(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第3実施形態の各々を例に挙げ、各図を参照しながら説明する。
【0023】
1.第1実施形態
[プリンターの全体構成]
まず第1実施形態について、タンデム型デジタルカラープリンター(画像形成装置の一形態であり、以下、単に「プリンター」という)を例に挙げて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るプリンター10の全体構成図である。なお、以下の説明で用いる上下左右の方向は、
図1に示す通りであるとする。プリンター10は、その内部のほぼ中央部に中間転写ベルト12を備えている。中間転写ベルト12は、半導電性材料からなっており、3つのローラ(14,16,18)の外周部に支持され、矢印A方向に回転駆動されるようになっている。
【0025】
中間転写ベルト12の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーにそれぞれ対応する4つの作像ユニット(20Y,20M,20C,20K)が、中間転写ベルト12に沿って並んで配置されている。
【0026】
各作像ユニット(20Y,20M,20C,20K)は、ドラム状の感光体(22Y,22M,22C,22K)をそれぞれ有している。各感光体(22Y,22M,22C,22K)の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器(24Y,24M,24C,24K)と、プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)と、現像装置(28Y,28M,28C,28K)と、一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)と、クリーナー(32Y,32M,32C,32K)とがそれぞれ配置されている。
【0027】
帯電器(24Y,24M,24C,24K)は、感光体(22Y,22M,22C,22K)の表面を帯電させる。プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)は、帯電した感光体表面を各色画像データに応じて露光することにより、静電潜像を形成する。現像装置(28Y,28M,28C,28K)は、感光体表面に形成された静電潜像を各色トナーで現像して、トナー画像とする。
【0028】
一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)は、中間転写ベルト12を挟んで各感光体(22Y,22M,22C,22K)に対向する位置に、中間転写ベルト12の内側に接触してそれぞれ設けられ、感光体表面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト12上に一次転写する。クリーナー(32Y,32M,32C,32K)は、一次転写後に感光体表面に残留するトナーを回収して、クリーニングする。
【0029】
プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)は、感光体の軸方向と平行な主走査方向に並べられた多数のLEDから構成されている。中間転写ベルト12のローラ18で支持された部分の外側には、二次転写ローラ34が圧接されている。
【0030】
二次転写ローラ34と中間転写ベルト12との接触部は、転写領域36となっている。二次転写ローラ34は、図示しない退避機構により、中間転写ベルト12と非接触となる位置へ退避可能になっている。
【0031】
一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)には、不図示の電源により一次転写電圧が印加される。この一次転写電圧の作用により、感光体(22Y,22M,22C,22K)の表面に形成された各色トナー画像が静電的に引き付けられて、中間転写ベルト12上に一次転写される。
【0032】
また、二次転写ローラ34は不図示の電源により二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト12を支持するローラ18は接地されている。この二次転写電圧の作用により、中間転写ベルト12上に形成されたトナー画像は、転写領域36に搬送されてきた用紙Sに静電的に引き付けられて二次転写される。
【0033】
中間転写ベルト12のローラ16で支持された部分には、クリーナー38(クリーニングブラシローラ)が圧接されている。クリーナー38は、二次転写後に中間転写ベルト12上に残留するトナーを掻きとって、廃トナーボックス40内に回収する。クリーナー38もまた、二次転写ローラ34と同様に、図示しない退避機構により中間転写ベルト12と非接触となる位置へ退避可能になっている。
【0034】
プリンター10の下部には、給紙カセット42が着脱可能に配置されている。給紙カセット42内に積載収容された用紙Sは、給紙ローラ44の回転によって最上部のものから1枚ずつ搬送路46に送り出されることになる。なお、
図1に示す破線矢印は、用紙Sの進む方向を表している。
【0035】
搬送路46は、給紙カセット42から、タイミングローラ対48のニップ部、二次転写領域36、定着ローラ対61、および排出ローラ対62を通って排紙トレイ11まで伸びている。タイミングローラ対48は、給紙カセット42から送られてきた用紙Sを、中間転写ベルト12上の画像と同期をとって転写領域36に給紙するためのものである。
【0036】
タイミングローラ対48の近傍には、タイミングセンサー52が配置されている。タイミングセンサー52は、給紙カセット42から搬送路46へ送り出された用紙Sの先端がタイミングローラ対48でニップされたことを検出するためのものである。用紙Sの先端が検出されると、タイミングローラ対48はその回転を一旦停止し、その後、中間転写ベルト12上のトナー画像と同期をとって用紙Sを転写領域36に給紙する。
【0037】
また、タイミングローラ対48の一方のローラ48aに対向して、紙厚センサー54が配置されている。紙厚センサー54は、タイミングローラ対48に用紙先端がニップされたときの前記ローラ48aの移動量を検知するもので、これにより用紙が普通紙であるか、厚みのある厚紙またはOHPシートであるかを判別できるようになっている。
【0038】
転写領域36においてトナー画像が転写された用紙Sは、トナー画像を用紙に定着させる定着ローラ対61に搬送される。定着ローラ対61では、例えばヒータにより加熱された定着ベルトが用いられ、用紙Sへトナー画像の定着がなされる。
【0039】
定着ローラ対61と排出ローラ対62の間には、用紙Sが搬送される湾曲搬送経路60が設けられている。片面印刷を行う際、湾曲搬送経路60に送り込まれた用紙Sは、排出ローラ対62によって排紙トレイ11へ排出される。また、排出ローラ対62の近傍には、スイッチバックローラ対63と、スイッチバックローラ対63から送り込まれた用紙Sを転写領域36へ戻すスイッチバック経路64が設けられている。
【0040】
スイッチバックローラ対63は、両面印刷を行う際に、一方の面だけに印刷された状態の用紙Sをスイッチバック経路64に送り込む。これにより、一方の面だけに印刷された用紙Sを転写領域36へスイッチバックさせ、他方の面に次のトナー画像を転写させることが出来る。他方の面にもトナー画像が転写された後、その用紙Sは、定着ローラ対61、湾曲搬送経路60、および排出ローラ対62を経て排紙トレイ11へ排出される。
【0041】
[プリンターの動作概略]
次に、以上の構成からなるプリンター10の動作について説明する。外部装置(例えばパソコン)から両面印刷または片面印刷の実行指示がなされると、プリンター10は印刷の動作を開始する。また、このときプリンター10には、画像情報も入力される。プリンター10は、入力された画像情報をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成し、この信号をプリントヘッド用LEDドライブ回路に伝達する。
【0042】
このドライブ回路は、入力されたデジタル信号に基づいて、各プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)を発光させて露光を行う。この露光は、各プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)の順にそれぞれ時間差をもって行われる。これにより、各感光体(22Y,22M,22C,22K)の表面に各色用の静電潜像がそれぞれ形成される。
【0043】
各感光体(22Y,22M,22C,22K)上に形成された静電潜像は、各現像装置(28Y,28M,28C,28K)によりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。そして各色のトナー画像は、正極性の一次転写電圧が印加された各一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)の作用により、矢印A方向に移動する中間転写ベルト12上に順次重ね合わせて一次転写される。
【0044】
このようにして、中間転写ベルト12上に形成された重ね合わせトナー画像は、中間転写ベルト12の移動にしたがって転写領域36に達する。重ね合わされた各色トナー画像は、一次転写電圧と同極性の二次転写電圧が印加された二次転写口−ラ34の作用により、転写領域36を通過する用紙Sに一括して二次転写される。なお、用紙Sは、給紙カセット42から搬送路46に送り出されて、タイミングローラ対48の駆動により、上記転写領域36を通過する。二次転写後に中間転写ベルト12上に残留するトナーは、正極性のクリーニング電流が印加されたクリーナー38の作用により回収され、クリーニングユニットに移動する。
【0045】
トナー画像が二次転写された用紙Sは、搬送路46を通って定着ローラ対61に送られ、定着ローラ対61を通過することにより、トナー画像が用紙Sに加熱定着される。その後、用紙Sは湾曲搬送経路60へ送られることになる。
【0046】
カラー画像形成動作はこのようにして行われるが、モノクロ画像の場合には入力されたモノクロ画像データに基づき、作像ユニット20Kだけが動作して中間転写ベルト12上にブラックトナー画像が形成される。その後は同様に、ブラックトナー画像は転写領域36で用紙Sに二次転写され、定着ローラ対61で加熱定着されて、用紙Sが湾曲搬送経路60へ送られる。
【0047】
[湾曲搬送経路の周辺の詳細構成]
次に、湾曲搬送経路60の周辺の詳細構成について説明する。
図2は、湾曲搬送経路60の周辺(
図1にXで示す部分)の構成図である。本図に示すように湾曲搬送経路60の周辺には、先述した定着ローラ対61、排出ローラ対62、スイッチバックローラ対63、およびスイッチバック経路64に加え、上流側可動ガイド65a、下流側可動ガイド65b、および排出センサー66が設けられている。
【0048】
なお、以下の説明では、上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bを合わせて「可動ガイド65」と称することがある。
図2に示すように湾曲搬送経路60は、搬送される用紙Sの厚み方向に湾曲した搬送経路であり、内周壁60a(内周側の壁)と、外周壁(外周側の壁)に相当する可動ガイド65とによって形成されている。以下、湾曲搬送経路60の外周壁のことを、単に「外周壁」と称することがある。
【0049】
湾曲搬送経路60の上流側には定着ローラ対61が配置され、下流側には排出ローラ対62が配置されている。湾曲搬送経路60においては、概ね、
図2に破線矢印で示すように用紙Sが搬送されることになる。なお、本願での「上流側」および「下流側」の用語は、特に断りの無い限り、用紙Sを搬送する流れについての上流側および下流側を指す。
【0050】
湾曲搬送経路60は、上流側から下流側へ見て、概ね、上方向から左方向へ向きが変わるように湾曲している。湾曲搬送経路60が設けられていることにより、定着ローラ対61から垂直方向へ搬送されてきた用紙Sの搬送方向を水平方向に変え、用紙Sを排紙トレイ11へ寝かせるように適切に排紙させることが可能である。
【0051】
可動ガイド65は、第1位置から第3位置の各々に移動可能であり、第1位置にあるとき(
図2に示す状態のとき)に外周壁を形成する。このときに可動ガイド65は、
図2に破線矢印で示す通り、用紙Sが排出ローラ対62へ搬送されるように、定着ローラ対61から送り込まれた用紙Sの先端をガイドする。
【0052】
なお、第1位置のとき、上流側可動ガイド65aは、定着ローラ対61の近傍に設けられた回動支点65a1から、外周壁のほぼ半分(上流側寄りの部分)を形成するように伸びた形態となっている。また、同じく第1位置のとき、下流側可動ガイド65bは、排出ローラ対62の近傍に設けられた回動支点65b1から、外周壁のほぼ半分(下流側寄りの部分)を形成するように伸びた形態となっている。
【0053】
ここで、可動ガイド65を移動させるための機構について説明する。上流側可動ガイド65aは、回動支点65a1を中心にして回動可能である。また、下流側可動ガイド65bは、回動支点65b1を中心にして回動可能である。なお、上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bの各自由端近傍は、互いに立体交差可能となるように、例えば櫛型の形状となっている。
【0054】
また、可動ガイド65の近傍において、用紙Sの搬送を妨げない所定位置(例えば用紙Sの通紙領域より奥側の位置)には、
図3に示すように、可動ガイド65の位置を変えるための駆動系として、カム67、モーター68、および歯車69などが設けられている。
【0055】
カム67は、モーター68の回転力が歯車69を介して伝わることによって回動支点67aを中心に回動し、可動ガイド65を第1位置に維持する状態、可動ガイド65を第2位置に維持する状態、および、可動ガイド65を第3位置に維持する状態のそれぞれに切替可能である。なお、上流側可動ガイド65aは、第1位置および第2位置にあるとき、不図示の位置決め部材へ当接して位置決めされている。また、下流側可動ガイド65bは、カム67へ付勢されている。
【0056】
図4は、可動ガイド65が第2位置にある場合の、湾曲搬送経路60周辺の構成を示している。上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bそれぞれの自由端側が、湾曲搬送経路60から半径方向外方に退避する方向へ動くことにより、可動ガイド65は第1位置から第2位置へ移動する。
【0057】
図5は、可動ガイド65が第1位置にある状態(破線で示す状態)と第2位置にある状態(実線で示す状態)を、対比表示させたものである。本図に示すように第2位置は、外周壁における湾曲の頂点部分(湾曲した領域の中央部分に相当し、本実施形態の場合には、上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bが近接した部分)が、着色矢印で示す分だけ第1位置より退避した位置である。
【0058】
図6は、可動ガイド65が第3位置にある場合の、湾曲搬送経路60周辺の構成を示している。可動ガイド65が第3位置にあるとき、下流側可動ガイド65bの自由端側は、湾曲搬送経路60の内周壁60aに近接している。そのため
図6に破線矢印で示すように、定着ローラ対61から湾曲搬送経路60に送られた用紙Sは、上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bの間を通って、スイッチバックローラ対63に搬送される。そしてスイッチバックローラ対63により、用紙Sはスイッチバック経路64に送られ、転写領域36へ戻されることになる。
【0059】
また、排出センサー66は、湾曲搬送経路60の上流寄りの所定位置に配置されており、その位置を通過する用紙Sを検出する。プリンター10は、排出センサー66の検出結果に基づいて、用紙Sの先端が当該位置を通過するタイミングを認識することが可能である。
【0060】
[可動ガイドの位置制御]
図7は、可動ガイド65の位置制御に関する系統のブロック図である。本図に示すようにプリンター10には、可動ガイド65の位置制御を行う制御部71、情報の入出力に関わるI/O[Input/Output]部72、および可動ガイド65の駆動に関わる駆動系73が設けられている。
【0061】
制御部71は、CPU、ROM、およびRAMを有しており、I/O部72を介して駆動系73へ指示信号を与えることにより、可動ガイド65の位置を適切に制御する。なお、駆動系73には、先述したカム67、モーター68、および歯車69の他、制御部71の指示に従ってモーター68を駆動する駆動回路などが含まれる。また、制御部71は、I/O部72を介して、排出センサー66の検出結果の情報を取得する。
【0062】
次に、印刷実行時に行われる可動ガイド65の位置制御の内容について、
図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、本実施形態では、通常時、可動ガイド65は第1位置に維持されているとする。
【0063】
制御部71は印刷実行の指示を受けると、その指示が両面印刷と片面印刷の何れの実行指示であるかを識別する(ステップS1)。両面印刷の実行指示である場合(ステップS1のYes)、制御部71は、可動ガイド65を第3位置へ移動させる(ステップS2)。
【0064】
これにより可動ガイド65は、
図6に示す姿勢となる。その後、制御部71は、用紙Sがスイッチバック済みとなるタイミングT1まで、可動ガイド65をその姿勢に維持させる(ステップS3)。
【0065】
タイミングT1が到来するまでには、
(1)転写領域36において用紙Sの一方の面にトナー画像が転写され、
(2)定着ローラ対61によって用紙Sに当該トナー画像が定着され、
(3)用紙Sが上流側可動ガイド65aと下流側可動ガイド65bの間を通ってスイッチバックローラ対63に到達し、
(4)スイッチバックローラ対63によって用紙Sがスイッチバックされる
という過程を経ることになる。
【0066】
タイミングT1が到来すると(ステップS3のYes)、制御部71は、可動ガイド65を第1位置へ移動させる(ステップS4)。これにより可動ガイド65は、
図2に示す姿勢となる。その後、制御部71は、用紙Sが排出ローラ対62へ噛み込むタイミングT2まで、可動ガイド65をその姿勢に維持させる(ステップS5)。
【0067】
タイミングT2が到来するまでには、
(5)転写領域36において用紙Sの他方の面にトナー画像が転写され、
(6)定着ローラ対61によって用紙Sに当該トナー画像が定着され、
(7)用紙Sの先端が湾曲搬送経路60を通って排出ローラ対62に到達する
という過程を経ることになる。
【0068】
タイミングT2が到来すると(ステップS5のYes)、制御部71は、可動ガイド65を第2位置へ移動させる(ステップS6)。これにより可動ガイド65は、
図4に示す姿勢となる。その後、制御部71は、用紙Sの排出が完了するタイミングT3まで、可動ガイド65をその姿勢に維持させる(ステップS7)。
【0069】
タイミングT3が到来するまでには、
(8)排出ローラ対62の作用により、用紙Sが排紙トレイ11へ向けて搬送される
という過程を経ることになる。この際、第2位置にある可動ガイド65は第1位置に比べて半径方向外方に退避しているため、用紙Sが可動ガイド65と摺ることは極力回避される。
【0070】
タイミングT3が到来すると(ステップS7のYes)、制御部71は、可動ガイド65を第1位置へ移動させる(ステップS8)。これにより可動ガイド65は、通常の位置へ戻ることになる。その後、制御部71は、印刷JOBが終了したか否かを判別し(ステップS9)、印刷JOBが終了していなければ(ステップS9のNo)、先述したステップS1の処理を繰返す。一方、印刷JOBが終了していれば(ステップS9のYes)、今回の印刷は終了する。
【0071】
また、制御部71は、片面印刷の実行指示を受けた場合(ステップS1のNo)、用紙Sの排出が完了するタイミングT4を待機する(ステップS10)。タイミングT4が到来すると(ステップS10のYes)、制御部71は先述したステップS9の処理を行う。
【0072】
片面印刷の場合には、用紙Sの一方の面(可動ガイド65には対向しない面)にだけトナー画像が転写され、トナー画像が可動ガイド65に触れることは殆どない。そのため上述の通り、可動ガイド65を第1位置から第2位置へ移動させる処理(ステップS6に相当する処理)を省略しても大きな問題とはならない。但し、用紙Sが排出ローラ対62によって排出される際、用紙Sが出来るだけ可動ガイド65と摺れないことが、より望ましいと言える。この観点から、片面印刷の場合にも、可動ガイド65を第1位置から第2位置へ移動させる処理が実行されるようにしても良い。
【0073】
なお、制御部71は、上述した各タイミング(T1〜T4)を、排出センサー66の検出結果に基づいて認識することが可能である。すなわち、プリンター10の仕様等から、排出センサー66によって用紙Sの先端が検出される時点から各タイミング(T1〜T4)に至るまでの時間は、予め判明している。制御部71には当該時間の情報が格納されており、制御部71は、当該情報と排出センサー66の検出結果に基づいて、各タイミング(T1〜T4)を認識することが可能である。これにより、先述したステップS3、S5、S7、およびS10の処理が適切に行われる。
【0074】
上述の通りプリンター10は、用紙Sの両面に印刷を行う両面印刷動作が可能であり、この両面印刷動作として、
(A)転写領域36にて、用紙Sの一方の面にトナー画像を転写する第1転写処理と、
(B)可動ガイド65の位置を第3位置として第1転写処理済みの用紙Sを転写領域36へ戻すスイッチバック処理と、
(C)転写領域36にて、戻された用紙Sの他方の面にトナー画像を転写する第2転写処理と、
(D)可動ガイド65の位置を第1位置として第2転写処理済みの用紙Sを排出ローラ対62へ搬送し、排出ローラ対62へ用紙Sの先端を噛み込ませたときに可動ガイド65を第2位置へ移動させる排出処理と、
を含む各処理を行うようになっている。
【0075】
また、可動ガイド65は外周壁を形成し、第2位置のときには第1位置のときに比べて湾曲の頂点部分が半径方向外方に退避している。このような特徴を有する可動ガイドの具体的形態としては、上記の形態に限られず、その他の各種形態が採用され得る。以下、上記とは異なる形態の可動ガイドが採用された実施形態として、第2実施形態と第3実施形態を例に挙げて説明する。
【0076】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点を置き、共通する点については説明を省略することがある。
【0077】
図9は、本実施形態における湾曲搬送経路60周辺の構成図である。本図に示す可動ガイド65xは、第1実施形態の可動ガイド65とは異なる形態となっている。なお、本実施形態は、用紙Sをスイッチバックさせる機構が省略された形態(例えば、片面印刷のみを行う形態)となっていても良く、用紙Sをスイッチバックさせる機構が不図示の箇所に設けられた形態となっていても良い。
【0078】
可動ガイド65xは、排出ローラ対62の近傍に設けられた回動支点65x1を中心に回動可能であり、第1位置にある状態(
図9に示す状態)にて湾曲搬送経路60の外周壁を形成している。この状態の可動ガイド65xは、用紙Sが排出ローラ対62へ搬送されるように、定着ローラ対61から送り込まれた用紙Sの先端をガイドする。
【0079】
図10は、可動ガイド65xが第1位置から第2位置へ移動する様子を示している。本図に示すように、第1位置の可動ガイド65xは、回動支点65x1を中心に白抜矢印で示すように回動することで、第2位置に移動する。第2位置の可動ガイド65xは、第1位置のときに比べて、外周壁の湾曲の頂点部分が半径方向外方に退避している。
【0080】
そのため第1実施形態の場合と同様に、用紙Sが排出ローラ対62に噛み込まれたときに、可動ガイド65xが第1位置から第2位置へ移動するようにして、用紙Sが出来るだけ可動ガイド65xと摺れないようにすることが可能である。
【0081】
図11は、可動ガイド65xを移動させるための機構を示している。本図に示すように、可動ガイド65xの位置を変えるための駆動系として、カム67x、モーター68x、および歯車69xが設けられている。当該駆動系は、用紙Sの搬送を妨げない位置に配置されている。
【0082】
カム67xは、モーター68xの回転力が歯車69xを介して伝わることによって回動支点67x1を中心に回動し、可動ガイド65xを第1位置に維持する状態と第2位置に維持する状態とのそれぞれに切替可能である。本実施形態では、モーター68xの駆動を制御することにより、可動ガイド65xの位置制御が可能である。
【0083】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点を置き、共通する点については説明を省略することがある。
【0084】
図12は、本実施形態における湾曲搬送経路60周辺の構成図である。本図に示す可動ガイド65yは、第1実施形態の可動ガイド65とは異なる形態となっている。なお、本実施形態は、用紙Sをスイッチバックさせる機構が省略された形態(例えば、片面印刷のみを行う形態)となっていても良く、用紙Sをスイッチバックさせる機構が不図示の箇所に設けられた形態となっていても良い。
【0085】
可動ガイド65yは、第1位置にある状態(
図12に示す状態)にて、湾曲搬送経路60の外周壁を形成している。この状態の可動ガイド65yは、用紙Sが排出ローラ対62へ搬送されるように、定着ローラ対61から送り込まれた用紙Sの先端をガイドする。
【0086】
図13は、可動ガイド65yが第1位置から第2位置へ移動する様子を示している。本図に示すように、第1位置の可動ガイド65yは、白抜矢印で示すように平行移動することで、第2位置に移動する。第2位置の可動ガイド65yは、第1位置のときに比べて、外周壁の湾曲の頂点部分が半径方向外方に退避している。
【0087】
そのため第1実施形態の場合と同様に、用紙Sが排出ローラ対62に噛み込まれたときに、可動ガイド65yが第1位置から第2位置へ移動するようにして、用紙Sが出来るだけ可動ガイド65yと摺れないようにすることが可能である。
【0088】
図14は、可動ガイド65yを移動させるための機構を示している。本図に示すように、可動ガイド65yの位置を変えるための駆動系として、ソレノイド80およびバネ81が設けられている。当該駆動系は、用紙Sの搬送を妨げない位置に配置されている。
【0089】
可動ガイド65yは、通常時においてバネ81の弾性力によって第1位置に維持されるが、ソレノイド80を駆動させたときには、その磁力によって第2位置へ移動する。本実施形態では、ソレノイド80の駆動を制御することにより、可動ガイド65yの位置制御が可能である。
【0090】
4.その他
各実施形態のプリンター10は、用紙Sの搬送に用いられる湾曲した湾曲搬送経路60と、湾曲搬送経路60の下流に位置する排出ローラ対62とを含む用紙搬送装置を有している。この用紙搬送装置は、上流にある定着ローラ対61から湾曲搬送経路60へ送り込まれた用紙Sを、排出ローラ対62に噛み込ませる装置であり、第1位置と第2位置に可動である可動ガイドを備えている。
【0091】
なお、第1位置は、湾曲搬送経路60の外周壁を形成し、湾曲搬送経路60へ送り込まれた用紙Sが排出ローラ対62へ搬送されるように、当該用紙Sの先端をガイドする位置である。また、第2位置は、前記外周壁における湾曲の頂点部分が第1位置より半径方向外方に退避した位置である。このような特徴を有する用紙搬送装置によれば、湾曲搬送経路60を通過する用紙Sが極力外周壁と摺らないようにすることが可能である。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。本発明は上記実施形態の他、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な変形を加えて実施され得る。