特許第5955068号(P5955068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955068
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20160707BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20160707BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20160707BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20160707BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160707BHJP
【FI】
   H01M8/04 X
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 P
   !H01M8/12
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-94977(P2012-94977)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-222660(P2013-222660A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】岩田 伸
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−223854(JP,A)
【文献】 特開2010−108807(JP,A)
【文献】 特開2006−318902(JP,A)
【文献】 特開2009−026738(JP,A)
【文献】 特開2008−052725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を作動させるための補機と、前記燃料電池の発電電力を交流電力に変換して出力するための交流電力変換手段と、前記燃料電池の発電出力を制御するためのコントローラとを備えた燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池を起動させる起動工程の進行状況を記憶するためのメモリを含み、前記コントローラに関連して、ポータブル電源装置からの電力を入力するための入力端子手段が設けられ、停電起動のときに前記ポータブル電源装置が前記入力端子手段に電気的に接続され、前記ポータブル電源装置からの電力が前記入力端子手段を介して前記コントローラ及び前記補機に供給されて前記起動工程が遂行されるように構成されており、
更に、前記起動工程は、複数の分割工程に分割されており、停電起動のときには、前記起動工程の前記複数の分割工程のうち終了した分割工程については、その分割工程の終了情報が前記コントローラの前記メモリに記憶され、前記起動工程中に前記ポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、前記コントローラは、前記メモリに記憶された終了分割工程の後の分割工程から前記起動工程を再開することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を作動させるための補機と、前記燃料電池の発電電力を交流電力に変換して出力するための交流電力変換手段と、前記燃料電池の発電出力を制御するためのコントローラとを備えた燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池を起動させる起動工程時における前記燃料電池に関する温度変化状況を記憶するためのメモリを含み、前記コントローラに関連して、ポータブル電源装置からの電力を入力するための入力端子手段が設けられ、停電起動のときに前記ポータブル電源装置が前記入力端子手段に電気的に接続され、前記ポータブル電源装置からの電力が前記入力端子手段を介して前記コントローラ及び前記補機に供給されて前記起動工程が遂行されるように構成されており、
停電起動のときには、前記起動工程中の前記燃料電池の起動に関する温度変化状況が前記メモリに記憶され、前記起動工程中に前記ポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、前記コントローラは、前記メモリに記憶された前記燃料電池の起動に関する温度変化状態から前記起動工程を再開することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
記起動工程の遂行中に前記燃料電池の発電電力の出力が可能になると、前記交流電力変換手段は、前記燃料電池からの発電電力を交流電力に変換して出力し、前記交流電力変換手段からの交流電力が前記コントローラ及び前記補機に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを燃料として発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の一例として、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質を用いた燃料電池(「燃料電池セルスタック」とも称する)を備えた燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、燃料電池セルスタックを作動させるための複数の補機を含み、このような補器として、燃料ガスを供給するための燃料ポンプ、酸化材(例えば、空気)を供給するための送風装置及び改質用の水を供給するための水ポンプなどが用いられている。また、燃料電池の出力側には、直流の発電電力を所定の交流電力に変換して出力するための交流電力変換手段が設けられ、また燃料電池の発電電力を制御するためのコントローラが設けられている。
【0003】
このような燃料電池システムでは、起動時には商用電力が利用され、商用電力が系統連系を介してコントローラ及び複数の補機に供給され、この商用電力により複数の補機及びコントローラが作動される。そして、起動後の定常運転状態になると、燃料電池の発電電力に切り換えられ、この発電電力を利用して複数の補機及びコントローラが作動される。ところが、停電時には系統連系を介して商用電力の供給ができないために、燃料電池の起動ができないという問題がある。
【0004】
そこで、停電時の起動を可能にしたシステムも提案されている。一つは、無停電電源装置を利用するものであり(例えば、特許文献1参照)、停電起動時に、無停電電源装置を駆動用電源として用い、この無停電電源装置からの電力を複数の補機などに供給し、この電力を利用して起動している。
【0005】
また、他の一つは、二次電池を利用するものであり(例えば、特許文献2参照)、停電起動時に、二次電池を駆動用電源として用い、この二次電池からの電力を燃料電池及び複数の補機に供給して起動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−242458号公報
【特許文献2】特開2007−228728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したシステムでは、駆動用電源として無停電電源装置、二次電池などの専用の起動用電源を必要としているために、システム全体が複雑になるとともに、その製作コストが高価となる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、レジャー用などの簡易電源として市販されているポータブル電源装置を利用して燃料電池を起動することができる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の燃料システムは、燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を作動させるための補機と、前記燃料電池の発電電力を交流電力に変換して出力するための交流電力変換手段と、前記燃料電池の発電出力を制御するためのコントローラとを備えた燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池を起動させる起動工程の進行状況を記憶するためのメモリを含み、前記コントローラに関連して、ポータブル電源装置からの電力を入力するための入力端子手段が設けられ、停電起動のときに前記ポータブル電源装置が前記入力端子手段に電気的に接続され、前記ポータブル電源装置からの電力が前記入力端子手段を介して前記コントローラ及び前記補機に供給されて前記起動工程が遂行されるように構成されており、
更に、前記起動工程は、複数の分割工程に分割されており、停電起動のときには、前記起動工程の前記複数の分割工程のうち終了した分割工程については、その分割工程の終了情報が前記コントローラの前記メモリに記憶され、前記起動工程中に前記ポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、前記コントローラは、前記メモリに記憶された終了分割工程の後の分割工程から前記起動工程を再開することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項に記載の燃料電池システムは、燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を作動させるための補機と、前記燃料電池の発電電力を交流電力に変換して出力するための交流電力変換手段と、前記燃料電池の発電出力を制御するためのコントローラとを備えた燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池を起動させる起動工程時における前記燃料電池に関する温度変化状況を記憶するためのメモリを含み、前記コントローラに関連して、ポータブル電源装置からの電力を入力するための入力端子手段が設けられ、停電起動のときに前記ポータブル電源装置が前記入力端子手段に電気的に接続され、前記ポータブル電源装置からの電力が前記入力端子手段を介して前記コントローラ及び前記補機に供給されて前記起動工程が遂行されるように構成されており、
停電起動のときには、前記起動工程中の前記燃料電池の起動に関する温度変化状況が前記メモリに記憶され、前記起動工程中に前記ポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、前記コントローラは、前記メモリに記憶された前記燃料電池の起動に関する温度変化状態から前記起動工程を再開することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項に記載の燃料電池システムでは、記起動工程の遂行中に前記燃料電池の発電電力の出力が可能になると、前記交流電力変換手段は、前記燃料電池からの発電電力を交流電力に変換して出力し、前記交流電力変換手段からの交流電力が前記コントローラ及び前記補機に供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムによれば、コントローラに関連して、ポータブル電源装置からの電力を入力するための入力端子手段が設けられているので、停電起動のときには、この入力端子手段にポータブル電源装置が電気的に接続され、ポータブル電源装置からの発電電力がこの入力端子手段を介してコントローラ及び補機に供給され、このポータブル電源装置を用いて燃料電池を起動させることができる。また、停電起動のときには、複数の分割工程のうち終了した分割工程の終了情報がコントローラのメモリに記憶され、ポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、記憶された終了分割工程の後の分割工程から起動工程が再開されるので、起動工程の時間が長くても燃料電池を所要の通りに起動させることができる。尚、ポータブル電源装置とは、例えばカセットボンベの燃料ガスによりエンジンを回転させて発電を行うポータブル発電機、また例えば家庭用コンセントから充電するバッテリを備えたポータブル電源などである。
【0015】
また、本発明の請求項に記載の燃料電池システムによれば、上述したと同様に、停電起動のときには、ポータブル電源装置からの発電電力が入力端子手段を介してコントローラ及び補機に供給されるので、このポータブル電源装置を用いて燃料電池を起動させることができる。また、停電起動のときには、起動工程中の燃料電池の起動に関する温度変化状況がコントローラのメモリに記憶され、起動工程中にポータブル電源装置が作動停止した後に再び作動させたときには、記憶された燃料電池の起動に関する温度変化状態から起動工程が再開されるので、このようにしても燃料電池を所要の通りに起動させることができる。
【0016】
更に、本発明の請求項に記載の燃料電池システムによれば、起動工程の遂行中に燃料電池の発電電力の出力が可能になると、交流電力変換手段は、燃料電池からの発電電力を交流電力に変換して出力し、この交流電力を利用してコントローラ及び補機が作動されるので、ポータブル電源装置の電力利用を抑えて燃料電池を所要の通りに起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に従う燃料電池システムの一実施形態を示す簡略図。
図2図1の燃料電池システムの制御回路を簡略的に示す回路図。
図3図1の燃料電池システムの通常時の起動運転の流れを示すフローチャート。
図4図1の燃料電池システムの停電時の起動運転の流れを示すフローチャート。
図5】他の実施例の停電時の起動運転の一部の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明する。図1において、図示の燃料電池システム2は、炭化水素系の燃料ガス、例えば天然ガス(都市ガス)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器4と、改質器4にて改質された燃料ガス及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行う固体酸化物形の燃料電池6(燃料電池セルスタック)と、空気を燃料電池6に送給するための送風手段8と、を備えている。
【0019】
燃料電池セルスタック6は、燃料電池反応によって発電を行うための複数の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた酸素極とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0020】
この燃料電池6の燃料極の導入側は、改質燃料ガス送給ライン10を介して改質器4に接続され、この改質器4は、ガス・水蒸気送給ライン12を介して気化器14に接続され、この気化器14は、燃料ガス供給ライン16を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源18(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続されている。またこの気化器14は、水供給ライン20を介して水供給源22(例えば、水道管、水タンクなど)に接続されている。改質器4は、改質触媒によって燃料ガスを水蒸気改質を行い、また気化器14は、水供給ライン20を通して送給される水を気化させて水蒸気を発生する。
【0021】
燃料ガス供給ライン16には、脱硫器24及び燃料ポンプ26が配設されている。脱硫器24は燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去し、燃料ポンプ26は燃料ガス供給源18からの燃料ガスを燃料ガス供給ライン16を通して気化器14に送給し、その回転数を制御することによって、燃料ガスの供給流量が調整される。また、水供給ライン20には水ポンプ34が配設され、この水供給用ポンプ34は、水供給源22からの水を水供給ライン20を通して気化器14に供給し、その回転数を制御することによって、水の供給流量が調整される。
【0022】
この燃料電池6(燃料電池セルスタック)の酸素極の導入側は、空気送給ライン36を介して空気(酸化材)を予熱するための空気予熱器38に接続され、この空気予熱器38は、空気供給ライン40を介して送風手段8に接続されている。送風手段8は、例えば送風ブロアから構成され、この送風ブロアの回転数を制御することによって、空気供給ライン40を通して供給される空気の送給流量が調整される。
【0023】
燃料電池6の燃料極及び酸素極の各排出側には燃焼室44が設けられ、燃料電池6の一端から排出された反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)と酸素極側から排出された空気(酸素を含んでいる)とがこの燃焼室44に送給されて燃焼される。この燃焼室44は排気ガス送給ライン46を通して空気予熱器38に接続され、空気予熱器38を流れる排気ガスは排気ガス排出ライン48を介して大気に排出される。空気余熱器38においては、空気供給ライン40を通して供給される空気と排気ガス送給ライン46を通して送給される排気ガスとの間で熱交換が行われ、この熱交換によって加温された空気が空気送給ライン36を通して燃料電池6に送給される。
【0024】
燃料電池システム2は、このように構成されているので、燃料ポンプ26、水ポンプ34及び送風手段8(送風ブロア)などが、燃料電池6を起動させるための補機98(図2参照)を構成し、これら補機98は、コントローラ56によって後述する如く作動制御される。
【0025】
この実施形態では、燃料電池6の起動に関連する温度を検知するために、第1温度センサ50及び第2温度センサ52が設けられている。第1温度センサ50は、改質器4に関連して配設され、改質器4の温度(換言すると、改質器4における改質反応温度)を検知する。また、第2温度センサ52は、燃料電池6(燃料電池セルスタック)に関連して配設され、燃料電池6の温度(換言すると、燃料電池6の作動温度)を検知する。
【0026】
この燃料電池システム2の制御回路は、図2に示す構成を有している。図2において、この燃料電池6の出力側には交流電力変換手段60が設けられ、燃料電池6の出力側が発電出力ライン61を介して交流電力変換手段60に接続されている。この交流電力変換手段60は、燃料電池6の発電電力(直流電力)を所定の直流電力に変換するための直流/直流変換手段62と、この直流/直流変換手段62からの直流電力を所定周波数の交流電力に変換するための直流/交流変換手段63とを含んでおり、この直流/交流変換手段63からの交流電力が発電出力として出力される。このような交流電力変換手段60は、例えばパワーコンディショナなどから構成することができる。
【0027】
交流電力変換手段60の出力側には、交流電力を出力する電力出力ライン64が設けられ、この電力出力ライン64は、第1分岐出力ライン66と第2分岐出力ライン68とに分岐され、第2分岐出力ライン68に出力切換スイッチ70が配設されている。第1分岐出力ライン66は、例えば200Vの交流電力が出力され、かかる第1分岐出力ライン66が商用電力に系統連系される。また第2分岐出力ライン68は、例えば100Vの交流電力が出力される。通常時、出力切換スイッチ70が開状態に保たれ、第1分岐出力ライン66を介して発電電力が出力されたり、この第1分岐出力ライン66を介して破線矢印72で示すように商用電力が送給される。また、停電時には、出力切換スイッチ70が閉状態に保たれ、第2分岐出力ライン68から例えば100Vの交流電力が出力される。
【0028】
また、この電力出力ライン64は、分岐供給ライン74を介してコントローラ56に接続され、この電力出力ライン64に入力切換スイッチ76が設けられている。この制御回路では、家庭用コンセントからの交流電力を用いて燃料電池6(燃料電池セルスタック)の起動運転が可能なように、またポータブル電源装置、例えばポータブル発電機78からの交流電力を用いて燃料電池6の起動運転が可能なように構成されている。即ち、入力切換スイッチ76の一方の端子部76aは分岐供給ライン74に接続され、その他方の端子部76bは第1入力ライン80を介して第1入力端子手段82接続され、この第1入力ライン80に第1入力スイッチ84が配設されている。また、この第1入力ライン80と電気的に並列に第2入力ライン86が設けられ、この第2入力ライン86の一端側が入力切換スイッチ76の端子部76aに接続され、その他端側が第2入力端子手段88に接続され、この第2入力ライン86に第2入力スイッチ90が配設されている。
【0029】
このように構成されているので、通常時、入力切換スイッチ76は端子部76aと接続する第1の切換状態に保たれ、燃料電池6からの発電電力又は系統連系を通しての商用電力がコントローラ56に供給される。一方、外部電力(家庭用コンセント又はポータブル発電機78)を利用して起動するときには、図2に示すように、入力切換スイッチ76は他方の端子部76bと接続する第2の切換状態に切り換えられる。このとき、家庭用コンセントからの商用電力を利用する場合、第1入力スイッチ84が閉状態に保持され、また第1入力端子手段82が家庭用コンセントに接続され、家庭用コンセントからの商用電力が第1入力端子手段82、第1入力ライン80及び分岐供給ライン74を介してコントローラ56に供給され、コントローラ56は、家庭用コンセントからの商用電力により作動される。また、ポータブル発電機78からの発電電力を利用する場合、第2入力スイッチ90が閉状態に保持され、また第2入力端子手段88がポータブル発電機78の発電出力部(図示せず)に接続され、ポータブル発電機78からの発電電力(交流電力)が第2入力端子手段88、第2入力ライン86及び分岐供給ライン74を介してコントローラ56に供給される。
【0030】
この形態では、更に、分岐供給ライン74の上流側部(入力切換スイッチ74より上流側の部位)が、第1分岐送給ライン92を介して交流電力変換手段60の交流/直流変換手段94に接続され、この交流/直流変換手段94は、出力送給ライン96を介して補機98(この形態では、燃料ポンプ26、水ポンプ34、送風手段8など)に接続され、この出力送給ライン96に出力スイッチ100が設けられている。また、分岐供給ライン74の下流側部(入力切換スイッチ74より下流側の部位)が、第2分岐送給ライン102を介して第1分岐送給ライン92に接続され、この第2分岐送給ライン102に開閉スイッチ104が設けられている。
【0031】
このように構成されているので、入力切換スイッチ76が端子部76aと接続する第1の切換状態のときには、コントローラ56に供給される燃料電池6からの発電電力(又は商用電力)の一部が、第1分岐送給ライン92、交流/直流変換手段94、出力送給ライン96及び出力スイッチ100(閉状態に保持される)を介して補機98に送給される。一方、入力切換スイッチ手段76が他方の端子部76bと接続する第2の切換状態のときには、開閉スイッチ104が閉状態に切り換えられる。そして、ポータブル発電機78(又は家庭用コンセント)を利用するときには、入力切換スイッチ76は他方の端子部76bと接続する第2の切換状態に切り換えられ、コントローラ56に送給されるポータブル発電機78からの発電電力(又は家庭用コンセントから送給される商用電力)の一部が、第2分岐送給ライン102、第1分岐送給ライン92、交流/直流変換手段94、出力送給ライン96及び出力スイッチ100(閉状態に保持される)を介して補機98に送給される。
【0032】
この形態では、コントローラ56は、燃料電池6の起動情報を記憶するためのメモリ106を含んでおり、停電時において燃料電池システム2を起動するときに、燃料電池6の起動工程に関する情報がこのメモリ106に記憶されるように構成されている。この実施形態では、燃料電池システム2(具体的には、燃料電池6)を起動するための起動工程が4つの分割工程、即ち第1〜第4起動工程に分割され、第1〜第4起動工程がこの順で遂行される。
【0033】
上述した燃料電池システム2の起動は、例えば、図3に示すフローに従って行われる。図1及び図2とともに図3を参照して、通常の起動運転により燃料電池システム2を起動する(換言すると、200Vの交流電力を系統連系を通して取得して起動する)には、操作装置(図示せず)を起動操作すればよく、操作装置を起動操作する(ステップS1)と、第1起動工程が遂行される(ステップS2)。即ち、コントローラ78により送風手段8が作動され、この送風手段8により燃料電池6の酸素極側への空気の供給が行われる(ステップS3)。また、コントローラ78により燃料ポンプ26が作動され、この燃料ポンプ26により燃料電池6の燃料極側への燃料ガスの供給が行われる(ステップS4)。更に、コントローラ78により点火装置108(燃焼室44に配設されている)が点火作動され(ステップS5)、このようにして燃焼室44にて燃料ガスの燃焼が行われる(ステップS6)。
【0034】
そして、燃焼室44での燃料ガスの燃焼が行われて第1温度センサ50の検知温度(即ち、改質器4の改質反応温度)が第1所定温度(80〜120℃程度の温度、例えば90℃に設定される)に達すると、ステップS7からステップS8に進み、第1起動工程が終了して第2起動工程が遂行される。
【0035】
この第2起動工程では、コントローラ56により水ポンプ34が作動され、この水ポンプ34により改質用水の供給が行われる(ステップS9)。そして、改質用水の供給後に第1温度センサ50の検知温度が例えば250℃まで上昇すると、ステップS10からステップS11に進み、第2起動工程が終了して第3起動工程が遂行される。
【0036】
この第3起動工程では、コントローラ56により水ポンプ34の回転数が上昇され、改質用水の供給流量が増大する(ステップS12)。そして、この供給流量の増大の後に第1温度センサ50の検知温度が700℃まで上昇すると、ステップS12からステップS14に進み、第3起動工程が終了して第4起動工程が遂行される。
【0037】
この第4起動工程では、コントローラ56により水ポンプ34の回転数が更に上昇され、改質用水の供給が更に増大される(ステップS15)。そして、改質用水の更なる供給増大の後に第2温度センサ52の検知温度が例えば650℃まで上昇すると、燃料電池システム2の定常運転が可能な状態となるので、ステップS16からステップS17に進み、第4起動工程が終了し、燃料電池システム2(燃料電池6)は定常運転で運転される(ステップS18)。
【0038】
このように通常の起動運転においては、起動工程、即ち第1〜第4起動工程が一連の動作でもって行われ、この起動工程の後に燃料電池システム2が定常運転される。
【0039】
通常時(即ち、系統連系を通して商用電力を取得して起動を行う時)には、上述したようにして一連の起動動作でもって燃料電池システム2を起動することができるが、停電時には、系統連系を通して商用電力を得ることができないので、上述したようにして起動することができないが、この場合、例えばポータブル発電機78を用いて次のように起動するようになる。
【0040】
主として図2及び図4を参照して、停電時に燃料電池システム2を起動するには、ポータブル発電機78を作動させて発電運転状態とし、このポータブル発電機78の発電出力部を図2に一点鎖線で示すように第2入力端子部88に接続する(ステップS21)。そして、第2入力スイッチ90をオン(閉状態)にした後に燃料電池システム2の起動操作を行うようにすればよい(ステップS22)。かくすると、ポータブル発電機78の発電出力を利用して燃料電池システム2の第1起動工程が開始され(ステップS22)、上述した第1起動動作が遂行される(ステップS24)。このとき、入力切換スイッチ76が第2の切換状態に保持され、開閉スイッチ104が閉状態に保持され、また出力スイッチ100が閉状態に保持されており、従って、ポータブル発電機78からの発電電力がコントローラ56に供給されて作動されるとともに、その発電電力が交流/直流変換手段74を介して補機98に供給されて上述したように作動される。
【0041】
このポータブル発電機78として、例えばカセットボンベを用いる形態のものを使用することがあり、この場合、燃料ガスが充分に充填されているものを使用しても約2時間程度しか発電を行うことができない。一方、燃料電池システム2の起動運転には4時間を超える場合もあり、この場合、燃料電池システム2の起動運転中にカセットボンベの燃料ガスを消費してポータブル発電機78が作動停止することになる。この発電停止が生じると、燃料電池2は起動不良となって起動させることができないが、この起動不良を解消するために、次のように構成されている。
【0042】
第1起動動作中に例えば燃料ガスを消費してポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS25からステップS26に移り、カセットボンベ(図示せず)を新しいものに交換してポータブル発電機78を再作動してその発電電力を供給すると、点火を確実にするために送風手段8によるパージが行われた後にステップS26からステップS24に戻り、燃料電池システム2の第1起動動作が再び行われ、このように第1起動動作中にポータブル発電機78が作動停止したときには、再作動後はこの第1起動動作から再開される。
【0043】
このようにして上述した第1起動工程が終了する(即ち、第1温度センサ50の検知温度が第1所定温度まで上昇する)(ステップS27)と、ステップS28に進み、第1起動工程の終了情報がコントローラ56のメモリ106に記憶され、その後第2起動工程が開始され(ステップS29)、第2起動動作が遂行される(ステップS30)。
【0044】
この第2起動動作中においてもポータブル発電機78の作動停止の確認が行われ、例えば燃料ガスを消費してポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS31からステップS32に移り、カセットボンベ(図示せず)を新しいものに交換してポータブル発電機78を再作動させると、上述したと同様に送風手段8によるパージが行われた後、ステップS32からステップS30に戻り、燃料電池システム2の第2起動動作が再び行われる。このように第2起動動作中にポータブル発電機78が作動停止したときには、第1起動工程の終了情報がメモリ106に記憶されていることから、この第1起動工程終了情報に基づき、再作動後、コントローラ56は第2起動工程から再開し、第2起動動作が遂行される。
【0045】
このようにして上述した第2起動工程が終了する(即ち、第1温度センサ50の検知温度が250℃まで上昇する)(ステップS33)と、ステップS34に進み、第2起動工程の終了情報がコントローラ56のメモリ106に記憶され、その後第3起動工程が開始され(ステップS35)、第3起動動作が遂行される(ステップS30)。
【0046】
この第3起動動作中においても上述したと同様にポータブル発電機78の作動停止の確認が行われ、ポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS37からステップS38に移り、ポータブル発電機78を再作動させると、上述したと同様に送風手段8によるパージが行われた後にステップS38からステップS36に戻り、燃料電池システム2の第3起動動作が再び行われる。このように第3起動動作中にポータブル発電機78が作動停止したときには、第1及び第2起動工程の終了情報がメモリ106に記憶されていることから、この第2起動工程終了情報に基づき、再作動後、第3起動工程から再開され、コントローラ56は第3起動動作を遂行する。
【0047】
このようにして上述した第3起動工程が終了する(第1温度センサ50の検知温度が700℃まで上昇する)(ステップS39)と、ステップS40に進み、第3起動工程の終了情報がコントローラ56のメモリ106に記憶され、その後第4起動工程が開始され(ステップS41)、第4起動動作が遂行される(ステップS42)。
【0048】
この第4起動動作中においても上述したと同様にポータブル発電機78の作動停止の確認が行われ、ポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS43からステップS44に移り、ポータブル発電機78を再作動させると、上述したと同様に送風手段8によるパージが行われた後にステップS44からステップS42に戻り、燃料電池システム2の第4起動動作が再び行われる。このように第4起動動作中にポータブル発電機78が作動停止したときには、第1〜第3起動工程の終了情報がメモリ106に記憶されていることから、この第3起動工程終了情報に基づき、再作動後、第4起動工程から再開され、コントローラ56は第4起動動作を遂行する。
【0049】
そして、このようにして上述した第4起動工程が終了する(第2温度センサ52の検知温度が650℃まで上昇する)(ステップS45)と、ステップS46に進み、第4起動工程の終了情報がメモリ106に記憶され、これにより起動工程が終了し、その後燃料電池システム2の定常運転が遂行される。このように、起動工程を複数の分割工程に分割し、ポータブル発電機78が作動停止したときには終了した分割工程の後の分割工程から再開しているので、起動工程の時間が長くても燃料電池システムを所要の通りに起動させることができる。
【0050】
この実施形態では、通常起動時及び停電起動時において起動工程終了後の通常運転になった後に燃料電池6からの発電出力を出力させ、この出力電力を利用してコントローラ56及び補機98を作動させているが、このような構成に代えて、図5に示すように構成することもできる。
【0051】
図5において、この変形形態の制御においては、第4起動工程の制御に修正が施され、この第4起動工程が更に二つの分割工程に分けられている。第4起動動作が遂行され(ステップS42)、第2温度センサ52の検知温度が例えば600℃まで上昇すると、ステップS42−1からステップS42−4に進み、燃料電池6からの発電出力可能な状態となり、第4起動工程の前半部が終了し、この前半部終了情報がメモリ106に記憶され、燃料電池6からの発電電力が交流電力変換手段60から出力される(ステップS42−5)。かくすると、入力切換スイッチ手段76が第1の切換状態となり、交流電力変換手段60からの出力電力がコントローラ56に供給されるとともに、出力スイッチ手段100を介して補機98に供給され、コントローラ56及び補機98がこの出力電力により作動され、このように制御することによって、ポータブル発電機78の作動を抑える(換言すると、カセットボンベの燃料ガスの消費を少なく抑える)ことができる。
【0052】
尚、この第4起動工程の前半部においてポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS42−1からステップS42−2を経てステップS42−3に移り、ポータブル発電機78を再作動させると、ステップS42−3からステップS42−1に戻る。
【0053】
燃料電池6の発電電力の出力が行われると、第4起動工程の後半部に移り、第2温度センサ52の検知温度が650℃まで上昇すると起動工程が終了し(ステップS42−9)、後燃料電池システム2の定常運転が遂行される(ステップS47)。
【0054】
尚、この第4起動工程の後半部においてポータブル発電機78が作動停止すると、ステップS42−6からステップS42−7を経てステップS42−8に移り、ポータブル発電機78を再作動させると、ステップS42−8からステップS42−6に戻る。
【0055】
以上、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、起動工程を4つの分割工程(第1〜第4起動工程)に分けているが、このような構成に限定されず、起動工程を二つ、三つ又は五つ以上に分割するようにしてもよい。
【0057】
また、例えば、上述した実施形態では、ポータブル電源装置としてポータブル発電機78を用いているが、これに代えて、充電式バッテリを備えた形態のものを利用することもでき、この場合、交流電力変換手段60及びコントローラ56に直流/直流変換手段を含め、ポータブル電源装置からの直流電力を直流/直流変換手段を介して補機98及びコントローラ56に供給するようにすればよい。
【0058】
また、例えば、上述した実施形態では、水ポンプの制御との関連で起動工程を4つに分割しているが、起動工程時における燃料電池6の起動に関する温度変化情報(例えば、改質器4の改質反応温度及び燃料電池6の作動温度の温度変化情報)を予めマップデータなどでメモリ106に登録するとともに、停電起動中の燃料電池6の起動に関する温度変化状況をメモリ106に記憶し、このマップデータと燃料電池6に関する温度変化状況とを対比させて起動工程の進行度合を把握し、ポータブル電源装置(ポータブル発電機78)が作動停止して再作動させたときに、ポータブル発電機78が作動停止した段階から起動工程を再開するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、燃料電池6としての固体酸化物形燃料電池に適用して説明したが、その他の種類の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池などにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
2 燃料電池システム
4 改質器
6 燃料電池
8 送風手段
14 気化器
26 燃料ポンプ
34 水ポンプ
56 コントローラ
60 交流電力変換手段
78 ポータブル発電機
82,84 入力端子手段



図1
図2
図3
図4
図5