(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954913
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ブートストラップ電荷蓄積デバイスを充電するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/06 20060101AFI20160707BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20160707BHJP
H03K 19/094 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
H03K17/06 063
H03K17/695
H03K19/094 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-515591(P2015-515591)
(86)(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-524207(P2015-524207A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】IB2012001270
(87)【国際公開番号】WO2013182867
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シカール、ティエリ
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−037099(JP,A)
【文献】
米国特許第05914589(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0027096(US,A1)
【文献】
特開2012−075048(JP,A)
【文献】
特開2008−141832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00−17/70
H03K 19/094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子のための充電回路であって、前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子は、前記慣性負荷ドライバ回路の少なくとも1つのスイッチング素子の出力ノードに動作可能に結合されている第1のノードを備え、前記充電回路は、
前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子の第2のノードに電流を提供するように制御可能な少なくとも1つの電流源と、
少なくとも1つの検出構成要素であって、
前記少なくとも1つの検出構成要素の第1の入力において、前記慣性負荷ドライバ回路の前記少なくとも1つのスイッチング素子の前記出力ノードにおける電圧レベルの指示を受信し、
前記慣性負荷ドライバ回路の前記スイッチング素子の前記出力ノードにおける前記電圧レベルが負閾値電圧レベルを下回るか否かを検出し、ここで、前記負閾値電圧レベルは、前記慣性負荷ドライバ回路の負クランプ電圧に等しい負電圧レベル振幅を備え、
前記慣性負荷ドライバ回路の前記スイッチング素子の前記出力ノードにおける前記電圧レベルが前記負閾値電圧レベルを下回る場合、前記少なくとも1つの電流源を制御して、前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子の前記第2のノードに電流を提供するように構成されている、前記少なくとも1つの検出構成要素とを備える、充電回路。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出構成要素は、
前記少なくとも1つの検出構成要素の第2の入力において、前記負閾値電圧レベルの指示を受信し、
前記慣性負荷ドライバ回路の前記スイッチング素子の前記出力ノードにおける電圧レベルの受信された指示を、前記負閾値電圧レベルの受信された指示と比較し、
前記比較の結果の指示を前記少なくとも1つの電流源に出力するように構成されている、請求項1に記載の充電回路。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電流源は、前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子の前記第2のノードと誘導負荷ドライバ回路のグランドプレーンとの間に動作可能に結合されており、前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子の前記第2のノードを前記グランドプレーンに選択的に結合するように構成されている少なくとも1つのスイッチング素子を備える、請求項1または2に記載の充電回路。
【請求項4】
前記慣性負荷ドライバ回路は、直流電流DCモータを駆動するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電回路。
【請求項5】
前記慣性負荷ドライバ回路は、慣性負荷と正電源電圧との間に動作可能に結合されるように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の充電回路。
【請求項6】
前記慣性負荷ドライバ回路は、前記慣性負荷ドライバ回路の前記少なくとも1つのスイッチング素子に制御信号を出力するように構成されている回路を備える少なくとも1つのスイッチング素子制御構成要素を備え、前記スイッチング素子制御構成要素回路の負電源電圧入力は、前記慣性負荷ドライバ回路の前記少なくとも1つのスイッチング素子の出力に動作可能に結合されており、前記スイッチング素子制御構成要素回路の正電源電圧入力は、前記少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子を介して負電源に動作可能に結合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の充電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ブートストラップ電荷蓄積デバイスを充電するための方法および装置に関し、より詳細には、慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子のための充電回路およびそのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主としてダイサイズ低減に起因して、および他の利点に起因して、集積回路(IC)デバイスの分野において、NMOSデバイスとしても既知であるNチャネルMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)デバイスのみを使用することが一般的なコスト低減方法である。しかしながら、PMOS(PチャネルMOSFET)デバイスの代わりにNMOSデバイスを使用することは、一般的に、NMOSデバイスが負荷の「ハイサイド」に位置付けられることを伴い、NMOSデバイスは負荷と電源電圧レールとの間に位置する。NMOSデバイスが完全な「開」状態にある(すなわち、電流がNMOSデバイスを通じて自由に流れることが可能である飽和モードにある)とき、ソースノードは、実効的に、開いたNMOSデバイスを介して電源電圧レールに結合される。完全な開状態を達成するためには、ゲートとソースノードとの間に相当の正電圧(V
GS)が、NMOSデバイスを飽和モードまでバイアスするために必要とされる。これを達成するために、ゲート電圧はドレイン電圧(すなわち、電源レール電圧)を、少なくとも閾値電圧レベル(V
th)だけ上回らなければならない。明らかに、電源レール電圧が利用可能な最高の供給電圧信号である場合、より高い電圧レベルを生成する何らかの手段が必要とされる。
【0003】
この目的のために、より高い電圧レベルを生成するためにブートストラップキャパシタのようなブートストラップ電荷蓄積デバイスを使用することが既知である。
図1は、ハイサイドNMOSデバイス110およびブートストラップキャパシタ120を備えるDC(直流)モータドライバ回路100の一例の簡略回路図を示す。NMOSデバイス110のゲートノード電圧は、
図1の簡略化された例においてはバッファロジック140を備えるものとして示されているゲート制御回路を通過する制御信号130によって生成される。このバッファロジック140のための負電源レールは、NMOSデバイス110のソースノード112に動作可能に結合されており、このバッファロジック140のための正電源レール144は、ブートストラップキャパシタ120を介して負電源レール142に動作可能に結合されている。このように、「浮動」電源電圧レールがバッファロジック140に提供され、負レール電圧はNMOSデバイス110のソース電圧に連結されており、正レール電圧はブートストラップキャパシタ120の両端電圧によって決定される。従って、ブートストラップキャパシタ120内に適切な電荷を維持することによって、NMOSデバイス120をその飽和モードにするのに十分高いゲート電圧を生成することが可能である。
【0004】
一般的な断続的ドライバモード(たとえば、100msの間オン、100msの間オフ)において、ブートストラップキャパシタ120は、ドライバ回路100のオフ状態の間は放電する。従って、NMOSデバイス120をその飽和モードにするのに十分高いゲート電圧を生成するのに十分大きい電荷を内部に維持するために、ブートストラップキャパシタ120のそのような放電を補償する必要がある。そのようなブートストラップキャパシタ120を備えるそのような従来のドライバ回路100において、電荷ポンプ150が一般的に設けられ、ドライバ回路100のオフ状態の間にブートストラップキャパシタ120にいくらかの電流を注入するように構成されている。このようにして、ブートストラップキャパシタ120内に適切な電荷を維持することができる。
【0005】
近年、そのようなドライバ回路の要件は、ドライバ回路100のオフ状態の間に電力消費が発生し得ないことを要求するようになってきている。そのため、ドライバ回路100のオフ状態の間にそのような電荷ポンプ150を使用することは、そのような顧客の要求の下では許容されない。従って、そのような電荷ポンプ150の使用は、ドライバ回路100のオン状態の間に限定されることになる。しかしながら、ドライバ回路100のオフ状態の間、ブートストラップキャパシタ内には特有の電荷損失があるため、ドライバ回路100のオン状態の間には、ブートストラップキャパシタ120が再充電されることを必要とされる初期期間が存在することになる。そのような初期期間の間、NMOSデバイス110を完全にオンにするのに利用可能な高バイアス電圧が不十分になることになり、結果として、その初期期間の間のNMOSデバイス110内の電流制限が増大することになり、従って、NMOSデバイス110内の熱生成が増大し、これは望ましいことではなく、場合によっては許容不可能になり得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されているような、慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子のための充電回路、そのような充電回路を備える慣性負荷ドライバ回路、および、慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子を充電する方法を提供する。
【0007】
本発明の具体的な実施形態は従属請求項に記載されている。
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかとなり、それらを参照することによって明瞭になろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のさらなる詳細、態様、および実施形態を、例としてのみ、図面を参照して記載する。図面において、同様の参照符号は同様のまたは機能的に類似の要素を特定するために使用される。図面内の要素は簡潔かつ明瞭にするために示されており、必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。
【
図1】既知のDC(直流)モータドライバ回路の一例の簡略回路図。
【
図2】慣性負荷のドライバ回路の一例の簡略回路図。
【
図3】慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子を充電する方法の一例の簡略フローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明を、直流(DC)モータドライバ回路内のブートストラップキャパシタのようなブートストラップ電荷蓄積素子のための充電回路、およびそのための方法を参照して説明する。しかしながら、本発明は図面に示され本明細書に記載されている特定の実施形態には限定されず、特に、DCモータのためのドライバ回路内のブートストラップ電荷蓄積デバイスを充電するための方法および装置には限定されず、任意の形態の慣性負荷ドライバ回路内のブートストラップ電荷蓄積デバイスを充電するための方法および装置内に等しく実装されてもよいことは諒解されよう。たとえば、本発明は、代替的に、たとえば、誘導負荷のためのドライバ回路内のブートストラップ電荷蓄積デバイスを充電するための充電回路内に実装されてもよいことが企図される。明瞭にするために、本明細書において使用される慣性負荷という用語は、それを通じて流れる電流の変化に対する抵抗を備える任意の負荷を指し得る。一般的に、そのような負荷は、そのような電流の変化に対する抵抗をイネーブルするエネルギーを内部に蓄積することが可能である。たとえば、DCモータの場合、エネルギーは、DCモータの回転電機子内に回転運動エネルギーとして蓄積される。同様に、誘導負荷の場合、エネルギーは、誘導負荷によって生成される磁場の中に蓄積される。
【0010】
さらに、本発明の例示されている実施形態は、大部分について、当業者に既知の電子コンポーネントおよび回路を使用して実装され得るため、本発明の基礎となる概念の理解および評価のために、ならびに本発明の教示を分かりにくくせず当該教示から注意を逸らさせないために、詳細は下記に例示されているような必要と考えられる範囲を超えては説明されない。
【0011】
ここで
図2を参照すると、示されている例ではDCモータ210を備える慣性負荷のためのドライバ回路200の一例の簡略回路図が示されており、ドライバ回路200は、集積回路デバイス205内に実装される。ドライバ回路200は、電力トランジスタ、たとえば電界効果トランジスタまたはバイポーラトランジスタのような、スイッチング素子、たとえば電源スイッチを備える。適切な例は、たとえば、電力(金属酸化膜)電界効果トランジスタ((MOS−)FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBP)、ヘテロ接合FET(HFET)または任意の他のタイプの電力トランジスタである。電力トランジスタは、たとえば、50A以上、たとえば100A以上の電流を制御することが可能であってもよい。一例において、たとえば、2ミリオームの内部抵抗を有し、120Aの最大電流を制御することが可能な電力トランジスタを有するドライバ回路の使用が実験された。
【0012】
示されている例において、スイッチは、NMOS電界効果トランジスタのような、nチャネル金属酸化膜半導体(NMOS)デバイス220を備える。NMOSデバイス220のドレインノード222は、正電源電圧230に動作可能に結合されている。いくつかの例において、ドライバ回路200は、自動車用途内に実装されてもよく、正電源電圧230は、たとえば、12V車両バッテリによって提供される。NMOSデバイス220のソースノード224は、DCモータ210に動作可能に結合されており、従って、NMOSデバイス220の出力を備える。このように、NMOSデバイス220は、DCモータ210と正電源電圧230との間に動作可能に結合されており、そのため、ハイサイドNMOSデバイスを備え、そのゲートノード226において受け取られるバイアス電圧に応じてDCモータ210を正電源電圧230に選択的に結合するように構成されている。
【0013】
NMOSデバイス220の完全な開状態を達成するためには、ゲートノード226とソースノード224との間に相当の正電圧(V
GS)が、NMOSデバイス220を飽和モードまでバイアスするために必要とされる。特に、このハイサイド構成において、NMOSデバイス220が完全な開状態にある(すなわち、電流がNMOSデバイス220を通じて自由に流れることが可能である飽和モードにある)場合、ソースノード224は、実効的に、開いたNMOSデバイス220を介して直接ドレインノード222に、従って正電源電圧230に結合される。従って、完全な開状態を達成するために、ゲートノード226における電圧は、NMOSデバイス220を飽和モードまでバイアスするために、ドレインノード222における電圧(すなわち、正電源電圧230)を、少なくとも、ゲートノード226とソースノード224との間で必要とされる閾値電圧レベル(V
th)だけ上回らなければならない。電源電圧230は一般的に利用可能な最高の供給電圧信号であるため、より高い電圧レベルを生成する何らかの手段が必要とされる。この目的のために、
図2のドライバ回路200は、概してブートストラップキャパシタンス240によって示されているブートストラップ電荷蓄積デバイスを備える。
【0014】
ドライバ回路200は、制御信号をNMOSデバイス220に出力するように構成されている回路を備えるスイッチング素子制御構成要素をさらに備える。示されている例において、スイッチング素子制御構成要素は、バッファ論理ゲート260の形態の回路を備える。バッファ論理ゲート260は、制御信号250を受信し、受信された制御信号250に応じて、バイアス電圧信号の形態で対応する制御信号をNMOSデバイス220のゲートノード226に出力するように構成されている。バッファ論理ゲート260の負電源電圧入力262は、NMOSデバイス220の出力に、すなわち、示されている例におけるソースノード224に動作可能に結合されている。バッファ論理ゲート260の正電源電圧入力264は、ブートストラップキャパシタンス240を介して、バッファ論理ゲート260の負電源電圧入力262に動作可能に結合されている。特に、示されている例において、ブートストラップキャパシタンス240の第1のノード242は、バッファ論理ゲート260の負電源電圧入力262およびNMOSデバイス220のソースノード224に動作可能に結合されており、ブートストラップキャパシタンス240の第2のノード244は、バッファ論理ゲート260の正電源電圧入力264に動作可能に結合されている。このように、「浮動」電源電圧がバッファ論理ゲート260に提供され、負電源電圧はNMOSデバイス220のソースノード224(すなわち、出力)における電圧に連結されており、正電源電圧はブートストラップキャパシタンス240の両端電圧によって決定される。従って、ブートストラップキャパシタンス240内に適切な電荷を維持することによって、バッファ論理ゲート260が、NMOSデバイス220をその飽和モードにするのに十分高い、NMOSデバイス220のゲートノード226におけるバイアス電圧信号を生成することが可能である。
【0015】
一般的な断続的ドライバモード(たとえば、100msの間オン、100msの間オフ)において、ブートストラップキャパシタンス240は、ドライバ回路200のオフ状態の間は放電する。従って、NMOSデバイス220をその飽和モードにするのに十分高いゲート電圧を生成するのに十分大きい電荷を内部に維持するために、ブートストラップキャパシタンス240のそのような放電を補償する必要がある。近年、顧客の要求は、ドライバ回路200のオフ状態の間に電力消費が発生し得ないことを要求している。従って、ブートストラップキャパシタンス240内の電荷を維持するために、ドライバ回路200のオフ状態の間に正電圧源230から電荷を引き込むことは許容されない。しかしながら、ドライバ回路200のオフ状態の間、ブートストラップキャパシタンス240が放電することを可能にすることは、ドライバ回路200の各オン状態の間に、ブートストラップキャパシタンス240が再充電されることを必要とされる初期期間があることを意味する。そのような初期期間の間、NMOSデバイス220を完全にオンにするのに利用可能な高バイアス電圧が不十分になることになり、結果として、その初期期間の間のNMOSデバイス220内の電流制限が増大することになり、従って、NMOSデバイス220内の熱生成が増大し、これは望ましいことではなく、場合によっては許容不可能になり得る。
【0016】
図2に示すDCモータ210の場合におけるような慣性負荷において、NMOSデバイス220が開いている場合、DCモータ210は、正電圧源230によって電力供給され、DCモータ210は作動する。NMOSデバイス220がその後「閉じる」場合、NMOSデバイス220を通り、従ってDCモータ210に提供される電流は、ゼロまで降下する。しかしながら、DCモータ210の慣性は、NMOSデバイス220がその後閉じた後、DCモータ210が回転し続けることになることを意味する。DCモータ210のこの継続する回転が、DCモータ210を電圧生成器に変化させ、結果として逆起電力(BEMF:back electromotive force)がDCモータ210の両端に生成される。生成される電圧は、DCモータ210の速度に比例し、従って、DCモータ210の回転が遅くなるにつれて徐々に低減することになる。
【0017】
図2の示されている例において、DCモータ210は、NMOSデバイス220のソースノード224とグランドプレーン235との間に結合されている。従って、BEMFの結果としてDCモータ210の両端に電圧が生成されることによって、NMOSデバイス220のソースノード224における電圧がグランドプレーン235に対してプルダウンされる。従って、ドライバ回路200のオフ状態の間、NMOSデバイス220のソースノード224は、グランドプレーン235に対する負電圧を備える。たとえば、正電源電圧230がたとえば車両バッテリから供給される12Vを備える自動車用途内にドライバ回路200が実装されるいくつかの例において、ドライバ回路200のオフ状態の間にDCモータ210によって生成される平均電圧は一般的に最初は約5Vの振幅であり、DCモータ210の回転が遅くなるにつれて降下する。しかしながら、本発明者は、BEMFによって生成される平均電圧は相対的に低い平均振幅DC電圧(たとえば、5V未満の振幅)を備えるが、より厳密に見ると、この低い平均振幅DC電圧は、個々が相対的に高い振幅DC電圧を備える電圧スパイク(DCモータ210内のブラシが1つの接点から別の接点へと変化することによって引き起こされる)を備えることを観測した。特に、本発明者は、DCモータ210内の電気回路が1つの接点から別の接点へと変化するたびに、BEMFが電圧スパイクを生成し、これらのスパイクのピーク電圧は、−5Vを下回り(すなわち、5Vよりも大きい振幅を有する)、さらには−12Vまで下がることを観測した。
【0018】
示されている例において、ブートストラップキャパシタンス240の両端電圧は、ツェナーダイオード245によってクランピングされる。正電源電圧230が車両バッテリから供給される12Vを備える自動車用途内にドライバ回路200が実装されるいくつかの例において、ブートストラップキャパシタンス240の両端電圧は、たとえば、10ボルトにクランピングされ得る。従って、ブートストラップキャパシタンス240を完全に(再)充電することを可能にするために、少なくとも10Vの電圧がブートストラップキャパシタンス240の両端に印加されなければならない。本発明者は、DCモータ210のBEMFによって生成される相対的に低い平均振幅DC電圧は、低すぎてブートストラップキャパシタンス240を完全に(再)充電することを可能にすることはできないが、NMOSデバイス220のソースノード224におけるBEMF生成電圧内の個々の電圧スパイクは、ブートストラップキャパシタンス240を完全に(再)充電することを可能とするのに十分な振幅であることを認識した。
【0019】
示されている例におけるドライバ回路200は、充電回路270をさらに備える。充電回路は、ブートストラップキャパシタンス240の第2のノード244に電流を提供するように制御可能な電流源280と、検出構成要素290とを備える。検出構成要素290は、その第1の入力292において、NMOSデバイス220の出力(ソース)ノード224における電圧レベルの指示を受信し、NMOSデバイス220の出力ノード224における電圧レベルが負閾値電圧レベルを下回るか否かを検出し、NMOSデバイス220の出力ノード224における電圧レベルが負閾値電圧レベルを下回る場合、ブートストラップキャパシタンス240の第2のノード244に電流を提供するように電流源280を制御するように構成されている。
【0020】
示されている例において、検出構成要素290は、その第2の入力294において負閾値電圧レベル(V
REF)の指示を受信し、NMOSデバイス220の出力ノード224における電圧レベルの受信された指示を、負電圧レベルの受信された指示と比較し、電流源280に比較の結果を出力するように構成されている比較器構成要素を備える。いくつかの例において、ブートストラップキャパシタンス240の第2のノード242とグランドプレーン235との間に動作可能に結合されている、たとえば、NMOSデバイスのようなスイッチング素子を備えてもよい電流源280は、従って、検出構成要素290によって実行された比較の結果に応じて、ブートストラップキャパシタンス240の第2のノード242を、グランドプレーン235に選択的に結合してもよい。この例において、電流源は理想的な電流源として表されているが、他の例において、電流源は、正電源電圧230(たとえば、V+バッテリ)のみに由来するように構成されてもよい。そのような例において、グランドプレーン235に対する接続は、正電源電圧230に対する接続に置き換えられてもよい。
【0021】
このように、NMOSデバイス220の出力ノード224における電圧レベルが負閾値電圧レベルを下回って降下した場合、検出構成要素290は、電流源280によって電流がブートストラップキャパシタンス240に提供されることを可能にする。ブートストラップキャパシタンス240の第1のノード242は、負閾値電圧レベルを下回る電圧レベルを備えるNMOSデバイス220の出力ノード224に動作可能に結合されているため、この負電圧レベルは、電荷を電流源280からブートストラップキャパシタンスへと「プル」し、ブートストラップキャパシタンス240を(再)充電する。従って、示されている例において、ドライバ回路200のオフ状態の間、DCモータ210のBEMFによってNMOSデバイス220のソースノード224において生成される負電圧が、ブートストラップキャパシタンス240を(再)充電するのに使用されてもよい。特に、示されている例において、適切な負閾値電圧レベルを構成することによって、電流源280は、示されている例において、ブートストラップキャパシタンス240を必要とされる10Vの電圧レベルまで完全に(再)充電することが可能な十分に高い振幅DC電圧レベルを個々が備える電圧スパイク(DCモータ210内で1つの接点から別の接点へと変化することによって引き起こされる)の間にのみブートストラップキャパシタンス240の第2のノード244に電流を提供するように構成されてもよい。このように、BEMF電圧スパイクは、ブートストラップキャパシタンス240がドライバ回路200のオフ状態の間に、また電圧電源230から電流を引き込む必要なしに、放電するのを回避するのに十分な電荷をブートストラップキャパシタンス240に提供することが可能であることがわかった。結果として、ドライバ回路200の後続のオン状態の間、NMOSデバイス220を完全にオンにするために、ブートストラップキャパシタンスが再充電されることが必要である初期期間はない。
【0022】
たとえば、示されている例におけるドライバ回路200のオフ状態の間にその電源電圧が除去または低減される場合に、慣性負荷がそれ自体から電流を引き込むことを可能にするために慣性負荷の両端に電流路を提供するために、還流ダイオード、スナバダイオードなどとしても既知のフライバックダイオードを使用することが既知である。このように、慣性負荷内のエネルギーを安全に発散することができる。しかしながら、自動車用途において、デバイスが逆バッテリ状態を持続させることが可能であることが必要条件であり、車両バッテリが、たとえば、1分または2分の期間にわたって逆に接続される場合、いかなる電気または電子デバイスまたはモジュールも損壊されるべきではない。示されている例におけるハイサイドNMOSデバイス220の場合、NMOSデバイス220は、そのドレインノード222とソースノード224との間に固有ダイオードを備える。そのため、逆バッテリ状態において、電流が、「グランド」接続(逆バッテリ状態においては正電圧レベルを備える)から、DCモータ210を通じて、NMOSデバイス220の固有ダイオードを通じてソースノード224からドレインノード222へ、従って正電圧電源レール230(逆バッテリ状態においては負電圧レベルを備える)へと流れることが可能である。NMOSデバイス220を通る電流の流れは、単純に「逆」に作動するDCモータ210の抵抗によって制限されることになり、それによって、NMOSデバイス220が逆バッテリ状態から保護される。
【0023】
しかしながら、フライバックダイオードがDCモータ210の両端に導入される場合、逆バッテリ状態において、電流の流れに対して抵抗をもたらす直列の2つのダイオード(すなわち、フライバックダイオードおよびNMOSデバイス220の固有ダイオード)のみを用いて、電流の流れはDCモータ210を実効的にバイパスすることが可能である。具体的には、直列の2つのダイオードは逆バッテリ電圧を1.6V(0.8+0.8)にクランピングすることになり、そのような低いクランピング電圧は結果として、NMOSデバイス220を損壊するのに十分高い電流をもたらす。従って、自動車用途において、また
図2に示すように、NMOSデバイス220を損壊することなく逆バッテリ状態が持続されることを可能にするために、DCモータ210の両端にフライバックダイオードは設けられない。
【0024】
フライバックダイオードの代わりに、NMOSダイオード220のソースノード224における電圧が、ソースノード224における電圧が−5Vよりも低い場合にNMOSデバイス220を通じて電流を流すクランプ回路(図示せず)によって、たとえば、−5Vにクランピングされてもよい。有利には、閾値電圧レベル(V
REF)を、必要とされる負クランプ電圧(−5V)に等しい振幅を備えるように構成することによって、NMOSデバイス220のソースノード224における電圧がこの必要とされる負クランプ電圧まで下がるときはいつでも、検出構成要素290はその電圧を検出し、電流源280に、ブートストラップキャパシタンス240に電流を供給させ、これによって、電流がブートストラップキャパシタンス240からDCモータ210へと引き込まれることが可能になる。
【0025】
このように、ドライバ回路のオフ状態の間に電圧源などから電力を消費することなく、ドライバ回路のオフ状態に間にドライバ回路200のブートストラップキャパシタンスが(再)充電されることを可能にする、慣性負荷ドライバ回路200のための充電回路270が図示および説明された。特に、示されている例において、充電回路270は、ブートストラップキャパシタンス240を(再)充電するために慣性負荷内に蓄積されているエネルギーを利用するように構成されている。
【0026】
ここで、
図3を参照すると、慣性負荷ドライバ回路内の少なくとも1つのブートストラップ電荷蓄積素子を充電する方法の一例の簡略フローチャート300が示されている。方法は310において開始して320に進み、たとえば、
図2において示されている例におけるNMOSデバイス220のソースノード224における電圧のような、ドライバ回路のスイッチング素子の出力電圧の指示が受信される。次に、330において、負閾値電圧の指示が受信される。スイッチング素子の出力電圧の指示および負閾値電圧の指示がその後、340において比較される。350において、指示された出力電圧が指示された負閾値電圧未満である場合、方法は360に進み、ブートストラップ電荷蓄積デバイスに結合されている電流源がイネーブルされ、それによって、ドライバ回路のスイッチング素子の出力における負電圧によって電流がブートストラップ電荷蓄積デバイスに引き込まれる。逆に、350において、指示された出力電圧が指示された負閾値電圧以上である場合、方法は370に進み、電流源がディセーブルされる。方法はその後、380において終了する。
【0027】
上記の明細書において、本発明が本発明の実施形態の具体例を参照して説明された。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明のより広い技術思想および範囲から逸脱することなく、そこにさまざまな修正および変更を行うことができることは明らかであろう。
【0028】
本明細書において説明されているような接続は、たとえば介在するデバイスを介してそれぞれのノード、ユニットまたデバイスから、またはそれらへと信号を転送するのに適切な任意のタイプの接続であることができる。従って、別途暗示または提示されていない限り、接続はたとえば直接接続であってもよいし、間接接続であってもよい。接続は、単一の接続、複数の接続、一方向性接続、または双方向性接続であることに関連して例示または記載され得る。しかしながら、実施形態が異なれば、接続の実施態様は変化してもよい。たとえば、双方向性接続ではなく別個の一方向性接続が使用されてもよく、その逆であってもよい。さらに、複数の接続が、連続してまたは時分割多重方式で複数の信号を転送する単一の接続と置き換わってもよい。同様に、複数の信号を搬送する単一の接続が、これらの信号のサブセットを搬送するさまざまな異なる接続に分離されてもよい。それゆえ、信号の転送には多くの選択肢が存在する。
【0029】
特定の導電型または電位の極性が例に記述されているが、導電型および電位の極性は逆になってもよいことが理解されよう。
同じ機能を達成するための構成要素の任意の構成が、所望の機能が達成されるように効果的に「関連付けられる」。従って、本明細書における、特定の機能を達成するために結合される任意の2つの構成要素は互いに「関連付けられる」とみなすことができ、それによって、中間の構成要素またはアーキテクチャにかかわりなく、所望の機能が達成される。同様に、そのように関連付けられる任意の2つの構成要素も、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」とみなすことができる。
【0030】
さらに、上述の動作間の境界は例示にすぎないことを当業者は認識しよう。複数の動作を単一の動作に組み合わせ、単一の動作を追加の動作に分散させ、複数の動作を少なくとも部分的に時間的に重ね合わせて実行することができる。その上、代替的な実施形態は、特定の動作の複数のインスタンスを含んでもよく、動作の順序はさまざまな他の実施形態においては変更してもよい。
【0031】
さらに例として、1つの実施形態では、例示される実施例は、単一の集積回路上または同じデバイス内に位置する回路として実装されることができる。代替的には、実施例は、適切な様式で互いに相互接続される任意の数の別個の集積回路または別個のデバイスとして実装されてもよい。
【0032】
しかしながら、他の修正形態、変更形態および代替形態も可能である。従って、明細書および図面は限定的な意味においてではなく例示的に考慮されるべきである。
特許請求の範囲において、括弧間に置かれる任意の参照符号は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備えるという文言は、特許請求項内にリストされているもの以外の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに、本明細書において使用される場合、「1つ」という用語は、1つまたは2つ以上として定義される。また、特許請求の範囲にいて「少なくとも1つの」および「1つ以上の」のような前置きの語句が使用されている場合、これは、「1つの」による別の特許請求項要素の導入が、そのように導入されている特許請求項要素を含む任意の特定の特許請求項を、たとえ同じ特許請求項が前置きの語句「1つ以上の」または「少なくとも1つの」および「1つの」を含む場合であっても、1つのみのそのような要素を含む発明に限定することを暗示するように解釈されるべきではない。同じことが、定冠詞の使用にも当てはまる。別途記載されない限り、「第1の」および「第2の」のような用語は、そのような用語が説明する要素間で適宜区別するように使用される。従って、これらの用語は必ずしも、このような要素の時間的なまたは他の優先順位付けを示すようには意図されていない。特定の手段が相互に異なる特許請求項において記載されているというだけの事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。