいて、サイクロン本体内で内筒を支持するための外向きの張り出し体が、内筒の周壁を貫通して溶接により取り付けられているので、サイクロン本体における円筒部の温度が低い周壁から、高温に晒される内筒における張り出し体との溶接部分までの距離が、従来に比べて長くなり、その分だけ、溶接部分における熱応力が低減することとなる。
【0015】
また、本発明に係るサイクロンにおいて、外向きの張り出し体が内筒の円周方向に複数配置されているので、例え1個ないし数個の張り出し体における溶接部分に不具合が生じたとしても、複数あるうちの他の張り出し体における溶接部分に問題がなければ、確実に内筒を支持し得ることとなる。
【0016】
さらに、本発明に係るサイクロンにおいて、サイクロン本体の内筒受け部上に、内筒の複数の張り出し体をそれぞれ摺動可能に載置させるように成せば、内筒の熱による拡縮を吸収し得ることとなる。
【0017】
さらにまた、本発明に係るサイクロンにおいて、内筒の複数の張り出し体の各間に、内筒の周壁を貫通する開口を設けるように成せば、この開口を通して内筒の内外に燃焼ガスが流通することとなって、張り出し体の溶接部分における熱応力が緩和されると共に、張り出し体と内筒受け部との間に灰が溜まることが回避されることとなる。
【0018】
一方、本発明に係る循環流動層ボイラでは、サイクロンにおける内筒の支持が常に確実に成されるので、長期にわたって安定した運転が成されることとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るサイクロンでは、循環流動層ボイラに採用した場合において、溶接部分に対する熱応力の有無にかかわりなく、長期にわたって安定したボイラの運転を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る循環流動層ボイラの一実施形態を示す断面説明図である。
図2図1における循環流動層ボイラのサイクロンの内筒を示す正面説明図である。
図3図1においてサイクロンの内筒がサイクロン本体に支持されている状況を示す内筒上端での拡大断面説明図である。
図4図2に示したサイクロンの内筒の部分平面説明図である。
図5図2に示したサイクロンの内筒のX部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るサイクロン及び循環流動層ボイラを図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る循環流動層ボイラの一実施形態を示し、図2図5は、サイクロンの一実施形態を示している。
【0022】
図1に示すように、この循環流動層ボイラ1は、火炉2と、火炉出口3を介して連続する鉛直方向に沿うサイクロン10と、このサイクロン10の下端と灰落下管4を介して連続すると共に、灰戻し管5を介して火炉2と接続する外部熱交換器6と、サイクロン10の上端と接続する図示しない過熱器及び節炭器を有する後部伝熱部7を備えている。
【0023】
火炉2には、燃料、例えばゴミ固形化燃料、及び、ベッド材B、例えば砂が供給され、空気分散ノズル8から矢印のごとく吹き出す空気により燃料をベッド材Bとともに流動化して燃焼させるようになっている。
【0024】
サイクロン10は、円筒部11及びこの円筒部11の下端に連続する円錐部12を有するサイクロン本体13と、このサイクロン本体13の中心に位置する円筒状の内筒20を備えている。円筒部11には、円周接線方向に開口するガス導入口11aが設けられており、火炉出口3がこのガス導入口11aに接続している。
【0025】
このサイクロン10において、サイクロン本体13のガス導入口11aから導入した火炉2からの燃焼ガスは、円筒部11の周壁に沿って流れて遠心力及び重力を受けることで矢印に示すようにらせん状に降下する。この際、きめの粗い重い灰及びベッド材Bは、円筒部11及び円錐部12の各周壁に沿って落下し、一方、きめの細かい軽い灰は、サイクロン本体13の中心から周囲に広がりつつ落下する。
【0026】
そして、サイクロン本体13の中心に位置する内筒20は、破線の矢印に示すように、軽い灰の一部を含んだ燃焼ガスを取り込んでサイクロン10の下流側の後部伝熱部7に供給するようになっている。
【0027】
この場合、内筒20は、図2に示すように、その上端に環状張り出し部21を有しており、図3にも示すように、この環状張り出し部21をサイクロン本体13の円筒部11に配置した内向きの内筒受け部14に受け面15を介して載せることで、サイクロン本体13側に支持されるようになっている。
【0028】
この際、環状張り出し部21を内筒受け部14の受け面15上で摺動可能とすることで、内筒20及び環状張り出し部21の熱による拡縮を吸収するようにしている。
【0029】
環状張り出し部21は、内筒20の筒本体22の上端に溶接により外向きに固定される上部環状フランジ21aと、この上部環状フランジ21aの下方に距離を置いて溶接により筒本体22に固定される下部環状フランジ21bと、環状フランジ21a,21b間に溶接により固定されるリブ(外向きの張り出し体)21cを具備している。
【0030】
リブ21cには、内向きの突片21dが一体で形成されていて、この突片21dは、筒本体22に形成された挿通孔22aを貫通して先端が筒本体22の内部に露出するようになっており、この露出した突片21dの先端部分は、筒本体22に溶接により固定されるようになっている。
【0031】
リブ21c及び挿通孔22aは、図4にも示すように、円周方向に間隔をおいて複数配置されており、隣接するリブ21cの間には、図5にも示すように、補強板21e及び開口21fが配置されている。開口21fは、図3の矢印に示すようにして、内筒20の内外に燃焼ガスを流通させることで、環状張り出し部21における熱応力の発生を緩和するようにしていると共に、内筒受け部14と環状張り出し部21との間に灰が溜まるのを防ぐようにしている。なお、図3において、補強板21eは省略してある。
【0032】
上記したサイクロン10では、サイクロン本体13内で内筒20を支持するためのリブ21cにおける突片21dが、内筒20の筒本体22の周壁を貫通して溶接により取り付けられているので、サイクロン本体13における円筒部11の温度が低い周壁から、高温に晒される内筒20におけるリブ21cとの溶接部分までの距離が、従来に比べて長くなり、その分だけ、溶接部分における熱応力が低減することとなる。
【0033】
また、上記したサイクロン10において、リブ21cが内筒20の円周方向に複数配置されているうえ、これらのリブ21cの各上下端が環状フランジ21a,21bにそれぞれ溶接により固定されているので、例え1個ないし数個のリブ21cにおける突片21dの溶接部分に不具合が生じたとしても、複数あるうちの他のリブ21cの溶接部分に支障がなければ、確実に内筒20を支持し得ることとなる。
【0034】
さらに、上記したサイクロン10において、サイクロン本体13の内筒受け部14の受け面15上に、内筒20のリブ21cを有する環状張り出し部21を摺動可能に載置させているので、内筒20及び環状張り出し部21の熱による拡縮を吸収し得ることとなる。
【0035】
さらにまた、上記したサイクロン10において、内筒20の複数のリブ21cの各間に、内筒20の筒本体22の周壁を貫通する開口21fを設けているので、この開口21fを通して内筒20の内外に燃焼ガスが流通することとなり、その結果、リブ21cにおける突片21dの溶接部分における熱応力が緩和されると共に、リブ21cを有する環状張り出し部21と内筒受け部14との間に灰が溜まることが回避されることとなる。
【0036】
そして、上記したサイクロン10を有する循環流動層ボイラ1では、サイクロン10における内筒20の支持が常に確実に成されるので、長期にわたって安定した運転が成されることとなる。
【0037】
本発明に係るサイクロン及び循環流動層ボイラの各構成は、上記した実施形態に係るサイクロン及び循環流動層ボイラの各構成に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、図1に示すように、灰落下管4の下端に配置されるサイクロン下部内筒30に環状張り出し部21を設けると共に灰落下管4側に内筒受け部14とを設けて、上記と同様にして灰落下管4に対して下部内筒30が支持される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 循環流動層ボイラ
2 火炉
10 サイクロン
11 円筒部
13 サイクロン本体
14 内筒受け部
20 内筒
21c リブ(外向きの張り出し体)
21f 開口
30 サイクロン下部内筒
B ベッド材
図1
図2
図3
図4
図5