特許第5955107号(P5955107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955107
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/24 20060101AFI20160707BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H02K9/24 A
   H02K9/06 G
   H02K9/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-126995(P2012-126995)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-252031(P2013-252031A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土佐 直人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 高広
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敦
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−166273(JP,U)
【文献】 実開昭62−168708(JP,U)
【文献】 特開2007−253712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/24
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給によって回転磁界を発生させる固定子と、
前記回転磁界によって回転する回転子と、
前記回転子と同軸で、回転方向が予め定められた一方向回転ファンを構成する冷却ファンと、
前記冷却ファンに取り付けられ、前記定められた回転方向と逆方向に回転すると音を発する警笛とを備え、
前記冷却ファンはファンボスと該ファンボスの一側の面に設けられた複数の羽根とを備え、
前記警笛は前記複数の羽根の裏面側のファンベースに取り付けられているものである電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機において、
前記警笛は、前記冷却ファンの周方向に複数取り付けられ、且つ、該周方向に等間隔に配置されているものである電動機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動機において、
前記警笛は可動弁を備え、該可動弁は、前記冷却ファンが前記定められた回転方向に回転すると閉じた状態となり音を発せず、前記定められた回転方向と逆方向に回転すると開いた状態となり音を発するものである電動機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動機において、
前記警笛の取付けを一方向にのみ可能とする警笛取付けガイドを前記警笛の取付け位置に設けたものである電動機。
【請求項5】
電源供給によって回転磁界を発生させる固定子と、
前記回転磁界によって回転する回転子と、
前記回転子と同軸で、回転方向が予め定められた一方向回転ファンを備えた冷却ファンと、
前記冷却ファンに取り付けられ、前記定められた回転方向と逆方向に回転すると音を発する警笛とを備え、
前記警笛の取付けを一方向にのみ可能とする警笛取付けガイドを前記警笛の取付け位置に設けたものである電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機は双方向の回転が可能である場合が多く、電動機に冷却ファンが取り付けられる場合には、いずれの方向に回転しても同等の冷却性能を得ることが必要とされる。したがって、冷却ファンには両方向回転ファンが用いられるのが一般的である。このような従来技術として、例えば特許文献1のように、両方向回転ファンとして機能する外扇ファンの羽根部材の両側を凹形状として冷却性能の向上を図っているものがある。この従来技術とは別に、ファンによる送風性能を向上させる技術としては、例えば特許文献2のように、プロペラファンのように一方向回転を主としたものが知られている。
【0003】
また、電子機器等の冷却用やクリーンルーム等のフィルタ用のモータファンにおいて、逆回転による冷却能力やフィルタ能力の低下を防止するために、例えば特許文献3及び4のように、逆回転となっていることを笛によって報知するようにした技術がある。しかし、この技術は、モータファンによって発生させる送風の風向きが逆回転により正回転方向時と全く逆になる場合に、それを報知する上記笛を、モータ本体ではなく、モータ以外の周辺部品や設備の中で風の流れを受ける場所に設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5533号公報
【特許文献2】特開2007−40202号公報
【特許文献3】実開昭62−168708号公報
【特許文献4】特開2004−101067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機に取り付けられている冷却ファンには、どちらの方向にも回転させることができる両方向回転ファンと、回転方向が予め定められた一方向回転ファンが存在する。この内、一方向回転ファンは、予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合には、その冷却能力が低下し電動機として所定の性能が発揮されないことになる。
【0006】
上記冷却ファンは、構造的に、空気を押すことで風を発生させる羽根を設けており、例えば図1に示す冷却ファン3では、矢印で示すような風の流れを発生させる。両方向回転ファンは、図11の上図のように、放射状に羽根(3d)を中心線に対して角度を持たせることなしに配置しているのに対し、一方向回転ファンは、図11の下図のように、放射状に羽根(3e,3f)を中心線に対して角度を付けて配置している。
【0007】
このように、一方向回転ファンの羽根が中心線に対して角度を付けて配置されているため、予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合には、図1に矢印で示す風の流れとして発生する風の量(風量)が低下することにより、電動機の冷却性能の低下を招き問題となる。
【0008】
そこで、正しい回転方向がわかるように銘板等で表示し注意を促しているが、表示を見逃す等により電動機を予め定められた回転方向と逆方向に回転させて運転した場合、電動機の回転速度が速いので目視でその回転方向を確認することは難しく、逆方向に回転していることを直に発見することは困難である。
【0009】
本発明は、一方向回転ファンが取り付けられている電動機の設置時あるいはメンテナンス時に、逆回転となることを防止するために逆回転を報知することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、一方向ファンが取り付けられた電動機が予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合に、それを音で報知する警笛を設けたものである。また、上記電動機が予め定められた方向に回転している場合には、上記警笛が音を鳴らすことを防止する可動弁を設けたものである。そしてまた、上記警笛を一方向回転ファンに取り付ける際に、間違った方向に取り付けられないように警笛取付けガイドを上記警笛の取付け位置に設けたものである。
【0011】
上記の構成とすることで、一方向回転ファンを予め定められた回転方向と逆方向に回転させた場合に、上記警笛により音を発生させ報知することを可能としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方向回転ファンが取り付けられた電動機を、予め定められた回転方向と逆方向に回転させた場合に、電動機に設けた警笛により音を発生させることによりその逆回転を報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例の電動機全体を説明する図
図2】本実施例の電動機に取り付けられる冷却ファンを説明する図
図3】警笛の取付け位置の避けるべき比較例を説明する図
図4】警笛の取付け位置の実施例を説明する図
図5】警笛の形状の実施例を説明する図
図6】警笛取付けガイドの形状の実施例を説明する図
図7】警笛取付けの実施例を説明する図
図8】可動弁の実施例を説明する図(a)可動弁が閉じた状態図(b)可動弁が開いた状態図
図9】予め定められた方向に回転した場合の可動弁の実施例を説明する図
図10】予め定められた方向と逆方向に回転した場合の可動弁の実施例を説明する図
図11】両方向回転ファンと一方向回転ファンの比較図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施例の電動機全体を説明する図である。本実施例の電動機は、電源供給を受ける固定子1、該固定子1からの回転磁界によって回転する回転子2、該回転子2と同軸である冷却ファン3、電動機のハウジング4、ハウジング冷却フィン5、ブラケット6、軸7、軸受8、冷却ファン3のファンカバー9から構成され、回転軸10で回転するものである。
【0015】
図2に示す冷却ファン3は、回転軸10を中心として回転するもので、ファンボス3a、ファンベース3b及び羽根3cを有している。
そしてこの冷却ファン3におけるファンベース3bに、警笛11(図2)及び警笛取付けガイド12(図6)を設ける。
【0016】
第1に、警笛11の取付け位置については、図3のように羽根3dと羽根3eの間に警笛11aを取り付けてしまうと、冷却ファン3が発生する風の流れを阻害してしまうことになるので、図4のように羽根3cの裏側のファンベース3bに取り付けることにより、この風の流れが阻害されることを抑制することができる。
【0017】
また、図3の警笛11d、11eのようにファンボス3a付近ではなく、図4の警笛11f、11g、11hのようにファンベース3bの外輪近辺を取付け位置とすることにより、警笛11が風をより多く取り込むことができる。
【0018】
第2に、警笛11の取付け数量については、図3及び図4のように複数個取り付けることにより、警笛として確実に機能させることができる。
【0019】
また、回転体に取り付けるため、図3の警笛11a、11b、11cのようにそれぞれの取付け間隔が異なるのではなく、図4の警笛11f、11g、11hのように冷却ファン3の周方向に対して等間隔に取り付けることにより、冷却ファンの重量バランスを取ることができる。
【0020】
第3に、警笛11の形状については、予め定められた回転方向に回転した場合に、例えば図5の警笛11iのようなテーパを付けることにより、警笛11の空気抵抗を低減させることができる。
【0021】
また、警笛11の取付けに関連させてその形状として、例えば図5の警笛11iや図6の警笛取付けガイド12aのように、警笛11及び警笛取付けガイド12の幅寸法について、正回転方向側部分が逆回転方向側より細くなるような形状にする。このような形状にすることにより、警笛11の取付け方向を誤ることがないようにすることができる。すなわち、図7のとおり、警笛11は決められた方向にのみ取り付けられるようになる。そして、警笛11を取り付ける方向が特定の方向に規制される形状であれば、上記形状に捉われるものではない。なお、警笛11は、図7から図10に示すように、警笛取付けネジ15によって所定の位置に取り付けられる。
【0022】
そしてまた、警笛11の形状として、例えば図5の矢印14のように、警笛11の上面に回転方向を示す矢印を表示することにより、警笛11の動作方向について電動機の予め定められた回転方向をわかりやすくすることができる。
【0023】
第4に、警笛11の構成要素について、図5の警笛11iに設けた可動弁13は、冷却ファン3が回転することで発生する空気の流れによって、図8(a)の可動弁13bのようにそれが閉じた状態と、図8(b)の可動弁13cのようにそれが開いた状態に、それぞれ変化させるものである。これにより、冷却ファン3が予め定められた回転方向で回転した場合は、図9のように可動弁13bが閉じることで、警笛11内部への空気(N)の侵入を防ぎ音を発生させないとともに、警笛11内部への塵埃などの侵入を防止することができる。そして、冷却ファン3が予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合は、図10のように、警笛11内部を通過した空気(P)によって可動弁13cが開き音を発生させる。
【0024】
このように、可動弁13は、予め定められた回転方向に回転した場合に、可動弁13が空気を受け閉じる構造であるため、例えば図8(b)のL部拡大図に示す可動弁13aのように出っ張りを設けて角度Mをもたせることにより、風を受け易い構造とすることができる。
【0025】
上記実施例によれば、一方向回転ファンが取り付けられた電動機の回転方向が予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合に、音を発生させて報知することができる。また、前記した可動弁13の構造により、警笛11内部への塵埃などの侵入を防止することもできるので、塵埃が多い場合であってもその機能を果たすことができる。
【0026】
本実施例は、電動機の設置時あるいはメンテナンス時に機能すれば良いものであり、メンテナンス時においても、前記可動弁13の構造により、警笛11内部に塵埃が侵入して来ないので警笛11を正常に機能させることができる。また、電動機の設置時あるいはメンテナンス時と同時に、警笛11について清掃を実施すればより確実にその機能を果たすこともできる。
【0027】
以上のとおり、上記の実施例で示した警笛は説明のための一例であってこれに限定されるものではなく、その機能を奏するものであれば、実際の設計、製品化の時に適宜の変更を加えても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、一方向回転ファンが取り付けられた電動機の回転方向が予め定められた回転方向と逆方向に回転した場合に、音を発生させて報知することができるものであるから、上記電動機の設置時あるいはメンテナンス時において利用可能である。また、多少の塵埃の左右されず機能するのでそのような環境下においても有効である。
【符号の説明】
【0029】
1:固定子
2:回転子
3:冷却ファン
3a:ファンボス
3b:ファンベース
3c〜3g:羽根
4:ハウジング
5:ハウジング冷却フィン
6:ブラケット
7:軸
8:軸受
9:ファンカバー
10:回転軸
11:警笛
11a〜11i:警笛
12:警笛取付けガイド
12a:警笛取付けガイド
13:可動弁
13a〜13c:可動弁
14:回転方向矢印
15:警笛取付けネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11