特許第5954937号(P5954937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954937
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ファスナー打ち込み装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 15/28 20060101AFI20160707BHJP
   B21J 15/32 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   B21J15/28 E
   B21J15/32 E
   B21J15/28 F
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-100770(P2011-100770)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-232317(P2012-232317A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】池田 結輔
(72)【発明者】
【氏名】船渡 俊行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 隆大
(72)【発明者】
【氏名】中村 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】黒井 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章仁
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢丸
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−181738(JP,A)
【文献】 特開2003−001360(JP,A)
【文献】 特開2003−220441(JP,A)
【文献】 特開昭56−077042(JP,A)
【文献】 特開2007−203307(JP,A)
【文献】 特開昭57−033975(JP,A)
【文献】 特開平05−309436(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0271764(US,A1)
【文献】 特開平11−090575(JP,A)
【文献】 特開昭52−018272(JP,A)
【文献】 実開平06−039236(JP,U)
【文献】 実開平06−086838(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/28
B21J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する衝撃力付与装置と、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するロードセルと
を具備し、
前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止する
ファスナー打ち込み装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファスナー打ち込み装置であって、
ヘッド基部と、
前記ヘッド基部を第1直線に平行に動かす送り装置と、
前記第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体と、
前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばねと、
前記ファスナーを保持するチャックと
を具備し、
前記チャックは前記移動体に支持される
ファスナー打ち込み装置。
【請求項3】
請求項2に記載のファスナー打ち込み装置であって、
前記衝撃力付与装置は、
前記ヘッド基部に取り付けられたスナップ駆動部と、
前記スナップ駆動部に駆動されて前記第1直線上を往復するスナップと
を備え、
前記チャックは、前記ファスナーが前記第1直線上に配置されるように前記ファスナーを保持する
ファスナー打ち込み装置。
【請求項4】
ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する衝撃力付与装置と、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するロードセルと、
ヘッド基部と、
前記ヘッド基部を第1直線に平行に動かす送り装置と、
前記第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体と、
前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばねと、
前記移動体に支持され、前記ファスナーを保持するチャックと
を具備し、
前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止し、
前記チャックは、自動調芯ユニットを介して前記移動体に取り付けられ、
前記自動調芯ユニットは、前記移動体と前記チャックとの間において並列配置された複数の弾性体を備え、
前記複数の弾性体は、前記チャックが前記第1直線に垂直な面内で移動可能なように、且つ、前記チャックが前記第1直線に垂直な揺動軸まわりに揺動可能なように前記移動体と前記チャックとを接続する
ファスナー打ち込み装置。
【請求項5】
ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する衝撃力付与装置と、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するロードセルと、
ヘッド基部と、
前記ヘッド基部を第1直線に平行に動かす送り装置と、
前記第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体と、
前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばねと、
前記移動体に支持され、前記ファスナーを保持するチャックと
を具備し、
前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止し、
前記ファスナーの頭部が下になるように前記ファスナーが立てられる棚板と、
前記ファスナーを前記棚板から前記チャックまで搬送するファスナー搬送装置と
を更に具備し、
前記棚板に切り欠きが形成され、
前記ファスナー搬送装置は、前記ファスナーを前記ファスナーの軸方向に挟持する挟持部を備え、
前記挟持部は、前記ファスナーの前記軸方向の両端の一方及び他方にそれぞれ接触する第1部分及び第2部分を備え、
前記挟持部は、前記第1部分及び前記第2部分の上下が逆になるように回転可能に構成される
ファスナー打ち込み装置。
【請求項6】
請求項5に記載のファスナー打ち込み装置であって、
前記棚板は円形に形成され、
前記切り欠きは前記棚板の周縁部から中心に向かって延びるように形成され、
前記棚板は前記中心を通る回転軸まわりに回転する
ファスナー打ち込み装置。
【請求項7】
ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する衝撃力付与装置と、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するロードセルと、
ヘッド基部と、
前記ヘッド基部を第1直線に平行に動かす送り装置と、
前記第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体と、
前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばねと、
前記移動体に支持され、前記ファスナーを保持するチャックと
を具備し、
前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止し、
前記ヘッド基部の前記第1直線に平行な第1変位を検出する第1検出器と、
前記移動体の前記ヘッド基部に対する前記第1直線に平行な第2変位を検出する第2検出器と
を更に具備し、
前記チャックは、前記第1変位及び前記第2変位に基づいて前記ファスナーを離す
ファスナー打ち込み装置。
【請求項8】
衝撃力付与装置がファスナーに衝撃力を繰り返し付与するステップと、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するステップと、
前記反力の検出結果に基づいて、前記衝撃力付与装置による前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止するステップと
を具備する
ファスナー打ち込み方法。
【請求項9】
衝撃力付与装置がファスナーに衝撃力を繰り返し付与するステップと、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するステップと、
前記反力の検出結果に基づいて、前記衝撃力付与装置による前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止するステップと
を具備し、
前記衝撃力付与装置は、
スナップと、
前記スナップを駆動するスナップ駆動部と
を備え、
前記ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する前記ステップは、
送り装置が前記スナップ駆動部を前記ファスナーが打ち込まれるワークに向かって所定の速度で移動させるステップと、
前記スナップ駆動部が前記ワークに向かって前記所定の速度で移動しながら前記スナップが前記ファスナーを繰り返し叩くステップと
を含み、
前記所定の速度は、前記ファスナーが前記スナップで叩かれて打ち込まれる速度より遅い
ファスナー打ち込み方法。
【請求項10】
衝撃力付与装置がファスナーに衝撃力を繰り返し付与するステップと、
前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するステップと、
前記反力の検出結果に基づいて、前記衝撃力付与装置による前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止するステップと
を具備し、
挿入ヘッドが前記ファスナーをワークに形成された孔に押し込むステップと、
前記ファスナーを離すステップと
を更に具備し、
前記挿入ヘッドは、
ヘッド基部と、
第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体と、
前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばねと、
前記ファスナーを保持するチャックと
を備え、
前記チャックは前記移動体に支持され、
前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップは、
前記ヘッド基部を前記第1直線に平行に動かすステップと、
前記ばねが前記ファスナーを前記孔に押し込む力を調整するステップと
を含み、
前記ファスナーを離すステップにおいて、前記チャックが前記ファスナーを離す
ファスナー打ち込み方法。
【請求項11】
請求項10に記載のファスナー打ち込み方法であって、
前記衝撃力付与装置は、
前記ヘッド基部に取り付けられたスナップ駆動部と、
前記スナップ駆動部に駆動されるスナップと
を備え、
前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップにおいて、前記チャックは、前記ファスナーが前記第1直線上に配置されるように前記ファスナーを保持し、
前記ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する前記ステップにおいて、前記スナップ駆動部は、前記第1直線上を往復するように前記スナップを駆動する
ファスナー打ち込み方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のファスナー打ち込み方法であって、
前記チャックは、自動調芯ユニットを介して前記移動体に取り付けられ、
前記自動調芯ユニットは、前記移動体と前記チャックとの間において並列配置された複数の弾性体を備え、
前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップは、前記複数の弾性体が前記ファスナーと前記孔との芯ずれを調整するステップを含む
ファスナー打ち込み方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載のファスナー打ち込み方法であって、
切り欠きが形成された棚板に前記ファスナーの頭部が下になるように立てられた前記ファスナーをファスナー搬送装置の挟持部が前記ファスナーの軸方向に挟持するステップと、
前記頭部が上になるように前記挟持部が回転するステップと、
前記ファスナー搬送装置が移動するステップと、
前記チャックが前記ファスナーの軸部を挟持するステップと、
前記挟持部が前記ファスナーを離すステップと
を更に具備する
ファスナー打ち込み方法。
【請求項14】
請求項13に記載のファスナー打ち込み方法であって、
前記棚板は円形に形成され、
前記切り欠きは前記棚板の周縁部から中心に向かって延びるように形成され、
前記棚板が前記中心を通る回転軸まわりに回転するステップを更に具備する
ファスナー打ち込み方法。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれかに記載のファスナー打ち込み方法であって、
前記ヘッド基部の前記第1直線に平行な第1変位を検出するステップと、
前記移動体の前記ヘッド基部に対する前記第1直線に平行な第2変位を検出するステップと、
前記第1変位及び前記第2変位に基づいて前記チャックが前記ファスナーを離すステップと
を更に具備する
ファスナー打ち込み方法。
【請求項16】
請求項1乃至3のいずれかに記載のファスナー打ち込み装置であって、
前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーが着座したか否かを検出し、前記ファスナーの前記着座が検出されると前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止する
ファスナー打ち込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやリベットのようなファスナー(締結部品)を用いて被締結物を締結する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトやリベットのようなファスナー(締結部品)を用いて被締結物を締結する技術は、航空機等の組立てに利用されている。リベットを用いて被締結物を締結する打鋲装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された自動打鋲装置は、ワークにリベットを打鋲する機構を有するリベッタ本体を備える。リベッタ本体は、ワークを上下方向から挟み込むようなC字形状を有している。リベッタ本体の上側先端にはアッパーヘッド部が設けられる。リベッタ本体の下側先端にはダイが設けられる。
【0004】
図1は、上述のアッパーヘッド部351を示している。アッパーヘッド部351は、油圧シリンダ352により矢印方向に往復動可能とされている。アッパーヘッド部351の下面、つまりワーク304の上面側に対向する位置に、昇降自在なドリルスピンドル353と、昇降自在なリベットかしめ治具354と、昇降自在なシェービングカッター355が矢印方向に平行な一直線上に設けられる。ドリルスピンドル353にはドリル356が装着される。ワーク304がセットされた後、ドリルスピンドル353を下降させて、ワーク304にリベット孔304aを形成する。次に、油圧シリンダ352は、これまでドリルスピンドル352があった位置にリベットかしめ治具354を移動させる。次に、リベットかしめ治具354がリベットRを保持した状態で下降することにより、リベットRの軸部をリベット孔304aに挿入する。更に、リベッタ本体の下側先端に設けられたダイとリベットかしめ治具354とでリベットRを押圧する。これにより、リベットRの打鋲が完了する。尚、シェービングカッター355は、リベットRの頭を除去する場合に利用される。
【0005】
特許文献2及び3は、他のリベット打鋲装置を開示している。
【0006】
近年、金属部品にかわって繊維強化プラスチックのような複合材の部品が用いられるケースが増加している。例えば、航空機には多くの複合材部品が用いられるようになってきた。
【0007】
図2〜7を参照して、複合材の被締結物を手作業で締結する方法を説明する。
【0008】
図2を参照して、被締結物としてのワーク100は、重ねられた複数の複合材部品51及び52を含む。ワーク100の一方側の表面100bから他方側の表面100cへ貫通する皿穴付き孔100aを形成する。皿穴付き孔100aの皿穴部分は表面100b側に配置される。ワーク100は、皿穴付き孔100aの皿穴部分を囲む皿穴壁面100dを有する。皿穴付き孔100aの形成後、ワーク100を清掃して皿穴付き孔100aを形成したときに生じたバリを取り除く。
【0009】
図3は、ワーク100を締結するための締結部品としてのファスナー25を示す。ファスナー25は、皿ボルト20と、スリーブ40とを備える。皿ボルト20は、頭部21と、円筒部22と、ねじ部23とを備える。頭部21は、頭部上面21aと、頭部側面21bとを有する。頭部側面21bは円錐面に形成されている。円筒部22は、頭部21とねじ部23の間に配置される。円筒部22にはねじが形成されていない。ねじ部23は、端面23aを有する。頭部上面21a及び端面23aは、ファスナー25の軸方向の両端に配置される。スリーブ40は、円筒部22に被せられている。円筒部22の頭部21に近い部分がスリーブ40から露出している。スリーブ40は、頭部21側に配置された皿部41と、ねじ部23側に配置された円筒部42とを備える。皿部41は円錐形状に形成されている。
【0010】
図4を参照して、皿部41が皿穴壁面100dに突き当たるまで、ファスナー25を皿穴付孔100aに押し込む。皿部41が皿穴壁面100dに接触した状態で、頭部21は表面100bから突き出しており、ねじ部23は表面100cから突き出している。
【0011】
図5を参照して、エアーハンマー200を用いて頭部上面21aに衝撃力を繰り返し付与してファスナー25を打ち込む。
【0012】
図6を参照して、ファスナー25がワーク100に着座するまで、すなわち頭部21が皿部41を介して皿穴壁面100dに突き当たるまで、エアーハンマー200を用いて頭部上面21aに衝撃力を繰り返し付与する。ここで、ファスナー25が着座したことを作業者が音で判断してエアーハンマー200による衝撃力の付与を停止する。
【0013】
図7を参照して、ナット30をねじ部23に装着して複合材部品51及び52を締結する。
【0014】
ここでは、衝撃力を繰り返し付与することでファスナー25を打ち込んでいるため、頭部21が皿部41を介して皿穴壁面100dに突き当たるまでファスナー25を押し込む場合に比べて、複合材部品51及び52が破損するリスクが低減される。ただし、衝撃力を繰り返し付与することでファスナー25を打ち込む作業を自動化する場合、ファスナー25の着座を何らかの手段で自動的に検出する必要がある。
【0015】
また、特許文献1に開示された自動打鋲装置を複合材への打鋲に適用する場合には以下のような問題が生じ得る。上記ワーク304が複合材の場合には、リベット孔304aを形成した後、ワーク304を自動打鋲装置から取り外してリベット孔304aの形成時に生じたバリを取り除く。その後、ワーク304を再び自動打鋲装置にセットし、リベットRの軸部をリベット孔304aに挿入するためにリベットかしめ治具354を下降させる。ここで、ワーク304をセットし直しているため、リベットかしめ治具354とリベット孔304aとの間に芯ずれが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−135541号公報
【特許文献2】特開2002−28745号公報
【特許文献3】実開平5−242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、ファスナーの打ち込みを自動的に停止することが可能なファスナー打ち込み装置及びファスナー打ち込み方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0019】
本発明によるファスナー打ち込み装置は、ファスナー(25)に衝撃力を繰り返し付与する衝撃力付与装置(92)と、前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するロードセル(8)とを具備する。前記衝撃力付与装置は、前記反力の検出結果に基づいて前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止する。
【0020】
上記ファスナー打ち込み装置は、ヘッド基部(91)と、前記ヘッド基部を第1直線(L)に平行に動かす送り装置(7)と、前記第1直線に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体(931)と、前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばね(933)と、前記ファスナーを保持するチャック(95)とを更に具備する。前記チャックは前記移動体に支持される。
【0021】
前記衝撃力付与装置は、前記ヘッド基部に取り付けられたスナップ駆動部(921)と、前記スナップ駆動部に駆動されて前記第1直線上を往復するスナップ(922)とを備える。前記チャックは、前記ファスナーが前記第1直線上に配置されるように前記ファスナーを保持する。
【0022】
前記チャックは、自動調芯ユニット(94)を介して前記移動体に取り付けられる。前記自動調芯ユニットは、前記移動体と前記チャックとの間において並列配置された複数の弾性体8941)を備える。前記複数の弾性体は、前記チャックが前記第1直線に垂直な面内で移動可能なように、且つ、前記チャックが前記第1直線に垂直な揺動軸まわりに揺動可能なように前記移動体と前記チャックとを接続する。
【0023】
上記ファスナー打ち込み装置は、前記ファスナーの頭部(21)が下になるように前記ファスナーが立てられる棚板(5)と、前記ファスナーを前記棚板から前記チャックまで搬送するファスナー搬送装置(6)とを更に具備する。前記棚板に切り欠き(5a)が形成される。前記ファスナー搬送装置は、前記ファスナーを前記ファスナーの軸方向に挟持する挟持部(63)を備える。前記挟持部は、前記ファスナーの前記軸方向の両端(23a、21a)の一方及び他方にそれぞれ接触する第1部分(63a)及び第2部分(63b)を備える。前記挟持部は、前記第1部分及び前記第2部分の上下が逆になるように回転可能に構成される。
【0024】
前記棚板は円形に形成される。前記切り欠きは前記棚板の周縁部から中心に向かって延びるように形成される。前記棚板は前記中心を通る回転軸(S)まわりに回転する。
【0025】
上記ファスナー打ち込み装置は、前記ヘッド基部の前記第1直線に平行な第1変位を検出する第1検出器(81)と、前記移動体の前記ヘッド基部に対する前記第1直線に平行な第2変位を検出する第2検出器(82)とを更に具備する。前記チャックは、前記第1変位及び前記第2変位に基づいて前記ファスナーを離す。
【0026】
本発明によるファスナー打ち込み方法は、衝撃力付与装置(92)がファスナー(25)に衝撃力を繰り返し付与するステップと、前記衝撃力付与装置に作用する反力を検出するステップと、前記反力の検出結果に基づいて、前記衝撃力付与装置による前記ファスナーへの衝撃力の付与を停止するステップとを具備する。
【0027】
前記衝撃力付与装置は、スナップ(922)と、前記スナップを駆動するスナップ駆動部(921)とを備える。前記ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する前記ステップは、送り装置(7)が前記スナップ駆動部を前記ファスナーが打ち込まれるワーク(100)に向かって所定の速度で移動させるステップと、前記スナップ駆動部が前記ワークに向かって前記所定の速度で移動しながら前記スナップが前記ファスナーを繰り返し叩くステップとを含む。前記所定の速度は、前記ファスナーが前記スナップで叩かれて打ち込まれる速度より遅い。
【0028】
上記ファスナー打ち込み方法は、挿入ヘッド(9)が前記ファスナーをワーク(100)に形成された孔(100a)に押し込むステップと、前記ファスナーを離すステップとを更に具備する。前記挿入ヘッドは、ヘッド基部(91)と、第1直線(L)に平行に移動可能なように前記ヘッド基部に支持された移動体(931)と、前記第1直線に平行な方向に前記移動体を付勢するばね(933)と、前記ファスナーを保持するチャック(95)とを備える。前記チャックは前記移動体に支持される。前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップは、前記ヘッド基部を前記第1直線に平行に動かすステップと、前記ばねが前記ファスナーを前記孔に押し込む力を調整するステップとを含む。前記ファスナーを離すステップにおいて、前記チャックが前記ファスナーを離す。
【0029】
前記衝撃力付与装置は、前記ヘッド基部に取り付けられたスナップ駆動部(921)と、前記スナップ駆動部に駆動されるスナップ(922)とを備える。前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップにおいて、前記チャックは、前記ファスナーが前記第1直線上に配置されるように前記ファスナーを保持する。前記ファスナーに衝撃力を繰り返し付与する前記ステップにおいて、前記スナップ駆動部は、前記第1直線上を往復するように前記スナップを駆動する。
【0030】
前記チャックは、自動調芯ユニット(94)を介して前記移動体に取り付けられる。前記自動調芯ユニットは、前記移動体と前記チャックとの間において並列配置された複数の弾性体(941)を備える。前記ファスナーを前記ワークに形成された前記孔に押し込む前記ステップは、前記複数の弾性体が前記ファスナーと前記孔との芯ずれを調整するステップを含む。
【0031】
上記ファスナー打ち込み方法は、切り欠き(5a)が形成された棚板(5)に前記ファスナーの頭部(21)が下になるように立てられた前記ファスナーをファスナー搬送装置(6)の挟持部(63)が前記ファスナーの軸方向に挟持するステップと、前記頭部が上になるように前記挟持部が回転するステップと、前記ファスナー搬送装置が移動するステップと、前記チャックが前記ファスナーの軸部(22)を挟持するステップと、前記挟持部が前記ファスナーを離すステップとを更に具備する。
【0032】
前記棚板は円形に形成される。前記切り欠きは前記棚板の周縁部から中心に向かって延びるように形成される。上記ファスナー打ち込み方法は、前記棚板が前記中心を通る回転軸(S)まわりに回転するステップを更に具備する。
【0033】
上記ファスナー打ち込み方法は、前記ヘッド基部の前記第1直線に平行な第1変位を検出するステップと、前記移動体の前記ヘッド基部に対する前記第1直線に平行な第2変位を検出するステップと、前記第1変位及び前記第2変位に基づいて前記チャックが前記ファスナーを離すステップとを更に具備する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ファスナーの打ち込みを自動的に停止することが可能なファスナー打ち込み装置及びファスナー打ち込み方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ワークにリベット孔を形成してリベットを打鋲するためのアッパーヘッド部を示す。
図2図2は、皿穴付き孔が形成された状態を示すワークの断面図である。
図3図3は、ワークを締結するためのファスナーを示す。
図4図4は、皿穴付き孔にファスナーを押し込んだ状態を示すワークの断面図である。
図5図5は、エアーハンマーを用いてファスナーを打ち込んでいる状態を示すワークの断面図である。
図6図6は、ファスナーの打ち込みが完了した状態を示すワークの断面図である。
図7図7は、ファスナーにナットを装着した状態を示すワークの断面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態に係るファスナー打ち込み装置の概略図である。
図9図9は、棚板の平面図である。
図10図10は、制御系のブロック図である。
図11図11は、ファスナー搬送装置の挟持部がファスナーを挟持した状態を示す。
図12図12は、チャックの挟持部がファスナーを挟持した状態を示す。
図13図13は、ファスナーをワークに形成された孔に押し込む工程におけるファスナー打ち込み装置の挿入打鋲ヘッドの近傍を示す。
図14図14は、自動調芯ユニットの動作を説明するための概念図である。
図15図15は、挿入力調整ユニットの動作時のファスナー打ち込み装置の挿入打鋲ヘッドの近傍を示す。
図16図16は、ファスナーを打ち込む工程におけるファスナー打ち込み装置の挿入打鋲ヘッドの近傍を示す。
図17図17は、ファスナーを打ち込む工程を説明するための概念図である。
図18図18は、ファスナーの着座前後における衝撃力付与装置に作用する反力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付図面を参照して、本発明によるファスナー打ち込み装置及びファスナー打ち込み方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
図8は、本発明の第1の実施形態に係るファスナー打ち込み装置1を示す。互いに直交するX軸、Y軸、Z軸が定義される。Z軸は鉛直又は概ね鉛直である。ファスナー打ち込み装置1は、バキュームレール2と、台座3と、カートリッジ4と、ファスナー搬送装置6と、送り装置7と、ロードセル8と、挿入打鋲ヘッド9と、フレーム10とを備える。バキュームレール2はワーク100に固定される。ワーク100は、図2に示すように構成されている。ワーク100の表面100b及び100cは水平又は概ね水平であり、ワーク100に形成された皿穴付き孔100aの軸方向は鉛直又は概ね鉛直である。台座3は、バキュームレール2に沿ってZ軸に垂直な面内を移動可能である。カートリッジ4及びファスナー搬送装置6は、台座3上に設けられている。フレーム10は台座3に固定されている。フレーム10は送り装置7を支持する。送り装置7は、挿入打鋲ヘッド9をZ軸に平行に動かす。カートリッジ4は、複数のファスナー25を積載する機能を有する。ファスナー25は、上述のように構成される。ファスナー搬送装置6は、カートリッジ4から挿入打鋲ヘッド9までファスナー25を搬送する機能を有する。挿入打鋲ヘッドヘッド9は、ファスナー25をワーク100に形成された皿穴付き孔100aに押し込み且つ打ち込む機能を有する。
【0038】
カートリッジ4は、複数の棚板5を備える。複数の棚板5は異なる高さに配置される。ファスナー25は、頭部21が下になるように棚板9に立てられる。複数の棚板5は、ファスナー25が立てられた状態でZ軸に平行な回転軸Sまわりに回転可能である。
【0039】
ファスナー搬送装置6は、本体部61と、昇降部61と、把持部63とを備える。本体部61は、台座3に対してZ軸に垂直な面内で移動する。昇降部61は、本体部61に支持され、本体部61に対してZ軸に平行に昇降する。把持部63は、昇降部61に支持され、昇降部61に対して回転する。把持部63の回転軸は、Z軸に垂直である。
【0040】
挿入打鋲ヘッド9は、ヘッド基部91と、衝撃力付与装置92と、挿入力調製ユニット93と、自動調芯ユニット94と、チャック95とを備える。送り装置7は、ヘッド基部91を支持し、ヘッド基部91をZ軸に平行に動かす。衝撃力付与装置92は、スナップ駆動部921と、スナップ922とを備える。スナップ駆動部921は、ヘッド基部91に取り付けられている。スナップ駆動部921は、スナップ922が直線L上を往復するように駆動する。直線LはZ軸に平行である。衝撃力付与装置92は、例えば、空気を用いてスナップ922を駆動するエアーハンマー、又は、電磁的にスナップ922を駆動する電磁式ハンマーである。挿入力調製ユニット93は、移動体931と、ガイド932と、ばね933とを備える。移動体931は、Z軸に平行に移動可能なようにヘッド基部91に支持される。ガイド932は、移動体931をヘッド基部91に対してZ軸に平行に案内する。ばね933は、Z軸に平行に移動体931を付勢する。より具体的には、ばね933は移動体931をワーク100に向かって付勢する。チャック95は、自動調芯ユニット94を介して移動体931に取り付けられる。自動調芯ユニット94は、移動体931とチャック95との間において並列配置された複数の弾性体941を備える。複数の弾性体941は、チャック95がZ軸に垂直な面内で移動可能なように、且つ、チャック95がZ軸に垂直な揺動軸まわりに揺動可能なように、移動体931とチャック95とを接続する。例えば、複数の弾性体941は、チャック95がX軸に平行及びY軸に平行にそれぞれ移動可能なように、且つ、チャック95がX軸に平行な揺動軸及びY軸に平行な揺動軸まわりにそれぞれ揺動可能なように、移動体931とチャック95とを接続する。チャック95は、ファスナー25が直線L上に配置されるようにファスナー25を保持する。チャック95は、ファスナー25の軸部(例えば円筒部22)を挟持する挟持部951を備える。
【0041】
図9は、棚板5の平面図である。棚板5は円形に形成されている。回転軸Sは棚板5の中心を通っている。棚板5には、棚板5の周縁部から中心に向かって延びるように複数の切り欠き5aが形成される。複数の切り欠き5aは、棚板5の中心のまわりに放射状に配置される。ファスナー25は、切り欠き5aの上に配置される。尚、棚板5が回転しない場合は、棚板5は円形でなくてもよい。
【0042】
図10を参照して、ファスナー打ち込み装置1の制御系を説明する。ファスナー打ち込み装置1の制御系は、ロードセル8、送り装置7、衝撃力付与装置92、及びチャック95に加えて、コントローラ80と、送り量検出器81と、挿入力調整動作量検出器82とを備える。ロードセル8は、衝撃力付与装置92のスナップ駆動部921に作用する反力を検出し、検出結果をコントローラ80に出力する。送り量検出器81は、送り装置7の送り量、すなわち、ヘッド基部91のZ軸に平行な変位を検出し、検出結果をコントローラ80に出力する。挿入力調整動作量検出器82は、挿入力調製ユニット93の動作量、すなわち、移動体931のヘッド基部91に対するZ軸に平行な変位を検出し、検出結果をコントローラ80に出力する。コントローラ80は、送り装置70、衝撃力付与装置92、及びチャック95を制御する。
【0043】
以下、本実施形態に係るファスナー打ち込み方法を説明する。ファスナー打ち込み方法は、ファスナー25を挿入打鋲ヘッド9に装填する工程と、ファスナー25をワーク100に形成された皿穴付き孔100aに押し込む工程と、ファスナー25を打ち込む工程とを含む。
【0044】
はじめに、ファスナー25を挿入打鋲ヘッド9に装填する工程を説明する。
【0045】
図11は、ファスナー搬送装置6の挟持部63が棚板5に立てられたファスナー25を挟持した状態を示す。挟持部63は、挟持部第1部分63aと、挟持部第2部分63bとを備える。挟持部63は、挟持部第1部分63aが端面23aに接触し、且つ、挟持部第2部分63bが頭部上面21aに接触するように、ファスナー25をファスナー25の軸方向に挟持する。このとき、ファスナー25が切り欠き5aの上に配置されているため、挟持部63が棚板5と干渉することが防がれる。棚板5が回転するため、挟持部63は、異なる切り欠き5aの上に配置されたファスナー25を同じ位置で把持することができる。その後、ファスナー搬送装置6は、ファスナー25を棚板5からチャック95まで搬送する。ファスナー25の搬送中、本体部61が挿入打鋲ヘッド9の方へ移動し、昇降部62がファスナー25をチャック95に引き渡すのに適した高さまで上昇又は下降し、挟持部63が挟持部第1部分63a及び挟持部第2部分63bの上下が逆になるように回転する。挟持部63が回転した結果、ファスナー25の頭部21が上になる。
【0046】
図12を参照して、チャック95の挟持部951は挟持部63が挟持しているファスナー25の軸部を挟持する。ここで、挟持部63がファスナー25を軸方向に挟持しているため、挟持部951は、ファスナー25の軸部の任意の位置を挟持することができる。したがって、挟持部951は、円筒部22の頭部21に近い部分(スリーブ40から露出している部分)を挟持することができる。挟持部951は、頭部21が上になった状態、すなわち、ねじ部23がワーク100の方を向いた状態、且つ、ファスナー21が直線L上に配置された状態でファスナー25を保持する。挟持部951がファスナー25を挟持した後、挟持部63がファスナー25を離す。
【0047】
尚、ファスナー25を棚板5に立てること、ファスナー搬送装置6の挟持部63がファスナー25を軸方向に挟持すること、及び、挿入打鋲ヘッド9の挟持部951が円筒部22の頭部21に近い部分(スリーブ40から露出している部分)を挟持することは、頭部側面21b及びスリーブ40にシール材が塗布されている場合に特に有効である。
【0048】
次に、ファスナー25をワーク100に形成された皿穴付き孔100aに押し込む工程を説明する。本工程においては、静荷重によりファスナー25を皿穴付き孔100aに挿入する。
【0049】
図13を参照して、送り装置7は、ヘッド基部91をZ軸に平行に動かす。これにより、挿入打鋲ヘッド9の全体がワーク100に接近する。
【0050】
図14を参照して、ファスナー25と皿穴付き孔100aとの間に芯ずれがある場合、自動調芯ユニット94の複数の弾性体941がその芯ずれを調整する。したがって、ワーク100をファスナー打ち込み装置1にセットするときの位置合わせが多少粗い場合であっても、ファスナー25が正しい姿勢で皿穴付き孔100aに挿入される。
【0051】
図15を参照して、送り装置7がヘッド基部91をZ軸に平行に動かし続けることで、ファスナー25が皿穴付き孔100aに押し込まれる。このとき、ばね933がファスナー25を皿穴付き孔100aに押し込む力を調整する。したがって、ファスナー25及びワーク100に過大な力が作用することが防止される。
【0052】
送り装置7がヘッド基部91をZ軸に平行に動かし続けるため、ファスナー25の皿部41がワーク100の皿穴壁面100dに突き当たってファスナー25、チャック95、自動調芯ユニット94、及び移動体931が停止した後は、送り量検出器81が検出するヘッド基部91の変位の時間変化率と挿入力調整動作量検出器92が検出する移動体931のヘッド基部91に対する変位の時間変化率とが同じになる。コントローラ80は、ヘッド基部91の変位と移動体931のヘッド基部91に対する変位とに基づいてファスナー25の押し込みが完了したと判断し、チャック95にファスナー25を離させる。
【0053】
次に、ファスナー25を打ち込む工程を説明する。本工程においては、衝撃荷重を繰り返し付与してファスナー25を打ち込む。
【0054】
図16を参照して、コントローラ80は、チャック95にファスナー25を離させた後、送り装置7にヘッド基部91をZ軸に平行に移動させながら、衝撃力付与装置92にファスナー25に衝撃力を繰り返し付与させる。衝撃力付与装置92のスナップ駆動部921は、直線L上を往復するようにスナップ922を駆動してファスナー25に衝撃力を繰り返し付与する。ファスナー25を皿穴付き孔100aに押し込む工程においてチャック95がファスナー25を直線L上に配置されるように保持していたため、ファスナー25を押し込む工程からファスナー25を打ち込む工程への移行がスムーズである。
【0055】
尚、ファスナー25を打ち込む工程においては、チャック95がワーク100の表面100bに突き当たっているため、移動体931、自動調芯ユニット94、及びチャック95は停止しており、ヘッド基部91及び衝撃力付与装置92だけがワーク100の方へ移動する。
【0056】
図17を参照して、ファスナー25を打ち込む工程において、チャック95の挟持部951はファスナー25から離れており、スナップ922が頭部上面21aを繰り返し叩く。
【0057】
コントローラ80は、送り装置7にヘッド基部91及びスナップ駆動部921をワーク100に向かって所定の送り速度で移動させる。ヘッド基部91及びスナップ駆動部921がワーク100に向かって所定の送り速度で移動しながら、スナップ922がファスナー25を繰り返し叩いて打ち込む。所定の送り速度は、ファスナー25がスナップ922で叩かれて打ち込まれる速度より遅い速度である。所定の送り速度は予め設定される。これにより、ファスナー25を打ち込む際の底付きが防止される。
【0058】
図18は、ファスナー25の着座前後における衝撃力付与装置92に作用する反力の変化を示すグラフである。ファスナー25が着座すると、すなわち頭部21が皿部41を介して皿穴壁面100dに突き当たると、反力が急激に大きくなる。コントローラ80は、ロードセル8による反力の検出結果に基づいて、衝撃力付与装置92にファスナー25への衝撃力の付与を停止させ、送り装置7を停止させる。衝撃力付与装置92に作用する反力の検出結果に基づいてファスナー25への衝撃力の付与を停止するため、ファスナー25の打ち込みが自動的に停止される。
【0059】
以上、実施の形態を参照して本発明によるファスナー打ち込み装置及びファスナー打ち込み方法を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ガイド932及びばね933が設けられなくてもよい。この場合、移動体931がヘッド基部91に固定される。自動調芯ユニット94が設けられなくてもよい、この場合、チャック95が移動体931に固定される。ファスナー25を押し込む機能と、ファスナー25を打ち込む機能とを別々のヘッドに持たせてもよい。挿入力調整ユニット93、自動調芯ユニット94、チャック95が挿入打鋲ヘッド9に設けられなくてもよい。この場合、本発明によるファスナー打ち込み装置は、ファスナー25の打ち込み専用に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1…ファスナー打ち込み装置
2…バキュームレール
3…台座
4…カートリッジ
5…棚板
5a…切り欠き
6…ファスナー搬送装置
61…本体部
62…昇降部
63…挟持部
63a…挟持部第1部分
63b…挟持部第2部分
7…送り装置
8…ロードセル
80…コントローラ
81…送り量検出器
82…挿入力調整動作量検出器
9…挿入打鋲ヘッド
91…ヘッド基部
92…衝撃力付与装置
921…スナップ駆動部
922…スナップ
93…挿入力調製ユニット
931…移動体
932…ガイド
933…ばね
94…自動調芯ユニット
941…弾性体
95…チャック
951…挟持部
10…フレーム
25…締結部品(ファスナー)
20…皿ボルト
21…頭部
21a…頭部上面
21b…頭部側面(円錐面)
22…円筒部
23…ねじ部
23a…端面
30…ナット
40…スリーブ
41…皿部(円錐部)
42…円筒部
51、52…複合材部品
100…ワーク(被締結物)
100a…皿穴付き孔
100b、100c…表面
100d…皿穴壁面
200…エアーハンマー
304…ワーク
304a…リベット孔
351…アッパーヘッド部
352…油圧シリンダ
353…ドリルスピンドル
354…リベットかしめ治具
355…シェービングカッター
356・・・ドリル
R…リベット
S…回転軸
L…直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18