【実施例】
【0057】
以下の実施例及び比較例にて使用した原料油および作製した油脂について、酸価は基準油脂分析試験法2.3.1−1996で測定し、色調は、基準油脂分析試験法2.2.1.1−1996、脂肪酸組成は基準油脂分析試験法暫15−2003にて行ない、トランス脂肪酸含有量は、基準油脂分析試験法暫17−2007、トコフェロール含量は、基準油脂分析試験法2.4.10−1996にて分析を行なった。尚、色調は、10R+Yの数値として表した。
【0058】
[実施例1〜4]
図1に模式的に示した構造の脱臭装置を用い、脱臭前原料油脂Oとして、脱色大豆油1kgを2L容量のガラス製水蒸気蒸留フラスコ1に投入し、バッチ式脱臭を行なった。その際に水蒸気は、水蒸気発生器2で蒸留水WをヒータHで加熱して発生したものをフラスコ1の底部まで延びるガラス管3で供給し、その量は蒸留水2の減量をもって計測して脱臭時の水蒸気吹込量とした。
【0059】
フラスコ1には真空ポンプPを、氷水トラップ4を経由して接続して減圧状態とし、フラスコ1内の真空度はマノメータ5にて測定した。フラスコ1内の加熱はマントルヒータ6で行ない、脱臭温度に達するまでの加熱時間は34分であった。温度計7で測定される脱臭温度は220℃、225℃、230℃、235℃として、脱臭時間は50分とし、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率は1%を目標に行ない、試験中の真空度は3hPaを維持した。なお、
図1中の符号8はゴム管、9はコックである。
【0060】
原料の脱色油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を表1中に示すと共に、数1、2に示した式の左項の値を同表中に示した。なお、脱色大豆油の脂肪酸組成におけるジエン脂肪酸(C18−2)は57.0%、トリエン脂肪酸(C18−3)は7.3%であり、数3の式における左項の値は130であった。
【0061】
表中の脱臭油の風味は、下記の基準に従って評価した。
○ 異味異臭なく良好
△ 僅かに原料特有の味がする
× 不快な味があり、食するのに不適
【0062】
[比較例1〜4]
比較例1〜4においては、実施例1における脱臭温度を順に180℃、210℃、240℃、250℃に設定することの他、表1に示される条件で調整したこと以外は、実施例1と同様に脱臭工程を行ない、得られた食用油脂の評価を表1中に併記した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す結果からも明らかなように、実施例の製法によって得られた油脂は、トランス脂肪酸の生成量が0.5%以下であり、酸価、色調共に日本農林規格以下であり、風味も良好で、トコフェロールの残存量も80%以上であった。
【0065】
これに対し、比較例1及び2ではトランス脂肪酸は低いが、酸価や色調が不良であり、比較例3や4ではトランス脂肪酸の生成量が多く、低減効果が不十分であった。
【0066】
[実施例5〜7]
実施例5〜7は、実施例1の製造方法で用いた脱色大豆油を脱色なたね油に変更し、脱臭温度を順に220℃、230℃、235℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして脱臭工程を行なった。真空度は3hPaを維持できていた。原料の脱色油および得られた脱臭油の評価として、酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価と、数1、2に示した式の左項を表2中に示した。
【0067】
なお、脱色なたね油の脂肪酸組成におけるジエン脂肪酸(C18−2)は20.3%、トリエン脂肪酸(C18−3)は10.3%であったので、数3の式における左項は123.3であった。
【0068】
[比較例5〜7]
実施例1における脱臭温度を180℃、240℃、250℃に設定することの他、表2
に示される条件で調整したこと以外は、実施例1と同様に脱臭を行ない、得られた油脂の評価を表2中に併記した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示す結果からも明らかなように、脱色なたね油から実施例の製造方法で得られた油脂は、トランス脂肪酸生成量が0.5%以下であり、酸価、色調共に日本農林規格以下であり、風味も良好で、トコフェロールの残存量も80%以上であった。
【0071】
これに対し、比較例5ではトランス脂肪酸は低いが、酸価や色調が不良であり、比較例6や7ではトランス脂肪酸の生成量が多く、低減効果が不十分であった。
【0072】
[実施例8〜10]
実施例1の製造方法で用いた脱色大豆油における脱臭温度と脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を表3に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして脱臭を行なった。
【0073】
原料の脱色油および得られた脱臭油の評価として、酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を示すと共に、数1、2に示した式の左項の値を表3中に示した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示す結果から明らかなように、脱臭温度が低い場合でも脱臭時間と水蒸気吹込量対油比率を増やすことで、実施例8〜10の製造方法で得られた油脂は、トランス脂肪酸の生成量を低く抑えながらも酸価、色調、風味も良好であり、トコフェロールの残存量も80%以上であった。
【0076】
[実施例11〜14]
実施例5の製造方法で用いた脱色なたね油を原料とし、脱臭温度220℃または230℃で脱臭時間を35分とし、5hPa以下の真空度を維持して脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を1.5%と2.5%とする条件で脱臭を行なった。
原料の脱色油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価と、数1、2、3に示した式の左項の値を表4中に併記した。
【0077】
【表4】
【0078】
表4の結果から明らかなように、水蒸気吹込量対油比率を増やすことで、実施例の製造方法による油脂は、酸価をさらに低減できるだけでなく、トランス脂肪酸の生成量も低く抑えられた油脂となっていた。
【0079】
[実施例15〜21、比較例8]
実施例1の製造方法において、原料の脱色大豆油を5hPa以下の真空度を維持して脱臭温度、脱臭時間、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を表5に示すように変動させたこと以外は、実施例1と同様にして脱臭を行なった。
【0080】
脱色大豆油は、トコフェロール含量が保管中に若干減少していたが、そのまま使用した。原料の脱色油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を示すと共に、数1、2、3に示した式の左項の値を表5中に併記した。
【0081】
【表5】
【0082】
表5に示す結果から明らかなように、脱臭温度、脱臭時間、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を実施例の製造方法でバランスよく調整した実施例15〜21の油脂は、トランス脂肪酸の生成量が0.5%以下であり、酸価、色調、風味も良好で、トコフェロールの残存量も80%以上であった。
【0083】
これに対し、比較例8の油脂では、数2の式を満足しないS,M,Tの値を採用したので、トコフェロールの残存量が80%未満であった。
【0084】
[実施例22]
実施例15の製造方法において、脱色大豆油の脱臭温度を220℃、脱臭時間40分、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率8.0%とし、真空度8hPaとしたこと以外は同様にして脱臭工程を行なった。原料の脱色大豆油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を示すと共に、数1、2、3に示した式の左項の値を表6中に併記した。
【0085】
【表6】
【0086】
表6の結果からも明らかなように、実施例22の大豆油はトランス脂肪酸の生成量は相当に低く、脱臭油の品質は優れたものであった。
【0087】
[実施例23、比較例9]
実施例1において、脱色大豆油の代わりに脱色豚脂400gを用い、1L容量のガラス製水蒸気蒸留フラスコを用いて真空度2hPaで脱臭を行なったこと、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を表7に示した通りとしたこと以外は実施例1と同様にして脱臭工程を行ない、食用油脂を製造した。
【0088】
原料の脱色豚脂および得られた食用油脂の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を表7中に示すと共に、数1〜3に示した式の左項の値を同表中に併記した。なお、脱色豚脂の脂肪酸組成におけるジエン脂肪酸(C18−2)は7.9%、トリエン脂肪酸(C18−3)は0.7%であったので、数3の式の左項は14.9であった。
【0089】
【表7】
【0090】
表7の結果からも明らかなように、動物脂である豚脂に対しても実施例22は比較例9に比べてトランス脂肪酸の生成量は、実質的に全く生成しない程度に低く、脱臭油の品質は優れたものであった。
【0091】
[実施例24、比較例10]
実施例1において、原料の脱色大豆油の代わりに脱色大豆油320gと脱色えごま油80gを混合した大豆えごま混合油400gを用いたこと、1L容量のガラス製水蒸気蒸留フラスコを用いて真空度2hPaで脱臭を行なったこと、表8に示した脱臭時の水蒸気吹込量対油比率としたこと以外は実施例1と同様にして脱臭工程を行ない、食用油脂を製造した。
【0092】
原料に用いた脱色大豆えごま混合油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を示すと共に、数1、2、3に示した式の左項の値を表8中に併記した。なお、大豆えごま混合油の脂肪酸組成におけるジエン脂肪酸(C18−2)は45.8%、トリエン脂肪酸(C18−3)は17.2%であり、数3の式に示される左項は217.8であった。
【0093】
【表8】
【0094】
表8の結果からも明らかなように、脱臭工程前の原料油脂が、ジエン脂肪酸とトリエン脂肪酸の含量の高い混合油を使用した実施例24は、トランス脂肪酸の生成量が相当に低くなり、脱臭油の品質は優れたものであった。
【0095】
一方、数1、2の条件を満足しない脱臭工程条件を採用した比較例10はトランス脂肪酸の生成量は多く、トコフェロールの残存量は相当に低いものであった。
【0096】
[実施例25]
脱色なたね油900gとパーム極度硬化油100gを混合し、70℃まで加温した後、油脂に対し3gのナトリウムメトキシドを加え、30分間攪拌混合してランダムエステル交換反応を行なった。反応後、水洗して触媒を除去し、得られた反応油に活性白土を1%添加して105℃減圧下で30分間吸着処理をした後、濾紙にてろ過し、エステル交換油800gを得た。
【0097】
得られたエステル交換油400gについて、1L容量のガラス製水蒸気蒸留フラスコを用いて真空度2hPaで脱臭を行なった。脱臭温度、脱臭時間、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率は表9に示したとおりであり、原料の脱色油および得られた脱臭油の酸価、色調、トランス脂肪酸含量、トコフェロール含量、風味評価を示すと共に、数1、2、3に示した式の左項の値を表9中に併記した。
【0098】
なお、エステル交換油の脂肪酸組成におけるジエン脂肪酸(C18−2)は17.0%、トリエン脂肪酸(C18−3)は8.7%であったので、数3の式に示す左項は、104であった。
【0099】
【表9】
【0100】
表9の結果からも明らかなように、エステル交換油に対しても実施例25は、トランス脂肪酸の生成量は相当に低く、しかも脱臭油の品質は優れたものであった。
【0101】
[実施例26〜27]
ガードラー式トレイ型半連続式脱臭装置を用いて、真空度4hPaでコーン油、大豆油の脱臭を実施した。
トレイ数は5であり、トレイの油脂仕込量は1250kgとした。脱臭温度は220℃とし、第1トレイと第2トレイで220℃まで加熱し、第3トレイと第4トレイで脱臭を行なった。
【0102】
コーン油の場合は、各トレイで24分ずつ、計48分の保持時間(脱臭時間)とし、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を1.1%とした。
【0103】
大豆油の場合は各トレイで20分ずつ、計40分の保持時間(脱臭時間)とし、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を1.9%とした。
【0104】
第5トレイでの冷却を経た後、完全に窒素気流下となっているタンクに移送した脱臭油脂をサンプリングして品質を調べた。この結果を表10に示した。尚、脱臭前の原料油についても表10に併記した。
【0105】
また、得られた脱臭油について、保存の風味評価試験とその評価を以下のように行ない、その結果を表10中に併記した。
【0106】
<保存後の風味評価試験>
脱臭油を500ml容スチール缶に500g入れ、密栓後20℃に90日間保存した後、下記の基準に従い風味評価及び過酸化物価を行なった。
○: ほとんど無味か、微かに戻り臭がある程度であり良好である
△: 戻り臭や少し劣化した味が感じられる
×: 劣化しており、食用に不適である
【0107】
[比較例11〜12]
実施例26と27において、脱臭温度を250℃、脱臭時間を48分とし、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を通常の1.1%としたこと以外は同様に行ない、結果を表10中に併記した。
【0108】
【表10】
【0109】
表10の結果から明らかなように、脱臭工程における脱臭温度、脱臭時間、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を数1、2に示す所定の関係性をもってバランスよく調整した実施例26、27の油脂は、トランス脂肪酸の生成量が0.2%以下であり、酸価、色調、風味も良好で、トコフェロールの残存量も80%以上であった。
【0110】
これに対し、比較例11、12の脱臭工程で製造された油脂では、数1、2に示す所定の関係性を満足せずに、トコフェロールの残存量が80%未満であり、トランス脂肪酸の生成量が0.5質量%を超えていた。
【0111】
[実施例28]
実施例27において、大豆油に代えて脱色なたね油を原料として脱臭を行なった。脱色なたね油は、色調が80であったので、再度の脱色処理を行なった。その場合、なたね油20トンに対して活性白土を0.5%添加して90℃減圧下で30分間吸着処理をした後、フィルタープレスにてろ過し、得られたなたね脱色油を脱臭装置に供した。得られた脱色なたね油の酸価は、0.11であり、色調は19であった。
【0112】
脱臭工程は、真空度4hPaで脱色油脂を220℃、40分間脱臭し、脱臭なたね油を得た。脱臭なたね油及び脱臭前の脱色なたね油の品質を表11中に示した。
また、得られた脱臭油について、実施例27と同様に保存テストを行ない、その結果を表11中に併記した。
【0113】
【表11】
【0114】
表11の結果から明らかなように、脱臭工程における脱臭温度、脱臭時間、脱臭時の水蒸気吹込量対油比率を数1、2に示す所定の関係性をもってバランスよく調整した実施例28の製造方法で得られた油脂は、トランス脂肪酸の生成量が0.16と低く、酸価、色調、風味も良好で、トコフェロールの残存量も80%以上であった。特に、脱臭前の原料油に吸着剤処理を施し、色調を19に低減させたことにより、比較例7に示された油脂の色調以上に淡色のものとなった。