特許第5955112号(P5955112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955112
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】管材用ナット保持具および管材
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20160707BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20160707BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   F16B43/00 Z
   F16B37/04 A
   F16B7/18 F
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-130781(P2012-130781)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-253671(P2013-253671A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直
(72)【発明者】
【氏名】永石 充
(72)【発明者】
【氏名】松藤 弘
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−056910(JP,U)
【文献】 特開2003−035306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 43/00
F16B 37/04
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットが嵌入自在な保持具凹部が、少なくとも一方の端面に形成された弾性変形自在な柱状体からなり、
前記保持具凹部は、前記ナットの厚さより浅く形成され、
前記保持具凹部に前記ナットの一部が嵌入した状態で、前記柱状体は軸方向に弾性的に圧縮されて管材の内部に挿入され、該管材の内面に形成され、前記ナットが回転不能に侵入する管材凹部の位置において、前記弾性的な圧縮が緩和されることによって、前記ナットは、その一部が前記管材凹部に回転不能に侵入し、抜け出し不能に保持されることを特徴とする管材用ナット保持具。
【請求項2】
前記柱状体は、発泡ウレタン、発泡スチロール、硬質スポンジ、天然ゴムまたは合成ゴムの何れかであることを特徴とする請求項1記載の管材用ナット保持具。
【請求項3】
前記保持具凹部が、前記柱状体の外周の形状と略同一の外周の形状と、前記ナットが嵌入自在な内周形状と、前記ナットの厚さより薄い厚さとを具備する板材を、前記柱状体の端部に接着することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の管材用ナット保持具。
【請求項4】
前記柱状体はコイルスプリングであって、コイルスプリングの少なくとも一方の端に、前記ナットが嵌入自在な保持具凹部が形成されたコイル端板が設置されていることを特徴とする請求項1記載の管材用ナット保持具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の管材用ナット保持具と、該管材用ナット保持具の端面に嵌入したナットと、内面に形成され、前記ナットの厚さよりも浅い管材凹部と、を有し、
前記ナットは、その一部が前記管材凹部に侵入し、前記管材用ナット保持具によって回転不能に保持されていることを特徴とする管材。
【請求項6】
端部から前記管材凹部に到達し、前記管材凹部の深さより浅いナット誘導溝が形成され、
前記ナットは、前記ナット誘導溝に侵入した状態で、前記管材凹部に向かって移動自在であることを特徴とする請求項5記載の管材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管材用ナット保持具および管材、特に、外面側からボルトを設置するために内面側に配置されるナットを回転不能に保持する管材用ナット保持具および該管材用ナット保持具が設置された管材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に立設された管状の支柱の先端にキャップを被せ、キャップをボルトによって固定する場合、支柱やキャップの内面側に外面側からナットを固定するための作業用の工具を挿入することができないため、支柱またはキャップの内面に予め六角ナット等を溶接によって固定し、外面側からボルトを設置していた。このため、溶接部の経年劣化等により錆が発生するという問題があり、溶接部には防錆塗料の塗布もしくはナットを溶接したキャップに溶融亜鉛めっき処理を施しナットねじ部はねじさらいを行っていた。
そこで、防錆処理を施すことなく錆の発生を無くすため、六角ナット等を溶接固定する代わりに、キャップ内面のボルト貫通孔の周囲に六角ナットの一部を収容する六角ナット取り付け穴を設け、予め管材六角ナット保持具にセットされた六角ナットを、六角ナット取り付け穴に設置する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35306号公報(第3−4頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された管材六角ナット保持具は、高張力の薄鋼板のような弾性を有する金属製帯材と、金属製帯材の両端部に形成されたボルト挿通孔と、押し抜き加工および曲げ加工によってボルト挿通孔の周辺部に形成された突起部と、を有するものであり、金属製帯材の両端部突起部に囲まれた範囲内に六角ナットの一部を収容し(保持し)略U字状に曲げた状態で、キャップの内周に挿入し、突起部に囲まれた範囲と、六角ナット取り付け穴との位置が一致したところで、曲げていた力を緩め、六角ナットを設置するものであるため、以下の問題があった。
(あ)金属製帯材の両端部ボルト挿通孔の周辺部に形成された突起部にナットを配置し、そのナットを脱落させずに金属製帯材を略U字状に曲げてキャップ内に挿入する作業、キャップ内面の六角ナット取り付け穴に六角ナットの一部を収容するための位置決め作業、さらに、曲げていた力を緩める作業に、相当の技能が要求されることから、作業者が限定され、作業に時間を要することから、施工コストを安価に抑えることができない。
(い)すなわち、金属製帯材を略U字状に曲げた際、金属製帯材の両端部は、通常、平行にならないため、突起部は六角ナットの側面に対して平行にならないことから、六角ナット取り付け穴に六角ナットの一部を収容する作業は困難である。
(う)特に、また、金属製帯材が略C字状に曲がった場合は、最も幅の広い位置がキャップ内面に当たらないように、金属製帯材を曲率半径が小さくなるように過剰に曲げてキャップ内に挿入する必要があるだけでなく、曲げていた力を緩めた際、最も幅の広い位置がキャップの内面に当たり、六角ナットを押し付ける力が弱くなる。さらに、複数の六角ナットが比較的近い位置に並んでいる場合には、使用することができない。
(え)また、略U字状に曲げた金属製帯材をキャップ内に挿入するため、キャップ内には所定長さの空間が必要なことから、使用可能なキャップ等の形状が制限される。
(お)さらに、キャップの対向した位置にそれぞれ六角ナットを配置するものであるため、六角ナットがキャップの一方の面にのみ配置される場合、金属製帯材を曲げていた力を緩めた際、六角ナットが突起部に囲まれた範囲から外れたり、六角ナットを押し付ける力が弱くなったりするおそれがある。
(か)好適な作業工具が開示されていないため、鋭利な縁や角を具備する金属製帯材を手(指)で扱うことから、作業が安全上好ましくない。
【0005】
本発明は、このような要請に応えるものであって、第1の目的は、管材の外面側からのボルトの設置を可能にするため、簡単な作業によってナットを管材の内面に配置することができる管材用ナット保持具を提供することにある。
また、第2の目的は、管材の形状に左右させず、また、ナットが対向しない場合でも使用することができる管材用ナット保持具を提供することにある。
さらに、第3の目的は、前記管材用ナット保持具が設置された管材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る管材用ナット保持具は、ナットが嵌入自在な保持具凹部が、少なくとも一方の端面に形成された弾性変形自在な柱状体からなり、前記保持具凹部は、前記ナットの厚さより浅く形成され、
前記保持具凹部に前記ナットの一部が嵌入した状態で、前記柱状体は軸方向に弾性的に圧縮されて管材の内部に挿入され、該管材の内面に形成され、前記ナットが回転不能に侵入する管材凹部の位置において、前記弾性的な圧縮が緩和されることによって、前記ナットは、その一部が前記管材凹部に回転不能に侵入し、抜け出し不能に保持されることを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記柱状体は、発泡ウレタン、発泡スチロール、硬質スポンジ、天然ゴムまたは合成ゴムの何れかであることを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)において、前記保持具凹部が、前記柱状体の外周の形状と略同一の外周の形状と、前記ナットが嵌入自在な内周形状と、前記ナットの厚さより薄い厚さとを具備する板材を、前記柱状体の端部に接着することによって形成されたものであることを特徴とする。
(4)前記(1)において、前記柱状体はコイルスプリングであって、コイルスプリングの少なくとも一方の端に、前記ナットが嵌入自在な保持具凹部が形成されたコイル端板が設置されていることを特徴とする。
【0007】
(5)また、本発明に係る管材は、前記(1)乃至(4)の何れかに記載の管材用ナット保持具と、該管材用ナット保持具の端面に嵌入したナットと、内面に形成され、前記ナットの厚さよりも浅い管材凹部と、を有し、
前記ナットは、その一部が前記管材凹部に侵入し、前記管材用ナット保持具によって回転不能に保持されていることを特徴とする。
(6)前記(5)において、端部から前記管材凹部に到達し、前記管材凹部の深さより浅いナット誘導溝が形成され、
前記ナットは、前記ナット誘導溝に侵入した状態で、前記管材凹部に向かって移動自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る管材用ナット保持具は、前記構成であることから以下の効果を奏する。
(i)保持具凹部にナットが嵌入した状態で、柱状体を軸方向に弾性的に圧縮して管材の内部に挿入し、管材凹部の位置において弾性的な圧縮を緩和するだけで、ナットは管材凹部に侵入し、抜け出し不能に保持されるため、簡単な作業によって、ナットを確実に設置することができる。なお、本発明において、ナットとは、外周の形状が断面円形(円筒形や樽形状等)でないナット、例えば、断面四角形、断面六角形、断面八角形や断面楕円形等のナットを総称したものである。
(ii)したがって、ナットを管材の内面に回転不能に設置する作業が、相当の技能を有する者に限定されることなく、迅速に実行することができるため、施工コストを安価に抑えることができる。
(iii)また、複数のナットが比較的近い位置に並んでいる場合でも、簡単な作業によって、ナットを確実に設置することができる。
(iv)また、管材の内部に所定長さの空間を必要としないことにより、使用可能な管材の形状の自由度が拡大する。
(v)さらに、管材の内面の対向した位置の一方のみにナットを回転不能に設置することが、簡単な作業によって可能になる。
(vi)さらに、鋭利な縁や角を具備しないから、仮に、管材用ナット保持具を手(指)で扱う場合でも、作業の安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る管材用ナット保持具を説明するものであって、(a)は正面視の断面図、(b)は上面図、(c)は底面図。
図2図1に示す管材用ナット保持具を説明する正面視の断面図であって、(a)は六角ナットが設置された状態、(b)は圧縮された状態。
図3】本発明の実施の形態2に係る管材用ナット保持具を説明するものであって、(a)は正面視の断面図、(b)は上面図、(c)は底面図。
図4図1に示す管材用ナット保持具を説明する正面視の断面図であって、(a)は六角ナットが設置された状態、(b)は圧縮された状態。
図5】本発明の実施の形態3に係る管材を構成する管材を示す正面視の断面図。
図6図5に示す管材を説明するものであって、(a)は図5のX−X断面における断面図、(b)は図5のY−Y断面における断面図。
図7図5に示す管材を説明するものであって、(a)は管材を示す正面視の断面図、(b)は管材の使用例を示す正面視の断面図。
図8】本発明の実施の形態4に係る管材を説明するものであって、管材を構成する管材を示す正面視の断面図。
図9図8に示す管材を示す正面視の断面図。
図10図8に示す管材を構成する管材の変形例を示すものであって、(a)は図8のX−X断面の断面図、(b)は図8のY−Y断面の断面図。
図11図8に示す管材を構成する管材の変形例を示す斜視図。
図12】実施の形態5に係る管材の使用状態を示す側面視の断面図。
図13】本発明のその他の実施の形態に係る管材用ナット保持具の正面視の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る管材用ナット保持具を説明するものであって、図1の(a)は正面視の断面図、図1の(b)は上面図、図1の(c)は底面図、図2の(a)は六角ナットが設置された状態を示す正面視の断面図、図2の(b)は六角ナットが設置された状態で圧縮された状態を示す正面視の断面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。また、六角ナットについては、六角ナットであることを明瞭にするため、断面にしていない。
なお、実施の形態1において、説明の便宜上、六角ナットについて説明しているが、本発明は、文字通り外周の形状が断面六角形のナットに限定されるものではなく、外周の形状が断面円形(円筒形や樽形状等)でないナット、例えば、断面四角形や断面楕円形のナットであってもよい。したがって、例えば、断面四角形や断面楕円形のナットの場合、以下の記載の「六角」を「四角や楕円」に読み代えることになる。
【0011】
図1の(a)〜(c)において、管材用ナット保持具10は、柱状体1と、柱状体1の端面1aに形成された保持具凹部2と、を有し、保持具凹部2の底面1dは略平面である。
【0012】
(柱状体)
柱状体1は外周1cが断面円形の弾性体であって、例えば、発泡ウレタン、発泡スチロール、硬質スポンジ、天然ゴムまたは合成ゴムの何れかである。
なお、柱状体1は、円柱であるものに限定するものではなく、角柱(四角柱や六角柱等)であってもよい。
【0013】
(保持具凹部)
保持具凹部2は、六角ナット11が嵌入自在な凹部であって、六角ナット11(図2参照)の厚さHよりも小さい(浅い)「深さA」を有している。
なお、保持具凹部2の内周形状は六角形に限定されるものではなく、四角形あるいは円形等であってもよい。
【0014】
(六角ナットの嵌入)
図2の(a)において、保持具凹部2に六角ナット11が嵌入している。なお、嵌入とは、保持具凹部2の内周形状の少なくとも一部を変形させる「はめ合い(締まりばめ)」に限定するものではなく、保持具凹部2の内周と六角ナット11の外周との間に隙間がある「はめ合い(すきまばめ)」を含むものである。
図2の(b)において、柱状体1の他方の端面1bと六角ナット11の端面11aとの間(正確には、端面1bと保持具凹部2の底面1dとの間)が圧縮されている。このとき、柱状体1の他方の端面1bと六角ナット11の端面11aとの距離が、圧縮前の「高さB1」から「高さC1」に縮小している。
【0015】
[実施の形態2]
図3および図4は本発明の実施の形態2に係る管材用ナット保持具を説明するものであって、図3の(a)は正面視の断面図、図3の(b)は上面図、図3の(c)は底面図、図4の(a)は六角ナットが設置された状態を示す正面視の断面図、図4の(b)は六角ナットが設置された状態で圧縮された状態を示す正面視の断面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図3の(a)〜(c)において、管材用ナット保持具20は、平面状の端面3a、3bを具備する柱状体3と、柱状体3の端面3a、3bに接着された平板状の板材5、6と、を有している。
【0016】
(柱状体)
柱状体3は、外周3cが断面四角の弾性体であって、例えば、発泡ウレタン、発泡スチロール、硬質スポンジ、天然ゴムまたは合成ゴムの何れかである。
なお、柱状体3は四角柱に限定するものではなく、円柱や六角柱等であってもよい。
【0017】
(板材)
板材5は、柱状体3の外周3cの形状と略同一の外周5cと、六角ナット21(図4参照)が嵌入自在な内周5dと、六角ナット21の厚さHaより薄い厚さTaと、を具備している。また、板材6は、柱状体3の外周3cの形状と略同一の外周6cと、六角ナット22(図4参照)が嵌入自在な内周6dと、六角ナット22の厚さHbより薄い厚さTbと、を具備している。
板材5、6は弾性体であって、柱状体3と同一の材料であっても、相違する材料であってもよい。例えば、発泡ウレタン、発泡スチロール、硬質スポンジ、天然ゴムまたは合成ゴムの何れかである。
【0018】
したがって、実施の形態1における保持具凹部2に相当する凹部が、板材5、6をそれぞれ端面3a、3bに接着するだけで、正確にかつ簡単に形成することができる。特に、凹部の底面が柱状体3の端面3a、3bであるから、平坦にすることが容易になる。
なお、嵌入とは、保持具凹部2の内周形状の少なくとも一部を変形させる「はめ合い(締まりばめ)」に限定するものではなく、保持具凹部2の内周と六角ナット21の外周との間に隙間がある「はめ合い(すきまばめ)」を含むものである。
また、板材5、6は、外周5c、6cの形状と内周5d、6dの形状とがそれぞれ相似形であるが、相違する形状であってもよい。
【0019】
(六角ナットの嵌入)
図4の(a)において、板材5の内周5dに六角ナット21が嵌入し、板材6の内周6dに六角ナット22が嵌入している。
図4の(b)において、六角ナット21の一方の端面21aと六角ナット22の他方の端面22bとの間(正確には、柱状体3の一方の端面3aと他方の端面3bの間)が圧縮されている。このとき、六角ナット21の一方の端面21aと六角ナット22の一方の端面22bとの距離が「高さC2」になっている。
なお、以上は、六角ナット21と六角ナット22が相違する場合を示しているが、両者は同一の六角ナットであってもよい。同一の六角ナットの場合、板材5、6の厚さは同一であっても相違してもよく、内周5dの形状と内周6dの形状とは同一であっても相違してもよい。
【0020】
[実施の形態3]
図5図7は本発明の実施の形態3に係る管材を説明するものであって、図5は管材を構成する管材を示す正面視の断面図、図6の(a)は図5のX−X断面における断面図、図6の(b)は図5のY−Y断面における断面図、図7の(a)は管材を示す正面視の断面図、図7の(b)は管材の使用例を示す正面視の断面図である。なお、実施の形態1または実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図6において、管材100は、略円筒状の管材30の内部に管材用ナット保持具10(実施の形態1)が設置されたものであるから、まず、管材100を構成する管材30について説明し、その後に、図6に基づいて管材100について説明する。
【0021】
(管材)
図5および図6の(a)、(b)において、管材30は、略円管材であって、断面円形の内面31には、対向する位置に互いに平行な平坦部32a、32bが形成され、平坦部32aには、六角ナット11が侵入するための、六角ナット11の厚さ(高さ)Hよりも小さい(浅い)深さDの管材凹部33aが形成され、管材凹部33aの中心に、六角ナット11に螺合するボルト(図示しない)の雄ネジ部が貫通するボルト孔34aが形成されている。
このとき、管材凹部33aの内周形状は、六角ナット11の外周の形状に相似であって、六角ナット11の外周の形状よりも僅かに大きくなっているため、管材凹部33aに侵入した六角ナット11は、管材凹部33aによって、回転不能に保持されることになる。
【0022】
また、平坦部32aと平坦部32bとの距離は「挿入間隔E」になり、挿入間隔Eに管材凹部33aの深さDを加えた距離は「設置間隔F」になっている。
なお、管材凹部33aの内周形状は、六角ナット11の外周の形状に相似であるものに限定するものではなく、侵入した六角ナット11を回転不能に保持することができるものであれば、何れの形状であってもよい。
また、管材30は、平坦部32a、32bが互いに対向した一対を有するものであるが、2対以上が形成されてもよいし、それぞれの平坦部32a、32b等に、複数の管材凹部33aが形成されてもよい。
さらに、以上は、平坦部32a、32bが形成されているが、平坦部32bの形成を省略したり、平坦部32aおよび平坦部32bの形成を省略したりしてもよい。さらに、管材30は略円筒に限定するものではなく、断面楕円や断面矩形の筒であってもよい。
【0023】
(管材)
図7の(a)において、管材100では、六角ナット11が管材30の管材凹部33a内に侵入し、回転不能に保持されている。
すなわち、六角ナット11が管材用ナット保持具10の保持具凹部2に嵌入した状態(図2の(a)参照)で、管材用ナット保持具10は圧縮され(図2の(b)参照)、圧縮後の高さが管材30の挿入間隔Eよりも小さい状態で、管材30の内部に挿入される。そして、六角ナット11は、管材凹部33aの位置にまで挿入されたところで、圧縮が緩和(または開放)され、管材凹部33a内に侵入する。
このとき、圧縮前の高さB1が管材30の設置間隔Fよりも大きい(高い)場合、柱状体1が弾性復元することによって、六角ナット11は外周方向に押し付けられる。すなわち、圧縮前の高さB1を設置間隔Fを勘案して設定することにより、六角ナット11を外周方向に押し付ける力を調整することができる。
一方、圧縮前の高さB1が管材30の設置間隔Fよりも小さい(低い)場合や、柱状体1の弾性復元が不充分な場合、六角ナット11は保持具凹部2に保持されるものの、外周方向に押し付けられることはない。
【0024】
(管材の使用例)
図7の(b)において、管材100が、管材80内に挿入され、ボルト90によって、管材30と管材80とが接続されている。
このとき、ボルト90は六角ナット11に螺合するものであって、管材80には、ボルト90のネジ部が貫通自在な貫通孔81が形成され、ボルト90が、外面側からと管材80の貫通孔81と管材30のボルト孔34aとを貫通し、六角ナット11に螺合している。
すなわち、管材用ナット保持具10によって六角ナット11が、管材30の内面に回転不能に設置されているから、管材30の内部に工具類を挿入することなく、管材30と管材80とを簡単に接続することができる。
【0025】
(効果)
管材100は以上の構成であるから、以下の効果が得られる。
(イ)六角ナットが保持具凹部に嵌入した状態、管材用ナット保持具を圧縮して管材に挿入し、管材凹部において圧縮を緩和するだけの簡単な作業によって、六角ナットを管材に回転不能に設置(保持)することができるから、相当の技能を有しない作業者による迅速な作業が可能になり、施工コストを安価に抑えることができる。
(ロ)また、圧縮前の高さを設定することによって、簡単かつ確実に、六角ナットを所望の力で管材に押し付けることができる。
(ハ)また、複数の六角ナットが比較的近い位置に並んでいる場合や、管材の内部空間が比較的狭い場合でも使用することができるから、使用可能な管材の形状の自由度が増す。
(ニ)さらに、管材の内面に六角ナットを対向して設置しない場合でも、一方側だけの六角ナットを設置することができる。
(ホ)鋭利な縁や角がないから、手(指)で扱っても、作業の安全上が保たれる。
【0026】
[実施の形態4]
図8図11は本発明の実施の形態4に係る管材を説明するものであって、図8は管材を構成する管材を示す正面視の断面図、図9は管材を示す正面視の断面図、 図10の(a)は図8のX−X断面における断面図、図10の(b)は図8のY−Y断面における断面図、図11は管材を構成する管材の変形例を示す斜視図である。なお、実施の形態2または実施の形態3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図9において、管材200は、略円筒状の管材40の内部に管材用ナット保持具20(実施の形態2)が設置されたものであるから、まず、図8に基づいて管材200を構成する管材40について説明し、その後に、図9に基づいて管材200について説明する。
【0027】
(管材)
図8において、管材40は、略円管材であって、断面円形の内面41には、対向する位置に互いに平行な平坦部42a、42bが形成され、平坦部42aには、六角ナット21が侵入するための、六角ナット21の厚さ(高さ)Haよりも小さい(浅い)深さDaの管材凹部43aが形成され、管材凹部43aの中心に、六角ナット21に螺合するボルト(図示しない)の雄ネジ部が貫通するボルト孔44aが形成されている。また、平坦部42bには、六角ナット22が侵入するための、六角ナット22の厚さ(高さ)Hbよりも小さい(浅い)深さDbの管材凹部43bが形成され、管材凹部43bの中心に、六角ナット22に螺合するボルト(図示しない)の雄ネジ部が貫通するボルト孔44bが形成されている。
【0028】
このとき、管材凹部43a、43bの内周形状は、六角ナット21、22の外周の形状に相似であって、六角ナット21、22の外周の形状よりも僅かに大きくなっているため、管材凹部43a、43bに侵入した六角ナット21、22は、管材凹部43a、43bによって、回転不能に保持されることになる。
また、平坦部42aと平坦部42bとの距離は「挿入間隔E」になり、挿入間隔Eに管材凹部43aの深さDaと管材凹部43bの深さDbとを加えた距離は「設置間隔F」になっている。
なお、管材凹部43a、43bの内周形状は、六角ナット21、22の外周の形状に相似形であるものに限定するものではなく、侵入した六角ナット21、22を回転不能に保持することができるものであれば、何れの形状であってもよい。
また、以上は、平坦部42a、42bが形成されているが、一方または両方の形成を省略してもよい。さらに、管材40は略円筒に限定するものではなく、断面楕円や断面矩形の筒であってもよい。
【0029】
(管材)
図9において、管材200では、六角ナット21、22が管材40の管材凹部43a、43b内に侵入し、回転不能に保持されている。
すなわち、六角ナット21および六角ナット22が、それぞれ板材5の内周5dおよび板材6の内周6dに嵌入した状態(図4の(a)参照)で、管材用ナット保持具20は圧縮され(図4の(b)参照)、圧縮後の高さC2が管材40の挿入間隔Eよりも小さい状態で、管材40の内部に挿入される。そして、六角ナット21、22は、管材凹部43a、43bの位置にまで挿入されたところで、圧縮が緩和(または開放)され、管材凹部43a、43b内に侵入する。
このとき、圧縮前の高さB2が管材40の設置間隔Fよりも大きい(高い)場合、柱状体3が弾性復元することによって、六角ナット21、22は外周方向に押し付けられる。すなわち、圧縮前の高さB2を設置間隔Fを勘案して設定することにより、六角ナット21、22を外周方向に押し付ける力を調整することができる。
一方、圧縮前の高さB2が管材40の設置間隔Fよりも小さい(低い)場合や、柱状体3の弾性復元が不充分な場合、六角ナット21、22は板材5、6の内周5d、6dに保持されるものの、外周方向に押し付けられることはない。
【0030】
(管材の変形例)
図10の(a)、(b)および図11において、管材50は、管材40の変形例であって、管材40にナット誘導溝45a、45bを形成したものである。
すなわち、平坦部42a、42bには、管端から管材凹部43a、43bに到達するナット誘導溝45a、45bが形成されている。このとき、ナット誘導溝45aは六角ナット21が侵入自在で、管材凹部43aの深さDaよりも浅く、ナット誘導溝45bは六角ナット22が侵入自在で、管材凹部43bの深さDbよりも浅くなっている。
【0031】
したがって、ナット誘導溝45aの底面とナット誘導溝45bの底面との距離(以下「誘導間隔」と称す)Gは、挿入間隔Eよりも大きく(広く)なっている。このため、六角ナット21、22が嵌入した管材用ナット保持具20は、圧縮後の高さC2を、管材40に挿入する場合の挿入間隔Eまで圧縮する必要がなく、挿入間隔Eよりも大きい誘導間隔Gにまで圧縮するだけで、管材50に設置することができる。
また、六角ナット21、22はナット誘導溝45a、45bに誘導されて管材凹部43a、43bに到達するから、六角ナット21、22が嵌入した管材用ナット保持具20は、六角ナット21、22がナット誘導溝45a、45bに侵入した時点で、圧縮が緩和されることになる(すなわち、押し付けられる、または押し付けられないで保持される)。
よって、管材200は管材100と同様に使用することができ、同様の効果を奏すると共に、設置作業がさらに容易になる。また、管材100に同様のナット誘導溝を形成してもよい。
【0032】
[実施の形態5]
図12は本発明の実施の形態5に係る管材を説明するものであって、管材の使用状態を示す側面視の断面図である。なお、実施の形態3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図12において、管材300は、略円筒状の管材60の内部に2個の管材用ナット保持具10(実施の形態1)が設置されたものであり、管材100(実施の形態3)の有する管材30と同様の構成の管材60を有する点において管材100と相異し、その他の点において両者は同一であるから、管材60について管材30と相異する部分について、図12に基づいて説明する。
【0033】
(管材)
図12において、管体300は管材60と六角ナット12a、12bとから構成されている。管材60は、略円管材であって、断面円形の内面31には、対向する位置に互いに平行な平坦部32a、32bが形成され、平坦部32aには、六角ナット12a、12bが侵入するための、六角ナット12a、12bの厚さ(高さ)Ha、Hbよりも小さい(浅い)深さDa、Dbの管材凹部33a、33bが形成され、管材凹部33a、33bの中心に、六角ナット12a、12bに螺合するボルト90a、90bの雄ネジ部が貫通するボルト孔34a、34bが形成されている。
すなわち、管材凹部33a、33bは管材100(実施の形態3)における管材凹部33aに同じであって、所定の間隔を空け形成されている。
【0034】
(管材の使用例)
図12において、管材80aと管材80bとの端面が突き合わされ、管材80aと管材80bとに跨がって、管材300が挿入されている。
そして、ボルト90aによって管材80aと管材60とが接続され、ボルト90bによって管材80bと管材60とが接続されている。
このとき、ボルト90a、90bは六角ナット12a、12bに螺合するものであって、管材80a、80bには、ボルト90a、90bのネジ部が貫通自在な貫通孔81a、81bが形成され、ボルト90a、90bが、外面側から管材80a、80bの貫通孔81a、81bと管材60のボルト孔34a、34bとを貫通し、それぞれ六角ナット12a、12bに螺合している。
【0035】
すなわち、管材用ナット保持具10によって六角ナット12a、12bが、管材60の内面に回転不能に設置されているから、管材60の内部に工具類を挿入することなく、管材60を介して管材80aと管材80bとを簡単に接続することができる。
なお、ボルト90a、90bは同一であって、相異してもよい。
また、管材80aと管材80bとは同一形状であるものを示しているが、それぞれの外径または内径が相異してもよい。そして、管材80aと管材80bとの内径が相異する場合は、それぞれの内部に挿入することができるように、管材60は外径が相異する2つの範囲を具備することになる。
【0036】
(効果)
管材300は以上の構成であるから、管材100(実施の形態3)と同様の効果が得られる。
【0037】
[その他の実施の形態]
図13は本発明のその他の実施の形態に係る管材用ナット保持具を説明するものであって、正面視の断面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図13において、管材用ナット保持具70は、管材用ナット保持具20(実施の形態2)の柱状体3をコイルスプリング7に変更し、板材5、6を端部材8、9に変更したものである。すなわち、端部材8、9には、それぞれ底面8e、9eを具備する凹部8d、9dと、コイルスプリング7の内周に侵入する突起8f、9fが形成されている。
このとき、凹部8d、9dは、管材用ナット保持具20の内周5d、6dと同様に機能するから、管材用ナット保持具70は管材用ナット保持具20と同様の効果を奏する。
なお、端部材8、9の一方の設置を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は以上の構成であるから、各種ナットを管材の内面に回転不能に設置する管材用ナット保持具として、また、各種形状の管材に設置される管材として、さらに、管材同士を接続するための接続部材として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 柱状体
1a 端面
1b 端面
1c 外周
1d 底面
2 保持具凹部
3 柱状体
3a 端面
3b 端面
3c 外周
5 板材
5c 外周
5d 内周
6 板材
6c 外周
6d 内周
7 コイルスプリング
8 端部材
8d 凹部
8e 底面
8f 突起
9 端部材
9d 凹部
9e 底面
9f 突起
10 管材用ナット保持具
11 六角ナット
11a 端面
12a 六角ナット
12b 六角ナット
20 管材用ナット保持具
21 六角ナット
21a 端面
22 六角ナット
22b 端面
30 管材
31 内面
32a 平坦部
32b 平坦部
33a 管材凹部
33b 管材凹部
34a ボルト孔
34b ボルト孔
40 管材
41 内面
42a 平坦部
42b 平坦部
43a 管材凹部
43b 管材凹部
44a ボルト孔
44b ボルト孔
45a ナット誘導溝
45b ナット誘導溝
50 管材
60 管材
70 管材用ナット保持具
80 管材
80a 管材
80b 管材
81 貫通孔
81a 貫通孔
81b 貫通孔
90 ボルト
90a ボルト
90b ボルト
100 管材
200 管材
300 管材
A 深さ
B1 高さ
B2 高さ
C1 高さ
C2 高さ
D 深さ
Da 深さ
Db 深さ
E 挿入間隔
F 設置間隔
G 誘導間隔
H 厚さ
Ha 厚さ
Hb 厚さ
Ta 厚さ
Tb 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13