(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の食品包装シート用原紙及び食品包装シートの実施の形態を詳説する。
【0016】
<食品包装シート用原紙>
本発明の食品包装シート用原紙は、紙力剤としてポリアクリルアミドを含有する。当該食品包装シート用原紙は、通常、上記紙力剤の他、パルプ及び填料等を含むパルプスラリーを抄紙して製造される。
【0017】
(パルプ)
パルプとしては、公知のものを用いることができ、例えばバージンパルプ、古紙パルプ又はこれらを組み合わせたもの等を適宜用いることができる。
【0018】
バージンパルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP);ケナフ、麻、三椏、楮、バガス、竹、雁皮等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等が挙げられる。
【0019】
古紙パルプとしては、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0020】
これらのパルプの中でも、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が好ましく、LBKPを単独で用いることがより好ましい。LBKPは、繊維長が短く、得られる紙の繊維間空隙が比較的少なくなるため、当該食品包装シート用原紙の密度を向上することができ、保温性及び断熱性を向上することができる。LBKPの含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。LBKPの配合量が上記下限未満の場合、上記樹脂組成物を塗工する際のサイズ性を得るためにサイズ剤を多く配合する必要があり、このサイズ剤が抄紙機内部で異物化するおそれがある。
【0021】
(紙力剤)
当該食品包装シート用原紙は、紙力剤として、ポリアクリルアミド(PAM)を含有する。ポリアクリルアミドとしては、例えばアニオン性ポリアクリルアミド、両性(カチオン性)ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、自己定着機能を有し、抄紙系内の電荷を安定的に維持することができる両性ポリアクリルアミドが好ましい。
【0022】
また、ポリアクリルアミドは、主成分であるアクリル部分が油脂成分に対し耐性があるため、当該食品包装シート用原紙に耐油性を付与することができる。加えて、ポリアクリルアミドは、パルプ繊維間の隙間を埋めるように定着するため、当該食品包装シート用原紙の透気度を高めることができ、保温性及び断熱性を向上することができる。
【0023】
ポリアクリルアミドの含有量としては、固形分換算でパルプに対して1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、2.5質量%以上3.5質量%以下がさらに好ましい。ポリアクリルアミドの含有量が上記上限を超えると、凝集欠陥等が増え、操業性が低下するおそれや、密度が高くなることでしなやかさが低下し、印刷適性が悪化するおそれがある。一方、ポリアクリルアミドの含有量が上記下限未満の場合、透気度が低下するため保温性及び断熱性が低下したり、紙力が低下して紙間剥離が生じたりするおそれがある。
【0024】
紙力剤としてポリアクリルアミドを使用する場合には、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂系紙力剤を併用することが好ましい。ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂系紙力剤は、パルプ原料中に存在するアニオン性夾雑物等を封鎖する機能を有する。そのため、分子量の大きいポリアクリルアミドがパルプ原料中に存在するアニオン性夾雑物等を取り込むことを防止することができ、ポリアクリルアミドのパルプへの定着率を向上することができる。その結果、優れた紙力増強効果が得られ、当該食品包装シート用原紙の保温性及び断熱性を向上することができる。
【0025】
ポリアクリルアミド(A)とポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂系紙力剤(B)との含有比率としては、A>Bとすることが好ましい。A≦Bの場合は、Bの添加効果が十分に得られないおそれがある。
【0026】
上記ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂系紙力剤の含有量としては、A>Bとなる範囲で、固形分換算でパルプに対して0.08質量%以上0.70質量%以下が好ましく、抄紙時に電荷測定機(BTG Muetek社製「Gmbh PCD−T3」)にて測定した、パルプを除くその他薬品を含んだ濾過液の電荷が、−20meq/l以上+20meq/l以下となるように調整することがさらに好ましい。上記濾過液の電荷が−20meq/l未満であるとアニオン性夾雑物等の封鎖が進行せず、ポリアクリルアミドのパルプへの定着率が低下するおそれがある。一方、上記濾過液の電荷が+20meq/lを超えると、パルプ原料を含んだスラリー中に含まれる油脂の凝集物が欠点として紙に抄き込まれることにより、ピッチが生じやすくなるおそれがある。
【0027】
(サイズ剤)
当該食品包装シート用原紙には、サイズ剤が含有されていることが好ましい。当該食品包装シート用原紙がサイズ剤を含有することにより、保温性及び断熱性を向上することができる。サイズ剤としては、例えばロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、各種エマルジョンサイズ剤、澱粉等が挙げられる。これらの中でも、耐水性の付与効果が大きく、当該食品包装シート用原紙の表面を艶面に形成する場合の艶面の平滑性を向上することができるロジン系サイズ剤が好ましい。
【0028】
ロジン系サイズ剤としては、例えば変性ロジン、強化ロジン、鹸化型ロジン、乳化型ロジン等が挙げられる。これらの中でも、十分なサイズ効果を有し、パルプスラリーへの希釈性が良好な鹸化型ロジンがより好ましい。
【0029】
サイズ剤の含有量としては、固形分換算でパルプに対して、1.0質量%以上3.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、1.7質量%以上2.3質量%以下がさらに好ましい。サイズ剤の含有量が上記上限を超えると、紙の表面性が低下し操業性が低下するおそれがある。一方、サイズ剤の含有量が上記下限未満の場合、十分なサイズ効果が得られず保温性及び断熱性が低下するおそれや、ドライヤーにおける剥離不良が生じることにより操業性が低下するおそれがある。
【0030】
(その他の添加剤)
当該食品包装シート用原紙には、上記パルプ及び紙力剤の他に、本発明の目的を損なわない範囲でその他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば上記以外の紙力剤;タルク、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、水和ケイ素、水和ケイ酸(ホワイトカーボン)、尿素−ホルマリンポリマー微粒子、再生粒子、シリカ複合再生粒子等の填料;硫酸バンド、ポリエチレンイミン等の凝結剤;ポリアクリルアミドやその共重合体等の凝集剤;電荷調整剤;消泡剤等が挙げられる。
【0031】
<食品包装シート用原紙の製造方法>
当該食品包装シート用原紙の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を用いればよい。具体的には、例えば上記パルプ及び紙力剤等を含有するパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーを抄紙機で抄紙した後、プレスパート及びプレドライヤーパートに供し、必要に応じてアンダーコーターパートにて表面処理を行い、乾燥後、カレンダー処理を施す方法等が挙げられる。
【0032】
当該食品包装シート用原紙は、カレンダー処理が施されていることが好ましい。カレンダー処理としては、例えばソフトカレンダー、カレンダー、スーパーカレンダー等を用いて処理する方法が挙げられる。これらのなかでも、紙厚を落とさずに平滑度や光沢を上げることができるソフトカレンダーが好ましい。このようにカレンダー処理を施すことにより、当該食品包装シート用原紙の平滑性及び密度が向上し、透気度が高まるため、当該食品包装シート用原紙の保温性及び断熱性を向上することができる。
【0033】
ソフトカレンダーを用いてカレンダー処理を行う場合、カレンダーの温度は60℃以上100℃以下が好ましく、線圧は10kg/cm以上50kg/cm以下が好ましい。
【0034】
<食品包装シート用原紙の品質等>
当該食品包装シート用原紙は、ピーク出現時間が0.3秒以上であることが好ましく、0.4秒以上であることがより好ましく、0.5秒以上であることがさらに好ましい。ピーク出現時間が上記下限未満の場合、当該食品包装シート用原紙内部への液体浸透性が高まることにより、保温性及び断熱性が低下するおそれや、当該食品包装シート用原紙に樹脂組成物を塗工して食品包装シートを製造する場合の樹脂層の形成性が低下するおそれがある。
【0035】
また、当該食品包装シート用原紙は、上記浸透特性曲線における5秒後の強度がピーク強度に対して90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。これにより、当該食品包装シート用原紙の通気性、液体浸透性を効果的に奏することができ、当該食品包装シート用原紙の保温性及び断熱性をより向上することができる。
【0036】
当該食品包装シート用原紙を離解して得られる離解パルプのフリーネスとしては250ml以上450ml以下が好ましく、300ml以上400ml以下がより好ましく、320ml以上380ml以下がさらに好ましい。フリーネスが上記上限を超えると、パルプのフィブリル化が不十分なため透気度が低下し、保温性及び断熱性が低下するおそれがある。一方、フリーネスが上記下限未満の場合、パルプの過剰なフィブリル化によりパルプが脆くなるとともに密度が高すぎて当該食品包装シート用原紙の強度が低下し操業性が低下するおそれがある。
【0037】
当該食品包装シート用原紙の坪量としては、15g/m
2以上40g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上35g/m
2以下がより好ましい。坪量が上記上限を超えると、当該食品包装シート用原紙の剛度が高くなるため、内包物の形状に沿って変形しにくくなり、ハンバーガー等の形状が不特定なものの直接包装が困難となるおそれがある。一方、坪量が上記下限未満の場合、強度が低下して破れやすくなるおそれがある。
【0038】
当該食品包装シート用原紙の密度としては、0.5g/cm
3以上0.8g/cm
3以下が好ましく、0.6g/cm
3以上0.7g/cm
3以下がより好ましい。密度が上記上限を超えると、当該食品包装シート用原紙の剛度が高くなり、内包物の形状に沿って変形しにくくなるため、ハンバーガー等の直接包装が困難となるおそれがある。一方、密度が上記下限未満の場合、紙の強度が低下して破れやすくなり、また、保温性及び断熱性が低下するおそれがある。
【0039】
当該食品包装シート用原紙の透気度としては、30秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましく、50秒以上がさらに好ましい。透気度が上記上限を超えると、紙のしなやかさが低下し、操業性が低下するおそれがある。一方、透気度が上記下限未満の場合、保温性及び断熱性が低下するおそれがある。
【0040】
また、当該食品包装シート用原紙は一方の面が艶面であり、他方の面が更面であることが好ましい。これにより、当該食品包装シート用原紙に樹脂組成物を塗工する場合の塗工性が向上し、耐水性及び耐油性を有する樹脂層の形成が容易かつ確実になる。当該食品包装シート用原紙の表面を艶面に形成する方法としては、例えば、ヤンキードライヤーを備え、このヤンキードライヤーで当該食品包装シート用原紙を乾燥させる片艶マシン(ヤンキーマシン)や多筒式乾燥設備を伴う両更マシン等を抄紙機として用いる方法が挙げられる。
【0041】
上記更面の平滑度としては、20秒以上が好ましく、25秒以上がさらに好ましい。平滑度が上記数値未満の場合、印刷適性が低下する可能性がある。なお、この更面の平滑度はカレンダー等で平坦化することにより向上することができる。
【0042】
このように、当該食品包装シート用原紙は、通気性、液体浸透性を適度に低下させることにより、優れた保温性及び断熱性を有する。そのため、当該食品包装シート原紙の一方の面に樹脂組成物を塗工又は樹脂層をラミネート加工することで食品包装シートを製造する場合、保温性及び断熱性により優れる食品包装シートを得ることができる。また、当該食品包装シート用原紙は、上述のように原紙内部への液体の浸透性を低下させることができるため、樹脂組成物を塗工する場合、表面側に樹脂層を形成しやすい。
【0043】
<食品包装シート>
また、上記食品包装シート用原紙を用いた食品包装シートも本発明に含まれる。当該食品包装シートは、上記食品包装シート用原紙の一方の面に樹脂組成物を塗工又は樹脂層をラミネート加工することで形成される。
【0044】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、各種溶媒に樹脂等を含有させたものであり、当該食品包装シートに、耐水性及び耐油性を付与できるものであればよい。ただし、環境保護や安全性の面から、高温条件下においてフッ化水素等のフッ素化合物を発生しないものが好ましい。このような樹脂組成物を構成する樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐油性、透気性及び加工性に優れるアクリル樹脂が好ましい。溶媒は水や有機溶媒等が挙げられる。
【0045】
(樹脂層)
樹脂層は、ラミネート加工に耐えられ、当該食品包装シートに耐水性及び耐油性を付与できるものであればよい。このような樹脂層としては、例えば上記樹脂組成物をシート状に加工したもの等が挙げられる。
【0046】
樹脂組成物及び樹脂層は、上記原紙の艶面に塗工又はラミネート加工されることが好ましい。これにより塗工性及び加工性が向上する。
【0047】
当該食品包装シートとしては、樹脂層をラミネート加工することで形成される食品包装シートよりも樹脂組成物を塗工することで形成される食品包装シートの方が好ましい。樹脂組成物を塗工することにより形成される食品包装シートは、保温性及び断熱性に優れることに加えて、包装する内容物のベタつきを防止することができる。
【0048】
<食品包装シートの製造方法>
樹脂組成物を塗工することで当該食品包装シートを製造する場合、樹脂組成物の塗工方法としては、例えばフレキソ印刷、グラビア印刷、ブレード塗工、ロッド塗工、エアナイフ塗工、カーテン塗工等が挙げられる。これらの中でも、水性フレキソ印刷が均一な樹脂層の皮膜が得られるうえに環境に悪影響を与えやすい有機溶剤を用いない点で好ましい。
【0049】
樹脂組成物の塗工量としては、固形分換算で片面あたり2g/m
2以上10g/m
2以下が好ましい。樹脂組成物の塗工量が上記数値未満の場合、当該食品包装シートの耐水性及び耐油性が低下するおそれがある。なお、塗工機は抄紙機と一連に接続されたオンラインでもよく、オフラインでもよい。また、樹脂組成物は上記原紙の両面に塗工されてもよい。
【0050】
また、樹脂層をラミネート加工することで当該食品包装シートを製造する場合は、一般的なラミネート加工方法を用いればよい。このようなラミネート加工方法としては、例えば、押出ラミネート(エクストルージョンラミネート)、ドライラミネート等が挙げられる。
【0051】
<食品包装シートの品質等>
当該食品包装シートは、上記食品包装シート用原紙を用いているため、上記食品包装シート用原紙に樹脂組成物を塗工することにより当該食品包装シートを形成しても、樹脂層をラミネート加工することにより当該食品包装シートを形成しても、いずれの場合も優れた保温性及び断熱性を有する。このため、当該食品包装シートは、加熱調理食品の包装シートとして好適に用いることができる。また、当該食品包装シートは、樹脂層をラミネート加工することで形成される食品包装シートよりも樹脂組成物を塗工することで形成される食品包装シートの方が包装する内容物のベタつき防止に優れる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
なお、本実施例における各測定値の測定方法及び評価基準は以下に記載の通りである。
【0054】
[パルプのフリーネス(単位:ml)]
JIS−P8220(1998)に記載の「パルプ−離解方法」及び、JIS−P8121(1995)の「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した。
【0055】
[坪量(単位:g/m
2)]
JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0056】
[平滑度(単位:秒)]
JIS−P8119(1998)に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定した。
【0057】
[密度(単位:g/cm
3)]
JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0058】
[ピーク出現時間(単位:秒)]
SURFACE AND SIZING TESTER(EST12[emtec社製])を用いて、原紙を抄紙流れ方向に50mm、幅方向75mmに裁断した測定用試験片を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で水に浸漬させて測定した。なお、ピーク出現時間が遅いほど液体浸透性が低いことを意味する。
【0059】
[5秒後のEST強度(単位:%)]
SURFACE AND SIZING TESTER(EST12[emtec社製])にて得られる浸透特性曲線における5秒後の強度を、ピーク時の強度を100%として相対的にあらわした値である。
【0060】
[透気度(単位:秒)]
JIS−P8117(2009)の「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠したうえでガーレー試験機にて透気抵抗度を測定した。
【0061】
[保温性]
80℃に加熱調理した内容物(ハンバーガー)を食品包装シートで包装し、30分経過後の内容物の温かさについて評価した。
(評価基準)
○:内容物が温かく、保温性に非常に優れる。
△:内容物がやや温かく、保温性に優れる。
×:内容物が温かくなく、保温性に劣る。
【0062】
[更面の印刷適性]
食品包装シート用原紙の更面に、オフセット輪転印刷機(型番:LR−435/546SII、小森コーポレーション社製)を用いて、カラーインク(品番:WEB ACTUS MAJOR、東京インキ社製)にて、印刷速度1000rpmでカラー4色オフセット印刷を1万7千メートル行い、得られた印刷物の印刷面を目視及びルーペ(10倍)にて観察し、毛羽立ち及びラフニングの程度について評価した。
(評価基準)
◎:毛羽立ちおよびラフニングが確認できず、印刷適性に優れる。
○:毛羽立ちおよびラフニングが若干確認でき、印刷適性が若干劣る。
△:毛羽立ちおよびラフニングが多少確認でき、印刷適性が多少劣る。
×:毛羽立ちおよびラフニングがはっきり確認でき、印刷適性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎、○、△を実使用可能と判断する。
【0063】
[操業性]
操業性については、薬品凝集物及びドライヤーからの剥離不良等により発生する断紙回数の程度によって評価した。
(評価基準)
◎:薬品凝集物及びドライヤーの剥離不良が無く、断紙が全く発生しない。
○:薬品凝集物及びドライヤーの剥離不良が若干有り、断紙が若干発生する。
△:薬品凝集物及びドライヤーの剥離不良が多く有り、断紙が多く発生する。
×:薬品凝集物及びドライヤーの剥離不良が非常に多く有り、断紙が非常に多く発生する。
【0064】
[耐水性]
紙表面に水1滴を滴下した後、5秒後に滴下した水滴を拭き取り表面の水のにじみの程度を目視で評価した。
(評価基準)
◎:水のにじみが全く確認されず、耐水性に非常に優れる。
〇:水のにじみが確認されず、耐水性に優れる。
△:水のにじみがやや確認され、耐水性に劣る。
×:水のにじみが明らかに確認され、耐水性に非常に劣る。
【0065】
[耐油性]
紙表面に食用油1滴を滴下した後、30秒後に滴下した油滴を拭き取り表面の油のにじみの程度を目視で評価した。
(評価基準)
◎:油のにじみが全く確認されず、耐油性に非常に優れる。
〇:油のにじみが確認されず、耐油性に優れる。
△:油のにじみがやや確認され、耐油性に劣る。
×:油のにじみが明らかに確認され、耐油性に非常に劣る。
【0066】
[耐ベタつき性]
80℃に加熱調理した内容物(ハンバーガー)を食品包装シートで包装し、30分経過後の内容物のベタつきについて評価した。
(評価基準)
○:内容物が濡れておらず、耐ベタつき性に非常に優れる。
△:内容物がやや濡れており、耐ベタつき性に優れる。
×:内容物が濡れており、耐ベタつき性に劣る。
【0067】
<食品包装シート用原紙>
[実施例1]
広葉樹晒クラフトパルプ100%のパルプに、紙力剤としてポリアクリルアミド(商品名「DS4366」、星光PMC株式会社製)をパルプ(絶乾量)に対して固形分換算で3.0質量%、内添サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業株式会社製)2.0質量%、硫酸バンド(商品名「液体硫酸アルミニウム」、大明化学工業株式会社製)1.9質量%、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂系紙力剤(型番:WS4024、星光PMC株式会社製)0.5質量%を添加してパルプスラリーを調製した。
【0068】
次いで、このパルプスラリーを、ヤンキードライヤを備える抄紙機で抄速270m/分の条件で片艶となるように抄紙した後、カレンダー温度70℃、線圧20kg/cmの条件でソフトカレンダー処理を行い実施例1の食品包装シート用原紙を抄造した。
【0069】
[実施例2〜17、比較例1〜3]
紙力剤及びサイズ剤の配合量、カレンダー処理の有無、パルプのフリーネス及び坪量を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜17及び比較例1〜3の食品包装シート用原紙を得た。
【0070】
<食品包装シート用原紙の評価>
得られた各食品包装シート用原紙の坪量、平滑度(更面側)、密度、ピーク出現時間、5秒後のEST強度、透気度、保温性、更面の印刷適性及び操業性について測定又は評価した。結果を表1に併せて示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の結果より、紙力剤の配合量が減るほど保温性が低下し、紙力剤の配合量が増えるほど保温性が向上することがわかる(実施例1〜実施例7)。また、サイズ剤の配合量が減るほどピーク出現時間、保温性が低下し、サイズ剤の配合量が増えるほどピーク出現時間、保温性が向上することがわかる(実施例8〜実施例11)。また、カレンダー処理を施さない場合は、密度、透気度が低下するため平滑度、保温性も低下し(実施例12)、パルプのフリーネスが低いほど透気度及び密度が向上し、パルプのフリーネスが高いほど透気度、保温性が低下することがわかる(実施例13〜実施例16)。さらに、パルプのフリーネスが低すぎる場合は密度が高すぎて当該食品包装シート用原紙の強度が低下し操業性が低下し(比較例1)、逆に、パルプのフリーネスが高すぎる場合は透気度が低下し、保温性が低下することがわかる(比較例2)。また、紙力剤を全く添加しない場合は透気度が低すぎて保温性に劣ることがわかる(比較例3)。
【0073】
<食品包装シート>
[実施例18]
次いで、実施例1で得られた食品包装シート用原紙の艶面にアクリル樹脂(商品名「ハービルB7」、株式会社第一塗料製造所製)を含む樹脂組成物を、水性フレキソ印刷により塗工量が固形分換算で2.0g/m
2となるように塗工して乾燥させることにより実施例18の食品包装シートを得た。
【0074】
[実施例19〜35、比較例4〜5]
用いた食品包装シート用原紙の種類及び樹脂組成物の塗工面を表2に記載のように変更した以外は実施例18と同様にして実施例19〜35及び比較例4〜5の食品包装シートを得た。
【0075】
[実施例36]
また、上記実施例1の食品包装シート用原紙の艶面に上記アクリル樹脂をラミネート加工(溶融押出加工、ラミネート量は2.0g/m
2)することで実施例36の食品包装シートを得た。
【0076】
[比較例6]
また、比較例6としてラミネート加工が施されている市販の食品包装シートを用いた。
【0077】
<食品包装シートの評価>
得られた各食品包装シートの保温性、耐水性、耐油性及び内包物の耐ベタつき性についてそれぞれ評価した。結果を表2に示す。なお、耐水性及び耐油性の評価は、食品包装シートの樹脂面に水滴又は油滴を滴下して評価し、保温性は樹脂が内側となるように食品を包装して評価した。
【0078】
【表2】
【0079】
表2の結果より、本発明の食品包装シート用原紙を用いた食品包装シートは、樹脂を塗工した場合(実施例18〜実施例35)、及びラミネート加工した場合(実施例36)のいずれの場合も優れた保温性、耐水性及び耐油性を示した。また、本発明の食品包装シート用原紙の更面に樹脂組成物を塗工した食品包装シートは、艶面に樹脂組成物を塗工した場合と比べると耐水性及び耐油性がやや低下した(実施例35)。また、透気度の低い食品包装シート用原紙に樹脂組成物を塗工した場合、耐水性及び耐油性が向上するものの十分ではないことがわかる(比較例4及び5)。さらに、本発明の食品包装シート用原紙を用いた食品包装シート(実施例18〜実施例36)は、樹脂塗工されていても、ラミネート加工されていても、市販の食品包装シート(比較例6)に比べて保温性及び耐ベタ付き性に優れることがわかる。