特許第5954645号(P5954645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5954645地中埋設構造物の浮上防止方法及びその構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5954645
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】地中埋設構造物の浮上防止方法及びその構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20160707BHJP
   E02D 31/12 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   E02D29/12 E
   E02D29/12 Z
   E02D31/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-252548(P2015-252548)
(22)【出願日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515358964
【氏名又は名称】山田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰弘
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021318(JP,A)
【文献】 特開2013−104280(JP,A)
【文献】 特開2007−132072(JP,A)
【文献】 特開2006−336434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12 − 29/14
E02D 27/32 − 27/34
E02D 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震によって地盤が液状化した地中埋設構造物の浮上防止方法であって、
緊張材を管路内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入する工程と、
直線、屈曲、落差、合流部に配置されるマンホール等点検口の内の必要箇所内部において、緊張材連結装置を設置し、前記マンホール等点検口と前記緊張材連結装置とを一体化させる工程と、
複数の緊張材連結装置同士を、前記緊張材で緊張・連結させる工程と、
を含むことを特徴とする、該方法。
【請求項2】
地震によって地盤が液状化した地中埋設構造物の浮上防止構造であって、
管路内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入した緊張材と、
直線、屈曲、落差、合流部に配置されたマンホール等点検口の内の必要箇所内部に設置した緊張材連結装置と、
からなり、前記マンホール等点検口と前記緊張材連結装置とが一体化された状態で、複数の緊張材連結装置同士が、前記緊張材で緊張・連結されていることを特徴とした、該構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時における地中埋設構造物の浮上防止方法及びその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震によって地盤が液状化した場合、管路やマンホール等点検口が不規則に浮上し、破損等によりその本来機能が損なわれるばかりでなく、マンホール等点検口が道路上に飛び出して、緊急車両等の通行に支障となる事例が発生している。
【0003】
従来、地中埋設構造物の浮上防止対策は、管路(線構造物)とマンホール等点検口(点構造物)について、それぞれ個別に実施されてきた。
【0004】
管路(線構造物)の浮上防止対策としては、「埋戻し土の締固め」、「砕石等による埋戻し」、「埋戻し土の固化」など、埋戻し土を液状化しない地盤にする対策が提案されている。
【0005】
一方、マンホール等点検口(点構造物)の浮上防止対策としては、前項に挙げた埋戻し土を液状化しない地盤にする対策以外に、「過剰間隙水圧の消散」、「重量化」、「杭・アンカー」工法などが提案されている。
【0006】
しかし、既設の地中埋設構造物の浮上防止対策については、再掘削を伴う場合、他の埋設物の移設や防護が必要になるなど、コストが高くなるとともに、施工期間が長期化し周辺環境への影響も懸念される。
【0007】
ゆえに、既設の地中埋設構造物の浮上防止対策としての実績は、マンホール等点検口(点構造物)に対する、再掘削を伴わない「過剰間隙水圧消散工法」と、部分的な再掘削または再掘削を伴わない「重量化」が主流であり、管路(線構造物)の浮上防止対策については普及が進展していない状況である。
【0008】
そこで、既設の地中埋設構造物の浮上防止対策として、再掘削を伴わないとともに現実的で安価かつ信頼性が高く、管路(線構造物)とマンホール等点検口(点構造物)を一連・一体化する方法及びその構造の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−146411
【特許文献2】特開2011−21318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
わが国の都市には、既に各種ライフラインが地中埋設構造物として網の目のように張り巡らされており、これら膨大な既設の地中埋設構造物の浮上防止対策が緊急の課題となっている。
【0011】
そこで、本発明は、再掘削を伴わないとともに現実的で安価かつ信頼性が高く、管路(線構造物)とマンホール等点検口(点構造物)を一連・一体化(数珠状化)する方法及びその構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、緊張材を管路内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入する工程と、直線、屈曲、落差、合流部に配置されるマンホール等点検口の内の必要箇所内部において、緊張材連結装置を設置し、前記マンホール等点検口と前記緊張材連結装置とを一体化させる工程と、複数の緊張材連結装置同士を、前記緊張材で緊張・連結させる工程と、を含むことを特徴とする、該方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、地震によって地盤が液状化した地中埋設構造物の浮上防止構造であって、管路内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入した緊張材と、直線、屈曲、落差、合流部に配置されたマンホール等点検口の内の必要箇所内部に設置した緊張材連結装置と、からなり、前記マンホール等点検口と前記緊張材連結装置とが一体化された状態で、複数の緊張材連結装置同士が、前記緊張材で緊張・連結されていることを特徴とした、該構造である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、既設の地中埋設構造物の浮上防止対策として、再掘削を伴わないとともに現実的で安価かつ信頼性が高く、管路(線構造物)とマンホール等点検口(点構造物)を一連・一体化(数珠状化)する方法及びその構造を実施することができる。
【0015】
本発明は、管路(線構造物)内に挿通させた帯状部材などをマンホール等点検口(点構造物)毎に直接固定するのではなく、緊張材が地中埋設構造物全体を貫通する1本の芯材となるものである。すなわち、マンホール等点検口(点構造物)の内の必要箇所内部に設置・一体化された緊張材連結装置同士を、緊張材緊張・連結し、マンホール等点検口(点構造物)を含めた管路(線構造物)を間接的に連結することで、一連の数珠状化した地中埋設構造物全体で浮上防止する方法及びその構造を実施することができる。
【0016】
本発明は、既設のみならず新設の地中埋設構造物にも適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態を示す管路とマンホール等点検口を含めた概略部分断面図である。
図2図1のA−A断面図であり、マンホール等点検口の形態別に、落差緊張部、中間部、直線・屈曲緊張部、合流緊張部における本発明の平面的な実施形態を示す図である。
図3図1のB−B断面図であり、マンホール等点検口の落差・合流緊張部における本発明の断面的な実施形態を示す図である。
図4図1のC−C断面図であり、マンホール等点検口の直線・屈曲・合流緊張部における本発明の断面的な実施形態を示す図である。
図5図1のD−D断面図であり、マンホール等点検口の中間部における本発明の断面的な実施形態を示す図である。
図6図1のE−E断面図であり、管路における本発明の断面的な実施形態を示す図である。
図7】緊張材連結装置の一例を示す斜視図である。
図8】緊張材ガイド金具の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1図8に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
【0019】
図1は、本発明の実施形態を示す概略部分断面図であり、管路1とマンホール等点検口2により構成される地中埋設構造物に、緊張材3を管路1内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入するとともに、直線、屈曲、落差、合流部に配置されるマンホール等点検口2の内の必要箇所内部において、緊張材連結装置4を設置し、マンホール等点検口2と緊張材連結装置4とを一体化させ、複数の緊張材連結装置4同士を、緊張材3で緊張・連結させる
【0020】
図5は、マンホール等点検口2の内、緊張材連結装置4を設置しない中間部における実施形態を示す概略断面図であり、緊張材3を緊張材ガイド金具6によりルーズな状態でマンホール等点検口2へ固定することが好ましい。
【0021】
図8は、緊張材ガイド金具6の一例を示す斜視図であり、緊張材3をルーズに固定するUボルト6aと、これをマンホール等点検口2の側壁へ固定する取付け金具6bで構成される。
【0022】
なお、緊張材ガイド金具6は、耐食性の高い材料が好ましい。この条件を満足する材料として、防食塗装鋼材、ステンレス鋼材などが用いられる。
【0023】
緊張材3は、地中埋設構造物に作用する揚圧力に耐えうる強度を有するとともに、軽量、高弾性、耐食性の高いものが好ましい。これらの条件を満足する材料として、連続繊維緊張材である炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などが用いられる。
【0024】
図6は、緊張材3の挿入形態の一例を示す概略断面図であり、人が入れる大口径の管路1の場合は、緊張材3を緊張材吊り金具7によりルーズな状態で管路1へ固定することが好ましい。
【0025】
なお、緊張材吊り金具7は、耐食性の高い材料が好ましい。この条件を満足する材料として、防食塗装鋼材、ステンレス鋼材などが用いられる。
【0026】
図7は、緊張材連結装置4の一例を示す斜視図であり、管路1のマンホール等点検口2での接続方法(直線、屈曲、落差、合流)がいかなる場合にも対応できる(図1図2図3図4参照)円筒状の緊張材緊張連結板4aと、マンホール等点検口2の側壁への反力伝達アーム4b、さらに底打コンクリート等5への反力伝達ベース4cで構成される。
【0027】
緊張材連結装置4は、緊張材3を緊張・連結する際の引張り及び引抜き力に耐えうる強度を有するとともに、安定した重量があり耐食性の高い材料が好ましい。これらの条件を満足する材料として、防食塗装鋼材、ステンレス鋼材などが用いられる。
【0028】
なお、緊張材連結装置4は、緊張材3の緊張時反力をマンホール等点検口2に伝達するとともに、地中埋設構造物に作用する揚圧力に耐えるため、楔やアンカーなどによりマンホール等点検口2に固定・一体化する。
【符号の説明】
【0029】
1 管路
2 マンホール等点検口
3 緊張材
4 緊張材連結装置
4a 緊張材緊張連結板
4b 反力伝達アーム
4c 反力伝達ベース
5 底打コンクリート等
6 緊張材ガイド金具
6a Uボルト
6b 取付け金具
7 緊張材吊り金具
【要約】
【課題】地震時における地中埋設構造物の浮上防止方法として、再掘削を伴わないとともに現実的で安価かつ信頼性が高く、管路(線構造物)とマンホール等点検口(点構造物)を一連・一体化(数珠状化)する方法及びその装置を提供するものである。
【解決手段】管路1とマンホール等点検口2により構成される地中埋設構造物において、管路1内面で流水等の本来機能を阻害しない部分に挿入した緊張材3を、直線、屈曲、落差、合流部に配置されるマンホール等点検口2の内の必要箇所内部において、緊張材3を緊張・連結し一体化するための緊張材連結装置4を設置する工程を含むことを特徴とする方法が提供される。好ましくは、緊張材3は、連続繊維緊張材である炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、一方、緊張材連結装置4は、防食塗装鋼材、ステンレス鋼材などの材料のいずれかである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8