特許第5954680号(P5954680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954680
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】除塵機
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20160707BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   E02B5/08 101C
   E02B5/08 101A
   E03F5/14
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-121693(P2012-121693)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-245518(P2013-245518A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397052642
【氏名又は名称】株式会社前澤エンジニアリングサービス
(73)【特許権者】
【識別番号】507313135
【氏名又は名称】都工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】小高 志郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 嘉之
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−017629(JP,A)
【文献】 実開昭57−202419(JP,U)
【文献】 実開昭56−091727(JP,U)
【文献】 実開昭64−037532(JP,U)
【文献】 特開平03−002411(JP,A)
【文献】 特開2001−314709(JP,A)
【文献】 特開昭63−190610(JP,A)
【文献】 実開昭61−058225(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
E02B 9/04
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、
前記スクリーンに沿って移動し、歯がスクリーンの目開部に入いってし渣を掻き寄せる複数のレーキと、
を有する除塵機において、
各レーキの歯は少なくとも1つ間隔置きに目開部に入いるように形成され、
先行のレーキの歯と後行のレーキの歯とにより全ての目開部に歯が入るように構成され
前記スクリーンのバーは、水流方向における中間部が最大幅となり、該中間部からそれぞれ上流側、下流側に向け漸次幅が狭くなるように配置された、水流方向を長手方向とする菱形の断面形状を呈し、
或るレーキの歯がスクリーンの目開部を通過して当該歯とバーとの隙間にし渣が入り込んだとき、当該バーが歯の無い隣りの目開部側に撓むことにより、し渣の噛み込みが防止されることを特徴とする除塵機。
【請求項2】
前記レーキの歯は、前記スクリーンのバーに沿って延設される平板部材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の除塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等に設置され、水路中の塵(以降、し渣という)を除去する除塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、スクリーンに沿って移動し歯がスクリーンの目開部に入いってし渣を掻き寄せる複数のレーキと、を有する除塵機の従来例として特許文献1、2に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1、2の技術は目開部の幅が狭い細目スクリーンに関連した技術であり、特許文献1には、スクリーン通しボルトをもつバースクリ−ンを上流側バー群とし、該上流側バー群のバー間隙に、スクリーン通しボルトをもつ下流側バー群のバーを千鳥状で、かつ、前記上流側バー群の各バーの下流端と、下流側バー群の各バーの上流端とが水流方向に略重合しないように介在させて、これらの上流側バー群のバーの下流端角の近傍と下流側バー群のバーの上流端角の近傍との隙間により微細目の目幅を形成する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、間隔をあけて配設した粗目バースクリーン及び該粗目バースクリーンの間に配設した細目バースクリーンからなるバースクリーンと、該バースクリーンにて捕捉されたごみを掻き揚げ排出するようにした粗目用レーキ及び細目用レーキからなるレーキとを備えたバースクリーン式除塵機において、粗目バースクリーンを構成する粗目用スクリーンバーと細目バースクリーンを構成する細目用スクリーンバーの板厚を同一に設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−115434号公報
【特許文献2】特開2010−236185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微細なし渣をスクリーンで捕捉しようとすると、スクリーンの目開部の幅(バーとバーの間隔)を狭くすることになるが、この目開部の幅に合わせてレーキの歯の幅も狭くすることになる。しかしながら、強度等の問題からレーキの歯を狭くするのにも限度があり、スクリーンの目開部にレーキの歯が入った状態でのクリアランス(隙間)も少なくなる。このようにスクリーンのバーとレーキの歯との間に隙間が少ないと、スクリーンに捕捉されたし渣を掻き揚げるレーキの歯がスクリーンの目開部を通過する際に、バーと歯との間にし渣の噛み込みが生じ、レーキ及びレーキを駆動する駆動原に負荷がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、微細なし渣を捕捉することができ、スクリーンに捕捉されたし渣をレーキで掻き揚げる際のし渣の噛み込みを防止して、レーキ等の負荷を低減し得る除塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、し渣を捕捉する複数のバーからなるスクリーンと、前記スクリーンに沿って移動し、歯がスクリーンの目開部に入いってし渣を掻き寄せる複数のレーキと、を有する除塵機において、各レーキの歯は少なくとも1つ間隔置きに目開部に入いるように形成され、先行のレーキの歯と後行のレーキの歯とにより全ての目開部に歯が入るように構成され、前記スクリーンのバーは、水流方向における中間部が最大幅となり、該中間部からそれぞれ上流側、下流側に向け漸次幅が狭くなるように配置された、水流方向を長手方向とする菱形の断面形状を呈し、或るレーキの歯がスクリーンの目開部を通過して当該歯とバーとの隙間にし渣が入り込んだとき、当該バーが歯の無い隣りの目開部側に撓むことにより、し渣の噛み込みが防止されることを特徴とする。
【0009】
この除塵機によれば、各レーキの歯が少なくとも1つ間隔置きにスクリーンの目開部に入いるように形成されていることにより、スクリーンに捕捉されたし渣を掻き揚げる際、バーと歯との隙間にし渣が入り込んでも、歯の無い隣りの目開部側にバーが撓むことになり、し渣の噛み込みが防止される。つまり、バーと歯との隙間に入り込んだし渣によって生じるレーキの掻揚げ力に対する抵抗力が、歯の無い目開部側にバーが撓む力に変換されることで抵抗力が減少し、その分、レーキ及びレーキの駆動源の負荷が軽減される。先行のレーキの歯と後行のレーキの歯とによりスクリーンの全ての目開部に歯が入るように構成されているため、スクリーンにし渣の掻き残し部が生じることがない。
さらに、この除塵機によれば、水流方向におけるスクリーンのバーとレーキの歯との間にできる極小間隔部の範囲を少なくすることができるので、更に、し渣の噛み込みを防止できる。
【0010】
また、本発明は、前記レーキの歯は、前記スクリーンのバーに沿って延設される平板部材から構成されていることを特徴とする。
【0011】
この除塵機によれば、し渣から受ける抵抗力に対して歯の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の除塵機によれば、スクリーンに捕捉されたし渣をレーキで掻き揚げる際のし渣の噛み込みを防止でき、レーキ及びレーキの駆動源の負荷を軽減することができる。よって、スクリーンの目開部を狭くすることができ、微細なし渣を捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した除塵機の全体説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ側面図、正面図である。
図2】(a)、(b)はそれぞれ図1(a)におけるA−A断面図、B−B断面図である。
図3】スクリーンのバーの拡大断面図である。
図4】レーキの歯の拡大側面図である。
図5】スクリーンのバーの断面形状に関する第1変形例を示す断面図である。
図6】スクリーンのバーの断面形状に関する第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)、(b)において、除塵機1は矩形断面を呈する水路に設置されている。除塵機1は、し渣を捕捉する複数のバー2Aからなるスクリーン2と、スクリーン2に沿って移動し、歯がスクリーン2の目開部2Bに入いってし渣を掻き寄せる複数のレーキ3とを有する。
【0017】
スクリーン2は、複数の縦引きのバー2Aが水路幅方向に細目(目開部2Bの幅S(図3)が概ね数mm〜10数mm程度)の間隔で並設された構成からなる。図2図3ではバー2Aを菱形の断面形状にした場合を示しており、水流方向における中間部が最大幅Wmaxとなり、該中間部からそれぞれ上流側、下流側に向け漸次幅が狭くなるように配置されている。各バー2Aは水路幅方向に延設された連結バー4に溶接等により互いに連結されている。バー2Aは鋼材等からなる。
【0018】
水路の天井には開口部5が設けられ、スクリーン2の上部は開口部5を貫通して天井上の区画まで延設されている。天井上の区画に設置された水路幅方向を軸方向とする駆動スプロケット6と、スクリーン2の下部上流寄りに設置された水路幅方向を軸方向とする従動スプロケット7との間には、側面視してスクリーン2の前面に沿う直線軌道を有するように無端のチェーン8がトラック状に掛け回される。チェーン8には図示しないブラケットを介してレーキ3が所定のピッチで複数取り付けられ、チェーン8が図1(a)における反時計回りに循環移動することでレーキ3の歯9がスクリーン2の前面のし渣を掻き揚げる。掻き揚げられたし渣は天井上の区画に配置されたホッパ(図示せず)等に排出される。
【0019】
レーキ3は水路幅方向に長手の略矩形の平板部材からなり、長手の一辺側に歯9が形成されている。各レーキ3の歯9は少なくとも1つ間隔置きに目開部2Bに入いるように形成されており、或る先行のレーキ3Aの歯9と、後行のレーキ3Bの歯9とによりスクリーン2の全ての目開部2Bに歯9が入いるように構成されている。
【0020】
たとえば、図2(a)に示すように、隣接し合う或る6つの目開部2B〜2Bに対して在る先行のレーキ3Aの歯9が1つ間隔置きに目開部2B,2B,2Bに入いり込むようになっている場合、図2(b)に示すように、後行のレーキ3Bの歯9は1つ間隔置きに残りの目開部2B,2B,2Bに入いり込むように形成されており、このように少なくとも2つのレーキ3によって全ての目開部2Bに歯9が入いるようになっている。
【0021】
また、場合により3つ以上のレーキ3によって全ての目開部2Bに歯9が入いるように構成してもよい。たとえば、3つのレーキ3によって全ての目開部2Bに歯9が入いるようにした場合、在る先行のレーキ3の歯9が2つ間隔置きに目開部2Bに入いり込み、その次の第1後行のレーキ3の歯9が残り2つの目開部2Bの内の一方の目開部2に入いり込み、次いで第2後行のレーキ3の歯9が他方の目開部2Bに入いり込むようにすればよい。
【0022】
目開部2Bの幅S(図3)が数mm程度である場合、歯9の水路幅方向の寸法はそれよりも小さなものとなるため、し渣の掻揚げ力による歯9の強度が耐え切れない場合に変形しやすくなる。したがって、歯9としてはバー2Aに沿って延設される平板部材10から構成することが好ましい。平板部材10はたとえば溶接等によりレーキ3に固設されている。歯9をバー2Aに沿って延設される平板部材10とすることにより、し渣から受ける抵抗力に対しての歯9の剛性を高めることができる。
【0023】
「作用」
例えば、スクリーン2が特にその目開部2Bの幅Sが数mm程度の微細目のスクリーンであり、そのスクリーン2の目開部2B全部にレーキ3の歯9がある場合、レーキ3の歯9が通過する際にバー2Aと歯9との間にし渣の噛み込みが生じてしまう場合がある。これに対し本発明では、各レーキ3の歯が少なくとも1つ間隔置きに目開部2Bに入いるように形成されていることにより、スクリーン2に捕捉されたし渣を掻き揚げる際、バー2Aと歯9との隙間にし渣が入り込んでも、図3に仮想線で示すように、歯9の無い隣りの目開部2B側にバー2Aが撓むことになり、し渣の噛み込みが防止される。つまり、バー2Aと歯9との隙間に入り込んだし渣によって生じるレーキ3の掻揚げ力に対する抵抗力が、歯9の無い目開部2B側にバー2Aが撓む力に変換されることで抵抗力が減少し、その分、レーキ3及びレーキ3の駆動源の負荷が軽減される。
【0024】
そして、先行のレーキ3Aの歯9と後行のレーキ3Bの歯とによりスクリーン2の全ての目開部2Bに歯9が入るように構成されているため、スクリーン2にし渣の掻き残し部が生じることがない。
【0025】
なお、各バー2Aは局所的に連結バー4により互いに連結されているため、レーキ3が連結バー4付近を通過する際のバー2Aの撓みは期待できない。しかし、それ以外の部位では連結バー4の固定間隔を広げるなどの対処により、バー2Aを充分に撓ませることが可能となる。
【0026】
図5図6にスクリーン2の断面形状の変形例を示す。図5はバー2Aを雫形状の断面とした場合であり、略半球形部11を上流側に、略円錐形部12を下流側に位置させて、略円錐形部12の先端部を連結バー4に溶接等により固定した態様を示している。この図5の態様も、図2図3に示した菱形の断面形状の場合と同様、バー2Aが、水流方向における中間部が最大幅Wmaxとなり、該中間部からそれぞれ上流側、下流側に向け漸次幅が狭くなるように配置された例である。バー2Aをこのような断面形状とすることで、水流方向におけるスクリーン2のバー2Aとレーキ3の歯9との間にできる極小間隔部の範囲を少なくすることができるので、更に、し渣の噛み込みを防止できる。
【0027】
図6はバー2Aを矩形断面を呈する平板部材から構成した場合であり、菱形や雫形状の断面とした場合に比べてバー2Aと歯9との間でできる極小間隔部の範囲が大きくなるためにし渣の目詰まりが生じやすいという問題はあるものの、撓みやすい形状という利点や汎用性の高い部材であるためバー2Aの部品コストの低減という利点を有する。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
説明した実施形態では、チェーン8がスクリーン2の上流側においてトラック状に配置されて、レーキ3の歯9がスクリーン2の前面を上方に掻き揚げる前面掻揚げ方式としたが、スクリーン2の前面を下方に掻き寄せる方式に適用してもよいし、さらに、スクリーン2の後面(背面)を上方に掻き揚げる背面掻揚げ方式やスクリーン2の背面を下方に掻き寄せる方式に適用してもよい。
また、スクリーン2のバー2Aの固定構造も、バー2Aが撓み易くなるように連結部分(連結バー4)の数を少なくしたり、連結部分が可動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 除塵機
2 スクリーン
2A バー
2B 目開部
3 レーキ
4 連結バー
9 歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6