特許第5954787号(P5954787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954787
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】送粉昆虫の栽培施設への導入方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   A01K67/033 502
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-239985(P2012-239985)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87311(P2014-87311A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年4月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成23年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発委託事業、産業技術力強化法第19条に係る特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】505094984
【氏名又は名称】株式会社アグリ総研
(73)【特許権者】
【識別番号】593171592
【氏名又は名称】学校法人玉川学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 俊行
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】小野 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正己
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4968584(JP,B2)
【文献】 特開2008−212148(JP,A)
【文献】 特開2011−072204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
A01K 53/00
A23K 50/80
A01H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミツバチ、マルハナバチ等の送粉昆虫の栽培施設への導入にあたり、
受粉を必要とされる対象作物の開花前に、栽培施設内にあって送粉昆虫の送粉昆虫溜りとなる場所に、予め人工給餌器を配置すると共に、栽培施設に送粉昆虫の巣箱を搬入し、その後に、送粉昆虫を栽培施設内に飛行させるなかで、予め送粉昆虫溜りができる場所に配置された人工給餌器から吸蜜させて、外役の送粉昆虫の餓死を予防するとともに栽培施設内で送粉昆虫を定着させ、対象作物の開花後に、速やかに訪花・採餌できるようにしたことを特徴とする送粉昆虫の栽培施設への導入方法
【請求項2】
前記人工給餌器と同じ蜜入りの長期給餌用人工給餌器を、栽培施設内に配置し、前記人工給餌器の蜜容量不足の解消を図ることを特徴とする請求項1記載の送粉昆虫の栽培施設への導入方法。
【請求項3】
前記の蜜として、ハチ蜜、蔗糖水、ブドウ糖水、果糖水、オリゴ糖水のいずれか又はそれらを混合したものであることを特徴とする請求項1記載の送粉昆虫の栽培施設への導入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はミツバチ、マルハナバチ、ハリナシバチ等の送粉昆虫の栽培施設への導入するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミツバチ・マルハナバチなどの送粉昆虫は、通常対象作物が開花した後に導入する。しかし、この導入は必ずしも成功するものでなく、失敗した場合には放飼した送粉昆虫の多くが死亡し、これにより対象作物の収量低下や送粉昆虫の巣の短命化が発生する。
【0003】
このような問題に対処するため、対象作物の香り成分を添加した蜜を巣に給餌し、送粉昆虫の記憶と学習機能を利用して、直接作物の花へ誘導する方法(直接法)(特許文献1)がある。また、バニリンなどの香料を蜜に添加し、巣において給餌させると共に、栽培施設内に香料添加の蜜入り造花を配置して、送粉昆虫の記憶と学習機能を利用し、造花への誘導を図りながら、造花への吸蜜飛行を介して対象作物の花に移動させて、送粉昆虫を定着させる方法(間接法)(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212148号公報
【特許文献2】特許第4968584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら直接方法のみならず、間接方法にも、送粉昆虫の巣へ香料を添加した蜜を入れる必要があるため、作業者が刺される危険性が増すのと共に、何かの原因でこれらの方法を用いても栽培施設への導入が失敗した場合や、導入が成功しても訪花開始時期に遅延が生じた場合には、開花している作物の受粉が行なわれず、収量が減少してしまう。
【0006】
栽培施設への導入の失敗例として、ミツバチの場合は、施設内へ放飼された後に、内部に蜜(花)を求めて飛行し、太陽の方向から、施設の上方で且つ南や西に又は南西に集まる習性を持っている。そこから、多くの個体が施設外へ出ようとするが、出ることが出来ず集まったままいわゆる“送粉昆虫溜り”を形成し、そのまま採餌できず、多くの頭数が餓死してしまう。
【0007】
前記した送粉昆虫の栽培施設内への導入は、対象作物の開花後に導入を常としており、その対象作物の開花より前に導入すれば餌を採ることができずに送粉昆虫が餓死してしまう。しかし、対象作物の受粉作業を確実化するためには、対象作物の開花前に、栽培施設内に導入し定着させることが好ましい。
【0008】
そこで、この発明は、送粉昆虫の栽培施設内へ対象作物の開花前に導入し定着させ、開花後に速やかに訪花を促すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、この発明に係る送粉昆虫の栽培施設への導入方法は、ミツバチ、マルハナバチ等の送粉昆虫の栽培施設への導入にあたり、受粉を必要とされる対象作物の開花前に、栽培施設内にあって送粉昆虫の送粉昆虫溜りとなる場所に、予め人工給餌器を配置すると共に、栽培施設に送粉昆虫の巣箱を搬入し、その後に、送粉昆虫を栽培施設内に飛行させるなかで、予め送粉昆虫溜りのできる場所に配置された人工給餌器から吸蜜させて、外役の送粉昆虫の餓死を予防するとともに栽培施設内で送粉昆虫を定着させ、対象作物の開花後に、速やかに訪花・採餌できるようにしたことを特徴としている(請求項1)。
【0010】
したがって、対象作物の開花前では、送粉昆虫の栽培施設内の飛行時に、施設外へ出ようとして巣箱より南側や西側の位置に送粉昆虫溜りが生まれるが、その部分に予め配置した人工給餌器から吸蜜するようになり、送粉昆虫は餓死を免れ、吸蜜と巣箱とを往復し、吸蜜活動が花の有無に関わらず、安定的に行なわれるようになる。即ち、送粉昆虫が栽培施設内で定着するため、対象作物の開花後に、速やかに訪花、採餌を開始し、送粉に供することになる。
【0011】
また、必要により、前記人工給餌器と同じ蜜入りの長期給餌用人工給餌器を、栽培施設内に配置し、前記人工給餌器の蜜容量不足の解消を図ることを特徴としている(請求項2)。これにより、栽培施設内の送粉昆虫溜り外に、長期給餌用人工給餌器を配置して、送粉昆虫溜りに配置される人工給餌器内の蜜の容量が少ない場合に、補填する目的で用いられる。この場合に、蜜は同一のものが用いられることから、その蜜の匂いから、送粉昆虫の長期給餌用人工給餌器への移行が確実となる。
【0012】
前記の蜜として、ハチ蜜、蔗糖水、ブドウ糖水、果糖水、オリゴ糖水のいずれか又はそれらを混合したものであることを特徴としている(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、請求項1の発明によれば、対象作物の開花前に送粉昆虫を栽培施設内に定着させ、開花後の速やかな訪花を促すものである。放飼直後の外役の送粉昆虫が集中して餓死する場所である送粉昆虫溜りに餓死防止も兼ねた人工給餌器を設置し、その人工給餌器から吸蜜することで餓死を免れながら、その後、人工給餌器から往復吸蜜が安定的に行なわれるようになる。さらに、定着後に開花した対象作物に対し、速やかに訪花を開始することになり、その結果、受粉の失敗を回避することができる。送粉昆虫を対象作物の開花前に安定的に導入することができるため、受粉を必要とする多くの施設園芸作物にも利用できる。また、この導入方法はすでに対象作物が開花している環境下でも当然使用することができ、開花以前に送粉昆虫を導入できない場合や、追加で送粉昆虫を導入するような場合にも巣へ蜜を入れる危険な作業をなくすことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、送粉昆虫溜りに設置される人工給餌器の容量不足の場合には、栽培施設内に長期給餌用人工給餌器を配置して、送粉昆虫の給餌を助け、栽培施設内での送粉昆虫を定着させるもので、長期給餌用人工給餌器内の蜜を前記人工給餌器内の蜜と同じであれば、長期給餌用人工給餌器に移行しやすく、必要により香料を添加すれば、より確実性が高められることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】栽培施設内にミツバチを普通に放飼した場合には、ミツバチが飛行して南西部位に送粉昆虫溜りを作った状態を示す説明図である。
図2】送粉昆虫溜りに多数の人工給餌器を配置し、ミツバチが往復吸蜜(吸蜜活動)が行なわれている状態を示す説明図である。
図3】人工給餌器内の蜜が無くなり、匂をたよりに長期給餌用人工給餌器に移行状態を示す説明図である。
図4】長期給餌用人工給餌器による往復吸蜜(吸蜜活動)が行なわれている状態の説明図である。
図5】長期給餌用人工給餌器による往復吸蜜活動時にあって、対象作物の一部が開花し、その花に向ってミツバチが訪花した状態を示す説明図である。
図6】人工給餌器の斜視図である。
図7】長期給餌用人工給餌器の斜視図である。
図8】送粉昆虫の栽培施設への導入方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
ミツバチ、マルハナバチ、ハリナシバチ等の送粉昆虫を栽培施設1へ導入するにあたり、その具体例を説明するが、送粉昆虫としてミツバチを採用し、栽培施設として縦10m横5mの縦長のビニールハウスが用いられ、対象作物として、イチゴが植えられている。ミツバチは1頭の女王バチと1万頭ほどの働きバチの集団で生活している。
【0017】
図1には送粉昆虫の栽培施設1への通常の導入の説明図が示されており、図2乃至図5には、送粉昆虫の栽培施設1への導入時の各段階時の説明図が示され、この各説明図と、図8に示す送粉昆虫の栽培施設導入の手順とをリンクさせながら、以下に説明する。
【0018】
栽培施設1は、図1に示すように縦長で、南北方向に設置されている。この栽培施設1内にミツバチの巣箱2が、栽培施設1の北側に搬入される。この巣箱2内のミツバチは出入口が開けられて、外役のミツバチ(以下ミツバチとは外役を示す。)栽培施設1内を飛行する。巣箱は北側に配置されることが好ましいが、栽培施設1によっては東側なり西側なりに設けられることもある。栽培施設1内を飛行のミツバチは、花を求めて施設2外へ出ようとし、主に栽培施設1の南西で天井に近い部分に集まり、図1の示す送粉昆虫溜り3を作ることになる。しかし、送粉昆虫溜まり3には花は無くミツバチは吸蜜できずに餓死してしまう。
【0019】
そこで、ミツバチの導入前又は同時に人工給餌器4を、その送粉昆虫溜り3に多数個(12個)を図2に示すように配置する(ステップ101)。人工給餌器4は、図6に示すような造花6で、中心に蜜入りの吸蜜部7を有しており、栽培施設1の天井に近い部分に配置されている。人工給餌器はミツバチ等送粉昆虫が吸蜜できる構造であれば、特に造花である必要はない。また、蜜はハチ蜜、蔗糖水、ブドウ糖水、果糖水のいずれか又はそれらを混合したものである。なお、蜜には必要により香料例えばバニリンが添加される。
【0020】
人工給餌器4の設置と同時に、必要により長期給餌用人工給餌器8が設置される。この長期給餌用人工給餌器8は前記人工給餌器4の設置スペースの関係から容量が少ない場合にそれを補填するために設けられている。長期給餌用人工給餌器8を栽培施設1内の適所、好ましくは図2に示すように、対象作物が植えられている地面に設置する(ステップ102)。この長期給餌用人工給餌器8の蜜には、必要により香料例えばバニリンが添加されていて、その際には、前記人工給餌器にも香料例えばバニリンが添加され、前記人工給餌器4と同じ匂いとなっている。この長期給餌用人工給餌器8は図7に示すような構造を持ち、吸蜜部9と蜜を入れるタンク10とよりなっている。
【0021】
栽培施設1内に巣箱2が搬入され(ステップ103)、施設内の飛行を開始したミツバチ(ステップ104)は、花を求めて施設2外へ出ようとし、主に栽培施設1の南西で天井に近い部分に集まり、図1および図2の示すハチ溜り3を作ることになる(ステップ105)。しかし、花は無くミツバチは吸蜜できずに餓死してしまう恐れがあるが、今回は人工給餌器4が設置してある。
【0022】
その人工給餌器4は図6に示すような造花6で、中心に蜜入りの吸蜜部7を有しており、栽培施設1の天井に近い部分に配置されている。そのため、ミツバチは人工給餌器4に集まり、必要により匂いを付けられた蜜を吸蜜するようになる(ステップ106)。これにより、ミツバチの餓死は免れると共に、その匂いと蜜とを結びつけて連合学習するようになる。
【0023】
人工給餌器4の蜜の容量が充分に入る容器が用いられるなら、この人工給餌器4から吸蜜を始め、その蜜を巣に運ぶ帰巣を開始する(ステップ108)、そして、再び巣から出る出巣(ステップ109)が行なわれ、人工給餌器4に飛来する。即ち、図2に示すように、ミツバチは対象作物12の開花がないにもかかわらず、栽培施設に定着する。
【0024】
しかし、人工給餌器4の設置場所の関係から、蜜の容量が少ない場合がある。このような場合に蜜に匂いが付けられている。前記人工給餌器4の蜜がなくなると、同じ匂いの香料を添加した長期給餌用人工給餌器8を探索し、図3に示すように移行する(ステップ107)。そこで吸蜜を始めて、その蜜を巣に運ぶ帰巣を開始する(ステップ108)。そして、再び巣から出る出巣(ステップ109)が行なわれ、長期給餌用人工給餌器8に飛来する。即ち、図4に示すように、ミツバチは対象作物12の開花がないにもかかわらず栽培施設に定着する。
【0025】
表1は人工給餌器及び長期給餌用人工給餌器4,8を用いて放飼したミツバチの5分間あたりの出・帰巣数を表わし、表2は人工給餌器及び長期給餌用人工給餌器4,8を用いて放飼した翌日のミツバチの5分間あたりの出・帰巣数を表わしている。この表1,2から、ミツバチが巣から出て、又は巣へ帰ることが活発に行なわれていることを知ることができる。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】

【0028】
ミツバチの往復吸蜜(吸蜜活動)が行なわれて、栽培施設1内を飛行中に、ミツバチの持つ本来的な性質から、飛行探索(ステップ110)が行なわれ、対象作物12の一部が開花すると、図5に示すように、ただちに訪花し、採餌するようになる。即ち、対象作物に訪花し吸蜜・採餌するようになり、餌の持帰り動作が行なわれ、栽培施設のミツバチの導入が完了する。
【0029】
供試したイチゴ、ノースポール、セイタカアワダチソウ、セイヨウタンポポ、トマト、ナス、タバコ、キュウリ、ソラマメに、送粉昆虫は、開花後はその直後から訪花し、採餌が見られた。
【0030】
この実施例では、ミツバチを採用した例であるが、この発明が同じ送粉昆虫であるマルハナバチ、ハリナシバチにも利用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 栽培施設
2 巣箱
3 ハチ溜り
4 人工給餌器
6 造花
7 吸蜜部
8 長期給餌用人工給餌器
9 吸蜜部
12 対象作物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8