【実施例1】
【0016】
図1〜
図3は、本発明の実施例1を示す。
【0017】
最初に、供給される軸状部品について説明する。
【0018】
軸状部品としては、電動モータの回転軸、自動車ボディのドアヒンジ軸、自動車の各部パネルに溶接されるプロジェクションボルトなど種々なものが挙げられる。この実施例では、プロジェクションボルトである。
【0019】
このプロジェクションボルトは鉄製であり、
図4に示したものと同じである。よって、
図2においては
図4と同じ符号が記載されている。プロジェクションボルト5の各部寸法は、軸部6の直径と長さはそれぞれ5.5mmと21mm、フランジ部7の直径と厚さはそれぞれ13.5mmと1mm、溶着用突起8の直径と高さはそれぞれ7.5mmと1.3mmである。
【0020】
つぎに、供給装置全体の構造を説明する。
【0021】
供給装置全体としては、定置式溶接機に装着されるもの、ロボット装置で動作するCガンやXガンに装着されるもの等種々なものがある。
図1は、前者の定置式溶接機に装着される場合である。供給装置は符号100で示されている。
【0022】
詳しくは図示していないが、定置式溶接機200は、床から起立している支柱17に水平方向に延びている支持アーム18が固定され、この支持アーム18に固定電極19が取り付けられている。固定電極19の中央部に鉛直方向の受入孔20が形成され、供給装置100の動作により受入孔20にボルト5の軸部6が挿入される。したがって、ボルト5の供給の目的箇所は、受入孔20である。
【0023】
静止部材21は、支柱17または支柱17に一体化された部材である。この静止部材21に支持部材22が固定されている。挿入駆動手段である挿入エアシリンダ23内をピストン24が摺動し、そのピストンロッド25が支持部材22に固定されている。ピストン24は静止状態であり、ピストン24の上側に上昇室26、下側に下降室27が形成されている。上昇室26または下降室27に作動空気が供給されると、挿入エアシリンダ23が相対的に進退する。この進退方向は鉛直方向に設定してある。符号28、29は、上昇室26と下降室27に接続されている作動空気の給排通路管である。
【0024】
挿入エアシリンダ23は、鉛直方向に延びている支持基部材31にボルト付けなどで固定されている。この支持基部材31は、枠状部材や板状部材などで形成されるが、ここでは後者の板状部材であり、分厚いステンレス鋼製の板材で作られている。
【0025】
支持基部材31の上部に、進退駆動手段であるエアシリンダ32が斜め方向の姿勢で固定されている。このエアシリンダ32のピストンロッドが供給ロッドである。供給ロッドの先端に固定されている保持ヘッドは、
図4において説明したものと同じなので、
図1〜
図3の保持ヘッドには
図4と同じ符号を記載して、各部の詳細な構造の説明は省略してある。
【0026】
保持ヘッドの機能は軸状部品を保持して目的箇所へ移送するものであるから、
図2に示した構造態様以外に、種々なものを採用することができる。たとえば、フランジ部7を板ばねで挟み付けてボルト保持をするものや、フランジ部7を空気吸引で保持するもの等が採用できる。
【0027】
パーツフィーダ33からボルト5が1本ずつ送出されるようになっており、そのために搬送空気の噴射ノズル34が配置してある。この噴射空気によって送出されたボルト5は、ウレタン樹脂などで作られた供給ホース35を通って保持ヘッド2に供給される。
【0028】
搬送空気で搬送されたボルト5は、供給ホース35内を高速で移送されて保持ヘッド2の天井面10で受け止められるので、天井面10には大きな衝撃力が作用する。このため、天井面10に圧痕が形成されて、フランジ部7が正しい姿勢で天井面10に着座できなくなる虞がある。このような問題を回避するために、停止通過ユニット36を設けて、高速で移送されてくるボルト5を一旦停止し、天井面10に対する衝撃を緩和するようになっている。
【0029】
つぎに、停止通過ユニットについて説明する。
【0030】
断面矩形の細長いケース本体37が支持基部材31に固定され、その内部に断面矩形の摺動空間38が形成されている。この摺動空間38内に、断面矩形の細長い開閉部材39が進退自在な状態ではめ込んである。開閉部材39に中実の停止部40と、孔によって形成された通過部41が設けてある。開閉部材39を進退させるエアシリンダ42が支持基部材31に固定され、そのピストンロッド43が開閉部材39に結合してある。エアシリンダ42やケース本体37の配置姿勢は、開閉部材39が水平方向に進退するように設定してある。
【0031】
入口側の部品供給管44に前記供給ホース35が接続してあり、出口側の部品供給管が前述の部品供給管3である。部品供給管44と部品供給管3は同軸上に配置してあり、摺動空間38に開口している。
図1(B)に示すように、停止部40が部品供給管44と部品供給管3に合致して両部品供給管44と3が遮断されているときに、ボルト5が2点鎖線図示のように搬送空気で移行してくると、ボルト5は停止部40で一旦停止し衝撃力がここで受け止められる。
【0032】
ついで、エアシリンダ42の動作で開閉部材39が右方へ移動して通過部41が部品供給管44と3に合致すると、ボルト5は搬送空気によって保持ヘッド2に低速で送り込まれ、フランジ部7が天井面10に着座する。この状態でボルト5は、永久磁石11で吸引されて落下しないようになる。
【0033】
軸部6の先端部が受入孔20に進入した段階で軸部6全体を受入孔20内に挿入するために、空気噴射を利用するようになっている。保持ヘッド2に空気通路45が形成され、その一端が収容凹部12に開口し、他端に伸縮可能なコイル状の空気ホース46が接続され、止め金具16を経て空気切換弁(図示していない)に接続されている。
【0034】
つぎに、部品供給動作を説明する。
【0035】
図1および
図2は、保持ヘッド2が部品供給管3の出口開口部4に合致し、空気搬送によって部品供給管3を移動してきたボルト5が保持ヘッド2の天井面10に吸引保持がなされている状態を示している。ここでエアシリンダ32が動作して供給ロッド1が進出し、軸部6の下端部が通過空間13を通り抜け、軸部6が受入孔20と同軸になった箇所で停止する。ついで、挿入エアシリンダ33の下降室27に作動空気が供給されると、シリンダ23、支持基部材31、エアシリンダ32、保持ヘッド2、軸部6が一体になって下降し、軸部6の先端部が受入孔20に進入する。これと同時に、空気通路45から空気噴射がなされて、永久磁石11の吸引力を上回った空気押し出し力でボルト5が受入孔20内へ挿入されて、ボルト供給が完了する。
【0036】
図示していないが、ボルト5が受入孔20内に挿入されると、ついで鋼板部品が溶着用突起8の上に載せられ、その後、可動電極が進出してきて鋼板部品を加圧し、溶接電流が通電されて溶接が完了する。
【0037】
供給ロッド1は矢線15で示すように、斜め上方へ進出するようになっているが、これを
図2や
図4の2点鎖線で示すように、水平方向の矢線30で示す方向へ送出してもよい。
【0038】
つぎに、排気通路について説明する。
【0039】
図4(B)に示したようなボルト5の異常姿勢を防止するために、排気通路が設けられている。この排気通路の設置態様には種々なものがあるが、先ずは、
図2(B)に示したものを説明する。前述の通り通過空間13は軸部6が送出される側の部品供給管3の端部に形成されている。(B)図のものは、この通過空間13の反対側、すなわち軸部6の送出方向(矢線48の方向)とは逆の側の部品供給管3の端部を切り欠いて管端側に開放した状態で形成してある。符号47が排気通路を示している。
【0040】
図2(A)に示すように、保持ヘッド2の円形の保持凹部9が部品供給管3の出口開口部4に合致しているときには、噴射ノズル34からの搬送空気流が軸部6の下端面に当たり、これによって分散した空気流は通過空間13と排気通路47の両方からほぼ均一に流出する。したがって、このときには軸部6を傾ける力成分が存在しないので、
図4にしたがって述べたようなボルト5の傾き現象は発生しない。
【0041】
さらに、保持ヘッド2が進出し始めたとき、軸部6は通過空間13に近づくとともに排気通路47から遠ざかり、同時に保持ヘッド2、すなわち保持凹部9の開口部が出口開口部4からずれた位置となって出口開口部4が開放された状態になるので、搬送空気は主として排気通路47と出口開口部4から外部へ流出する。したがって、軸部6を傾けようとする空気流はわずかな量となり、軸部6の傾斜に至ることがなく、ボルト5は正しい姿勢で保持ヘッド2に保持された状態で目的箇所である受入孔20に供給される。
【0042】
図2(C)に示した排気通路47は2つ設けたもので、通過空間13と2つの排気通路47が120度間隔で形成されている。また、
図2(D)に示した排気通路47は3つ設けたもので、通過空間13と3つの排気通路47が90度間隔で形成されている。搬送空気が分散して排気通路47や通過空間13から流出する現象は、(B)に示したものと同様であるが、排気通路47が複数設けてあることによって、軸部6に対する空気偏流を一層少なくすることができる。
【0043】
つぎに、空気流について説明する。
【0044】
上記実施例では、ボルト5に吹き当たる空気流は、噴射ノズル34からの空気流が停止通過ユニット36の通過部41を経たもので、噴射ノズル34からの空気流が、供給ロッド1が進出し始めるときにも継続しているような空気制御とされている。他方、噴射ノズル34からの空気噴射を、ボルト5が保持ヘッド2に保持された時点で停止する場合もある。このような噴射制御がなされている場合であっても、噴射ノズル34からの空気はボルト5の搬送方向の後方側において、供給ホース35内で圧縮された状態となる。このため、空気噴射を停止した後も、圧縮空気の膨張現象で保持ヘッド2の移動開始直後に空気流として存続した現象が発生する。
【0045】
ボルト5が保持ヘッド2に到達した後においても、空気流が継続している要因として、上述のような現象がある。上記実施例では、空気流が存在している要因にかかわらず、空気偏流による弊害を回避している。
【0046】
つぎに、本供給装置がロボット装置で動作するものを説明する。
【0047】
図3は、ロボット装置49にC型ガン50が結合されている場合である。上アーム部材の先端に可動電極52が設けられ、下アーム部材53に前述のものと同じ固定電極19が取り付けられ、前述のものと同様の受入孔20が設けてある。下アーム部材53に下方に延びた取り付け片54が設けられ、ここに
図1(A)に示した供給装置100が取り付けてある。取り付け片54は、
図1における静止部材21に相当している。
【0048】
受入孔20にボルト5が供給されると、ロボット装置49の動作で相手方の鋼板部品の所定位置にC型ガン全体が移動し、その後、可動電極52で溶着用突起8に鋼板部品が加圧されて、通電・溶接がなされる。
【0049】
上記実施例では、保持ヘッド2が矢線15で示す斜め上方に進出するものであるが、
図2に2点鎖線で示すように、矢線30で示す水平方向に進出させるものであってもよい。
【0050】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記各種の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0051】
上述の供給ロッドの進退動作や空気噴射などの動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0052】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0053】
前記保持ヘッド2が部品供給管3の出口開口部4に合致し、空気搬送によって部品供給管3を移動してきたプロジェクションボルト5が保持ヘッド2に保持される。この状態で搬送空気がボルト5に吹き当てられても、搬送空気は通過空間13と排気通路47の両方へ流れるので、ボルト5を部品供給管3に対して傾けようとする空気偏流が発生しなくなる。このため、保持ヘッド2が進出し始めたとき、保持ヘッド2によるボルト5の保持に支障を来すことが回避でき、ボルト5が保持ヘッド2から落下したり、異常な姿勢でボルト5が保持ヘッド2に保持されたりすることがなく、正確な部品供給が確保できる。
【0054】
また、保持ヘッド2が進出し始めたとき、軸部6は通過空間13に近づくとともに排気通路47から遠ざかり、同時に保持ヘッド2が出口開口部4からずれた位置となって出口開口部4が開放された状態になるので、搬送空気は主として排気通路47と出口開口部4から流出する。したがって、軸部6を傾けようとする空気流はわずかな量となり、軸部6の傾斜には至らないで、正確なボルト姿勢が維持されたままボルト供給がなされる。
【0055】
停止通過ユニット36の停止部40でボルト5が一旦停止ししているときには、ボルト5の後方側の空気ホース内空気圧が上昇しているので、通過部41が開通しても、圧縮空気の膨張によって空気流が継続している。停止通過ユニット36を使用している場合には、この継続流がボルト5の保持姿勢を狂わせるのであるが、上記実施例では排気通路47を配置することによって、ボルト5の保持姿勢を健全に維持することが可能である。
【0056】
ボルト5のフランジ部7が保持ヘッド2の天井面10に永久磁石11の吸引力で着座しているとともに、空気噴射でボルト5を保持ヘッド2から受入孔20内へ送出する場合には、空気圧を低くして使用空気量を節約するために、永久磁石の吸引力を小さくすることが行われる。このような場合には、ボルト5に対する偏流空気流がわずかであっても、ボルト5が異常傾斜をするおそれがある。上記実施例では排気通路47を配置することによって、上記フランジ吸着の場合であっても、前記偏流空気の発生を回避できるので、噴射空気量をできるだけ少なくして、経費を節減することができる。