(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
超音波撮像装置は、超音波プローブを介して被検体を走査することにより得られた生体情報に基づいて被検体内の状態を画像化するものである。すなわち、超音波撮像装置は、超音波プローブに対し超音波の走査に関する制御信号を送り、超音波プローブを介して被検体に超音波を送信する。また、超音波プローブを介して被検体からの反射波を受信することにより、被検体の内部の状態に基づく生体情報を取得する。超音波撮像装置は、この生体情報に基づいて超音波画像を生成する。
【0003】
超音波プローブは、例えば次のような構成である。1次元アレイまたは2次元アレイの圧電振動子群における超音波の放射方向(音響放射方向)側(以下、「前面側」と記載する)には、電極を挟んで音響整合層が配置される。音響整合層は、圧電振動子の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスの整合を目的とする。圧電振動子における超音波の放射方向と反対側(以下、「背面側」と記載する)には、電極、FPC(Flexible Printed Circuit)を挟んで背面材が配置される。また、圧電振動子と背面材との間には導電性を有する中間層が配置される場合もある。
【0004】
背面材により、圧電振動子の背面側に放射される超音波は減衰され吸収される。また背面材により圧電振動子等の構造が支持される。中間層は、圧電振動子より高い音響インピーダンスを有し、超音波の放射効率を高めるために設けられる。中間層の音響インピーダンスと圧電振動子の音響インピーダンスとのギャップにより、圧電振動子の背面側に放射される超音波は、これらの界面において反射し、圧電振動子の前面である超音波放射面側に送り出すことができる。FPCにおける圧電振動子側には配線パターン(電極リード)が設けられる。FPCの配線パターンを介して後段回路から圧電振動子へ電気信号が送られる。また、FPCの配線パターンを介して圧電振動子から後段回路へ電気信号が引き出される。
【0005】
上述の通り、背面材における前面側にFPCが配置される。このFPCは、例えば背面材の前面側を覆うように背面材と略平行に配置されるが、当該背面剤の前面の端部で後段回路側(圧電振動子側と反対側)に折り曲げられ、後段回路側へ延伸される。FPCを背面材の前面の端部において後段回路側に折りたたまないと、FPCが超音波トランスデューサにおけるアレイ方向またはレンズ方向に広がってしまい、超音波プローブが大型化するためである。またFPCを背面材の前面の端部において折り曲げるのは、衝撃耐性の向上を図るためでもある。
【0006】
また、FPCと、その前方に配置される構造物(圧電振動子または中間層/以下、「中間層等」と記載することがある。)とは、接続の信頼性を向上させるため、接着剤によって接着される。例えば1次元配列または2次元配列された各中間層等とFPCとを接続するにあたって、中間層等それぞれとFPCとが向かい合う面には接着材層を介在させず、中間層等の側面(超音波の放射方向と略平行な面)とFPCの前面とを接着させる(特許文献1/
図2・符号140等参照)。このような構成において、接着材層は、素子配列の最も端にある中間層等の側面と、FPCにおける前面とが隣り合う位置に設けられる。つまり、接着材により接合される一方の界面は中間層等の側面の端部であり、また、他方の界面はFPCにおける超音波の放射方向側の面である。
【0007】
しかしながら、上記FPCにおける折り曲げ部分は、折り曲げられていることによって、FPCにおける他の部分と比較して破損する可能性がある。その結果、FPCにおける配線パターンの破損(断線等)が生じる可能性がある。また、超音波トランスデューサ・超音波プローブの製造工程において、まずFPCと、中間層(または圧電振動子)とを接着し、その後にFPCを折り曲げる手順を経る場合にも、配線パターンの破損の可能性がある。すなわち、接着材がある程度硬化した後にFPCを折り曲げようとした場合、配線パターンが硬化した接着材と接合された状態で折り曲げられるので、配線パターンには接着剤による接合状態に抗う方向に力が加わり破損するおそれがある。
【0008】
このようなFPCの折り曲げ部分における配線パターンの破損を防止するため、当該折り曲げ部分に、ポリイミド膜等によるカバーレイ(フィルム、被覆材)が設けられることがある。このカバーレイにより、配線パターンが保護される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態にかかる超音波トランスデューサ、その製造方法および超音波プローブにつき、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態]
(超音波プローブの概略構成)
図1〜
図5を参照して第1実施形態における超音波プローブ10および超音波トランスデューサ100の概要について説明する。
図1は、実施形態にかかる超音波プローブ10を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す切断面における超音波プローブ10の概略端面図である。
図3は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概要を示す概略斜視図である。
【0018】
なお
図1に示される超音波プローブ10は、一例であって、他の種類の超音波プローブであってもよい。また、
図2においては、超音波トランスデューサ100の具体的な構成の図示を省略している。また、
図3において示される超音波トランスデューサ100の素子配列全体の形状や圧電体114の配列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。また
図3においては中間層116と背面基板120の間の間隙、配線パターン121、および中間層116と背面基板120との接着に用いられる接着剤128の図示を省略している。
【0019】
また、以下の説明において背面材118から第1音響整合層110へ向かう方向を「前方」と記載し、前方と反対側の方向を「後方」と記載する。また超音波トランスデューサ100における各構成部分(圧電振動子114、中間層116、背面材118、背面基板120等)における前方側の面を「前面」と記載し、後方側の面を「背面」と記載する。
【0020】
以下、第1実施形態にかかる超音波プローブ10および超音波トランスデューサ100の概略構成について説明する。
図1に示すように、超音波プローブ10は、被検体接触面である音響レンズ102を支持するプローブケース103と、プローブケース103における音響レンズ102と反対側に接続されたケーブル104とを含んで構成される。また超音波プローブ10の内部は、
図2に示されるように、圧電振動子114等を有する超音波トランスデューサ100が設けられている。
【0021】
図3に例示される本実施形態の超音波トランスデューサ100は、第1音響整合層110、第2音響整合層111、圧電振動子114、中間層116、背面材118、背面基板120、前面基板124等を含んで構成される。また
図3の例において、圧電振動子114は1次元的に配列されている。また各圧電振動子114の前面側に第2音響整合層111が設けられている。さらに第2音響整合層111における前面側に第1音響整合層110が設けられる。また、圧電振動子114における背面側には、後方へ向かって、中間層116、背面材118が順に設けられ、かつ背面材118と中間層116との間には、背面基板120が設けられている。なお、超音波トランスデューサ100において、背面基板120は少なくとも送受信回路などの後段回路側まで引き出されるものであるが、
図3では背面基板120の図示を一部省略している。
【0022】
また、
図2に示すように第1音響整合層110の前面側には前面基板124が設けられている。前面基板124のさらに前面側には音響レンズ102が設けられている。なお背面基板120と同様に、
図2の前面基板124も後段回路へ延びる部分の図示が省略されている。また、圧電振動子114における前面には前面電極が設けられ、前面電極は第2音響整合層111の背面に隣接する。さらに圧電振動子114の背面には背面電極が設けられる。背面電極は、中間層116の前面に隣接する。以下、超音波トランスデューサ100を構成する各部についてそれぞれ説明する。
【0023】
<圧電振動子>
圧電振動子114は、背面電極および前面電極に印加された電圧を超音波パルスに変換する。この超音波パルスは被検体へ送波される。また、圧電振動子114は、被検体からの反射波を受け、電圧に変換する。圧電振動子114の材料としては、一般にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛/Pb(Zr,Ti)O
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3 )、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶等を用いることが可能である。圧電振動子114の音響インピーダンスは、例えば30Mrayl程度にすることができる。また圧電振動子114の厚さを、超音波の波長のλ/4の厚さとすることにより、背面側の影響を受けにくくすることが可能である。なお、
図2〜4に示す圧電振動子114は単一層によって構成されているが、これは一例であり、複数層の圧電振動子114を構成することも可能である。
【0024】
<音響整合層>
第1音響整合層110および第2音響整合層111は、圧電振動子114と被検体の間で音響インピーダンスを整合させるものである。そのために第1音響整合層110および第2音響整合層111は、圧電振動子114と前面基板124の間に配置される(
図3参照)。この第1音響整合層110および第2音響整合層111には、それぞれ互いに音響インピーダンスの異なる材料が用いられる。例えば第1音響整合層110の音響インピーダンスは、例えば4〜7Mrayl程度である。第2音響整合層111の音響インピーダンスは、例えば9〜15Mrayl程度である。このような構成によれば圧電振動子114と音響レンズ102との間で段階的に音響インピーダンスを変化させて、被検体との間で音響的な整合をとることが可能である。また第1音響整合層110、第2音響整合層111は、圧電振動子114の前面電極と、前面基板124との間を導通させるため、導電性を有する材料によって構成されるか、または導通路が形成される。
【0025】
このような条件を備える第1音響整合層110の材料の一例として、例えば、カーボン(等方性黒鉛やグラファイト)を用いることができる。また、第2音響整合層111の例として、マシナブルガラス、マシナブルセラミックス、エポキシと酸化金属粉末の混合体、エポキシと金属粉末の混合体などを用いることができる。また第2音響整合層111の厚さ(前後方向の長さ)は、例えば150μm〜200μmである。
【0026】
<前面基板>
前面基板124は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)であり、それぞれ送受信回路等の後段回路まで至る長さを有している。また前面基板124における少なくとも背面側には、後段回路等と接続される配線パターン(接続リード/不図示)が設けられている。超音波プローブ10を示す
図2の例において、前面基板124は、第1音響整合層110と音響レンズ102との間に配置される。また、前面基板124における配線パターンは、第1音響整合層110、第2音響整合層111を介して圧電振動子114における前面電極と導通されている。例えば、第1音響整合層110や第2音響整合層111に設けられた導通路または、第1音響整合層110や第2音響整合層111自体を介して前面電極と電気的に接続される。
【0027】
<背面材>
背面材118は、超音波パルスの送波の際に超音波の照射方向と反対側(後方)に放射される超音波パルスを吸収し、各圧電振動子114の余分な振動を抑える。背面材118により、振動時における各圧電振動子114背面からの反射を抑制し、超音波パルスの送受信に悪影響を及ぼすことを回避することが可能である。なお、背面材118としては、音響減衰、音響インピーダンス等の観点から、PZT粉末やタングステン粉末等を含むエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニールやフェライト粉末を充填したゴムあるいは多孔質のセラミックにエポキシ等の樹脂を含漬したもの等、任意の材料を用いることができる。背面材118の音響インピーダンスは、例えば2Mrayl〜7Mrayl程度にすることができる。
【0028】
次に、本実施形態の背面材118のレンズ方向(
図1〜4・R方向参照)における幅(
図2・W1参照)について記載する。なお、ここでいうレンズ方向の幅W1とは、背面材118において、超音波の放射方向(
図1〜4・E方向参照)および圧電振動子114の配列方向(アレイ方向/
図1〜4・A方向参照)と直交する方向の長さであるが、以下においては単に「レンズ方向の幅」または「幅」と記載する。背面材118におけるレンズ方向の幅W1は、圧電振動子114および中間層116等における同方向の幅に対応して定められる。例えば
図2に示すように、背面材118におけるレンズ方向の幅W1は、圧電振動子114等における同方向の幅とほぼ等しい。ここで、幅W1が圧電振動子114のレンズ方向の幅と略等しいという意味は、超音波プローブ10のフットプリントが幅W1の影響を受ける場合において、背面材118の幅W1によってフットプリントが大型化しない程度ということである。この意味において、幅W1を圧電振動子114の幅より若干狭くしてもよく、また若干広くしてもよい。
【0029】
超音波プローブ10のフットプリント(被検体接触面)におけるレンズ方向の長さは、その内部の超音波トランスデューサ100の構造の影響を受ける場合がある。例えば
図2に示すように、背面基板120は背面材118の幅方向の端部で後段回路側に折り返されるので、当該端部で折り返された背面基板120の配置スペースがレンズ方向の幅に影響する。また
図2の例では、前面基板124も第1音響整合層110の幅方向の端部で後方へ折り返されるので前面基板124の配置スペースも影響する。さらに超音波プローブ10の前方側面においてプローブケース103の内側に音響レンズ102の側部が配置され、そのさらに内側に、上記折り返された背面基板120および前面基板124が配置される。したがって、超音波プローブ10のレンズ方向(スライス方向)における幅は、背面材118(または第1音響整合層110)の幅、折り返された各基板(120・124)の配置スペースの幅および音響レンズ102の側部の幅およびプローブケース103の幅それぞれに比例して増減する。
【0030】
この点、上述したように本実施形態の背面材118は、レンズ方向の幅W1が、圧電振動子114等の幅に対応して定められる。そのことにより、超音波プローブ10のフットプリントが大型化することを防止することが可能である。本実施形態では、背面材118におけるレンズ方向の幅W1を、圧電振動子114等に対応させるため、中間層116の背面に段差部を設け、当該中間層116の背面と背面基板120との間にカバーレイ122を収容する段差部を設けている。この構成については次に述べる。
【0031】
<中間層、背面基板>
次に、
図1〜5を参照して超音波トランスデューサ100の中間層116および背面基板120について説明する。
図4は、
図3の概略A−A’端面図である。
図5は、超音波トランスデューサ100の製造工程を示す概略端面図である。なお、
図5においては、中間層116の前方の構造(圧電振動子114等)の図示を省略している。また、
図5においては、間隙部分を説明するために当該部分を強調し、全体における厚さの比率を高く示しているが、間隙の高さや接着剤128の層の厚さは、背面基板120や配線パターン121の厚さと同じかそれよりも薄く形成される。
【0032】
図4に示すように中間層116は、圧電振動子114に対して背面に隣接して設けられ、圧電振動子114の背面電極と接している。また中間層116は、圧電振動子114や背面材118より音響インピーダンスが高く構成されており、かつその厚さ(すなわち超音波の放射方向Eにおける長さ)を超音波トランスデューサ100により放射される超音波の波長の略1/4とすることができる。また、中間層116の材料としては、金、鉛、タングステン、水銀、サファイア等を用いることができる。このような中間層116によれば、圧電振動子114の背面側に放射される超音波を前面側(音響レンズ102側)へ反射させて音響特性の向上を図ることが可能となる。
【0033】
また背面基板120は、例えばFPCであり、それぞれ送受信回路等の後段回路まで至る長さを有している。また
図4および
図5に示すように背面基板120の少なくとも前面側には、配線パターン121が設けられている。背面基板120における配線パターン121は、中間層116を介して圧電振動子114における背面電極と導通されている。例えば、中間層116の周面または内部を貫通して設けられた導通路を介して配線パターン121と背面電極とが電気的に接続される。または、導電性を有する中間層116を用いることにより、中間層116自体を介して配線パターン121と背面電極とが電気的に接続されてもよい。また、背面基板120の配線パターン121は、送受信回路等の後段回路と接続される。
【0034】
また、背面基板120は、基板(ベース)部分の厚さが例えば20〜50μmである場合、電極および配線パターン121の厚さを、10〜20μmとし、カバーレイ122の厚さを20〜50μmとすることが可能である。
【0035】
ここで、中間層116における背面の構成と、背面基板120の前面の構成について詳細に説明する。
図5に示すように、中間層116における背面中央は、後方へ向かって突出する凸形状に形成されている。すなわち中間層116は、その背面(背面基板120との隣接面)側において、中間層116の両側面から、超音波トランスデューサ100の前後方向に沿った中間層116の中心線に向かって切欠かれている。換言すると、中間層116は、前面(圧電振動子114との隣接面)側において圧電振動子114の幅と略同じである第1の幅X1(
図5参照)を有するように形成されており、かつ背面側において第1の幅X1より短い第2の幅X2(
図5参照)を有するように形成されている。したがって中間層116の背面には、前方側の第1の幅X1と、後方側の第2の幅X2との差によって段差部が形成される。この段差部は、中間層116の背面中央側において後方へ突出された先端面を有するとともに、当該先端面より前方側に位置し背面基板120に対し、所定間隔を置いて向かい合う対向面を有する。
【0036】
また
図5に示すように、背面基板120の前面の配線パターン121は、少なくとも一部がポリイミド膜等によるカバーレイ(フィルム、被覆材)122によって被覆されている。背面基板120は後段回路側へ折り曲げられるため、その折り曲げ部分において配線パターン121の破損(断線等)が生じる可能性があり、それを防止するために、配線パターン121をこのカバーレイ122で被覆する。例えば超音波トランスデューサ100の製造工程において、中間層116と背面基板120とを接着してから(
図5の右側部分参照)背面基板120を折り曲げる(
図5における左側部分参照)場合、カバーレイ122が配線パターン121を保護しているので、当該工程により配線パターン121に破損が生じる事態を回避することが可能である。なお、カバーレイ122は「被覆部材」の一例に該当する。
【0037】
背面基板120が背面材118の幅方向の端部において折り曲げられるので、カバーレイ122は、配線パターン121の保護のために当該折り曲げ部分を被覆する。また、背面材118の幅方向端部に対応する当該折り曲げ部分を確実に保護するため、カバーレイ122は、背面基板120における各折り曲げ部分の間の、背面材118の前面に平行な部分も被覆する。ただし、配線パターン121と中間層116とが直接的に接触する位置については、カバーレイ122が設けられない。つまり、カバーレイ122は、配線パターン121における背面材118の前面に平行な部分のうち、配線パターン121と中間層116とが直接的に接触する面を挟むようにして設けられる。言い換えると、カバーレイ122は、配線パターン121の折り曲げ部分の被覆位置から中間層116の後方側先端面に至る手前までの位置を被覆する。
【0038】
また
図5に示すように、中間層116の背面における段差は、カバーレイ122の厚さZ2より長くなるように形成される。つまり当該背面における上記先端面から対向面までの長さが、カバーレイ122の厚さZ2を収容可能な程度となるように段差部が形成される。その結果、中間層116の背面における上記対向面と背面基板120における前面との間は所定の間隔Z1が空けられており、この中間層116の段差部と背面基板120との間に生じる間隙には、配線パターン121を被覆するカバーレイ122が一部収容される。
【0039】
このような間隔Z1は、例えば、カバーレイ122の厚さZ2が20〜50μmである場合に、25〜55μm程度とすることが可能である。この例のように、間隙の高さである上記間隔Z1は、中間層116と、背面基板120および背面材118との接着工程に支障がない程度に定められる。すなわち、中間層116の段差部の高さ(間隔Z1)を、カバーレイ122の厚さよりやや高い程度とすることにより、中間層116と、背面基板120および背面材118とを加圧接着等する工程に支障をきたすおそれを回避することが可能となる。
【0040】
また、上述のようにカバーレイ122は、配線パターン121の折り曲げ部分だけでなく、折り曲げ部分からもう一方の折り曲げ部分に向かって、配線パターン121における背面材118の前面に平行な部分を一部被覆する。
図5に示すように本実施形態における中間層116と背面基板120との間には間隙が形成されているため、カバーレイ122は、中間層116における側面と干渉せず、その間隙に収容される。すなわち、カバーレイ122は、背面材118の幅方向端部から反対側の他端部に向かって所定の長さ分だけ延伸するが、当該延伸方向において上記間隙は、少なくともその延伸された長さより長くなる。
【0041】
このように本実施形態においては中間層116に段差部を設けて、背面基板120の前面との間に、背面材118端部から他端まで延伸するカバーレイ122を収容する間隙を設けている。このような構造によれば、背面材118の幅を、圧電振動子114や中間層116の幅より広くしなくても、背面材118の前面にカバーレイ122の配置スペースを確保することができる。その結果、背面材118の幅によって、超音波プローブ10のフットプリントの大型化を招く事態を回避することが可能となる。
【0042】
また中間層116は背面基板120と接着剤128により接合される。この接着剤128は、中間層116の上記先端面および対向面によって構成される段差部と、背面基板120とに囲われるカバーレイ122を収容する間隙ならびに背面基板120の折り曲げ部分の上に設けられる。したがって接着剤128は、
図5に示すように、中間層116の対向面および突出部分の側面ならびに背面基板120の前面の配線パターン121およびカバーレイ122の上に設けられる。これにより、中間層116と背面基板120とが接合される。
【0043】
なお、上記実施形態では中間層116の突出部の先端面と配線パターン121とが直接的に接触しているが、このような構成に限らず、当該先端面と配線パターン121とが、例えば導電性を有する接着材層を介して接続されていてもよい。ただし、上記実施形態のように中間層116の先端面と配線パターン121とを直接的に接触させることにより、音響特性や、中間層116と前面電極との接続の信頼性が向上する場合がある。
【0044】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に
図1〜
図5を参照し、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造方法の一部、すなわち、中間層116と、背面基板120および背面材118との接続に関連する工程について説明する。
【0045】
《中間層》
図5に示される本実施形態の一例において、超音波トランスデューサ100における中間層116は、上述のように背面側が凸形状に形成される。中間層116の段差部は切削や成形等、任意の方法によって形成される。
【0046】
《背面基板》
背面基板120に設けられた配線パターン121を、カバーレイ122で被覆する。このカバーレイ122は、配線パターン121の折り曲げ部分と、当該折り曲げ部分から、もう一方の折り曲げ部分に向かって設けられた配線パターン121の一部を被覆する。ただし、配線パターン121のうち、中間層116の先端面と接触する部分にはカバーレイ122は設けられない。つまり
図5に示すように、配線パターン121において背面材118と平行に配置される部分のうち、中間層116の先端面と接触する部分およびその周囲の部分(
図5・X3部分参照)を除いた部分がカバーレイ122により被覆される。
【0047】
《背面基板と中間層116の接続》
図5に示すように、背面材118の前面に設けられた背面基板120と、凸状に形成された中間層116とが次のようにして接続される。まず背面基板120と中間層116とが向かい合う面それぞれにおけるレンズ方向の両端部に接着剤128が設けられる。当該両端部に接着剤128が設けられた後、加圧接着等がなされることにより、接着剤128が背面基板120と中間層116との間隙に入る。この接着剤128により中間層116と背面基板120とが接着される。この時点では
図5の右側に示すように背面基板120が折り曲げられていない状態である。
【0048】
《背面基板の折り曲げ》
図5の右側に示すように、背面基板120と中間層116とが向かい合う面の上記両端部に接着剤128が設けられ、接着工程を経ると、背面基板120が背面材118のレンズ方向における両端部において折り曲げられる。このとき、配線パターン121の折り曲げ部分はカバーレイ122により被覆されているので、折り曲げによる破損等のおそれを防いでいる。
【0049】
(超音波トランスデューサと外部装置との接続)
次に、第1実施形態の超音波トランスデューサ100を有する超音波プローブと、超音波撮像装置本体との接続構成の一例について説明する。なお、以下の説明においては図示を省略する。超音波プローブは、内部に超音波トランスデューサ100が設けられ、超音波撮像装置本体と超音波プローブとを電気的に接続するためのインターフェース(ケーブル等)を有している。また超音波トランスデューサ100は、前面基板124の配線パターンおよび背面基板120の配線パターンと、超音波プローブのインターフェースとを通じて、超音波撮像装置本体と電気的に接続されており、超音波の送受信にかかる信号を相互に伝達している。
【0050】
なお超音波プローブ内には、送受信回路等の電子回路が設けられた回路基板や、インターフェースと当該電子回路とを接続する接続用基板が設けられていてもよい。この場合は、超音波プローブと本体を接続するインターフェース、接続用基板の配線パターン、電子回路、前面基板124や、背面基板120の配線パターンを介して、前面電極や背面電極と超音波撮像装置本体の制御部との間で信号が送受信される。
【0051】
例えば超音波撮像装置本体は、その制御部からインターフェースを通じて超音波トランスデューサ100の駆動制御にかかる電気信号を超音波プローブに送る。この電気信号は、接続用基板を介して回路基板の電子回路に送信される。電子回路は、超音波撮像装置本体制御部からの信号に基づき、前面基板124や背面基板120を通じて圧電振動子114に電圧を印加する。このようにして超音波パルスが被検体に送信される。
【0052】
また、例えば超音波トランスデューサ100は、被検体からの反射波を受信すると、背面基板120等を介して、圧電振動子114が変換した電気信号を電子回路に送信する。電子回路はこの電気信号に所定の処理(遅延加算、増幅等)を行い、さらに接続用基板、インターフェースを介して超音波撮像装置本体の制御部へ電気信号を送信する。この電気信号を基に超音波撮像装置は超音波画像を生成する。
【0053】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100および超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0054】
第1実施形態の超音波トランスデューサ100では、中間層116に段差部を設けて、背面基板120の前面との間に、背面基板120の折り曲げ部分から他端の折り曲げ部分の方向へ向かって設けられた間隙を設けている。この間隙に、配線パターン121を被覆するカバーレイ122が収容されるので、背面材118のレンズ方向における幅を広げることなくカバーレイ122の配置スペースを確保することが可能となる。
【0055】
このような構造によれば、背面材118の幅を、圧電振動子114や中間層116の幅より広くしなくても、背面材118の前面にカバーレイ122の配置スペースを確保することができる。その結果、背面材118の幅によって、超音波プローブ10のフットプリントの大型化を招く事態を回避することが可能となる。
【0056】
(第1変形例)
次に、第1実施形態の第1変形例について説明する。上記説明した超音波トランスデューサ100においては、背面材118と圧電振動子114の間に中間層116が配置されている。しかしながら、超音波トランスデューサ100において中間層116を設けない場合は、圧電振動子114の背面の形状を、上記した中間層116の段差部のように構成する事が可能である。この場合、背面電極は圧電振動子114の段差部における突出部の先端面に設けられる。または、背面電極を圧電振動子114の先端面だけでなく背面基板120との対向面にも設けてもよい。またこの場合、接着剤128として導電性を有する材料を用いてもよい。ただし、音響特性への影響の観点から、上述のように中間層116を設け、中間層116に段差部を設ける構成がより好適な場合がある。
【0057】
(第2変形例)
また第1実施形態の第2変形例について
図6を参照して説明する。
図6は、第1変形例にかかる超音波トランスデューサ100を示す概略端面図である。上記実施形態における中間層116の背面におけるレンズ方向の両端において、間隙を設けている。しかしながら、これに限らず背面材118のレンズ方向における片端側のみから配線パターン121を引き出す場合、
図6に示すように背面基板120を折り曲げるのも当該片端のみとなる。この場合、中間層116には背面基板120の折り曲げ部分に対応した側のみに段差を設ければよい。
【0058】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100および超音波トランスデューサ100が設けられた超音波プローブについて
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、第2実施形態にかかる超音波プローブの超音波トランスデューサ100を示す概略斜視図である。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主として説明し、その他重複する部分については説明を割愛する。また、
図7において示される超音波トランスデューサ100の素子数は概念上示されるものである。また行数や列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。
【0059】
(超音波トランスデューサ100の概略構成)
図7に例示される本実施形態の超音波トランスデューサ100は、第1実施形態と同様に第1音響整合層110、第2音響整合層111、圧電振動子114、中間層116、背面材118、背面基板120、前面基板124等を含んで構成される。また
図7に示す第2実施形態の一例において、圧電振動子114は1次元的に配列されている。また中間層116から圧電振動子114、第2音響整合層111、第1音響整合層110、音響レンズ102まで前方へ向かって順に配置される構成は第1実施形態と同様である。なお、超音波トランスデューサ100において、背面基板120は少なくとも送受信回路などの後段回路側まで引き出されるものであるが、
図7では背面基板120の図示を一部省略している。また
図7においては中間層116と背面基板120の間の間隙、配線パターン121、および中間層116と背面基板120との接着に用いられる接着剤128の図示を省略している。
【0060】
第2実施形態においても、背面基板120は中間層116と背面材118との間に配置される。ただし、
図7に示すように、第2実施形態における背面基板120は、背面材118のレンズ方向における両端部でなく、圧電振動子114の配列方向(
図7・A方向参照)における両端部において後段回路側へ折り曲げられる。なお、圧電振動子114の配列方向について、以下、単に「アレイ方向」と記載する場合がある。
【0061】
図8は、超音波トランスデューサ100を示す
図7の概略B−B’端面図である。
図8において左側に示された素子は素子配列の一端側にある素子であり、また、当該図の右端に示された素子は素子配列の他端側に設けられた素子である。上述のように第2実施形態における背面基板120は、背面材118の前面のアレイ方向における両端部において折り曲げられるものであるため、カバーレイ122により、被覆して保護すべき配線パターン121の位置は、当該両端部に対応する位置である。
【0062】
したがって、配列の両端の素子(中間層116)のみに段差部が設けられる。また
図8に示すように、当該両端の素子における背面のうち、両端側でなく、配線パターン121の折り曲げ部分を臨む一端側のみに段差部が設けられる。
【0063】
(作用・効果)
以上説明した第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100および超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0064】
第2実施形態の超音波トランスデューサ100では、素子配列の両端の中間層116に段差部を設ける。また当該段差部は当該両端の中間層116の背面における、配線パターン121の折り曲げ部分に近接する部分にのみ設けられる。この段差部により背面基板120の前面と中間層116の背面の端部の間に間隙が設けられる。この間隙に、配線パターン121を被覆するカバーレイ122が収容されるので、背面材118のアレイ方向における幅を広げることなくカバーレイ122の配置スペースを確保することが可能となる。
【0065】
このような構造によれば、背面材118のアレイ方向における幅を、圧電振動子114の全配列の長さより広くしなくても、背面材118の前面にカバーレイ122の配置スペースを確保することができる。その結果、背面材118の幅によって、超音波プローブ10のフットプリントの大型化を招く事態を回避することが可能となる。
【0066】
(変形例)
上記においては、第1実施形態および第2実施形態の双方において1次元アレイの超音波トランスデューサを有する超音波プローブ10について説明した。しかしながら、これらの実施形態は、2次元アレイの超音波トランスデューサについて適用することも可能である。
【0067】
また
図3および
図7に示すように上記第1実施形態および第2実施形態の双方とも、素子配列が直線状である例について説明したが、これらの実施形態は、素子配列が凸形状または曲線状の超音波トランスデューサを備えた超音波プローブに適用することも可能である。
【0068】
また上記第1実施形態および第2実施形態の双方とも、背面基板120の折り曲げ部分および前面基板124の折り曲げ部分のいずれもが、アレイ方向またはレンズ方向に統一された構造について説明した。しかしながら、中間層116(または圧電振動子114)の背面の段差部によって背面基板120との間に間隙を設ける構成は、基板の一方をレンズ方向の端部で折り曲げ、他方をアレイ方向の端部で折り曲げる構成に適用することが可能である。
【0069】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。