特許第5954784号(P5954784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5954784X線診断装置及びX線診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954784
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】X線診断装置及びX線診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   A61B6/03 331
   A61B6/03 330C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-193944(P2012-193944)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-46139(P2014-46139A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信太 高之
(72)【発明者】
【氏名】天生目 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 恒範
(72)【発明者】
【氏名】宮下 修
(72)【発明者】
【氏名】山口 登士雄
【審査官】 松谷 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−62445(JP,A)
【文献】 特開2008−168(JP,A)
【文献】 特開2010−268827(JP,A)
【文献】 特開昭62−139630(JP,A)
【文献】 特開2012−34924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が横たわる天板と、
前記天板上の被検体に向けてX線を照射するX線管と、
前記天板上の被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記天板及び前記X線管を前記天板上の被検体の体軸方向に相対移動させる移動駆動部と、
前記X線管及び前記X線検出器を前記天板上の被検体の体軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記X線管により前記天板上の被検体に向けてX線を照射しながら、前記回転駆動部により前記X線管及び前記X線検出器を回転させつつ、前記移動駆動部により前記天板及び前記X線管を相対往復移動させる撮像制御部であって、前記天板及び前記X線管の相対移動方向を切り替える場合、前記移動駆動部による前記天板及び前記X線管の相対移動を停止する撮像制御部と、
を備え、
前記撮像制御部は、
前記天板及び前記X線管の相対移動が停止された場合、前記X線管の回転角度が、前記X線管の螺旋軌道が往路と復路で一致する軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内であると判断された場合、前記X線管によるX線照射を継続し、前記判断部により前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内でないと判断された場合、前記X線管によるX線照射を停止する停止部と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記停止部は、前記X線管によるX線照射を停止した場合であって、前記判断部により前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内であると判断された場合、前記X線管によるX線照射を再開することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
被検体が横たわる天板と、前記天板上の被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記天板上の被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記天板及び前記X線管を前記天板上の被検体の体軸方向に相対移動させる移動駆動部と、前記X線管及び前記X線検出器を前記天板上の被検体の体軸周りに回転させる回転駆動部と、前記X線管により前記天板上の被検体に向けてX線を照射しながら、前記回転駆動部により前記X線管及び前記X線検出器を回転させつつ、前記移動駆動部により前記天板及び前記X線管を相対往復移動させる撮像制御部とを備えるX線診断装置を制御するX線診断装置の制御方法であって、
前記天板及び前記X線管の相対移動方向を切り替える場合、前記移動駆動部による前記天板及び前記X線管の相対移動を停止するステップと、
前記天板及び前記X線管の相対移動を停止した場合、前記X線管の回転角度が、前記X線管の螺旋軌道が往路と復路で一致する軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断するステップと、
前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内であると判断した場合、前記X線管によるX線照射を継続し、前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内でないと判断した場合、前記X線管によるX線照射を停止するステップと、
を有することを特徴とするX線診断装置の制御方法。
【請求項4】
前記X線管によるX線照射を停止した場合であって、前記X線管の回転角度が前記軌道同期角度許容範囲内であると判断した場合、前記X線管によるX線照射を再開するステップを有することを特徴とする請求項3記載のX線診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置及びX線診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、患者などの被検体に対してX線を照射し、その被検体を透過したX線を検出し、検出したX線量に基づく投影データをデータ収集装置により収集する。その後、X線診断装置は、投影データに対して再構成処理を行い、被検体のスライス画像(断層像)を生成する。このX線診断装置としては、例えば、寝台の天板上の被検体を間にしてX線管及びX線検出器を対向させ、それらを被検体の体軸まわりに回転させつつ撮像を行うX線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)が開発されている。
【0003】
このようなX線CT装置では、被検体を中心とする円軌道上でX線管を連続回転させるとともに天板を何度も往復移動させて投影データを収集する撮影手法が用いられている。このような撮影はヘリカルシャトルスキャンあるいはシャトルモードヘリカルスキャンという呼称で知られている。ヘリカルシャトルスキャンの手法によれば、被検体に対して螺旋状にX線が照射されることになり、X線検出器のカバレッジを越える広範囲の時系列断層像を得ることができる。
【0004】
また、X線CT装置における造影検査では、被検体に造影剤を注入してから関心部位へ造影剤が到達するまでの経過を観察する目的で、各時相における関心部位の断層像を取得するダイナミックCT検査が行われる。この場合も、前述のヘリカルシャトルスキャンの手法によれば、X線検出器のカバレッジ範囲を越えた複数の関心部位の時系列断層像を取得して造影検査を行うことができる。
【0005】
また、X線CT装置においてヘリカルスキャンを複数回行い、各回でX線管が描く螺旋軌道を同一のものとする軌道同期ヘリカルスキャンがある。各回のヘリカルスキャンで得られた断層像のうち同一断層位置のもの同士をサブトラクションすることによりアーチファクトの少ない差像を得ることができる。
【0006】
この軌道同期ヘリカルスキャンと前述のヘリカルシャトルスキャンとを組み合わせて、天板の往復移動における往路と復路の両スキャンでのX線管の描く螺旋軌道が同一となるように、X線管の円軌道上の位置を示す角度を往路開始時と復路開始時で同一とする軌道同期制御を行う軌道同期ヘリカルシャトルスキャンが有用とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−124152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の軌道同期ヘリカルシャトルスキャンでは、往路と復路との切り替え時、X線管が円軌道上の軌道同期を実現する所定位置へ移動するまで待機しなければならない。例えば、往路又は復路を開始する際にX線管が円軌道上の軌道同期を実現する所定位置を過ぎている場合には、X線管が次回その所定位置を通過するまでほぼ一周する時間を待機することになる。X線照射はスキャン時間(撮像時間)を短縮するために軌道同期ヘリカルシャトルスキャン中連続して行われているので、前述の待機中もX線照射が継続されており、その間のX線照射は被検体への無駄な被ばくを生じさせてしまう。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、軌道同期ヘリカルシャトルスキャンにおいて、スキャン時間を短縮しつつ被ばく低減を実現することができるX線診断装置及びX線診断装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るX線診断装置は、被検体が横たわる天板と、天板上の被検体に向けてX線を照射するX線管と、天板上の被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、天板及びX線管を天板上の被検体の体軸方向に相対移動させる移動駆動部と、X線管及びX線検出器を天板上の被検体の体軸周りに回転させる回転駆動部と、X線管により天板上の被検体に向けてX線を照射しながら、回転駆動部によりX線管及びX線検出器を回転させつつ、移動駆動部により天板及びX線管を相対往復移動させる撮像制御部であって、天板及びX線管の相対移動方向を切り替える場合、移動駆動部による天板及びX線管の相対移動を停止する撮像制御部とを備え、撮像制御部は、天板及びX線管の相対移動が停止された場合、X線管の回転角度が、X線管の螺旋軌道が往路と復路で一致する軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断する判断部と、判断部によりX線管の回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断された場合、X線管によるX線照射を継続し、判断部によりX線管の回転角度が軌道同期角度許容範囲内でないと判断された場合、X線管によるX線照射を停止する停止部とを具備する。
【0011】
実施形態に係るX線診断装置の制御方法は、天板上の被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、天板及びX線管を天板上の被検体の体軸方向に相対移動させる移動駆動部と、X線管及びX線検出器を天板上の被検体の体軸周りに回転させる回転駆動部と、X線管により天板上の被検体に向けてX線を照射しながら、回転駆動部によりX線管及びX線検出器を回転させつつ、移動駆動部により天板及びX線管を相対往復移動させる撮像制御部とを備えるX線診断装置を制御するX線診断装置の制御方法であって、天板及びX線管の相対移動方向を切り替える場合、移動駆動部による天板及びX線管の相対移動を停止するステップと、天板及びX線管の相対移動を停止した場合、X線管の回転角度が、X線管の螺旋軌道が往路と復路で一致する軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断するステップと、X線管の回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断した場合、X線管によるX線照射を継続し、判断部によりX線管の回転角度が軌道同期角度許容範囲内でないと判断した場合、X線管によるX線照射を停止するステップとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るX線診断装置の概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係るX線診断装置が備える制御部の概略構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る軌道同期ヘリカルシャトルスキャンを説明するための説明図である。
図4】実施形態に係る軌道同期ヘリカルシャトルスキャンにおける往路と復路との切り替え時のX線管の回転角度及び基点角度を説明するための説明図である。
図5】実施形態に係る往路から復路への切り替え時のX線照射停止を説明するための説明図である。
図6】実施形態に係る復路から往路への切り替え時のX線照射停止を説明するための説明図である。
図7】実施形態に係るX線診断装置が行う撮像処理(軌道同期ヘリカルシャトルスキャン処理)の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係るX線診断装置1は、患者などの被検体Pが横たわる寝台2と、その寝台2上の被検体Pに対して撮像を行う撮像装置3と、寝台2及び撮像装置3を制御する制御装置4とを備えている。このX線診断装置1としては、例えば、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)が挙げられる。なお、例えば、寝台2や撮像装置3はスキャナ室に設置されており、制御装置はスキャナ室に隣接するコンソール室に設置されている。
【0015】
寝台2は、被検体Pを載せる長方形状の天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向(昇降方向)に移動させる移動駆動部2bとを備えている。移動駆動部2bは、制御装置4に電気的に接続されており、天板2a用の移動機構やその移動のための駆動力を供給する駆動源(例えば、モータ)などを有している。この寝台2は、移動駆動部2bにより天板2aを所望の高さまで移動させ、さらに、その天板2aを水平方向に移動させて、天板2a上の被検体Pを所望位置まで移動させる。
【0016】
撮像装置3は、X線を照射するX線管3aと、そのX線管3aに高電圧を供給する高電圧発生部3bと、天板2a上の被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器3cと、そのX線検出器3cにより検出されたX線を投影データとして収集するデータ収集部3dと、X線管3a及びX線検出器3cを天板2a上の被検体Pの体軸周りに回転可能に支持する架台3eと、X線管3a及びX線検出器3cを天板2a上の被検体Pの体軸周りに回転させる回転駆動部3fとを備えている。
【0017】
X線管3aは、架台3eの内部に設けられており、このX線管3aの下部(X線検出器3c側)には、そのX線管3aから出射されたX線を絞るコリメータなどのX線絞り器が設けられている。このX線管3aがX線を出射すると、そのX線はX線絞り器により絞られ、コーン角を持つファンビーム形状、例えば、角錐形状のX線が天板2a上の被検体Pに対して照射される。なお、X線絞り器としては、様々なタイプのX線絞り器を用いることが可能である。
【0018】
高電圧発生部3bは、架台3eの内部に設けられており、X線管3aに供給する高電圧を発生させる装置である。この高電圧発生部3bは、制御装置4から与えられた電圧を昇圧及び整流し、その電圧をX線管に供給する。なお、制御装置4は、X線管3aにより所望のX線を発生させるため、高電圧発生部3bに与える電圧の波形、すなわち振幅やパルス幅などの各種条件を制御する。
【0019】
X線検出器3cは、X線管3aに対向させて架台3eの内部に設けられている。このX線検出器3cは、天板2a上の被検体Pを透過したX線を電気信号に変換してデータ収集部3dに送信する。X線検出器3cとしては、多列多チャンネルのX線検出器を用いることが可能である。この多列多チャンネルのX線検出器は、X線を検出するX線検出素子が格子状に配列されて構成されている。なお、チャンネル列はX線検出素子がチャンネル方向(被検体Pの体軸周り方向)に複数(例えば、数百から数千程度)並んでいる列であり、そのチャンネル列が列方向(被検体Pの体軸方向)に沿って複数列(例えば、16列や64列など)配置されている。
【0020】
データ収集部3dは、架台3eの内部に設けられており、X線検出器3cにより検出されたX線から投影データを生成する装置である。このデータ収集部3dは、X線検出器3cから送信された検出信号をデジタル信号に変換し、デジタルデータである投影データを収集して制御装置4に送信する。
【0021】
架台3eは、寝台2と共にスキャナ室内に設置されており、寝台2の天板2aが挿入される貫通孔H1を有している。この架台3eは、貫通孔H1の中心を回転軸として回転するリング状の回転体(図示せず)を回転可能に支持している。この回転体には、X線管3a及びX線検出器3cが対向して固定されており、それらは回転体の回転により貫通孔H1の周囲を対向状態で回転することになる。
【0022】
回転駆動部3fは、架台3eの内部に設けられており、制御装置4に電気的に接続されている。この回転駆動部3fは回転体用の回転機構やその回転のための駆動力を供給する駆動源(例えば、モータ)などを有している。回転駆動部3fは制御装置4による制御に応じて前述の回転体の回転駆動を行う。例えば、回転駆動部3fは、制御装置4から送信された制御信号に基づいて、一方向に所定の回転スピードで回転体を連続回転させ、天板2a上の被検体Pの体軸周り、すなわち天板2a上の被検体Pを中心とした円軌道上でX線管3a及びX線検出器3cを連続回転させる。
【0023】
制御装置4は、各部を制御する制御部4aと、投影データに対して各種画像処理を行う画像処理部4bと、各種プログラムや各種データなどを記憶する記憶部4cと、操作者により入力操作される入力部4dと、各種画像を表示する表示部4eとを備えている。これらの制御部4a、画像処理部4b、記憶部4c、入力部4d及び表示部4eはバスライン4fにより電気的に接続されている。
【0024】
制御部4aは、記憶部4cに記憶された各種プログラムや各種データに基づいて寝台2の移動駆動部2bや撮像装置3の高電圧発生部3b及び回転駆動部3fなどの各部を制御する。加えて、制御部4aは、表示部4eにスライス画像(断層像)やスキャノ画像(位置決め画像)などの各種画像を表示する表示制御も行う。この制御部4aとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、あるいは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路を用いることが可能である。
【0025】
画像処理部4bは、データ収集部3dから送信された投影データに対して感度補正などの前処理やその投影データに対して画像再構成を行う画像再構成処理、また、スキャノ画像を生成するスキャノ画像生成処理などの各種画像処理を行う。この画像処理部4bとしては、例えば、ASICやFPGAなどの集積回路、CPUやMPUなどの電子回路、アレイプロセッサなどを用いることが可能である。
【0026】
記憶部4cは、各種プログラムや各種データなどを記憶する記憶装置であり、例えば、各種データとして投影データ、スライス画像やスキャノ画像などを記憶する。この記憶部4cとしては、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)に加え、ハードディスク(磁気ディスク装置)やフラッシュメモリ(半導体ディスク装置)などを用いることが可能である。
【0027】
入力部4dは、操作者による入力操作を受け付ける入力部であり、例えば、撮像指示や画像表示、画像の切り替え、各種設定などの様々な入力操作を受け付ける。この入力部4dとしては、例えば、キーボードやマウス、レバーなどの入力デバイスを用いることが可能である。
【0028】
表示部4eは、被検体Pのスライス画像やスキャノ画像、操作画面(例えば、操作者から各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface))などの各種画像を表示する表示装置である。この表示部4eとしては、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、CRT(ブラウン管)ディスプレイなどを用いることが可能である。
【0029】
ここで、前述のX線診断装置1では、各種の撮像モードがある。この各種の撮像モードとしては、例えば、スキャノ画像を撮像するスキャノモードや通常のマルチスライススキャンモード(ノーマルCT)やヘリカルスキャンモード(ヘリカルCT)、軌道同期ヘリカルシャトルスキャンモードなどが挙げられる。
【0030】
軌道同期ヘリカルシャトルスキャンは、軌道同期ヘリカルスキャンとヘリカルシャトルスキャンとを組み合わせたスキャンである。この軌道同期ヘリカルシャトルスキャンでは、天板2aの往復移動における往路と復路の両スキャンでのX線管3aの描く螺旋軌道が同一となるように、X線管3aの円軌道上の位置を示す角度を往路開始時と復路開始時で同一とする軌道同期制御を行う。
【0031】
なお、前述の軌道同期ヘリカルスキャンは、被検体Pの体軸方向における一方向(例えば、頭から足への方向)に一定速度(許容範囲内の速度)で天板2aを移動させつつスライス画像を撮像するヘリカルスキャンを複数回行い、各回でX線管3aが描く螺旋軌道を同一とするスキャンである。この軌道同期ヘリカルスキャンによれば、各回のヘリカルスキャンで得られた断層像のうち同一断層位置のもの同士をサブトラクションすることによりアーチファクトの少ない差像を得ることが可能となる。
【0032】
また、前述のヘリカルシャトルスキャンは、天板2aの移動方向を被検体Pの体軸方向における二方向(例えば、頭から足への方向と足から頭への方向の二方向)で交互に切り替え、天板2aを往復移動させつつスライス画像を撮像するスキャンである。すなわち、ヘリカルシャトルスキャンは、被検体Pを中心とする円軌道上でX線管3aを連続回転させるとともに天板2aを連続して往復移動させて投影データを収集するスキャンである。このヘリカルシャトルスキャンによれば、被検体Pに対して螺旋状にX線が照射されることになり、X線検出器3cのカバレッジを越える広範囲の時系列断層像を得ることが可能となる。
【0033】
次に、前述の制御部4aについて詳しく説明する。
【0034】
図2に示すように、制御部4aは、装置全体の制御を行うシステム制御部11と、寝台2や撮像装置3を制御する撮像制御部12とを有している。なお、システム制御部11や撮像制御部12は、電気回路などのハードウエアにより構成されても良く、また、各機能を実行するプログラムなどのソフトウエアにより構成されても良く、あるいは、それらの両方の組合せにより構成されても良い。
【0035】
システム制御部11は、撮像制御部12を制御して撮像装置3により投影データを収集する。また、システム制御部11は、画像処理部4bを制御して投影データから画像を再構成したり、表示部4eによりスライス画像(断層像)などの各種画像を表示したりする。
【0036】
撮像制御部12は、撮像装置3の回転駆動部3fを制御することで、X線管3aとX線検出器3cとを天板2aに載置された被検体Pを略中心とする円軌道上で連続回転させる。また、撮像制御部12は、寝台2の移動駆動部2bを制御することで、天板2aを連続して往復移動させる。このように、撮像制御部12は、回転駆動部3f及び移動駆動部2bを制御することで、ヘリカルシャトルスキャンを実現する。この撮像制御部12は、天板2aの往復移動における往路と復路の両スキャンでのX線管3aの描く螺旋軌道が同一となるように、X線管3aの円軌道上の位置を示す角度を往路開始時と復路開始時で同一とする軌道同期制御を行う。
【0037】
具体的には、例えば、撮像制御部12は、往路スキャンにおいて照射を開始するときのX線管3aの回転角度、及び、復路スキャンにおいて照射を開始するときのX線管3aの回転角度を予め決定する。さらに、撮像制御部12は、決定した回転角度に従ってX線管3aによる照射を開始するように、寝台2の移動駆動部2bや撮像装置3の高電圧発生部3b、回転駆動部3fを制御する。
【0038】
また、撮像制御部12は、往路と復路とを切り替える場合にX線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断する判断部12aと、その判断結果に応じてX線管3aによるX線照射を停止する停止部12bとを有している。なお、軌道同期角度許容範囲は、そのX線管3aの螺旋軌道が往路と復路で一致するための許容範囲であり、詳しくは、X線管3aの円軌道上の位置を示す回転角度が往路および復路開始時に同一の角度となるための許容範囲である。
【0039】
判断部12aは、往路と復路とを切り替えるとき、撮像装置3の回転駆動部3fからX線管3aの回転角度を取得し、その取得した回転角度が軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断する。なお、回転駆動部3fは、X線管3aの回転角度を検出するロータリエンコーダなどの検出部3f1を有している。この検出部3f1により検出されたX線管3aの回転角度が判断部12aに入力される。
【0040】
停止部12bは、判断部12aによりX線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断された場合、X線管3aによるX線照射を継続し、判断部12aによりX線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内でないと判断された場合、X線管3aによるX線照射を停止する。なお、そのX線管3aによるX線照射を停止した後、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断されると、X線管3aによるX線照射を再開する。
【0041】
ここで、図3に示すように、軌道同期ヘリカルシャトルスキャンにおいて、天板2aは被検体Pの体軸方向と平行な第一方向D1(例えば往路方向)及びその第一方向と反対方向である第二方向D2(例えば復路方向)に連続して往復移動する。このとき、X線管3aは被検体Pを中心とする円軌道上で連続回転する。このスキャンによれば、天板2aとX線管3aとは往復の両方向に相対移動して、X線は被検体Pに対して螺旋状に照射されることになる。なお、図3では、被検体Pの体軸方向のうち第一方向D1を頭から足に向かう方向とし、天板2aがその第一方向D1に移動する場合が往路スキャンであり、その第一方向と反対方向である第二方向D2に移動する場合が復路スキャンである。また、螺旋状の矢印はX線管3aの螺旋軌道である。
【0042】
この軌道同期ヘリカルシャトルスキャンにおいて、撮像制御部12は、撮像範囲内に設定された定速領域において天板2aを一定の速度で移動させ、加減速領域において天板2aの移動速度を加速又は減速させる。すなわち、撮像制御部12は、加減速領域において天板2aの移動速度を減速させて停止させ、さらに、天板2aの移動方向を反転させて折り返すと天板2aの移動速度を加速させる。また、撮像制御部12は、軌道同期ヘリカルシャトルスキャンの往路スキャン及び復路スキャンのいずれにおいても、円軌道上の同一回転角度を基点としてX線の照射を開始するように軌道同期制御を行う。
【0043】
例えば、図4に示すように、往路スキャン又は復路スキャンの際、X線管3aが回転角度90°の時に照射を開始するように軌道同期制御を行う場合には、この回転角度90°が基点角度A1となる。このとき、通常のヘリカルシャトルスキャンでは、例えば、往路スキャンの照射が完了し、復路スキャンを開始するための準備が完了すると、図4に示すように、スキャン条件によってはX線管3aが基点角度A1を過ぎて回転角度B1(例えば、135°)に位置するような場合がある。この場合には、撮像制御部12は、X線管3aが再び基点角度A1の位置に移動するまでほぼ一回転待機してから、復路スキャンを開始しなければならず、その間もX線照射が継続しているため、被検体Pに無駄な被ばくを与えることになる。例えば、回転角度B1が135°である場合には、X線管3aが基点角度A1(90°)を通過するまで、315°分の回転を待機する必要がある。このような待機は、復路スキャン終了後の往路スキャン開始においても同じように生じることがある。
【0044】
そこで、前述の待機時のX線照射による無駄な被ばくを抑えるため、撮像制御部12は、X線管3aの円軌道上の位置を示す回転角度が軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判定する判断部12aにより、X線の照射を継続するか停止するかを決定する。X線管3aの円軌道上の位置を示す回転角度が軌道同期角度許容範囲外である場合には、X線照射を停止する。なお、軌道同期角度許容範囲としては、例えば、基点角度±15°以内の範囲が判断部12aに設定されている。
【0045】
ここで、例えば、図5に示すように、往路スキャン完了後に復路スキャンを開始するとき、X線管3aの回転角度(円軌道上の位置)が軌道同期角度許容範囲(軌道同期角度の基点許容範囲)外であると判断した場合には、高電圧発生部3bに対してX線の照射を停止する制御を行い、図5中のB1〜A1までの点線で示した円軌道上の区間のX線照射を停止する。そして、再びX線管3aが円軌道上の軌道同期角度の基点角度A1を通過したときに、高電圧発生部3bに対してX線の照射を開始する制御を行うとともに、移動駆動部2bに対して天板2aの復路移動を開始する制御を行う。このような制御は復路スキャン完了後に往路スキャンを開始するときも同様である。
【0046】
例えば、図6に示すように、復路スキャン完了後に往路スキャンを開始するとき、X線管3aの回転角度(円軌道上の位置)が軌道同期角度許容範囲(軌道同期角度の基点許容範囲)外であると判断した場合には、高電圧発生部3bに対してX線の照射を停止する制御を行い、図6中のB1〜A1までの点線で示した円軌道上の区間のX線照射を停止する。そして、再びX線管3aが円軌道上の軌道同期角度の基点角度A1を通過したときに、高電圧発生部3bに対してX線の照射を開始する制御を行うとともに、移動駆動部2bに対して天板2aの復路移動を開始する制御を行う。
【0047】
次に、前述のX線診断装置1の撮像制御部12が行う撮像処理(軌道同期ヘリカルシャトルスキャン処理)について図7を参照して説明する。
【0048】
図7に示すように、X線管3aの回転角度が軌道同期角度(基点角度)になったか否かが判断され(ステップS1)、その判断はX線管3aの回転角度が軌道同期角度になるまで繰り返される(ステップS1のNO)。このとき、寝台2の天板2aは被検体Pの撮像範囲に基づく撮像開始位置に待機している状態である。なお、ここでは、X線管3aの回転角度が軌道同期角度になったか否かを判断しているが、これ以外にも、許容差を考慮し、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内になったか否かを判断するようにしても良い。
【0049】
ステップS1において、X線管3aの回転角度が軌道同期角度になったと判断されると(ステップS1のYES)、X線管3aによるX線照射が開始され(ステップS2)、寝台2の天板2aが往路又は復路方向に移動を開始し(ステップS3)、その後、被検体Pの撮像範囲に基づく撮像終了位置で寝台2の天板2aが停止される(ステップS3)。
【0050】
ステップS4の処理後、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内(例えば、基点角度±15°以内の範囲内)であるか否かが判断され(ステップS5)、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断されると(ステップS5のYES)、そのまま処理がステップS7に進められる。一方、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内でないと判断されると(ステップS5のNO)、X線管3aによるX線照射が停止され(ステップS6)、スキャン(撮像)が終了したか否かが判断される(ステップS7)。なお、このステップS7では、例えば、往復回数が所定の回数に到達したか否かが判断され、往復回数が所定の回数に到達したと判断された場合に、スキャンが終了したと判定される。
【0051】
ステップS7において、スキャンが終了していないと判断されると(ステップS7のNO)、X線管3aがX線照射中であるか否かが判断される(ステップS9)。X線管3aがX線照射中であると判断された場合には(ステップS9のYES)、処理がステップS3に進められ、寝台2の天板2aが往路又は復路方向に移動を開始する(これ以降の処理は前述と同様である)。一方、X線管3aがX線照射中でない、すなわちX線照射停止中と判断された場合には(ステップS9のNO)、処理がステップS1に進められ、X線管3aの回転角度が軌道同期角度(基点角度)になったか否かが判断される(これ以降の処理は前述と同様である)。
【0052】
一方、ステップS7において、スキャンが終了したと判断されると(ステップS7のYES)、X線管3aによるX線照射が停止され(ステップS8)、処理が終了する。なお、ステップS6において、X線管3aによるX線照射が停止されていた場合には、ステップS8を省略しても構わないが、確実な停止のためにもスキャン終了時に再度X線照射の停止処理を行った方が望ましい。
【0053】
このような撮像処理、すなわち軌道同期ヘリカルシャトルスキャン処理によれば、往路と復路との切り替え時、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であるか否かが判断され、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断された場合、X線管3aによるX線照射が継続され、寝台2の天板2aの移動が開始される。一方、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲外であると判断されると、X線管3aによるX線照射が停止され、その後、X線管3aの回転角度が軌道同期角度になると、X線管3aによるX線照射が再開され、寝台2の天板2aの移動が開始される(図5及び図6参照)。
【0054】
これにより、往路と復路との切り替え時には、X線管3aが円軌道上の軌道同期を実現する所定位置へ移動するまで、X線管3aによるX線照射が停止されることになる。例えば、往路または復路を開始する時にX線管3aが円軌道上の軌道同期を実現する所定位置を過ぎている場合には、X線管3aが次回その所定位置を通過するまでほぼ一周する時間を待機しなければならないが、その間のX線照射が停止されることになる。このため、被検体Pへの無駄な被ばくが抑えられるので、被ばく低減を実現することができる。このように天板2aの往復移動で方向転換を行う場合において、照射継続により時間短縮を実現することが可能となり、さらに、照射停止により無駄な被ばくを防止することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、実施形態によれば、天板2aの移動が停止された場合、X線管3aの回転角度が、そのX線管3aの螺旋軌道が往路と復路で一致する軌道同期角度許容範囲内であるか否かを判断し、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内であると判断した場合、X線管3aによるX線照射を継続し、X線管3aの回転角度が軌道同期角度許容範囲内でないと判断した場合、X線管3aによるX線照射を停止する。このため、照射継続によりスキャン時間(撮像時間)を短縮しつつ、照射停止により被検体Pへの無駄な被ばくが抑えられるので、被ばく低減を実現することができる。
【0056】
なお、前述の実施形態においては、X線管3aと天板2aとの相対移動のため、天板2aを往復移動させているが、これに限るものではなく、例えば、天板2aを往復移動せずに固定し、その天板2aのかわりに架台3eや回転体、すなわちX線管3aを天板2a上の被検体Pの体軸方向に往復移動するようにしても良い。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 X線診断装置
2a 天板
2b 移動駆動部
3a X線管
3e X線検出器
3f 回転駆動部
12 撮像制御部
12a 判断部
12b 停止部
P 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7