特許第5954912号(P5954912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5954912樹脂封止モジュールの製造方法および樹脂封止モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5954912
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】樹脂封止モジュールの製造方法および樹脂封止モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20160707BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20160707BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160707BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160707BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20160707BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   H01L23/28 E
   H01L23/30 R
   H01L25/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514690(P2015-514690)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2014077528
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅昭
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−115265(JP,A)
【文献】 特開2013−207172(JP,A)
【文献】 特開2012−186371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28、23/29、23/31
H01L 25/04、25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と前記基板の実装面に実装された電子部品とを有する電子部品付き基板が樹脂封止された樹脂封止モジュールの製造方法であって、
前記実装面の一部である第一領域に電子部品を実装して前記電子部品付き基板を得る、実装工程と、
前記電子部品付き基板をモジュールケース内に格納する、格納工程と、
前記モジュールケース内に未硬化の液状硬化性樹脂を注入し、前記電子部品付き基板を前記液状硬化性樹脂に浸漬する、注入工程と、
主板部と前記主板部の第一主面から突出して前記第一主面の第一所定領域を囲む第一隔壁とを有するモールド部材を、前記第一隔壁の内側空間が、前記実装面のうち前記第一領域と異なる第二領域に対向するように位置決めする、位置決め工程と、
前記モジュールケース内の前記液状硬化性樹脂を硬化させる、硬化工程と、
前記モールド部材を前記硬化した樹脂から取り外す、取り外し工程と、を有し、
前記位置決め工程において、前記内側空間に気体層を保持しつつ前記第一隔壁の少なくとも突出端部を前記液状硬化性樹脂に浸漬することによって、前記気体層により前記液状硬化性樹脂の上面の一部領域を押し下げ、この領域を他の領域より低く位置させる樹脂封止モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記モールド部材は、前記第一主面から突出した第二隔壁を有し、
前記第二隔壁は、前記第一主面のうち前記第一所定領域と異なる第二所定領域を囲むように形成され、
前記主板部には、前記第二隔壁の内側に、前記主板部を貫通する通気口が形成され、
前記位置決め工程において、前記第二隔壁の内側空間が、前記実装面のうち前記第一領域および前記第二領域と異なる第三領域に対向するように前記モールド部材を位置決めする請求項1に記載の樹脂封止モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記位置決め工程において、前記通気口を通して前記第二隔壁の内側空間に対して気体を供給または排出することによって、前記第二隔壁内の前記液状硬化性樹脂の液面の高さ位置を調整する請求項2に記載の樹脂封止モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第一隔壁の突出端部の端面は、前記主板部の前記第一主面に対して傾斜する傾斜面を有する請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の樹脂封止モジュールの製造方法。
【請求項5】
電子部品付き基板と、モジュールケースと、前記モジュールケース内に充填されて前記電子部品付き基板を埋設する封止樹脂と、を備え、
前記封止樹脂の表面には、凹部が形成され、
前記凹部の表面には、環状の成形凸部が形成され、
前記凹部の表面のうち前記成形凸部の頂点より内側の領域は、前記凹部の表面のうち前記成形凸部の頂点より外側の領域に比べて表面粗さが小さい樹脂封止モジュール。
【請求項6】
基板と前記基板の実装面の一部である第一領域に実装された電子部品とを有する電子部品付き基板が、液状硬化性樹脂に浸漬した状態でモジュールケース内に格納されて前記液状硬化性樹脂が硬化することにより樹脂封止された樹脂封止モジュールの製造に用いられるモールド部材であって、
主板部と、前記主板部の第一主面から突出して前記第一主面の第一所定領域を囲む第一隔壁とを有し、
前記第一隔壁の内側空間に気体層を保持しつつ前記第一隔壁の少なくとも突出端部を前記モジュールケース内の未硬化の前記液状硬化性樹脂に浸漬することによって、前記気体層により前記液状硬化性樹脂の上面の一部領域が押し下げられるとともに、前記第一隔壁の内側空間が、前記電子部品付き基板の実装面のうち前記第一領域と異なる第二領域に対向するように位置決めされるモールド部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止モジュールの製造方法および樹脂封止モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
実装面に電子部品を実装した基板(電子部品付き基板)が樹脂封止された樹脂封止モジュールは、例えば次のようにして作製される。
電子部品付き基板を液状硬化性樹脂とともにモジュールケース内に格納し、前記樹脂に浸漬した状態で、前記樹脂表面にモールド部材を押し当てることにより前記樹脂表面を成形する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−115265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モールド部材により液状硬化性樹脂を成形する際には、前記樹脂に含まれる気泡がモールド部材の表面に達した状態で前記樹脂が硬化することにより前記樹脂表面に凹状欠陥が形成されるのを防ぐ必要がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、前記樹脂表面に凹状欠陥が形成されるのを確実に防ぐことができる樹脂封止モジュールの製造方法および樹脂封止モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明は、基板と前記基板の実装面に実装された電子部品とを有する電子部品付き基板が樹脂封止された樹脂封止モジュールの製造方法であって、前記実装面の一部である第一領域に電子部品を実装して前記電子部品付き基板を得る、実装工程と、前記電子部品付き基板をモジュールケース内に格納する、格納工程と、前記モジュールケース内に未硬化の液状硬化性樹脂を注入し、前記電子部品付き基板を前記液状硬化性樹脂に浸漬する、注入工程と、主板部と前記主板部の第一主面から突出して前記第一主面の第一所定領域を囲む第一隔壁とを有するモールド部材を、前記第一隔壁の内側空間が、前記実装面のうち前記第一領域と異なる第二領域に対向するように位置決めする、位置決め工程と、前記モジュールケース内の前記液状硬化性樹脂を硬化させる、硬化工程と、前記モールド部材を前記硬化した樹脂から取り外す、取り外し工程と、を有し、前記位置決め工程において、前記内側空間に気体層を保持しつつ前記第一隔壁の少なくとも突出端部を前記液状硬化性樹脂に浸漬することによって、前記気体層により前記液状硬化性樹脂の上面の一部領域を押し下げ、この領域を他の領域より低く位置させる樹脂封止モジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂封止モジュールの製造方法で用いられるモールド部材は、主板部の第一所定領域を囲む第一隔壁を有する。
このため、第一隔壁の内側空間に気体層を保持させ、この気体層によって液状硬化性樹脂の一部領域を押し下げることによって前記樹脂表面を成形することができる。
気体層により押し下げられる領域の前記樹脂はモールド部材に当接しないため、従来と比較して前記樹脂の表面のうちモールド部材に当接しない領域を拡大できる。そして、モールド部材に当接しない領域では気泡の残留が起こらないため、凹状欠陥が前記樹脂表面に形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施形態に係る樹脂封止モジュールの断面図であり、(a)は全体図であり、(b)は拡大図である。
図2図1の樹脂封止モジュールの平面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法を説明する図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法に用いられるモールド部材の、下方から見た平面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る樹脂封止モジュールの断面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法を説明する図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る樹脂封止モジュールの断面図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法を説明する図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る樹脂封止モジュールの断面図である。
図10】本発明の第五実施形態に係る樹脂封止モジュールおよびその製造方法を説明する図であり、(a)は全体図であり、(b)は拡大図である。
図11】本発明の第五実施形態に係る樹脂封止モジュールの一部を示す断面図である。
図12】本発明の第五実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第一実施形態〕(樹脂封止モジュール)
以下、本発明の樹脂封止モジュールの製造方法の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る樹脂封止モジュール10の断面図であり、図2は、樹脂封止モジュール10の平面図である。図1は、図2のI−I’線に沿う断面図である。
【0009】
図1および図2に示すように、樹脂封止モジュール10は、電子部品付き基板7と、電子部品付き基板7を格納するモジュールケース6と、モジュールケース6内に充填されて電子部品付き基板7を埋設する封止樹脂4と、を備えている。
【0010】
電子部品付き基板7は、プリント基板1と、プリント基板1の実装面1aに実装された電子部品2,3とを有する。
電子部品3は、トランスや電解コンデンサなど比較的背の高い電子部品であり、プリント基板1の実装面1aのうち第一領域11に実装されている。
一方、電子部品2は、ICチップやチップ部品など比較的背の低い電子部品であり、プリント基板1の実装面1aのうち第一領域11とは異なる第二領域12に実装されている。
電子部品2は、電子部品3よりもプリント基板1の実装面1aからの高さ寸法が小さい。
【0011】
電子部品付き基板7は、プリント基板1の裏面1bがモジュールケース6の内底面(底板6aの内面)に対向するようにモジュールケース6内に収容される。
プリント基板1は、モジュールケース6の底板6aに設けられた所定の高さの台座(図示せず)の上に載置することによって、底板6aから離間していることが望ましい。
なお、プリント基板1は、モジュールケース6の底板6aに接するようにモジュールケース6内に格納されていてもよい。また、プリント基板1は、裏面1bにチップ抵抗等の電子部品が実装されていてもよい。
【0012】
モジュールケース6は、底板6aとその周縁に立設された側板6bとを有する。底板6aは平面視矩形とすることができる(図2参照)。なお、モジュールケース6の形状は図示例に限定されない。
【0013】
封止樹脂4は、例えばエポキシ樹脂などからなる。
封止樹脂4の表面4aの一部には、凹部5が形成されている。凹部5は、平面視において電子部品2を包含する領域に形成されている。
凹部5の底面である低位領域5aは、凹部5の外の領域(基準領域4b)より低くなっている。図1等に示す凹部5は、平面視矩形とされている(図2参照)。なお、凹部5の形状は図示例に限定されない。
低位領域5aにおける封止樹脂4の厚さT1は、基準領域4bにおける封止樹脂4の厚さT2よりも小さい。厚さT1は電子部品2の高さよりも大きいため、封止樹脂4は電子部品2を埋設している。
【0014】
電子部品付き基板7では、背の低い電子部品2および背の高い電子部品3が、実装面1aの互いに異なる領域11,12に実装されており、封止樹脂4の表面4aには、電子部品2が実装された第二領域12に重なる領域に凹部5が形成されている。
この凹部5における封止樹脂4の厚さT1は、電子部品2の高さよりも大きく、かつ基準領域4bにおける封止樹脂4の厚さT2よりも小さいため、封止樹脂4の機能を損なうことなく樹脂の使用量を削減し、樹脂封止モジュール10を軽量化することができる。
【0015】
図1(b)に示すように、凹部5の底面(低位領域5a)には、上方に突出する成形凸部5bが形成されることがある。
成形凸部5bは、後述する位置決め工程において(図3(d)参照)、凹部5の内側面から第一隔壁22の厚さ分だけ離れた位置に形成される。
成形凸部5bは、位置決め工程において、モールド部材20の第一隔壁22の内面の下端部分に、熱硬化性樹脂4Aの表面張力により形成されるため、内面5b1は、突出高さを増すほど傾斜角度(低位領域5aに対する傾斜角度)が大きくなるように湾曲している。
外面5b2は、第一隔壁22の内面に沿って形成されるため、実装面1aに対して垂直に形成される。
成形凸部5bは、後述する第一隔壁22に沿って形成されるため、平面視において環状となっている(図2参照)。
【0016】
〔第一実施形態〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
次に、樹脂封止モジュール10を製造する場合を例として、本発明の樹脂封止モジュールの製造方法の第一実施形態を、図3および図4を参照して説明する。
(実装工程)
図3(a)に示すように、プリント基板1の実装面1aの第一領域11に電子部品3を実装するとともに、第二領域12に電子部品2を実装することによって、電子部品付き基板7を得る。
【0017】
(格納工程)
図3(b)に示すように、プリント基板1の裏面1bがモジュールケース6の内底面(底板6aの内面)対向するように、電子部品付き基板7をモジュールケース6内に格納する。
【0018】
(注入工程)
図3(c)に示すように、モジュールケース6内に未硬化の液状の熱硬化性樹脂4A(例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂)を注入し、電子部品付き基板7を熱硬化性樹脂4A中に浸漬する。
【0019】
(位置決め工程)
次いで、図3(d)および図4に示すように、モールド部材20を用意する。
モールド部材20は、主板部21と、主板部21の第一主面21aから突出する第一隔壁22とを有する。
主板部21の平面視形状は、モジュールケース6の平面視形状に沿う矩形状とすることができる。
主板部21は、図3(d)に示すように、モジュールケース6内に配置したときに、モジュールケース6の側板6bとの間に隙間ができる程度の大きさであることが望ましい。
【0020】
図4に示すように、第一隔壁22は、第一主面21aの一部の領域である第一所定領域21a1を囲んで形成されている。第一隔壁22の平面視形状および大きさは、前述の凹部5が、平面視において電子部品2を包含する領域に形成されるように定められる。
第一隔壁22は、熱硬化性樹脂4Aに浸漬したときに内側空間24に気体を保持できるように、孔部や切欠きがない筒状に形成されている。
第一隔壁22は、第一主面21aに対して垂直に形成されることが好ましい。第一隔壁22の第一主面21aからの突出高さは、凹部5における封止樹脂4に適切な厚さ(図1の厚さT1)を与えることができるように定められる。第一隔壁22の突出高さは、全周にわたって一定とされている。
【0021】
モールド部材20は、例えばポリプロピレンなどの樹脂材料からなる。例えば、モールド部材20がポリプロピレンで形成され、熱硬化性樹脂4Aとしてエポキシ樹脂が用いられると、モールド部材20と封止樹脂4との離形性を良くすることができる。
【0022】
次いで、図3(d)に示すように、モールド部材20を、第一隔壁22の少なくとも突出端部22aが熱硬化性樹脂4Aに浸漬されるように位置決めする。モールド部材20の位置は、第一隔壁22の内側空間24が実装面1aの第二領域12に対向するように定められる。
第一隔壁22は筒状に形成されているため、内側空間24に気体層25を保持したまま熱硬化性樹脂4Aに浸漬される。気体層25は、モールド部材20が置かれた雰囲気の気体(通常は空気)からなる。
第一隔壁22内に気体層25が保持されるため、熱硬化性樹脂4Aの上面(表面)の一部領域4A1は、第一隔壁22およびその内部の気体層25によって押し下げられ、この領域4A1は他の領域より低く位置する。
モールド部材20は、押し下げられた領域4A1が、平面視において電子部品2を包含するように位置決めされる。
【0023】
図3(d)に示すように、モールド部材20は、第一隔壁22の外の領域において、主板部21の第一主面21aが熱硬化性樹脂4Aに接触しないように位置決めを行うことが望ましい。これによって、第一隔壁22の外の領域においても、気泡を原因とする凹状欠陥の形成を回避できる。
モールド部材20は、例えば、モジュールケース6の側板6bの内面に形成した係止凸部(図示略)に主板部21を載置することによって、高さ位置を定めることができる。
【0024】
上述のように、領域4A1には、上方に突出する成形凸部5bが形成されることがある。
成形凸部5bは、第一隔壁22の内面の下端部分に、熱硬化性樹脂4Aの表面張力により形成されるため、内面5b1は、突出高さを増すほど傾斜角度(水平面に対する傾斜角度)が大きくなるように湾曲した形状となる。成形凸部5bの外面5b2は、第一隔壁22の内面によって形成されるため、実装面1aに対して垂直となる。成形凸部5bは、筒状の第一隔壁22に沿って形成されるため、平面視において環状となる(図2参照)。
【0025】
(硬化工程)
次いで、モジュールケース6内の熱硬化性樹脂4Aを加熱して硬化させる。これにより、電子部品付き基板7を埋設する封止樹脂4が形成される。第一隔壁22および気体層25によって押し下げられた領域4A1は凹部5の低位領域5aとなる(図1参照)。
低位領域5aのうち気体層25によって押し下げられた領域(成形凸部5bの頂点より内側の領域)は、モールド部材20に接触していないため、モールド部材20に当接して成形された部分に比べて表面粗さは小さくなる。なお、表面粗さの指標としては、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)がある。
【0026】
気体層25によって成形された領域は表面粗さが小さいため、他の領域に比べて光の反射率が高くなる。この領域の平面視形状は、樹脂封止モジュール10に固有の形状となるため、樹脂封止モジュール10に光を照射したときの反射光のパターンに基づいて、樹脂封止モジュール10と他の樹脂封止モジュールとの識別が可能となる。
【0027】
(取り外し工程)
次いで、モールド部材20を封止樹脂4から取り外す。
以上の工程を経て、図1に示す樹脂封止モジュール10が得られる。
【0028】
本実施形態の樹脂封止モジュールの製造方法では、モールド部材20は、主板部21の第一所定領域21a1を囲む第一隔壁22を有する。
このため、第一隔壁22の内側空間24に気体層25を保持させ、第一隔壁22および気体層25によって熱硬化性樹脂4Aの領域4A1を押し下げることによって熱硬化性樹脂4Aの表面を成形することができる。
気体層25により押し下げられる領域4A1はモールド部材20に当接しないため、熱硬化性樹脂4Aの表面のうちモールド部材20に当接しない領域を拡大できる。そして、モールド部材20に当接しない領域では気泡の残留が起こらないため、気泡を原因として凹状欠陥が封止樹脂4表面に形成されることを抑制できる。
【0029】
また、封止樹脂4に凹部5が形成されるため、凹部5の体積分だけ熱硬化性樹脂4Aの使用量を削減し、樹脂封止モジュール10の軽量化を図ることができる。
【0030】
〔第一実施形態の変形例〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
本発明の製造方法は、プリント基板1をモジュールケース6内に格納する前に、熱硬化性樹脂4Aをモジュールケース6内に注入してもよい。この場合の樹脂封止モジュールの製造方法は次の通りである。
以下、第一実施形態と共通の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0031】
(実装工程)
第一実施形態と同じように、プリント基板1の実装面1aに電子部品2,3を実装することによって電子部品付き基板7を得る。
【0032】
(注入工程)
モジュールケース6内に、液状の熱硬化性樹脂4Aを注入する。
【0033】
(格納工程)
電子部品付き基板7を、モジュールケース6内の熱硬化性樹脂4Aに浸漬する。
【0034】
位置決め工程、硬化工程および取り外し工程は、第一実施形態の製造方法と同様である。
【0035】
〔第二実施形態〕(樹脂封止モジュール)
次に、第二実施形態に係る樹脂封止モジュール30について図5を参照して説明する。
図5に示すように、樹脂封止モジュール30は、封止樹脂4の表面4aに凹部35が形成されている。凹部35の底面35aは、第一低位領域35a1と、これより高い位置にある第二低位領域35a2とを有する。
第一低位領域35a1および第二低位領域35a2は、いずれも凹部35の外の領域(基準領域4b)より低く位置している。
第一低位領域35a1では、第二領域12に形成された電子部品2が封止樹脂4に埋設されている。
第二低位領域35a2では、第三領域13に形成された電子部品8が封止樹脂4に埋設されている。第三領域13は、実装面1aのうち第一領域11および第二領域12とは異なる領域である。
電子部品8は、電子部品3よりも実装面1aからの高さ寸法が小さく、かつ電子部品2よりも実装面1aからの高さ寸法が大きい。
【0036】
〔第二実施形態〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
次に、第二実施形態に係る樹脂封止モジュール30の製造方法について、図6を参照して説明する。
(実装工程)
図6に示すように、プリント基板1の実装面1aに電子部品2,3,8を実装することによって電子部品付き基板37を得る。
【0037】
(格納工程)
電子部品付き基板37をモジュールケース6内に格納する。
【0038】
(注入工程)
モジュールケース6内に熱硬化性樹脂4Aを注入し、電子部品付き基板37を熱硬化性樹脂4A中に浸漬する。
【0039】
(位置決め工程)
モールド部材40を用意する。モールド部材40は、主板部21と、主板部21の第一主面21aから突出する第一隔壁22および第二隔壁23とを有する。
第二隔壁23は、第一主面21aのうち、第一所定領域21a1とは異なる第二所定領域21a2を囲むように形成されている。
【0040】
図6に示す例では、第二所定領域21a2は、第一所定領域21a1の外側の領域である。
第二隔壁23は、第一隔壁22の外面に連設することができる。この構造では、第一隔壁22の一部と第二隔壁23とが第二所定領域21a2を囲む。
第二隔壁23の第一主面21aからの突出高さは、第一隔壁22の突出高さと同じであってもよいし、第一隔壁22の突出高さと異なっていてもよい。
【0041】
第二隔壁23内の天面(第二所定領域21a2)の高さ位置は、第一隔壁22内の天面(第一所定領域21a1)の高さ位置と同じでもよいし、これとは異なっていてもよい。
図6に示す例では、第二隔壁23内の天面は第一隔壁22内の天面より高い位置にあるため、第二隔壁23内における樹脂液面の高さ位置の選択の自由度は高い。
【0042】
主板部21には、第二隔壁23の内側に、主板部21を貫通する通気口27が形成されている。
通気口27は、外部のエアポンプ28(気体供給・排出手段)に接続されており、通気口27を通して第二隔壁23の内側空間26に対して気体(例えば空気)を供給または排出することができる。
【0043】
モールド部材40を、第一隔壁22の少なくとも突出端部22aが熱硬化性樹脂4Aに浸漬されるように位置決めする。モールド部材40の位置は、第一隔壁22の内側空間24が第二領域12に対向し、第二隔壁23の内側空間26が第三領域13に対向するように定められる。
熱硬化性樹脂4Aの上面(表面)のうち一部の領域4A1は、第一隔壁22および気体層25によって押し下げられる。領域4A1とは異なる一部領域である領域4A2は、第二隔壁23およびその内部の気体層29によって押し下げられる。
第一隔壁22および気体層25によって押し下げられた領域4A1は第一低位領域35a1となり、第二隔壁23および気体層29によって押し下げられた領域4A2は第二低位領域35a2となる(図5参照)。
【0044】
第二隔壁23および気体層29によって熱硬化性樹脂4Aの上面(表面)を押し下げる際には、通気口27を通して第二隔壁23の内側空間26に対して気体(例えば空気)を供給または排出することによって、第二隔壁23内の熱硬化性樹脂4A(領域4A2)の液面の高さ位置を調整することができる。
図6では、第二隔壁23内の領域4A2の液面の高さは、第一隔壁22内の領域4A1の液面より高くされている。なお、領域4A1,A2の液面の高さ位置は、隔壁22,23の突出高さを調整することによって、任意に設定することができる。
【0045】
位置決め工程、硬化工程および取り外し工程は、第一実施形態の製造方法と同様である。
以上の工程を経て、図5に示す樹脂封止モジュール30が得られる。
【0046】
図6に示す例のモールド部材40では、第二隔壁23が囲む第二所定領域21a2は第一隔壁22の外側の領域であるが、第二隔壁が囲む第二所定領域は、第一隔壁の内側の領域であってもよい。例えば、第二隔壁は、第一隔壁の内側に、第一隔壁から離れて形成された筒状構造とすることができる。また、第二隔壁は、第一隔壁の外側にあって、第一隔壁から独立した筒状の構造としてもよい。
【0047】
〔第三実施形態〕(樹脂封止モジュール)
次に、第三実施形態に係る樹脂封止モジュール60について、図7を参照して説明する。
図7に示すように、樹脂封止モジュール60は、封止樹脂4の表面4aに、凹部65および凸部66が形成されている点で、図5の樹脂封止モジュール30と異なる。
凹部65の底面65aは、基準領域4bより低い低位領域65a1である。
凸部66の上面66aは、低位領域65a1および基準領域4bより高い高位領域66a1である。
【0048】
〔第三実施形態〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
次に、第二実施形態に係る樹脂封止モジュール60の製造方法について、図8を参照して説明する。
実装工程、格納工程、および注入工程は、第二実施形態の製造方法と同様である。
【0049】
(位置決め工程)
図8に示すように、第二実施形態で用いたものと同様のモールド部材40を用意する。モールド部材40の第二隔壁23内の天面は第一隔壁22内の天面より高く形成されている。
モールド部材40の第一隔壁22の一部を熱硬化性樹脂4Aに浸漬させると、領域4A1は、第一隔壁22および気体層25によって押し下げられる。
【0050】
本実施形態では、通気口27を通して第二隔壁23の内側空間26から気体(例えば空気)を排出することによって、第二隔壁23内の領域4A2の樹脂液面を、隔壁22,23の外の領域における樹脂液面より高く位置させる。
【0051】
位置決め工程、硬化工程および取り外し工程は、第一実施形態の製造方法と同様である。
これらの工程によって、第一隔壁22内の領域4A1は基準領域4bより低い低位領域65a1となり、第二隔壁23内の領域4A2は基準領域4bより高い高位領域66a1となる。
以上の工程を経て、図7に示す樹脂封止モジュール60が得られる。
【0052】
〔第四実施形態〕(樹脂封止モジュール)
次に、第四実施形態に係る樹脂封止モジュール50について、図9を参照して説明する。
図9に示すように、樹脂封止モジュール50は、2つの電子部品付き基板7(7A,7B)を有し、これらがそれぞれ封止樹脂4(4C,4D)で覆われている。
詳しくは、樹脂封止モジュール50は、第一および第二電子部品付き基板7A,7Bと、電子部品付き基板7A,7Bを格納するモジュールケース6と、第一電子部品付き基板7Aを埋設する第一封止樹脂4Cと、第二電子部品付き基板7Bを埋設する第二封止樹脂4Dと、を備えている。
2つの電子部品付き基板7A,7Bは、実装面1aが向かい合うように配置されており、封止樹脂4C,4Dには、背の低い電子部品2が実装された第二領域12に重なる領域に、それぞれ凹部55,55が形成されている。
第一封止樹脂4Cの凹部55の低位領域55aは、第二封止樹脂4Dの基準領域4bに当接している。第二封止樹脂4Dの凹部55の低位領域55aは、第一封止樹脂4Cの基準領域4bに当接している。
封止樹脂4C,4Dは隙間なく形成され、互いに一体化していることが望ましい。
【0053】
〔第四実施形態〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
樹脂封止モジュール50は、次のようにして作製することができる。
電子部品付き基板7Aを用いて第一実施形態と同様にして樹脂封止モジュールを作製した後、この樹脂封止モジュールの封止樹脂4Cの上に電子部品付き基板7Bを配置する。この際、電子部品付き基板7Bは、封止樹脂4Cから離間して配置するのが好ましい。
電子部品付き基板7Bの上面および下面側に熱硬化性樹脂4Aを供給し、これを硬化させて封止樹脂4Dとする。
【0054】
樹脂封止モジュール50では、封止樹脂4C,4Dの厚さ寸法が大きい領域(基準領域4b)と厚さ寸法が小さい領域(低位領域55a)とが互いに対向するように配置されているため、厚さ寸法を大きくせずに、モジュールケース6内に2つの電子部品付き基板7(7A,7B)を配置できる。このため、多機能化および小型化の両立が可能である。
【0055】
〔第五実施形態〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
次に、第五実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法について、図10を参照して説明する。
図10に示すように、この製造方法で用いるモールド部材70は、第一隔壁72の突出端部72aの端面73が、第一主面21aに対して傾斜している点で、第一実施形態の製造方法で用いられるモールド部材20と異なる。
図10(b)に示すように、端面73は、内縁73cから先端73dにかけて突出高さを増すように傾斜する内側傾斜面73aと、先端73dから外縁73eにかけて突出高さを減じるように傾斜する外側傾斜面73bとを有する。
【0056】
本実施形態の製造方法は、モールド部材20に代えてモールド部材70を用いること以外は、第一実施形態の樹脂封止モジュール10の製造方法と同様とすることができる。
図10(b)および図11に示すように、内側傾斜面73aに当接する領域には、熱硬化性樹脂4Aの表面張力により、成形凸部75bが形成されることがある。
【0057】
モールド部材70は、端面73が傾斜面からなるため、位置決め工程において、熱硬化性樹脂4Aに気泡が含まれている場合でも、気泡は内側傾斜面73aおよび外側傾斜面73bの傾斜に沿って浮上する。このため、端面73に気泡が残留するのを防ぐことができる。よって、凹状欠陥が封止樹脂4表面に形成されることを抑制できる。
【0058】
〔第五実施形態の変形例〕(樹脂封止モジュールの製造方法)
次に、第五実施形態に係る樹脂封止モジュールの製造方法の変形例について、図12を参照して説明する。
図12に示すように、この製造方法で用いるモールド部材80は、第一隔壁82の突出端部82aの端面83が、全面にわたって同じ方向に傾斜した傾斜面である点で、図10に示すモールド部材70と異なる。
端面83は、内縁83cから外縁83eにかけて突出高さを増すように傾斜する傾斜面である。
モールド部材80を用いる場合でも、位置決め工程において、気泡は端面83の傾斜に沿って浮上するため、モールド部材80の表面に気泡が残留するのを防ぐことができる。よって、凹状欠陥が封止樹脂4表面に形成されることを抑制できる。
【0059】
本発明の樹脂封止モジュールは、レギュレータ(REG)、コンデンサ・ディスチャージ・イグナイタ(CDI)、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)、ヘッドライト(LED)のコントローラ等の電装装置に使用できる。
【0060】
本発明は、その主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更してよい。
例えば、図1に示す第一実施形態の樹脂封止モジュール10では、第一領域11に電子部品3が実装され、第二領域12に電子部品2が実装されているが、実装面1aにおける電子部品2,3の実装位置は図示例に限定されない。例えば、領域11,12のうちいずれかに電子部品が実装されていない構造も可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 プリント基板
1a 実装面
2,3 電子部品
4 封止樹脂(樹脂)
4A 熱硬化性樹脂(未硬化の液状硬化性樹脂)
4A1 領域(押し下げられた領域)
5 凹部
6 モジュールケース
7,37 電子部品付き基板
10 樹脂封止モジュール
11 第一領域
12 第二領域
13 第三領域
20,40,70,80 モールド部材
21 主板部
21a 第一主面
21a1 第一所定領域
21a2 第二所定領域
22,72 第一隔壁
22a,72a,82a 突出端部
23 第二隔壁
24,26 内側空間
25、29 気体層
27 通気口
73,83 端面
73a 内側傾斜面
73b 外側傾斜面
83a 傾斜面
【要約】
モジュールケース内に未硬化の液状硬化性樹脂を注入する注入工程と、モールド部材を位置決めする位置決め工程を有する樹脂封止モジュールの製造方法を提供する。注入工程では、電子部品付き基板を液状硬化性樹脂に浸漬する。位置決め工程では、モールド部材を、第一隔壁の内側空間が第二領域に対向するように位置決めする。位置決め工程においては、内側空間に気体層を保持しつつ第一隔壁の少なくとも突出端部を液状硬化性樹脂に浸漬することによって、気体層により液状硬化性樹脂の上面の一部領域を押し下げ、この領域を他の領域より低く位置させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12