【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冒頭に記載したシートベルトバックルの収容構造の組み付け工程ではシートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを組み付け、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術では、シートベルトバックルはウェビングを介してフロアと接続しており、シートベルトバックルに自立性がないために、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させるという上記の手段を採用することができなかった。
例えば、前記ウェビングに換え、自立性のある金属製のブラケットを介してシートベルトバックルをフロアに連結し、前記袋状のバックル収納部の底部中央にバックル挿通孔を形成する構造が考えられる。
この構造によれば、シートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを前記ブラケットを介して組み付けておき、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをシートクッションのバックル収容孔に下方から挿入させるとともに、袋状のバックル収納部の底部中央のバックル挿通孔に挿通させることができる。
しかしながら、この構造では、シートベルトバックルの挿入の際に袋状のバックル収納部がシートベルトバックルに突き上げられ、シートクッションのバックル収容孔の上方に突出しやすい。そのために、シートクッションの組み付け後に袋状のバックル収納部をバックル収容孔にシートクッションの上方から押し込まなければならず、作業工数が増えて組み付け作業の作業性が低下する。
【0006】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、バックル収容孔からの物品の落下を防止できる構造を、組み付け作業性を低下させることなく製作できるシートベルトバックルの収容構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、
シートクッションにバックル収容孔が形成され、
フロア側の固定部に固定されたシートベルトバックルが前記バックル収容孔に収容されているシートベルトバックルの収容構造であって、
前記バックル収容孔の内側面及び上側開口の周縁部に、前記バックル収容孔への物品の侵入落下を阻止する阻止壁が立設され、
前記シートベルトバックルは前記バックル収容孔内で前記阻止壁に内嵌し、
前記阻止壁の上部の嵌合壁面が前記バックル収容孔内で前記シートベルトバックルの側面に面接触して、前記阻止壁の上部が上下方向に沿うとともに、前記阻止壁の上端部が前記バックル収容孔の上方に突出してい
て、
前記阻止壁は、芯材と、前記芯材を挟み込んで覆う一対の阻止壁形成部材とを、前記バックル収容孔の内側面の表皮材に縫着して構成される点にある。(請求項1)
【0008】
この構成によれば、シートクッションの座面に落下してバックル収容孔に向かう物品(例えばコイン等の小物)を、バックル収容孔の上側開口の周縁部に立設された阻止壁で受け止めて、物品がバックル収容孔に侵入することを阻止することができる。
そして、組み付け工程においては、シートクッションより先にフロアにシートベルトバックルを組み付けておき、シートクッションをフロアに上方から載置するに伴なって、シートベルトバックルをバックル収容孔に下方から挿入することができる。
この組み付け工程においてシートベルトバックルを袋状のバックル収納部のバックル挿通孔に挿通させる構造では、バックル挿通孔を大きくすると、コイン等の小物がバックル挿通孔を通ってバックル収容孔からシートクッションの下方に落下することから、バックル挿通孔を大きく設定できず、そのために、シートベルトバックルをバックル挿通孔に挿通させにくい不具合がある。
これに対して、本発明の上記構成によれば、袋状のバックル収納部のバックル挿通孔にシートベルトバックルを挿通させることはないから上記の不具合がない。従って、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、前記シートベルトバックルは前記阻止壁に内嵌しているから、バックル収容孔をシートベルトバックルで塞ぐことができる。その結果、バックル収容孔への物品の侵入落下をシートベルトバックルと阻止壁とで防止することができる。(請求項1)
本発明において、
一方の前記阻止壁形成部材の上端部は他方の前記阻止壁形成部材の上端部側に折り返され、
前記他方の阻止壁形成部材の上端部は前記一方の阻止壁形成部材の上端部側に折り返されて、一対の折り返し部同士が互いに縫着され、
前記一対の折り返し部が前記バックル収容孔の上方に突出している構成にすることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記阻止壁は、前記シートクッションの表皮材と同一材質の阻止壁形成部材を前記表皮材に縫着して構成されていると、阻止壁の形状・寸法をバックル収容孔に対応させて自由に変更でき、種々のバックル収容孔の構造に対応できる。また、自然な外観を損なうことがなく、外観品質を向上させることができる。
この種のシートベルトバックルの収容構造では、バックル収容孔に収容されたシートベルトバックルが乗員に当接して異物感を与えることがあることから、シートベルトバックルを下端部側の横軸芯周りに揺動自在に構成し、車両前方側に揺動させてバックル収容孔内に引退させる構造のものがある。
このような構造の場合、バックル収容孔内へのシートベルトバックルの引退を阻止壁が妨げないようにする必要があるが、本発明の上記構成によれば、阻止壁は表皮材と同一材質の部材で形成されており、シートベルトバックルが下端部側の横軸芯周りに揺動回転して阻止壁に当接しても阻止壁が適度に撓むことができるので、シートベルトバックルの揺動回転を阻止壁が妨げることを抑制することができる。
また、シートバックがシートクッションの上に前倒しできるタイプのシートの場合、阻止壁は、シートバックに押されて容易に撓むので、シートバックを前倒しする時の邪魔になることがない。(請求項
3)
【0010】
本発明において、
前記シートクッションの表皮材は前記バックル収容孔に入り込んで前記バックル収容孔の内側面を形成し、
前記バックル収容孔の内側面を形成する表皮材が上下に分割されるとともに、上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部が前記バックル収容孔の径方向で重なるように、前記上側の表皮材の分割端部又は下側の表皮材の分割端部が下方又は上方に延出され、
阻止壁形成部材の下部が前記上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部に挟み込まれて一体に共縫いされ、
前記阻止壁形成部材の上部が前記バックル収容孔の上側開口の周縁部から上方に突出して前記阻止壁を構成していると、次の作用を奏することができる。(請求項
4)
【0011】
前記阻止壁形成部材の下部が前記上側の表皮材の分割端部と下側の表皮材の分割端部に挟み込まれて一体に共縫いされているから、シートクッションの表皮材に対する阻止壁形成部材の縫製強度を強くすることができる。
また、阻止壁の縫製構造を簡素化することができて、使用する阻止壁形成部材の量を少なくすることができるとともに、阻止壁形成部材の縫製長さを短くすることができ、生産品質の安定化、製作コストの低廉化、軽量化を図ることができる。(請求項
4)
【0012】
本発明において、
前記阻止壁形成部材は前記シートクッションの表皮材と同一材質の部材から成ると、次の作用を奏することができる。(請求項
5)
【0013】
阻止壁の形状・寸法をバックル収容孔に対応させて自由に変更でき、種々のバックル収容孔の構造に対応できる。また、自然な外観を損なうことがなく、外観品質を向上させることができる。
この種のシートベルトバックルの収容構造では、バックル収容孔に収容されたシートベルトバックルが乗員に当接して異物感を与えることがあることから、シートベルトバックルを下端部側の横軸芯周りに揺動自在に構成し、車両前方側に揺動させてバックル収容孔内に引退させる構造のものがある。
このような構造の場合、バックル収容孔内へのシートベルトバックルの引退を阻止壁が妨げないようにする必要があるが、本発明の上記構成によれば、阻止壁は表皮材と同一材質の部材で形成されており、シートベルトバックルが下端部側の横軸芯周りに揺動回転して阻止壁に当接しても阻止壁が適度に撓むことができるので、シートベルトバックルの揺動回転を阻止壁が妨げることを抑制することができる。
また、シートバックがシートクッションの上に前倒しできるタイプのシートの場合、阻止壁は、シートバックに押されて容易に撓むので、シートバックを前倒しする時の邪魔になることがない。(請求項
5)
【0014】
本発明において、
前記阻止壁形成部材は上端部に断面円形の玉縁が形成された玉縁材から成ると、更に自然な外観が得られ、デザイン性が向上する。(請求項
6)
【0015】
本発明において、
前記阻止壁形成部材に覆われる芯材が前記阻止壁形成部材と表皮材に共縫いされていると、阻止壁の剛性を強くすることができる。その結果、シートクッションの座面に落下してバックル収容孔に向かう物品(例えばコイン等の小物)を、バックル収容孔の上側開口の周縁部に立設された阻止壁で確実に受け止めることができ、物品がバックル収容孔に侵入することをより阻止しやすくすることができる。しかも、阻止壁の形態が安定し、外観品質を向上させることができ
る。