(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954778
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】セメント組成物用成形助剤およびセメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 22/08 20060101AFI20160707BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20160707BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20160707BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20160707BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20160707BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B24/26 E
C04B22/10
C04B24/38 D
C04B28/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-149114(P2012-149114)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-9147(P2014-9147A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−116602(JP,A)
【文献】
特開平06−157097(JP,A)
【文献】
特開2011−213529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
C04B 103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルシウムナトリウムアルミネート100質量部、(B)石膏100〜400質量部、(C)ポリアクリル酸又はその塩2〜15質量部および(D)凝結促進剤50〜150質量部を含有するセメント組成物用成形助剤。
【請求項2】
凝結促進剤がアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属アルミン酸塩である請求項1記載のセメント組成物用成形助剤。
【請求項3】
さらに、(E)セルロース系増粘剤を含有する請求項1又は2に記載のセメント組成物用成形助剤。
【請求項4】
請求項1〜3何れか記載のセメント組成物用成形助剤とセメントを含有するセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物を高温環境下で成形するための成型助剤および高温環境下での成形に適したセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントペースト、モルタル又はコンクリート等のセメント組成物を型枠で成形する際、成形物の脱型をスムーズに行うため、脱型剤が使用される。脱型剤は型枠内面と成形物表面との間に介在させる離型剤タイプと、成形に供するセメント組成物に配合させる混和剤タイプに大別される。前者の離型剤は型枠内面と充填物たるセメント組成物表面との間に不活性バリア層を形成し、両者の接着を防ぐものであるが、成形の都度離型剤を型枠内面に斑無く塗り付けるという手間を要し、また複雑な形状では塗布作業が至難で、型枠を繰返し連続使用する際の使用回転率が上がり難いという問題がある。一方、混和剤タイプのものは、速硬性、撥水性、高密化、流動化その他の作用を付与できる成分(例えば、特許文献1参照。)を含有するもので、成形助剤としてセメント組成物に配合され、成形時の型枠充填性向上、また成形物自体の性状を早期脱型や保形性強化するために行われる。
【0003】
成形物の性状は、このような成形助剤の構成成分で変わるが、成形時の環境、特に温度によっても多大な影響を受ける。温度が高いと、セメント組成物のスランプロスが大きくなるため、型枠充填に適した流動性が得難く、充填不良を起こす。セメント組成物の流動性を高めると、高温ほど材料分離を起こし易くなる。成形型枠内で充填物中の高密度成分が分離沈降すると、成形物の不均質化、低密部位表層の脱型剥離や肌荒れ、また高さのある成形物では硬化時のひび割れ発生等の問題があった。例えば30℃余の比較的高温で見られるこのような問題の解決手段に、3CaO・2Na
2O・5Al
2O
3とリグニンスルホン酸塩とアルカリ金属炭酸塩を主成分とする混和剤の配合が知られている。(例えば、特許文献2参照。)しかるに、盛夏時のコンクリート等の打設などでは、例えば35℃や40℃超といった可成り高温になることが多々見られる。また、早期脱型のために凝結促進成分を配合すると、セメントの水和発熱が大きくなり、温度のさらなる上昇が予測される。より高温では、材料分離の開始時間が早まり且つ分離速度も速くなる為、前記混和剤を用いても、高比重成分の沈降が進む前に凝結を完了させることは容易でない。また、リグニンスルホン酸とアルカリ金属炭酸塩による凝結遅延作用も増し、材料分離が急速に進み易い。一方で、材料分離を起こした成形物は均質性が失われて脆弱部位が存在し易くなる。この結果、脱型時の成形物の角欠や剥離等の欠損が起こり易く、また成形物表面の滑らかさも得難くなる。材料分離防止のための増粘成分の配合は、高温ほど分離が進むので大量に配合する必要がある。しかし、増粘成分の大量配合は、型枠への付着性が強まるため、スムーズな脱型の障害となり、脱型時に成形物損傷の虞や脱型早期化が阻害されることから型枠を繰返し使い回す場合の使用回転効率が大きく低下する。さらに、流動性低下による型枠への充填不良は成形収率低下にも繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−315899号公報
【特許文献2】特開2011−116602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば35℃以上のようなより高温環境下でのセメント組成物の成形で、型枠と接着して脱型時に成形物が欠損したりすることなくスムーズに脱型でき、しかも早期脱型可能で且つ型枠内付着残存物も発生し難いセメント組成物用の成形助剤の提供並びに高温下で型枠成形に使用しても型枠付着無く保形性が良好な成形物を容易に脱型できるセメント組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題解決のため検討した結果、驚くべきことに、カルシウムナトリウムアルミネートと石膏とポリアクリル酸又はその塩を含有させた成形助剤を、セメント組成物に混和すると、35℃以上の高温でも材料分離を起こさずに型枠成形の充填に適した流動性を付与でき、しかもこのような高温下での型枠成形で、早期脱型性と十分な離型性を具備した保形性に優れる成形物が得られたこと等から本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、次の(1)〜(3)で表わすセメント組成物成形助剤及び(4)で表わすセメント組成物である。(1)(A)カルシウムナトリウムアルミネート100質量部、(B)石膏100〜400質量部、(C)ポリアクリル酸又はその塩2〜15質量部および(D)凝結促進剤50〜150質量部を含有するセメント組成物用成形助剤。(2)凝結促進剤がアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属アルミン酸塩である前記(1)のセメント組成物用成形助剤。(3)さらに、(E)セルロース系増粘剤を含有する前記(1)又は(2)のセメント組成物用成形助剤。(4)前記(1)〜(3)何れかのセメント組成物用成形助剤とセメントを含有するセメント組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセメント組成物用成形助剤は、比較的高い温度環境、特に早期脱型に適し、離型性も良く、且つ保形性に優れた成形物が容易には得られないような高温での型枠成形に適したセメント組成物が得られる。即ち、概ね35℃以上の高温環境下で、材料分離を起こさせずに成形型枠充填に適した流動性状のセメント組成物が得られ、このセメント組成物は型枠と接着し難く、スムーズに脱型でき、欠損も無く形状保持性に優れた成形物が得られる。しかも早期脱型可能で離型剤類の塗布使用も不要なので成形型枠を繰返し使い回しする場合の使用回転率が大幅に向上し、成形物の製造収率向上と相まって、高い生産性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のセメント組成物用成形助剤は、好適には型枠成形に供されるセメント組成物に配合使用する成形助剤である。対象となる型枠は、モルタル(セメントペーストを含む。)やコンクリートの成形物を得ることができるものなら、材質、形状、大きさ、構造等は特に問われない。型枠材質の一例を示すと、木、金属、樹脂等を挙げることができる。
【0010】
本発明のセメント組成物用成形助剤はカルシウムナトリウムアルミネートを含有する。使用するカルシウムナトリウムアルミネートは、化学成分としてCaOとNa
2OとAl
2O
3からなる結晶質化合物や非晶質化が進んだ構造のガラスや固溶体等であれば限定されず、また少量の不可避不純物の混入は許容される。具体的には、例えば、3CaO・2Na
2O・5Al
2O
3や8CaO・Na
2O・3Al
2O
3等の結晶や非晶質体が挙げられる。好ましくは、高温下で可使時間が確保し易いこと並びにスランプロスが大きくならず型枠への充填不良を起こし難いことから、結晶質の3CaO・2Na
2O・5Al
2O
3を使用する。カルシウムナトリウムアルミネートは、例えば約35℃以上、より好適には40℃前後の高温環境下でも安定した速硬作用をセメントに及ぼし、型枠成形時の早期脱型ができることから生産性向上に寄与する。また、例えばカルシウムアルミネートのような他の急硬付与物質に比べると比較的水和発熱が低いため、過剰な温度上昇を抑制できる。
【0011】
また、本発明のセメント組成物用成形助剤は石膏を含有する。使用する石膏は特に限定されず、無水石膏、ニ水石膏、半水石膏の何れでも良く、結晶変態も限定されない。また、これらのうち二種以上を用いることもできる。好ましくは、高温で可使時間が確保し易いものが得られることからニ水石膏を用いる。石膏はカルシウムナトリウムアルミネートと併用することで、成形物表面の硬度を短時間に増大させる作用が生じ、成形物肌面の滑り性が向上する。また、成形中の過度な収縮の抑制作用もあり、成形物の形状寸法安定性への寄与と、中長期の強度発現性も向上して安定した保形性が得られる。石膏のセメント組成物用成形助剤中の含有量は、カルシウムナトリウムアルミネート含有量100質量部に対し、100〜400質量部とする。石膏含有量が100質量部未満ではかかる作用効果が低迷し、また400質量部を越えると硬化遅延によって早期脱型に支障が生じたり、成形中に膨張し、脱型困難になることもあるので好ましくない。
【0012】
また、本発明のセメント組成物用成形助剤はポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩を含有する。使用するポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩は特に限定されるものではない。具体的なポリアクリル酸塩を例示すると、アルカリ金属のポリアクリル酸やアルカリ土類金属のポリアクリル酸を挙げることができる。ポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩の使用によって、高温による粘性低下によって発生し易い材料分離を抑制できる。これに加え、温度上昇と共に短くなる成形作業に要する可使時間も付与できるため、充填不良もなく、より均質な成形物が得られる。特に、型枠充填物の表層部も均質で、細かい凹凸発生や気泡痕を抑制できるので、肌面が滑らかな成形物が得られ易く、脱型抵抗が減少する。ポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩のセメント組成物用成形助剤中の含有量は、カルシウムナトリウムアルミネート含有量100質量部に対し、2〜20質量部とする。ポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩の含有量が2質量部未満ではかかる作用効果が現れ難いので好ましくなく、また20質量部を越えるとセメントの凝結が遅延し、早期脱型が困難になるので好ましくない。
【0013】
また、本発明のセメント組成物用成形助剤は凝結促進剤を含有する。使用する凝結促進剤は、セメントの水和反応を促進できるものなら何れのものでも良い。具体的には、例えば、硫酸アルミニウム、何れもアルカリ金属やアルカリ土類金属の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、アルミン酸塩、水酸塩、蟻酸塩等を挙げることができる。好ましくは、アルカリ金属炭酸塩かアルカリ金属アルミン酸塩の何れか、より好ましくは良品成形物の早期脱型化に最も寄与することからアルカリ金属炭酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩を併用する。凝結促進剤の使用により、高温になるほど長くなる凝結始発時から終結時までの時間を短縮でき、高温での型枠充填後のセメント組成物の早期脱型に寄与する。凝結促進剤のセメント組成物用成形助剤中の含有量は、カルシウムナトリウムアルミネート含有量100質量部に対し、50〜150質量部とする。凝結促進剤の含有量が50質量部未満では成形物の早期脱型ができないことがあるので好ましくなく、また150質量部を超えるとセメント組成物の流動性が下がり過ぎて、充填不良や脱型不良を起こすことがあるので好ましくない。また、凝結促進剤にアルカリ金属炭酸塩(D1)とアルカリ金属アルミン酸塩(D2)を併用する場合は、両者の質量比(D1/D2)が0.5〜5の範囲となるよう併用すると、適度な可使時間を確保しつつ早期脱型も達せられるので望ましい。
【0014】
本発明のセメント組成物用成形助剤は、型枠充填に適した流動性状のセメント組成物の材料分離をより強く防ぐ上で、セルロース系増粘剤を含有させることが好ましい。セルロース系増粘剤は他の増粘剤よりも保水性が強いためブリーディング水の発生を強力に抑制しつつ流動性のコントロールも行い易い。セルロース系増粘剤は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら何れのセルロース誘導体を有効成分とする増粘剤でも含有することができる。好ましくは水溶性のセルロース誘導体を有効成分とする増粘剤を用い、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステルが挙げられるが、これらの具体例に限定されるものではない。セルロース系増粘剤を使用する場合のセメント組成物用成形助剤中の含有量は特に制限されないが、好ましくはカルシウムナトリウムアルミネート含有量100質量部に対し、0.05〜0.5質量部にする。
【0015】
本発明のセメント組成物用成形助剤は、前記以外の成分でも本発明の効果を実質的に喪失させるものでない限り、その含有は許容される。含有も可能な成分として、例えばモルタルやコンクリートに使用することができる、ポゾラン反応性物質、スラグ微粉、石灰石微粉、膨張材、収縮低減剤、保水剤、減水剤、撥水剤等を挙げることができる。
【0016】
また本発明は、前記何れかのセメント組成物用成形助剤とセメントとを含有するセメント組成物である。使用するセメントは、何れのセメントでも良く、例えば普通、早強、超早強、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメント、白色セメントやエコセメント等の特殊セメントなどが挙げられ、何れか2種以上を併用しても良い。より高温環境下での成形用には中庸熱や低熱ポルトランドセメントの使用が好ましいが、本発明のセメント組成物用成形助剤を併用することにより早期脱型により有利な早強ポルトランドセメント或いはコスト的に有利な普通ポルトランドセメントでも十分使用することができる。セメント組成物中のセメント組成物用成形助剤の含有量は制限されないが、好ましくは、含有効果が現れ易いことから、使用するセメント100質量部(混合セメント使用時は含有する水和反応性物質概ね100質量部)に対し、5〜20質量部とする。
【0017】
また本発明のセメント組成物は、セメント組成物用成形助剤とセメント以外の成分を含有できる。含有可能成分は、何れもモルタルやコンクリートに使用できる骨材や各種混和材(剤)及び水が挙げられ、本発明の効果を実質的に喪失させない範囲で使用することができる。このうち、成形に供されるセメント組成物に含まれる具体的な水量は、十分な保形性を具備するための強度を得る上で、例えば、セメント含有量100質量部(混合セメント使用時は含有する水硬性成分100質量部)に対し概ね20〜80質量部が好ましいが、必ずしもこの量に限定されるものではない。また、骨材は、目的・用途等に応じて材質や粒度等を適宜選定すれば良く、限定されない。また、混和材(剤)は、例えば、膨張材、収縮低減剤、減水剤、空気連行剤、撥水剤、セメント用ポリマー、保水剤、消泡剤、繊維、白華防止剤、顔料、抗菌剤、養生剤等を挙げることができるが、使用するセメント組成物用成形助剤に含有されていない成分から選定されることが望ましい。
【0018】
本発明のセメント組成物は、成形用型枠への充填方法等は何ら限定されず、また例えば公知の離型剤等との併用も妨げるものではない。さらには高温環境下での成形のみならず、例えば20℃付近の常温やより低温での成形にも使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は記載された実施例に限定されるものではない。
【0020】
[成形助剤の作製]
次に表すA1〜Eから選定される材料を用い、表1に表した配合量となるようレーディゲミキサを使用して常温(約20℃)で3分間混合し、得られた混合物をもって成形助剤(1〜17)とした。尚、カルシウムナトリウムアルミネートは、炭酸ナトリウム、アルミナ及び炭酸カルシウム(何れも市販試薬)を原料とし、化学成分としてのCaO、Na
2O、Al
2O
3が所望組成のモル比となるように配合した混合物を、電気炉で約1250℃2時間加熱した後、炉内で自然放冷したクリンカを粉砕分級したもので、ブレーン比表面積約3000cm
2/gの粉末である。各生成相は粉末X線回折で確認した。
A1;結晶質カルシウムナトリウムアルミネート(3CaO・2Na
2O・5Al
2O
3)
A2;結晶質カルシウムナトリウムアルミネート(8CaO・Na
2O・3Al
2O
3)
B1;二水石膏(試薬)
B2;II型無水石膏(試薬)
C1;リグニンスルホン酸塩(商品名;ポゾリスNo.8、BASF社製)
C2;オキシカルボン酸(商品名;ジェットセッター、小野田ケミコ社製)
C3;ポリアクリル酸ナトリウム(商品名;アクアリック、日本触媒社製)
C4;ポリアクリル酸ナトリウム(商品名;ソカラン、BASF社製)
C5;ポリアクリル酸(市販試薬)
D1;アルミン酸ナトリウム(市販試薬)
D2;炭酸ナトリウム(市販試薬)
D3;硫酸アルミニウム(市販試薬)
E;
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを有効成分とする増粘剤(商品名;メトローズ、信越化学工業社製)
【0021】
【表1】
【0022】
[セメント組成物の作製]
前記の通り作製した成形助剤と、次に表すF1又はF2のセメントと水から選定される材料を用い、表2に表した配合量となるよう約42℃の温度に保った恒温室内に設置した混練用容器に投入した。投入後はハンドミキサを用い、回転数1000rpmで約30秒間混練し、成形型枠充填用のセメント組成物(組成物1〜20)を作製した。
F1;普通ポルトランドセメント(市販品)
F2;早強ポルトランドセメント(市販品)
また、使用材料と配合量が組成物2と同じセメント組成物を、温度環境が20℃及び32℃でも作製した。前者を組成物21、後者を組成物22とした。
【0023】
【表2】
【0024】
[成形物の作製と評価]
作製した成形型枠充填用のセメント組成物(組成物1〜20)は、JASS 15M−103で規定された方法で約42℃でのフローを測定した。この混練物を内径5cmで高さ10cmの円柱形の硬質樹脂製型枠に充填し、42℃の環境下に放置した。充填から約15分経過時に充填物上面にブリーディング水が発生しているかを目視で調べ、全く発生が見られなかったものを材料分離が無しと評価し、それ以外の状況であったものは材料分離が有りと評価した。充填から1時間経過後に脱型を試みた。容易に脱型できるか否か(脱型性)を調べると共に、直径約5cmで高さ約10cmの円柱形の成形物が得られたか否か(保形性)を調べた。また、成形物表面(肌面)が滑らかな状態になっているか否か並びに脱形後の型枠内壁の充填物の付着有無も調べた。さらに、得られた成形物に対し、JIS A 1108に準じた方法で材齢1日(42℃の大気中に1日放置)の圧縮強度を測定した。一方、一部のセメント組成物(組成物21と22)は、温度環境のみが20℃(組成物21)及び32℃(組成物22)とした以外は上記と同様の型枠成形、測定及び諸評価を行った。以上の結果は表2にまとめて記す。尚、成形物及び型枠の状況等に対する評価の具体的な判断基準は次の通り。
【0025】
・脱型性;脱型用治具で樹脂型枠側面2ヶ所に上端から5cm程度の垂直切込みを入れ、型枠を逆さにして抵抗無く成形物が崩れずに取出せた場合を脱型性が良好とし、それ以外の状況となったものを不良と判断した。型枠充填物が未硬化だったものも脱型性は不良とした。
・保形性;直径約5cmで高さ約10cmの円柱形の成形物が崩れず脱型でき、且つ角欠け、亀裂及び剥離等の欠損が成形物に目視で確認されなかったものを保形性が良好と判断し、それ以外は保形性が不良とした。
・型枠内付着状況;脱形後の型枠内面に、目視で付着物が確認されなかったものを付着無しと判断し、多少でも付着物が見られたものは付着が有りと判断した。
・成形物肌面の状態;成形物表面に剥離痕、ピンホール、ジャンカ、窪み、突起又はひびの何れも目視で確認されず、全体に滑らかな肌面が形成されていたものを成形物肌面の状態が良好と判断し、それ以外を不良とした。
【0026】
表2の結果から、本発明のセメント組成物用成形助剤を用いたセメント組成物は、42℃というかなりの高温環境で型枠成形を行っても、材料分離を生じることなく良好な充填性を呈し、充填から短時間で脱型でき、脱形による型枠付着物の残存も見られず、また欠損・型崩れもなく、堅牢な成形物が得られることがわかる。