特許第5954619号(P5954619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954619
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20160707BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20160707BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/89
   A61K8/37
   A61K8/31
   A61K8/97
   A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-72784(P2012-72784)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203677(P2013-203677A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162628
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 博
(74)【代理人】
【識別番号】100119286
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 操
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】小田 義士
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−300856(JP,A)
【文献】 特開2007−119374(JP,A)
【文献】 特開2009−149622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚化粧料全量に対し、
(A)(a−1)式1で示される単量体30〜80モル%と、(a−2)式2で示される単量体20〜70モル%とから得られる重合体を、0.05〜1質量%、
(B)25℃における粘度が2〜1000mm/sであるシリコーン油を、0.5〜10質量%、
(C)常温で液状のエステル油、炭化水素又は油脂を、1〜15質量%、
(D)アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を、0.05〜1.5質量%、
(E)カルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを、0.1〜1質量%
含有する、皮膚化粧料。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは−(CH)n−を示し、nは1〜4の値である。)
【化2】
(式中、Lは、フェニレン、シクロヘキシレン、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−、又は−O−C(=O)−O−を表し、Lは炭素数10〜22の直鎖又は分岐アルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オールインワンタイプとして使用可能な万能タイプの皮膚化粧料に関するものであり、詳しくは、肌に直接塗布して使用した際に、肌上でののびや肌へのなじみ性が良く、エモリエント感を有し、またべたつかず、持続的な保湿効果が得られ、かつ、化粧ノリに優れる皮膚化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚表面は皮脂膜に覆われており、水分の蒸散が適度に抑制されている。皮膚の水分を適切な範囲に保つことは、皮膚の健康面において非常に重要なことである。しかし、気温や湿度の変化、紫外線、洗顔時の過度な摩擦や加齢によって、角質層に含まれる細胞間脂質、天然保湿因子や水分が失われがちであり、肌荒れやかゆみ、かさつきなど肌トラブルが生じやすくなる。よって、肌を正常に保つために、化粧水、乳液、クリームや美容液といったスキンケア用の皮膚化粧料を使用して、肌に水分や油分を補っている。一般的な使用方法としては、洗顔後に化粧水にて肌に水分や保湿成分を補給し、その後、乳液やクリームによって油分をも補い、肌を保護するとともに柔軟にしている。
【0003】
ここで、通常、乳液やクリームに使用される油分は、動植物油脂、鉱物油やエステル油、エーテル油などであり、これらの油分は、その閉塞性による水分蒸発の抑制効果や皮膚を柔軟にするエモリエント効果(感)を有する。また、これらの油分を皮膚化粧料に安定的に配合するために、非イオン性界面活性剤などの乳化剤や、高級アルコールやワックス類などの固形油あるいは半固形油を配合する必要がある。しかし、これらの成分をジェル製剤に配合すると、肌上でののびや肌へのなじみが悪くなり、また特有のべたつき感を生じやすくなる。
【0004】
一方、近年、女性が積極的に社会進出するようになるとともに、旅行や出張による外泊の機会が増加することに伴い、化粧をより短時間で行なうことへの要望が高まっており、化粧水や乳液、クリーム、さらに化粧下地の機能を集約した、「ツーインワン」や「オールインワン」タイプの化粧料が提案されている。特にこのような商品では、みずみずしい使用感としながらも、保湿性やエモリエント性を付与する必要が有り、剤形としてゲル状(ジェル状)のものが好まれる傾向にある。また、このような商品は、「朝夜兼用」の化粧料として数多く上市されている一方、朝の化粧をより短時間で行いたい人たちの増加により、「朝用」の化粧料として使用されることが多い。そのため、「朝用」の化粧料として重要視される化粧ノリなどの化粧下地料の有する機能について強く求められる傾向にある。
【0005】
そこで、油分を配合せずに保湿性を高めた化粧料として、多価アルコール類とカルボキシビニルポリマーを組み合わせた保湿用化粧料(特許文献1)が提案されている。しかし、この化粧料においては、保湿感特有のべたつき感が強くなるとともに、一時的な保湿感は得られるものの、持続的な保湿感を得ることができず、さらにエモリエント感に乏しかった。
一方、乳化剤や固形油などを使用せずに、水溶性高分子を用いて油分を配合する方法が試みられており、液状油と水溶性高分子を組み合わせた皮膚外用剤(特許文献2)や炭化水素油とカルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを組み合わせた皮膚外用剤(特許文献3)が提案されている。さらに、使用感と安定性を改善する目的でアクリル酸ナトリウム又はアクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を用いる方法も試みられており、該共重合体とシリコーン油又は液状油の油剤、水溶性増粘剤を組み合わせた化粧料組成物(特許文献4)や該共重合体と高分子シリコーン、イソパラフィンを組み合わせた皮膚化粧料(特許文献5)が提案されている。しかし、これらの化粧料においても、やはり、べたつき感を生じ、十分なエモリエント感を得ることができず、さらに、肌上でののびや肌へのなじみ、保湿効果について改善の余地があり、化粧ノリの点でも十分満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−64986号公報
【特許文献2】特開2009−40706号公報
【特許文献3】特開2011−219383号公報
【特許文献4】特開2003−300856号公報
【特許文献5】特開2007−169184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、肌に直接塗布して使用した際に、肌上でののびや肌へのなじみ性が良く、エモリエント感を有し、また、べたつかず、持続的な保湿効果が得られ、かつ、化粧ノリに優れる皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、下記に示す特定の5成分を組み合わせることによって、肌に直接塗布して使用した際に、肌上でののびや肌へのなじみ性が良く、エモリエント感を有し、またべたつかず、持続的な保湿効果が得られ、かつ、化粧ノリに優れる皮膚化粧料が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、皮膚化粧料全量に対し、
(A)(a−1)式1で示される単量体30〜80モル%と、(a−2)式2で示される単量体20〜70モル%とから得られる重合体を0.05〜1質量%、
(B)25℃における粘度が2〜1000mm/sであるシリコーン油を0.5〜10質量%、
(C)常温で液状のエステル油又は炭化水素又は油脂を1〜15質量%、
(D)アクリル酸ナトリウム又はアクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を0.05〜1.5質量%、
(E)カルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを0.1〜1質量%
含有する皮膚化粧料である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは−(CH)n−を示し、nは1〜4の値である。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Lは、フェニレン、シクロヘキシレン、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−、又は−O−C(=O)−O−を表し、Lは炭素数10〜22の直鎖又は分岐アルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚化粧料は、肌に塗布した際に、肌上でののび(延展性)がよく、肌によくなじむが、べたつき感はなく、上質なエモリエント感を有し、その保湿効果は長く持続する。また、化粧のノリもよいため、化粧水、乳液、クリーム等の、基礎化粧料としての機能と共に、化粧下地としての機能をも有する。したがって、本発明の化粧料は、いわゆる、「オールインワン」タイプの化粧料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の皮膚化粧料は、(A)成分を0.05〜1質量%、(B)成分を0.5〜10質量%、(C)成分を1〜15質量%、(D)成分を0.05〜1.5質量%、(E)成分を0.1〜1質量%を含有する。
本発明で用いる(A) 成分は、(a−1)上記式1で示される単量体30〜80モル%と、(a−2)上記式2で示される単量体20〜70モル%とから得られる重合体である。
【0016】
(a−1)上記式1で示される単量体において、式中のRは水素原子又はメチル基を表し、安定性の点からメチル基が好ましい。Rは−(CH)n−を示し、nは1〜4の値であり、入手のし易さからn=2が好ましい。
式1で示される具体的な単量体としては、グリセロール−1−アクリロイルオキシエチレンウレタン、グリセロール−1−アクリロイルオキシプロピレンウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチレンウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシプロピレンウレタン等が挙げられるが、合成のし易さから、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチレンウレタンが好ましい。式1で示される単量体の合成方法としては、環状ケタールと(メタ)アクリロイルオキシアルキレンイソシアネートとをウレタン化反応させて得られる化合物を、ウレタン化反応用触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させる方法等が挙げられる。
【0017】
(a−2)上記式2で示される単量体において、式中のLは、フェニレン、シクロヘキシレン、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−、又は−O−C(=O)−O−を表し、Lは炭素数10〜22の直鎖又は分岐アルキル基であり、例えばデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコサニル基等を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
式2で示される具体的な単量体としては、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートや、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニル、オクタデカン酸ビニル等のビニルエステル系単量体、N−デシル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド、N−オクタデシル(メタ)アクリルアミド等の、直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルはメタクリロイル又はアクリロイルを、(メタ)アクリレートはメタクリレート又はアクリレートを示す。中でも、安定性の点から、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(A)成分は、取り扱い易くするために、グリセリンや1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールで希釈したものを用いることができる。
【0018】
(A)成分の共重合体における各単量体の含有割合としては、式1で示される単量体(a−1)が30〜80モル%であり、式2で示される単量体(a−2)が20〜70モル%である。中でも、肌へのなじみ性、保湿効果の持続性や化粧のりの点において、好ましくは式1で示される単量体(a−1)の含有割合は50〜70モル%であり、式2で示される単量体(a−2)の含有割合は35〜50モル%である。
(A)成分の分子量は、質量平均分子量で、十分な保湿効果や配合し易さの点から5千〜50万であることが好ましく、さらに1万〜20万であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる(B)成分は、25℃における粘度が2〜1000mm/sであるシリコーン油である。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の直鎖シリコーン油、シクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン油が挙げられる。25℃における粘度が2mm/sを下回ると十分な効果が得られず、1000mm/sを超えると肌上でののびが悪くなり、またべたつき感を生じる。またこれらのシリコーン油は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明で用いる(C)成分は、通常の化粧品に用いられる常温で液状のエステル油又は炭化水素又は油脂である。エステル油は、酸とアルコールとからの脱水縮合物であり、酸としては脂肪酸、多塩基酸、ヒドロキシ酸等があり、アルコールとしては低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール等がある。具体的な化合物としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、エルカ酸オクチルドデシル、テトラエチルへキサン酸ペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸グリセリン、乳酸セチル等が挙げられる。
炭化水素は、炭素と水素からなる化合物であり、通常化粧品で用いられるものは炭素数15以上である。具体的な化合物としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等が挙げられる。
油脂は、通常化粧品で用いられるものとしては、動植物類から採取された油を脱臭、脱色等の精製されたものであり、具体的には、アボガド油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、牛脂等が挙げられる。エステル油、炭化水素、及び油脂は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができ、またエステル油、炭化水素、及び油脂から選ばれる2種以上を併用することもできる。
【0021】
本発明で用いる(D)成分は、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体、又はアクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体である。これらの共重合体は、化粧品原料として市販されている製品を使用することができる。具体的な製品としては、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を含む、SEPPIC社製の「SIMULGEL EG」と、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を含む、SEPPIC社製の「SIMULGEL NS」が挙げられるが、下記に示すように他の成分との混合物である。「SIMULGEL EG」は、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体と、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、イソヘキサデカンの混合物であり、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を35〜40質量%含有している。「SIMULGEL NS」は、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体と、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、スクワランの混合物であり、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体を35〜40質量%含有している。アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体及びアクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体は、それぞれ単独又は併用して使用することもできる。
【0022】
本発明で用いる(E)成分において、カルボキシビニルポリマーは、アリルショ糖やペンタエリスリトールのアリルエーテル等で架橋された、主としてアクリル酸の重合体である。また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸あるいはメタクリル酸と、アクリル酸アルキルあるいはメタクリル酸アルキルとの共重合体である。(E)成分は、pH=5.5に調整した0.5質量%水溶液において粘度50〜300Pa・sであるものが好適に用いられる。通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、リジンやアルギニン等の塩基性アミノ酸等で中和することによって(E)成分含有水溶液の粘度を上昇させることができる。カルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、化粧品原料として市販されている製品を使用することができ、具体的な製品としては、カルボキシビニルポリマーは、住友精化株式会社製の「AQUPEC HV−505E」、Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール940」、「カーボポール941」、3Vシグマ社製の「シンタレンK」、「シンタレンL」等が挙げられ、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、住友精化株式会社製の「AQUPEC HV−501ER」、Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール1342」、「カーボポールETD2020」等が挙げられる。カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができ、また、カルボキシビニルポリマーとアルキル変性カルボキシビニルポリマーを併用することもできる。
【0023】
本発明において、上記の(A)成分の重合体の含有量は、皮膚化粧料全量中に0.05〜1質量%であり、好ましくは0.1〜0.8質量%であり、更に好ましくは0.2〜0.6質量%である。0.05質量%未満では、十分なエモリエント感や保湿効果、化粧ノリへの効果が得られず、1質量%を超えると、肌へのなじみが悪くなり、べたつき感を生じてしまう。
(B)成分のシリコーン油の含有量は、皮膚化粧料全量中に0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜8質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%である。0.5質量%未満では、肌上でののびが悪く、べたつき感を生じ、10質量%を超えると配合量に見合った効果が得られない。
(C)成分のエステル油、炭化水素、又は油脂の含有量は、皮膚化粧料全量中に1〜15質量%であり、好ましくは3〜12質量%であり、更に好ましくは5〜10質量%である。1質量%未満では、十分なエモリエント感や保湿効果が得られず、15質量%を超えると、べたつき感を生じる。
(D)成分のアクリル酸ナトリウム又はアクリル酸ヒドロキシエチルと、アクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体の含有量は、皮膚化粧料全量中に0.05〜1.5質量%であり、好ましくは0.1〜1.3質量%であり、更に好ましくは0.2〜1質量%である。0.05質量%未満では、十分な保湿効果が得られず、また安定した皮膚化粧料を調製することができないことがあり、1.5質量%を超えると肌上でののびやなじみが悪く、べたつき感を生じ、化粧ノリの効果が悪くなる。
(E)成分のカルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量は、皮膚化粧料全量中に0.1〜1質量%であり、好ましくは0.2〜0.8質量%であり、更に好ましくは0.3〜0.7質量%である。0.1質量%未満では、十分な化粧ノリの効果が得られず、1質量%を超えると、肌上でののびやなじみが悪くなる。
【0024】
(A)成分と、(D)成分と(E)成分の合計の質量比(A)/(D+E)は、べたつき感の無さや化粧ノリ効果を向上させる観点から、1/5以上であることが好ましい。
(B)成分と(C)成分の合計量(B)+(C)は、エモリエント感や保湿効果を向上させる観点から、8質量%以上であることが好ましい。
(D)成分と(E)成分の合計量(D)+(E)は、経時変化に対し安定な皮膚化粧料を調製するために、0.3質量%以上であることが好ましい。また、肌上でののびやなじみが損なわれる可能性があることから、(D)+(E)は1.5質量%以下であることが好ましい。
本発明の皮膚化粧料は、水と上記(A)〜(E)成分を混合して調製することができる。また、本発明の皮膚化粧料には、化粧料に常用されている他の成分を、本発明の性能を損なわない範囲で、配合することも可能である。
製剤形態は、化粧水、乳液、ジェル、クリーム等、のいずれでもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〜8及び比較例1〜8〕
皮膚化粧料として、表1に示す組成物を調製し、下記の方法により評価を行った。その結果を表1に示す。なお、下記表記中の%とあるのは、質量%を意味する。各組成物は水酸化カリウムによりpH5.5付近に調整した。
【0026】
(1)肌上でののび(延展性)
20名の男女(25〜50才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚化粧料(約2g)を塗布した際の肌の感触について、下記の基準で評価した。
2点:肌上でののびが良いと感じた。
1点:肌上でののびがやや良いと感じた。
0点:肌上でののびが良くないと感じた。
20名の合計値を求めて、下記の基準で評価して、表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:肌上でののびが非常に良い化粧料である。
○:合計点が30点以上であり、かつ、0点の評価をしたパネラーが1人又は2人:肌上でののびが良い化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:肌上でののびがやや良い化粧料である。
×:合計点が20点未満:肌上でののびが良くない化粧料である。
【0027】
(2)肌へのなじみ性
20名の男女(25〜50才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚化粧料(約2g)を塗布した際の肌の感触について、下記の基準で評価した。
2点:肌へのなじみ性が良いと感じた。
1点:肌へのなじみ性がやや良いと感じた。
0点:肌へのなじみ性が良くないと感じた。
20名の合計値を求めて、下記の基準で評価して、表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:肌へのなじみ性が非常に良い化粧料である。
○:合計点が30点以上であり、かつ、0点の評価をしたパネラーが1人又は2人:肌へのなじみ性が良い化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:肌へのなじみ性がやや良い化粧料である。
×:合計点が20点未満:肌へのなじみ性が良くない化粧料である。
【0028】
(3)エモリエント感
20名の男女(25〜50才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚化粧料(約2g)を塗布した際の肌の感触について下記の基準で評価した。
2点:エモリエント感があると感じた。
1点:エモリエント感がややあると感じた。
0点:エモリエント感に乏しいと感じた。
20名の合計値を求めて、下記の基準で評価して、表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:エモリエント感を非常に感じる化粧料である。
○:合計点が30点以上であり、かつ、0点の評価をしたパネラーが1人又は2人:エモリエント感を感じる化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:エモリエント感をやや感じる化粧料である。
×:合計点が20点未満:エモリエント感に欠ける化粧料である。
【0029】
(4)べたつき感
20名の男女(25〜50才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚化粧料(約2g)を塗布し、10分後の肌の感触について、下記の基準で評価した。
2点:肌がべたつかないと感じた。
1点:肌がややべたつくと感じた。
0点:肌がべたつくと感じた。
20名の合計値を求めて、下記の基準で評価して、表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:べたつき感を感じない化粧料である。
○:合計点が30点以上であり、かつ、0点の評価をしたパネラーが1人又は2人:べたつき感をほとんど感じない化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:べたつき感をやや感じる化粧料である。
×:合計点が20点未満:べたつき感を感じる化粧料である。
【0030】
(5)持続的な保湿効果
皮膚化粧料約0.3gを前腕内側部に塗布し、塗布前と塗布2時間後の電気伝導度を、IBS社製3.5 MHz高周波伝導度測定装置SKICON 200EXを用いて測定した。5名の男女で実施し、塗布前後の電気伝導度の変化量の平均値(△μS)から、下記の基準で評価した。
◎:電気伝導度が極めて上昇(△μS≧50):持続的な保湿効果に優れる化粧料である。
○:電気伝導度が上昇(50>△μS≧30):持続的な保湿効果がある化粧料である。
△:電気伝導度がやや上昇(30>△μS≧10):持続的な保湿効果にやや欠ける化粧料である。
×:電気伝導度が変化しない(10>△μS):持続的な保湿効果に欠ける化粧料である。
【0031】
(6)化粧ノリ
人工皮革(出光テクノファイン(株)製「サプラーレ」)の 10 cm×10 cmの範囲に、皮膚化粧料約0.1gを化粧スポンジを使用して塗布した。5分間室温にて乾燥させた後、リキッドファンデーション約0.05gを化粧スポンジを使用して、重ねて塗布した。塗布した部位から任意に9点を選択し、分光色差計(日本電色工業(株)製「ZE2000」)を用いてハンター色差のL、a、b値を測色し、下記の計算式により9点間の色のバラツキ(△E)を算出した。
【0032】
(i)9点のL、a、b値それぞれの平均値を算出する。
AVE=(L+L+L+・・・+L+L)/9
AVE=(a+a+a+・・・+a+a)/9
AVE=(b+b+b+・・・+b+b)/9
(ii)任意の9点それぞれの値と平均値との色差を算出する。
△E=((L−LAVE+(a−aAVE+(b−bAVE1/2
△E=((L−LAVE+(a−aAVE+(b−bAVE1/2
△E=((L−LAVE+(a−aAVE+(b−bAVE1/2
・・・
△E=((L−LAVE+(a−aAVE+(b−bAVE1/2
(iii)任意の9点それぞれの値と平均値との色差の平均を算出する。
△E=(△E+△E+△E+・・・+△E+△E)/9
【0033】
そして、無塗布(皮膚化粧料を塗布していない)との値(△E)と比較した時の変化量(△E/△E)から、下記の基準で評価した。
◎:化粧ノリが極めて良好 (0.3≧△E/△E):化粧ノリが非常に良い化粧料である。
○:化粧ノリが良好 (0.5≧△E/△E>0.3):化粧ノリが良い化粧料である。
△:化粧ノリがやや良好 (1≧△E/△E>0.5):化粧ノリがあまり良くない化粧料である。
×:化粧ノリが良くない(△E/△E>1):化粧ノリが良くない化粧料である。
【0034】
【表1】
【0035】
※1:「Ceracute−L」(日油株式会社製)表1中の数字は「Ceracute−L」に含まれる(A)成分としての含有量を表す。
(Ceracute−L組成:(A)成分5%、グリセリン66.5%、1,3−ブチレングリコール28.5%)
(A)成分は、式1中のR及びRが下記表2記載の単量体60モル%と、式2中のL、L、及びRが下記表3記載の単量体40モル%から得られる共重合体である。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
※2:「SIMULGEL EG」(SEPPIC社製)表1中の数字は「SIMULGEL EG」に含まれるアクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体としての含有量を表す。
(SIMULGEL EGの組成:アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体37.5%、イソヘキサデカン22.5%、ポリソルベート80 7.5%、水32.5%)
※3「SIMULGEL NS」(SEPPIC社製)表1中の数字は「SIMULGEL NS」に含まれるアクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体としての含有量を表す。
(SIMULGEL NSの組成:アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体37.5%、スクワラン25.5%、ポリソルベート80 5.5%、水31.5%)
※4「AQUPEC HV−505E」(住友精化株式会社製)(カルボキシビニルポリマー)(0.5%水溶液(pH=5.5)粘度190Pa・s)
※5「AQUPEC HV−501ER」(住友精化株式会社製)(アルキル変性カルボキシビニルポリマー)(0.5%水溶液(pH=5.5)粘度140Pa・s)
【0039】
実施例1〜8の結果より、本発明の皮膚化粧料は、いずれも肌上でののびや肌へのなじみ性が良く、エモリエント感を有し、またべたつかず、持続的な保湿効果が得られ、かつ、化粧ノリに優れた効果が得られることが分かる。
他方、比較例1〜8では十分な性能が得られていない。すなわち、比較例1では、(A)成分が本発明規定の下限値より少なく、かつ、(B)成分が本発明規定の上限値を超えていることから、エモリエント感に乏しくなり、十分な保湿効果や化粧ノリの効果が得られておらず、比較例2では、(C)成分とは異なる、常温で固体のミツロウのみが配合されていることから、肌上でののびやなじみ性が悪くなり、またエモリエント感に乏しく、さらにべたつき感を生じている。比較例3では、(E)成分が配合されていないことから、十分な化粧ノリの効果が得られず、比較例4では、(B)成分が配合されていないため、肌上でののびが悪く、べたつき感を生じている。比較例5では、(A)成分が本発明規定の上限値を超えており、かつ、(C)成分が配合されていないことから、肌へのなじみ性が悪く、エモリエント感に乏しくなり、またべたつき感を生じ、さらに十分な化粧ノリの効果が得られず、比較例6では、(C)成分及び(D)成分が本発明規定の上限値を超えていることから、肌上でののびやなじみ性が悪くなり、またべたつき感を生じており、さらに十分な化粧ノリの効果が得られていない。比較例7では、(E)成分が本発明規定の上限値を超えていることから、肌上でののびやなじみ性が悪く、比較例8では、(B)成分とは粘度の異なるシリコーン油が配合されていることから、肌上でののびやなじみ性が悪くなり、またべたつき感を生じ、さらに十分な化粧ノリの効果が得られていない。