特許第5955089号(P5955089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955089
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】流体加熱冷却シリンダー装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20160707BHJP
   F24H 1/14 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H01L21/02 Z
   F24H1/14 C
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-107128(P2012-107128)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-235945(P2013-235945A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】305054854
【氏名又は名称】株式会社フィルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】古村 雄二
(72)【発明者】
【氏名】村 直美
(72)【発明者】
【氏名】西原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】清水紀嘉
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−144461(JP,A)
【文献】 特開2011−258386(JP,A)
【文献】 実開平06−023242(JP,U)
【文献】 特開昭54−086533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
F24H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の側面に前記柱を囲むように周溝を複数段設け、
前記柱の側面であって隣り合う前記周溝の間のそれぞれ、前記周溝同士を連結する連結溝を複数ずつ設けてあり、
前記複数の連結溝のそれぞれは、前記周溝を挟んで隣り合う他の連結溝とは、前記周溝における周上の位置が重ならないように配置されてあり、
前記柱が密着されて収納されるシリンダーの内壁と前記柱が作る流路の入口から出口に向かって前記流路を流体が流れ、前記連結溝から前記周溝の内壁に前記流体を衝突させて、前記柱と前記流体が熱交換することを特徴とする流体の加熱装置。
【請求項2】
前記流体がガスまたは液体であることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ガスが窒素やアルゴン、ヘリューム、炭化水素、フッ化炭素を含む不活性ガスである、あるいは水素または水素を放出する還元ガス、酸素やイオウ、セレン、テルルなど6属の元素を含むガスである、あるいはFなど7属の元素を含むガスである、あるいは前記ガスの複数組み合わせたガスであることを特徴とする請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項2または記載の加熱装置。
【請求項5】
前記液体が水であることを特徴とする請求項2記載の加熱装置である。
【請求項6】
前記柱と前記シリンダーが金属、または異種金属を被覆した金属であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記柱と前記シリンダーが石英やアルミナ、シリコンカーバイドなどを含むセラミクスであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記柱にヒーターを挿入して円柱を加熱する、または前記シリンダーをヒーターで加熱することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記柱が円柱または四角柱であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、特にガスを瞬時に加熱するシリンダー形状の装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスを加熱する装置がある。一般には加熱したパイプにガスを通じて加熱する。または、フィンのついたパイプに加熱した流体を流し、そのフィンの間を通じてガスを加熱する。
【0003】
ガスを加熱するのと反対のガスを冷却する装置も同様構造である。
【0004】
従来例を図1図2に示した。
【0005】
図1は衝突噴流という加熱機構を実現した一例の特許(再公表特許W02006/030526)の図を模式的に転写したものである。パイプを通過したガスが加熱した円板にあたり熱交換する。
【0006】
図2は板状の形状をした加熱ガスを発生させる装置の特許の図(特願2008−162332膜形成方法および膜形成装置の図5)を転写したものである。
【0007】
ガスを瞬時に加熱して高温ガスを噴き出す装置の応用は、暖房や乾燥だけでなく、基板の上に塗布したさまざまの材料(金属や誘電体など)を加熱して焼成する工程がある。
【0008】
本発明はガスを瞬時に加熱して高温ガスを噴き出す装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再公表特許W02006/030526
【特許文献2】特願2008−162332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガスを加熱する装置をできるだけ小型にしたい。また製造方法を簡単にしたい。
【0011】
加熱温度範囲も室温から1000℃またはそれ以上の温度を実現したい。加工が簡単になれば製造コストも安価にできる。安価になるとガス加熱装置の応用産業が広がる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項1に記載のように、柱の側面に柱を囲むように周溝を複数段設け、隣り合う当該周溝の間に当該周溝同士を連結する複数の連結溝のセットが当該側面に設けてあり、当該周溝を挟むようにある2つの当該セットの連結溝の当該周溝における周上の位置が重ならないように配置されてあり、当該柱が密着されて収納されるシリンダーの内壁と当該柱が作る流路を流体が流れて、当該柱と当該流体が熱交換することを特徴とする流体の加熱装置である。
【0013】
請求項2に係る発明は前記流体がガスまたは液体であることを特徴とする請求項1記載の加熱装置である。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記ガスが窒素やアルゴン、ヘリューム、炭化水素、フッ化炭素を含む不活性ガスである、あるいは水素または水素を放出する還元ガス、酸素やイオウ、セレン、テルルなど6属の元素を含むガスである、あるいはFなど7属の元素を含むガスである、あるいは当該ガスの複数組み合わせたガスであることを特徴とする請求項2記載の加熱装置である。
【0015】
請求項4に係る発明は前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項2、3記載の加熱装置である。
【0016】
請求項5に係る発明は前記液体が水であることを特徴とする請求項2記載の加熱装置である。
【0017】
請求項6に係る発明は前記柱と前記シリンダーが金属、または異種金属を被覆した金属であることを特徴とする請求項1〜5記載の加熱装置である。
【0018】
請求項7に係る発明は前記柱と前記シリンダーが石英やアルミナ、シリコンカーバイドなどを含むセラミクスであることを特徴とする請求項1〜6記載の加熱装置である。
【0019】
請求項8に係る発明は前記柱にヒーターを挿入して柱を加熱する、または前記シリンダーをヒーターで加熱することを特徴とする請求項1〜7記載の加熱装置である。
【0020】
請求項9に係る発明は前記柱が円柱または四角柱であることを特徴とする請求項1〜8記載の加熱装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、簡単な構造の加熱されたシリンダーに収納された柱と流体の熱交換ができる。必要な構造の加工は柱の表面だけでよい。
【0022】
細く加工した連結溝を流体が流れるとき、流速が増す。この高速の流体が前記周溝の壁に勢いよく衝突して加熱した柱から瞬時に熱交換する。
【0023】
連結溝は周溝を挟んで同じ位置にないので、連結溝から出た流体は層流にならない。もし層流になると当該溝と流体の間に淀み層ができて、これが熱伝達の抵抗になり、瞬時の熱交換を妨げる。
【0024】
前記シリンダーと溝を加工した柱は精度よく加工して密着するように収納するだけで、加工した溝が流路を形成するので、この構造の製作工数は少なく簡単である。
【0025】
請求項2から5に係る発明によれば、流体としてガスと液体が扱える。ガスとしては熱分解しない範囲で任意のガスを選べる。もし酸素などを選ぶと加熱した酸素を瞬時に作り出せる。水素を選ぶと強力な高温還元ガスを瞬時に作り出せる。これらの高温ガスを機材に吹き付けることにより、基材自体を加熱しないでも表面を加熱ガスで処理可能である。
【0026】
流体として水を用いると高温のスチームを瞬時に作り出せる。本加熱装置は小型に製作できるので、本スチームを照射したい基材に近づけて照射可能である。
【0027】
加熱した高温スチームは基材の薬品を使わない洗浄に有効であるので、本加熱装置は洗浄装置の部品として応用できる。
【0028】
請求項6,7に係る発明によれば、本加熱装置を金属やセラミクスで製作可能である。前記柱と前記シリンダーを金属で作製し、接続部分を溶接すると、密閉構造が可能で、外部環境と遮断した加熱装置が製作可能である。
【0029】
セラミクスなど酸化されない材料を用いると酸化性のガスや腐食性のある流体も瞬時に加熱可能である。また、金属汚染を嫌う用途に用いることが可能である。
【0030】
請求項8、9に係る発明によれば、前記柱の中心軸に孔をあけて、ここにヒーターを入れるだけで加熱が可能である。本構造は簡単であり、ヒーターが1本のとき特に保守が簡単になる。本加熱装置全体を円柱状または四角柱状に製作可能で、円形または四角形のリング状加熱ガスビームを作ることが可能である。シリンダーの出口を狭めて一本の管にすれば、一本のビーム状の加熱ビームを作ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、従来のガス加熱装置の一例(再公表特許W02006/030526)の模式図。
図2図2は、従来のガス加熱装置の一例(特願2009−144807 ガス加熱装置の図5)の模式図。
図3図3は、円柱部品の模式図。
図4図4は、円柱部品とそれを収納するシリンダー部品を組み込んだ流体加熱機構部の斜視図。
図5図5は、流体加熱機構部を収納したケース全体を表す流体加熱装置の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図3に円柱部品300の立体模式図を示す。円柱部品300にはヒーターを収納するためのヒーター孔301が中心に備えてある。
【0033】
円柱300はステンレス鋼であり、規格SUS310Sを用いた。円柱を加工して周囲に6段の円周溝G1,G2,G3、G4,G5,G6を作製した。深さは3mm、幅は5mmである。円周溝G1とG2を連結する4つ連結溝C1Aが作製した。C1Aの1はG1に連結していることを指し、Aは円周上の位置を特定する位相を表現する。
【0034】
連結溝C1Aの深さは3mm、幅は1mmである。
【0035】
同様にG2とG3を連結する4つの溝C2Bを作製する。C2Bの2はG2に連結する連結溝であることを示し、Bは円周上の位置を特定する位相を表現する。
【0036】
円周上の位相Bは、位相Aの中点に位置させた。この位相の関係は自由に設計できるものである。この場合、円周上に4つの連結溝を備えたので位相AとBは45度ずれた位置関係にある。連結溝が円周上に6つ備えたときは、ずれは30度となる。
【0037】
同様にして連結溝C3A、C4B、C5A、C6Bが作製される。
【0038】
流体導入管302が溶接されていて、これに導入した流体は円周溝G1に導かれる。
【0039】
ヒーター孔301と円周溝G1〜G6、連結溝C1A、C2B、C3A、C4B,C5A、C6Bを作製した円柱部品300はシリンダーに収納される。
【0040】
図4は、円柱部品300とそれを収納するシリンダー部品を組み込んだ流体加熱機構部400の斜視図である。
【0041】
シリンダー部品401に内壁に円柱部品300は密着する。外部に流体が漏れないように接続部は溶接する。
【0042】
流体導入管302から加圧して導入した流体は円周溝を通り、連結溝を通過するときに高速流体となる。高速流体は円周溝の壁に高速で垂直に衝突する。垂直に衝突すると、熱伝達の抵抗となる淀み層ができない。
【0043】
円柱部品300はヒーター給電線402から給電されたヒーター403で加熱される。ヒーターはシリコンカーバイド製であり、1000℃の加熱が可能である。
【0044】
シリンダー部品401、円柱部品300はSUS310Sであるので、1000℃までの加熱が可能である。
【0045】
図5は前記の流体加熱機構部400を収納したケース全体を表す流体加熱装置の断面模式図である。
【0046】
流体加熱装置500は流体加熱機構部400を断熱ケースに入れたものである。流体加熱機構400は断熱材501を収納した断熱材ケース502で断熱される。
【0047】
断熱材ケース502の外にステンレス製の外ケース503があり、その端はフランジ504に接続されてある。
【0048】
円柱部品はヒーター給電線402から給電されるヒーター403により加熱される。図示しない熱電対で円柱部品の温度が測定され、その温度に維持されるように電力が制御される。500℃の加熱された窒素を作り出すためにこの温度を500℃とした。
【0049】
ガス導入管505から窒素ガスを100SLM供給する。窒素ガスは円周溝506と、本図では見えない前記連結溝を経由して、流れて、流体加熱機構400の中で瞬時に加熱される。
【0050】
500℃に加熱された窒素はガス出口管507から外に出る。
【0051】
加熱温度を300℃にすると300℃の窒素が得られる。
【0052】
以上、窒素ガスを加熱する実施例を述べた。本加熱機構はガスが分解しない限り窒素ガス以外のガスを用いることは自由である。
【0053】
アルゴン、ヘリューム、炭化水素、フッ化炭素を含む不活性ガスである、あるいは水素または水素を放出する還元ガス、酸素やイオウ、セレン、テルルなど6属の元素を含むガス、あるいはFなど7属の元素を含むガスも、用いることが可能である。また当該ガスの複数を組み合わせたガスであってもよい。
【0054】
また前記ガスは水または空気を含むガスであってもよい。
【0055】
ガスのほかの流体でも用いることは自由である。例えば流体が水であると、高温のスチームを作り出すことが可能である。
【0056】
以上の実施例ではシリンダー、円柱部品をSUS310Sで作製した。使用する温度範囲や流体の性質に応じて好適な材料を選ぶことは自由である。部品を構成する材料はステンレスやアルミニュームなどの金属のほか、異種金属を被覆した金属であってもよい。
【0057】
また、金属汚染を特に嫌う応用では前記円柱部品と前記シリンダーが石英やアルミナ、シリコンカーバイドなどを含むセラミクスであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、大流量の高温のガスや液体を作り出す小型の部品を提供する。応用分野は印刷物の乾燥、小型の暖房器具、温室の暖房、洗浄のための高温の薬剤の生成に用いることができる。太陽電池やフラットパネル表示装置(FPD)をガラス基板などの大型基板の上に安価に成膜する技術にも好適である。
【符号の説明】
【0059】
101ガス入口
102空洞ディスク
103パイプ
104ガス出口
300円柱部品
301ヒーター孔
302流体導入管
C1A、C2B、C3A、C4B、C5A、C6B 連結溝
G1、G2、G3、G4、G5、G6円周溝
400流体加熱機構部
401シリンダー部品
402ヒ−ター給電線
403ヒーター
500流体加熱装置
501断熱材
502断熱材ケース
503外ケース
504フランジ
505ガス導入管
506円周溝
507ガス出口管
図1
図2
図3
図4
図5