特許第5954845号(P5954845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5954845照明光学系、照明光学系の色むら改善方法、プロジェクターおよびプロジェクターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954845
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】照明光学系、照明光学系の色むら改善方法、プロジェクターおよびプロジェクターシステム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20160707BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20160707BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G03B21/14 Z
   G03B21/00 D
   H04N5/74 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-531404(P2014-531404)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2012071042
(87)【国際公開番号】WO2014030206
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英策
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−266463(JP,A)
【文献】 特開平07−151995(JP,A)
【文献】 特開平08−314033(JP,A)
【文献】 特開2011−102901(JP,A)
【文献】 特開2011−048021(JP,A)
【文献】 特開2010−014815(JP,A)
【文献】 特開2010−078975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/64
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバーより第1の発散角で出射した第1の光束を集光する第1のレンズと、
第2の光ファイバーより前記第1の発散角とは異なる第2の発散角で出射した、前記第1の光束とは色が異なる第2の光束を集光する第2のレンズと、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸とが直交する位置に設けられ、前記第1のレンズからの前記第1の光束を透過させ、前記第2のレンズからの前記第2の光束を前記第1の光束が透過した方向に向けて反射する合成光学素子と、
柱状のレンズ部を備え、該レンズ部の両端面の一方が入射面、他方が出射面とされ、前記合成光学素子からの前記第1および第2の光束が前記入射面より入射し、該入射した第1および第2の光束が、前記レンズ部内を伝搬して前記出射面より出射されるロッドインテグレータと、を有し、
前記第1および第2のレンズは、前記第1のレンズにより集光した前記第1の光束の収束角と前記第2のレンズにより集光した前記第2の光束の収束角とが一致するように構成され、
前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第1の光ファイバーの出射面は、前記第1のレンズを介して共役関係にあり、
前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第2の光ファイバーの出射面は、前記第2のレンズを介して共役関係にある、照明光学系。
【請求項2】
前記第1および第2のレンズの倍率をそれぞれβ1、β2、前記第1および第2の発散角をそれぞれθ1、θ2、前記第1のレンズにより集光した前記第1の光束の収束角および前記第2のレンズにより集光した前記第2の光束の収束角をともにθ3とした場合、
前記第1のレンズは、
sinθ1/sinθ3=β1
を満たすように構成され、
前記第2のレンズは、
sinθ2/sinθ3=β2
を満たすように構成されている、請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
前記第1の光束は、緑色のレーザー光および青色のレーザー光を含み、前記第2の光束は、赤色のレーザー光を含む、請求項1または2に記載の照明光学系。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系と、
前記照明光学系からの光束を空間的に変調して画像光を形成する表示手段と、
前記表示手段で形成された前記画像光を投写する投写レンズと、を有する、プロジェクター。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系と、
前記照明光学系からの光束を、赤色光束、青色光束、および緑色光束に分離する色分離手段と、
前記色分離手段により分離された前記赤色光束を空間的に変調して赤色画像光を形成する第1の表示素子と、
前記色分離手段により分離された前記緑色光束を空間的に変調して緑色画像光を形成する第2の表示素子と、
前記色分離手段により分離された前記青色光束を空間的に変調して青色画像光を形成する第3の表示素子と、
前記第1乃至第3の表示素子により形成された、前記赤色画像光、緑色画像光および青色画像光を投写する投写レンズと、を有する、プロジェクター。
【請求項6】
請求項またはに記載のプロジェクターと、
赤色レーザー光、緑色レーザー光および青色レーザー光をそれぞれ出力する光源装置と、
前記光源装置から出力された前記緑色レーザー光および青色レーザー光を前記プロジェクターに導くための第1の光ファイバーと、
前記光源装置から出力された前記赤色レーザー光を前記プロジェクターに導くための第2の光ファイバーと、を有する、プロジェクターシステム。
【請求項7】
第1の光ファイバーより第1の発散角で出射した第1の光束を集光する第1のレンズと、
第2の光ファイバーより前記第1の発散角とは異なる第2の発散角で出射した、前記第1の光束とは色が異なる第2の光束を集光する第2のレンズと、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸とが直交する位置に設けられ、前記第1のレンズからの前記第1の光束を透過させ、前記第2のレンズからの前記第2の光束を前記第1の光束が透過した方向に向けて反射する合成光学素子と、
柱状のレンズ部を備え、該レンズ部の両端面の一方が入射面、他方が出射面とされ、前記合成光学素子からの前記第1および第2の光束が前記入射面より入射し、該入射した第1および第2の光束が、前記レンズ部内を伝搬して前記出射面より出射されるロッドインテグレータと、を有する照明光学系の色むら改善方法であって、
前記第1のレンズにより集光した前記第1の光束の収束角と前記第2のレンズにより集光した前記第2の光束の収束角とが一致するように、前記第1および第2のレンズの倍率を設定し、
前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第1の光ファイバーの出射面が前記第1のレンズを介して共役関係になり、かつ、前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第2の光ファイバーの出射面が前記第2のレンズを介して共役関係になるように、前記第1および第2のレンズと前記ロッドインテグレータとを配置する、照明光学系の色むら改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターの照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの照明光学系として、ロッドインテグレータを用いて均一な照明光を得る照明光学系が知られている。
【0003】
特許文献1には、そのような照明光学系を備えたDLP(Digital Light Processing)プロジェクターが記載されている。
【0004】
上記のDLPのプロジェクターは、発散角が略同じ第1乃至第3のレーザーアレイ光源と、照明光学系と、内部全反射(TIR: Total Internal Reflection)プリズムと、DMD(Digital Micromirror Device)よりなる表示素子と、投写レンズとを有する。
【0005】
ここで、発散角とは、発散光束をその中心光線を含む平面に垂直な方向から見た場合の、最も外側の光線と中心光線とのなす角度(発散半角)の2倍の角度である。
【0006】
第1のレーザーアレイ光源は赤色のレーザー光を出射し、第2のレーザーアレイ光源は緑色のレーザー光を出射し、第3のレーザーアレイ光源は青色のレーザー光を出射する。
【0007】
照明光学系は、第1乃至第3の反射ミラー、第1および第2のダイクロイックミラー、凹レンズ、ロッドインテグレータ、およびリレー光学系を有する。
【0008】
ロッドインテグレータは、例えば、四角柱状のガラス体よりなる。ロッドインテグレータの両端面の一方が入射面であり、他方が出射面である。
【0009】
ロッドインテグレータでは、入射面より入射した光束は、ロッド内面で反射を繰り返しつつロッド内を伝搬し、その後、射出面より出射される。ロッド内の伝搬過程での多重反射により、入射光束の輝度の均一化が行われる。ロッドの射出面においては、反射回数に応じた複数の2次的な光源像がマトリクス状に形成される。
【0010】
ロッドインテグレータの入射面側から、凹レンズ、第1のダイクロイックミラー、第2のダイクロイックミラー、第1の反射ミラーがこの順番で配置されている。
【0011】
第1の反射ミラーは、第3のレーザーアレイ光源からの青色のレーザー光を第2のダイクロイックミラーに向けて反射する。第2の反射ミラーは、第2のレーザーアレイ光源からの緑色のレーザー光を第2のダイクロイックミラーに向けて反射する。
【0012】
第2のダイクロイックミラーは、青色の波長域の光を透過させ、緑色の波長域の光を反射する分光反射特性を有する。第1の反射ミラーからの青色のレーザー光は、第2のダイクロイックミラーを透過して第1のダイクロイックミラーに入射する。第2の反射ミラーからの緑色のレーザー光は、第2のダイクロイックミラーにて反射され、その反射光は、青色のレーザー光と同じ光路で第1のダイクロイックミラーに入射する。
【0013】
第3の反射ミラーは、第1のレーザーアレイ光源からの赤色のレーザー光を第1のダイクロイックミラーに向けて反射する。
【0014】
第2のダイクロイックミラーは、青色の波長域の光および緑色の波長域の光を透過させ、赤色の波長域の光を反射する分光反射特性を有する。第2のダイクロイックミラーからの青色および緑色のレーザー光は、第1のダイクロイックミラーを透過して凹レンズに入射する。第3の反射ミラーからの赤色のレーザー光は、第1のダイクロイックミラーにて反射され、その反射光は、青色および緑色のレーザー光と同じ光路で凹レンズに入射する。
【0015】
凹レンズは、第1のダイクロイックミラーからの赤色、緑色および青色のレーザー光を発散させるように作用する。凹レンズからの赤色、緑色および青色のレーザー光は、ロッドインテグラーの入射面よりロッド内に入射する。
【0016】
リレー光学系は、ロッドインテグレータの出射面側に配置されている。リレー光学系は、ロッドインテグレータの出射面に形成された光源像を表示素子の有効表示領域上に結像するように作用する。
【0017】
リレー光学系と表示素子の間には、TIRプリズムが設けられている。リレー光学系からの光束は、TIRプリズムを介して表示素子に照射される。表示素子は、光束を空間的に変調して画像光を形成する。表示素子で形成された画像光は、TIRプリズムを介して投写レンズに入射する。
【0018】
上記の照明光学系において、各レーザーアレイ光源からロッドインテグレータの入射面までの各色のレーザー光の光路長は同じであり、各レーザーアレイ光源の発散角も同じである。よって、各レーザーアレイ光源から出射した各色のレーザー光は、同じ発散角でロッドインテグレータに入射し、ロッド内を伝搬して、同じ発散角でロッドインテグレータより出射する。
【0019】
ロッドインテグレータより出射した各色のレーザー光の発散角が同じであるので、リレー光学系を介して表示素子上に照射される、各色のレーザー光の照射範囲も一致する。よって、リレー光学系の倍率等を適切に設定することで、各色のレーザー光の照射範囲を表示素子上の有効表示領域と一致させることができる。
【0020】
最近のプロジェクターには、レーザー光が外部光源装置から光ファイバーを介して照明光学系に供給されるものもある。
【0021】
外部光源装置は、赤色レーザー光源、緑色レーザー光源および青色レーザー光源を備える。緑色レーザー光および青色レーザー光は、第1の光ファイバーにより照明光学系に供給される。赤色レーザー光は、第2の光ファイバーにより照明光学系に供給される。
【0022】
第1の光ファイバーより出射される緑色レーザー光および青色レーザー光それぞれの発散角は略同じである。第2の光ファイバーより出射される赤色レーザー光の発散角は、緑色レーザー光や青色レーザー光の発散角と異なる。
【0023】
特許文献1に記載されたDLPプロジェクターにおいて、上記の外部光源装置を適用する場合は、照明光学系は、第1の光ファイバーから出射された緑色および青色のレーザー光が第2のダイクロイックミラーの一方の側の面に入射し、第2の光ファイバーから出射された赤色のレーザー光が第2のダイクロイックミラーの他方の側の面に入射するように構成される。
【0024】
赤色のレーザー光と緑色および青色のレーザー光とは、第2のダイクロイックミラーにより合成され、その後、凹レンズを介してロッドインテグレータに入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2008−256979号公報
【発明の開示】
【0026】
特許文献1に記載のものにおいては、上述の外部光源装置を適用した場合に、以下のような問題を生じる。
【0027】
一般に、ロッドインテグレータにおいては、入射角がロッド内で全反射が生じる最大入射角以下の範囲であれば、入射角が大きいほど、ロッド内における多重反射の回数が多くなり、その結果、輝度の均一化の効果が大きくなる。このように、ロッドインテグレータは、輝度の均一化の度合いが入射角に依存するという特性を有する。
【0028】
外部光源装置を適用した特許文献1に記載のものにおいては、ロッドインテグレータに入射するレーザー光のうち、赤色のレーザー光の発散角と緑色および青色のレーザー光の発散角とが異なる。このため、上記の特性により、ロッドインテグレータにおける輝度の均一化の度合いが、赤色のレーザー光と緑色および青色のレーザー光とで異なる。この輝度の均一化の度合いの差が画面上で色むらとして現れ、画質が劣化するという問題を生じる。
【0029】
また、発散角が異なる、赤色のレーザー光と緑色および青色のレーザー光とが、同じリレー光学系を介して表示素子上に照射されることになるが、これは、レーザー光により、照射範囲が異なることを意味する。
【0030】
発散角が小さな方のレーザー光を基準とし、その基準としたレーザー光の照射範囲が表示素子の有効表示領域と一致するようにリレー光学系を設計すると、発散角が大きな方のレーザー光の一部がリレー光学系の有効入射瞳から外れることになる。この有効入射瞳から外れた光束は、画像の表示に寄与しないため、光利用効率が低下し、画面の輝度が低下するという問題を生じる。
【0031】
一方、発散角が大きな方のレーザー光を基準とし、その基準としたレーザー光の照射範囲が表示素子の有効表示領域と一致するようにリレー光学系を設計すると、発散角が小さな方のレーザー光の照射範囲が有効表示領域より小さくなり、有効表示領域全体を照明することができなくなる。レーザー光による照明がなされない領域では、画像を表示することができないので、画質が劣化するという問題を生じる。
【0032】
本発明の目的は、色むらの発生、画面の輝度の低下や画質の低下を抑制できる、照明光学系、照明光学系の色むら改善方法、プロジェクターおよびプロジェクターシステムを提供することにある。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
第1の光ファイバーより第1の発散角で出射した第1の光束を集光する第1のレンズと、
第2の光ファイバーより前記第1の発散角とは異なる第2の発散角で出射した、前記第1の光束とは色が異なる第2の光束を集光する第2のレンズと、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸とが直交する位置に設けられ、前記第1のレンズからの前記第1の光束を透過させ、前記第2のレンズからの前記第2の光束を前記第1の光束が透過した方向に向けて反射する合成光学素子と、を有し、
前記第1および第2のレンズは、前記第1のレンズにより集光した前記第1の光束の収束角と前記第2のレンズにより集光した前記第2の光束の収束角とが一致するように構成されている、照明光学系が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、
上記の照明光学系と、
前記照明光学系からの光束を空間的に変調して画像光を形成する表示手段と、
前記表示手段で形成された前記画像光を投写する投写レンズと、を有する、プロジェクターが提供される。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、
上記の照明光学系と、
前記照明光学系からの光束を、赤色光束、青色光束、および緑色光束に分離する色分離手段と、
前記色分離手段により分離された前記赤色光束を空間的に変調して赤色画像光を形成する第1の表示素子と、
前記色分離手段により分離された前記緑色光束を空間的に変調して緑色画像光を形成する第2の表示素子と、
前記色分離手段により分離された前記青色光束を空間的に変調して青色画像光を形成する第3の表示素子と、
前記第1乃至第3の表示素子により形成された、前記赤色画像光、緑色画像光および青色画像光を投写する投写レンズと、を有する、プロジェクターが提供される。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、
上記のいずれかのプロジェクターと、
赤色レーザー光、緑色レーザー光および青色レーザー光をそれぞれ出力する光源装置と、
前記光源装置から出力された前記緑色レーザー光および青色レーザー光を前記プロジェクターに導くための第1の光ファイバーと、
前記光源装置から出力された前記赤色レーザー光を前記プロジェクターに導くための第2の光ファイバーと、を有する、プロジェクターシステムが提供される。
さらに、本発明の他の態様によれば、
第1の光ファイバーより第1の発散角で出射した第1の光束を集光する第1のレンズと、
第2の光ファイバーより前記第1の発散角とは異なる第2の発散角で出射した、前記第1の光束とは色が異なる第2の光束を集光する第2のレンズと、
前記第1のレンズの光軸と前記第2のレンズの光軸とが直交する位置に設けられ、前記第1のレンズからの前記第1の光束を透過させ、前記第2のレンズからの前記第2の光束を前記第1の光束が透過した方向に向けて反射する合成光学素子と、
柱状のレンズ部を備え、該レンズ部の両端面の一方が入射面、他方が出射面とされ、前記合成光学素子からの前記第1および第2の光束が前記入射面より入射し、該入射した第1および第2の光束が、前記レンズ部内を伝搬して前記出射面より出射されるロッドインテグレータと、を有する照明光学系の色むら改善方法であって、
前記第1のレンズにより集光した前記第1の光束の収束角と前記第2のレンズにより集光した前記第2の光束の収束角とが一致するように、前記第1および第2のレンズの倍率を設定し、
前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第1の光ファイバーの出射面が前記第1のレンズを介して共役関係になり、かつ、前記ロッドインテグレータの前記入射面と前記第2の光ファイバーの出射面が前記第2のレンズを介して共役関係になるように、前記第1および第2のレンズと前記ロッドインテグレータとを配置する、照明光学系の色むら改善方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態である照明光学系の構成を示す模式図である。
図2】本発明の別の実施形態であるロッドインテグレータを含む照明光学の構成を示す模式図である。
図3】本発明の照明光学系を備えたプロジェクターシステムの外観図である。
図4】本発明の照明光学系を備えたプロジェクターシステムの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0038】
1、2 レンズ
3 ダイクロイックミラー
10 照明光学系
101、102 光ファイバー
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態である照明光学系の構成を示す模式図である。
【0041】
図1を参照すると、照明光学系10は、プロジェクターに用いられるものであって、レンズ1、2およびダイクロイックミラー3を有する。
【0042】
レンズ1は、光ファイバー101から発散半角θ1で出射された第1の光束を集光する。レンズ2は、光ファイバー102から発散半角θ2(≠θ1)で出射された、第1の光束とは色が異なる第2の光束を集光する。
【0043】
ここで、発散半角は、光ファイバーの出射面から出射した発散光束をその中心光線(出射面に垂直な光線)を含む平面に垂直な方向から見た場合の、最も外側の光線と、中心光線とのなす角度である。光ファイバー101、102は同じ構造のものであり、それぞれのNA(Numerical Aperture)も同じである。ただし、光ファイバー101に入射する第1の光束の発散角または収束角は、光ファイバー102に入射する第2の光束の発散角または収束角と異なる。
【0044】
レンズ1の光軸はレンズ2の光軸と直交または略直交しており、ダイクロイックミラー3は、これら光軸の交点に設けられている。レンズ1からの第1の光束は、略45°の入射角でダイクロイックミラー3の一方の面に入射する。レンズ2からの第2の光束は、略45°の入射角でダイクロイックミラー3の他方の面に入射する。
【0045】
ダイクロイックミラー3は、レンズ1から入射した第1の光束とレンズ2から入射した第2の光束とを一方向に合成する合成光学素子である。具体的には、ダイクロイックミラー3は、レンズ1からの第1の光束を透過させ、レンズ2からの第2の光束を、第1の光束が透過した方向に向けて反射する。
【0046】
例えば、第1の光束が青色の光束および緑色の光束を含み、第2の光束が赤色の光束である場合、ダイクロイックミラー3は、赤色の光を反射し、緑色および青色の光を透過させるような分光反射特性を有する反射膜より構成される。このような分光反射特性を有する反射膜は、誘電体多層膜により形成することができる。
【0047】
レンズ1は、集光した第1の光束の収束半角がθ3になるように構成されている。レンズ2も、集光した第2の光束の収束半角がθ3になるように構成されている。ここで、収束半角は、集光した光束を、その中心光線を含む平面に垂直な方向から見た場合の、最も外側の光線と、中心光線とのなす角度である。
【0048】
具体的には、レンズ1、2は、以下の条件を満たすように構成されている。
【0049】
レンズ1の倍率をβ1とすると、レンズ1は、
sinθ1/sinθ3=β1
を満たすように設計されている。また、レンズ2の倍率をβ2とすると、レンズ2は、
sinθ2/sinθ3=β2
を満たすように設計されている。
【0050】
上記の照明光学系1によれば、レンズ1は、光ファイバー101より出射した発散半角θ1の第1の光束を集光し、レンズ2は、光ファイバー102より出射した発散半角θ2(≠θ1)の第2の光束を集光する。レンズ1により集光した第1の光束とレンズ2により集光した第2の光束とは、それぞれ収束半角θ3で一点に収束する。したがって、第1および第2の光束の収束点にロッドインテグレータを配置すれば、第1および第2の光束は、同じ収束角θ3でロッドインテグレータに入射する。この場合、第1および第2の光束のロッドインテグレータでの輝度の均一化の度合いはほぼ同じである。
【0051】
なお、レンズ1、2は、第1の光束の収束半角と第2の光束の収束半角が一致するように構成されるが、ここでいう一致とは、完全一致だけでなく、製造誤差等を許容する。例えば、製造誤差の範囲内または観察者が輝度の均一化の度合いの差による色むらを認識することがない範囲内であれば、両光束の収束角は一致すると解釈してもよい。
【0052】
図2に、ロッドインテグレータを含む照明光学を示す。
【0053】
図2を参照すると、ロッドインテグレータ4は、柱状のレンズ部よりなり、該レンズ部の両端面の一方が入射面、他方が出射面とされる。具体的には、ロッドインテグレータ4は、ガラス等の四角柱形状のレンズ部よりなる。
【0054】
ロッドインテグレータ4の中心軸は、レンズ1の光軸と一致している。レンズ1は、光ファイバー101の出射面の像をロッドインテグレータ4の入射面上に結像し、レンズ2は、光ファイバー102の出射面の像をロッドインテグレータ4の入射面上に結像する。すなわち、ロッドインテグレータ4の入射面と光ファイバー101、102の各出射面とは共役関係にある。
【0055】
図2に示した構成によれば、光ファイバー101からの発散半角θ1の第1の光束と、光ファイバー102からの発散半角θ2(≠θ1)の第2の光束は、それぞれ同じ収束半角θ3でロッドインテグレータ4に入射するので、ロッドインテグレータ4における輝度の均一化の度合いは、第1の光束と第2の光束とで略同じである。よって、輝度の均一化の度合いの差による色むらは生じない。
【0056】
また、ロッドインテグレータ4より出射した第1および第2の光束の発散半角は同じである。よって、例えば、リレーレンズ等を含むレンズ群により、ロッドインテグレータ4の出射面の像を表示素子の有効表示領域上に結像するように照明光学系を構成した場合、表示素子上における第1および第2の光束の照射範囲は略一致する。よって、レンズ群の倍率等を適切に設定すれば、第1および第2の光束の照射範囲を表示素子の有効表示領域に略一致させることができる。
【0057】
次に、本実施形態の照明光学系を備えたプロジェクターシステムについて説明する。
【0058】
図3は、本実施形態の照明光学系を備えたプロジェクターシステムの外観図、図4は、その構成を示す模式図である。
【0059】
図3および図4を参照すると、プロジェクターシステムは、プロジェクター本体20と、レーザー光源装置30と、レーザー光源装置30からのレーザー光をプロジェクター本体20に供給するための光ファイバー101、102とを有する。
【0060】
レーザー光源装置30は、レーザー光源31、32を有する。レーザー光源31、32は、半導体レーザー等よりなる。
【0061】
レーザー光源31は、緑色のレーザー光を出力する緑色レーザー光源部と、青色のレーザー光を出力する青色レーザー光源部とを有する。レーザー光源31より出射した緑色および青色のレーザー光は、光ファイバー101を介してプロジェクター本体20に供給される。光ファイバー101より出射したレーザー光の発散角は、緑色と青色とで略同じである。
【0062】
レーザー光源32は、赤色のレーザー光を出力する赤色レーザー光源部を有する。レーザー光源32より出射した赤色のレーザー光は、光ファイバー102を介してプロジェクター本体20に供給される。光ファイバー102より出射した赤色のレーザー光の発散角は、光ファイバー101より出射した緑色および青色のレーザー光の発散角と異なる。
【0063】
プロジェクター本体20は、レンズ1、2、ダイクロイックミラー3、ロッドインテグレータ4、レンズ群5、ミラー6、TIRプリズム7、フィリップスプリズム8、DMD9、および投写レンズ11を有する。
【0064】
レンズ1、2、ダイクロイックミラー3およびロッドインテグレータ4は、図1および図2に示したものと同じである。
【0065】
光ファイバー101より出射した緑色および青色のレーザー光は、レンズ1およびダイクロイックミラー3を介してロッドインテグレータ4に供給される。光ファイバー102より出射された赤色のレーザー光は、レンズ2およびダイクロイックミラー3を介してロッドインテグレータ4に供給される。
【0066】
ロッドインテグレータ4より出射した赤色、緑色および青色のレーザー光は、レンズ群5、ミラー6、TIRプリズム7、およびフィリップスプリズム8を介してDMD9に照射される。
【0067】
レンズ群5は、ロッドインテグレータ4の出射面に対向する位置に配置されている。レンズ1の光軸とレンズ群5の光軸とロッドインテグレータ4の中心軸は一致している。レンズ群5は、リレー光学系を含み、ロッドインテグレータ4の出射面の像をDMD9の表示面上に結像する。すなわち、ロッドインテグレータ4の出射面とDMD9の表示面とは共役関係にある。
【0068】
ミラー6は、レンズ群5より出射した赤色、緑色および青色のレーザー光をTIRプリズム7に向けて反射する。
【0069】
TIRプリズム7は、2個の三角プリズム7a、7bからなり、三角プリズム7aの斜面の一部が三角プリズム7bの斜面と貼り合わせられている。
【0070】
三角プリズム7aを側面から見た場合、三角プリズム7aは、斜面と隣接する2つの面を備え、ミラー6からの赤色、緑色および青色のレーザー光が一方の面からプリズム内に入射する。プリズム内に入射したレーザー光は、斜面のうち、三角プリズム7bの斜面と接する領域以外の領域で全反射され、その反射光が、他方の面より出射される。
【0071】
三角プリズム7aの他方の面から出射した赤色、緑色および青色のレーザー光は、フィリップスプリズム8に入射する。
【0072】
フィリップスプリズム8では、三角プリズム7aの他方の面より出射されたレーザー光は、赤色、緑色および青色の光束に分離され、それぞれ異なる面より出射される。
【0073】
DMD9は、緑色用の表示素子であり、フィリップスプリズム8の緑色光束の出射面に対向するように配置されている。なお、図4には示されていないが、赤色用および青色用の表示素子がそれぞれフィリップスプリズム8の赤色光束の出射面および青色光束の出射面に対向するように配置されている。ここで、赤色用および青色用の表示素子はDMDよりなる。
【0074】
緑色用のDMD9は、フィリップスプリズム8からの緑色光束を空間的に変調して緑色画像光を形成する。赤色用のDMDは、フィリップスプリズム8からの赤色光束を空間的に変調して赤色画像光を形成する。青色用のDMDは、フィリップスプリズム8からの青色光束を空間的に変調して青色画像光を形成する。
【0075】
赤色、緑色および青色の画像光は、フィリップスプリズム8を介してTIRプリズム7の三角プリズム7aの他方の面に入射する。ここで、フィリップスプリズム8は、赤色、緑色および青色の画像光を合成する色合成素子として機能する。
【0076】
三角プリズム7aでは、入射した赤色、緑色および青色の画像光は、三角プリズム7aの斜面のうちの、三角プリズム7bの斜面で覆われた領域から、三角プリズム7b内に入射する。
【0077】
三角プリズム7bを側面から見た場合、三角プリズム7bは、斜面と隣接する2つの面を備え、三角プリズム7aから入射した赤色、緑色および青色のレーザー光が一方の面より出射される。
【0078】
三角プリズム7bの一方の面より出射された画像光(赤色+緑色+青色)は、投射レンズ11により不図示の投写面上に投写される。
【0079】
上述したプロジェクターシステムにおいて、照明光学系は、レンズ1、2、ダイクロイックミラー3、ロッドインテグレータ4、およびレンズ群5からなる。この照明光学系においても、ロッドインテグレータ4における輝度の均一化の度合いは、赤色のレーザー光と緑色および青色のレーザー光とで略同じになるので、輝度の均一化の度合の差による色むらは生じない。
【0080】
また、ロッドインテグレータ4より出射した赤色、緑色および青色のレーザー光の発散角は略同じであるので、レンズ群5によってDMD上に照射される各色のレーザー光の照射範囲は略一致する。よって、レンズ群5の倍率等を適切に設定することで、各色のレーザー光のDMD上における照射範囲を有効表示領域と一致させることができる。これにより、画質低下を抑制することができる。
【0081】
なお、レーザー光源31は、複数の緑色レーザー光源と複数の青色レーザー光源とを有していてもよい。この場合は、光ファイバー101は、複数の緑色レーザー光源それぞれに対応する複数の光ファイバーと、複数の青色レーザー光源それぞれに対応する複数の光ファイバーとを含む。
【0082】
同様に、レーザー光源32も、複数の赤色レーザー光源を有していてもよい。この場合は、光ファイバー102は、複数の赤色レーザー光源それぞれに対応する複数の光ファイバーを含む。
【0083】
例えば、光ファイバー101は、6本の青色用光ファイバーと、6本の緑色用光ファイバーとを含み、光ファイバー102は、12本の赤色用光ファイバーを含んでいてもよい。
【0084】
上記の場合、光ファイバー101の入射面または出射面において、青色用および緑色用の光ファイバーは、横2列に配置されてもよい。同様に、光ファイバー102の入射面または出射面において、赤色用光ファイバーも横2列に配置されてもよい。
【0085】
緑色用光ファイバーおよび青色用光ファイバーのそれぞれから出射される光束の発散半角はθ1であり、赤色用光ファイバーより出射される光束の発散半角はθ2である。緑色用光ファイバーおよび青色用光ファイバーのそれぞれから出射した発半角θ1の光束は、レンズ1により収束半角θ3で集光され、赤色用光ファイバーより出射した発散半角θ2の光束は、レンズ2により収束半角θ3で集光される。
【0086】
光ファイバー101において、1列目が青色用光ファイバーの列とされ、2列目が緑色用光ファイバーの列とされてもよい。また、青色用光ファイバーと緑色用光ファイバーは、交互に、または、千鳥状に配置されてもよい。
【0087】
青色用光ファイバーと緑色用光ファイバーを千鳥状に配置することで、各青色用光ファイバーより出射した青色光束と緑色用光ファイバーより出射した緑色光束とを、発散半角θ1の1つ光束と見做すことができる。
【0088】
図3および図4に示したプロジェクターシステムは、赤色用DMD、緑色用DMDおよび青色用DMDの3つのDMDを備えた3板式の構造であるが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、1つのDMDにより赤色画像光、緑色画像光、青色画像光を時分割で形成する単板式の構造のものであってもよい。
【0089】
単板式の構造としては、例えば、図4に示した構成において、ロッドインテグレータ4の入射面側または出射面側に、入射光束を赤色光束、緑色光束および青色光束に時分割で分割するカラーホイールを配置する構造がある。この場合、フリッププリズム8は不要である。
【0090】
また、DMDに代えて、反射型の液晶表示デバイスを用いてもよい。
図1
図2
図3
図4