(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954986
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/18 20060101AFI20160707BHJP
G02B 7/00 20060101ALI20160707BHJP
G02B 23/02 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
G02B7/18
G02B7/00 G
!G02B23/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-285907(P2011-285907)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-134432(P2013-134432A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(74)【代理人】
【識別番号】100074538
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 徹
(72)【発明者】
【氏名】武藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】林田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】内田 茂樹
【審査官】
越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−243930(JP,A)
【文献】
特開2000−197982(JP,A)
【文献】
特開2011−033668(JP,A)
【文献】
実開昭58−057815(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/18
G02B 7/00
G02B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル(5)を備えた光学装置において、
プリズムの一部を押さえるプリズム押さえ(6)と、
そのプリズムの他の部分を一端側で保持するとともに、他端側でレチクル(5)を保持するプリズムボックス(2)と、
プリズム押さえ(6)、プリズム、プリズムボックス(2)及びレチクル(5)を内側に収容する鏡筒(8)を有し、
プリズム押さえ(6)のネジ部分(6a)とプリズムボックス(2)の一端側の延長部(2b)のネジ部(2c)とを係合させて、プリズムをプリズム押さえ(6)とプリズムボックス(2)の一部との間で保持し、
鏡筒(8)の内周面に段部(8b)を形成し、その鏡筒(8)の内周面の段部(8b)にプリズムボックス(2)の一端を突き当てて、押え環(7)と鏡筒(8)の段部(8b)により挟み込む形でプリズムボックス(2)を所定位置に保持することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
押え環(7)のネジ部(7a)と鏡筒(8)のネジ部(8a)を係合させるとともに、プリズムボックス(2)の他端側のテーパ部(2a)と押え環(7)のテーパ部(7b)とを係合させて、鏡筒(8)と押え環(7)の間でプリズムボックス(2)を保持することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
プリズムがシュミットプリズム(3)と補助プリズム(4)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
鏡筒(8)の内周面の段部(8b)と押え環(7)の間でプリズムボックス(2)を鏡筒(8)の内周面の中に保持した状態で、プリズム(3)がプリズムボックス(2)の一端とプリズム押え(6)によりプリズムボックス(2)の一端側の延長部(2b)の中に保持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクル(照準儀)を備えた光学装置、例えば、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡のような光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レチクル(照準儀)や、正立型プリズム(シュミット・プリズム)を備えた望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡などの光学装置が知られている。
【0003】
また、光学式の照準具は、拳銃、猟銃又はライフル銃などに取り付けられている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2632976号公報
【特許文献2】特表2010−528251号公報
【特許文献3】特開2005−316258号公報
【特許文献4】実開昭55−103611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光学装置では、シュミットプリズムのところで、ガタが発生し、レチクルの位置がずれてしまうことがあった。とくに、シュミットプリズムは、その形状から保持が難しく、しかも、確実に保持するには複雑な形状の部品が必要となり、低コストで少量生産をすることには適さなかった。
【0006】
また、レチクルを有する光学系の場合、プリズムユニットが衝撃などにより動いてしまうことがある。そのため、光学系の軸とレチクルの関係性が崩れ、照準ずれが生じることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、安価でかつ容易にプリズムを保持することができる光学装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、レチクルの位置がずれないようにし、耐衝撃性に優れた状態でプリズムを保持することが可能である光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決手段を例示すると、特許請求の範囲に記載の光学装置である。すなわち、
(1) レチクルを備えた光学装置において、
プリズムの一部を押さえるプリズム押さえと、
そのプリズムの他の部分を一端側で保持するとともに、他端側でレチクルを保持するプリズムボックスと、
プリズム押さえ、プリズム、プリズムボックス及びレチクルを内側に収容する鏡筒を有し、
プリズム押さえのネジ部分とプリズムボックスの一端側の延長部のネジ部とを係合させて、プリズムをプリズム押さえとプリズムボックスの一部との間で保持することを特徴とする光学装置。
【0010】
(2) 押え環のネジ部と鏡筒のネジ部を係合させるとともに、プリズムボックスの他端側のテーパ部と押え環のテーパ部とを係合させて、鏡筒と押え環の間でプリズムボックスを保持することを特徴とする前述の1に記載の光学装置。
【0011】
(3) プリズムがシュミットプリズムと補助プリズムを有することを特徴とする前述の1又は2に記載の光学装置。
【0012】
(4) 鏡筒の内周面の段部と押え環の間でプリズムボックスを保持することを特徴とする前述の1〜3のいずれかに記載の光学装置。
【0013】
(5) レチクルを備えた光学装置において、
プリズムの一部を押さえるプリズム押さえと、
そのプリズムの他の部分を一端側で保持するとともに、他端側でレチクルを保持するプリズムボックスと、
プリズム押さえ、プリズム、プリズムボックス及びレチクルを内側に収容する鏡筒を有し、
押え環のネジ部と鏡筒のネジ部を係合させるとともに、プリズムボックスの他端側のテーパ部と押え環のテーパ部とを係合させて、鏡筒と押え環の間でプリズムボックスを保持することを特徴とする光学装置。
【0014】
(6) プリズムがシュミットプリズムと補助プリズムを有することを特徴とする前述の5に記載の光学装置。
【0015】
(7) 鏡筒の内周面の段部と押え環の間でプリズムボックスを保持することを特徴とする前述の5〜6のいずれかに記載の光学装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プリズム押さえにネジ部を設け、プリズムボックスの一端の延長部に設けたネジ部とプリズム押さえのネジ部とを係合させることで、安価で容易にプリズムを保持することができる。
【0017】
また、押え環の外周面にネジ部を設け、かつ、鏡筒の内周面にネジ部を設け、それらのネジ部を係合させ、さらに、押え環の内周面およびプリズムボックスの外周面にテーパ部を設け、それらのテーパ部を係合させることで、鏡筒内におけるプリズムボックスの位置ずれを防止し、耐衝撃性に優れた保持を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るレチクル付きの望遠鏡の組立状態を示す断面図。
【
図2】
図1に示したレチクル付きの望遠鏡のうち、プリズムボックス、プリズム押さえ、プリズム及びレチクルの分解状態を斜め方向から見た斜視図。
【
図3】
図1に示したプリズムボックス、プリズム押さえ、プリズム及びレチクルの組立状態(押え環は組立前の状態)を示す斜視図。
【
図4】
図1に示したプリズムボックス、プリズム及びレチクルの組立状態の平面図で、プリズム押さえのみは、組立前の状態が断面で示されている。
【
図5】
図1に示したプリズムボックス、プリズム押さえ、プリズム及びレチクルの組立状態(押え環は、組立前の状態)を示す、軸心方向に沿った断面図。
【
図6】
図1に示したプリズムボックス、押え環、プリズムの組立状態(プリズム押さえは組立前の状態)を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る光学装置として、例えば拳銃、猟銃又はライフル銃などに取り付けられるレチクル付きの望遠鏡を一例として説明する。
【0020】
図1〜6に示す実施例では、プリズムユニット1が、レチクル付き望遠鏡として構成されている。
【0021】
図1は、レチクル付きの望遠鏡として構成されたプリズムユニット1の軸心方向に沿った断面を示す。
【0022】
図2は、そのようなレチクル付きの望遠鏡として構成されたプリズムユニット1のうち、プリズムボックス2とそれに関連する構成部品の分解状態を斜め方向から見て示している。換言すれば、
図2はプリズムボックス2とそれに関連する構成部品の組立前の状態を示している。
【0023】
図3は、プリズムボックス2とそれに関連する構成部品の組立後の状態(ただし押え環7は組立前の状態)を示す。
【0024】
図4〜5は、プリズムボックス2とそれに関連する構成部品の軸心方向に沿った断面図であり、
図4はプリズム押さえ6のみを断面で示し、それ以外の構成部品は平面で示している。
図5はプリズムボックス2とそれに関連する構成部品の全体を断面で示している。
【0025】
図6は、
図3とは別の視点から、プリズムボックス2とそれに関連する構成部品の組立後の状態(ただしプリズム押さえ6は組立前の状態)を示している。
【0026】
図1〜6において、プリズムユニット1は、プリズムボックス2、プリズム(例えば、正立型プリズムすなわちシュミットプリズム3と、補助プリズム4と、それらの間に挟まれた遮光板9からなるプリズム)、レチクル5およびプリズム押さえ6を有し、レチクル付き望遠鏡を構成する。
【0027】
プリズムが、プリズムボックス2の一端とプリズム押さえ6との間に収められた状態で、プリズム押さえ6の内周側のネジ部6aと、プリズムボックス2の一端の延長部2bの先端の円弧状部分に形成されたネジ部2cとを係合させることで、プリズムを所定の位置に正確かつ確実に保持している。
【0028】
プリズムボックス2の他端の外周面にはテーパ部2aが形成されており、押え環7の内周面にはテーパ部7bが形成されており、必要に応じて、それらのテーパ部2a、7bを互いに係合させるようになっている。さらに、押え環7の外周面にネジ部7aが形成され、鏡筒8の内周面にネジ部8aが形成されており、必要に応じて、それらのネジ部7a、8aを互いに係合させるようになっている。
【0029】
組立の際に、このようなテーパ部2a、7bとネジ部7a、8aの係合によって、プリズムボックス2が鏡筒8の内周面内を
図1の左方に向けて摺動させられ、プリズムボックス2の一端(
図1の左端)が鏡筒8の内周面の段部8bに突き当り、そこで、押え環7と鏡筒8(とくにその段部8b)により挟み込む形で所定の位置にプリズムボックス2は保持される。その際、押え環7及び鏡筒8のネジ結合を実施するとともに、押え環7及びプリズムボックス2のテーパ係合を実施することで、プリズムボックス2は、それらの間で強固に締め付けられる。
【0030】
組立のとき、プリズムボックス2が鏡筒8の内周面を(
図1の左方向に)摺動していくと、プリズム押さえ6も、鏡筒8の別の内周面(
図1の左側に位置する、少し径が小さい内周面)を摺動しつつ移動していくようになっている。
【0031】
遮光板9がシュミットプリズム3と補助プリズム4の間に挟まれて固定されている。
【0032】
前述の実施例においては、プリズム押さえ6の内周側にネジ部6aを設け、プリズムボックス2の一端側の延長部2bの先端の円弧部分のネジ部2cとを係合させることで、安価で容易なプリズムの保持を実現している。
【0033】
また、押え環7の内周側のテーパ部7bおよびプリズムボックス2の他端の外周側のテーパ部2aを係合させることで、プリズムボックス2の位置が鏡筒8内の所定位置からずれないようにしている。この結果、耐衝撃性に優れた保持が可能となった。
【符号の説明】
【0034】
1プリズムユニット
2 プリズムボックス
3 シュミットプリズム
4 補助プリズム
5 レチクル
6 プリズム押さえ
7 押え環
8 鏡筒
9 遮光板