特許第5954746号(P5954746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 香川県の特許一覧 ▶ 株式会社長峰製作所の特許一覧

特許5954746可視光遮蔽性白色系セラミックス、その製造方法および白色系セラミックス可視光遮蔽体
<>
  • 特許5954746-可視光遮蔽性白色系セラミックス、その製造方法および白色系セラミックス可視光遮蔽体 図000003
  • 特許5954746-可視光遮蔽性白色系セラミックス、その製造方法および白色系セラミックス可視光遮蔽体 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954746
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】可視光遮蔽性白色系セラミックス、その製造方法および白色系セラミックス可視光遮蔽体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/10 20060101AFI20160707BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   C04B35/10 Z
   C04B35/48 C
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-39297(P2014-39297)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-163558(P2015-163558A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592167411
【氏名又は名称】香川県
(73)【特許権者】
【識別番号】592129486
【氏名又は名称】株式会社長峰製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕三
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 祐輔
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−199415(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5質量%以上の3成分を基本組成とする原料粉末を用いた白色系セラミック焼結体であって、白色系セラミック焼結体は組織内に酸素欠陥酸化チタンを含むものであること、白色度の度合である明度L70以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下の物性を有することを特徴とする可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項2】
原料粉末の基本組成中酸化チタンが5〜15質量%である、請求項1に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項3】
原料粉末の粒子径は平均粒子径0.5μm以下である、請求項1または2に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項4】
焼結密度90%以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項5】
焼結密度95%以上である、請求項4に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項6】
曲げ強さ500MPa以上である、請求項1ないし5のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項7】
白色度の度合である明度Lが80以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.05%以下の物性を有する、請求項1ないし6のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項8】
COレーザーによる印字が明瞭である、請求項1ないし7のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項9】
体積固有抵抗1010Ω・cm以下の低い抵抗値で静電気対策に有効な素材である、請求項1ないし8のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【請求項10】
色調が白色系であって、機械的特性に優れる緻密体であるとともに、光の内部散乱や透過を生じない光学特性を有する可視光を遮蔽するための遮蔽体であって、この遮蔽体は、請求項1ないし9のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体からなることを特徴とする白色系セラミックス可視光遮蔽体。
【請求項11】
原料粉末として、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5質量%以上の3成分を基本組成とし、均一に混合し、成形し、カーボン存在下1400〜1450℃の高温にて還元焼成し、酸化チタン結晶中に酸素欠陥を生じさせたn型半導体とすることにより、黒色化と同時に導電性を付与し、続いて、酸化雰囲気でアニール処理し、酸素欠陥酸化チタンを残存させつつ、白色化し、白色度の度合である明度L70以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下の物性を有するものとすることを特徴とする、可視光遮蔽性白色系セラミックの製造方法。
【請求項12】
原料粉末の基本組成中酸化チタンが5〜15質量%である、請求項11に記載の可視光遮蔽性白色系セラミックスの製造方法。
【請求項13】
原料粉末の粒子径は平均粒子径0.5μm以下である、請求項11または12に記載の可視光遮蔽性白色系セラミックスの製造方法。
【請求項14】
白色度の度合である明度Lが80以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.05%以下の物性を有するものとすることを特徴とする、請求項11ないし13のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミックスの製造方法。
【請求項15】
アニール処理は、アニール温度600〜1000℃で行われる、請求項11ないし14のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミックの製造方法。
【請求項16】
アニール処理は、焼成過程において、還元焼成後、降温時に適切なアニール温度となったときに酸素を炉内に導入して行われる、請求項15に記載の可視光遮蔽性白色系セラミックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光遮蔽性白色系セラミックス、その製造方法および白色系セラミックス可視光遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子、半導体レーザー、受光素子等の半導体デバイスを搭載するパッケージには、光半導体の誤動作を防ぐために遮光性が求められており、不要光がパッケージ内部へ入射するのを防止する必要がある。この対策として、例えば、特許文献1は、白色磁器と黒色磁器を組み合わせたパッケージが提案されている。すなわち、照射された光の大部分を外側の白色層で反射し、透過した光を内側の黒色層で吸収することで遮光性をもたせるものである。しかしながら、近年、電子部品の微細化および高集積化が求められており、2種素材を接合させた構造から成るパッケージング材料はこれら微細化の妨げとなり得る恐れがあり、単一素材かつ一体構造において同様の遮光性能を有するセラミックス材料が望まれている。
【0003】
一方、ICチップ等の電子部品を搭載するプリント基板には、耐熱性や耐食性、機械特性に優れるセラミックス材料が用いられており、基材とプリント配線・搭載部品の識別を明確にするため、セラミックス材料の色調は白色系が望まれている。白色系セラミックス材料の多くは緻密であり、可視光に対して高い反射率を示す反面、素材表面を通過した光が内部散乱するとともに、ある程度の光の透過は避けられない。このような現象は、例えば、レーザー光を用いた画像処理検査装置等にとっては弊害となる。すなわち、測定・検査の方式としては、測定対象となる基板表面をスポッティングして反射光を観察するものであるが、前述の内部散乱がスポッティングを阻害するため、反射状態を観察する事が出来ない。内部散乱および透過対策としては、一部に黒色系セラミックスが提案されているが、表面反射率の低下により測定・検査時間の長時間化や搭載部品・プリント配線との識別が困難になるといった問題がある。また、アセンブリ工程における品種識別や個体識別管理のため、基板表面に二次元バーコードやロットナンバー等を印字し、画像認識装置にて識別する必要があるが、黒色系セラミックスでは基板と印字のコントラストが得られず、画像認識精度が低下する恐れがある。一方で、多孔質白色セラミックスとすることで遮光することも可能であるが、素材内部に多くの気孔を有すため機械的特性の信頼性は低いものとなる。
【0004】
このような経緯から、機械的特性に優れる緻密体であるとともに、光の内部散乱や透過を生じない特殊な光学特性を有する白色系セラミックス材料が求められている。
また、これらセラミックスは、多くは絶縁性が必要であるが、昨今、デバイスの高集積化・小型化により、耐電圧は低下しており、静電破壊に対して非常に敏感となるため、基板やパッケージ材料には静電破壊対策性能(ESD対策性能)を有することが必要な場合もある。
しかしながら、このような可視光遮蔽特性を有する白色系セラミックスは現在のところ報告されておらず、一部代替材料に窒化物系セラミックスが提案されているものの、色調が安定せず、高価であり、市場において満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4284161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体・電子部品関連向けとして、可視光遮蔽性等の特殊光学特性を有するとともに、緻密かつ優れた機械的特性を有する一体型の白色系セラミックスおよび白色系セラミックス可視光遮蔽体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)ないし(9)の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体を要旨とする。
(1)アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5質量%以上の3成分を基本組成とする原料粉末を用いた白色系セラミック焼結体であって、白色系セラミック焼結体は組織内に酸素欠陥酸化チタンを含むものであること、白色度の度合である明度L70以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下の物性を有することを特徴とする可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(2)原料粉末の基本組成中酸化チタンが5〜15質量%である、上記(1)に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(3)原料粉末の粒子径は平均粒子径0.5μm以下である、上記(1)または(2)に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(4)焼結密度90%以上である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(5)焼結密度95%以上である、上記(4)に記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(6)曲げ強さ500MPa以上である、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(7)白色度の度合である明度Lが80以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.05%以下の物性を有する、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(8)COレーザーによる印字が明瞭である、上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
(9)体積固有抵抗1010Ω・cm以下の低い抵抗値で静電気対策に有効な素材である、上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体。
【0008】
本発明は、以下の(10)の白色系セラミックス可視光遮蔽体を要旨とする。
10)色調が白色系であって、機械的特性に優れる緻密体であるとともに、光の内部散乱や透過を生じない光学特性を有する可視光を遮蔽するための遮蔽体であって、この遮蔽体は、上記(1)ないし()のいずれかに記載の白色系セラミック焼結体からなることを特徴とする白色系セラミックス可視光遮蔽体。
【0009】
また、本発明は、以下の(11)ないし(16)の可視光遮蔽性白色系セラミック焼結体の製造方法を要旨とする。
11)原料粉末として、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5質量%以上の3成分を基本組成とし、均一に混合し、成形し、カーボン存在下1400〜1450℃の高温にて還元焼成し、酸化チタン結晶中に酸素欠陥を生じさせたn型半導体とすることにより、黒色化と同時に導電性を付与し、続いて、酸化雰囲気でアニール処理し、酸素欠陥酸化チタンを残存させつつ、白色化し、白色度の度合である明度L70以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下の物性を有するものとすることを特徴とする、可視光遮蔽性白色系セラミックの製造方法。
(13)原料粉末の基本組成中酸化チタンが5〜15質量%である、上記(12)に記載の白色系セラミックスの製造方法。
(14)原料粉末の粒子径は平均粒子径0.5μm以下である、上記(12)または(13)に記載の白色系セラミックスの製造方法。
(15)アニール処理は、アニール温度600〜1000℃で行われる、上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の白色系セラミックの製造方法。
(16)アニール処理は、焼成過程において、還元焼成後、降温時に適切なアニール温度となったときに酸素を炉内に導入して行われる、上記(15)に記載の白色系セラミックの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、半導体・電子部品関連向けとして、可視光遮蔽性等の特殊光学特性を有するとともに、緻密かつ優れた機械的特性を有する一体型の白色系セラミックスおよび白色系セラミックス可視光遮蔽体を提供することができる。基材とプリント配線・搭載部品の識別を明確にするため、色調は白色系のセラミックス材料であって、ICチップ等の電子部品を搭載するプリント基板に利用可能な耐熱性や耐食性、機械特性に優れるセラミックス材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】COレーザーによる二次元バーコードの印字(a)実施例、(b)比較例
図2】可視レーザー光(レーザー波長650〜660nm、出力1mW)を照射した様子(a)本発明品、(b)従来品、両試料ともに厚0.7mm
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、可視光を緻密な白色系セラミックスに入射させると、光の多くは反射するが一部は内部散乱し、透過する。このセラミックスに可視光遮蔽性を付与するには、光を表面で反射させるとともに、セラミックス素地中に可視光を吸収する物質を介在させることで可視光の内部散乱を少なくし、透過を防止する必要がある。そこで、本発明は、その物質として酸素欠陥酸化チタンを調製し、セラミックス組織内に導入することで、可視光遮蔽性機能を有する新規の白色系セラミックスを創生しようとするものである。
【0013】
このセラミックスの主な調製方法は次のとおりである。すなわち、アルミナ(Al)、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア(Y−ZrO)、酸化チタン(TiO)の粉末を、配合範囲を規定する比率内で均一に混合し、所望の形状に成形する。イットリア安定化ジルコニアおよびイットリア部分安定化ジルコニアは、ジルコニアを元とした酸化物で、酸化イットリウムを添加して、室温下でのジルコニアの結晶構造を安定化させたものである。「ジルコニア(酸化ジルコニウム)」(化学式: ZrO)と「イットリア(酸化イットリウム)」(化学式: Y)から成っている。安定化されていないジルコニアは高温領域で相転移を起こすため、立方晶または正方晶での安定化を図るために安定化剤として、酸化イットリウムを2〜10%程度加えたものである。本発明において、Y−ZrOは、イットリア(Y)で安定化あるいは部分安定化したジルコニアであり、望ましくは、イットリアがジルコニアに対して、2〜4mol%添加されたジルコニアである。
次に、カーボン存在下で1400〜1450℃の高温にて還元焼成し、酸化チタン結晶中に酸素欠陥を生じさせたn型半導体とすることにより、黒色化と同時に導電性を付与する。次いで、これを酸化雰囲気の適切な条件にてアニール処理することで、若干量の酸素欠陥酸化チタンを残存させつつ、白色化させる。酸化チタン自体は白色で、酸素欠陥酸化チタンが生じると黒色に近づく。黒色の原因は酸素欠陥酸化チタンであることは明らかであり、酸化雰囲気でアニールすると酸素欠陥が減少することで白色化していく。酸素欠陥酸化チタンの存在は、巨視的にみて色調に直結するものであり、色調で酸素欠陥酸化チタンの量を間接的に評価できる。
【0014】
本発明のセラミックスの物性としては、白色度の度合である明度Lが70以上、望ましくは80以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下、望ましくは0.05%以下、COレーザー等による二次元バーコードの印字が鮮明で画像認識が良好であること、相対密度90%以上、望ましくは95%以上、曲げ強さ500MPa以上であり、酸素欠陥酸化チタンをやや多めに残存させ、体積固有抵抗1010Ωcm以下のESD対策性能も付与することが可能である。本発明において、相対密度90%以上とは、理論密度と比較したかさ密度が90%以上の意味である。
【0015】
本発明のセラミックスを作製するにあたり、原料粉末の配合比が重要であり、アルミナが20〜70質量%、ジルコニアが15〜70質量%、酸化チタンが5質量%以上望ましくは5〜15質量%であることが必須である。アルミナ含有量が上記以下では、可視光透過率が高くなり、試料厚み1mmのとき最大0.1%以上となる。また、ジルコニアが上記範囲外および酸化チタンの含有量が5質量%未満ではCOレーザー等による二次元バーコードの印字が不明瞭となり、画像認識が困難となる。COレーザーにより印字が明瞭であるとは画像認識が良好であることを意味している。
原料粒子径はサブミクロン粉末であることが必要で、平均粒子径0.5μm以下がよい。粒子径が大きくなると緻密化するのに高温を要し、機械的特性も低下する。
【0016】
本発明のセラミックスを作製するにあたり、アニール温度が重要であり、アニール温度600〜1000℃である必要がある。アニール温度が低いと白色度の度合である明度Lが70未満となり、COレーザー等による二次元バーコードの印字のコントラストが得られず、画像認識が困難となる。一方、アニール温度が1000℃より高くなると可視光透過率が高くなり、試料厚み1mmのとき最大0.1%以上となる。
また、本発明のセラミックスを作製するにあたり、必ず一旦、還元焼成により黒色化させ、酸化雰囲気でアニール処理により脱色化する必要があり、還元焼成を介さずに直接酸化雰囲気焼成により焼結体を作製しても可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以下とはなりえない。ただし、焼成過程において、還元焼成後、降温時に適切なアニール温度となったときに酸素を炉内に導入し、脱色化することも可能である。
【0017】
本発明の白色系セラミックス可視光遮蔽体は、色調が白色系であって、機械的特性に優れる緻密体であるとともに、光の内部散乱や透過を生じない光学特性を有する可視光を遮蔽するための遮蔽体である。この遮蔽体は、本発明の上記の白色系セラミック焼結体、すなわち、半導体・電子部品関連向けとして、可視光遮蔽性等の特殊光学特性を有するとともに、緻密かつ優れた機械的特性を有する一体型の白色系セラミックスからなることを特徴とする。本発明の白色系セラミックス可視光遮蔽体は、基板及びそれを用いた発光素子搭載用パッケージ、それを用いた発光装置に関する分野において利用可能である。
【実施例】
【0018】
本発明の詳細を実施例および比較例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものでない。
表1の各評価項目の測定法、試験法などについて説明する。
(1)密度
理論密度は、各構成成分の理論密度の配合比率により算出したものである。なお、ジルコニアについては、結晶構造が立方晶、正方晶、単斜晶が混在するものであり、これらの比率は、X線回折装置を用いて回折ピーク強度の比率から解析し、理論密度の計算に用いた。かさ密度は、水を媒液としたアルキメデス法で測定し、理論密度に対するかさ密度の割合を相対密度とした。
(2)COレーザー印字の判定
○、×、△の評価基準
印字された二次元バーコード読取の成否としては、CMOSカメラ(画素数1210万画素、対物距離5.0cm)を用いて撮影した場合に、1.0秒以内に読取可能であるかどうかを基準としている。表1中 ○は1.0秒以内に読取可能(実際は瞬時に認識)、△は1.0秒を超えて読取可能、×は読取不可である。
(3)体積固有抵抗
測定はJIS K6911に準じて行った。印可電圧は10V〜1000V、2重リング電極と金属板で試料を挟み込み 電圧を印可した際の電流値を測定し、 試料厚みから体積固有抵抗を算出した。
(4)曲げ強さ
約2×4×35mmの試験片をダイヤモンドカッターで切り出し、JISR1601に準じて、三点曲げにより測定した。
(5)色彩測定
色彩計を用いて、JIS Z8729に示されるL表色系により評価した。ここで、Lは明度、a、bは色度を示す。
(6)可視光透過率
自記分光光度計を用いて測定した。光源は、可視光域においては50Wハロゲンランプとし、スキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔1/0nmとした。
【0019】
[実施例1〜16]
原料粉末として,高純度Al粉末(純度99.99%,平均粒子径180nm)、3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm)、および焼結助剤として、Mg(OH)粉末(純度99.9%、平均粒子径50nm)
を用いた。配合例を表1に示す。いずれの実施例も、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲内とした。
スラリーは,水を溶媒として、固形分濃度25〜27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して0.3〜1.5質量%使用して,ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して,各粉末を分散させた。この際,焼結助剤のMg(OH)を溶解し,ポリアクリル酸マグネシウム錯体(PAA-Mg)として添加した。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、1000℃の大気雰囲気で脱脂し、カーボン存在下のアルゴン雰囲気中で焼成温度1400〜1450℃にて焼成した。焼成後、焼結体を600〜1000℃の酸化雰囲気でアニールして、所望の色調に調製した。
【0020】
いずれの実施例も、白色度の度合である明度Lが70以上、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.05%以下、COレーザー等による二次元バーコードの印字が鮮明で画像認識が良好であり、相対密度90%以上となっている。アニール温度をやや低くした実施例3および15については、体積固有抵抗10ΩcmオーダーのESD対策性能が付与されている。
【0021】
[比較例1〜3]
原料粉末として、高純度Al粉末(純度99.99%、平均粒子径180nm)、3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm)を用いた。配合例を表1に示す。いずれの比較例も、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲を外れている。比較例1はジルコニアを添加しておらず、比較例2はジルコニアが15質量%未満、比較例3は酸化チタンが5質量%未満である。
スラリーは、水を溶媒として、固形分濃度25〜27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して0.3〜1.5質量%使用して、ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して、各粉末を分散させた。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、1000℃の大気雰囲気で脱脂し、カーボン存在下のアルゴン雰囲気中で焼成温度1400℃にて焼成した。焼成後、焼結体を1000℃の酸化雰囲気でアニールした。
【0022】
いずれの比較例も、白色度の度合である明度Lが70以上であるが、配合比が本発明の範囲外であることから、COレーザー等による二次元バーコードの印字が不明瞭であった。
【0023】
[比較例4〜6]
原料粉末として,高純度Al粉末(純度99.99%,平均粒子径180nm)、3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm)、および焼結助剤として、Mg(OH)粉末(純度99.9%、平均粒子径50nm)を用いた。配合例を表1に示す。いずれの比較例も、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲内とした。
スラリーは,水を溶媒として、固形分濃度25〜27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して0.3〜1.5質量%使用して、ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して,各粉末を分散させた。この際、焼結助剤のMg(OH)を溶解し、ポリアクリル酸マグネシウム錯体(PAA-Mg)として添加した。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、1000℃の大気雰囲気で脱脂し、カーボン存在下のアルゴン雰囲気中で焼成温度1450℃にて焼成した。焼成後、焼結体を1100〜1200℃の酸化雰囲気でアニールして、所望の色調に調製した。
【0024】
いずれの比較例も、白色度の度合である明度Lが70以上であり、COレーザー等による二次元バーコードの印字が鮮明で画像認識が良好であり、相対密度90%以上となっている。しかしながら、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以上であり、十分な可視光遮蔽効果が得られなかった。
【0025】
[比較例7〜10]
原料粉末として、高純度Al粉末(純度99.99%、平均粒子径180nm),3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm)を用いた。配合例を表1に示す。いずれの比較例も、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲を外れており、ジルコニア含有量が多いものであり、比較例8はアルミナを添加していない。
スラリーは,水を溶媒として、固形分濃度25〜27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して0.3〜1.5質量%使用して、ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して,各粉末を分散させた。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、1000℃の大気雰囲気で脱脂し、カーボン存在下のアルゴン雰囲気中で焼成温度1400〜1450℃にて焼成した。焼成後、焼結体を1000℃の酸化雰囲気でアニールした。
【0026】
いずれの比較例も、白色度の度合である明度Lが70以上であり、COレーザー等による二次元バーコードの印字が鮮明で画像認識が良好であり、相対密度90%以上となっている。しかしながら、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以上であり、十分な可視光遮蔽効果が得られなかった。
【0027】
[比較例11]
原料粉末として、高純度Al粉末(純度99.99%、平均粒子径180nm)、3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm),および焼結助剤として,Mg(OH)粉末(純度99.9%、平均粒子径50nm)を用いた。配合例を表1に示すが、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲内とした。
スラリーは、水を溶媒として、固形分濃度27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して1.0質量%使用して、ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して,各粉末を分散させた。この際,焼結助剤のMg(OH)を溶解し,ポリアクリル酸マグネシウム錯体(PAA-Mg)として添加した。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、1000℃の大気雰囲気で脱脂し,カーボン存在下のアルゴン雰囲気中で焼成温度1450℃にて焼成した。焼成後、焼結体を500℃の酸化雰囲気でアニールした。
【0028】
白色度の度合である明度Lが70未満であり、COレーザー等による二次元バーコードの印字のコントラストが得られず、画像認識が困難となった。
【0029】
[比較例12〜13]
原料粉末として、高純度Al粉末(純度99.99%、平均粒子径180nm)、3molY-ZrO粉末(平均粒子径60〜80nm)、TiO粉末(純度99.9%、平均粒子径50−130nm)、および焼結助剤として、Mg(OH)粉末(純度99.9%、平均粒子径50nm)を用いた。配合例を表1に示すが、アルミナ20〜70質量%、イットリアで安定化あるいは部分安定化したジルコニア15〜70質量%、酸化チタン5〜15質量%の範囲内とした。
スラリーは、水を溶媒として、固形分濃度27vol%とし、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を原料粉末に対して1.0質量%使用して、ゼータポテンシャルの絶対値が十分高い条件になるようにpH調整(pH7〜8)して、各粉末を分散させた。この際、焼結助剤のMg(OH)を溶解し、ポリアクリル酸マグネシウム錯体(PAA-Mg)として添加した。
成形は多孔質Al型(気孔率30%)を用いた排泥鋳込み成形法により行った。成形体を乾燥後、焼成温度1400℃の大気雰囲気にて焼成した。
【0030】
いずれの比較例も、COレーザー等による二次元バーコードの印字が鮮明で画像認識が良好であり、相対密度90%以上となっている。しかしながら、可視光透過率が試料厚み1mmのとき最大0.1%以上であり、十分な可視光遮蔽効果が得られなかった。
【0031】
本発明の実施例および比較例におけるCOレーザー等による二次元バーコードの印字の様子を図1に示す。(a)は実施例1であり、印字が鮮明で画像認識が極めて良好である。一方、(b)は比較例3であり、印字が不明瞭であることがわかる。
本発明の用途の具体例として、半導体・電子部品等の製造現場において用いられる距離センサに対応した画像認識の向上がある。距離センサは、レーザー光を固体に照射し、その反射光を検知することで、非接触で高精度かつ高分解能な位置測定が可能となるものである。このとき、照射する対象物が光を透過してしまうと測定精度が低下する恐れがある。本発明品と一般的な白色セラミックスに、可視レーザー光(レーザー波長650〜660nm、レーザー出力1mW)を照射した様子を図2に示す。前者(実施例2)はレーザー光を遮蔽しているが、後者(比較例4)はレーザー光が裏面まで透過している。これらのことから本発明は、可視光遮蔽特性を有する白色系セラミックスであることがわかる。
【0032】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0033】
光半導体の誤動作を防ぐために遮光性が求められている発光素子、半導体レーザー、受光素子等の半導体デバイスを搭載するパッケージに利用することができる。
単一素材かつ一体構造において遮光性能を有するセラミックス材料を提供することができ、電子部品の微細化および高集積化が期待される。機械的特性に優れる緻密体であるとともに、光の内部散乱や透過を生じない特殊な光学特性を有する白色系セラミックス材料及びそれを用いた基板及びそれを用いた発光素子搭載用パッケージ及びそれを用いた発光装置に利用可能である。


図1
図2