特許第5954560号(P5954560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954560
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】シートベルトバックルの収容構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160707BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20160707BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B60N2/44
   B60R22/26
   B60N2/58
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-268041(P2011-268041)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2012-140119(P2012-140119A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2014年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-277135(P2010-277135)
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渥美 穣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 完
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−064639(JP,A)
【文献】 特開平09−030369(JP,A)
【文献】 特開平06−278570(JP,A)
【文献】 特開平06−278571(JP,A)
【文献】 実開平05−042009(JP,U)
【文献】 実開平04−069262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
B60N 2/58
B60R 22/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションにバックル収容孔が形成され、
フロア側の固定部に固定されたシートベルトバックルが前記バックル収容孔に収容されているシートベルトバックルの収容構造であって、
前記バックル収容孔の内側面及び上側開口の周縁部に、前記バックル収容孔への物品の侵入落下を阻止する阻止壁が立設され、
前記シートベルトバックルは前記バックル収容孔内で前記阻止壁に内嵌し、
前記阻止壁の上部の嵌合壁面が前記バックル収容孔内で前記シートベルトバックルの側面に面接触して、前記阻止壁の上部が上下方向に沿うとともに、前記阻止壁の上端部が前記バックル収容孔の上方に突出していて、
前記阻止壁は、芯材と、前記芯材を挟み込んで覆う一対の阻止壁形成部材とを、前記バックル収容孔の内側面の表皮材に縫着して構成されるシートベルトバックルの収容構造。
【請求項2】
一方の前記阻止壁形成部材の上端部は他方の前記阻止壁形成部材の上端部側に折り返され、
前記他方の阻止壁形成部材の上端部は前記一方の阻止壁形成部材の上端部側に折り返されて、一対の折り返し部同士が互いに縫着され、
前記一対の折り返し部が前記バックル収容孔の上方に突出している請求項1記載のシートベルトバックルの収容構造。
【請求項3】
前記阻止壁は、前記シートクッションの表皮材と同一材質の阻止壁形成部材を前記表皮材に縫着して構成されている請求項1記載のシートベルトバックルの収容構造。
【請求項4】
前記シートクッションの表皮材は前記バックル収容孔に入り込んで前記バックル収容孔の内側面を形成し、
前記バックル収容孔の内側面を形成する表皮材が上下に分割されるとともに、上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部が前記バックル収容孔の径方向で重なるように、前記上側の表皮材の分割端部又は下側の表皮材の分割端部が下方又は上方に延出され、
阻止壁形成部材の下部が前記上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部に挟み込まれて一体に共縫いされ、
前記阻止壁形成部材の上部が前記バックル収容孔の上側開口の周縁部から上方に突出して前記阻止壁を構成している請求項1記載のシートベルトバックルの収容構造。
【請求項5】
前記阻止壁形成部材は前記シートクッションの表皮材と同一材質の部材から成る請求項4記載のシートベルトバックルの収容構造。
【請求項6】
前記阻止壁形成部材は上端部に断面円形の玉縁が形成された玉縁材から成る請求項4又は5記載のシートベルトバックルの収容構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シートクッションにバックル収容孔が形成され、
フロア側の固定部に固定されたシートベルトバックルが前記バックル収容孔に収容されているシートベルトバックルの収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のシートベルトバックルの収容構造において、バックル収容孔の内周面とシートベルトバックルの外周面との間に隙間が形成されていると、コイン等の小物が前記隙間から落下してしまう虞がある。
この問題を解消する技術として、従来、シートベルトバックルを収納する袋状のバックル収納部の外周部を、シートクッションの表皮材に形成した開口の周縁部に縫着する技術があった(特許文献1参照)。
前記袋状のバックル収納部の底部中央には、シートベルトバックルに接続したウェビングを挿通させるウェビング挿通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冒頭に記載したシートベルトバックルの収容構造の組み付け工程ではシートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを組み付け、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術では、シートベルトバックルはウェビングを介してフロアと接続しており、シートベルトバックルに自立性がないために、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させるという上記の手段を採用することができなかった。
例えば、前記ウェビングに換え、自立性のある金属製のブラケットを介してシートベルトバックルをフロアに連結し、前記袋状のバックル収納部の底部中央にバックル挿通孔を形成する構造が考えられる。
この構造によれば、シートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを前記ブラケットを介して組み付けておき、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させるとともに、袋状のバックル収納部の底部中央のバックル挿通孔に挿通させることができる。
しかしながら、この構造では、シートベルトバックルの挿入の際に袋状のバックル収納部がシートベルトバックルに突き上げられ、シートクッションのバックル収容孔の上方に突出しやすい。そのために、シートクッションの組み付け後に袋状のバックル収納部をバックル収容孔にシートクッションの上方から押し込まなければならず、作業工数が増えて組み付け作業の作業性が低下する。
【0006】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、バックル収容孔からの物品の落下を防止できる構造を、組み付け作業性を低下させることなく製作できるシートベルトバックルの収容構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、
シートクッションにバックル収容孔が形成され、
フロア側の固定部に固定されたシートベルトバックルが前記バックル収容孔に収容されているシートベルトバックルの収容構造であって、
前記バックル収容孔の内側面及び上側開口の周縁部に、前記バックル収容孔への物品の侵入落下を阻止する阻止壁が立設され、
前記シートベルトバックルは前記バックル収容孔内で前記阻止壁に内嵌し、
前記阻止壁の上部の嵌合壁面が前記バックル収容孔内で前記シートベルトバックルの側面に面接触して、前記阻止壁の上部が上下方向に沿うとともに、前記阻止壁の上端部が前記バックル収容孔の上方に突出していて、
前記阻止壁は、芯材と、前記芯材を挟み込んで覆う一対の阻止壁形成部材とを、前記バックル収容孔の内側面の表皮材に縫着して構成される点にある。(請求項1)
【0008】
この構成によれば、シートクッションの座面に落下してバックル収容孔に向かう物品(例えばコイン等の小物)を、バックル収容孔の上側開口の周縁部に立設された阻止壁で受け止めて、物品がバックル収容孔に侵入することを阻止することができる。
そして、組み付け工程においては、シートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを組み付けておき、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをバックル収容孔に下方から挿入することができる。
この組み付け工程においてシートベルトバックルを袋状のバックル収納部のバックル挿通孔に挿通させる構造では、バックル挿通孔を大きくすると、コイン等の小物がバックル挿通孔を通ってバックル収容孔からシートクッションの下方に落下することから、バックル挿通孔を大きく設定できず、そのために、シートベルトバックルをバックル挿通孔に挿通させにくい不具合がある。
これに対して、本発明の上記構成によれば、袋状のバックル収納部のバックル挿通孔にシートベルトバックルを挿通させることはないから上記の不具合がない。従って、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、前記シートベルトバックルは前記阻止壁に内嵌しているから、バックル収容孔をシートベルトバックルで塞ぐことができる。その結果、バックル収容孔への物品の侵入落下をシートベルトバックルと阻止壁とで防止することができる。(請求項1)
本発明において、
一方の前記阻止壁形成部材の上端部は他方の前記阻止壁形成部材の上端部側に折り返され、
前記他方の阻止壁形成部材の上端部は前記一方の阻止壁形成部材の上端部側に折り返されて、一対の折り返し部同士が互いに縫着され、
前記一対の折り返し部が前記バックル収容孔の上方に突出している構成にすることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記阻止壁は、前記シートクッションの表皮材と同一材質の阻止壁形成部材を前記表皮材に縫着して構成されていると、阻止壁の形状・寸法をバックル収容孔に対応させて自由に変更でき、種々のバックル収容孔の構造に対応できる。また、自然な外観を損なうことがなく、外観品質を向上させることができる。
この種のシートベルトバックルの収容構造では、バックル収容孔に収容されたシートベルトバックルが乗員に当接して異物感を与えることがあることから、シートベルトバックルを下端部側の横軸芯周りに揺動自在に構成し、車両前方側に揺動させてバックル収容孔内に引退させる構造のものがある。
このような構造の場合、バックル収容孔内へのシートベルトバックルの引退を阻止壁が妨げないようにする必要があるが、本発明の上記構成によれば、阻止壁は表皮材と同一材質の部材で形成されており、シートベルトバックルが下端部側の横軸芯周りに揺動回転して阻止壁に当接しても阻止壁が適度に撓むことができるので、シートベルトバックルの揺動回転を阻止壁が妨げることを抑制することができる。
また、シートバックがシートクッションの上に前倒しできるタイプのシートの場合、阻止壁は、シートバックに押されて容易に撓むので、シートバックを前倒しする時の邪魔になることがない。(請求項
【0010】
本発明において、
前記シートクッションの表皮材は前記バックル収容孔に入り込んで前記バックル収容孔の内側面を形成し、
前記バックル収容孔の内側面を形成する表皮材が上下に分割されるとともに、上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部が前記バックル収容孔の径方向で重なるように、前記上側の表皮材の分割端部又は下側の表皮材の分割端部が下方又は上方に延出され、
阻止壁形成部材の下部が前記上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部に挟み込まれて一体に共縫いされ、
前記阻止壁形成部材の上部が前記バックル収容孔の上側開口の周縁部から上方に突出して前記阻止壁を構成していると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0011】
前記阻止壁形成部材の下部が前記上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部に挟み込まれて一体に共縫いされているから、シートクッションの表皮材に対する阻止壁形成部材の縫製強度を強くすることができる。
また、阻止壁の縫製構造を簡素化することができて、使用する阻止壁形成部材の量を少なくすることができるとともに、阻止壁形成部材の縫製長さを短くすることができ、生産品質の安定化、製作コストの低廉化、軽量化を図ることができる。(請求項
【0012】
本発明において、
前記阻止壁形成部材は前記シートクッションの表皮材と同一材質の部材から成ると、次の作用を奏することができる。(請求項
【0013】
阻止壁の形状・寸法をバックル収容孔に対応させて自由に変更でき、種々のバックル収容孔の構造に対応できる。また、自然な外観を損なうことがなく、外観品質を向上させることができる。
この種のシートベルトバックルの収容構造では、バックル収容孔に収容されたシートベルトバックルが乗員に当接して異物感を与えることがあることから、シートベルトバックルを下端部側の横軸芯周りに揺動自在に構成し、車両前方側に揺動させてバックル収容孔内に引退させる構造のものがある。
このような構造の場合、バックル収容孔内へのシートベルトバックルの引退を阻止壁が妨げないようにする必要があるが、本発明の上記構成によれば、阻止壁は表皮材と同一材質の部材で形成されており、シートベルトバックルが下端部側の横軸芯周りに揺動回転して阻止壁に当接しても阻止壁が適度に撓むことができるので、シートベルトバックルの揺動回転を阻止壁が妨げることを抑制することができる。
また、シートバックがシートクッションの上に前倒しできるタイプのシートの場合、阻止壁は、シートバックに押されて容易に撓むので、シートバックを前倒しする時の邪魔になることがない。(請求項
【0014】
本発明において、
前記阻止壁形成部材は上端部に断面円形の玉縁が形成された玉縁材から成ると、更に自然な外観が得られ、デザイン性が向上する。(請求項
【0015】
本発明において、
前記阻止壁形成部材に覆われる芯材が前記阻止壁形成部材と表皮材に共縫いされていると、阻止壁の剛性を強くすることができる。その結果、シートクッションの座面に落下してバックル収容孔に向かう物品(例えばコイン等の小物)を、バックル収容孔の上側開口の周縁部に立設された阻止壁で確実に受け止めることができ、物品がバックル収容孔に侵入することをより阻止しやすくすることができる。しかも、阻止壁の形態が安定し、外観品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
バックル収容孔からの物品の落下を防止できる構造を、組み付け作業性を低下させることなく製作できるシートベルトバックルの収容構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リアシートの斜視図
図2】シートクッションの斜視図
図3】リアシートの縦断側面図
図4】シートベルトバックルの支持構造の斜視図
図5図4のB−B断面図
図6】阻止壁を示す斜視図
図7】第1の別実施形態の断面図(図4のB−B断面に対応する断面図)
図8】第2の別実施形態の断面図(図4のB−B断面に対応する断面図)
図9】第3の別実施形態の斜視図
図10図9のC−C断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に自動車の3人掛け用のリアシート1を示してある。リアシート1は乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の上半身を支持するシートバック3とから成る。シートバック3の上端部には乗員の頭部を支持するヘッドレスト4が連結されている。前記リアシート1には、左席・右席・中央席のいずれの席にも3点式のシートベルト装置が設けられている。
【0020】
また、天井に固定されたベルト巻取り装置から引き出した中央席用のシートベルトの一対のタングを各別に嵌合させる一対の第1シートベルトバックル10が中央席の座面の両側に配置され、左右側壁に配置したシートベルトのタングを嵌合させる左席又は右席用の第2シートベルトバックル20が左右席座面の車両中心寄りの端部にそれぞれ配置されている。
【0021】
シートクッション2はシートフレームとシートクッションパッドとこれらを覆う表皮材52(図5参照)とから成る。そして、図2に示すように、シートクッション2の後端部2Bのうち、シートクッション2の左右席の座面の車両中心寄りの端部に、横断面においてシート前後方向に長い長方形状のバックル収容孔Hが形成されている。シートクッション2の後端部2Bは後端部以外の部分2Aよりも肉厚が薄く設定されている(図3参照)。図5に示すように、前記表皮材52はバックル収容孔Hに入り込んでバックル収容孔Hの内側面を形成している。
【0022】
左側のバックル収容孔Hのバックル収容構造と右側のバックル収容孔Hのバックル収容構造とは左右対称である。以下、左側のバックル収容構造について説明する。図3図6に示すように、バックル収容孔Hの前半部(シート前方側Frの部分)には、フロア5側の第1ブラケット11に固定されて自立した中央席用の第1シートベルトバックル10が収容されている。
【0023】
図3に示すように、第1シートベルトバックル10は下端部側の横軸芯O周りに回転自在に構成されて、第1シートベルトバックル10の一部分(上端部の両コーナー部のうちシート後方側Rrの上端部部分)がバックル収容孔Hから上方に突出した状態と、第1シートベルトバックル10がバックル収容孔H内に引退した状態とに切り換え自在に構成されている。第1シートベルトバックル10の下端部は、第1ブラケット11の上端部の保持部に摩擦保持されている。
【0024】
この構成によれば、第1シートベルトバックル10の一部分がバックル収容孔Hから上方に突出した状態に設定することで、シートベルトのタングを第1シートバック10に挿入係合させやすくすることができる。また、第1シートベルトバックル10がバックル収容孔H内に引退した状態に設定することで、バックル収容孔Hに収容された第1シートベルトバックル10が乗員に当接することを回避でき、第1シートベルトバックル10が乗員に異物感を与えることを防止することができる。
【0025】
そして、図3図4に示すように、フロア5側の第2ブラケット21に一端部を固定されたウェビング22が、第1シートベルトバックル10とシート前後方向に並んでシート後方側Rrに位置するようにバックル収容孔Hに挿通され、第2シートベルトバックル20の基端部がウェビング22の他端部に連結されてバックル収容孔Hの上外側に位置している。
【0026】
例えば、第1シートベルトバックル10と第2シートベルトバックル20がシート幅方向に並んだ構造ではシートクッション2の座面の幅が短くなるが、本実施形態では第1シートベルトバックル10と第2シートベルトバックル20がシート前後方向に並んでいるから、シートクッション2の座面をシート幅方向に広く取ることができる。
【0027】
そして、上記のように、第1シートベルトバックル10はバックル収容孔Hに収容され、第2シートベルトバックル20はウェビング22を介してフロア5に固定され、ウェビング22がバックル収容孔Hに挿通されているから、第1シートベルトバックル10に差し込んだシートベルトのタングと、第2シートベルトバックル20に差し込んだシートベルトのタングとの干渉を回避することができる。
【0028】
図2に示すように、第1ブラケット11と第2ブラケット21は板面がシート幅方向を向く細長い縦板状に形成されている。そして、第1ブラケット11と第2ブラケット21の下端部の折曲した取り付け部12,23同士が上下に重ね合わされ、フロア5にボルトBで共締め固定されて、第1ブラケット11と第2ブラケット21がフロア5から立ち上がっている。
【0029】
第1ブラケット11は、前記取り付け部12を構成する断面L字形の取り付け片13と、この取り付け片13の立ち上がり部に下端部がかしめ固定された上下方向に長い第1ブラケット本体部14とから成り、第2ブラケット21よりもシート前方側Frに位置している。第2ブラケット21は単一の金属板から成り、下端部がL字状に折曲されて、L字状の下端部が取り付け部23に構成されている。
【0030】
そして、前記ウェビング22に樹脂製のブーツ30が外挿されてかしめ固定されるとともにブーツ30がバックル収容孔Hに挿入・嵌合され、ブーツ30と第1シートベルトバックル10がバックル収容孔Hを塞いで、バックル収容孔Hに上方から物品(例えばコイン等の小物)が侵入することを阻止している。
【0031】
図5図6に示すように、前記バックル収容孔Hの上側開口の周縁部H1に、バックル収容孔Hへの物品(例えば、コイン等の小物)の侵入落下を阻止する阻止壁50が上側開口の全周にわたって立設されている。第1シートベルトバックル10は前記阻止壁50に内嵌している。
【0032】
前記阻止壁50は、シートクッション2の表皮材52と同一材質の阻止壁形成部材51を表皮材52に縫着して構成され、阻止壁形成部材51に覆われるカーペットから成る芯材54が阻止壁形成部材51と表皮材52に共縫いされている。符号Lは縫着ラインを示している。
【0033】
前記阻止壁形成部材51と芯材54の表皮材52への縫着について説明すると、図5に示すように、芯材54が、バックル収容孔Hの長手方向に長い長方形状の一対の阻止壁形成部材51に挟み込まれ、これら三者がバックル収容孔Hの内側面の表皮材52の上下複数箇所に縫着されている。
【0034】
一方の阻止壁形成部材51の上端部は他方の阻止壁形成部材51の上端部側に折り返され、他方の阻止壁形成部材51の上端部は一方の阻止壁形成部材51の上端部側に折り返されて、一対の第1折り返し部53同士が互いに縫着されている。一対の第1折り返し部53はバックル収容孔Hの上方に突出している。
【0035】
また、バックル収容孔Hの内側面を形成する表皮材52が上下に分割されるとともに、上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2がバックル収容孔Hの径方向(長径方向)で重なるように、下側の表皮材52の分割端部52T2が上方に延出されて、上側の表皮材52の分割端部52T1よりもバックル収容孔Hの径方向内方側に位置している。
そして、下側の表皮材52の分割端部52T2が上側の表皮材52の分割端部52T1側に折り返され、その第2折り返し部59が上側の表皮材52の分割端部52T1にバックル収容孔Hの内方側から重ね合わされて縫着されている。これにより、バックル収容孔Hの内側面の上端部がバックル収容孔Hのシート幅方向の内方側(バックル収容孔Hの径方向内方側)に膨出し、前記第2折り返し部59に重なる前記第1折り返し部53が上方側ほどバックル収容孔Hのシート幅方向内方側に位置するように傾斜している。
前記バックル収容孔Hの両内側面の下半部は下広がりに形成されている(図5参照)。
【0036】
上記の構成により、第1折り返し部53を第1シートベルトバックル10の上端部に確実に当接させることができ、バックル収容孔Hのシート幅方向の両内側面(内周部に相当)と第1シートベルトバックル10との間の隙間、及び、バックル収容孔Hの両内側面とブーツ30との間の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0037】
前記バックル収容孔Hの左側の内側面に縫着された前記阻止壁形成部材51及び芯材54と、前記バックル収容孔Hの右側の内側面に縫着された前記阻止壁形成部材51及び芯材54とはバックル収容孔Hのシート幅方向の中心に対して左右対称に位置している。
【0038】
前記芯材54を構成するカーペットは、所謂ニードルパンチカーペットと呼ばれるPPなどの樹脂繊維の塊に、返し形状が付いた針(ニードル)を繰返し刺すとともに絡ませて構成され、プレス加工等により平面状に形成されている。前記芯材54はカーペットに限られるものではなく、他の部材で構成されていてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、シートクッション2の座面に落下してバックル収容孔Hに向かう物品(例えばコイン等の小物)を、バックル収容孔Hの上側開口の周縁部H1に立設された阻止壁50で受け止めて、物品がバックル収容孔Hに侵入することを阻止することができる。
そして、組み付け工程においては、シートクッション2より先にフロア5に第1シートベルトバックル10を組み付けておき、シートクッション2をフロア5に上方から載置するに伴なって、第1シートベルトバックル10をバックル収容孔Hに下方から挿入することができる。
この組み付け工程において第1シートベルトバックル10を袋状のバックル収納部のバックル挿通孔に挿通させる構造では、バックル挿通孔を大きくすると、コイン等の小物がバックル挿通孔を通ってバックル収容孔からシートクッションの下方に落下することからバックル挿通孔を大きく設定できず、そのために、第1シートベルトバックル10をバックル挿通孔に挿通させにくい不具合がある。
これに対して、本発明の上記構成によれば、袋状のバックル収納部のバックル挿通孔にシートベルトバックルを挿通させることはないから上記の不具合がない。従って、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0040】
前記阻止壁50は、シートクッション2の表皮材52と同一材質の阻止壁形成部材51を表皮材52に縫着して構成されているから、阻止壁50の形状・寸法をバックル収容孔Hに対応させて自由に変更でき、種々のバックル収容孔Hの構造に対応できる。また、自然な外観を損なうことがなく、外観品質を向上させることができる。
本発明のシートベルトバックルの収容構造では、第1シートベルトバックル10を下端部側の横軸芯O周りに揺動自在に構成していることから、バックル収容孔H内への第1シートベルトバックル10の引退を阻止壁50が妨げないようにする必要があるが、本発明の上記構成によれば、阻止壁50は表皮材52と同一材質の部材で形成されており、第1シートベルトバックル10が下端部側の横軸芯O周りに揺動回転して阻止壁50に当接しても阻止壁50が適度に撓むことができるので、第1シートベルトバックル10の揺動回転を阻止壁50が妨げることを抑制することができる。
また、シートバック3がシートクッション2の上に前倒しできるタイプのシートの場合、シートバック3に押されて阻止壁50は容易に撓むので、シートバック3を前倒しする時の邪魔になることがない。
【0041】
前記阻止壁形成部材51に覆われる芯材54が阻止壁形成部材51と表皮材52に共縫いされているので、阻止壁50の剛性を強くすることができる。その結果、シートクッション2の座面に落下してバックル収容孔Hに向かう物品(例えばコイン等の小物)を阻止壁50で確実に受け止めることができ、物品がバックル収容孔Hに侵入することをより阻止しやすくすることができる。しかも、阻止壁50の形態が安定し、外観品質を向上させることができる。
【0042】
[別実施形態]
以下、本発明の第1の別実施形態と第2の別実施形態と第3の別実施形態を説明する。
図7図10に示すように、第1の別実施形態〜第3の別実施形態では、上記の第1の実施形態と同様に、バックル収容孔Hの内側面を形成する表皮材52が上下に分割されるとともに、上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2がバックル収容孔Hの径方向で重なるように、下側の表皮材52の分割端部52T2が上方に延出されて、上側の表皮材52の分割端部52T1よりもバックル収容孔Hの径方向内方側に位置している。
【0043】
(第1の別実施形態)
図7に示すように、前記阻止壁50は、上端部に断面円形の玉縁55Gが形成された玉縁材55の下端部を表皮材52に縫着して構成されている。この構成によれば、更に自然な外観が得られ、デザイン性が向上する。
前記玉縁材55は、表皮材52と同一の材質の部材を、上端部に断面円形の玉縁55Gが形成されるように折曲して構成されている。そして、前記上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2とに玉縁材55の下端部が挟み込まれて三者が一体に共縫いされている。
詳しくは、前記下側の表皮材52の分割端部52T2が上側の表皮材52の分割端部52T1側に折り返され、その第2折り返し部59と上側の表皮材52の分割端部52T1とで玉縁材55の下端部を挟み込んだ状態で、前記三者が一体に共縫いされている。
前記玉縁材55は表皮材52とは別の材質で構成されていてもよい。
【0044】
(第2の別実施形態)
図8に示すように、上端部に断面円形の玉縁55Gが膨出形成された玉縁材55が樹脂材で押し出し成形され、玉縁材55の平板状の下端部が前記上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2とに挟み込まれて三者が一体に共縫いされている。この構成によれば、更に自然な外観が得られ、デザイン性が向上し、しかも玉縁材55の成形が容易で製作コストを低廉化することができる。
前記下側の表皮材52の分割端部52T2は、前記第1の別実施形態と同様に上側の表皮材52の分割端部52T2側に折り返され、その第2折り返し部59と上側の表皮材52の分割端部52T1とで玉縁材55の平板状の下端部を挟み込んだ状態で、前記三者が一体に共縫いされている。
【0045】
(第3の別実施形態)
図9図10に示すように、下方に折り畳まれた阻止壁形成部材51の下部の端部(下端部)が、前記上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2とに挟み込まれて三者が一体に共縫いされ、阻止壁形成部材51の上部がバックル収容孔Hの上側開口の周縁部H1から上方に突出して前記阻止壁50を構成している。
この構成によれば、阻止壁50の縫製構造を簡素化することができて、使用する阻止壁形成部材51の量を少なくすることができるとともに、阻止壁形成部材51の縫製長さを短くすることができ、生産品質の安定化・製作コストの低廉化・軽量化を図ることができる。
前記下側の表皮材52の分割端部52T2は、前記第1の別実施形態や第2の別実施形態と同様に、上側の表皮材52の分割端部52T1側に折り返され、その第2折り返し部59と上側の表皮材52の分割端部52T1とで阻止壁形成部材51の下端部を挟み込んだ状態で、前記三者が一体に共縫いされている。
【0046】
(1) 前記第1の別実施形態〜第3の別実施形態では、前記阻止壁形成部材51の下端部や玉縁材55の下端部が、前記上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2とに挟み込まれて一体に共縫いされているから、シートクッション2の表皮材52に対する阻止壁形成部材51の縫製強度や、前記表皮材52に対する玉縁材55の縫製強度を強くすることができる。
【0047】
(2) 前記第1の実施形態、及び前記第1の別実施形態〜第3の別実施形態において、上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2がバックル収容孔Hの径方向で重なるように、上側の表皮材52の分割端部52T1が下方に延出されて、下側の表皮材52の分割端部52T2よりもバックル収容孔Hの径方向内方側に位置し、前記三者(上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2と玉縁材55の下端部、又は、上側の表皮材52の分割端部52T1と下側の表皮材52の分割端部52T2と阻止壁形成部材51の下部)が一体に共縫いされていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 シートクッション
5 フロア
10 シートベルトバックル(第1シートベルトバックル)
11 フロア側の固定部(第1ブラケット)
50 阻止壁
51 阻止壁形成部材
52 表皮材
52T1 上側の表皮材の分割端部
52T2 下側の表皮材の分割端部
54 芯材
55 玉縁材
55G 玉縁
H バックル収容孔
H1 バックル収容孔の上側開口の周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10