(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955141
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】低床車両のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20160707BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
B62D25/20 C
B62D25/20 D
B62D25/20 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-155372(P2012-155372)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-15166(P2014-15166A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健三
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−142911(JP,A)
【文献】
特開2002−356175(JP,A)
【文献】
実開昭57−009677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部フレームに対し相対的に幅広の後部フレームを前記前部フレームより高さを下げ且つボックス構造のガセットを介して連結すると共に、前記前部フレームの各サイドメンバの後端部相互間をリヤクロスメンバにより連結し且つ前記後部フレームの各サイドメンバの前端部相互間をフロントクロスメンバにより連結した低床車両のフレーム構造であって、前記前部フレームの各サイドメンバの後端部外側面に前記ガセットの上部を固定し且つ該ガセットの下部に前記後部フレームの各サイドメンバの前端部を貫通固定して前記前部フレームの各サイドメンバの後端部と前記後部フレームの各サイドメンバの前端部との連結を図り、該前端部を前記後部フレームのフロントクロスメンバにより前記ガセットごと車幅方向に貫通せしめて固定したことを特徴とする低床車両のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低床車両のフレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型トラック等の商用車の分野にも電気自動車化の流れが及んできており、モータ等の駆動系をキャブ下に集約して従来の後輪駆動から前輪駆動に変更し、後輪に駆動力を伝えるためのプロペラシャフトが不要となることによりキャブ後方のフレームを低床化して荷台容積の拡張を図ることが検討されている。
【0003】
モータ等の駆動系を前車軸支持構造も含めて支持する動力支持部を前部フレームとし、荷台を支持する荷台支持部を後部フレームとした場合、前輪の十分な蛇角を確保するために幅狭に構成される前部フレームに対し、大型バッテリを荷台のフロア面下に敷設する必要がある後部フレームは幅広に構成されることになり、また、駆動系やサスペンションとの干渉を避けるべく低床化が困難な前部フレームに対し、プロペラシャフト等の駆動伝達系が不要で且つ後車軸の周辺部にて該後車軸の可動範囲を避けるようにサイドメンバに湾曲部を設ける(例えば下記の特許文献1を参照)ことが可能な後部フレームは低床化して高さを低く下げることが可能である。
【0004】
尚、ここでは小型トラックを電気自動車化する場合を好適例として説明しているが、電気自動車でない場合であっても、フレームを低床化して荷台容積の拡張を図れることは大きなメリットであり、また、後部フレームを幅広に構成することでは、フレームの全体剛性やロール剛性の強化が図られるというメリットが得られるため、前述のフレーム構造は必ずしも電気自動車だけに適用されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−56445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、車両全長に亘り一体のフレーム構造とするのが一般的な設計思想であったため、フレームの全体構造を前部フレームと後部フレームとに分割して構成した上、前部フレームに対し幅も高さも異なる後部フレームを高い剛性で強固に連結し得るようなフレーム構造は未だ提案されておらず、そのようなフレーム構造の提案が望まれている。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、前部フレームに対し幅も高さも異なる後部フレームを高い剛性で強固に連結し得る低床車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前部フレームに対し相対的に幅広の後部フレームを前記前部フレームより高さを下げ
且つボックス構造のガセットを介して連結すると共に、前記前部フレームの各サイドメンバの後端部相互間をリヤクロスメンバにより連結し且つ前記後部フレームの各サイドメンバの前端部相互間をフロントクロスメンバにより連結した低床車両のフレーム構造であって、前記前部フレームの各サイドメンバの後端部外側面に前記ガセットの上部を固定し且つ該ガセットの下部に前記後部フレームの各サイドメンバの前端部を貫通固定して前記前部フレームの各サイドメンバの後端部と前記後部フレームの各サイドメンバの前端部との連結を図り、該前端部を前記後部フレームのフロントクロスメンバにより前記ガセットごと車幅方向に貫通せしめて固定したことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、前部フレームに対し相対的に幅広の後部フレームを前記前部フレームより高さを下げて連結するにあたり、前部フレームと後部フレームの幅と高さの違いをガセットの幅と高さで補いながら該ガセットの強固なボックス構造により剛性の高い連結を図ることが可能となり、しかも、上側のリヤクロスメンバと両側のガセットと下側のフロントクロスメンバとにより断面が四角く閉じられた閉断面構造が構成されることによっても更なる剛性の向上が図られる。
【0011】
更に、本発明においては、後部フレームの各サイドメンバの前端部が単純にガセットの下部に挿し込まれて貫通固定されるだけでなく、後部フレームのフロントクロスメンバによりガセットごと車幅方向に貫通されて閂状に抜け止めされることになるため、より強固な前部フレームと後部フレームとの連結が図られる。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明の低床車両のフレーム構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0013】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、前部フレームと後部フレームの幅と高さの違いをガセットの幅と高さで補いながら該ガセットの強固なボックス構造により剛性の高い連結を図ることができると共に、上側のリヤクロスメンバと両側のガセットと下側のフロントクロスメンバとにより断面が四角く閉じられた閉断面構造を構成して更なる剛性の向上を図ることもできるので、前部フレームに対し幅も高さも異なる後部フレームを高い剛性で強固に連結することができ、低床車両の実用化に大きく貢献させることができる。
【0014】
(II)本発明の請求項1に記載の発明によれば、前部フレームに対し幅も高さも異なる後部フレームを高い剛性で強固に連結することが実現できるので、用途に応じて設計変更された複数種類の後部フレームを用意し、共通の前部フレームに対し後部フレームの組み合わせを変更することで様々な用途の車両を容易に造り分けることもできる。
【0015】
(III)本発明の請求項
1に記載の発明によれば、後部フレームの各サイドメンバの前端部をガセットの下部に貫通固定させた上、後部フレームのフロントクロスメンバによりガセットごと車幅方向に貫通させて閂状に抜け止めすることができるので、より強固な前部フレームと後部フレームとの連結を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【
図6】ガセットの組み付け前の状態を示す斜視図である。
【
図7】ガセットと後部フレームとの組み付け状態を示す斜視図である。
【
図8】ガセットとフロントクロスメンバとの組み付け状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1〜
図8は本発明を実施する形態の一例を示すもので、電気自動車化した小型トラックに適用した場合を例示しており、ここに図示している例では、前記小型トラックのフレーム構造が、モータ等の駆動系を前車軸支持構造も含めて支持する動力支持部を前部フレーム1とし、荷台を支持する荷台支持部を後部フレーム2として分割構成されている。
【0019】
そして、前輪の十分な蛇角を確保するために幅狭に構成される前部フレーム1に対し、大型バッテリを荷台のフロア面下に敷設する必要がある後部フレーム2は幅広に構成されており(
図2参照)、また、駆動系やサスペンションとの干渉を避けるべく低床化が困難な前部フレーム1に対し、プロペラシャフト等の駆動伝達系が不要な後部フレーム2は、荷台容積の拡張を図るべく低床化して高さを低く下げた構成となっている(
図3参照)。
【0020】
更に、前記前部フレーム1の各サイドメンバ1aの後端部と前記後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部との間がガセット3を介して連結されており、特に
図6に組み付け前の状態を示している通り、このガセット3は、起立して縦壁を成す三枚の前側面4,内側面5,後側面6と、これら三枚の縦壁により囲まれた空間の下部開口を塞ぐ底面7と、上部開口を一段下がった位置で塞ぐ天井面8とを一体的に組み付けたボックス構造を成すようになっている。
【0021】
そして、前記ガセット3の内側面5における天井面8より上側の部分が、前部フレーム1の各サイドメンバ1aの後端部外側面に対しボルト締結により固定されており(
図1、
図3及び
図5参照)、前記ガセット3の車幅方向外側に張り出した下部に対し前記後側面6の貫通穴9を介し後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部が貫通されて溶接により固定されている(
図7参照)。
【0022】
ここで、前記ガセット3の内側面5における天井面8より下側の部分と、前記後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部とには、車幅方向に開口する貫通穴10,11が夫々形成されており、該各貫通穴10,11を介し前記後部フレーム2のフロントクロスメンバ13が前記各サイドメンバの前端部をガセット3ごと車幅方向に貫通して溶接により固定されている(
図8参照)。
【0023】
また、前記前部フレーム1の各サイドメンバ1aの後端部相互間がリヤクロスメンバ12により連結されていると共に、前記後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部相互間がフロントクロスメンバ13により連結されており、上側のリヤクロスメンバ12と両側のガセット3と下側のフロントクロスメンバ13とにより断面が四角く閉じられた閉断面構造が構成されるようにしてある(
図1及び
図4参照)。
【0024】
而して、このようにすれば、前部フレーム1に対し相対的に幅広の後部フレーム2を前記前部フレーム1より高さを下げて連結するにあたり、前部フレーム1と後部フレーム2の幅と高さの違いをガセット3の幅と高さで補いながら該ガセット3の強固なボックス構造により剛性の高い連結を図ることが可能となり、しかも、上側のリヤクロスメンバ12と両側のガセット3と下側のフロントクロスメンバ13とにより断面が四角く閉じられた閉断面構造が構成されることによっても更なる剛性の向上が図られる。
【0025】
また、特に本形態例においては、後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部が単純にガセット3の下部に挿し込まれて貫通固定されるだけでなく、後部フレーム2のフロントクロスメンバ13によりガセット3ごと車幅方向に貫通されて閂状に抜け止めされることになるため、より強固な前部フレーム1と後部フレーム2との連結が図られる。
【0026】
従って、上記形態例によれば、前部フレーム1と後部フレーム2の幅と高さの違いをガセット3の幅と高さで補いながら該ガセット3の強固なボックス構造により剛性の高い連結を図ることができると共に、上側のリヤクロスメンバ12と両側のガセット3と下側のフロントクロスメンバ13とにより断面が四角く閉じられた閉断面構造を構成して更なる剛性の向上を図ることもでき、更には、後部フレーム2の各サイドメンバ2aの前端部をガセット3の下部に貫通固定させた上、後部フレーム2のフロントクロスメンバ13によりガセット3ごと車幅方向に貫通させて閂状に抜け止めすることもできるので、前部フレーム1に対し幅も高さも異なる後部フレーム2を高い剛性で強固に連結することができ、低床車両の実用化に大きく貢献させることができる。
【0027】
また、前部フレーム1に対し幅も高さも異なる後部フレーム2を高い剛性で強固に連結することが実現できるので、用途に応じて設計変更された複数種類の後部フレーム2を用意し、共通の前部フレーム1に対し後部フレーム2の組み合わせを変更することで様々な用途の車両を容易に造り分けることもできる。
【0028】
尚、本発明の低床車両のフレーム構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、電気自動車化した小型トラックへの適用に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 前部フレーム
1a サイドメンバ
2 後部フレーム
2a サイドメンバ
3 ガセット
12 リヤクロスメンバ
13 フロントクロスメンバ