特許第5955029号(P5955029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955029
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23Q 9/00 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   F23Q9/00 Q
   F23Q9/00 K
   F23Q9/00 L
   F23Q9/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-42047(P2012-42047)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178023(P2013-178023A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】南 哲
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−273962(JP,A)
【文献】 実開昭52−070335(JP,U)
【文献】 特開2006−090690(JP,A)
【文献】 特開2005−273961(JP,A)
【文献】 実開平04−073717(JP,U)
【文献】 特開2008−202817(JP,A)
【文献】 特開2011−149630(JP,A)
【文献】 特開平6−193819(JP,A)
【文献】 特開2001−82741(JP,A)
【文献】 実開昭60−185867(JP,U)
【文献】 実公昭53−53950(JP,Y2)
【文献】 特開2011−21875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 9/00 − 9/14
F23D 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、
前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、
前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、
前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、
前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置であって、
前記パイロット用ガス筒と前記バッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、当該隙間が、前記燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされ
前記パイロット用ガス噴出部が、前記パイロット用ガス筒の先端側の端面に形成され燃料ガスを前方向に噴出するパイロット用ガス噴出孔と、前記パイロット用ガス筒の前方に配置され前記パイロット用ガス噴出孔から噴出される燃料ガスを衝突させて放射状に拡散させる、前記パイロット用ガス筒の外径と略同径の外径に構成された円板状ガス拡散体と、で構成されている燃焼装置。
【請求項2】
前記パイロット用ガス筒の外周壁から外方側に延出してなる板状の保持フランジが前記バッフル板の基端側の面に複数のネジで固定されることで、前記パイロットバーナが前記バッフル板に固定されており、
前記保持フランジと前記バッフル板との間に、前記パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されている請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、
前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、
前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、
前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、
前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置であって、
前記パイロット用ガス筒と前記バッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、当該隙間が、燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされており、
前記パイロット用ガス筒の外周壁から外方側に延出してなる板状の保持フランジが前記バッフル板の基端側の面に複数のネジで固定されることで、前記パイロットバーナが前記バッフル板に固定されており、
前記保持フランジと前記バッフル板との間に、前記パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されている燃焼装置。
【請求項4】
前記スペーサが、前記保持フランジと前記バッフル板との間において前記複数のネジを外囲する円筒状のスペーサである請求項2または3に記載の燃焼装置。
【請求項5】
燃焼量調節範囲における低燃焼量域において、前記主ガス噴出孔からの燃料ガスの噴出を停止し、前記パイロット用ガス噴出部からの燃料ガスの噴出を行うパイロット燃焼単独運転を実行する請求項1〜4の何れか一項に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、
前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、
前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、
前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、
前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる燃焼装置は、着火対象の燃焼装置の主ガス噴出孔から噴出される燃料ガスをパイロットバーナにより形成されるパイロット火炎により着火するものであり、例えば、そのパイロットバーナは、着火対象の燃焼装置の燃焼用空気の流路中にパイロット用ガス筒を設け、その流路を通流する燃焼用空気にてパイロット用ガス噴出孔から噴出される燃料ガスを燃焼させてパイロット火炎を形成するように構成される。
このような燃焼装置として、燃料ガスに対するパイロット火炎による着火性能を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この燃焼装置は、パイロットバーナにおいてパイロット用ガス筒の先端側に設けられたパイロット用ガス噴出部を、パイロット用ガス筒の先端側の端面に形成され燃料ガスを前方向に噴出するパイロット用ガス噴出孔と、パイロット用ガス筒の前方に配置されパイロット用ガス噴出孔から噴出される燃料ガスを衝突させて放射状に拡散させるガス拡散体とで構成して、当該パイロット用ガス噴出部から燃料ガスを放射状に噴出させるように構成されている。
【0003】
かかる燃焼装置では、パイロット用ガス噴出孔から噴出された燃料ガスがパイロット用ガス筒の先端側から放射状に噴出するので、当該噴射方向と直交する方向に流通する燃焼用空気との混合が促進されて、パイロット用ガス筒の先端側の周部にてパイロット火炎が比較的安定して形成される。一方、バッフル板に分散形成された複数の空気口に燃焼用空気が通過するので、バッフル板の先端側の上記パイロット火炎が形成されている空間には負圧域が形成され、複数の主ガス噴出孔から噴出された燃料ガスの一部がその負圧域に誘引される。即ち、この誘引された燃料ガスが安定して形成されたパイロット火炎により良好に着火されるというように、着火性能が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−273962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の燃焼装置では、通常、パイロットバーナはあくまで着火対象の主ガス噴出孔から噴出される燃料ガスを着火するための着火手段として設けられていたため、当該燃料ガスの着火が完了した後には、パイロット用ガス噴出部からの燃料ガスの噴出は停止されてパイロットバーナの作動は停止する。
従って、従来のパイロットバーナの作動時間は、燃焼装置を起動させるときの極めて短い時間であるので、そのパイロットバーナが形成するパイロット火炎の低エミッション化、例えばNOxやCOの排出量低減については、特に課題として認識されてこなかった。
しかしながら、近年の燃焼装置では、燃焼量調節範囲を低い側にできるだけ広げてターンダウン比(燃焼量の絞り比)を拡大することが望まれるようになり、それを実現するためには、燃焼量調節範囲における低燃焼量域において、主ガス噴出孔からの燃料ガスの噴出を停止し、パイロット用ガス噴出部からの燃料ガスの噴出を行うことで、パイロットバーナのみを作動させるパイロット燃焼単独運転を実行することが検討されている。
しかしながら、従来のパイロットバーナでは、上記のように低エミッション化が図られていないため、かかるパイロットバーナを低燃焼量域において長時間に亘り作動させることは、燃焼量調節範囲全域における低エミッション化が求められる場合に問題となる場合がある。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、パイロットバーナが形成するパイロット火炎の低エミッション化を実現し、更には、燃焼量調節範囲における低燃焼量域において長時間に亘ってパイロットバーナを作動させても当該燃焼量調節範囲全域における低エミッション化が実現可能な技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る燃焼装置は、
燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、
前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、
前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、
前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、
前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置であって、
の特徴構成は、
前記パイロット用ガス筒と前記バッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、当該隙間が、前記燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされ
前記パイロット用ガス噴出部が、前記パイロット用ガス筒の先端側の端面に形成され燃料ガスを前方向に噴出するパイロット用ガス噴出孔と、前記パイロット用ガス筒の前方に配置され前記パイロット用ガス噴出孔から噴出される燃料ガスを衝突させて放射状に拡散させる、前記パイロット用ガス筒の外径と略同径の外径に構成された円板状ガス拡散体と、で構成されている点にある。
【0008】
記特徴構成によれば、バッフル板に分散形成された複数の空気口に燃焼用空気が通過するので、バッフル板の先端側の空間においては、複数の主ガス噴出孔から噴出された着火対象の燃料ガスの一部がパイロット火炎に近づく方向に誘引される。よって、着火対象の燃料ガスに対するパイロット火炎による着火性能が向上される。
更に、このように着火性能が向上された燃焼装置において、パイロット用ガス筒とバッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、この隙間が燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされている。よって、パイロット用ガス噴出部から外方側に向けて放射状に噴出した燃料ガスに対しては、その直上流側のパイロット用ガス筒の外周に形成されたパイロット用空気口を通過した燃焼用空気が、略直交する方向に供給されることになる。即ち、パイロット用ガス噴出部から外方側に向けて放射状に噴出した燃料ガスは、パイロット用ガス筒の外周において略均等且つ良好に、パイロット用空気口を通過した燃焼用空気と混合されることになるので、その混合気が燃焼して形成されるパイロット火炎は安定したものとなり、更にそのパイロット火炎におけるNOxやCO等の排出が抑制されて低エミッション化が実現される。
また、パイロット用ガス噴出孔からパイロット用ガス筒の前方に噴出された燃料ガスをパイロット用ガス筒の前方に設けられているガス拡散体に衝突させて放射状に拡散させる形態で、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を構成することができる。
また、このように構成した場合には、ガス拡散体に衝突して放射状に拡散した燃料ガスは、パイロット用ガス筒の外周において略均等に分散することになるから、その直上流側のパイロット用ガス筒の外周に形成されたパイロット用空気口を通過した燃焼用空気との混合が非常に均等に促進されることになる。従って、パイロット用ガス筒の外周において非常に安定したパイロット火炎を形成することができ、パイロット火炎の一層の低エミッション化を実現することができる。
【0009】
本発明に係る燃焼装置の更なる特徴構成は、
前記パイロット用ガス筒の外周壁から外方側に延出してなる板状の保持フランジが前記バッフル板の基端側の面に複数のネジで固定されることで、前記パイロットバーナが前記バッフル板に固定されており、
前記保持フランジと前記バッフル板との間に、前記パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、パイロット用ガス筒の外周壁に設けられた保持フランジと、その保持フランジが基端面側に複数のネジにて固定されるバッフル板との間には、パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されることで、燃焼用空気が流入可能な隙間が形成される。この隙間に対しては、基端側から供給された燃焼用空気が保持フランジの全周から略均等に流入することになる。即ち、パイロット用ガス路の外周に形成されたパイロット用空気口には、パイロット用ガス筒の外周において略均等に燃焼用空気が通過することになる。よって、パイロット用ガス筒の先端側のパイロット用ガス噴出部から放射状に噴出された燃料ガスに対して、パイロット用ガス筒の外周において略均等に燃焼用空気が混合されることになるので、パイロット火炎の更なる安定化且つ低エミッション化を実現することができる。
【0011】
この目的を達成するための本発明に係る燃焼装置は、
燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、
前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、
前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、
前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、
前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置であって、
その特徴構成は、
前記パイロット用ガス筒と前記バッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、当該隙間が、燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされており、
前記パイロット用ガス筒の外周壁から外方側に延出してなる板状の保持フランジが前記バッフル板の基端側の面に複数のネジで固定されることで、前記パイロットバーナが前記バッフル板に固定されており、
前記保持フランジと前記バッフル板との間に、前記パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されている点にある。
【0012】
この特徴構成によれば、バッフル板に分散形成された複数の空気口に燃焼用空気が通過するので、バッフル板の先端側の空間においては、複数の主ガス噴出孔から噴出された着火対象の燃料ガスの一部がパイロット火炎に近づく方向に誘引される。よって、着火対象の燃料ガスに対するパイロット火炎による着火性能が向上される。
更に、このように着火性能が向上された燃焼装置において、パイロット用ガス筒とバッフル板の挿入口との間に隙間が形成され、この隙間が燃焼用空気を通過させるパイロット用空気口とされている。よって、パイロット用ガス噴出部から外方側に向けて放射状に噴出した燃料ガスに対しては、その直上流側のパイロット用ガス筒の外周に形成されたパイロット用空気口を通過した燃焼用空気が、略直交する方向に供給されることになる。即ち、パイロット用ガス噴出部から外方側に向けて放射状に噴出した燃料ガスは、パイロット用ガス筒の外周において略均等且つ良好に、パイロット用空気口を通過した燃焼用空気と混合されることになるので、その混合気が燃焼して形成されるパイロット火炎は安定したものとなり、更にそのパイロット火炎におけるNOxやCO等の排出が抑制されて低エミッション化が実現される。
また、パイロット用ガス筒の外周壁に設けられた保持フランジと、その保持フランジが基端面側に複数のネジにて固定されるバッフル板との間には、パイロット用ガス筒の軸心周りに分散配置された複数のスペーサが介装されることで、燃焼用空気が流入可能な隙間が形成される。この隙間に対しては、基端側から供給された燃焼用空気が保持フランジの全周から略均等に流入することになる。即ち、パイロット用ガス路の外周に形成されたパイロット用空気口には、パイロット用ガス筒の外周において略均等に燃焼用空気が通過することになる。よって、パイロット用ガス筒の先端側のパイロット用ガス噴出部から放射状に噴出された燃料ガスに対して、パイロット用ガス筒の外周において略均等に燃焼用空気が混合されることになるので、パイロット火炎の更なる安定化且つ低エミッション化を実現することができる。
【0013】
本発明に係る燃焼装置の更なる特徴構成は、
前記スペーサが、前記保持フランジと前記バッフル板との間において前記複数のネジを外囲する円筒状のスペーサである点にある。
【0014】
この特徴構成によれば、保持フランジをバッフル板に固定するための複数のネジの夫々に、当該ネジを外囲する円筒状のスペーサを設けるという簡単な構成を採用するだけで、保持フランジとバッフル板との間に隙間を設けることができ、パイロット火炎の更なる安定化且つ低エミッション化を実現することができる。
【0015】
本発明に係る燃焼装置の更なる特徴構成は、
燃焼量調節範囲における低燃焼量域において、前記主ガス噴出孔からの燃料ガスの噴出を停止し、前記パイロット用ガス噴出部からの燃料ガスの噴出を行うパイロット燃焼単独運転を実行する点にある。
【0016】
この特徴構成によれば、燃焼量調節範囲における低燃焼量域において、主ガス噴出孔からの燃料ガスの噴出を停止し、パイロット用ガス噴出部からの燃料ガスの噴出を行うことで、パイロットバーナのみを作動させるパイロット燃焼単独運転を実行するように構成されることで、燃焼量調節範囲を低い側にできるだけ広げて燃焼量のターンダウン比を拡大することができる。また、このようにパイロット燃焼単独運転を実行する場合でも、パイロット火炎の低エミッション化が図られているため、燃焼量調節範囲全域における低エミッション化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の燃焼装置の縦断側面図
図2】本実施形態の燃焼装置の正面図
図3】本実施形態の燃焼装置の要部の縦断側面図
図4】本実施形態の燃焼装置の要部の正面図
図5】本実施形態の燃焼装置におけるパイロットバーナ設置部分の縦断側面図
図6】本実施形態の燃焼装置におけるパイロットバーナ設置部分の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔燃焼装置〕
先ず、上述のように構成したパイロットバーナPを装着する燃焼装置について説明する。
図1及び図2に示すように、燃焼装置は、燃料ガスGを噴出する複数の主ガス噴出孔としての筒状ガスノズル3が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒2と、この主ガス筒2を外囲し主ガス筒2との間に燃焼用空気Aが通流される円筒状の燃焼筒1とを備える。即ち、燃焼用空気Aが、この燃焼筒1とその内部に同心状に設けられた主ガス筒2との間を通して、筒先端側に向けて通流することになる。
上記複数の筒状ガスノズル3は、その周壁から突出する状態で、主ガス筒2の軸心周り(以下、「主軸心周り」と呼ぶ。)に分散する状態で設けられている。更に、主ガス筒2と燃焼筒1との間には板状のバッフル板4が設けられており、このバッフル板4には、燃焼用空気Aを通過させる複数の空気口5が主軸心周りに分散形成されている。
そして、複数の筒状ガスノズル3から噴出される燃料ガスGが、複数の空気口5から吐出される燃焼用空気Aにて燃焼することになる。
更に、図3及び図4にも示すように、パイロットバーナPが設けられており、このパイロットバーナPは、その詳細構成については後述するが、筒状ガスノズル3から噴出した燃料ガスGを着火可能なパイロット火炎Fpを形成する。
【0019】
以下、燃焼装置の各部について説明を加える。
バッフル板4は、環状の板状部材で構成されており、そのバッフル板4の燃焼筒1の径方向(以下、単に「径方向」と呼ぶ。)において外周側に偏った位置には、空気口5となる8個の開口部が主軸心周りに等間隔に形成されている。また、このバッフル板4は、燃焼筒1の先端よりも後退させた位置において、その内周縁を主ガス筒2に外嵌させ、且つその外周縁を燃焼筒1に内嵌させる状態で、配置されている。
【0020】
主ガス筒2は、その先端が閉塞された筒状部材で構成されており、その先端側の周壁には、16本の筒状ガスノズル3が設けられている。
この16本の筒状ガスノズル3は、主軸心周りに等間隔で8本ずつ並ぶノズル列の2列からなり、各列においては8本の筒状ガスノズル3が主軸心周りに等間隔で配置され、また、夫々の列において配置されている筒状ガスノズル3は主軸心周りで同一の位相に位置している。
燃焼筒1の軸心方向(以下、単に「軸心方向」と呼ぶ。)に並ぶノズル列のうち、軸心方向に沿って上流側に位置する側のノズル列の筒状ガスノズル3の先端は、下流側に位置するノズル列の筒状ガスノズル3の先端よりも径内方向(径方向の内方向)側に位置している。
また、上流側のノズル列の筒状ガスノズル3のガス噴出方向は、主ガス筒2の軸心に直交する方向であり、下流側のノズル列の筒状ガスノズル3のガス噴出方向は、主ガス筒2の軸心に直交する方向に対して前方側に傾斜する方向である。
更に、下流側のノズル列の筒状ガスノズル3の先端は、その筒状ガスノズル3を主ガス筒2に取り付けた状態で、筒状ガスノズル3の先端面が主ガス筒2の軸心と直交する状態となるように傾斜状に形成してある。
【0021】
主ガス筒2の内部には、先端を開口した内筒6が設けられており、その先端位置が主ガス筒2の先端の閉塞部と間隔を隔てた位置とされている。そして、燃料ガスGが、この内筒6の先端開口から主ガス筒2内に供給される。
主ガス筒2の後端位置は、燃焼筒1の後端よりも突出した位置とされている。燃焼筒1の後端開口縁と主ガス筒2の周壁とにより、環状の空気導入口7が形成されており、その空気導入口7には整流体8が設けられている。また、内筒6の後端位置は、主ガス筒2の後端よりも突出した位置とされており、主ガス筒2の後端は閉塞されている。
更に、燃焼筒1と同心状に円筒箱状のウインドボックス9が設けられており、このウインドボックス9は、その前壁を燃焼筒1に外嵌させ且つ後壁を主ガス筒2に外嵌させた状態で固定されている。
【0022】
整流体8は、円錐台筒状の部材で構成されており、大径側の径は燃焼筒1の内径と略同一で、且つ小径側の径が主ガス筒2の外径よりも大きい。その整流体8は、小径側が燃焼用空気Aの通流方向の下流側に向けられ、燃焼筒1を横断する姿勢で、大径側が燃焼筒1の後端部に内嵌されている。
即ち、整流体8の小径側端縁と主ガス筒2の外周面とにより、燃焼筒1と同心状に開口する環状の開口部10が形成されており、整流体8の円錐状の内周面は、燃焼用空気Aを環状の開口部10に向けて案内する円錐状の案内面11として機能する。
つまり、ウインドボックス9に導入された燃焼用空気Aは、整流体8の円錐状の案内面11にて案内されて、動圧の低下が抑制されながら、開口部10に向かって集中するように流れて、開口部10から流出する。このことにより、燃焼用空気Aは、主軸心周りに均圧化されると共に、主軸心周りに流量が均一化されて、燃焼筒1内を流れ、8個の空気口5から吐出される。よって、8個の空気口5からの燃焼用空気Aの吐出量のバラツキが抑制される。
【0023】
〔パイロットバーナ〕
次に、パイロットバーナPについて説明する。
図5及び図6に示すように、パイロットバーナPは、燃料ガスGを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部Pgを先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒21を備えると共に、このパイロット用ガス筒21を上述したバッフル板4に形成された挿入口4aに挿入した状態で、バッフル板4に固定されている。
また、このパイロット用ガス噴出部Pgは、パイロット用ガス筒21の先端側の端面に形成され燃料ガスGを前方向に噴出するパイロット用ガス噴出孔22と、パイロット用ガス筒21の前方に配置されパイロット用ガス噴出孔22から噴出される燃料ガスGを衝突させて放射状に拡散させるガス拡散体23とで構成されている。更に、パイロット用ガス筒21の側部には点火プラグ24がプラグ保持部25等により固定されている。
【0024】
パイロット用ガス筒21は、円筒状のパイプの先端を円板状の蓋板26にて閉塞して、その蓋板26に、互いに同径の複数(この実施形態では8個)のパイロット用ガス噴出孔22が、パイロット用ガス筒21の軸心周り(以下、「パイロット軸心周り」と呼ぶ。)に等間隔で並ぶ状態で穿設されている。その蓋板26の中心、即ち、環状に並ぶ8個のパイロット用ガス噴出孔22の内方側箇所には、後述するガス拡散体23を保持するための杆状の支持体としてのネジ部27を螺着するためのネジ孔26aが形成されている。
ちなみに、この実施形態では、パイロット用ガス筒21の外径は、17.3(10A)mmであり、長さは136mmである。
ガス拡散体23は、外径が前記パイロット用ガス筒21の外径と略同径の円板状の部材で構成されており、そのガス拡散体23の中心には、ネジ部27を螺着するためのネジ孔26aが形成され、そのネジ孔26aにネジ部27が螺着される。ちなみに、この実施形態では、円板状のガス拡散体23の外径は17mm、厚さは3mmである。
そして、ガス拡散体23に固定されたネジ部27が、それに2枚のスプリングワッシャ28を挿入した状態で、パイロット用ガス筒21の蓋板26のネジ孔26aに螺着される。このことで、ガス拡散体23が、パイロット用ガス筒21に対してそれと同心状で且つそれの先端面と所定の間隔を隔てた所定の位置関係になるように位置決めされた状態で、パイロット用ガス筒21の前方に保持される。
ちなみに、スプリングワッシャ28の厚みは1mmであり、パイロット用ガス筒21とガス拡散体23との間に2枚のスプリングワッシャ28を介在されるので、ガス拡散体23とパイロット用ガス筒21の先端面との間には、2mmの間隔を隔ててなる隙間が形成される。
【0025】
更に、パイロット用ガス筒21の外周壁には、外方側(パイロット用ガス筒21)に延出してなる板状の保持フランジ29が形成されている。この保持フランジ29がバッフル板4の基端側の面に複数のネジ30で固定されることで、パイロットバーナPがバッフル板4に固定される。
説明を加えると、保持フランジ29は、概ね菱形状の板状体で構成され、その中央部に形成された孔にパイロット用ガス筒21を挿入した状態で、当該パイロット用ガス筒21の外周壁に溶接にて固定されている。
この実施形態では、詳細は後述するが、パイロット用ガス筒21をバッフル板4に形成された挿入口4aに挿入した状態で、バッフル板4に固定される。そして、パイロット用ガス筒21の先端側端面が、バッフル板4の先端側面と同一面上に位置するようにしてある。
【0026】
また、バッフル板4の挿入口4aの内径がパイロット用ガス筒21の外径よりも大きく設定されることで、パイロット用ガス筒21と挿入口4aとの間には隙間が形成されており、その隙間が燃焼用空気Aを通過させるパイロット用空気口31とされている。
保持フランジ29とバッフル板4との間にも隙間を形成して、パイロット用ガス筒21の外側を通流する燃焼用空気Aをパイロット用空気口31に供給するために、保持フランジ29とバッフル板4との間には、パイロット軸心周りに分散配置された複数のスペーサ32が介装されている。
このスペーサ32は、ネジ30の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状の部材で構成されており、保持フランジ29とバッフル板4との間において複数のネジ30を外囲するように配置されている。
保持フランジ29は、バッフル板4の裏面側との間にスペーサ32を間に挟んだ状態で配置され、その状態で、2個のネジ30が保持フランジ29のネジ挿入孔29aに挿入されてバッフル板4に螺入されることで、パイロットバーナPがバッフル板4に固定される。
【0027】
図3及び図4に示すように、パイロット用ガス筒21の後端からパイロット用の燃料ガスGが供給されると、パイロット用ガス筒21の先端に、パイロット軸心周りに分散する複数のパイロット用ガス噴出孔22から燃料ガスGが噴出される。それら複数のパイロット用ガス噴出孔22から噴出された燃料ガスGは、ガス拡散体23に衝突して、ガス拡散体23の周囲の全周に亘って放射状に拡散する。
しかも、互いに同径でパイロット軸心周りに等間隔に並ぶ8個のパイロット用ガス噴出孔22から燃料ガスGが噴出されるので、8個のパイロット用ガス噴出孔22から噴出された燃料ガスGは、ガス拡散体23に衝突する。よって、その燃料ガスGは、パイロット軸心周りでのバラツキが抑制された状態でガス拡散体23の周囲の全周に亘って放射状に拡散される。
一方、上記放射状に拡散した燃料ガスGに対して、その直上流側のパイロット用ガス筒21の外周全域に形成されたパイロット用空気口31を通過した燃焼用空気Aが略直交する方向に供給されることになる。即ち、複数のパイロット用ガス噴出孔22から外方側に向けて放射状に噴出した燃料ガスGは、パイロット用ガス筒21の外周全域において略均等且つ良好に、パイロット用空気口31を通過した燃焼用空気Aと混合されることになる。よって、ガス拡散体23の全周に亘って略均等にパイロット火炎Fpが形成され、更に、そのパイロット火炎FpはNOxやCO等の排出が抑制されて低エミッション化が実現されたものとなる。即ち、パイロット火炎Fpを安定して形成することでCOの排出抑制が実現され、更に、パイロット用空気口31によるパイロット用ガス筒21近傍への燃焼用空気Aの供給により、パイロット火炎Fpを薄膜火炎として形成することで、NOxの排出抑制が実現されている。
【0028】
図1に示すように、都市ガス等の燃料ガスGが導入される元ガス供給路12を主ガス供給路12mとパイロット用ガス供給路12pとに分岐し、主ガス供給路12mを前記内筒6の後端に接続し、パイロット用ガス供給路12pを前記パイロット用ガス筒21の後端に接続してある。
主ガス供給路12mには、燃焼装置への燃料ガスGの供給を断続する主ガス用電磁弁15、及び燃焼装置への燃料ガスGの供給量を調節する主ガス用調節弁16が設けられ、更に、パイロット用ガス供給路12pには、パイロットバーナPへの燃料ガスGの供給を断続するパイロットガス用電磁弁17が設けられている。尚、主ガス用電磁弁15及びパイロットガス用電磁弁17の夫々は、2個の電磁弁を直列配置した状態で設けられている。
ウインドボックス9の空気供給口9aには、ブロア18から供給される燃焼用空気Aが、燃焼用空気調節弁19による供給量調節を伴って導入される。
【0029】
図1に示すように、燃焼装置の運転を制御する制御部20を設けてあり、以下、この制御部20の制御動作について説明する。
制御部20は、操作盤(図示省略)から燃焼装置の燃焼開始が指令されると、ブロア18を、主ガス筒2に供給する主燃料ガス供給量に対応して設定された設定空気比に相当する量の燃焼用空気Aを供給するように作動させると共に、点火プラグ24を作動させ、続いて、主ガス用電磁弁15を閉弁した状態で、パイロットガス用電磁弁17を開弁する。
ちなみに、前記設定空気比は、例えば、1.2〜1.3の範囲に設定され、パイロットガス用電磁弁17が開弁されるときは、主ガス用電磁弁15が閉弁されている状態であり、ブロア18からは前記設定空気比に相当する量の燃焼用空気Aが供給される。即ち、パイロットバーナPの複数のパイロット用ガス噴出孔22から噴出されるパイロット用の燃料ガスGに対しては、空気比で20程度の燃焼用空気Aが供給されることになる。従って、パイロットバーナPは、パイロット用の燃料ガスGを20程度といった極めて高い空気比にて燃焼させることになる。
【0030】
複数のパイロット用ガス噴出孔22から噴出されたパイロット用の燃料ガスGが点火してパイロット火炎Fpが形成されて、そのパイロット火炎Fpが火炎検出器(図示省略)にて検出されると、制御部20は、点火プラグ24の作動を停止させ、続いて、主ガス用電磁弁15を開弁する。
複数の筒状ガスノズル3から噴出された主燃料ガスがパイロット火炎Fpにより着火して正常に燃焼すると、パイロットガス用電磁弁17が閉弁され、火炎検出器にて火炎が検出される状態が維持されることになる。即ち、主ガス用電磁弁15とパイロット用電磁弁17とは、パイロット火炎Fpにより主燃料ガスを着火させる移行期間と後述する主燃焼運転から低燃焼量域(パイロット燃焼単独運転)への移行期間には両方が開弁され、それ以外の期間は何れか一方側のみが開弁されることになる。
そして、制御部20は、主ガス用電磁弁15の開弁した後は、火炎検出器の検出情報を監視し、火炎検出器にて火炎が検出される状態が継続されている間は、その主ガス用電磁弁15の開弁状態を維持する形態で、主燃焼運転を行う。また、この主燃焼運転では、制御部20は、主ガス用調節弁16及び燃焼用空気調節弁19を制御して、燃焼装置への燃料ガスG及び燃焼用空気Aの供給量を比例的又は段階的に変化させることで燃焼量を調節する。
一方、主ガス用電磁弁15の開弁時に、複数の筒状ガスノズル3から噴出された燃料ガスGがパイロット火炎Fpにより正常に着火しなかったり、正常に着火した後に失火したりして、火炎検出器にて火炎が検出されない状態になると、制御部20は、主ガス用電磁弁15及びパイロットガス用電磁弁17を閉弁する。
また、制御部20は、主ガス用電磁弁15の開弁状態を維持している間に、操作盤から燃焼の停止が指令されると、主ガス用電磁弁15及びパイロットガス用電磁弁17を閉弁する。
【0031】
制御部20は、燃焼量調節範囲における低燃焼量域においては、主ガス用電磁弁15を閉弁して筒状ガスノズル3からの燃料ガスGの噴出を停止した状態で、パイロットガス用電磁弁17を開弁してパイロット用ガス噴出部Pgからの燃料ガスGの噴出を行う形態で、パイロットバーナPのみを作動させるパイロット燃焼単独運転を実行する。このようなパイロット燃焼単独運転を実行することで、燃焼量調節範囲を低い側にできるだけ広げることができ、ターンダウン比が拡大されている。尚、このパイロット燃焼単独運転において、制御部20は、燃焼用空気調節弁19を制御して、燃焼装置への燃焼用空気Aの供給量を、上記主燃焼運転における最低燃焼量での運転時と同等の供給量に設定する。
このパイロット燃焼単独運転時に形成されるパイロット火炎Fpは、上述したように、パイロット用空気口31がパイロット軸周りに分散形成されていることでNOxやCO等の排出が抑制され低エミッション化が実現されている。よって、かかるパイロット燃焼単独運転を長時間に亘り行った場合でも、燃焼量調節範囲全域における低エミッション化を阻害することはない。
【0032】
次に、図1図3及び図4に基づいて、パイロットバーナP及び燃焼装置夫々の燃焼形態について説明を加える。
ブロア18が作動して、ウインドボックス9に燃焼用空気Aが供給されると、その燃焼用空気Aは燃焼筒1と主ガス筒2との間を筒先端側に通流して、間隔を隔てて主軸心周りに並ぶ複数の空気口5から燃焼用空気Aが燃焼筒先端側に吐出される。そして、その吐出に伴って、バッフル板4の前方空間における空気口5の周囲に負圧域が形成される。
【0033】
パイロットガス用電磁弁17が開弁されると、燃料ガスGがパイロット用ガス筒21に供給されて、パイロット用ガス筒21の先端にパイロット軸心周りに分散する複数のパイロット用ガス噴出孔22から噴出される。それら複数のパイロット用ガス噴出孔22から噴出された燃料ガスGは、ガス拡散体23に衝突して、ガス拡散体23の周囲の全周から放射状にバッフル板4の前面に沿って拡散する。そのように拡散する燃料ガスGは、その周囲に略均等に形成されたパイロット用空気口31から吐出された燃焼用空気Aと良好に混合されて、ガス拡散体23の周部の全周にて保炎され、且つバッフル板4にて保炎される状態で燃焼する。従って、パイロット火炎Fpは、安定し、且つ、NOx及びCOの排出量が抑制された低エミッションの状態となる。
【0034】
このようにパイロット火炎Fpを形成した状態で、主ガス用電磁弁15が開弁されて、複数の筒状ガスノズル3から燃料ガスGが噴出されると、その噴出した燃料ガスGの一部が、空気口5からの燃焼用空気Aの吐出により形成される負圧域の誘引作用によってバッフル板4の側に誘引される。よって、そのように誘引される燃料ガスGがパイロット火炎Fpにより着火されて、複数の筒状ガスノズル3から噴出された燃料ガスGが分割状に主炎Fmが形成される状態で燃焼する。
そして、パイロット火炎Fpが安定して形成されていることから、複数の筒状ガスノズル3から噴出された燃料ガスGの流れや、その燃料ガスGが着火する際の高速の気流によるパイロット火炎Fpの吹き消えが十分に抑制されるようになり、着火性能が向上される。
【0035】
即ち、間隔を隔てて主軸心周りに並ぶ複数の空気口5から燃焼用空気Aが吐出されることに伴って、バッフル板4の前方空間における空気口5の周囲に負圧域が形成され、その負圧域の誘引作用により、複数の筒状ガスノズル3から噴出された燃料ガスGの一部がバッフル板4の側に誘引され、そのようにバッフル板4の側に誘引される燃料ガスGにより、燃焼がバッフル板4の近傍から開始するので、複数の筒状ガスノズル3から噴出された燃料ガスGは、バッフル板4にて保炎される状態で燃焼することになる。
また、各筒状ガスノズル3から、主軸心周りに隣接する空気口5から吐出される2つの燃焼用空気Aの流動域同士の間を通るように燃料ガスGが噴出されるので、各筒状ガスノズル3から噴出される燃料ガスGと各空気口5から吐出される燃焼用空気Aとの急激な混合を抑制して燃料ガスGの緩慢燃焼を促進させることができると共に、火炎の分割性を向上することができ、一層の低NOx化を図ることができる。
【0036】
参考例〕
1)上記実施形態では、燃料ガスGを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部Pgをパイロット用ガス噴出孔22とガス拡散体23とで構成したが、例えば放射状に噴出孔を配置した複数のガス噴出孔のみで構成するなど、適宜改変することができる。
【0037】
〔別実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
)上記実施形態では、燃焼量調節範囲における低燃焼量域においてパイロット燃焼単独運転を実行する構成を説明したが、別に、かかるパイロット燃焼単独運転を実行することなく、主ガス噴出孔としての筒状ガスノズル3からの燃料ガスGの噴出を停止することなく、当該燃料ガスGの着火時においてのみパイロット用ガス噴出部Pgからの燃料ガスGの噴出を行ってパイロット火炎Fpを形成する構成においても、パイロット火炎Fpによる低エミッション化の効果を享受できる。
【0038】
)保持フランジ29とバッフル板4との間に隙間を形成するためのスペーサ32の形状、配置、個数等は、上記実施形態で説明したものに限らず適宜改変可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、燃料ガスを噴出する複数の主ガス噴出孔が先端側の外周壁に軸心周りに分散形成されている円筒状の主ガス筒と、前記主ガス筒を外囲し前記主ガス筒との間に燃焼用空気が通流される円筒状の燃焼筒と、前記主ガス筒と前記燃焼筒との間に設けられ、前記燃焼用空気を通過させる複数の空気口が前記主ガス筒の軸心回りに分散形成された板状のバッフル板と、前記主ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを着火可能なパイロット火炎を形成するパイロットバーナと、を備え、前記パイロットバーナが、燃料ガスを放射状に噴出するパイロット用ガス噴出部を先端側に設けた円筒状のパイロット用ガス筒を備えると共に、前記パイロット用ガス筒を前記バッフル板に形成された挿入口に挿入した状態で、前記バッフル板に固定されている燃焼装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 :燃焼筒
2 :主ガス筒
3 :筒状ガスノズル(主ガス噴出孔)
4 :バッフル板
4a :挿入口
5 :空気口
21 :パイロット用ガス筒
22 :パイロット用ガス噴出孔
23 :ガス拡散体
29 :保持フランジ
30 :ネジ
31 :パイロット用空気口
32 :スペーサ
A :燃焼用空気
Fp :パイロット火炎
G :燃料ガス
P :パイロットバーナ
Pg :パイロット用ガス噴出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6