特許第5954794号(P5954794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954794
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】酵素失活の無いノニ果汁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20160707BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20160707BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A23L33/00
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-135537(P2013-135537)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-8660(P2015-8660A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】513163328
【氏名又は名称】モアーク農産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100113550
【弁理士】
【氏名又は名称】有阪 正昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 松夫
(72)【発明者】
【氏名】沓澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊介
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−067932(JP,A)
【文献】 Duangporn KANTACHOTE et al,Effects of Initial Air Removal Methods on Microorganisms and Characteristics of Fermented Plant Beve,Pakistan Journal of Biological Sciences,2008年,11, 2,p.173-180
【文献】 Noor HAFIZAH, Y. et al,Properties of canned mengkudu (Morinda citrifolia L.) extract during storage,International Food Research Journal,2012年,Vol.19, No.3,p.1211-1215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熟成したノニ果実を搾汁して得られたノニ果汁を密閉容器内に入れて、
温度25〜35℃で1〜15週間保存して、pH3.5以下でポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼを含有するノニ果汁とすることを特徴とする酵素失活の無いノニ果汁の製造方法。
【請求項2】
収穫したノニ果実を熟成容器内に入れて一定期間保存して熟成した後、該熟成したノニ果実を搾汁して得られたpH3.6〜3.8のノニ果汁を密閉容器内に入れて、温度25〜35℃で、1〜15週間保存して、pH3.5以下でポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼを含有するノニ果汁とすることを特徴とする酵素失活の無いノニ果汁の製造方法。
【請求項3】
ノニ果汁を密閉容器内に入れて、温度28〜32℃で、3〜15週間保存することを特徴とする請求項1又は2に記載の酵素失活の無いノニ果汁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はノニ果汁の製造方法及び得られたノニ果汁の提供に関し、特に酵素の失活なしに長期保存が可能なノニ果汁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノニは東南アジアからポリネシアにかけて自生する高さ3〜10mほどになるアカネ科の常緑樹で、国内では沖縄地方に自生しており、学名はモリンダ・シトリフォリア,和名はヤエヤマアオキと呼ばれる。
ノニは古くからポリネシア諸島の人々の間で万能薬として伝統的に利用されており、可食部分の実以外にも、葉、根、樹皮など利用できる。
そして、ノニの効果・効能は免疫力向上や鎮痛消炎作用,抗ガン作用,生活習慣病の予防,糖尿病の予防と改善等と言われている。
【0003】
特に、近年そのノニの果実から搾汁されたノニジュースは広く愛飲されている。
一般に、ノニの果実からノニジュースを搾り取る場合、ノニの果実を収穫し、その後熟成容器内で更に熟成させた後にノニの果実を搾ってノニジュースを得ている。
しかしながら、その熟成過程において、雑菌が繁殖して、一般細菌、大腸菌等が増大する場合があるため、出荷前に加熱殺菌をする必要があった。さらに、防腐剤を添加しておく必要があった。
そこで、細菌の増殖を抑制するために、「収穫されたノニの果実を熟成容器に入れると共に、この熟成容器にノニの果実が没するまで水を入れ、更に糖類をこの水に添加し、所定期間経過させてノニの果実を熟成させた後に、その熟成したノニの果実から果汁を搾り取ることを特徴とする方法(特許文献1)が提案されている。
すなわち、熟成容器内に水と共に糖類を添加すると、ノニの果実に付着していた酵母菌が糖類を餌としてアルコール発酵し、この酵母菌によるアルコール発酵により生成されるアルコールが殺菌剤として作用し、他の雑菌の繁殖を抑制することができる、というものである。
しかし、その場合でも、加熱殺菌処理は必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開6−67932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のごとく、従来技術ではノニ果汁に加熱殺菌処理又は防腐剤添加処理を施すことが必要とされていた。
そこで問題が生じるのは、加熱処理を行うと、ノニ果汁に含まれる各種酵素が失活してしまうことである。
よって、本発明の課題はこれらの問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究の結果、ノニ果汁に加熱処理あるいは防腐剤添加処理を行うことなしに、各種の酵素が失活せずに存在し、かつ一般細菌や大腸菌の増殖なしに、発酵ノニ果汁を製造することに成功した。
すなわち本発明は、下記構成の「酵素失活の無いノニ果汁の製造方法」である。
(1)熟成したノニ果実を搾汁して得られたノニ果汁を密閉容器内に入れて、温度25〜35℃で1〜15週間保存して、pH3.5以下でポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼを含有するノニ果汁とすることを特徴とする酵素失活の無いノニ果汁の製造方法
(2)収穫したノニ果実を熟成容器内に入れて一定期間保存して熟成した後、該熟成したノニ果実を搾汁して得られたpH3.6〜3.8のノニ果汁を密閉容器内に入れて、温度25〜35℃で、1〜15週間保存して、pH3.5以下でポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼを含有するノニ果汁とすることを特徴とする酵素失活の無いノニ果汁の製造方法。
(3)ノニ果汁を密閉容器内に入れて、温度28〜32℃で、3〜15週間保存することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の酵素失活の無いノニ果汁の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、加熱処理又は防腐剤添加処理を不要とし、かつ酵素の失活なしに酵素含有ノニ果汁を製造することができる。
同ノニ果汁には、有用な酵素のポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼを十分に含有している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の具体的な工程について説明する。
まず、ノニの果実を収穫し、軽く水洗いをし埃などを取り除いてから、熟成容器内に投入し、約3ヶ月間そのまま放置する。
その後、熟成が終了すると熟成容器から熟成したノニの果実を取り出し、搾汁機で果実を搾り、ノニの果汁を得る。
本願発明では、その得られたノニの果汁を密閉容器に注入し、密閉状態で温度25〜35℃、好ましは28〜32℃で、1週間以上、好ましくは30日前後密閉保存処理をする。
この密閉、密閉処理後にはpH3.4となっている。また、密閉処理後には一般細菌数や大腸菌数等が大幅に低減してくる。
すなわち、密閉容器内では嫌気性発酵が進行して、酸度が上昇し、その結果一般細菌や大腸菌等の繁殖が抑制され、その後死滅したものと考えられる。
【実施例】
【0009】
以下の実施例は、本発明を実施する場合の好ましい例を具体的に示すことを意図するものであって、本発明がこれらの実施例によって限定されることは意図されていない。
【0010】
[実施例1]
収穫したノニの果実16kgを内容積20リットルの容器に入れ、容器の上方開口部に単に板状蓋を載せた状態で、それを常温で90日間保存した。
90日の保存後は果肉は柔らかくピューレ状となり果汁も滲みでている状態となった。
その果肉を搾汁して9.9リットルのノニ果汁(pH3.6)を取得した。
次いで、得られたノニ果汁を内容積10リットルの密閉容器に入れ、29〜31℃で30日間保存した。
得られた酵素ノニ果汁はpH3.3〜3.4であった。また、一般細菌数(CFU/ml)は300以下、大腸菌群(CFU/ml)は陰性、乳酸菌(CFU/ml)は300以下であった。
さらに、ポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ及びポリガラクツロナーゼについて、力価を測定したところ、ポリフェノールオキシダーゼ力価2.5(試料10mg当たり)、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ力価0.015(μmol/min/試料1mg当たり)、ポリガラクツロナーゼ活性2,600(nmol/h/試料1g当たり)であり、酵素の活性が十分に保持されていることが解った。
【0011】
[比較例1] 比較例として、収穫したノニの果実16kgを内容積20リットルの容器に入れ、容器の上方開口部に単に板状蓋を載せた状態で、それを常温で90日間保存した後、搾汁して9.9リットルのノニ果汁(pH3.6)を取得した。
その、一般細菌数(CFU/ml)は1.4×103、大腸菌群(CFU/ml)は陰性、乳酸菌(CFU/ml)は2.0×103であった。