(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリカ源が、下水汚泥、脱水汚泥、乾燥汚泥、炭化汚泥、下水汚泥焼却灰、下水汚泥溶融スラグ、珪石、珪砂、砂、珪藻土、シラス、酸性火山灰、酸性火山岩、ケイ酸カルシウム、および生コンスラッジから選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1に記載のりん酸肥料の製造方法。
さらに、前記混合工程と前記焼成工程の間に、前記混合原料を造粒して、公称目開きが5.6mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる割合が75質量%以上である造粒物を得る造粒工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のりん酸肥料の製造方法。
さらに、前記焼成工程の後に、前記焼成物から、公称目開きが4mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる部分を篩分けして得る整粒工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のりん酸肥料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、我が国では天然のリンが産出されないため、ほぼ全量を輸入に頼っていた。しかし、近年、天然リン資源は世界的に枯渇しつつありリンの価格が高騰しているため、リンの確保は年々難しくなっている。そこで、りん酸肥料の製造分野では、天然のリン資源を補完や代替するものの一つに、リンを多量に含む畜糞焼却灰が考えられる。
ところで、我が国において、畜糞は畜産の振興に伴い増加し続け、現在、畜糞の排出量は産業廃棄物の中で汚泥に次いで二番目に多い。そして、多くの畜産農家は、大量の畜糞を農地や山間部に堆積して保管するため環境汚染が発生する場合があり、畜糞の早急な処理が必要である。しかし、以前から行われている発酵による有機肥料化や農地還元などの方法では時間がかかり処理量が少ないため、畜糞をすべて処理することは難しくなりつつある。そこで、畜糞を短時間で減容化するために焼却した結果、畜糞焼却灰が大量に発生している。
したがって、畜糞焼却灰をりん酸肥料の原料として有効利用することができれば、天然のリン資源の節約とともに畜糞処理の社会的要請に応えることができる。ちなみに、表1に非特許文献1に掲載された鶏糞や豚糞の主な化学組成を示す。表1に示すように、畜糞の化学組成の特徴は、リン、カルシウム、マグネシウムのほかにカリウム等のアルカリ金属が多い点にある。
【0003】
【表1】
【0004】
かかる状況において、りん酸肥料の製造に鶏糞を用いる方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、下水汚泥焼却灰を原料としてマグネシウム等の添加剤を添加して溶融炉内で加熱し、溶融金属と溶融スラグとに分離して、溶融スラグを出滓させ、その後に急冷してりん酸肥料を製造する方法において、該原料焼却灰の全りん酸を測定し、該全りん酸が予め定めた目標製品の濃度よりも低い場合には溶融処理前に、鶏糞を含む高リン含有廃棄物の添加割合を求めて、原料中に添加し、製品中のく溶性りん酸を所定の値まで高めて、く溶性りん酸の安定した製品を製造するりん酸肥料製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、リン成分を含有する汚泥焼却灰を主原料とし、マグネシウム等の成分を含む副原料と還元剤とを添加して溶融炉内で加熱溶融し、前記溶融炉で溶融金属と溶融スラグとの2層に分離して溶融スラグを流出させ、次いで前記溶融スラグを急冷してりん酸肥料を製造する方法において、前記副原料および還元剤の添加に先立ち主原料の焼却灰の全りん酸を測定し、該全りん酸が予め定めた目標製品の濃度よりも低い場合には溶融処理前に、鶏糞を含む高リン含有物の添加割合を求めて、溶融炉内に添加することにより、製品中のく溶性りん酸を6〜25%とした製品を製造するりん酸肥料の製造方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらの方法は鶏糞をりん酸肥料の原料ではなく、りん酸肥料中のリン酸濃度を調整するための補助的材料として用いるに過ぎない。これでは鶏糞の使用量が少なく、鶏糞の大量処理には適さない。また、これらの方法では溶融法を用いるため、溶融によるエネルギー消費が大きい上に、バッチ式の溶融炉では連続生産ができず生産効率が低いという課題がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前記のとおり、混合工程および焼成工程を必須の工程として含み、さらに造粒工程および整粒工程を任意の工程として含むりん酸肥料の製造方法である。
以下、混合工程、焼成工程、造粒工程、整粒工程、原料、およびりん酸肥料の特性に分け、本発明について説明する。なお、%は特に示さない限り質量%である。
【0015】
1.混合工程
該工程は、畜糞焼却灰の水洗物とシリカ源を混合して、りん酸肥料中のCaOの含有率が35〜60%、SiO
2の含有率が5〜35%、P
2O
5の含有率が5〜35%、並びに、CaO、SiO
2およびP
2O
5を除く成分が30%以下となる混合原料を得るもので、本発明における必須の工程である。
一般に、畜糞焼却灰はSiO
2の含有率が数%程度と低いため、シリカ源と混合してりん酸肥料中のシリカを補う必要がある。りん酸肥料中のCaO、SiO
2、およびP
2O
3等の含有率が前記範囲にあれば、りん酸肥料のりん酸のく溶率やけい酸の可溶率は高い。
ここで、りん酸のく溶率は、りん酸肥料中の全りん酸に対するく溶性りん酸の質量比(%)であり、けい酸の可溶率は、該肥料中の全けい酸に対する可溶性けい酸の質量比(%)である。そして、く溶性りん酸は肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されているバナドモリブデン酸アンモニウム法により、また、可溶性けい酸は同法に規定されている過塩素酸法により、測定することができる。
【0016】
畜糞焼却灰の水洗物とシリカ源を混合する手順は、畜糞焼却灰の水洗物に対しシリカ源を添加するほか、その反対に、シリカ源に対して畜糞燃焼灰の水洗物を添加してもよい。
原料の混合は、通常の混合装置か、または粉砕を兼ねてミル等を用いて行う。畜糞焼却灰の水洗物は乾燥することなく、スラリー状態で混合してもよい。また、焼成炉としてロータリーキルンを用いる場合、転動により原料が混合されるため、ロータリーキルンの前の位置(例えば、窯尻や仮焼炉)に畜糞焼却灰の水洗物とシリカ源を投入してもよい。
【0017】
また、各原料を調合する方法として、例えば、各原料の一部を電気炉等で焼成した後、該焼成灰中の酸化物を定量し、該定量値と所定の配合に基づき、各原料を混合する方法が挙げられる。該酸化物の定量は、蛍光X線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。焼成前の混合原料の化学組成は、後掲の表3に示すように、焼成後のりん酸肥料の化学組成と同一となる場合が多く、CaO、SiO
2、およびP
2O
3の含有率が前記範囲のりん酸肥料を得るには、通常、CaO、SiO
2、およびP
2O
3の含有率が前記範囲を満たす混合原料を用いれば足りる。ただし、正確を期すために、該原料の一部を電気炉等で焼成して、該原料中と該焼成物中のCaO等の含有率の相関を事前に把握しておき、該相関に基づき、原料の混合割合を、目的とするりん酸肥料中のCaO等の含有率になるように修正することが好ましい。
なお、肥料の用途に応じカリ等のその他の肥料成分を前記混合原料に添加すると、その他の各種肥料成分を含む多種類の肥料を製造することもできる。
【0018】
2.焼成工程
該工程は、前記混合原料(後記の造粒物を含む。)を、焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成して、焼成物であるりん酸肥料を得るものであり、本発明における必須の工程である。1150〜1350℃の温度範囲内で焼成したりん酸肥料は、りん酸のく溶率やけい酸の可溶率が高い。該焼成温度は、好ましくは1200〜1300℃である。
また、焼成時間は10〜90分が好ましく、20〜50分がより好ましい。該時間が10分未満では焼成が不十分であり、90分を超えると生産効率が低下する。
また、焼成炉としてロータリーキルンや電気炉等が挙げられる。これらのうち、ロータリーキルンは連続生産に適するため好ましい。
【0019】
また、混合原料に重金属が多く含まれる場合は、前記焼成工程において、高温揮発法、塩化揮発法、塩素バイパス法、および還元焼成法から選ばれる少なくとも1つ以上の重金属除去方法を併用することが好ましい。
ここで、高温揮発法とは、高温で焼成することにより、混合原料に含まれる沸点の低い重金属を揮発させて除去する方法である。
塩化揮発法とは、混合原料に含まれている鉛、亜鉛等の重金属を、沸点の低い塩化物の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、混合原料を調製する際に塩化カルシウム等の塩素源も混合し、該混合原料を焼成炉を用いて焼成し、生成した重金属の塩化物を揮発させて除去する方法である。なお、原料自体に重金属が揮発するのに十分な塩素が含まれている場合は、塩素源を混合しなくてもよい。
【0020】
塩素バイパス法とは、混合原料中に含まれている塩素源とアルカリ源が高温の焼成炉内で揮発して濃縮するという性質を利用した方法である。具体的には、該方法は、混合原料中の塩素が揮発した状態で含まれる燃焼ガスの一部を、焼成炉の排ガスの流路から抽気して冷却し、生成する塩素や重金属を含むダストを分離して除去する方法である。前記塩素源またはアルカリ源に過不足がある場合は、外部から塩素源またはアルカリ源を添加して調整してもよい。
還元焼成法とは、混合原料中の重金属を還元して、沸点の低い金属の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、重金属を含む混合原料を還元雰囲気下で、および/または還元剤を添加して、焼成炉を用いて焼成して重金属を還元し、この還元した重金属を揮発させて除去する方法である。なお、後記の造粒物は外部との通気が絶たれてその内部が還元雰囲気になるため、酸素が存在する状態で焼成しても重金属が揮発する場合がある。また、造粒物の内部は下水汚泥等に含まれる有機物の燃焼により酸素が消費されて、自ずと還元状態になり重金属の還元揮発が促進される。
【0021】
3.造粒工程
該工程は、前記混合工程と前記焼成工程の間にあって、前記混合原料を造粒(成型も含む。)して、公称目開きが5.6mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる割合が75%以上である造粒物を得る工程であり、本発明における任意の工程である。
該造粒物の焼成は、粉体の焼成に比べ肥料の品質が安定するほか焼成工程も安定し、肥料の製造におけるエネルギー効率や生産効率を高めることができる。
また、造粒装置として、例えば、パン型ペレタイザー、パン型ミキサー、撹拌造粒機、ブリケットマシン、ロールプレス、押出成型機等が挙げられるが、特に、利便性や生産効率に優れる点で、パン型ペレタイザーが好適である。
なお、ここでいう造粒物とは球状物に限定されず、不定形の粒状物も含む。また、前記の造粒工程および後記の整粒工程において用いる篩は、JIS Z 8801−1(2006)「ふるい網の目開き及び線径」に規定する篩である。
【0022】
混合原料中の含水率は内割で10〜50%が好ましく、10〜40%がより好ましく、20〜30%がさらに好ましい。該値が前記範囲にあれば、造粒するのに十分な塑性が得られるとともに、装置への付着や凝集による塊状物の発生を抑制できる。
含水率は、原料を乾燥して調合した後に水を添加して調整するか、または水分を含む原料を調合した後に乾燥して調整してもよい。
畜糞焼却灰の水洗物等の含水率が過剰で、乾燥したシリカ源の添加を行なっても、造粒装置への付着トラブルが発生し良好な造粒物が得られない場合などは、該水洗物等または混合原料をあらかじめ乾燥することが望ましい。
造粒物の絶乾密度(絶乾状態にある個々の造粒物の質量を、該造粒物の容積で除した値の平均値)は、好ましくは1.15g/cm
3以上、より好ましくは1.2g/cm
3以上、さらに好ましくは1.3g/cm
3以上である。該値が1.15g/cm
3以上であれば、りん酸のく溶率およびけい酸の可溶率が高いりん酸肥料が得られる。
なお、造粒性(成型性)を高めるため、造粒前の混合原料にベントナイト、セメント、固化材、または増粘剤等の賦形剤を添加してもよい。
【0023】
4.整粒工程
該工程は、前記焼成工程の後に、前記焼成物から、公称目開きが4mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる部分を篩分けして得る工程である。該工程は、農用地へ施肥する際の粉塵の発生を抑制して肥料の取り扱いを容易にするためや、肥料効果を十分に発揮させるために、肥料の粒度を調整する必要がある場合に選択される任意の工程である。
また、該工程において、肥料の用途に応じて、適宜、けい酸やりん酸の成分を追加したり、窒素、カリ、マグネシウム等のその他の肥料成分を新たに添加してもよい。
また、前記整粒工程において整粒して得た焼成物の平均の硬度(圧壊強度)は1.0kgf以上が好ましく、3.0kgf以上がより好ましい。該値が1.0kgf以上であれば、焼成物の崩壊による粉塵の発生が抑えられるため肥料の収率が向上し、肥料の取り扱いが容易になり、また肥料効果も高い。なお、前記焼成物の平均硬度は、例えば、焼成物の中から5個を無作為に選び、それらの硬度を木屋式硬度計を用いて測定し、その平均値を算出して求めることができる。
【0024】
5.原料
次に、本発明の製造方法において用いる原料について説明する。
(1)畜糞焼却灰の水洗物
該水洗物は畜糞の焼却灰を水洗した残渣であり、本発明において用いる必須の原料である。
畜糞は、前記表1に示すように、カリウム等のアルカリ金属を多く含み、これらのアルカリ金属は、多くは塩化物や硫酸塩の形態で存在する。アルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩は融点が低いため、焼成炉内や排気ガスの導管内に該塩化物等によるコーチングが生じやすい。そして、コーチングにより炉内等が閉塞するとコーチングを除去するため製造作業を中断しなければならず、生産効率が著しく低下する。したがって、本発明の製造方法は、畜糞焼却灰を水洗して前記塩化物等を除去し、塩化物等の少ない水洗物を用いてコーチングを防止する点が特徴の一つである。該水洗物は乾燥状態のほか含水状態(スラリーを含む。)でも用いることができる。該水洗物を含水状態で用いる場合、炉内の熱により乾燥するため、別途、乾燥工程を設ける手間が省け、その分、生産効率が向上する。
畜糞焼却灰の洗浄に用いる水は、特に限定されず、水道水、再処理水、および雨水等が挙げられる。
また、畜糞焼却灰の洗浄方法は、例えば、畜糞焼却灰と水を水槽に入れて撹拌して洗浄する方法や、下水処理場において該焼却灰を下水汚泥と一緒にして洗浄する方法や、該焼却灰を屋外に展開または積載して水道水の散布および/または降雨により洗浄する方法等が挙げられる。
また、畜糞焼却灰は、表1に示すように、一般にCaOの含有量が多く、本発明の実施に際しカルシウム源の添加が不要か、またはその添加量が少なくて済むため、原料として大量に使用できるほか、リンの含有率の低下がないか、または小さいため、く溶性りん酸が高い肥料を製造することができる。
【0025】
(2)シリカ源
シリカ源は、本発明において用いる必須の原料であり、下水汚泥、脱水汚泥、乾燥汚泥、炭化汚泥、下水汚泥焼却灰、下水汚泥溶融スラグ、珪石、珪砂、砂、珪藻土、シラス、酸性火山灰、酸性火山岩、ケイ酸カルシウム、および生コンスラッジから選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
このうち、下水汚泥は、下水処理場において下水や排水等の汚水を処理する過程で、汚水から沈殿や濾過等により分離して得た有機物や無機物を含む泥状物である。下水汚泥には、該泥状物を嫌気性条件下で微生物処理(消化)して得られる消化汚泥も含む。また、一般に、下水処理場において、汚水は最初沈澱池に導かれ、汚水中の土砂や固形物を沈澱させて一次分離した後、曝気設備において曝気され、さらに最終沈澱池に導かれるが、下水汚泥の分離は、それぞれの沈殿池にある汚泥を沈澱させて濾過等することにより行われる。
脱水汚泥は、下水汚泥を遠心分離等により脱水して得られる、含水率が70〜90%程度の汚泥である。脱水汚泥は、下水汚泥の一種として下水汚泥に含める場合もあるが、本発明では、脱水汚泥を下水汚泥とは別物として扱う。
乾燥汚泥は、下水汚泥または脱水汚泥を、天日干しまたは乾燥機により乾燥して得られる、含水率が概ね50%以下の汚泥である。
また、炭化汚泥は、下水汚泥、脱水汚泥または乾燥汚泥を、低酸素状態において加熱して、これらに含まれる有機物の一部または全部を炭化物としたものである。該加熱温度は、一般に200〜800℃である。炭化汚泥は、原料のほかに、りん酸肥料の製造(焼成工程)において燃料の一部にもなるため、その分、焼成に要するエネルギーを節約することができる。
【0026】
下水汚泥焼却灰は、脱水汚泥等を焼却して得られる残渣である。該焼却灰の化学組成(単位は%)は、一例を示せば、SiO
2;28、P
2O
5;25、Al
2O
3;15、CaO;11、Fe
2O
3;7、Cr;0.02、Ni;0.02、Pb;0.009、As;0.001、Cd;0.001等である。一般に、該焼却灰は、リン鉱石と比べSiO
2が多いことが特徴である。
また、下水汚泥溶融スラグは、下水汚泥焼却灰を1350℃を超えて溶融して得られる残渣である。
また、生コンスラッジはアジテータ車等の洗い排水や、残コンや戻りコンを処理した排水に含まれる汚泥であり、前記のとおり、乾燥状態のほか含水状態でも用いることができる。ここでは、廃モルタルおよび廃コンクリートを破砕して粗骨材を除去した細粒分なども、広義の生コンスラッジに含める。
ケイ酸カルシウムは工業製品のほかに、ケイ酸カルシウム建材の端材や該建材の廃棄物を用いることもできる。また、珪砂、珪藻土等のその他のシリカ源は、市販品を用いることができる。また、使用済みの廃鋳物砂などの砂もシリカ源として用いることができる。
【0027】
(3)任意の原料
次に、本発明において任意の原料として用いるカルシウム源やマグネシウム源について説明する。
(i)カルシウム源
カルシウム源は、りん酸肥料中のCaOの含有率が前記範囲を外れる場合に、必要に応じて用いられる原料(成分調整材)である。
カルシウム源として、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、石灰石、生石灰、消石灰、セメント、鉄鋼スラグ、および石膏等から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムや石灰石は、入手が容易でカルシウムの含有率が高いため好ましい。
(ii)マグネシウム源
マグネシウム源は、りん酸肥料において苦土成分が必要な場合に用いられる原料であり、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシア、ドロマイト、フェロニッケルスラグ、橄欖岩、および蛇紋岩等から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
【0028】
6.りん酸肥料の特性
次に、本発明の製造方法により得られるりん酸肥料の化学組成等の特性について説明する。
前記りん酸肥料(焼成物)中のCaOの含有率は35〜60%であり、SiO
2の含有率は5〜35%であり、P
2O
5の含有率は5〜35%であり、CaO、SiO
2およびP
2O
5を除く成分は30%以下である。
りん酸肥料中のCaOの含有率が前記範囲であれば、該肥料中のりん酸のく溶率が60%以上、およびけい酸の可溶率が40%以上であるりん酸肥料を製造することができる。また、りん酸肥料中のSiO
2の含有率が前記範囲であれば、けい酸の加給性に優れた肥料を製造することができる。さらに、りん酸肥料中のP
2O
5の含有率が前記範囲であれば、りん酸の加給性に優れた肥料を製造することができる。また、CaO、SiO
2およびP
2O
5を除く成分として、例えば、Al
2O
3、MgO、Fe
2O
3、Na
2O、およびK
2Oなどが挙げられる。
CaOの含有率の下限は38%が好ましく、42%がより好ましく、その上限は55%が好ましく、48%がより好ましい。SiO
2の含有率の下限は7%が好ましく、8%がより好ましく、その上限は30%が好ましく、20%がより好ましい。また、P
2O
5の含有率の下限は9%が好ましく、12%がより好ましく、その上限は30%が好ましく、25%がより好ましい。
【0029】
また、本発明の製造方法により得られるりん酸肥料は、三角線図上で示すと、(A)CaOとP
2O
5とを除く成分、(B)CaO、および(C)P
2O
5の質量比が、
図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=54/35/11〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/60/5〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=15/60/25〕、および
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=35/37/28〕
で囲まれる範囲内にあるものが好ましい。前記質量比が前記範囲内にあれば、該肥料中のりん酸のく溶率、およびけい酸の可溶率はより高い。
また、前記りん酸肥料は、前記質量比が、
図2に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=54/35/11〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=28/60/12〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=15/60/25〕、および
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=41/38/21〕
で囲まれる範囲内にあるものがより好ましい。
なお、前記(A)、(B)および(C)の合計は100である。また、前記「囲まれる範囲内」には、境界線上も含まれる。
ここで、前記の(A)CaOとP
2O
5とを除く成分として、例えば、SiO
2、Al
2O
3、MgO、Fe
2O
3、Na
2O、およびK
2Oなどが挙げられる。また、(A)の成分の含有率(質量比の値)は下記式により与えられる。
(A)の成分の含有率(%)=100−CaOの含有率(%)−P
2O
5の含有率(%)
【0030】
本発明の製造方法により得られるりん酸肥料は、SiO
2/Al
2O
3のモル比が2.5以上が好ましい。該値が2.5以上であれば焼成がより容易になる。
また、該りん酸肥料は、さらに好ましくは、前記(A)、(B)および(C)の質量比が前記範囲内にあって、かつ、りん酸肥料中のCaO/P
2O
5が質量比で2.3以下または4.0以上である。前記質量比がこれらの範囲内にあれば、りん酸のく溶率等はさらに高い。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.りん酸肥料の製造
りん酸肥料の製造に用いた原料は、蛍光X線ファンダメンタルパラメーター法により測定した表2に示す化学組成を有する鶏糞焼却灰およびその水洗物と、シリカ源として下水汚泥焼却灰(下記のa、b、およびc)、珪石粉(ブレーン比表面積は3900g/cm
3)、珪藻土、ケイ酸カルシウム、および生コンスラッジである。また、カルシウム源として石灰石微粉末(325メッシュ品)を用いた。
【0032】
【表2】
【0033】
表3に示す配合に従い、前記原料を計量した後、バッチ式混合機(ハイスピーダー SM−150型、太平洋工機社製)を用いて混合原料を調製した。
次に、内径370mm、長さ3200mmのロータリーキルンを用いて、キルン内の平均滞留時間が40分、キルン回転数が1.15rpm、原料送量が30kg−dry/h、および表3に示す温度で前記混合原料を焼成してりん酸肥料を製造した。
なお、表3に示すCaO、SiO
2およびP
2O
5の含有率は、混合原料および焼成物中の各酸化物の含有率である。また、比較例1〜3は、混合原料および焼成物のCaOの含有率が35%未満の例であり、比較例4〜6は、水洗していない鶏糞焼却灰そのものを原料に用いた例である。
【0034】
【表3】
【0035】
2.く溶性りん酸等の測定
りん酸肥料中のく溶性りん酸は肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されているバナドモリブデン酸アンモニウム法により、可溶性けい酸は同法に規定されている過塩素酸法により測定した。また、これらの測定値から、常法によりりん酸のく溶率やけい酸の可溶率を算出した。これらの結果を表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
5.表3と表4に示す結果について
焼成物中の含有率がCaOで35〜60%、SiO
2で5〜35%、およびP
2O
5で5〜35%である実施例1〜13のりん酸肥料は、りん酸のく溶率が63%以上であり、けい酸の可溶率が42%以上であるから、いずれの成分についても肥料効果は高い。これに対し、焼成物中のCaOの含有率が前記範囲を外れる比較例1〜3のりん酸肥料は、りん酸のく溶率が比較的高いが、けい酸の可溶率は27%以下と著しく低い。このようにけい酸の可溶率が低いりん酸肥料は、ケイ酸の加給特性に劣るため肥料価値は低い。
【0038】
また、水洗していない鶏糞焼却灰を原料に用いた比較例4〜6のりん酸肥料は、りん酸のく溶率が88%以上でけい酸の可溶率が92%以上といずれも高いが、下記の理由によりこれらの肥料の製造を中断せざるを得なかった。
すなわち、水洗していない畜糞焼却灰を原料に用いたロータリーキルンによる連続製造では、製造開始より3日目には、炉内の燃焼排ガスを系外に誘引排気することができなくなった。そこで、製造作業を中断し、冷却後にロータリーキルンと集塵器を接続する排ガス導管の内部を点検したところ、微粉による堆積が認められた。そして、粉末X線回折法により、この堆積物の主要鉱物は塩化カリウム、シンゲナイト、および二水石膏であると確認された。
【0039】
以上のことから、本発明のりん酸肥料の製造方法は、原料として畜糞焼却灰を大量に用いることができ、焼成工程において排ガス導管内などにおけるコーチングの発生を抑制でき、溶融法と比べエネルギー消費が少なく、焼成炉にロータリーキルンを用いた場合は連続生産が可能で生産効率が向上し、また、りん酸のく溶率およびけい酸の可溶率が高いりん酸肥料が得られる。