(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954989
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】N−アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造方法及びN−アルキル(メタ)アクリルアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20160707BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20160707BHJP
C07C 233/09 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
C07C231/02
C07B61/00 300
C07C233/09 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-523901(P2011-523901)
(86)(22)【出願日】2009年8月17日
(65)【公表番号】特表2012-500273(P2012-500273A)
(43)【公表日】2012年1月5日
(86)【国際出願番号】US2009053973
(87)【国際公開番号】WO2010021956
(87)【国際公開日】20100225
【審査請求日】2012年7月25日
【審判番号】不服2014-25845(P2014-25845/J1)
【審判請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】12/194,267
(32)【優先日】2008年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーリス,ジョン,ディ.
【合議体】
【審判長】
佐藤 健史
【審判官】
瀬良 聡機
【審判官】
齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−26849(JP,A)
【文献】
特開2007−230966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C231/02,233/09
CA PLUS,REGISTRY,CASREACT STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)にRはイソプロピル、R’はメチルとして示される構造を有するN−アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造方法であって:
【化1】
N−アルキルアミンとしてイソプロピルアミンを含む水溶液を提供する工程;
沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを生成させるために前記水溶液に
、20℃〜30℃の範囲の温度で、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムまたはそれらの組み合わせの塩基及びN−アルキルアミンと等モル量の(アルキル)アクリル酸無水物を加える工程;及び
沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを前記水溶液から除去するために前記水溶液をろ過
し真空乾燥する工程を含む方法。
【請求項2】
式(1)にRはイソプロピル、R’はメチルとして示される構造を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドの製造方法であって:
【化1】
N−アルキルアミンとしてイソプロピルアミンを含む水溶液を提供する工程;
沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを生成させるために前記水溶液に
、20℃〜30℃の範囲の温度で、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムまたはそれらの組み合わせの塩基及びN−アルキルアミンと等モル量の(メタ)アクリル酸無水物を加える工程;
沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを前記水溶液から除去するために前記水溶液をろ過する工程;及び
N−アルキル(メタ)アクリルアミドからいかなる混入物質をも除去するために、前記ろ過された沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを洗浄
し真空乾燥する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的にN−アルキル(アルキル)アクリルアミドに関し、より具体的には、本開示はN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを製造する方法及びN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン、水酸化物、アルコキシドなどの求核剤の存在下では無水物は比較的反応性である。アクリル酸無水物、及びメタクリル酸無水物のアミンなどの求核剤との反応は、対応するアクリル酸又はメタクリル酸及びそれに続く他のモノマーとしての求核付加生成物を生成する。生成されるN−アルキル(アルキル)アクリルアミドはポリマー性ガス水和物阻害剤のための構築用ブロックとして有用である。それにもかかわらず、これらの反応は最終生成物の精製及び副反応の制御という付随する問題を有し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は一般的にN−アルキル(アルキル)アクリルアミドに関する。一般的な実施形態において、本開示は、N−アルキル(アルキル)アクリルアミド製造のための方法を提供する。この方法は、N−アルキルアミンを含む水溶液を提供すること、並びに沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを形成するために、前記水溶液に塩基及び無水(アルキル)アクリル酸を加えることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
1実施形態において、前記方法は前記水溶液から沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを除去するために前記水溶液をろ過することを更に含む。前記ろ別されたN−アルキル(アルキル)アクリルアミド沈殿は、N−アルキル(アルキル)アクリルアミドから混入物質を除去するために更に洗浄される。
【0005】
1実施形態において除去された混入物質は実質的に(アルキル)アクリル酸塩副産物である。
【0006】
1実施形態において、前記(アルキル)アクリル酸無水物及び塩基は、30℃以下の温度で前記水溶液に加えられる。
【0009】
1実施形態において、前記N−アルキルアミンは
、イソプロピルアミ
ンである。
【0011】
1実施形態において、前記塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム又はそれらの組み合わせである。
【0012】
1実施形態において、沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドは以下の構造を有する:
【0015】
1実施形態において、R’は
水素及びメチルよりなる群から選ばれ、Rはイソプロピルである。
【0016】
他の実施形態では、本開示はN−アルキル(メタ)アクリルアミドを製造するための方法を提供する。この方法はN−アルキルアミンを含む水溶液を提供すること、及び沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを生成させるために前記水溶液に塩基及び(メタ)アクリル酸無水物の量を加えることを含む。
【0017】
1実施形態において、前記方法は沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを前記水溶液から除去するために水溶液をろ過することを更に含む。
【0018】
1実施形態において、前記方法は、N−アルキル(メタ)アクリルアミドからいかなる混入物質をも除去するために、前記ろ過されたN−アルキル(メタ)アクリルアミドの沈殿を洗うことを更に含む。
【0019】
本開示の利点は、N−アルキル(アルキル)アクリルアミドを製造する改良された方法を提供することである。
【0020】
本開示の他の利点は、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを製造する改良された方法を提供することである。
【0021】
本明細書において、付加的な特性及び利点が記載され、及び以下の「発明の好適な実施形態」から明白となるであろう。
【0022】
本開示は一般的にN−アルキル(アルキル)アクリルアミドに関し、より具体的には、本開示はN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを製造する方法及びN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを使用する方法に関する。一般的実施形態では、N−アルキルアミンと(アルキル)アクリル酸無水物(例えば、アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸無水物)との反応からN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを生成させるために水性のプロセスが用いられる。生成されるN−アルキル(アルキル)アクリルアミドは、それに続くラジカル重合反応及び他の同様の化学反応における使用に適した性質を有する。
【0023】
本開示の実施形態におけるN−アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造方法の、文献に記載された従来の方法に対するいくつかの利点は、精製方法の容易さ及び副反応の制御に関する。加えて、溶媒(例えば水)の不揮発性は、反応の間に他の利点を提供する。この反応は比較的低い温度で遂行でき、したがって、所望の付加生成物が、アミンとアクリル酸の間のマイケル付加型反応などの、他の潜在的な、より高温での副反応生成物よりも好適に生成される。
【0024】
本明細書において使用される「アルキル」とは、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素鎖から単一の水素原子を除去することにより誘導される1価の基を意味する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−及びイソ−プロピル、n−、sec−、イソ−及びtert−ブチルなどが挙げられる。
【0025】
一般的実施形態において、本開示はN−アルキル(アルキル)アクリルアミドの製造方法を提供する。この方法は、N−アルキルアミンを含む水溶液を提供すること、及び前記水溶液に塩基及び無水(アルキル)アクリル酸を加えることを含む。前記塩基及び前記(アルキル)アクリル酸無水物は、前記水溶液を撹拌しながら、前記水溶液に加え得る。塩基
及び(アルキル)アクリル酸無水物
は前記水溶液
に、順次に又は同時に加え得る。代替的に、塩基及び(アルキル)アクリル酸無水物の水溶液を調製することができ、次いで
、N−アルキルアミンを加えることができる。アミンと
(アルキル)アクリル酸無水物の反応により生成されたN−アルキル(アルキル)アクリルアミド単量体は、比較的純粋な生成物として反応混合物から沈殿することができる。
【0026】
1実施形態では、ほぼ等モル量の前記(アルキル)アクリル酸無水物及び前記塩基の両方を前記水溶液に加え得る。前記塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの任意の適切な塩基であってよい。前記(アルキル)アクリル酸無水物及び前記塩基は、約30℃未満の温度で前記水溶液中に添加及び/又は混合され得る。他の実施形態では、前記(アルキル)アクリル酸無水物及び前記塩基は約20℃〜約30℃の範囲の温度で前記水溶液中に添加及び/又は混合され得る。
【0027】
1実施形態において、前記方法は、前記沈殿したN−アルキル(アルキル)アクリルアミドを水溶液から除去するために前記水溶液をろ過することを更に含む。前記方法は、N−アルキル(アルキル)アクリルアミドから混入物質を除去するために、前記ろ別されたN−アルキル(アルキル)アクリルアミド沈殿を更に洗浄することを含む。例えば、固体/沈殿した生成物は、生成物に混入する、いかなる(アルキル)アクリル酸塩副生物をも除去するために、ろ過され、水洗されることができる。
【0028】
前記(アルキル)アクリル酸無水物は、以下の式のジ(アルキル)アクリル酸無水物であることができる:
【0030】
式中、R’はH又は1〜8の炭素単位の直鎖状炭化水素若しくは1〜8の炭素単位の分岐状炭化水素である。好適な実施形態では、前記(アルキル)アクリル酸無水物は、(メタ)アクリル酸無水物(R’はH又はメチル)であり、及び最終沈殿生成物はN−アルキル(メタ)アクリルアミドである。N−アルキル(アルキル)アクリルアミド単量体のためのメタクリル酸無水物原料は市販品として入手可能であるか、又は多くの周知のプロセスを用いて製造し得る。
【0031】
1実施形態において、前記N−アルキルアミンはH
2N(R)の式を有する化合物を含み、式中Rは1〜8の炭素単位の直鎖状炭化水素又は1〜8の炭素単位の分岐状炭化水素などのアルキル基である。環状アルキル基は分岐状炭化水素の群の下位セットであることに注意されたい。前記Rを含むアルキル基は、残存する炭素数が1〜8である限り、酸素及び/又はイオウであってよいヘテロ原子を含み得る。1実施形態では、前記N−アルキルアミンはメチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、1−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−メチル−1−プロピルアミン、2−メチル−1−プロピルアミン又はそれらの組み合わせであることができる。
【0032】
1実施形態において、前記N−アルキル(アルキル)アクリルアミドは以下の構造を有する:
【0034】
式中、R’はH又は1〜8の炭素単位の直鎖状炭化水素及び1〜8の炭素単位の分岐状炭化水素よりなる群から選ばれ、並びにR’は水素及びメチルよりなる群から選ばれ、1実施形態では、R’はメチルであり、Rはイソプロピルである。
【0035】
他の実施形態では、本開示はN−アルキル(メタ)アクリルアミドの製造方法を提供する。この方法は、N−アルキルアミンを含む水溶液を提供すること、及び沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを生成させるために、この水溶液に塩基及び(メタ)アクリル酸無水物の量を加えることを含む。前記方法は、前記水溶液から沈殿したN−アルキル(メタ)アクリルアミドを除去するために、前記水溶液をろ過すること、及びN−アルキル(メタ)アクリルアミドからいかなる混入物質をも除去するために、ろ過されたN−アルキル(メタ)アクリルアミドの沈殿を洗浄することを更に含む。
【実施例】
【0036】
制限としてではなく、説明の手段として、以下の実施例は本開示のさまざまな実施形態を説明するものであり、及び更に本開示によるN−アルキル(アルキル)アクリルアミドにより遂行された実験的試験を説明するものである。
【0037】
実施例1
以下の実験はN−イソプロピルメタクリルアミド(IPMA)を生成させるために水性反応条件を利用した:
【0038】
32gの水を、機械的撹拌子、コンデンサー及び温度計を装備した3頚の250mLの樹脂フラスコに入れた。氷浴を介してこの水を5〜9℃に冷却した。この冷却された水に撹拌しながら6gのイソプロピルアミンをゆっくりと加えた。
【0039】
以下の成分を冷却され、撹拌されたイソプロピルアミン溶液に、別個の注射器ポンプを介して、個別に同時に加えた:1)メタクリル酸無水物(16.53g、94%純度)及び2)水酸化ナトリウム(8.12g)の50wt%水溶液。メタクリル酸無水物及び水酸化ナトリウム溶液は、反応温度を30℃未満に保ちながら、それぞれ1時間にわたって加えた。この時間の間に、反応混合物中に沈殿が形成された。全ての試薬を添加後に、反応混合物を更に1時間撹拌し、次いで反応容器の内容物をろ過した。回収された固体を真空乾燥後に、10.7gの生成物(IPMA)が得られた。核磁気共鳴(NMR)分析により生成物は93%のIPMA、4%の水、及び3%の不純物を含むことが明らかにされた。
【0040】
本明細書に記載された現在の好適な実施形態に対する、さまざまな変更及び修正が当業者にとり明白であることを理解されたい。かかる変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲を逸脱することなく、並びに意図された利点を損なうことなく行い得る。したがって、かかる変更及び修正は添付された請求項に包含されることが意図される。