(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体を中心とする円軌道に沿って回転可能に設けられたX線発生部を有し、前記X線発生部から前記被検体に対してX線を曝射することで前記被検体をX線スキャンし、検出データを取得するX線CT装置であって、
前記検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成する再構成処理部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体における注目部位の位置を特定する特定部と、
前記注目部位の位置と前記円軌道上の何れかの位置とを結んだ線が最も短くなる場合の前記円軌道上の位置を求める算出部と、
前記円軌道のうち、求められた前記円軌道上の位置を含む一部の区間のみX線を曝射するよう前記X線発生部を制御するスキャン制御部と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
被検体を中心とする円軌道に沿って回転可能に設けられたX線発生部から前記被検体に対してX線を曝射することで前記被検体をX線スキャンし、検出データを取得するステップと、
再構成処理部が、前記検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成するステップと、
特定部が、前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体における注目部位の位置を特定するステップと、
算出部が、前記注目部位の位置と前記円軌道上の何れかの位置とを結んだ線が最も短くなる場合の前記円軌道上の位置を求めるステップと、
を含む第1モードと、
スキャン制御部が、前記円軌道のうち、第1モードで求められた前記円軌道上の位置を含む一部の区間のみX線を曝射するよう前記X線発生部を制御する第2モードと、
を有するX線CT装置に対し、
前記スキャン制御部は、前記第1モードが完了した後、前記第2モードを開始させることを特徴とするX線CT装置の制御方法。
被検体を中心とする円軌道に沿って回転可能に設けられたX線発生部から前記被検体に対してX線を曝射することで前記被検体をX線スキャンし、検出データを取得するステップと、
再構成処理部が、前記検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成するステップと、
特定部が、前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体における注目部位の位置を特定するステップと、
前記ボリュームデータと前記円軌道を含む一つの座標系において、前記円軌道の中心と前記円軌道上の点を結ぶ線であって、前記注目部位を間に含む2つの線が該円軌道と交わる2つの交点で形成された前記円軌道上の短い方の区間を求めるステップと、
を含む第1モードと、
スキャン制御部が、前記第1モードで求められた前記区間を含む一部の区間のみX線を曝射するよう前記X線発生部を制御する第2モードと、
を有するX線CT装置に対し、
前記スキャン制御部は、前記第1モードが完了した後、前記第2モードを開始させることを特徴とするX線CT装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1から
図3を参照して、第1実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。なお、「画像」と「画像データ」は一対一に対応するので、本実施形態においては、これらを同一視する場合がある。また、本実施形態において、「X線量」と「(X線の)曝射量」とは、同一視する場合がある。
【0016】
<装置構成>
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを含んで構成されている。
【0017】
[架台装置]
架台装置10は、被検体Eに対してX線を曝射し、被検体Eを透過した当該X線の検出データを収集する装置である。架台装置10は、X線発生部11と、X線検出部12と、回転体13と、高電圧発生部14と、架台駆動部15と、X線絞り部16と、絞り駆動部17と、データ収集部18とを有する。
【0018】
X線発生部11は、X線を発生させるX線管球(たとえば、円錐状や角錐状のX線ビームを発生する真空管。図示なし)を含んで構成されている。X線発生部11は、発生したX線を被検体Eに対して曝射する。
【0019】
X線検出部12は、複数のX線検出素子(図示なし)を含んで構成されている。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出する。具体的には、X線検出部12は、被検体Eを透過したX線の強度分布を示すX線強度分布データ(以下、「検出データ」という場合がある)をX線検出素子で検出し、その検出データを電流信号として出力する。X線検出部12は、たとえば、検出素子が互いに直交する2方向(スライス方向とチャンネル方向)にそれぞれ複数配置された2次元のX線検出器(面検出器)が用いられる。複数のX線検出素子は、たとえば、スライス方向に沿って320列設けられている。このように多列のX線検出器を用いることにより、1回転のスキャンでスライス方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影することができる(ボリュームスキャン)。なお、スライス方向は被検体Eの体軸方向に相当し、チャンネル方向はX線発生部11の回転方向に相当する。
【0020】
回転体13は、X線発生部11とX線検出部12とを被検体Eを挟んで対向するよう支持する部材である。回転体13は、スライス方向に貫通した開口部13aを有する。架台装置10内において、回転体13は、被検体Eを中心とした円軌道で回転するよう配置されている。すなわち、X線発生部11及びX線検出部12は、被検体Eを中心とする円軌道に沿って回転可能に設けられている。
【0021】
高電圧発生部14は、X線発生部11に対して高電圧を印加する(以下、「電圧」とは、X線管球におけるアノード−カソード間の電圧を意味する)。X線発生部11は、当該高電圧に基づいてX線を発生させる。高電圧発生部14は、スキャン制御部44(後述)の制御に基づき、印加する高電圧の値を変更することができる。印加する高電圧の変更に伴い、X線発生部11が被検体Eに対して曝射するX線量(X線の曝射量)も変更される。
【0022】
架台駆動部15は、回転体13を回転駆動させる。X線絞り部16は、所定幅のスリット(開口)を有し、スリットの幅を変えることで、X線発生部11から曝射されたX線のファン角(チャンネル方向の広がり角)とX線のコーン角(スライス方向の広がり角)とを調整する。絞り駆動部17は、X線発生部11で発生したX線が所定の形状となるようX線絞り部16を駆動させる。
【0023】
データ収集部18(DAS:Data Acquisition System)は、X線検出部12(各X線検出素子)からの検出データを収集する。また、データ収集部18は、収集した検出データ(電流信号)を電圧信号に変換し、この電圧信号を周期的に積分して増幅し、デジタル信号に変換する。そして、データ収集部18は、デジタル信号に変換された検出データをコンソール装置40に送信する。なお、CT透視を行う場合、データ収集部18は、検出データの収集レートを短くする。
【0024】
[寝台装置]
寝台装置30は、撮影対象の被検体Eを載置・移動させる装置である。寝台装置30は、寝台31と寝台駆動部32とを備えている。寝台31は、被検体Eを載置するための寝台天板33と、寝台天板33を支持する基台34とを備えている。寝台天板33は、寝台駆動部32によって被検体Eの体軸方向及び体軸方向に直交する方向に移動することが可能となっている。すなわち、寝台駆動部32は、被検体Eが載置された寝台天板33を、回転体13の開口部13aに対して挿抜させることができる。基台34は、寝台駆動部32によって寝台天板33を上下方向(被検体Eの体軸方向と直交する方向)に移動させることが可能となっている。
【0025】
[コンソール装置]
コンソール装置40は、X線CT装置1に対する操作入力に用いられる。また、コンソール装置40は、架台装置10によって収集された検出データから被検体Eの内部形態を表すCT画像データ(断層画像データやボリュームデータ)を再構成する機能等を有している。コンソール装置40は、処理部41と、特定部42と、算出部43と、スキャン制御部44と、表示制御部45と、記憶部46と、表示部47と、入力部48と、制御部49とを含んで構成されている。
【0026】
処理部41は、架台装置10(データ収集部18)から送信された検出データに対して各種処理を実行する。処理部41は、前処理部41aと、再構成処理部41bと、レンダリング処理部41cとを含んで構成されている。
【0027】
前処理部41aは、架台装置10(X線検出部12)で検出された検出データに対して対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを作成する。
【0028】
再構成処理部41bは、前処理部41aで作成された投影データに基づいて、CT画像データ(断層画像データやボリュームデータ)を作成する。断層画像データの再構成には、たとえば、2次元フーリエ変換法、コンボリューション・バックプロジェクション法等、任意の方法を採用することができる。ボリュームデータは、再構成された複数の断層画像データを補間処理することにより作成される。ボリュームデータの再構成には、たとえば、コーンビーム再構成法、マルチスライス再構成法、拡大再構成法等、任意の方法を採用することができる。上述のように多列のX線検出器を用いたボリュームスキャンにより、広範囲のボリュームデータを再構成することができる。また、CT透視を行う場合には、検出データの収集レートを短くしているため、再構成処理部41bによる再構成時間が短縮される。従って、スキャンに対応したリアルタイムのCT画像データを作成することができる。
【0029】
レンダリング処理部41cは、再構成処理部41bで作成されたボリュームデータに対するレンダリング処理を行う。たとえば、レンダリング処理部41cは、再構成処理部41bで作成されたボリュームデータを任意の方向にレンダリングすることによりMPR表示する(すなわち、レンダリング処理部41cは、MPR画像を作成する)。
【0030】
特定部42は、再構成処理部41bで作成されたボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける注目部位の位置を特定する。「注目部位」は、たとえば、病変部や、被検体Eに挿入された穿刺針の先端等、被検体E内における特定の領域(領域の一番狭い形態である点も含む)である。特定の具体例として、ボリュームデータから病変部S(注目部位)の位置を特定する場合について述べる。特定部42は、ボリュームデータを構成する各ボクセルのCT値と予め設定された閾値とを比較する。閾値は、病変部Sに対応して定まる値(たとえば、病変部のCT値)であって、ボクセル内に当該注目部位が含まれているか否かを判断するための値である。そして、特定部42は、閾値よりも大きい(或いは小さい)ボクセルの座標値を病変部Sの位置として特定する。
【0031】
なお、注目部位の特定はボリュームデータから直接行う必要はない。たとえば、特定部42は、ボリュームデータに基づいて作成されるMPR画像データにおいて、リージョングローイング法等によって、病変部Sの座標値を特定することも可能である。
【0032】
或いは、ボリュームデータを構成する断層画像データに基づいて注目部位の位置を特定することも可能である。たとえば、特定部42は、断層画像データ間の差分を取り、差分の大きい断層画像データを特定する。そして、特定部42は、特定された断層画像データに対してエッジ検出等の画像処理を行い、断層画像データにおける病変部Sの座標値を特定することも可能である。
【0033】
算出部43は、特定部42で特定された画像データ(CT画像データ、MPR画像データ等)上の注目部位(病変部S等)の位置(座標値)に対してX線発生部11が最も近接する近接位置を算出する。注目部位が二次元的或いは三次元的な範囲を持っている場合、「注目部位の位置」とは、注目部位の外周の一点であってもよいし、注目部位の重心位置であってもよい。「近接位置」とは、X線発生部11が注目部位と最も近接する円軌道上の位置(座標値)である。
【0034】
本実施形態における算出部43は、座標変換部43aと、距離算出部43bとを含んで構成されている。
【0035】
座標変換部43aは、特定部42で特定された注目部位(病変部S等)の位置(座標値)を、円軌道の座標系に変換する。「円軌道の座標系」とは、回転体13によって回転するX線発生部11の描く軌道である。すなわち、円軌道の座標系とは、回転体13(架台装置10)の座標系を意味する。距離算出部43bは、座標変換された注目部位の位置から、円軌道までの距離を算出する。算出部43は、距離算出部43bで算出された距離のうち、最も短い距離における円軌道の位置を近接位置として算出する。
【0036】
図2Aから
図2Cを参照して、特定部42及び算出部43(座標変換部43a及び距離算出部43b)の処理の具体例を説明する。
図2Aから
図2Cは、被検体E及び回転体13(X線発生部11)の断面図である。ここでは、回転体13(架台装置10)と被検体Eとは、それぞれ異なる座標系(回転体13の座標系:XYZ、被検体Eの座標系:xyz)を有しているとする。X方向は、回転体13の横方向を示す。Y方向は、回転体13の縦方向を示す。x方向は、被検体Eの横方向(コロナル方向)を示す。y方向は、被検体Eの縦方向(サジタル方向)を示す。なお、以下の説明では、Z(z)方向(被検体Eの体軸方向)の位置は考慮しないものとするが、Z(z)方向の位置を含めて注目部位の特定や座標変換等を行うことも可能である。
【0037】
まず、特定部42は、病変部Sの座標値(x
0、y
0)を特定する(
図2A参照)。ここでは、病変部Sの重心位置を座標値として特定したものとする。
【0038】
座標変換部43aは、座標値(x
0、y
0)を回転体13の座標系で変換し、座標値(X
0、Y
0)を得る(
図2B参照)。なお、座標変換(移動、回転等)については、公知の手法を用いることができる。
【0039】
距離算出部43bは、座標値(X
0、Y
0)とX線発生部11が移動する円軌道Cとの距離r
k(k=1〜n)を算出する。具体的には、距離算出部43bは、円軌道C上に仮定された複数の点P
k(k=1〜n)と、座標値(X
0、Y
0)とを結び、複数の距離r
kを算出する(
図2B参照)。
図2Bでは、ある点P
nにあるX線発生部11と病変部Sとの距離をr
nで示している。
【0040】
算出部43は、算出された距離r
kのうち、最も短い距離r
S(1≦s≦n)におけるX線発生部11の位置(円軌道C上の点P
s)を、X線発生部11が病変部Sに最も近接する近接位置Nとして算出する(
図2C参照)。
【0041】
スキャン制御部44は、X線スキャンに関する各種動作を制御する。たとえば、スキャン制御部44は、X線発生部11に対して高電圧を印加させるよう高電圧発生部14を制御する。スキャン制御部44は、回転体13を回転駆動させるよう架台駆動部15を制御する。スキャン制御部44は、X線絞り部16を動作させるよう絞り駆動部17を制御する。スキャン制御部44は、寝台31を移動させるよう寝台駆動部32を制御する。
【0042】
また、本実施形態におけるスキャン制御部44は、円軌道Cのうち、近接位置Nを含む一部の区間cのみX線を曝射するよう、高電圧発生部14を介してX線発生部11を制御する。すなわち、「X線発生部」は、高電圧発生部14を含む概念である。
【0043】
更に、本実施形態におけるスキャン制御部44は、設定部44aを含んで構成されている。設定部44aは、近接位置Nが中間位置Hとなるように円軌道Cの一部の区間cを設定する。
【0044】
具体例として、設定部44aは、予め設定されたハーフスキャンの範囲(180度+ファン角。以下、ファン角については省略して述べる)に基づいて、その中間位置Hを近接位置Nとして設定する。
図2Dは、被検体E及び回転体13(X線発生部11)の断面図である。ハーフスキャンが180度の範囲で行われる場合、
図2Dに示すように、近接位置Nから±90度の範囲を一部の区間cとして設定する。スキャン制御部44は、設定された一部の区間cでのみX線を曝射するようX線発生部11(高電圧発生部14)を制御する。
【0045】
表示制御部45は、画像表示に関する各種制御を行う。たとえば、レンダリング処理部41cにより作成されたMPR画像(アキシャル像、サジタル像、コロナル像、オブリーク像)等を表示部47に表示させる制御を行う。表示制御部45がMPR画像を複数表示させることにより、たとえば、穿刺針の穿刺状態(角度、方向性)や穿刺針と注目対象との位置関係をより把握し易くなる。
【0046】
記憶部46は、RAMやROM等の半導体記憶装置によって構成される。記憶部46は、検出データや投影データ、或いは再構成処理後のCT画像データ等を記憶する。
【0047】
表示部47は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の任意の表示デバイスによって構成される。たとえば、表示部47には、ボリュームデータをレンダリング処理して得られるMPR画像が表示される。
【0048】
入力部48は、コンソール装置40に対する各種操作を行う入力デバイスとして用いられる。入力部48は、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック等により構成される。また、入力部48として、表示部47に表示されたGUI(Graphical User Interface)を用いることも可能である。
【0049】
制御部49は、架台装置10、寝台装置30およびコンソール装置40の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。たとえば、制御部49は、スキャン制御部44を制御することで、架台装置10に対して予備スキャン及びメインスキャンを実行させ、検出データを収集させる。また、制御部49は、処理部41を制御することで、検出データに対する各種処理(前処理、再構成処理、MPR処理等)を行わせる。或いは、制御部49は、表示制御部45を制御することで、記憶部46に記憶された画像データ等に基づき、CT画像を表示部47に表示させる。
【0050】
<動作>
次に、
図3を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。ここでは、X線スキャンを行って近接位置Nを求めた後、ハーフスキャン(180度+ファン角)を行う場合について述べる。
【0051】
まず、X線CT装置1は、被検体Eに対してX線スキャンを行い、ボリュームデータを作成する。
【0052】
具体的には、X線発生部11は、被検体Eに対してX線を曝射する。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出する(S10)。X線検出部12で検出されたX線に基づく検出データは、データ収集部18で収集され、処理部41(前処理部41a)に送られる。
【0053】
前処理部41aは、S10で取得された検出データに対して、対数変換処理等の前処理を行い、投影データを作成する(S11)。作成された投影データは、制御部49の制御に基づき、再構成処理部41bに送られる。
【0054】
再構成処理部41bは、S11で作成された投影データに基づいて、複数の断層画像データを作成する。また、再構成処理部41bは、複数の断層画像データを補間処理することによりボリュームデータを作成する(S12)。
【0055】
特定部42は、S12で作成されたボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける病変部Sの位置を特定する(S13)。
【0056】
座標変換部43aは、S13で特定された病変部Sの位置(座標値)を円軌道Cの座標系に変換する(S14)。
【0057】
距離算出部43bは、S14で座標変換された病変部Sの位置から、円軌道Cまでの距離を算出する(S15)。
【0058】
算出部43は、S15で算出された距離のうち、最も短い距離における円軌道Cの位置を近接位置Nとして算出する(S16)。
【0059】
S10からS16の処理により、X線スキャンにより得られるCT画像の画像SDが最も良くなる位置(近接位置N)を求めることができる。S10からS16までの処理が、本実施形態における「第1モード」の一例である。
【0060】
次に、設定部44aは、S16で算出された近接位置Nが中間位置Hとなるように一部の区間cを設定する(S17)。具体的には、設定部44aは、近接位置Nから±90度の範囲を一部の区間cとして設定する。
【0061】
スキャン制御部44は、設定された一部の区間cでのみX線を曝射するようX線発生部11(高電圧発生部14)を制御する(S18)。つまり、スキャン制御部44は、第1モードが完了した後、S18(S17)の動作を開始させる。
【0062】
S17及びS18の処理により、画像SDが最も良くなる位置(近接位置N)を中心としてハーフスキャンを行うことができる。S17及びS18の処理が、本実施形態における「第2モード」の一例である。
【0063】
以上のように、第1モードにおけるX線スキャンは、第2モードを行う範囲(画像SDの良い画像を得ることができるX線スキャンの範囲)を決定するためのスキャンといえる。一方、第2モードにおけるX線スキャンは、被曝量を低減させてCT画像(画像SDの良い画像)を得るためのスキャンといえる。つまり、第1モード及び第2モードにより、被曝量を低減させつつ、画像SDの良い画像を得ることが可能となる。
【0064】
なお、処理部41、特定部42、算出部43、スキャン制御部44、表示制御部45及び制御部49は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの図示しない処理装置と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)や、又はHDD(Hard Disc Drive)などの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、処理部41の機能を実行するための処理プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、特定部42の機能を実行するための特定部処理用プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、算出部43の機能を実行するための算出部処理用プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、スキャン制御部44の機能を実行するためのスキャン制御プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、表示制御部45の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、制御部49の機能を実行するための制御プログラムが記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで各部の機能を実行する。
【0065】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0066】
本実施形態のX線CT装置1は、被検体Eを中心とする円軌道Cに沿って回転可能に設けられたX線発生部11を有し、X線発生部11から被検体Eに対してX線を曝射することで被検体EをX線スキャンし、検出データを取得する。X線CT装置1は、再構成処理部41bと、特定部42と、スキャン制御部44とを有する。再構成処理部41bは、検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成する。特定部42は、ボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける注目部位の位置(病変部S)を特定する。スキャン制御部44は、円軌道Cのうち、特定された注目部位(病変部S)に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。
【0067】
また、本実施形態のX線CT装置1は、算出部43を有する。算出部43は、特定された注目部位(病変部S)に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを算出する。
【0068】
このように、算出部43は、特定部42で特定された注目部位の位置に基づき、注目部位に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを算出する。スキャン制御部44は、円軌道Cのうち、近接位置Nを含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。X線を曝射する位置(X線発生部11の位置)と被検体Eにおける注目部位までの距離は、画像SDと比例関係にある。従って、近接位置Nで検出される検出データに基づく画像は、画像SDが最も良い画像(ノイズの影響が最も小さい画像)となる。また、円軌道Cのうち、近接位置Nを含む一部の区間cにおいてのみ、X線を曝射させることで、円軌道Cの全周に渡ってX線を曝射する場合と比べ、被検体Eの被曝量を低減させることができる。すなわち、本実施形態のX線CT装置1によれば、被曝量を低減させ、且つ画像SDが良い画像(ノイズの影響が小さい画像)を得ることが可能となる。たとえば、CT透視を用いた生検等においては、被検体Eの同じ部位に繰り返しX線を曝射することから、全体としての被曝量が大きくなるという問題がある。このような場合に、本実施形態におけるX線CT装置1は有効である。
【0069】
具体的に、算出部43は、座標変換部43aと、距離算出部43bとを有する。座標変換部43aは、特定された注目部位(病変部S)の位置を、円軌道Cの座標系に変換する。距離算出部43bは、座標変換された注目部位(病変部S)の位置から、円軌道Cまでの距離r
kを算出する。算出部43は、算出された距離r
kのうち、最も短い距離r
Sにおける円軌道Cの位置を近接位置Nとして算出する。また、スキャン制御部44は、設定部44aを有する。設定部44aは、一部の区間cの中間位置Hが近接位置Nとなるように一部の区間cを設定する。スキャン制御部44は、設定された一部の区間にのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。
【0070】
このように、算出部43は、座標変換された注目部位の位置から円軌道Cまでの距離r
kのうち、最も短い距離r
Sにおける円軌道Cの位置を近接位置Nとして算出する。設定部44aは、一部の区間cの中間位置Hが近接位置Nとなるように一部の区間cを設定する。そして、スキャン制御部44は、設定された一部の区間にのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。近接位置Nを中心としてX線スキャンの範囲(一部の区間c)を設定することで、主に画像SDが良くなる範囲(注目部位及びX線発生部11が近い範囲)に対してX線を曝射することができる。すなわち、本実施形態のX線CT装置1によれば、被曝量を低減させ、且つ画像SDが良い画像(ノイズの影響が小さい画像)を得ることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の構成をX線CT装置1の制御方法として実現することも可能である。X線CT装置1の制御方法は、第1モードと第2モードとを有するX線CT装置1に対し、スキャン制御部44が、第1モードが完了した後、第2モードを開始させる。第1モードは、被検体Eを中心とする円軌道Cに沿って回転可能に設けられたX線発生部11から被検体Eに対してX線を曝射することで被検体EをX線スキャンし、検出データを取得するステップを有する。第1モードは、再構成処理部41bが、検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成するステップを有する。第1モードは、特定部42が、ボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける注目部位の位置を特定するステップを有する。第1モードは、算出部43が、特定された注目部位に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを算出するステップを有する。第2モードは、スキャン制御部44が、円軌道Cのうち、第1モードで算出された近接位置Nを含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。
【0072】
このように、スキャン制御部44は、近接位置Nを算出する第1モードの後に、第2モードを開始させる。従って、画像SDが最も良くなる近接位置Nを含む一部の区間cにおいてのみ、X線を曝射させることができる。すなわち、本実施形態のX線CT装置1の制御方法によっても、被曝量を低減させ、且つ画像SDが良い画像(ノイズの影響が小さい画像)を得ることが可能となる。
【0073】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、近接位置の算出過程において、座標変換部43aが、注目部位の位置を円軌道Cの座標系に変換する例について述べた。一方、近接位置の算出方法はこれに限られない。
【0074】
一般に、回転体13の回転中心位置、及び回転中心位置に対するX線発生部11の円軌道Cにおける位置(点P
k)は架台装置10毎に予め決まっている。そこで、再構成処理部41bは、回転中心位置、及びX線発生部11の円軌道Cにおける位置の情報基づいて、予め座標系を設定し、その座標系でボリュームデータを作成することもできる。このように、再構成処理部41bが、回転体13の座標系に基づいてボリュームデータを作成することにより、円軌道Cの座標系への変換が不要となる。すなわち、座標変換部43aを設けない構成も可能である。
【0075】
(第2実施形態)
図4から
図6を参照して、第2実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。本実施形態では、近接位置Nを直接算出せずに、一部の区間cを決定する構成について述べる。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0076】
[コンソール装置]
図4は、本実施形態におけるコンソール装置40の構成を示すブロック図である。コンソール装置40は、処理部41と、特定部42と、スキャン制御部44と、表示制御部45と、記憶部46と、表示部47と、入力部48と、制御部49と、抽出部50とを含んで構成されている。
【0077】
抽出部50は、円軌道Cのうち、特定部42で特定された注目部位(病変部S等)の位置に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを含む区間を抽出する。抽出部50は、座標変換部50aを含む。座標変換部50aの機能は、第1実施形態における座標変換部43aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
図5Aから
図5Dを参照して、特定部42及び抽出部50の処理の具体例を説明する。
図5Aから
図5Dは、
図2A〜
図2Dと同様、被検体E及び回転体13(X線発生部11)の断面図である。また、第1実施形態と同様、以下の説明でもZ(z)方向は考慮しないものとする。
【0079】
まず、特定部42は、病変部Sの位置を特定する(
図5A参照)。ここでは、病変部Sは、一定の範囲の領域を有するものとする。座標変換部50aは、病変部Sの領域を回転体13の座標系で変換し、回転体13の座標系における病変部Sの位置(以下、「S´」とする)を得る(
図5B参照)。
【0080】
抽出部50は、円軌道Cの中心Mから位置S´に対して2つの接線T
1及びT
2を引き、その接線T
1及びT
2と円軌道Cとが交わる点t
1とt
2との間の区間c´を抽出する(
図5C参照)。ここで、近接位置Nとは、X線発生部11が病変部Sと最も近接する円軌道C上の位置である。従って、区間c´のいずれかの位置が近接位置Nとなる。すなわち、区間c´は、近接位置Nを含んでいる。
【0081】
本実施形態におけるスキャン制御部44は、円軌道Cのうち、抽出された区間c´を含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する(
図5D参照)。
【0082】
<動作>
次に、
図6を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。ここでは、X線スキャンを行って近接位置Nを求めた後、ハーフスキャン(180度+ファン角)を行う場合について述べる。
【0083】
まず、X線CT装置1は、被検体Eに対してX線スキャンを行い、ボリュームデータを作成する。
【0084】
具体的には、X線発生部11は、被検体Eに対してX線を曝射する。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出する(S20)。前処理部41aは、S20で取得された検出データに対して、対数変換処理等の前処理を行い、投影データを作成する(S21)。再構成処理部41bは、S21で作成された投影データに基づいて、複数の断層画像データを作成する。また、再構成処理部41bは、複数の断層画像データを補間処理することによりボリュームデータを作成する(S22)。特定部42は、S22で作成されたボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける病変部Sの位置を特定する(S23)。座標変換部50aは、S23で特定された病変部Sの位置を円軌道Cの座標系に変換する(S24)。この結果、円軌道Cの座標系における病変部Sの位置(S´)を得ることができる。
【0085】
抽出部50は、円軌道Cの中心MからS24で座標変換された位置S´に対して2つの接線T
1及びT
2を引き、その接線T
1及びT
2と円軌道Cとが交わる点t
1とt
2の間の区間c´を抽出する(S25)。
【0086】
S20からS25の処理により、X線スキャンにより得られるCT画像の画像SDが最も良くなる位置(近接位置N)を含む区間c´を求めることができる。S20からS25までの処理が、本実施形態における「第1モード」の一例である。
【0087】
スキャン制御部44は、円軌道Cのうち、抽出された区間c´を含む一部の区間c(180度+ファン角)のみX線を曝射するようX線発生部11(高電圧発生部14)を制御する(S26)。つまり、スキャン制御部44は、第1モードが完了した後、S26の動作を開始させる。
【0088】
S26の処理により、画像SDが最も良くなる位置(近接位置N)を含む区間cでハーフスキャンを行うことができる。S26の処理が、本実施形態における「第2モード」の一例である。
【0089】
なお、抽出部50は、たとえば、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAMや、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、抽出部50の機能を実行するための抽出処理用プログラムが記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで各部の機能を実行する。
【0090】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0091】
本実施形態のX線CT装置1は、抽出部50を含む。抽出部50は、円軌道Cのうち、特定された注目部位の位置に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを含む区間c´を抽出する。スキャン制御部44は、円軌道Cのうち、抽出された区間c´を含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。
【0092】
具体的には、抽出部50は、座標変換部50aを含む。座標変換部50aは、特定された注目部位の位置を、円軌道Cの座標系に変換する。抽出部50は、座標変換された注目部位の位置に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを含む区間c´を抽出する。
【0093】
抽出部50により抽出された区間c´には、近接位置Nが含まれている。スキャン制御部44は、抽出された区間c´を含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。上述の通り、近接位置Nで検出される検出データに基づく画像は、画像SDが最も良い画像(ノイズの影響が最も小さい画像)となる。従って、この近接位置Nを含む区間でX線スキャンを行うことにより、画像SDの良い画像を得ることができる。また、円軌道Cのうち、区間c´を含む一部の区間cにおいてのみ、X線を曝射させることで、円軌道Cの全周に渡ってX線を曝射する場合と比べ、被検体Eの被曝量を低減させることができる。すなわち、本実施形態のX線CT装置1によれば、被曝量を低減させ、且つ画像SDが良い画像(ノイズの影響が小さい画像)を得ることが可能となる。
【0094】
また、本実施形態の構成をX線CT装置1の制御方法として実現することも可能である。X線CT装置1の制御方法は、第1モードと第2モードとを有するX線CT装置1に対し、スキャン制御部44が、第1モードが完了した後、第2モードを開始させる。第1モードは、被検体Eを中心とする円軌道Cに沿って回転可能に設けられたX線発生部11から被検体Eに対してX線を曝射することで被検体EをX線スキャンし、検出データを取得するステップを有する。第1モードは、再構成処理部41bが、検出データに基づく投影データを再構成し、ボリュームデータを作成するステップを有する。第1モードは、特定部42が、ボリュームデータに基づいて、被検体Eにおける注目部位の位置を特定するステップを有する。第1モードは、抽出部50が、円軌道Cのうち、特定された注目部位の位置に対してX線発生部11が最も近接する近接位置Nを含む区間c´を抽出するステップを有する。第2モードは、スキャン制御部44が、第1モードで抽出された区間c´を含む一部の区間cのみX線を曝射するようX線発生部11を制御する。
【0095】
このように、スキャン制御部44は、近接位置Nを算出する第1モードの後に、第2モードを開始させる。従って、画像SDが最も良くなる近接位置Nを含む一部の区間cにおいてのみ、X線を曝射させることができる。すなわち、本実施形態のX線CT装置1の制御方法によっても、被曝量を低減させ、且つ画像SDが良い画像(ノイズの影響が小さい画像)を得ることが可能となる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。