【実施例】
【0081】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
<セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定法>
(1) セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.8質量%濃度の純水分散体を調製した。
(2) その水分散体と、0.2MでpH4のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を1質量%(全量300g、イオン濃度0.06mol/L,pH4)に調製した後、得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(3) この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、貯蔵弾性率(G’)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値を用いている。
<セルロース複合体の体積平均粒子径>
(1) セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。
(2) 得られた水分散体を、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)で粒度分布を測定した。ここで得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径を体積平均粒子径とした。
<セルロース複合体のコロイド状セルロース成分含有率>
(1) セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。
(2) 次に、遠心分離した。(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間、遠沈管には全量50gを仕込んだ。)
(3) 遠心後の上澄みは、ガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を以下の式から求めた。
計算式:(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
<分散安定性:分散セルロース複合体水分散体の外観観察>
上記の貯蔵弾性率の測定法(2)で得られた水分散体について、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)沈降管上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)沈降管底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)沈降管全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
<セルロース複合体水分散体の粘度>
上記の貯蔵弾性率の測定法(2)で得られたに水分散体ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm。セットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用したロータは以下の通りである。すなわち、1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜50、○(良):51〜75、△(可):76〜100、×(不可):101〜[mPa・s]
<セルロースの粒子形状1:セルロース複合体A〜Mが該当>
セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1質量%に純水で希釈し、スポイトを使用し、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて、余剰の水分を吹き飛ばし、風乾し、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(装置Digital Instruments社製 Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像を基に、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)のを求め、その比(L/D)がセルロース粒子の形状であり、100〜150個の粒子の平均値として算出した。
<セルロースの粒子形状2:セルロース複合体N、Oが該当>
セルロース複合体を、0.25質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.01〜0.05質量%に純水で希釈し、スポイトを使用し、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて、余剰の水分を吹き飛ばし、風乾し、サンプルを調製し、白金パラジウムを厚み3nmで蒸着した。走査型電子顕微鏡(装置 日本電子製 JSM−5510LV型)で計測された画像を基に、長径(L)と短径(D)を求めその比(L/D)がセルロースの粒子形状であり、100〜150個の粒子の平均値として算出した。
<セルロース複合体の構造:セルロースからの親水性ガムの広がりの観察>
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製した。
(2)上記水分散体と、0.2MでpH3.5のMcllvaine緩衝液(0.2Mのリン酸水素二ナトリウムと、0.1Mのクエン酸の水溶液)とを混合して、セルロース複合体の濃度を0.5質量%(イオン濃度0.06mol/l、pH4.0)に調製した後、純水でセルロース複合体の濃度を0.1質量%に希釈した。
(3)(1)及び(2)で得られた水分散体を、3日間以上、室温で静置した。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cm×1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察した。
<懸濁安定性:アルコール性懸濁飲料の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)沈降管上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)沈降管底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)沈降管全体において、不均一な部分の量で評価した。
(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
(再分散性)沈降管を上下にゆっくり回転させて(目安として、約5〜6秒かけて1回転させ、元にもどす。これを再分散回数の1回と定義する。)、底に沈降した水不溶性成分がなくなるまで沈降管を回転させ、その回数をカウントする。再分散回数が小さいほど、分散性・懸濁安定性が高いことを意味する。
<飲料の粘度 ※飲料以外の食品では、この評価基準は該当しない。>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm。セットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するロータは以下の通り。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜10、○(良):10〜20、△(可):20〜50、×(不可):50〜 (mPa・s)
以下では、セルロースをMCC、サイリウムシードガムをPSG、カルボキシメチルセルロースナトリウムをCMC−Na、ジェランガムをGLG、アルギン酸ナトリウムをARG−Na、LMペクチンをLMPと略して記載する。
(実施例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状の結晶セルロース(MCC)を作製した(平均重合度は220であった)。
【0082】
次に、ウエットケーキ状のMCC、PSG((株)MRCポリサッカライド製、PG020、1質量%溶解液の粘度40mPa・s)、CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)にMCC/PSG/CMC−Naの質量比が90/5/5となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
【0083】
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.6kWh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。これを、3〜5mm径の粒状にして、ウェット状態で、100gを、通風乾燥機(タバイエスペック製パーフェクトオーブン)にて100℃で、1時間乾燥した。その乾燥物を、超遠心粉砕機(RETSCHE社製 ZN100型)により、ローター回転数18000rpmにて、目開きφ1.0mmのスクリーンを用い粉砕した後、さらにφ0.25mmのスクリーンを用いて粉砕し、セルロース複合体Aを得た。
【0084】
得られたセルロース複合化物Aの貯蔵弾性率(G’)は0.48Paであった。また、セルロース複合体Aの体積平均粒子径は6.2μmであり、コロイド状セルロース成分は55質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Aの分散安定性(分離、沈降、凝集、粘度)について評価し、結果を表−1に示す。
また、AFMの観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、イオン交換水(中性)で調製した水分散体(
図3)及びpH4に調製した水分散体(
図4)のいずれにおいても、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の親水性ガムが観察された。
(実施例2)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/3/7、固形分40質量%の条件でセルロース水分散体を調製した。このセルロース水分散体を、実施例1と同様の装置で混練し、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.1kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Bを得た。
【0085】
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は6.8μm、コロイド状セルロース成分は45質量%、粒子L/Dは2.0であった。セルロース複合体Bを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例3)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/GLG(CPケルコ製、ケルコゲル、Lot070628、1質量%溶解液の粘度1222mPa・s)との質量比が90/9/1となるよう秤量し、固形分が49.5質量%となるように加水した後、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Cを得た。
【0086】
得られたセルロース複合化物Cの貯蔵弾性率(G’)は0.18Pa、体積平均粒子径は7.5μm、コロイド状セルロース成分は53質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Cを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例4)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が50/25/25となるよう秤量し、固形分49質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Dを得た。
【0087】
貯蔵弾性率(G’)は0.2Pa、体積平均粒子径は5.8μm、コロイド状セルロース成分は36質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Dを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例5)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/ARG−Na((株)キミカ製、キミカアルギン SKAT−UVL、1%溶解液の粘度4.1mPa・s)との質量比が95/2.5/2.5、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Eを得た。
【0088】
貯蔵弾性率(G’)は0.5Pa、体積平均粒子径は7.8μm、コロイド状セルロース成分は43質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Eを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例6)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSGとの質量比が90/10、となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Fを得た。
【0089】
貯蔵弾性率(G’)は0.15Paで、体積平均粒子径は7.4μm、コロイド状セルロース成分は56質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Fを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例7)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/LMP(ユニテックフーズ(株)製、LNSN325)との質量比が90/5/5なるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.5kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Gを得た。
【0090】
貯蔵弾性率(G’)は0.17Paで、体積平均粒子径は7.2μm、コロイド状セルロース成分は54質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Gを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例8)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、親水性ガムとしてPSGの代わりにジェランガム(GLG)を使用し、セルロース複合体を調製した。調製方法は以下の通りである。MCC/GLG(CPケルコ社製 脱アシル型ジェランガム、商品名ケルコゲル)/CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)との質量比が90/5/5なるよう秤量し、固形分50質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Nを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Hを得た。
【0091】
貯蔵弾性率(G’)は0.32Paで、体積平均粒子径は6.5μm、コロイド状セルロース成分は45質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Hを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例9)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、親水性ガムとしてPSGの代わりにキサンタンガムを使用し、セルロース複合体を調製した。試作方法は以下の通りである。MCC/キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製 ビストップNSD−X)/CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)との質量比が90/2/8なるよう秤量し、固形分48質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Oを得た。混練エネルギーは、0.6kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Iを得た。
【0092】
貯蔵弾性率(G’)は0.35Paで、体積平均粒子径は6.3μm、コロイド状セルロース成分は49質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Iを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(比較例1)
市販DPパルプを裁断後、実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が80/0/20となるよう秤量し、固形分45質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Jを得た。混練エネルギーは0.5kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Jを得た。
【0093】
貯蔵弾性率(G’)は0.02Pa、体積平均粒子径は8.8μm、コロイド状セルロース成分は35質量%、粒子L/Dは1.6であった。セルロース複合体Jを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、比較例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し(平均重合度は220)、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/5/5となるよう秤量し、固形分28質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体Kを得た。混練エネルギーは0.04kWh/kgであり、混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Kを得た。
【0094】
貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は13.5μm、コロイド状セルロース成分は28質量%、粒子L/Dは2.4であった。セルロース複合体Kを用いて比較例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(比較例3)
市販DPパルプを裁断後、10質量%塩酸中で105℃、20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10質量%のセルロース水分散体を調製した(平均重合度は200であった)。この加水分解セルロースの平均粒径は17μmであった。このセルロース水分散体を媒体攪拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、攪拌翼回転数1800rpm、セルロース水分散体の供給量0.4L/minの条件にて2回通過で粉砕処理を行い、微細セルロースのペースト状物を得た。
【0095】
ペースト状微細セルロース/PSG/CMC−Na(置換度0.90、粘度7mPa・s)との質量比が80/0/20、となるよう秤量し、総固形分濃度が11質量%となるよう純水で調製し、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、MARKII)を用いて8,000rpmで20分間分散してペースト状水分散体を調製した(アペックスミルと、TKホモジナイザーの消費電力と処理量から混練エネルギーを算出したところ、0.03kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった)。
【0096】
この水分散体を、ドラムドライヤー(楠木機械製作所(株)製、KDD−1型)で、水蒸気圧力2Kg/cm2、回転数0.6rpmで乾燥し、スクレーパーで掻き取り出し、フラッシュミル(不二パウダル(株)製)で粗砕し、薄片状、鱗片状のセルロース複合体Lを得た。混練エネルギーは0.03kWh/kgであり、セルロース複合体Lの貯蔵弾性率(G’)は0.01Pa、体積平均粒子径は3.4μm、コロイド状セルロース成分は40質量%、粒子L/Dは2.4であった。セルロース複合体Lを用いて比較例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(比較例4)
市販のDPパルプを裁断後、10質量%の塩酸中で105℃、20分間、加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄して水分60質量%のウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は200)を得た。固形分45質量%となるように加水し、これを実施例1と同様の条件で、プラネタリーミキサーにて2時間処理を行った。この摩砕処理物に、水を加え、固形分を7質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた。その後に、2500Gの遠心力で、10分間遠心分離し、上層部として、固形分4質量%のMCC水分散体を得た。
【0097】
次に、MCC水分散体に、PSGとCMC−Naを、実施例1の組成になるように仕込み、プロペラ式攪拌機を用いて、均一混合し、水分散体を調製した(この際の固形分は4〜5質量%)。この水分散体を、ドラムドライヤー((株)楠木機械製作所製KDD−1型)で、ドラム表面をシリコーン離型剤で処理した後、水蒸気圧力0.12MPa、回転数1.0rpmで乾燥してフィルム状のセルロース複合体Mを得た。
【0098】
混練エネルギーは、総量として0.08kWh/kgであった(プラネタリーミキサーが0.08kWh/kgであり、その他は総量としても0.005kWh/kg未満であった)。親水性ガムとの共存下での、混練温度(プロペラ攪拌)は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0099】
体積平均粒子径は3.5μm、コロイド状セルロース成分は72質量%粒子L/Dは1.6であった(体積平均粒子径の測定で得られた粒度分布における10μm以上の粒子の割合は2.5%であった)。実施例1と同様の操作で、貯蔵弾性率を測定した結果、0.01Paであった。
【0100】
比較例4は、セルロースにかけた混練エネルギーとしては、本発明の好ましい範囲に入るものであるが、混練エネルギーの大部分を占めるプラネタリーミキサーの処理においてPSG、CMC−Naが存在しなかったので、MCCとPSG、CMC−Naとの複合化は当然進まず、貯蔵弾性率が本発明の範囲を外れたと考えられる。
(比較例5)
市販木材パルプ(平均重合度=1720、α−セルロース含有量=78質量%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が80質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。セルロース濃度が1.5質量%になるように、カッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。この水分散体を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを110→80μmと変えて処理した。ついで得られた水分散体をそのまま高圧ホモジナイザー(処理圧力:55MPa)で18パスし、セルローススラリーを得た。走査型電子顕微鏡で観察したところ、長径/短径比が30〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0101】
上記で得られた微細な繊維状セルロースのスラリーに、セルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(水溶性ガム):デキストリン(親水性物質)=70:18:12(質量部)となるように、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)とデキストリン(DE:約23)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製、「T.K.AUTO HOMO MIXER」)で、8000rpmで30分間撹拌・混合し、セルロース混合液を得た。次いで、この混合液をアプリケータにより厚さ2mmでアルミニウム板状にキャストし、熱風乾燥機を使用し、120℃で45分間乾燥してフィルムを得た。これをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き1mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、セルロース乾燥組成物を得た。
【0102】
次に、セルロース乾燥組成物:サイリウムシードガム(実施例1と同じもの。親水性ガム)を9:1の質量比で含有する安定剤を調製する。固形分が1質量%の水分散体となるように安定剤と水を量り取り、「T.K.ホモミキサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、8000rpmで10分間分散し、セルロース組成物N(混ぜ合わされただけで、複合体ではない)を得た。混練エネルギー(T.K.ホモによる攪拌エネルギー)は、総量として0.005kWh/kg未満であった。親水性ガムとの共存下における混練(T.K.ホモによる攪拌)温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。
【0103】
体積平均粒子径は37.9μm、コロイド状セルロース成分は75質量%であった。実施例1と同様の操作で、貯蔵弾性率を測定した結果、22Paであった。セルロース組成物Nを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例10)
実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し、親水性ガムとしてPSGを、水溶性ガムとしてCMC−Naを使用し、セルロース複合体を調製した。試作方法は以下の通りである。MCC/PSG(シキボウ株式会社製 サイリウムシードハスク フードメイド 1%溶解液の粘度は198mPa・s)/CMC−Na(第一工業製薬(株)、F−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)との質量比が90/5/5となるよう秤量し、固形分37質量%となるように加水し、プラネタリーミキサーで混練して、セルロース複合体を得た。混練エネルギーは、0.05kWh/kgであった(プラネタリーミキサーの運転条件は、実施例1と同じであり、運転時間により、混練エネルギーを調節した。)。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Oを得た。
【0104】
貯蔵弾性率(G’)は0.06Paで、体積平均粒子径は8.2μm、コロイド状セルロース成分は38質量%、粒子L/Dは2.2であった。セルロース複合体Oを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
(実施例11)
実施例1と同様にしてウェットケーキ状のセルロースを作成し、MCC/PSG/CMC−Naとの質量比が90/5/5、固形分40質量%の条件でセルロース水分散体を調製した。このセルロース水分散体を、実施例1と同様の装置で混練し、混練容器中のジャケットに温水(50℃)を流すことで、混練温度を制御し、セルロース複合体を得た。混練時間は実施例1より延長され、トータルの混練エネルギーは、0.50kWh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜80℃、到達温度は70〜80℃であった。また、この混練物は、実施例1と同様に、乾燥、粉砕され、セルロース複合体Pを得た。
【0105】
貯蔵弾性率(G’)は0.13Pa、体積平均粒子径は6.3μm、コロイド状セルロース成分は55質量%、粒子L/Dは2.0であった。セルロース複合体Pを用いて実施例1と同様にして、分散安定性を評価した。
[エタノール水中でのセルロース複合体の分散安定性]
実施例1〜11、及び比較例1〜5により得られたセルロース複合体A〜Pを用いて、以下の方法で、エタノール水中での分散安定性を検証した。
【0106】
まず、セルロース複合体実施例1〜11を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、セルロース複合体の分散液を得た。その分散液50mLに、種々のエタノール濃度の水溶液50mLを加え、100mL容のガラス製沈降管に仕込んだ。最終的に、エタノール濃度は10質量%と、20質量%の二水準を調製した。その後、常温で、2週間静置し、1週ごとに分散安定性を評価した。
【0107】
エタノール濃度10質量%では、いずれの実施例も、2週間後の保存において、分離、凝集、沈降、粘度に異常はなかった(いずれも○〜◎)。エタノール濃度が20質量%になると、1週間の保存で、実施例6、10、11のセルロース複合体F、O、Pが、沈降を生じた(沈降=△、それ以外の項目は○)。上記以外の実施例1〜5、7〜9は、分離、凝集、沈降粘度に問題はなかった(いずれも○〜◎)。
[乳酸菌入りアルコール性懸濁飲料(マッコリ)]
実施例1〜11、及び比較例1〜5により得られたセルロース複合体A〜P、セルロース組成物Nを用いて、以下の方法で、乳酸菌入りアルコール性懸濁飲料を調製し、懸濁安定性を検証した。
【0108】
まず、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、セルロース複合体の分散液を得た。
【0109】
この分散液50質量部に、よく振とうし内容物を均一に分散させた市販のマッコリ(真露ジャパン(株)黒豆マッコリ、750mLPETボトル入り、アルコール分6%、pH4.4)50質量部を加え、高剪断ホモジナイザー(特殊機化(株)TKホモジナイザー)により、8000rpmで10分間攪拌し、100mLのガラス製沈降管に仕込んだ。
【0110】
その後、冷蔵庫で1週間保存し、懸濁状態を評価した。結果を、表1及び表2に示した。
【0111】
因みに、セルロース複合体を添加せず、マッコリ50質量部に、イオン交換水50質量部を加えて調整したものは、同様に評価すると、分離:×、凝集:×、沈降:×、粘度:◎であり、再分散回数は20回以上であった。
[ウコン入りアルコール性懸濁飲料]
実施例1、及び比較例1〜5により得られたセルロース複合体A〜P、セルロース組成物Nを用いて、以下の方法で、ウコン入りアルコール性懸濁飲料を調製し、懸濁安定性を検証した。
【0112】
まず、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、セルロース複合体の分散液を得た。
次に、ウコン(オリヒロ製 商品名秋ウコン粉末100%)を0.06質量%になるように、この分散液に添加し、プロペラ400rpmにて、常温で、20分間攪拌する。次いで、この分散液を高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー)により、一次圧15MPaに、二次圧として5MPaを加える条件で、1パス処理した。
【0113】
この水系分散液50質量部に、エタノール濃度20質量%の水溶液を50質量部を加え、高剪断ホモジナイザー(特殊機化(株)TKホモジナイザー)により、8000rpmで10分間攪拌し、100mLのガラス製沈降管に仕込んだ。
【0114】
その後、冷蔵庫で1週間保存し、懸濁状態を評価した。結果を、表1及び表2に示した。
【0115】
因みに、セルロース複合体を添加せず、クルクミン水溶液に、エタノール水溶液を加えて調整したものは、同様に評価すると、分離:×、凝集:×、沈降:×、粘度:◎であり、再分散回数は20回以上であった。
〔粘弾性測定の評価〕
セルロース複合体A(実施例1)と、セルロース複合体L(比較例3)の粘弾性測定の結果を
図1、2に示す。
【0116】
図1から、セルロース複合体Aは、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が高いことが分かる(純水:0.02Pa→pH4:0.58Pa)。また、
図2から、セルロース複合体L(特許文献3の実施例に準拠した製法で得られたセルロース複合体)は、純水分散体と比較して、酸性の水分散体における歪み20%付近の貯蔵弾性率が低いことが分かる(純水:0.24Pa→pH4:0.01Pa)。
【0117】
通常のエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性での貯蔵弾性率は純水中に比べて低下し、懸濁安定性が低くなる。それに対して、高いエネルギーで混練したセルロース複合体では、酸性又は高塩濃度での貯蔵弾性率が上昇し、懸濁安定性が向上することがわかる。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】