(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂基材と該樹脂基材上に形成された可撓性薄膜構造の少なくとも1つの表示セルとからなるセルマザーボードが耐熱性マザー基板上に支持されたマザーボード構造体を、前記表示セルが上向きになる状態で送り方向に送る段階と、
該送り方向に送られる前記マザーボード構造体の前記表示セルに、粘着面を有し前記送り方向に延びるキャリアテープを接触させて該キャリアテープにより前記マザーボード構造体を上面から支持し、前記マザーボード構造体を該送り方向に送る段階と、
前記キャリアテープにより支持され、前記送り方向に送られる前記マザーボード構造体から前記耐熱性マザー基板を剥離する段階と、
前記耐熱性マザー基板が剥離された前記セルマザーボードを前記送り方向に送りながら、その下面に下面貼付けフィルムを貼り合わせ、該キャリアテープ及び下面貼付けフィルムの一方又は両方を前記送り方向に移動させることによって前記セルマザーボードが該キャリアテープ及び該下面貼付けフィルムに一方又は両方により支持されて前記送り方向に送られるようにする段階と、
下面に下面貼付けフィルムが貼り合わされた前記セルマザーボードの上面から前記キャリアテープを剥がす段階と、
を含むことを特徴とする可撓性薄膜構造の表示セルを取り扱う方法。
請求項1に記載した方法であって、前記セルマザーボードは、少なくとも前記送り方向に平行な縦方向の列に配置された複数の表示セルを含み、前記キャリアテープが剥がされた前記セルマザーボードを前記下面貼付けフィルムとともに個々の表示セルごとに切断する切断段階を含むことを特徴とする方法。
請求項1又は請求項2に記載した方法であって、前記耐熱性マザー基板が剥離された前記セルマザーボードは、ロールに巻きとられ、該ロールから前記セルマザーボードを繰り出して、前記下面貼付けフィルムの貼り合せ段階が行われることを特徴とする方法。
請求項5に記載した方法であって、前記耐熱性マザー基板が剥離された前記マザーボード構造体を前記キャリアテープとともにロールに巻く段階をさらに含むことを特徴とする方法。
請求項6に記載した方法であって、前記マザーボード構造体を前記キャリアテープとともにロールに巻く段階の前に、前記キャリアテープにより前記マザーボード構造体を前記送り方向に送りながら、前記耐熱性マザー基板が剥離された前記マザーボード構造体の面に粘着剤層を形成する段階を含むことを特徴とする方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、可撓性薄膜構造の表示セルの搬送路の上方に真空吸着機能を備えた吸着盤を用いることなく、樹脂基材上に形成された可撓性薄膜構造の表示セルをガラス基板のような耐熱性基板とともに次工程に移送することができる、可撓性薄膜構造の表示セルの取り扱い方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、広義には、可撓性薄膜構造の光学表示セルを複数の工程に通すことによって光学表示ユニットを製造する場合において該可撓性薄膜構造の光学表示セルを取り扱う方法を提供するものである。この方法は、一方の側に粘着剤層が形成されたキャリアテープを、該粘着剤層が下に向けられた状態で前記光学表示セルの送り方向に移動させながら、該光学表示セルの上面に該キャリアテープの前記粘着剤層を接触させて、該キャリアテープに前記光学表示セルを接合することにより、該上面から該光学表示セルを支持し、該キャリアテープを送り方向に移動させることにより、該複数の工程を通して光学表示セルを移送することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様による可撓性薄膜構造の表示セルの取り扱い方法は、ガラス基板のような耐熱性マザー基板上に、樹脂基材と該樹脂基材上に形成された可撓性薄膜構造の少なくとも1つの表示セルとからなるセルマザーボードが支持されたマザーボード構造体を、該耐熱性マザー基板が下になる状態で、その上面に粘着テープを接触させ、該粘着テープにより該上面から該マザーボード構造体を支持して粘着テープを送り方向に移動させることにより、該マザーボード構造体を次工程に送ることを特徴とする。
【0010】
もっと詳細に述べると、本発明のこの態様における方法は、
耐熱性マザー基板上に、樹脂基材と該樹脂基材上に形成された可撓性薄膜構造の少なくとも1つの表示セルとからなるセルマザーボードが支持されたマザーボード構造体を、該表示セルが上向きになる状態で送り方向に送る段階と、該送り方向に送られるマザーボード構造体の表示セルに、粘着面を有し送り方向に延びるキャリアテープを接触させて該キャリアテープにより該マザーボード構造体を上面から支持し、該キャリアテープを送り方向に移動させることによって、該マザーボード構造体を該送り方向に送る段階と、
該キャリアテープにより支持され、送り方向に送られるマザーボード構造体から耐熱性マザー基板を剥離する段階と、
該耐熱性マザー基板が剥離されたセルマザーボードを送り方向に送りながら、その下面に下面貼付けフィルムを貼り合わせ、該セルマザーボードが該キャリアテープ及び下面貼付けフィルムの一方又は両方を該送り方向に移動させることによって該セルマザーボードが該キャリアテープ及び下面貼付けフィルムの該一方又は両方により支持されて送り方向に送られるようにする段階と、
下面に下面貼付けフィルムが貼り合わされた該セルマザーボードの上面から該キャリアテープを剥がす段階と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
セルマザーボードは、少なくとも送り方向に平行な縦方向の列に配置された複数の表示セルを含むものとすることができ、この場合において、上記した方法は、キャリアテープが剥がされたセルマザーボードを下面貼付けフィルムとともに個々の表示セルごとに切断する切断段階を含むことができる。
【0012】
さらに、本発明による上記の方法においては、該方法の途中の段階で、耐熱性マザー基板が剥離された前記セルマザーボードを、ロールに巻きとり、後の段階において、該ロールからセルマザーボードを繰り出して、該下面貼付けフィルムの貼り合せ段階を行うようにすることができる。表示セルは、有機EL表示セルとすることができる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、可撓性薄膜構造の表示セルを取り扱う方法は、可撓性薄膜構造の少なくとも1つの表示セルを有するセルマザーボードを取り扱う方法として具現することができる。この方法は、
ガラス基板のような耐熱性マザー基板上に、樹脂基材と該樹脂基材上に形成された可撓性薄膜構造の少なくとも1つの表示セルとからなるセルマザーボードが支持されたマザーボード構造体を、表示セルが上向きになる状態で送り方向に送る段階と、
該送り方向に送られる前記マザーボード構造体の該表示セルに、粘着面を有し送り方向に延びるキャリアテープを接触させて該マザーボード構造体を該キャリアテープにより上面から支持し、該キャリアテープを送り方向に移動させることによって、該マザーボード構造体を該送り方向に送る段階と、
キャリアテープにより支持され、送り方向に送られる該マザーボード構造体から耐熱性マザー基板を剥離する段階と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
この方法は、耐熱性マザー基板が剥離されたマザーボード構造体をキャリアテープとともにロールに巻く段階をさらに含むことができる。さらに、マザーボード構造体をキャリアテープとともにロールに巻く段階の前に、該キャリアテープによりマザーボード構造体を送り方向に送りながら、耐熱性マザー基板が剥離されたマザーボード構造体の面に粘着剤層を形成する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、ガラス基板のような耐熱性マザー基板とセルマザーボードからなるマザーボード構造体を、該耐熱性マザー基板が下になる状態で、その上面に粘着テープを接触させ、該粘着テープにより該上面から該マザーボード構造体を支持して粘着テープを送り方向に移動させることにより、該マザーボード構造体を送り、該マザーボード構造体から耐熱性マザー基板が剥離された後のセルマザーボードも該粘着テープにより上から支持するようにしたので、搬送路の上方に真空吸引盤を使用することなく、マザーボード構造体の移送が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明に一実施形態の方法において取り扱うことができる光学表示セル1の一例を示す。この光学表示セル1は平面形状が短辺1aと長辺1bとを有する長方形形状であり、一方の短辺1aに沿って所定幅の端子部分1cが形成されている。この端子部分1cには、電気接続のための多数の電気端子2が配置されている。光学表示セル1の端子部分2を除く領域が表示領域1dとなる。この表示領域1dは、横方向の幅Wと縦方向の長さLとを有する。本発明の方法を実施するためには、光学表示セル1は有機EL表示セルであることが好ましいが、可撓性薄膜構造の表示セルであれば、本発明の方法を適用することができる。光学表示セル1は、携帯電話又はスマートフォン、或いはタブレット用途の比較的小型のものから、テレビ用途の比較的大きなものまで、種々の画面サイズを有するものとすることができる。
【0018】
図2は、スマートフォン或いはタブレット用途のような比較的小型の表示画面を有する有機EL表示セルの製造工程の一例を概略的に示す斜視図である。この工程においては、先ず耐熱性マザー基板としてのガラス基板3が準備され、該ガラス基板3上に、耐熱性樹脂材料、好ましくはポリイミド樹脂が所定厚さに塗布され、乾燥されることによって、樹脂基材4が形成される。耐熱性樹脂材料としては、ポリイミド樹脂の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などを使用することができる。その他に、基材の材料としては、特開2007−157501号公報(特許文献3)に記載されているような可撓性セラミックシート、或いは、特開2013−63892号公報(特許文献4)、特開2010−13250号公報(特許文献5)、特開2013−35158号公報(特許文献6)に記載されているような可撓性のガラスを使用することもできる。可撓性セラミックシート又は可撓性ガラスを基材として使用する場合には、ガラス基板3を使用する必要はない。
【0019】
この樹脂基材4上に、複数の有機EL表示セル1が、周知の製造方法により、縦横の行列状に配列された状態で形成されて、樹脂基材4と表示セルがセル集合体マザーボードBを形成する。樹脂基材4上に形成された表示せるが1個である場合には、これをセルマザーボードと呼ぶ。その後、樹脂基材4上に形成された有機EL表示セル1を覆うように、表面保護フィルム5が貼り合わされる。ここでは、セル集合体マザーボードB又はセルマザーボードがガラス基板3のような耐熱性基板に接合された状態のものをマザーボード構造体と呼ぶ。
【0020】
図3(a)は、表面保護フィルム5が貼り合わされていない、セル集合体マザーボードBの一例を示す平面図であり、同図(b)は、
図4のb−b線における断面図であるが、表面保護フィルム5が貼り合わされたセル集合体マザーボードBがガラス基板3上に配置された状態を示す。
図3(a)に示すように、セル集合体マザーボードBにおいては、複数の光学表示セル1が、端子部分1aが横方向に向けられる状態で、縦方向の列及び横方向の行を構成するように、行列配置される。セル集合体マザーボードBは、
図3(a)に示すように、短辺B−1と長辺B−2とを有する矩形形状であり、一方の短辺B−1の両端近傍にマザーボードBの基準点となる基準標識mが、印字、刻印その他の適当な手法により付されている。この基準標識mは、マザーボードBの位置決めを行う場合に基準として参照される。光学フィルムの貼り合わせに際しては、セル集合体マザーボードBは、
図3(a)に矢印Aで示す方向、すなわち縦方向に送られる。
【0021】
ガラス基板3を有する状態のセル集合体マザーボードBは、光学表示セル1の欠点検査を経たのちに、ガラス基板3を剥離するガラス基板剥離位置に送られる。このガラス基板剥離位置へのガラス基板3を有する状態のセル集合体マザーボードBの移送に際して、本発明の取り扱い方法が適用される。ガラス基板3を有する状態のセル集合体マザーボードBをガラス基板剥離位置に移送するに先立って、セル集合体マザーボードBの光学検査が行われる。この光学検査に備えて、セル集合体マザーボードBから表面保護フィルム5を剥離する必要がある。
図4に、表面保護フィルム5を剥離する手順を示す。
【0022】
図4を参照すると、セル集合体マザーボードBは、ガイドレール14に沿って移動するガイド15及び支持機構13に支持された吸引保持盤10上に真空吸引力により保持されて、
図4(a)に示す位置で表面保護フィルム剥離位置に送り込まれ、
図4(b)に示す位置において昇降機構により所定高さまで上昇させられる。この所定高さは、セル集合体マザーボードBの表面保護フィルム5の上面が、一対の押圧ロール16c間に位置する粘着テープ16dに所定の接触圧で接触できる高さである。
【0023】
昇降機構により所定高さまで上昇させられたセル集合体マザーボードBは、そのまま剥離用粘着テープ駆動装置16の下方の位置に送られる。ここで、マザーボードBの表面保護フィルム5の上面が、一対の押圧ロール16cの間において粘着テープ16dの粘着面に押圧状態で接触する。粘着テープ16dの表面保護フィルム5に対する接着力は、表面保護フィルム5の光学表示セル1に対する接着力よりも大きく、したがって、表面保護フィルム5は、粘着テープ16dに付着して、樹脂基材4上に配置された光学表示セル1から剥離される。剥離された表面保護フィルム5は、巻き取りロール16bにより粘着テープ16dとともに巻き取られる。表面保護フィルム5が剥離されたマザーボードBは、図(d)に示す位置において昇降機構により、
図4(a)の位置における送り込み時の高さまで下降させられて、光学検査位置に送られる。
【0024】
光学検査は、
図5(a)に示す表面反射検査と
図5(b)に示す表示セルの点灯検査の2段階で行われる。
図5(a)に示すように、表面反射検査の検査装置として、光源70と受光器71が備えられ、セル集合体マザーボードBは吸引保持盤10に支持された状態で、反射検査装置の下に移動させられる。この位置で、光源70からの光が被検体である光学表示セル1の表面に当てられ、光学表示セル1の表面で反射して受光器71に入射することにより、該光学表示セル1の表面欠陥が検出される。
【0025】
図5(b)は、点灯検査の概要を示すもので、光学表示セル1の発光状態を検出するための検出器72が複数個、一列に並べられている。
図2に示す工程により製造されたセル集合体マザーボードBは、複数の光学表示セル1が縦横の行列状に配列された構成を有するので、この実施形態では、セル集合体マザーボードB内のすべての光学表示セル1が同時に励起されるようにするための、
図6に示す疑似端子ユニット75を使用する。
【0026】
図6を参照すると、疑似端子ユニット75は、セル集合体マザーボードBの矩形形状に対応する矩形形状の外枠75aと、複数個の横桟75bと、複数個の縦桟75cとを備えており、外枠75a内に、セル集合体マザーボードB内における光学表示セル1の配列に対応するように縦横に配列された矩形形状の窓75dが形成されている。各々の窓75dの一つの短辺に沿って、各光学表示セル1の端子部分2に対応する位置に、接続用端子76が配置されている。また、疑似端子ユニット75には、セル集合体マザーボードB内の各光学表示セル1の端子2に励起電力を供給するための電力供給端子77が設けられる。
【0027】
図7に、
図6に示す疑似端子ユニット75を使用する状態を示す。疑似端子ユニット75は、外枠75aがセル集合体マザーボードBの周縁部に重なるように、該セル集合体マザーボードB上に置かれる。この状態で、疑似端子ユニット75の窓75dは、それぞれセル集合体マザーボードB内の光学表示セル1に重なる。ここで、疑似端子ユニット75に励起電力を供給すると、セル集合体マザーボードBの光学表示セル1のすべてが、同時に励起状態になる。そこで、検出器72により各セル1の作動状態を各発光色について検査する。この疑似端子ユニット75を使用することにより、複数の光学表示セルを有するマザーボードにおいて、すべてのセルを一斉に励起状態として検査を行うことが可能になる。
【0028】
光学検査を終了したセル集合体マザーボードBは、次に、貼合せ機構20を備える光学フィルム貼合せ位置に送られる。
図8は、貼合せ機構20の全体を示す概略側面図である。
【0029】
貼合せ機構20は、長尺の光学フィルム21をロール状に巻いた光学フィルムロール22を備える。光学フィルム21は、一対の駆動ロール23により光学フィルムロール22から一定の速度で繰り出される。本実施形態においては、光学フィルム21は、
図9に示すように、偏光子21aの両側にTACフィルムのような保護フィルム21bが貼り合わされた長尺ウェブ状の偏光フィルムと、粘着剤層21dを介して該偏光フィルムに接合された長尺ウェブ状の1/4波長(λ)位相差フィルム21cとからなる積層構成である。該位相差フィルム21cの外側には、別の粘着剤層21dを介してキャリアフィルム21eが貼り合わされる。偏光子21aと位相差フィルム21cとは、該偏光子21aの吸収軸と位相差フィルム21cの遅相軸又は進相軸とが45°±5°の範囲の角度で交差するように配置する。この光学フィルム21は、長尺の連続ウェブ形状であるが、その幅は、マザーボードB上に配置された各表示セルの横方向幅Wに対応する寸法である。
【0030】
本実施形態の場合、偏光子21aの吸収軸は、該偏光子21aの長さ方向に平行とし、位相差フィルム21cの遅相軸が、該位相差フィルム21cの長さ方向に対して45°±5°の範囲の角度だけ斜め方向に向いた構成とする。このためには、位相差フィルム21cの製造段階で、該フィルムを斜め延伸する必要がある。この斜め延伸に関しては、特願2013−070787号(特許文献7)、特願2013−070789号(特許文献8)に詳細な記載があり、これらの文献に記載された方法により延伸された位相差フィルムを使用することができる。また、位相差フィルム21cとして、位相差が波長に応じて短波長側ほど小さくなる逆分散特性をもったフィルムを使用することができる。逆分散特性を有する位相差フィルムは、特許第5204200号(特許文献9)、特許第5448264号(特許文献10)等に記載があり、本実施形態の方法においては、これらの特許出願に記載された逆分散特性の位相差フィルムを使用することができる。
【0031】
さらに
図8を参照すると、一対の駆動ロール23により光学フィルムロール22から繰り出された光学フィルム21は、ガイドロール24、上下方向に可動なダンサーロール25及びガイドロール26及びガイドロール27を経て切り込み形成機構28に送られる。切り込み形成機構28は、切断刃29と送り出し用の一対の駆動ロール30とからなる。この切り込み形成機構28は、切り込み形成位置において駆動ロール30を停止させ、光学フィルム21の送りを停止させた状態で、切断刃29を作動させ、キャリアフィルム21eを残して光学フィルム21のみに、その幅方向に切り込み28aを形成する。切り込み28aの間隔は、マザーボードB上の各表示セル1の縦方向の長さLに対応する距離である。したがって、光学フィルムは、切り込み28aにより幅方向に切断されて、表示セルの横方向幅Wと縦方法長さLを有する光学フィルムシート21fとなる。このようにして、キャリアフィルム21e上には、複数の光学フィルムシート21aが連続的に形成され、これらの光学フィルムシート21aは、キャリアフィルム21eに支持されて貼合せ位置に送られる。
【0032】
ダンサーロール25は、上向きに弾性的に付勢されており、連続的に光学フィルム21を送り方向に駆動する一対の駆動ロール23と、切断時には光学フィルム21の送りを停止し、切断終了後に所定距離だけ駆動を行う一対の駆動ロール30との間でフィルム送りの調整を行うように作用する調整ロールである。すなわち、駆動ロール30の停止期間においては、ダンサーロール25は、付勢力により駆動ロール23の送り分を吸収するように上方に移動し、駆動ロール30の作動が開始されたときに、該駆動ロール30により光学フィルム21に加えられる引張力により、付勢力に抗して下方に移動する。
【0033】
切り込み28aにより形成された一連の光学フィルムシート21fは、キャリアフィルム21eに支持された状態で、ガイドロール31、及びガイドロール32を経て、ダンサーロール25と同様な構成のダンサーロール33を通り、ガイドロール34、35、36、37により案内されて貼合せ位置に送られる。
【0034】
貼合せ位置には、貼合せロール38とキャリアフィルム剥離機構39が備えられている。貼合せロール38は、上方の引込み位置と下方の押圧位置との間を可動に配置されており、キャリアフィルム21eに支持された連続する光学フィルムシート21fのうち、先頭の光学フィルムシート21fの先端が、貼合せ対象の表示セル1の先端に位置整合した状態になったとき、上方位置から下方の押圧位置まで下降して、光学フィルムシート21fをマザーボードB上の表示セル1に押し付けて貼り合わせを行う。
【0035】
キャリアフィルム剥離機構39は、貼合せ位置において、キャリアフィルム21eを鋭角に折り返して、先頭の光学フィルムシート21fを該キャリアフィルム21eから剥がすように作用する剥離ブレードを備える。鋭角に折り返されたキャリアフィルム21eを引き取るためにキャリアフィルム巻き取りロール40が配置される。光学フィルムシート21fから剥がされたキャリアフィルム21eは、ガイドロール41及び一対の巻き取り用駆動ロール42を経て、巻き取りロール40に送られ、該巻き取りロール40に巻き取られる。
【0036】
駆動ロール30及び切断刃29の作動は、
図8には示していない前述した制御装置により制御される。すなわち、制御装置は、マザーボードB上の表示セル1の寸法及び位置に関する情報を格納しており、表示セル1の縦方向長さLの情報に基づいて制御装置が駆動ロール30の駆動と切断刃29の作動を制御して、表示セル1の縦方向長さLに対応する長さ方向間隔で、光学フィルム21に切り込み28aを形成する。また、貼合せ位置の上流側には、光学フィルムシート21fの先端を検出するフィルム検出装置43が設けられており、貼合せ位置に送られる光学フィルムシート21fの先端位置についての情報を制御装置に提供する。この光学フィルムシート先端位置情報は、制御装置に格納され、制御装置は、この光学フィルムシート先端位置情報と、吸引保持盤10から取得したマザーボードBの位置情報に基づき、駆動ロール30と巻き取り用駆動ロール42の作動を、吸引保持盤10の動きに対応させて制御し、キャリアフィルム21eから剥がされた光学フィルムシート21fの先端が、貼合せ位置にあるマザーボードB上の貼り合わせが行われる表示セル1の先端に位置整合するように調節する。位置整合が達成されると、光学フィルムシート21fとマザーボードBは、同期した速度で送られる。貼合せロール38が下方の押圧位置に下降して、光学フィルムシート21fを表示セル1の表示面に押し付ける。このようにして、表示セル1への光学フィルムシート21fの貼り合わせが行われる。
【0037】
図10は、光学フィルムシート21fを、マザーボードB上において縦横の行列状に配列された表示セル1に順次に貼り合わせる順序の一例を示す概略図である。この例においては、貼合せ機構20は、送り方向に対する横方向位置が固定されており、マザーボードBを保持する吸引保持盤10は、支持機構13上に横方向移動が可能なように取り付けられている。
図10(a)に示すように、マザーボードBの位置は、最初に左端の表示セル列の先頭の表示セル1が貼合せ位置に位置決めされるように制御される。この状態で、
図8に関連して前述したように、光学フィルムシート21fが左端列先頭の表示セル1の表示部1dに貼り合わされる。
【0038】
次いで、吸引保持盤10を横方向に動かすことにより、マザーボードBが送り方向に対して左横方向に、表示セル列の横方向間隔に相当する距離だけ変位させられる。この横変位により、
図10(b)に示すように、左から2番目の列の先頭の表示セル1が貼合せ位置に位置決めされる。そして、前述と同様の動作により、この表示セル1の表示部1dに光学フィルムシート21fが貼り合わされる。その後、同様の操作によりマザーボードBが左横方向に変位させられて、光学フィルムシート21fの貼り合わせが行われる。表示セル1が3列に配置されている図示例の場合には、これで先頭の表示セルへの光学フィルムシート21fの貼り合わせは完了する。この状態を
図10(c)に示す。
【0039】
次に、各縦列における表示セル1の間隔に相当する距離だけ吸引保持盤10が送り方向に駆動され、右端の列の先頭から2番目の表示セル1が貼合せ位置に位置決めされ、同様にして、
図10(d)に示すように、このセル1の表示部1dに光学フィルムシート21fが貼り合わされる。その後、
図10(e)に示すように、マザーボードBが送り方向に駆動されて、同様な操作により、光学フィルムシート21fの貼合せが行われる。
【0040】
上述した実施形態においては、キャリアフィルム21eに支持された積層構成の光学フィルムは、予め切断機構28により所定の長さに切断されて光学フィルムシート21fの形態にされ、その後でマザーボードB上の表示セル1の表示部1dに貼り合わされたが、本発明の他の態様においては、予めシート状に切断されることなく、光学フィルムは、連続帯状フィルムの形態で、縦列の表示セルの全体に渡して貼り合わされる。この実施形態では、
図8に示す貼合せ機構20における切り込み形成機構28は必要でない。この実施形態による貼合せを
図11に示す。
図11(a)に示すように、マザーボードBは、送り方向左端の列の先頭の表示セル1の先端が貼合せ位置における所定の位置に位置決めされる。
図10に関連して上述したように、光学フィルム21からキャリアフィルム21eを剥がして、該光学フィルムを左端列の表示セル1に連続的に貼り合わせる。次いで、マザーボードBを左横方向及び後方に移動させて、
図11(b)に示すように2列目先頭の表示セル1が貼合せ位置に整合する状態にして、同様な貼り合わせを行う。同様に、マザーボードBを左横方向及び後方に移動させて、
図11(c)に示すように右端列先頭の表示セル1が貼合せ位置に整合する状態にして、同様な貼り合わせを行う。
【0041】
図12は、本発明の光学表示セル取扱い方法を実施するための、一実施形態による光学表示ユニット製造装置80の概略図である。上述の工程により、すべての表示セル1に対する光学フィルムシート21fの貼合せが完了すると、マザーボードBは、吸引保持盤10上に保持された状態で、
図12に示す光学表示ユニット製造装置80に送られる。
【0042】
この装置80は、キャリアテープ繰出しローラ81と、キャリアテープ巻取りローラ82と、これらローラ81、82間に配列された複数の案内ローラ84a、84b、84c、84d、84eとを備える。キャリアテープ繰出しローラ81には、キャリアテープ83のロール83aが取り付けられる。キャリアテープ83は、
図13に示すように、テープ基材83bと、該テープ基材83bの一方の面に設けられた軽剥離力の粘着剤層83cとからなる。キャリアテープ83のロール83aは、粘着剤層83cが外側になるように巻かれた構成である。
【0043】
キャリアテープ83は、ロール83aから繰り出され、粘着剤層83cが下向きになるように、案内ローラ84b、84c、84d、84eの下側の走行路に沿って水平方向に通され、巻取りローラ82に巻き取られる。光学表示セル1の表示面に光学フィルムシート21fが貼り合わされたセル集合体マザーボードBは、該マザーボードBに接合されているガラス基板3とともに、吸引保持盤10上に保持された状態で、水平方向に延びるキャリアテープ83の下方の位置に送られる。
【0044】
図12に示す光学表示ユニット製造装置80は、キャリアテープ貼合せ位置Iと、ガラス基板剥離位置IIと、粘着剤層付与位置IIIと、複合フィルム貼合せ位置IVと、光学表示セル切断位置Vとを有する。光学表示セル1の表示面に光学フィルムシート21fが貼り合わされたセル集合体マザーボードBと、ガラス基板3とは、キャリアテープ貼合せ位置Iに到達する前に、吸引保持盤10の支持機構13に設けた高さ調節機構を用いて高さ調節される。調節される高さは、セル集合体マザーボードB上の光学表示セル1に貼り合わされた光学フィルムシート21fが、キャリアテープ83の粘着剤層83cに所定の接触圧で接触するような高さである。高さ調節された吸引保持盤10上のセル集合体マザーボードB及びガラス基板3は、
図12において左から2番目の案内ローラ84bの下に送り込まれる。ここで、ロール83aから繰り出されたキャリアテープ83は、その粘着剤層83cが案内ローラ84bによってセル集合体マザーボードB上の光学フィルムシート21fに押し付けられる。このようにして、キャリアテープ83がセル集合体マザーボードBに接合される。この状態を
図13に示す。
【0045】
この過程において、キャリアテープ83は、
図12に矢印Aで示す送り方向に、吸引保持盤10と同期した速度で駆動される。セル集合体マザーボードBがキャリアテープ貼合位置Iを通過する間に、セル集合体マザーボードB上のすべての光学フィルムシート21fにキャリアテープ83が接合される。セル集合体マザーボードBがキャリアテープ貼合位置Iを通り抜けた後で、吸引保持盤10の真空吸引力が解除され、セル集合体マザーボードBとガラス基板3は、キャリアテープ83のみによって支持される状態になる。
【0046】
キャリアテープ83に支持されたセル集合体マザーボードBとガラス基板は、次にガラス基板剥離位置IIに送られる。この位置IIにおいて、ガラス基板3が、レーザ照射等の公知の方法により、樹脂基材4から剥がされる。レーザ照射によりガラス基板を樹脂基材から剥がす技術は、例えば、国際公開公報WO2009/104371号(特許文献2)に記載されている。ガラス基板3が剥がされたセル集合体マザーボードBは、粘着剤層付与位置IIIに送られる。
【0047】
粘着剤層付与位置IIIには、キャリアテープ83の上側に位置する案内ローラ84cの下側に、キャリアテープ83と該キャリアテープ83により支持されたセル集合体マザーボードBとを挟んで該案内ローラ84c、84dに対向するように、ローラ85a、85bが配置されている。さらに、粘着剤層付与位置IIIには、粘着剤テープ繰り出しローラ87が設けられ、該繰り出しローラ87上に、粘着剤テープ86のロール86aが支持されている。粘着剤テープ86は、粘着剤層86bと、該粘着剤層86bの一方の側に貼り合わされた第1の剥離ライナー86cと、該粘着剤層86bの他方の側に貼り合わされた第2の剥離ライナー86dとからなる。ロール86aから繰り出された粘着剤テープ86は、案内ローラ88を経て、ローラ85aとキャリアテープ83に支持されたセル集合体マザーボードBとの間に送られる。
【0048】
この過程において、粘着剤テープ86は、ロール86aから繰り出された後、案内ローラ88に到達する前に、第1の剥離ライナー86cが剥離されて、粘着剤層86bが露出された状態になる。次いで、粘着剤テープ86は、露出された粘着剤層86bがキャリアテープ83に支持されたセル集合体マザーボードBの下面の樹脂基材4に接するように、ローラ84cとローラ85aの間に送られる。粘着剤層86bは、ローラ84c、85aによりセル集合体マザーボードBの下面の樹脂基材4に押し付けられて該セル集合体マザーボードBに接合される。この状態で、セル集合体マザーボードBと粘着剤テープ86は、ローラ84dとローラ85bの間に送られ、ここで、第2の剥離ライナー86dが粘着剤層86bから剥離される。剥離された第2の剥離ライナー86dは、巻取りローラ89bにより巻き取られる。
【0049】
粘着剤層86bが下面に付与されたセル集合体マザーボードBは、キャリアテープ83に支持されて複合フィルム貼合せ位置IVに送られる。この位置IVには、下面貼付けフィルムとなる複合フィルム90のロール90aが配置されており、該ロール90aから繰り出された複合フィルム90は、案内ローラ84eの下側に配置された案内ローラ91により、案内ローラ84eの下方位置に到達したセル集合体マザーボードBの下面に付与された粘着剤層86bに押し付けられる。このようにして、複合フィルムがセル集合体マザーボードBに貼り合わされる。キャリアテープ83は、案内ローラ84eの位置においてセル集合体マザーボードB上の光学フィルムシート21fから剥がされ、巻取りローラ82に巻き取られる。その後は、セル集合体マザーボードBは、複合フィルム90により支持されることになる。複合フィルム90とセル集合体マザーボードBとを送り方向に駆動するために、一対の駆動ローラ91a、91bを設けることができる。本発明のこの実施形態においては、複合フィルム90は、遮光フィルムの層と耐衝撃性と放熱性を有するフィルムの層とからなる積層体として構成される。しかし、本発明の他の実施形態においては、この複合フィルムに変えて、通常の裏面保護フィルムを用いてもよい。
【0050】
上面に光学フィルムシート21fが貼り合わされ、下面に複合フィルム90が貼り合わされたセル集合体マザーボードBは、光学表示セル切断位置Vに送られる。この切断位置Vには、複合フィルム90を受ける合成樹脂製の支持ベルト92と切断刃93が備えられ、セル集合体マザーボードBを切断して個々の光学表示セル1を切り離す。この切断のための機構及び動作は周知であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
図14に、本発明の光学表示セル取扱い方法を実施するための、他の実施形態による光学表示ユニット製造装置を示す。この装置は、
図12に示す装置80と対比して、基本的な構成及び動作が同じであるので、対応する部分は同一の符号で示し、詳細な説明は省略する。
図14に示す装置が
図12に示す装置80と異なる点は、ローラ84cとローラ85aの間に通されて下面に粘着剤層86bが付与されたセル集合体マザーボードBが、キャリアテープ83及び第2の剥離ライナー86dとともに積層体を構成し、この積層体がロール100に巻き取られることである。ロール100に巻き取られた積層体は、別の工程において、ロール100から繰り出され、複合フィルム貼合せ位置IV及び光学表示セル切断位置Vにおける処理が行われる。
【0052】
本発明の方法は、マザーボードB上に縦1列に配置された表示セル1にも適用することができる。その一例を
図15に示す。この場合において、表示セル1は、端子部分1cが列の向きに対して横向きになるように、マザーボードB上に配置される。貼り合わせは、
図8に関連して説明した動作と同様な動作により、列の先頭から順に、予め切断した光学フィルムシート21fを、表示セル1の表示部1dに貼り合わせることによって行うことができる。代替的には、列の表示セル1全体にわたって、その表示部1dに光学フィルム21を貼り合わせ、後の切断工程において、光学フィルム21の余剰部分を切り落としてもよい。
【0053】
本発明の方法は又、比較的大きいサイズの柔軟性シート構造の表示セルにも適用できる。その例を
図16及び
図17に示す。表示セルが有機ELセルである場合には、セル自体を薄い厚みの柔軟性シート構造とすることができる。
図16を参照すると、柔軟性シート構造の光学表示セル101は、短辺101aと長辺101bとを有する矩形形状で、短辺101aに沿って位置する端子部分101cと、縦方向の長さLと横方向の幅Wとを有する表示部101dとを有する。この表示セル101は、製造段階で、ポリイミドのような耐熱樹脂材料からなる基材102上に形成される。製造工程は、
図3について説明した工程と同様であり、ガラス基板3上に樹脂基材102がフィルム状に形成され、その上に、例えば有機EL表示セルのような光学表示セル101が形成される。
図3の場合と異なる点は、本実施形態においては、基材102上に一つの表示セルが形成されることである。
図3に関連して述べた工程におけると同様に、基材102上に光学表示セル101が形成された後、該表示セル101の上面に光学フィルム21が貼り合わされる。本実施形態においては、
図8に示す貼合せ機構20と同様の機構を採用することができる。この場合、光学フィルムロール22から繰り出された光学フィルム21は、
図16に示す表示セル101の幅Wに対応する幅を有する。
図17に、貼合せ部の構成を概略的に示す。貼合せ部における作用は、
図8について前述したものと同様であり、対応する部分は同一の符号で示す。
【0054】
以上、本発明を特定の実施形態について図示し、説明したが、本発明は、図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項によってのみ定まるものである。