特許第5954616号(P5954616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 朝日テクノ株式会社の特許一覧 ▶ 一般財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所の特許一覧 ▶ 三洋工業株式会社の特許一覧

特許5954616導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法
<>
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000004
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000005
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000006
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000007
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000008
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000009
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000010
  • 特許5954616-導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954616
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】導光板、面状発光装置及び面状表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160707BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20160707BHJP
   G09F 13/18 20060101ALI20160707BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20160707BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160707BHJP
【FI】
   F21S2/00 434
   F21S2/00 444
   G02B6/00 331
   G09F13/18 D
   G09F13/04 P
   F21Y115:10
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-40558(P2012-40558)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-175419(P2013-175419A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】598084921
【氏名又は名称】朝日テクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596132721
【氏名又は名称】一般財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】597044531
【氏名又は名称】三洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126697
【弁理士】
【氏名又は名称】池岡 瑞枝
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(72)【発明者】
【氏名】宮田 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 修
【審査官】 丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−257227(JP,A)
【文献】 特開2004−288553(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0010003(US,A1)
【文献】 特開2000−171798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G02B 6/00
G09F 13/04
G09F 13/18
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その端面αから入射した光をその内部に存在する複数の光反射部により反射してその板面αから出射させる導光板の製造方法であって、
導光板の幅方向に所定ピッチで配された複数の光反射部で構成される複数本の光反射列を、導光板の端面α付近から奥側へ所定ピッチで設け、
それぞれの光反射部、導光板の外部から照射されたレーザ光により形成した1本又は複数本の柱状の加工痕として、それぞれの加工痕を、その板面α側の端部が端面α側から見て奥側を向くように、導光板の板厚方向に対して傾斜して形成するとともに、
奥側の光反射列が手前側の光反射列よりも板面αに近くなるように、それぞれの光反射列を、導光板の板厚方向にずらして配置しながらも、一の光反射列を構成する光反射部の上部と該一の光反射列よりも1列奥側に配置された他の光反射列を構成する光反射部の下部とが、導光板を端面α側から見た際に導光板の板厚方向において重なり合うようにし、
前記一の光反射列を構成する光反射部と前記他の光反射列を構成する光反射部とを、導光板の幅方向にずらして配置しながらも、導光板を端面α側から見た際に、前記一の光反射列を構成する光反射部の隙間が前記他の光反射列を構成する光反射部によって埋められるようにし
ことを特徴とする導光板の製造方法
【請求項2】
それぞれの加工痕の中心線の導光板の板厚方向に対して為す傾斜角度θが32〜48°とされた請求項1記載の導光板の製造方法
【請求項3】
それぞれの加工痕の中心線に沿った長さが10〜200μmとされた請求項1又は2記載の導光板の製造方法
【請求項4】
それぞれの加工痕における最も細くなった部分の直径が5〜40μmとされた請求項1〜3いずれか記載の導光板の製造方法
【請求項5】
それぞれの光反射列を構成するそれぞれの光反射部が、端面αの法線方向に所定ピッチで平行に形成された複数本の柱状の加工痕で構成された請求項1〜いずれか記載の導光板の製造方法
【請求項6】
導光板が、透明な樹脂板で形成された請求項1〜いずれか記載の導光板の製造方法
【請求項7】
請求項1〜いずれかに記載された導光板の製造方法を用いて、導光板における端面αに対向して光を配した面状発光装置を製造する面状発光装置の製造方法
【請求項8】
請求項に記載された面状発光装置の製造方法によって製造された面状発光装置の導光板における板面α側に表示媒体を設け、面状発光装置がバックライトとして機能するようにした面状表示装置を製造する面状表示装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その端面から入射した光をその板面から出射させる導光板と、この導光板を用いた面状発光装置及び面状表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駅やショッピングセンターなどに設置される案内パネルや広告パネルなどの面状表示装置として、その表示面が発光するものが知られている。この種の発光型の面状発光装置、文字や図形などが描かれた前記表示面を形成する透光板と、該透光板の裏側に配されてバックライトとして機能する複数本の蛍光灯とで構成されたものが一般的である(例えば、特許文献1,2を参照。)。蛍光灯における背面側(前記透光板とは反対側)には、蛍光灯から背面側に出射した光を前記透光板側に反射するための反射構造(特殊インクを印刷した拡散反射シートや、透光板の裏面に形成された凹凸など)が設けられる。この種の発光型の面状表示装置は、その表示内容(文字や図形など)が目立ちやすいという利点があるものの、以下のような欠点があった。
【0003】
すなわち、上記の発光型の面状表示装置において、バックライトとして用いられる蛍光灯は、その全周部に光を出射するが、そのうち蛍光灯の背面側に出射した光が前記反射構造で反射する際などに損失が生じてしまう。具体的には、光の一部が前記反射構造を構成する拡散反射シートに吸収されたり透過したりするなどの損失が生じる。このため、消費電力を抑えることが困難であった。特に、大型の面状表示装置では、光源の数を増やすか、光源の容量を大きくしなければならず、消費電力を抑えることが困難である。加えて、上記の発光型の面状表示装置は、年に1回程度、蛍光灯を交換する必要があるなど、メンテナンスの手間やコストがかかるものとなっていた。さらに、上記の発光型の面状表示装置は、蛍光灯の直径よりも大きな厚みを必要とするため、小型化や軽量化が困難であった。
【0004】
このような実状に鑑みてか、近年には、光源として発光ダイオードを用い、該発光ダイオードから出射した光を導光板の端面から該導光板の内部に導入し、該導光板の一方の板面(裏面)に設けられた反射部により、該導光板の他方の板面(表面)から面状に出射させるようにした面状表示装置も提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。このように光源として発光ダイオードを用いることにより、蛍光灯を使用した場合よりも、メンテナンスの手間やコストを削減するとともに、面状表示装置の小型化や軽量化をすることが可能になる。しかし、この種の面状表示装置においても、導光板の裏面における前記反射構造で光を反射する際などに光の損失が生じることは変わらず、消費電力を抑えることは困難である。特に、大型の面状表示装置においては、十分な照度を得ることが困難である。また、その照射光を導光板の前記表面側から見ると、細い帯状の輝線が観察されるなど、均一な照射光が得られない場合がある。
【0005】
ところで、特許文献4には、ガラスやアクリル樹脂などからなる板状の透明部材(導光板に相当)の内部に、エキシマレーザを用いて変質部分を形成し、透明部材の端面から入射した光を前記変質部分で散乱させ、透明部材の板面から出射させるようにする技術が記載されている(同文献の特許請求の範囲、段落0051〜0055,0063及び図10などを参照。)。しかし、同文献の技術は、変質部分でマークや記号などを形成し、そのマークや記号などを浮かび上がらせることを目的としたものに過ぎず、光の損失を軽減できる構造とはなっていない。
【0006】
また、特許文献5には、その外部から照射したレーザ光によりその内部に光反射部を形成した導光板が記載されている。この導光板では、レーザ光を2方向から照射し、そのレーザ光の交点における導光板を部分的に溶かして変質させることにより、光反射部が形成される。しかし、この導光板は、必ずしも、明るい照射光や均一な照射光を得ることができるものとはなっていなかった。
【0007】
というのも、特許文献5の導光板では、光入射面である一の端面から入射した光が、光反射部において、光出射面である一の板面に向かって確実に反射される構造とはなっておらず、あらゆる方向に反射されるようになっている。このため、光出射面となる板面から出射する光量を多く確保することができない。また、光出射面となる板面から出射する光を均一にすることも困難である。特に、同文献の図4のように光反射部を2列に並べた状態で形成すると、一方の光反射部と他方の光反射部との間で光が繰り返し反射されるようになる。このため、反射の度に光の損失が生じるだけでなく、均一な照射光を得ることもさらに困難となる。加えて、レーザ光で加工する際に光反射部が炭化して着色しやすいという欠点もあった。光反射部が炭化して着色すると、光反射部で光が吸収されやすくなり、光の損失が大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−081057号公報
【特許文献2】特開2003−114628号公報
【特許文献3】特開2001−250410号公報
【特許文献4】特開2002−087834号公報
【特許文献5】実登第3126944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光の損失を抑えて消費電力を抑えるだけでなく、均一で明るい照射光を得ることもできる導光板を提供するものである。また、その導光板を用いた面状発光装置や面状表示装置を提供することも本発明の目的であり、これらのメンテナンスに要する手間やコストを軽減すること、さらには、これらの小型化や軽量化を実現することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
その端面αから入射した光をその内部に存在する複数の光反射部により反射してその板面αから出射させる導光板であって、
それぞれの光反射部が、導光板の外部から照射されたレーザ光により形成された1本又は複数本の柱状の加工痕とされるとともに、
それぞれの加工痕における板面α側の端部が端面α側から見て奥側(端面αから遠くなる側。以下同じ。)を向くように、それぞれの加工痕が導光板の板厚方向に対して傾斜して形成されたことを特徴とする導光板
を提供することによって解決される。
【0011】
このように、レーザ光による加工痕を導光板の内部に傾斜して形成することにより、端面αから導光板の内部に入射した光の大部分を加工痕で直接的に反射させ、そのまま板面αから出射させることが可能になる。したがって、光の損失を抑え、消費電力を抑えながらも明るい照射光を得ることが可能になる。導光板は、透光性(特に透明又は透明に近い透光性)を有するものであれば、その素材は特に限定されず、ガラス板を使用することもできるが、レーザ光による加工性やコストなどを考慮すると、アクリル板、ポリカーボネート板、塩化ビニール板、ポリウレタン板などの透明樹脂板を使用すると好ましい。特に、アクリル板を使用すると好ましい。
【0012】
本発明の導光板において、それぞれの光反射部は、上記のように、1本又は複数本の柱状の加工痕で構成される。それぞれの光反射部を構成するそれぞれの加工痕で光を全反射させることを想定する場合には、それぞれの光反射部は、1本の加工痕により構成できる。ただし、この場合には、板面αに輝点が観察されるなど、板面αから出射する光が不均一になる(発光ムラが生じる)場合がある。というのも、端面αから入射した光は、それが平行光である場合も、円錐状に広がる非平行光である場合も、その光束における中心部分で最も光強度が大きくなり、その中心部分の光が1つの加工痕で直接的に全反射されると、板面αにおいて、その部分が局所的に明るく観察されるからである。
【0013】
このように、1つの加工痕で全反射させると発光ムラが生じる場合には、それぞれの光反射部を、複数本の加工痕で構成すると好ましい。具体的には、それぞれの光反射部を、端面αの法線方向に所定ピッチで平行に形成された複数本の柱状の加工痕で構成すると好ましい。これにより、上述した発光ムラを防ぐことが可能になる。かつ、光反射部を構成する手前側(端面αに近い側)の加工痕を光が透過してきても、その透過光を奥側(端面αに遠い側)の加工痕で反射することが可能になり、それぞれの光反射部を構成する複数本の加工痕全体として全反射又は全反射に近い状態を実現することができるので、明るい照射光を得ることもできる。
【0014】
また、本発明の導光板において、それぞれの加工痕の中心線の導光板の板厚方向に対して為す傾斜角度の好適な範囲は、導光板の材質(屈折率)や、それぞれの光反射部を構成する加工痕の本数などによっても異なる。それぞれの光反射部を1本の加工痕により構成する場合には、当該傾斜角度は、端面αから入射した光が板面α側へ全反射又は全反射に近い状態で反射できる値に設定すると好ましい。これにより、端面αから入射した光の大部分を損失なく板面αから効率的に出射させることが可能になる。導光板を後述するアクリルなどの透明樹脂により形成し、それぞれの光反射部を1本の加工痕により構成する場合には、当該傾斜角度は、通常、38°以上とされる。当該傾斜角度を38°未満とすると、加工痕に吸収される光の割合が高くなり、光の損失が大きくなるからである。この場合、当該傾斜角度は、40°以上とすると好ましく、42°以上とするとより好ましい。一方、それぞれの光反射部を複数本の加工痕により構成する場合には、当該傾斜角度は、それぞれの光反射部を1本の加工痕で構成する場合よりも小さくすることができる。この場合、当該傾斜角度は、32°以上であればよい。
【0015】
一方、それぞれの加工痕の中心線の導光板の板厚方向に対して為す傾斜角度を大きくしすぎると、加工痕で反射された光がそのまま板面αから出射されずに再び導光板の内部に反射されるようになる。このため、導光板を後述するアクリルなどの透明樹脂により形成し、それぞれの光反射部を1本の加工痕により構成する場合には、当該傾斜角度は、通常、48°以下とされる。当該傾斜角度は、45°以下とすると好ましく、43°以下とするとより好ましい。導光板がアクリル板の場合、当該傾斜角度を42.1°とすれば、端面αから入射した光を加工痕で全反射して板面αから出射させることが可能である。上述したように、それぞれの光反射部を複数本の加工痕で構成する場合には、当該傾斜角度を全反射角(42.1°)より小さくすることができる。
【0016】
さらに、本発明の導光板において、それぞれの加工痕の中心線に沿った長さの好適な範囲は、導光板の寸法などによっても異なるため、特に限定されない。しかし、加工痕が短すぎると、加工痕で光が全反射されにくくなり、板面αから出射する光を所望の状態に調整しにくくなるおそれがある。このため、加工痕の中心線に沿った長さは、通常、10μm以上とされる。加工痕の中心線に沿った長さは、30μm以上とすると好ましく、50μm以上とするとより好ましい。加工痕を重複して配列しないのであれば、60μm以上とすると最適である。
【0017】
一方、それぞれの加工痕の中心線に沿った長さが長すぎると、導光板の板厚が小さい場合に、端面αから離れた位置にある加工痕に光を届かせにくくなり、導光板の板面αの全体から均一に光を出射させることが困難になる。また、加工痕が長くなると、必然的に加工痕は細く形成されるため、加工痕で光を所望の方向に反射させにくくなるおそれがある。このため、加工痕の中心線に沿った長さは、通常、400μm以下とされる。加工痕の中心線に沿った長さは、250μm以下であると好ましく、200μm以下であるとより好ましく、150μm以下であるとさらに好ましく、110μm以下であると最適である。加工痕の中心線に沿った長さは、加工痕を形成するのに用いるレーザ光の種類(波長や焦点位置など)を調整することにより、調節することができる。
【0018】
ところで、後述するように、加工痕は、レーザ光のビームウエストに倣った柱状(くびれ部を有する柱状)に形成されるため、場所によって直径が異なっている。それぞれの加工痕における最も細くなった部分(くびれ部)の直径や、最も太くなった部分の直径(最大直径)は、それぞれの加工痕の中心線に沿った長さに影響される。すなわち、加工痕が長くなれば、加工痕は細くなり、加工痕が短くなれば、加工痕は太くなる。それぞれの加工痕におけるくびれ部の直径の具体的な値は、特に限定されない。しかし、加工痕のくびれ部が細すぎると、加工痕で光が意図しない方向に反射されてしまい、板面αから出射する光を所望の状態に調整しにくくなるおそれがある。このため、加工痕のくびれ部の直径は、通常、5μm以上とされる。加工痕のくびれ部の直径は、10μm以上であると好ましく、20μm以上であるとより好ましく、30μm以上であるとさらに好ましい。
【0019】
一方、加工痕におけるくびれ部の直径を大きくしすぎると、加工痕の中心線に沿った長さが必然的に長くなるため、導光板の板厚が小さい場合に、端面αから離れた位置にある加工痕に光を届かせにくくなり、導光板の板面αの全体から均一に光を出射させることが困難になる。また、レーザ光の特性から考えて、40μmよりも大きくすることは困難である。このため、それぞれの加工痕におけるくびれ部の直径は、通常、40μm以下とされる。
【0020】
ここで、加工痕のくびれ部の直径は、できるだけ加工痕の最大直径に近づける(加工痕の形状を円柱に近づける)と好ましい。具体的には、加工痕の最大直径(Dとする。)に対するくびれ部の直径(Dとする。)の比(D/D)を0.3以上とすると好ましい。比D/Dは、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上という具合に、1に近いほど好ましい。加工痕のくびれ部の直径や最大直径は、加工痕を形成するのに用いるレーザ光の種類(波長や焦点位置など)を調整することにより、調節することができる。
【0021】
さらにまた、本発明の導光板において、それぞれの光反射部の配置は、特に限定されないが、以下のように配置すると好ましい。すなわち、導光板の幅方向(端面αの法線及び板面αの法線の両方に垂直な方向)に所定ピッチで配された複数の光反射部で構成される複数本の光反射列を、導光板の端面α付近から奥側(端面αから遠くなる側)へ所定ピッチで設け、奥側の光反射列が手前側(端面αに近くなる側)の光反射列よりも板面αに近くなるように、それぞれの光反射列を、導光板の板厚方向にずらして配置するとともに、導光板を端面α側から見た際に、一の光反射列を構成する光反射列と、該一の光反射列よりも奥側に配置された他の光反射列を構成する光反射列とが、重なり合うようにすると好ましい。
【0022】
そして、前記一の光反射列を構成する光反射部と、前記他の光反射列を構成する光反射部とを、導光板の幅方向にずらして配置するとともに、前記一の光反射列を構成する光反射部の隙間を、前記他の光反射列を構成する光反射部の幅よりも狭くし、導光板を端面α側から見た際に、前記隙間が前記他の光反射列を構成する光反射部によって埋められるようにすると好ましい。これらの構成を採用することにより、導光板の端面αから導光板の内部に入射した光を漏れなくいずれかの光反射部で反射させることが可能になり、光の利用効率をさらに高めることが可能になる。また、より均一な照射光を得ることも可能になる。
【0023】
ところで、上記課題は、上記の導光板と、導光板における端面αに対向して配された光源とで構成された面状発光装置を提供することによっても解決される。これにより、消費電力が小さく、均一で明るい照射光の面状発光装置を得ることが可能になる。本発明の面状発光装置において、使用する光源の種類は、特に限定されないが、面状発光装置のメンテナンスに要する手間やコストを削減することや、面状発光装置の小型化や軽量化することなどを考慮すると、発光ダイオードを使用すると好ましい。
【0024】
また、上記課題は、上記の面状発光装置における板面α側に表示媒体を設け、面状発光装置がバックライトとして機能するようにした面状表示装置を提供することによっても解決される。これにより、消費電力が小さく、表示面が明るく均一に光る面状発光装置を得ることが可能になる。本発明の面状表示装置の用途は、特に限定されず、小型の面状表示装置として使用することもできるが、表示面が広くても該表示面を明るく均一に光らせることができるという本発明の面状表示装置の特徴を生かすためには、大型の面状表示装置として特に好適に使用することができる。大型の面状表示装置としては、駅やショッピングセンターなどの公共施設に設置される案内パネルや広告パネルや、道路などに設置される道路標識などが例示される。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によって、光の損失を抑えて消費電力を抑えるだけでなく、均一で明るい照射光を得ることもできる導光板を提供することが可能になる。また、この導光板を用いた面状発光装置や面状表示装置を提供することも可能になる。したがって、面状発光装置や面状表示装置のメンテナンスに要する手間やコストを軽減するだけでなく、これら面状発光装置や面状表示装置の小型化や軽量化を実現することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第一実施態様の導光板を示した斜視図である。
図2】第一実施態様の導光板を用いた面状表示装置を導光板の端面α側から見た状態を示した側面図である。
図3】第一実施態様の導光板を板面α側から見た状態を示した平面図である。
図4】第一実施態様の導光板に加工痕を加工している状態を端面α及び板面αに垂直な面で切断した状態を示した断面図である。
図5】第一実施態様の導光板における照度の測定点を示した平面図である。
図6】第二実施態様の導光板を用いた面状表示装置を導光板の端面α側から見た状態を示した側面図である。
図7図6の導光板における1つの光反射部の周辺を拡大した状態を示した側面図である。
図8】第三実施態様の導光板を用いた面状表示装置を導光板の端面α側から見た状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の導光板の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様と第三実施態様の3つの実施態様を例に挙げて本発明の導光板を説明するが、本発明の導光板の技術的範囲は、これらの実施態様に限定されず、本発明の趣旨を損なわない限り、各種の変更を施すことができる。
【0028】
まず、第一実施態様の導光板について説明する。図1は、第一実施態様の導光板10を示した斜視図である。図2は、第一実施態様の導光板10を用いた面状表示装置を導光板10の端面α側から見た状態を示した側面図である。図3は、第一実施態様の導光板10を板面α側から見た状態を示した平面図である。図4は、第一実施態様の導光板10に加工痕12を加工している状態を端面α及び板面αに垂直な面で切断した状態を示した断面図である。第一実施態様の導光板10は、図1に示すように、内部に複数の光反射部11が形成された透明な板材からなる。本実施態様において、導光板10には、屈折率が約1.49のアクリル板を採用している。この導光板10は、図2に示すように、その端面α(光入射面)からy軸方向正側に入射した光を、その内部に存在する複数の光反射部11によりz軸方向正側に反射して、その板面α(光出射面)から出射させる機能を有している。以下においては、「端面α」を「光入射面α」と表記し、「板面α」を「光出射面α」と表記する。
【0029】
導光板10の寸法は、導光板10の用途などによって異なり、特に限定されない。しかし、本発明の導光板10は、広い面積でも明るく均一な照度の照射光が得られるため、比較的大きな寸法とすることができる。具体的には、本発明の導光板10は、その光出射面αの面積を0.1m以上とする場合に適している。導光板10の光出射面αの面積は、0.5m以上、1m以上、2m以上とさらに広くすることもできる。光出射面αの面積に、特に上限はないが、導光板10の材料のアクリル板などの供給や、発光ダイオードなどの光源20から照射された光の導光板10の内部での広がりや減衰、あるいは導光板10の加工や運搬を考慮すると、通常、5m以下とされ、好ましくは4m以下、より好ましくは3m以下である。また、導光板10の厚さ(z軸方向の厚さ)は、使用する光源20の種類やその配置などによっても異なり、特に限定されない。光源20としてx軸方向へ1列に並べた発光ダイオードを用いる場合、導光板10の厚さは、通常、3〜20mm、好ましくは、4〜10mmとされる。本実施態様において、導光板10の厚さは5mmとしている。
【0030】
導光板10の内部に設けられたそれぞれの光反射部11は、図4に示すように、導光板10の外部(光出射面αの上方)に配置されたレーザ発振器50から照射されたレーザ光60により形成された柱状の加工痕12となっている。本実施態様において、それぞれの光反射部11は、1本の柱状の加工痕12により構成されている。レーザ光60は、レーザ発振器50を操作させながら間歇的(パルス状)に照射される。レーザ光60の焦点は、導光板10の内部に設定される。レーザ光60は、その焦点で収束してエネルギー密度が最大となる。このため、導光板10は、レーザ光60の焦点付近でのみ変質し、加工痕12が形成される。この加工痕12は、導光板10における他の部分と屈折率が異なっており、導光板10の内部に入射した光を反射する光反射部11として機能する。本実施態様において、光反射部11となる加工痕12の外側は、レーザ光60の衝撃により密度が高くなっているものの、加工痕12の内側は、密度が低く空洞に近い状態となっている。すなわち、加工痕12の外側の密度の高い部分が光反射機能を有するようになっている。1つの光反射部11が1つの加工痕12で構成される本実施態様の導光板10において、「加工痕」と「光反射部」は同じ部分を指している。
【0031】
ところで、導光板10の内部の加工痕12は、レーザ光60により加工されるため、図4に示すように、レーザ光60のビームウエスト(レーザ光60の焦点付近における光束の形状)に倣った柱状(砂時計状)に形成される。すなわち、加工痕12の長さ方向中心部には、くびれ部12aが形成される。加工痕12の直径は、このくびれ部12aで最小となり、その両端部付近で最大となる。複数の加工痕12は、レーザ発振器50を導光板10に対してx軸方向及びy軸方向に走査させることにより形成される。本実施態様においては、秒速1000mm以上の加工スピード(走査スピード)で加工痕12を形成することが可能である。
【0032】
導光板10の内部に加工痕12を形成するレーザ光60を発振するレーザ発振器50の種類は、導光板10の素材などによっても異なり、特に限定されないが、本実施態様のように、アクリル板からなる導光板10に加工を施す場合には、YAGレーザ発振器を用いると好適である。これにより、加工痕12を高い寸法精度で形成することができる。また、加工痕12の炭化を防止することも容易である。YAGレーザ発振器は、その基本波長が1064nmのレーザ光を発振でき、それ以外にも、第二高調波(532nm)、第三高調波(355nm)、第四高調波(266nm)のレーザ光を発振することができるものが一般的であるが、本実施態様においては、YAGレーザ発振器における第二高調波(533nm)のレーザ光を用いている。
【0033】
導光板10の内部に加工痕12を加工するのに用いるレーザ光60の出力は、導光板10の素材などによっても異なり、特に限定されない。しかし、レーザ光60の出力を小さくしすぎると、加工痕12を適切に形成できなくなるおそれがある。このため、本実施態様のように、アクリル板からなる導光板10に加工を施す場合には、レーザ光60の出力は、通常、1W(波長450〜600nmの値。以下同じ。)以上とされる。レーザ光60の出力は、2W以上であると好ましく、3W以上であるとより好ましい。一方、レーザ光60の出力を大きくしすぎると、加工痕12の周囲の導光板10が炭化して着色してしまい、加工痕12で光が吸収され、光の損失が生じやすくなる。このため、本実施態様のように、アクリル板に加工痕12を加工する場合には、レーザ光60の出力は、通常、30W以下とされる。レーザ光60の出力は、20W以下であると好ましい。
【0034】
導光板10の内部に加工痕12を加工するのに用いるレーザ光60のパルス幅(1つの加工痕12を加工するのにレーザ光60を照射する時間)も、導光板10の素材などによって異なり、特に限定されない。しかし、レーザ光60のパルス幅を短くしすぎると、やはり、加工痕12を適切に形成できなくなるおそれがある。このため、本実施態様のように、アクリル板に加工痕12を加工する場合には、レーザ光60のパルス幅は、通常、3ps以上とされる。レーザ光60のパルス幅は、5ps以上であると好ましく、7ps以上であるとより好ましい。一方、レーザ光60のパルス幅を長くしすぎると、やはり、加工痕12の周囲の導光板10が炭化して着色してしまい、加工痕12で光が吸収され、光の損失が生じやすくなる。このため、本実施態様のように、アクリル板に加工痕12を加工する場合には、レーザ光60のパルス幅は、通常、100ps以下とされる。レーザ光60のパルス幅は、50ps以下であると好ましく、30ps以下であるとより好ましい。本実施態様において、レーザ光60のパルス幅は、10psとしている。
【0035】
また、それぞれの加工痕12は、図2に示すように、導光板10の板厚方向(z軸方向)に対して傾斜して形成されており、その光出射面αに近い側の端部(図中の上端部)が、その反対側の端部(図中の下端部)よりも光入射面αから遠くなっている。この構成は、図4に示すように、導光板10の光入射面αの法線に対してレーザ発振器50を傾斜させ、光出射面αに照射されるレーザ光60の入射角度φを0°よりも大きく、90°未満とすることで実現できる。具体的な入射角度φの値は、導光板10の屈折率と、加工痕12の中心線の導光板10の板厚方向に対する傾斜角度θ(図2を参照。傾斜角度θは、レーザ光60の屈折角度φに略一致する。)とから算出される。本実施態様においては、レーザ光60の入射角度φを67°に設定し、傾斜角度θが約38°の加工痕12を形成しており、光入射面αから導光板10の内部に入射した光の大部分をそれぞれの加工痕12で光出射面α側に確実に反射させることができるようにしている。したがって、光の損失を抑えることができる。
【0036】
ところで、加工痕12の傾斜角度θをより大きくしたい場合、レーザ光60の入射角度φも大きくする必要がある。しかし、入射角度φを大きくしようとしても、レーザ発振器50が導光板10の表面にぶつかるようになるため、入射角度φを大きく設定することができず、結果として加工痕12の傾斜角度θを大きくできない場合がある。このような場合には、異なる入射角度φでレーザ光60を複数回照射することにより、1つの加工痕12を加工するようにすることで、加工痕12のみかけの傾斜角度θを大きくすることができる。例えば、まず、小さな入射角度φ(φ=φとする。)でレーザ光60を入射させることにより、加工痕12を導光板10の内部に形成した後、その加工痕12に重なる場所を焦点として、大きな入射角度φ(φ=φ>φとする。)でレーザ光60を入射させる。すると、2度目のレーザ光60の衝撃により、既に形成されていた加工痕12がいびつな形状に変形し、そのみかけの傾斜角度θを大きく(入射角度φでレーザ光60を1度だけ入射させて形成された加工痕12の傾斜角度θよりも大きく)することができる。実際に、1度目の入射角度φを0°とし、2度目の入射角度φを45°とすると、みかけの傾斜角度θが約45°の加工痕12が形成されることが確認できた。レーザ光60を複数回照射することにより1つの加工痕12を形成する場合、加工痕12の表面は凹凸の多いより複雑な形状となるが、この凹凸は、均一な照射光を得るのに有利に働く。
【0037】
複数の加工痕12(光反射部11)の配置は、導光板10の用途などによって異なり、特に限定されないが、本実施態様においては、以下のように配置している。すなわち、図1に示すように、導光板10の幅方向(x軸方向)に所定ピッチで並べられた複数の加工痕12で構成される複数本の光反射列A〜A(Mは、光反射列の本数であり、2以上の任意の整数で定義される。)を、導光板10の光入射面α付近から光の入射方向(y軸方向)に所定ピッチで配置している。それぞれの光反射列A〜Aを構成する加工痕12は、隣の加工痕12と密着して形成してもよい。光反射列A〜Aは、互いに平行となっている。これらの光反射列A〜Aは、図2に示すように、光入射面αから遠いものになればなるほど光出射面αに近い位置となるように、導光板10の板厚方向(z軸方向)にずらして配置(階段状に配置)されている。換言すると、導光板10の板面α(光出射面αに対向する板面)からそれぞれの加工痕12までの距離(高さ)は、導光板10の光入射面αからそれぞれの加工痕12までの距離に比例して長くなるようにしている。
【0038】
さらにまた、本実施態様において、一の光反射列A(mは、1以上、M−1以下の任意の整数で定義される。)を構成する加工痕12の上部と、光反射列Aよりも奥側に配置された他の光反射列Am’(m’は、m’>mを満たすM以下の任意の整数で定義される。)を構成する加工痕12の下部は、導光板10を光入射面α側から見た際に、重なり合うように配置している(図2の重なり部βを参照)。これにより、導光板10を光入射面α側から見た際に、光反射列Aを構成する加工痕12と、光反射列Am’を構成する加工痕12との間に隙間が形成されないようにし、光入射面αから導光板10の内部に入射した光が前記隙間から端面α(光入射面αに対向する端面)側へ通り抜けないようにすることが可能になる(加工痕12で光出射面α側へ反射させることが可能になる。)。光反射列Am’は、光反射列Aよりも1列奥側に配された光反射列Am+1としてもよいが(m’=m+1としてもよいが)、本実施態様においては、次に述べるように、光反射列Aを構成する加工痕12と、光反射列Am+1を構成する加工痕12とを、導光板10の幅方向に半ピッチずつずらして配置しているので、光反射列Aを構成する加工痕12の上部が、光反射列Aよりも2列奥側に配置された光反射列Am+2を構成する加工痕12の下部と重なり合うようにしている(m’=m+2としている。)。
【0039】
そして、本実施態様においては、図3に示すように、光反射列Aを構成する加工痕12と、光反射列Aよりも1列奥側に配置された光反射列Am+1を構成する加工痕12とを、導光板10の幅方向(x軸方向)に半ピッチずつずらして配置するとともに、光反射列Aを構成する加工痕12の隙間β(同図における網掛けハッチング部分)の幅Wを、光反射列Am+1を構成する加工痕12の幅(加工痕12の最大直径Dに一致)よりも狭くしている。このため、導光板10をその光入射面α側から見ると、光反射列Aを構成する加工痕12の隙間βが光反射列Am+1を構成する加工痕12によって埋められた状態となっている。これにより、光入射面αから導光板10の内部に入射した光が隙間βから端面α側へ通り抜けないようにすることが可能になる(加工痕12で光出射面α側へ反射させることが可能になる。)。光反射列Aを構成する加工痕12の隙間βの幅Wは、光反射列Am+1を構成する加工痕12における最も細くなった部分の幅(くびれ部11aの直径Dに一致)よりも狭くするとさらに好ましい。
【0040】
そしてまた、本実施態様においては、図3に示すように、導光板10の単位面積当たりの加工痕12の数(以下、「加工痕密度N」と表記する。)を一定としたが、加工痕密度Nは、導光板10の場所(特にy座標)によって変化させることも可能である。例えば、導光板10における光入射面αから近い場所(y座標が小さい場所)では、加工痕密度Nを小さくし、導光板10における光入射面αから遠い場所(y座標が大きい場所)では、加工痕密度Nを多くすることができる。これにより、光入射面αから導光板10の内部に入射される光が平行光(y軸に平行な光)ではなく、光入射面αから離れるにつれて広がる場合においても、導光板10の光出射面αから出射される光の照度を場所にかかわらずより均一に近づけることができる。この場合、加工痕密度Nは、N=a・y1.5(aは、比例定数(=0.1)であり、導光板10の光入射面αをy=0とする。)の関係を有するように設定すると好ましい。加工痕密度Nの単位は、「個/cm」である。このような構成は、光反射列Am+1と光反射列Am+2のy軸方向の間隔を、光反射列Aと光反射列Am+1のy軸方向の間隔よりも狭くしたり、光反射列Am+1を構成する加工痕12のx軸方向の間隔を、光反射列Aを構成する加工痕12のx軸方向の間隔よりも狭くしたりすることで実現できる。照射光の均一性は、加工痕密度Nを調整するほか、例えば、導光板10の場所によって加工痕11の傾斜角度θを変えることなどによっても確保することができる。
【0041】
続いて、第二実施態様の導光板について説明する。図6は、第二実施態様の導光板10を用いた面状表示装置を導光板の端面α側から見た状態を示した側面図である。 図7は、図6の導光板10における1つの光反射部11の周辺を拡大した状態を示した側面図である。第一実施態様の導光板10では、図2に示すように、それぞれの光反射部11が1本の加工痕12で構成されていたが、第二実施態様の導光板10は、図6,7に示すように、それぞれの光反射部11が、端面αの法線方向に所定ピッチで平行に形成された複数本の柱状の加工痕12で構成されている。本実施態様において、1つの光反射部11を構成する加工痕12の本数は、3本としている。
【0042】
この第二実施態様の導光板10の構成を採用することにより、図7に示すように、手前側の加工痕12を透過してきた光を奥側の加工痕12で光出射面α側に反射することが可能になる。このため、それぞれの加工痕12で光を全反射できなくても、個々の光反射部11全体で全反射又は全反射に近い状態で光を反射させることが可能になる。したがって、加工痕12の傾斜角度θ(図2を参照)を全反射角よりも小さくしても、光入射面αから導光板10の内部に入射してきた光の大部分を光出射面αから出射させることが可能になり、明るい照射光を得ることができる。第二実施態様の導光板10において、特に言及しない構成は、第一実施態様の導光板10と略同様の構成を採用することができる。
【0043】
続いて、第三実施態様の導光板について説明する。図8は、第三実施態様の導光板10を用いた面状表示装置を導光板の端面α側から見た状態を示した側面図である。第一実施態様及び第二実施態様の導光板10では、図2又は図6に示すように、階段状に配された光反射部11の群が、1枚の導光板10につき1つのみ設けられていたが、第三実施態様の導光板10では、図8に示すように、この階段状に配された光反射部11の群がy軸方向に周期的に複数個設けられている。これにより、手前側(光入射面αに近い側)の光反射部11の群を透過してきた光を、奥側(光入射面αから遠い側)の光反射部11の郡で反射させることが可能になる。したがって、個々の光反射部11では光を全反射できなくても、光入射面αから入射してきた光の大部分を光出射面αから出射させることができる。奥側の光反射部11の群における個々の光反射部11を構成する加工痕12の本数を手前側の光反射部11の群における個々の光反射部11を構成する加工痕12の本数よりも多くするなどすると、均一な照射光を得ることもできる。第三実施態様の導光板10において、特に言及しない構成は、第一実施態様又は第二実施態様の導光板10と略同様の構成を採用することができる。
【0044】
以上で述べた第一実施態様から第三実施態様までの導光板10は、その光入射面αから入射した光の大部分を、その内部に形成された柱状の加工痕12で構成される光反射部11で光出射面α側へ反射させて、光出射面αから出射させることができる。したがって、この導光板10は、光出射面αから明るい光を均一に出射させることができる。光反射部11となる加工痕12は、レーザ光60により加工するので、精度よく形成することができ、レーザ光60の出力や入射角度φなどを調節することにより、その寸法や傾斜角度θも容易に変更することができる。
【0045】
これらの導光板10は、光を面状に照射する面状発光装置や面状表示装置に好適に用いることができる。具体的には、図2,6,8に示すように、導光板10と、導光板10における端面αに対向して配された光源20とで構成された面状発光装置として好適に用いることができる。また、この面状発光装置の導光板10における板面αに表示媒体30を重ねた面状表示装置として適に用いることができる。光源20には、x軸方向に沿って所定間隔で配列された複数の発光ダイオードを用いると好適である。表示媒体30には、文字、図形又は記号などが記された透光性を有するシート又はパネル(例えば乳半アクリル板など)や、液晶パネルなどを採用することができる。この場合、導光板10及び光源20からなる面状発光装置は、表示媒体30のバックライトとして機能する。
【0046】
本発明の導光板10は、その内部に、光反射部11となる加工痕12を三次元的に配列するため、従来の導光板では成し得なかった、より効率的な面状表示装置を提供することが可能になる。例えば、大型の面状表示装置は、交通機関や商業施設に設置させることが多く、これらの面状表示装置は、下から見上げるような高所に設置されることも多い。このような場合、面状表示装置の表示面から上方に出射する光は無駄になるが、本発明の導光板10では、加工痕12の向きや配置を調整することによって、面状表示装置の表示面から斜め下方にのみ光が出射するようにするなど、その照射光に指向性を持たせることも容易であり、面状表示装置の駆動に必要な消費電力を抑えることも可能である。
【0047】
ところで、本発明の導光板が、光の損失が少なく明るい照射光を得ることができるものであることを確かめるため、本発明の導光板(実施例)と、従来の導光板(比較例)の計2種類の導光板を用意し、その光入射面に対向して配した発光ダイオード(光源)から導光板の内部に光を入射させ、それぞれの導光板における所定点での照度を測定する実験を行った。実施例の導光板としては、上で説明した第一実施態様のものを用いた。また、比較例の導光板としては、レーザ加工によって光出射面に対向する板面に複数本の溝を形成したものを用いた。実施例と比較例において、導光板の材質や寸法、及び光源の種類や配置など、他の条件は全て同一である。実施例と比較例において、照射光の照度は、図5における測定点P〜Pで測定した。図5は、導光板における照度の測定点を示した平面図である。
【0048】
下記表1に、上記の実験で得られた結果を示す。下記表1における数値は照度であり、その単位はルクス(lx)である。
【表1】
【0049】
上記表1を見ると、実施例の導光板では、平均2405[lx]もの照度が得られている。これに対し、比較例の導光板では、平均1966[lx]の照度しか得られておらず、実施例の導光板と比較して約18%もダウンしている。また、実施例の導光板の面均整度は、約97.3%と非常に高くなっている。これに対し、比較例の導光板の面均整度は、約89.4%となっており、実施例の導光板よりも約8ポイントもダウンしている。ここで、面均整度は、下記式1で定義される。この実験結果から、本発明の導光板が、光の損失が少なく明るい照射光を得ることができ、さらには均一な照射光が得られるものであることが確かめられた。
【数1】
【符号の説明】
【0050】
10 導光板
11 光反射部
12 加工痕
12a くびれ部
20 光源
30 表示媒体
50 レーザ発振器
60 レーザ光
〜A 光反射列
加工痕の最大直径
加工痕のくびれ部の直径
L 加工痕の中心線に沿った長さ
〜P 測定点
加工痕の隙間βの幅
α 端面(光入射面)
α 板面(光出射面)
α 板面(光出射面に対向する板面)
α 端面(光入射面に対向する端面)
α 端面(側端面)
α 端面(側端面)
β 重なり部
β 隙間
θ 加工痕の中心線の導光板の板厚方向に対する傾斜角度
φ レーザ光の入射角度
φ レーザ光の屈折角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8