特許第5954745号(P5954745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5954745-ムピロシンの局所用薬学的組成物 図000029
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954745
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ムピロシンの局所用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/351 20060101AFI20160707BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 47/44 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160707BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   A61K31/351
   A61K47/32
   A61K47/44
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K9/06
   A61P31/04
   A61P31/04 171
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-534305(P2013-534305)
(86)(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公表番号】特表2013-543518(P2013-543518A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2011068242
(87)【国際公開番号】WO2012052472
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】10382274.8
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513099614
【氏名又は名称】ラボラトリオス オヘール ファルマ エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス オヘル, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ゴニ アッロ, ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】パストール フェルナンデス, フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャルノス デ ミゲル, カイエターナ
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−516265(JP,A)
【文献】 特開昭62−164623(JP,A)
【文献】 特表2001−515850(JP,A)
【文献】 特表2005−538095(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01174133(EP,A1)
【文献】 特開昭63−008331(JP,A)
【文献】 特開2005−162729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 31/00−33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ペトロラタム、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル及びそれらの混合物からなる群から選択される親油性基剤;
b)ポリビニルピロリドンらなる群から選択される生体接着剤;及び
c)エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される溶媒
を含有する、ムピロシン又はその薬学的又は獣医学的に許容可能な塩の薬学的又は獣医学的無水局所用ゲル組成物。
【請求項2】
保存料、酸化防止剤、緩衝及びpH調節剤からなる群から選択される少なくとも一種の付加的な賦形剤をさらに含有する請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項3】
ムピロシンが1%〜2.5%w/wからなる量である請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項4】
親油性基剤が15%〜50%w/wからなる量である請求項3に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項5】
親油性基剤が18%〜36%w/wからなる量である請求項4に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項6】
親油性基剤が中鎖トリグリセリドである請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項7】
生体接着剤が2%〜20%w/wからなる量である請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項8】
生体接着剤が4%〜16%w/wからなる量である請求項7に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項9】
溶媒が40%〜80%w/wからなる量である請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項10】
溶媒が50%〜65%w/wからなる量である請求項に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項11】
溶媒がイソプロパノールである請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項12】
2%w/wのムピロシン;
12%w/wのポリビニルピロリドン;
21%w/wの中鎖トリグリセリド;及び
65%w/wのイソプロパノール;
を含有する請求項1に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項13】
親油性基剤が中鎖トリグリセリドである請求項5に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項14】
生体接着剤が4%〜16%w/wからなる量である請求項5に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項15】
生体接着剤がポリビニルピロリドンである請求項14に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項16】
溶媒が50%〜65%w/wからなる量である請求項8に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【請求項17】
溶媒がイソプロパノールである請求項16に記載の薬学的又は獣医学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬学の分野に言及する。より詳細には、本発明は新規な薬学的組成物の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
ムピロシン又はプソイドモン酸(シュードモン酸)Aは、化学名9-[(E)-4-[(2S,3R,4R,5S)-3,4-ジヒドロキシ-5-[[(2S,3S)-3-[(2S,3S)-3-ヒドロキシブタン-2-イル]オキシラン-2-イル]メチル]オキサン-2-イル]-3-メチルブタ-2-エノイル]オキシノナン酸及びCAS番号12650-69-0としても知られている。その化学構造は
である。
【0003】
ムピロシンは、蛍光菌(シュードモナス・フルオレッセンス)の発酵により産生される抗生物質である。ムピロシンは、細菌性イソロイシル転移RNAシンセターゼに可逆的かつ特異的に結合することにより、細菌タンパク質合成を阻害することで、広範囲のグラム陽性菌及び所定のグラム陰性菌に対して活性である。
【0004】
ムピロシンは、バクトロバンの商品名で、軟膏、クリーム、及び鼻軟膏の薬学的形態で、現在、スミスクライン・ビーチャムによって市販されている。バクトロバンは、局所用抗生物質として欧州連合(EU)及びアメリカ合衆国で承認されている。EUにおいて、ムピロシンは、ムピロシンに感受性である生物による急性一次細菌皮膚感染、例えば膿痂疹及び毛包炎、及び二次細菌感染、例えば皮膚炎の治療に効能が示されている。
【0005】
皮膚に使用されるバクトロバンの双方の局所用組成物、すなわちバクトロバン軟膏とバクトロバンクリームは、親水性軟膏基剤を用いて処方されている。バクトロバン軟膏は、ポリエチレングリコール類の混合物からなる水溶性軟膏基剤を用いて処方され、バクトロバンクリームは水で除去可能な油中水クリーム基剤を用いて処方される。
【0006】
ムピロシンとその市販の塩、例えばムピロシンカルシウムは主として疎水性であり、一般的に、親水性基剤又は水性媒体ベースのムピロシン組成物は不安定になる傾向がある。
【0007】
また、ムピロシンは親油性基剤を用いて処方されている。残念ながら、それらは、ムピロシンを溶解させるために必ずしも適切ではない。一般的に、活性成分の溶解は、局所用組成物の臨床効果を増加させるために懸濁より望ましい。溶解は、組成物から処置部位への活性成分の拡散を改善する。欧州特許出願公開第251434A2号は、ムピロシンとそのカルシウム塩の局所用の親油性軟膏及び水ベースクリームを開示している。実施例に報告されているように、提供された親油性軟膏は、1%を越える活性成分を組成物に溶解させることができていない。
【0008】
ムピロシンの他の組成物がまた組成物中のムピロシンの安定性を改善する目的で当該技術分野で開示されている。例えば、欧州特許出願公開第1174133A1号は、疎水性相の使用に基づく局所用組成物、特に非晶質ムピロシンカルシウム、疎水性相、及び溶媒としてヘキシレングリコールを含有する組成物を開示している。
【0009】
活性成分を含有する局所用クリームと軟膏は幅広く使用されているが、組成物が長時間処置部位に留まることが要求される場合は、その有用性は低減する。蒸散、湿気及び浸食のために組成物が適用部位から容易に除去されるため、局所処置の臨床的効果が損なわれ、処置部位への組成物の毎日の適用回数を増加させる必要が生じ、処置について患者のコンプライアンスを困難にする。
【0010】
より長い時間、処置部位に残る生体接着性及び皮膜形成性組成物が、局所用組成物の臨床的効果及び患者のコンプライアンスを改善するために開発されている。国際公開第19982329A1号は、送達速度調節ポリマーを含有する一般的な皮膜形成薬学的組成物を開示している。
【0011】
国際公開第200410988A1号は、速度調節疎水性ポリマーとしてエチルセルロースを用いたムピロシンの水性組成物を開示している。開示されたムピロシン組成物の効果については記載されていないが、トレチノイン組成物に対して与えられた経皮透過結果は、表皮を通じた活性成分の顕著な送達を示しており、よって活性成分が全身で利用されるようになる。皮膚を通した局所用薬剤の浸透は、市販の薬学的又は獣医学的製品の新規組成物の間で生物学的同等性を評価する場合の重要な特徴である、薬学的又は獣医学的製品の安全性特性を変えるおそれがあるため、これは不利であった。
【0012】
よって、上述した従来技術から導き出されるように、ムピロシンの市販組成物との生物学的同等性の評価に対して適切な安全性特性を維持しながら、改善された臨床効果と共に、改善された安定性を有するムピロシンの局所用薬学的又は獣医学的組成物を自由に使用できるようにすることが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明者は、ペトロラタム(ワセリン)、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル及びそれらの混合物から選択される親油性基剤;ポリビニルピロリドン及びポリメタクリレート類から選択される生体接着剤;及びエタノール、プロパノール、及びイソプロパノールから選択される溶媒を含有し、安定しており、皮膚における活性成分の増加した残留時間を示し、適切な皮膚耐性を維持しながら皮膚感染症に対して改善された臨床効果を生じるムピロシン又はその薬学的又は獣医学的に許容可能な塩の薬学的又は獣医学的無水局所用ゲル組成物を見出した。ムピロシンの残留時間の増加により、臨床的効果を維持する適用回数を減少させ、よってムピロシンを用いた局所感染の処置のコスト/効果比を改善することができる。
【0014】
さらに、本発明の薬学的又は獣医学的組成物は、さらに安全性及び送達特性に関する生物学的同等性必要条件を満たす。本発明の組成物により示されるムピロシンの浸透特性は、ムピロシンの市販組成物であるバクトロバンのものと同様である。
【0015】
また本発明の薬学的又は獣医学的組成物はまた局所用組成物の粘度、物理的及び化学的安定性及び処方の必要条件をも満たす。さらに、既知組成物とは異なり、本発明の組成物は、無色透明であり、患者による製品及び処置の承諾が得やすい。
【0016】
さらに、本発明の薬学的又は獣医学的組成物は、生体接着剤ゲルの市販と使用の必要条件を満たすための、ムピロシンの適切な安定性及び溶解性を示す。
【0017】
本発明の薬学的又は獣医学的組成物の上記利点の各一が当該技術分野における大きな発展であるが、その組合せは、市販品との生物学的同等性を評価し、局所用組成物に対する粘度、物理的及び化学的安定性及び処方の必要条件を満たしながら、皮膚における活性成分の残留時間の増加により、より効果的な薬学的組成物を局所感染の処置に適したものにする。
【0018】
よって、本発明の一態様として、本発明は、ペトロラタム、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、及びそれらの混合物から選択される親油性基剤;ポリビニルピロリドン及びポリメタクリレート類から選択される生体接着剤;及びエタノール、プロパノール、及びイソプロパノールから選択される溶媒を含有するムピロシン又はその薬学的又は獣医学的に許容可能な塩の薬学的又は獣医学的無水局所用ゲル組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例12における本発明の組成物の臨床効果のインビボアッセイのために、マウス肩部に使用された感染パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、明示的に述べていない場合、全てのパーセントは局所用薬学的組成物の全重量に対する重量基準で与えられる。
【0021】
「親油性基剤」なる用語は、本発明では、例えば油のように、無極性の液体及び半固体に強い親和性を有する局所用組成物基剤が意味される。
【0022】
特定の実施態様では、組成物は薬学的組成物である。
【0023】
本発明の組成物に使用される適切な親油性基剤は、ペトロラタム、中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル又はそれらの混合物である。
【0024】
CAS番号73398-61-5の中鎖トリグリセリドは、ココヤシ(Cocos nucifera L.)の胚乳の硬く乾燥した画分から、又は不揮発性油、又はアブラヤシ(Elaeis guineenis Jacq.)の乾燥した胚乳から抽出された固定油として定義されるよく知られている化合物である(「Pharmaceutical Excipients」, Medium-chain triglycerides monograph, Rowe RC, Sheskey PJ, 及び Owen SC編, Pharmaceutical Press and American Pharmacists Association. Electronic version, 第2006版を参照)。それらは、主としてカプリル酸及びカプリン酸の飽和脂肪酸のトリグリセリド類の混合物を含んでなり、95%以上の飽和脂肪酸を含んでいる。中鎖トリグリセリドは、軟膏、クリーム及び液状エマルションの成分として局所用薬学的製剤に使用されている。
【0025】
本発明の特定の実施態様では、親油性基剤は、ペトロラタム、中鎖トリグリセリド、及びそれらの混合物から選択される。
【0026】
本発明のさらなる特定の実施態様では、親油性基剤は、ペトロラタム、中鎖トリグリセリド又はミリスチン酸イソプロピルから選択される。より詳細には、親油性基剤は、ペトロラタム及び中鎖トリグリセリドから選択することができる。
【0027】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様では、本発明の組成物の親油性基剤は中鎖トリグリセリドである。
【0028】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の薬学的組成物の親油性基剤の量は、15%〜50%w/w、より好ましくは18%〜36%w/wからなる。
【0029】
本発明において、「生体接着性組成物」なる用語は、組成物が生体基質に接着し、長時間その場所に残りうる局所使用を意図した薬学的組成物を意味する。一般に、生体接着性組成物は、局所作用のための特定の領域に薬剤送達を局在化させ、吸収部位での接触時間を増加させるために使用される。「生体接着性賦形剤」又は「生体接着剤」は、生体組織に接着する能力を組成物に付与する天然又は合成の賦形剤である。
【0030】
本発明の組成物での使用に適した薬学的生体接着性賦形剤は、ポリビニルピロリドン及びポリメタクリレート類、すなわちメタクリル酸ポリマー及びコポリマーである。
【0031】
本発明の好ましい実施態様では、生体接着剤はポリビニルピロリドンである。
【0032】
本発明の好ましい実施態様では、組成物における生体接着剤の量は、2%〜20%w/w、好ましくは4%〜16%w/wからなる。
【0033】
本発明の特定の実施態様では、生体接着剤はポリメタクリレートであり、それは5%〜10%w/wの量で組成物に存在する。好ましくは、メタクリレートポリマーは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルの1:1コポリマーであるEudragit Lである。
【0034】
本発明の特定の実施態様では、生体接着剤はポリビニルピロリドンであり、それは10%〜20%w/wの量で組成物に存在する。
【0035】
本発明で使用される溶媒は、ムピロシンの溶解に適している、(C-C)アルコール類、すなわちエタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選択される薬学的に許容可能な溶媒である。
【0036】
本発明の好ましい実施態様では、溶媒はイソプロパノールである。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施態様では、組成物中の溶媒の量は、40%〜80%w/w、好ましくは50%〜65%w/wからなる。
【0038】
本発明の好ましい実施態様では、組成物は1%〜2.5%w/w、好ましくは2%w/wの量のムピロシンの量を含有する。ムピロシンの用量はムピロシン遊離酸に関して示しているが、ムピロシンの薬学的に許容可能な塩又は水和物を含む組成物もまた本発明の範囲に入り、活性成分の用量はムピロシン遊離酸の用量と等価である。
【0039】
本発明の好ましい実施態様では、組成物は、保存料、酸化防止剤、緩衝及びpH調節剤からなる群から選択される少なくとも一種の付加的な賦形剤をさらに含有する。
【0040】
局所用薬学的組成物に適切な保存料及び酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸アルキル、例えば没食子酸プロピル又はエチル、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン及びその塩、ベンジルアルコール、及びその混合物から選択することができる。さらに、本発明の組成物は、緩衝及びpH調節剤、例えばトリエタノールアミン、トロメタミン、及びリン酸塩、例えば一ナトリウム、二ナトリウム及び三ナトリウム塩を含有しうる。
【0041】
さらに、本発明の薬学的組成物は、製品の風味及び外観を改善するために、当業者に知られているものから選択される香味料及び着色料を含有することができる。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、局所用ゲルの処方に適した当該技術分野で知られた方法により調製することができる。一例として、本発明に係る薬学的組成物は、攪拌しながら選択された溶媒にムピロシンを溶解させることによって調製することができる。ついで、生体接着剤を、穏やかに攪拌しつつゆっくりと添加し、最後に攪拌し続け、親油性基剤を添加する。本発明の組成物は30分から1時間静置させた後に得られる。付加的な成分は別々の添加工程で添加されるか、処方混合物へのその添加前に、上述した賦形剤及び溶媒と共に混合されうる。
【0043】
本発明の特定の実施態様では、本発明の組成物は、次の一般的組成物によって定まる:
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
ベンジルアルコールは、穏やかな攪拌下、さらなる最終工程で添加される。
【0049】
BHA/BHTは、強い攪拌下、さらなる最終工程で添加される。
【0050】
トロメタミンは、攪拌下、一定のpHにおいて、さらなる最終工程で添加される。
【0051】
上の一般的処方により表した全ての組成物中の成分の合計は100%である。
【0052】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、本発明のムピロシンの局所用無水ゲル組成物は、2%w/wのムピロシン、12%w/wのポリビニルピロリドン、21%w/wの中鎖トリグリセリド、及び65%w/wのイソプロパノールを含有する。
【0053】
明細書及び特許請求の範囲において、「含有する、含む(comprise)」なる用語及びその変形例は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又は工程を排除することを意図したものではない。本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、明細書を調べれば当業者には明らかになるであろうし、又は本発明の実施により知得されうる。次の実施例及び図面は例証のために提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、ここに記載する特定の好ましい実施態様の全ての可能な組合せを包含する。
【実施例】
【0054】
実施例1:ムピロシンの生体接着性局所用ゲル
【0055】
2gのムピロシンを、全部が溶解するまで、65gのイソプロパノール中で攪拌した。ついで、12gのポリビニルピロリドン(Kollidon 90F)を低回転数での攪拌下、ゆっくりと添加した。攪拌を続けながら、21gの中鎖トリグリセリドを添加した。30分から1時間休ませた後、100gの生成組成物が、凝集物のない透明なリポゲルとして得られた。
【0056】
次の実施例2から9を、上記調製方法に従って調製した。得られた全ての組成物がムピロシンの適切な溶解を示した。
【0057】
実施例2
【0058】
実施例3
【0059】
実施例4
【0060】
実施例5
実施例5の組成物は実施例1について記載した方法に従い、中鎖トリグリセリドの添加後に3gのベンジルアルコールをさらに添加して得た。
【0061】
実施例6
実施例6の組成物は実施例5の方法に従って得た。
【0062】
実施例7
実施例7の組成物は実施例6の方法に従って得た。
【0063】
実施例8
【0064】
実施例9
実施例9の組成物は、実施例5に記載の方法に従い、ムピロシンの溶解後に攪拌しつつ1gのEudragit L12.5をさらに添加して得た。
【0065】
比較例10
2つの親和性組成物を処方し、生体接着性親水性ゲル基剤のバイアビリティーを試験した。双方の組成物は、中鎖トリグリセリドの代わりにプロピレングリコールを添加した以外は実施例1の方法に従って得た。
比較親水性組成物A
比較親水性組成物B
【0066】
組成物Aは、非常に高い空気吸収性を有する非常に流動性のヒドロゲルとして得られた。数時間静置した後、ムピロシンの凝集物が現れ、活性成分が沈殿したことが示された。
【0067】
組成物Bは、凝集物を含む非常に粘性のヒドロゲルとして得られ、15分間ホモジナイズして均質なゲルを得た。しかしながら、一晩静置後、組成物は成分の沈殿のため濁りと凝集物を示した。
【0068】
実施例11:
ムピロシン組成物の経皮浸透アッセイ
経皮浸透アッセイを「Guidance document for the conduct of skin absorption studies」 OECD series on testing assessment, No.28 ENV/JM/MONO (2004) 2.05-Mar-2004に従って実施した。
【0069】
実施例1及び2の組成物を、市販品であり、比較製品として含められるバクトロバン軟膏と一緒にアッセイした。
【0070】
直径1.8cm、面積2.54cmのフランツセルを使用した。0.4mm厚のヒトの腹部皮膚を浸透膜として使用した。皮膚は再構成外科手術から得、使用前に処理した。選択された皮膚の完全性は経皮水分喪失値によりチェックした。各組成物は、個体間変動をもたらす集団の代表となる異なった由来の皮膚膜の集団(n=6)でアッセイした。
【0071】
300mgのアッセイ組成物をドナーチャンバーに配した。ジャケットヒーターによって32±1℃に維持された含水アルコール溶液80:20v/vをレセプター流体として使用した。次のサンプリング時間:2、4、8及び12時間で、レセプターチャンバーからサンプリングを実施した。サンプル容量は0.3mlであった。
【0072】
アッセイ毎に18の細胞を使用し、4回のアッセイを実施した。12の細胞を使用した5回目のアッセイは、プラシーボ組成物で12時間でのみに実施した。ムピロシンのHPLC/UV滴定まで、サンプルを−20℃に保存した(カラム:LiChrosper(登録商標)60RP-select B(5μm)250mm×4mm;溶出液:アセトニトリル:酢酸アンモニウム0.05M、pH6.327.5:72.5;フラックス速度1ml/分)。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
浸透データは、アッセイされた組成物におけるムピロシンの全重量に対して、浸透したムピロシンの重量のパーセントとして提供される。中央値は、生体サンプルの可変性による測定の位置母数を提供するために示される。
【0077】
得られたデータを、12時間での3回アッセイされた組成物からのムピロシンの浸透性の差を証明するためにKruskall-Wallisノンパラメトリック統計検定により処理した。また、Dunn多重比較検定を実施して、どの組成物が前記差異を示したかを特定した。表5には統計分析の結果を示す。
【0078】
【0079】
結論として、経皮浸透アッセイの結果によれば、本発明の組成物を投与して12時間後、ヒトの皮膚を通って浸透したムピロシンの量は、アッセイされた組成物については、関連性も差異も示されなかった。よって、アッセイされた組成物は、類似した全身的安全性特性を示し、これはまた市販品であり、比較品として含まれるバクトロバンにも類似している。
【0080】
8時間での皮膚におけるムピロシンの残留性
8時間における浸透アッセイに使用された皮膚膜を0.1のラウリル硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、ついで皮膚を乾燥させ、計量した。ムピロシンを抽出するため、皮膚を50:50v/vの含水アルコール溶液中に、超音波処理下、一定温度で20分間浸した。
【0081】
【0082】
得られたデータを、8時間後のアッセイ組成物からのムピロシンの皮膚中での残留性の差異を証明するためにKruskall-Wallisノンパラメトリック統計検定により処理した。また、どの組成物が前記差異を示したかを特定するためにDunn多重比較検定も実施した。ヒトの皮膚から抽出されたムピロシンのデータは、アッセイ組成物中におけるムピロシンの全重量に対する抽出ムピロシンの重量パーセントとして与えられる。表7は統計分析の結果を示す。
【0083】
【0084】
結論として、残留アッセイの結果によれば、本発明の組成物を投与して8時間後、ヒトの皮膚に残存していたムピロシンの量は、バクトロバン軟膏の投与後に残存している量よりも有意に多かった。
【0085】
適用から8時間における皮膚での薬剤残留の高い値は、8時間で、生成物が再度適用されると、最初の適用から皮膚に残留している薬剤の量がより多くなり、より一定の薬剤残留を生じるため、1日3回適用する投与レジメンにおいて有利である。よって、本発明の組成物は、投与の回数を少なくすることを可能にし、臨床的効果を維持し、ムピロシンでの局所感染の治療のコスト/効果比を改善する。
【0086】
実施例12:ムピロシン組成物のインビボ効果
実施例1の組成物とバクトロバンのインビボ効果を、Gisbyら, 「Efficacy of a new cream formulation of mupirocin: comparison with oral and topical agents in experimental skin infections.」 Antimicrob. Agents Chemother., vol. 44, pp. 255-260に基づく黄色ブドウ球菌感染のマウスモデルにおいてアッセイした。
【0087】
黄色ブドウ球菌株は、抗菌感受性検査においてムピロシンに対して過敏性を示したfaringeous感染又は感染創傷になっているヒト患者から単離した。滅菌支持体として使用される縫合糸は、動物へのその適用前に単離した菌株から得た微生物の懸濁液に浸した。アッセイされたラットに感染を誘発させるために使用した外科手術を図1に示す。
【0088】
2つの点は、それらの間を1cm離して、Z1の中線にマークした。感染した糸を、それらの一方に挿入し、他方から出現させた。ついで、糸を双方のマークした点において可能な限り皮膚近傍で切断し、糸を糸方向の双方の感覚で引いた。よって、糸の両端は皮膚に挿入された。最後に、マークした点の間の長さに沿って真っ直ぐに切開し、必要な場合は、単一ステッチで真ん中を縫合した。同じ手順をZ3で続け、コントロールとして使用するためにZ2は未感染のままにした。
【0089】
10匹の動物の2つの群を、一方は実施例1の組成物、他方はバクトロバンで処置した。アッセイされた組成物を、4日間、1日3回投与した。全創傷領域を対応組成物の投与後に被覆した。
【0090】
処置後のコロニー創始ユニットのカウントを双方の組成物について以下に示す。
【0091】
該結果によれば、コロニー創始ユニットのカウントは、本発明の組成物で処置された創傷の場合には有意に少なかった。よって、本発明の生体接着性ゲルを用いた処置は、バクロトバンで処置された場合よりも、有意に効果的である。さらに、本発明の組成物の残留時間及び臨床効果の増加にもかかわらず、実施例1の組成物を用いた処置に対して、動物は非常に良好な耐性を示した。
【0092】
【非特許文献1】「Guidance document for the conduct of skin absorption studies」 OECD series on testing assessment, No.28 ENV/JM/MONO (2004) 2.05-Mar-2004
【非特許文献2】「Guidance for industry, nonsterile semisolid dosage forms」SUPAC 1997年5月
【非特許文献3】Gisbyら, 「Efficacy of a new cream formulation of mupirocin: comparison with oral and topical agents in experimental skin infections.」 Antimicrob. Agents Chemother., vol. 44, pp. 255-260
【非特許文献4】「Pharmaceutical Excipients」, Medium-chain triglycerides monograph, Rowe RC, Sheskey PJ, 及び Owen SC編, Pharmaceutical Press and American Pharmacists Association. Electronic version, 第2006版
【特許文献1】欧州特許出願公開第0251434A2号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1174133A1号
【特許文献3】国際公開第199823291A1号
【特許文献4】欧州特許出願公開第200410988A1号
図1