【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のモータ回転子支持体のうち、第1の本発明は、モータの回転子に配置される磁性体を支持する
円盤形状の支持体であって、
全体に加工組織を有する非磁性鋼から
なり、比透磁率が1.005未満で、室温における0.2%耐力が550MPa以上である単材が積層されており、
円盤形状の中心に軸穴が形成された軸受け部を有し、最外周縁に全周に亘る外縁リングを有し、外縁リングの内周側に、区画壁を介して等角度間隔で磁石収納部が設けられており、前記磁石収納部の内周側と前記軸受け部の外周側との間に、前記磁石収納部ごとに貫通穴を有するリング状リブを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明のモータ回転子支持体は、前記第1の本発明において、前記単材が
、比透磁率が1.005未満で、室温における0.2%耐力が600MPa以上であることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明のモータ回転子支持体は、前記第1または第2の本発明において、前記非磁性鋼が18Mn−18Cr系非磁性鋼であることを特徴とする。
【0010】
第4の本発明のモータ回転子支持体は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記磁性体として、希土類系磁石または非希土類系磁石を含むことを特徴とする。
【0011】
第5の本発明のモータ回転子支持体は、前記第4の本発明において、前記非希土類系磁石が、フェライト磁石であることを特徴とする。
【0012】
第6の本発明のモータ回転子支持体は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記磁性体として、圧粉鉄心を含むことを特徴とする。
【0013】
第7の本発明のモータ回転子支持体は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記単材を結束した積層構造を有することを特徴とする。
【0014】
第8の本発明のモータ回転子支持体は、前記第7の本発明のいずれかにおいて、前記結束が、カシメ、ねじ、溶接、接着、リング材による外周焼き嵌めのいずれかあるいはこれらを組み合わせたものであることを特徴とする。
【0015】
第9の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、 モータの回転子に配置される磁性体を支持する
円盤形状の支持体を製造する方法であって、
非磁性鋼を熱間加工して熱間加工材を得、該熱間加工材を機械加工して比透磁率が1.005未満で、室温における0.2%耐力が550MPa以上
で中心に軸穴が形成された軸受け部を有し、最外周縁に全周に亘る外縁リングを有し、外縁リングの内周側に、区画壁を介して等角度間隔で磁石収納部が設けられており、前記磁石収納部の内周側と前記軸受け部の外周側との間に、前記磁石収納部ごとに貫通穴を有するリング状リブを有する円盤形状の支持体単材を得て、該支持体単材を積層して結束することを特徴とする。
【0016】
第10の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第9の本発明において、前記熱間加工後に1000℃以上×5分以上の固溶化処理を行い、その後、600〜1000℃×0.5時間以上の時効処理を行うことを特徴とする。
【0017】
第11の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、モータの回転子に配置される磁性体を支持する
円盤形状の支持体を製造する方法であって、
非磁性鋼を熱間加工した後、冷間加工して冷間加工材を得、該冷間加工材を機械加工して比透磁率が1.005未満で、室温における0.2%耐力が600MPa以上で、
中心に軸穴が形成された軸受け部を有し、最外周縁に全周に亘る外縁リングを有し、外縁リングの内周側に、区画壁を介して等角度間隔で磁石収納部が設けられており、前記磁石収納部の内周側と前記軸受け部の外周側との間に、前記磁石収納部ごとに貫通穴を有するリング状リブを有する円盤形状の支持体単材を得て、該支持体単材を積層して結束することを特徴とする。
【0018】
第12の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第11の本発明において、前記冷間加工に、冷間圧延工程を含むことを特徴とする。
【0019】
第13の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第11または第12の本発明において、前記冷間加工の冷間加工率が5〜40%であることを特徴とする。
【0020】
第14の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第9〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記機械加工が、切り出し、冷間打ち抜き加工、切削加工、レーザー加工、放電加工、深絞り加工、溶接のいずれか1以上の工程を含むことを特徴とする。
【0021】
第15の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第9〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記非磁性鋼が、18Mn−18Cr系非磁性鋼であることを特徴とする。
【0022】
第16の本発明のモータ回転子支持体の製造方法は、前記第9〜第15の本発明のいずれかにおいて、前記結束を、カシメ、ねじ、溶接、接着、リング材による外周焼き嵌めのいずれかあるいはこれらを組み合わせた方法により行うことを特徴とする。
【0023】
本発明では、非磁性鋼が用いられ、モータ回転子支持体の単材として形成された後で、比透磁率が1.005未満で、室温(例えば5℃〜35℃)における0.2%耐力が550MPa以上の特性を有している。
比透磁率が1.005未満であることにより、回転子における磁気に影響を与えることなく磁性体を支持することができる。また、室温における0.2%耐力が550MPa以上であることにより、高回転においても磁性体を確実に支持することができ、軽量化も容易になる。単材の積層により、比較的厚肉のモータ回転子支持体においても、十分な加工率で製造した単材を使用して構成することができる。
また、本発明は非磁性鋼の種別が特定のものに限定されるものではないが、好適には18Mn−18Cr系の材料を用いることができる。以下に、18Mn−18Cr系非磁性鋼について各成分の作用と組成が定められる理由を説明する。
【0024】
Si:0.1〜2.0質量%
Siは脱酸材として使用するため0.1%必要である。しかし、Siはフェライト相形成元素であるため過剰に含有するとフェライト相が析出し、また冷間加工性も悪くなるため上限を2.0%とする。
【0025】
Mn:10〜25質量%
Mnはオーステナイト相形成元素であり、N溶解度を高くするのに10%以上が必要である。しかし、過剰に含有すると強度が低下するため上限を25%とする。同様の理由で下限を13%、上限を24%とするのが望ましく、さらに下限を16%、上限を21%とするのが一層望ましい。
【0026】
Cr:12〜25質量%
CrはN溶解度を確保するために12%以上必要である。しかし、Crはフェライト形成元素であるため過剰に含有するとフェライト相が析出するため上限を25%とする。なお、同様の理由で下限を14%、上限を23%とするのが望ましく、さらに下限を16%、上限を21%とするのが一層望ましい。
【0027】
N:0.3〜0.8質量%
Nは強度を確保するために0.3%以上が必要であるが、過剰に含有するとブローホール生成の原因となるため上限を0.8%とする。
【0028】
Al 0.02質量%以下
Alは脱酸材として添加することができるが、過剰に含有すると窒化物を形成し靭性を低下させるため、上限を0.02%として所望により含有するものとする。なお、脱酸材としての作用を十分に得るため0.005%以上含有するのが望ましい。
【0029】
Ni:5.0質量%以下
Niオーステナイト相形成元素であり、所望に含有する。しかし5.0%を超えると強度が低下することから上限を5.0%とする。また、積極的な含有では、1.0%以上含有するのが望ましく、1.5%以上含有するのが一層望ましい。なお、不可避不純物として1.0%未満するものであってもよい。
【0030】
Mo+1/2W:3.0質量%以下
WおよびMoは強度を向上させる成分であり、所望により含有する。ただし、過剰に入れると冷間加工性を悪化させるため、所望によりそれぞれ単独であるいは複合してMo+1/2Wで3%以下の範囲で含有することができる。なお、いずれかを含有する場合にはその作用を十分に得るため、Mo+1/2Wで1.0%以上とするのが望ましい。
【0031】
V、Nb:1.00質量%以下
VおよびNbは窒素と結合して窒化物を形成し、熱処理時の結晶粒粗大化を防止するので、所望により含有する。ただし、フェライト相形成元素であるため過剰に含有するとフェライト相が析出する。そのため、それぞれ1.00%以下の範囲で含有することができる。なお、含有する場合にはその作用を十分に得るためそれぞれ0.05%以上含有するのが望ましい。
【0032】
Co:3.00質量%以下
Coはオーステナイト相形成元素であり、所望により含有する。ただし、高価な成分であるため3.00%を上限に含有することができる。なお、含有する場合にはその作用を十分に得るためそれぞれ0.5%以上含有するのが望ましい。
【0033】
B:0.01質量%以下
Bは固溶強化するとともに微細な窒化物による強化も期待でき強度、靭性を改善するので、所望により含有する。ただし、過剰に含有すると粗大な窒化物となり靭性を低下させる要因となる。そのため、0.01%以下の範囲で含有することができる。なお、含有する場合にはその作用を十分に得るためそれぞれ0.003%以上含有するのが望ましい。
【0034】
不可避的不純物
C:0.3質量%以下
Cは、製造上不可避的に含有するが、耐食性を悪化させるため、その上限を0.3質量%とする。同様の理由により0.2%以下とするのが一層望ましい。
【0035】
P,S:0.03質量%以下
P,Sは延靭性や熱間加工性に影響を及ぼす。そのため、P、Sはそれぞれ0.03%以下とすることが望ましい。
【0036】
製造工程
本発明のモータ回転子支持体は、製造工程が格別なものに限定されるものではなく、熱間加工材、冷間加工材に機械加工を経て単材を製造し、これを積層して結束することでモータ回転子支持体を構成することができる。
【0037】
素材は常法の溶解、凝固過程を経て得ることができる。具体的には、取鍋精錬法、下注ぎ鋳込み法、上注ぎ鋳込み法、真空鋳造法、エレクトロスラグ再溶解法などの二次精錬法が例示される。また、連続鋳造法により直接ビレット材を製造してもよい。
【0038】
熱間加工として、熱間圧延、熱間型打ち鍛造などの熱間鍛造を代表例として挙げることができ、これらは常法により行うことができる。その熱間加工温度としては800〜1200℃が例示される。熱間加工により単材形状を取得する方法として、ビレット材もしくは連続鋳造により製造された鋼片を熱間型打ち加工する方法がある。熱間型打ち加工は特に限定されないが、熱間プレスにより単材形状に近い形に1回、または複数回の型打ちで加工することができる。また、型打ちする金型も1種類、または数種類の金型を使用してもよい。また、熱間型打ちの型打ち温度は前述の熱間加工温度と同等である。
支持体用の単材を取得する前の熱間加工材または冷間加工する前の熱間加工材には固溶化処理を行ってもよい。固溶化処理条件は特に限定されないが、1000℃以上、保持時間としては5分以上、冷却方法は水冷、油冷、ファン冷却を含む空冷が例示される。
また、固溶化処理後、時効処理を施すことで、回転支持体の一層の高強度化を図ることができる。時効処理の条件としては600〜1000℃×0.5時間以上とすることができる。
熱間加工材は、以降は冷間での強加工を行うことなく製品形状を得ることができる。
【0039】
熱間加工材はさらに冷間加工を行うことができる。冷間加工としては、冷間圧延、冷間鍛造などを挙げることができ、常法により行うことができる。冷間加工による加工強化で、一層の高強度化を図ることができる。
冷間加工は、例えば加工率5〜40%により行うことができる。加工率が低いと、加工強化が十分に得られず、加工率が高いと延靭性を十分に得ることができない。
また、冷間圧延では、最終板厚は0.3〜4mmが例示される。板厚0.3〜4mmとすることにより、そのまま単材用の素形材としての板厚を得ることができる。なお、ここで言う冷間とは、再結晶温度を超えない温度範囲での加工をいい、例えば450℃以下の範囲で所望により加熱してもよい。なおテンパーカラーの付かない250℃以下が好ましい。
【0040】
機械加工は、本発明としては特定の内容に限定されるものではなく、素形材の作製から仕上げ加工まで含まれる。例えば、切り出し、冷間打ち抜き加工、切削加工、レーザー加工、放電加工、深絞り加工、溶接の工程を挙げることができる。
【0041】
上記により製造される単材は、積層して結束される。モータ回転子支持体は、全体が単材の積層により構成されているものであってもよく、一部に積層構造を有していないものであってもよい。
結束は適宜の方法を採用することができ、全体としての比透磁率や強度に悪影響を及ぼさない方法を採用するのが望ましい。結束方法としては、例えば、カシメ、ねじ、溶接、接着、リング材による外周焼き嵌めなどを採用することができる。結束用の部材を用いる場合、比透磁率や強度が単材の規定値を満たすものが望ましい。
【0042】
また、最終形状を得るために、積層した部材を組み立て溶接するようにしてもよい。溶接組み立ての溶接方法は特に限定されないが、入熱が少なくシールド性が高いTIG溶接が好ましい。溶接後、所望により300〜600℃の応力除去焼鈍を行ってもよい。また支持体形状材には所望により仕上げ加工を行ってよい。欠陥が残留した場合、溶接補修にて補修してもよい。
【0043】
上記の方法により、量産化が可能でコスト的にも廉価に製造できるモータ用回転子、特にアキシャルギャップモータの回転子に適した支持体を製造することが可能となる。