特許第5955151号(P5955151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955151
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   B60R22/46 166
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-171953(P2012-171953)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-31079(P2014-31079A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 拓宏
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−121749(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/086818(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0041651(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102006027807(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェビングの長手方向基端側が係止されて、軸周りの一方の巻取方向に回転することで前記ウェビングを巻取るスプールと、
前記スプールに対して一体的に設けられ或いは前記スプールに直接又は間接的に連結されて、所定方向への回転を前記スプールに伝えて前記スプールを前記巻取方向に回転させるスプール側回転体と、
前記所定方向へ回転可能な中間回転体と、
一端が前記中間回転体に係止されて前記中間回転体に伴われて回転すると共に前記スプール側回転体に対して摩擦係合し、前記所定方向へ回転した場合には前記スプール側回転体との間の摩擦で前記スプール側回転体を前記所定方向へ回転させると共に、前記所定方向への前記スプール側回転体の回転が規制された状態で前記一端が前記所定方向へ回転されることによって、前記スプール側回転体との間の摩擦が小さくされ、前記スプール側回転体に対して滑って前記スプール側回転体に対して前記所定方向へ相対回転し、更に、前記所定方向へ回転する前記中間回転体が停止することによって前記一端が前記中間回転体を前記所定方向とは反対方向へ回転させる第1回転伝達部材と、
モータと、
前記モータの駆動力が伝えられて前記所定方向へ回転するモータ側回転体と、
前記中間回転体に対して係合する向きに移動可能に前記モータ側回転体に設けられ、前記モータ側回転体が前記所定方向へ回転することによって前記中間回転体に係合して前記モータ側回転体の前記所定方向への回転を前記中間回転体に伝えて前記中間回転体を前記所定方向へ回転させると共に、前記中間回転体に対する係合状態で前記中間回転体が相対的に前記所定方向とは反対方向へ回転することによって前記中間回転体に対する係合が解除される第2回転伝達部材と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記中間回転体に係止された前記一端が前記中間回転体から前記所定方向への回転力を受けた状態で、当該回転力に抗する付勢力を有すると共に当該付勢力によって弾性変形が可能な弾性部材によって前記第1回転伝達部材を構成した請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
軸方向が前記スプール側回転体の軸方向に沿ったコイル状に形成されて、その内側に前記スプール側回転体が配置されて前記スプール側回転体の外周部に圧接すると共に、前記中間回転体に係止される前記一端が他端に対して前記所定方向に回転することによって巻締まりが弛むように弾性変形するコイルばねを前記弾性部材とした請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記モータ側回転体に対して前記所定方向及びその反対方向へ相対回転可能に設けられると共に、前記モータ側回転体が前記所定方向へ回転することで前記第2回転伝達部材に干渉し、前記モータ側回転体の回転に伴い前記第2回転伝達部材を前記中間回転体に連結させる向きに前記第2回転伝達部材を移動させる干渉手段と、
前記第2回転伝達部材に対する前記干渉手段の干渉が解除されることにより、その付勢力で前記第2回転伝達部材を前記中間回転体に連結させる向きとは反対向きに前記第2回転伝達部材を移動させる付勢手段と、
を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートベルト装置を構成するウェビング巻取装置に係り、特に、モータの駆動力でスプールを回転させることが可能なウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたウェビング巻取装置のクラッチは、ロータに形成された支軸にロックバーが回動可能に支持されており、ロータに設けられた捩りコイルスプリングの付勢力によってロックバーが回動すると、ロックバーの先端がラチェットに噛み合い、ロータの回転がロックバーを介してラチェットに伝わる。
【0003】
一方、クラッチケースにはスライダがロータに対して相対回転可能に設けられており。ロックバーの基端側がスライダに接近するようにロータが回転すると、スライダがロックバーに係合し、捩りコイルスプリングの付勢力にこうしてロックバーを回動させる。これにより、ラチェットに対するロックバーの噛み合いが解消され、ロックバーを介したロータとラチェットとの機械的な連結が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208639号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された構成では、ラチェットに対するロックバーの噛み合いを解消するためにはモータを逆転駆動させてロータを逆転させなくてはならない。このため、モータの制御は正転駆動制御及び逆転駆動制御の双方を要し、制御回路の回路構成や制御プログラムが複雑になる。また、モータが停止した際にロータを逆転させるためのスプリング等を別途設けると部品点数が多くなり、コストが高くなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、モータを逆転駆動させることなくモータとスプールとの連結を解消でき、しかも、そのための構成が簡素なウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、ウェビングの長手方向基端側が係止されて、軸周りの一方の巻取方向に回転することで前記ウェビングを巻取るスプールと、前記スプールに対して一体的に設けられ或いは前記スプールに直接又は間接的に連結されて、所定方向への回転を前記スプールに伝えて前記スプールを前記巻取方向に回転させるスプール側回転体と、前記所定方向へ回転可能な中間回転体と、一端が前記中間回転体に係止されて前記中間回転体に伴われて回転すると共に前記スプール側回転体に対して摩擦係合し、前記所定方向へ回転した場合には前記スプール側回転体との間の摩擦で前記スプール側回転体を前記所定方向へ回転させると共に、前記所定方向への前記スプール側回転体の回転が規制された状態で前記一端が前記所定方向へ回転されることによって、前記スプール側回転体との間の摩擦が小さくされ、前記スプール側回転体に対して滑って前記スプール側回転体に対して前記所定方向へ相対回転し、更に、前記所定方向へ回転する前記中間回転体が停止することによって前記一端が前記中間回転体を前記所定方向とは反対方向へ回転させる第1回転伝達部材と、モータと、前記モータの駆動力が伝えられて前記所定方向へ回転するモータ側回転体と、前記中間回転体に対して係合する向きに移動可能に前記モータ側回転体に設けられ、前記モータ側回転体が前記所定方向へ回転することによって前記中間回転体に係合して前記モータ側回転体の前記所定方向への回転を前記中間回転体に伝えて前記中間回転体を前記所定方向へ回転させると共に、前記中間回転体に対する係合状態で前記中間回転体が相対的に前記所定方向とは反対方向へ回転することによって前記中間回転体に対する係合が解除される第2回転伝達部材と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係るウェビング巻取装置では、モータが駆動してモータ側回転体が所定方向へ回転すると、第2回転伝達部材が中間回転体に係合する方向へ移動する。これによって第2回転伝達部材が中間回転体に係合すると、モータ側回転体の所定方向への回転が中間回転体に伝わり、中間回転体が所定方向へ回転する。中間回転体が所定方向へ回転すると中間回転体に一端が形成された第1回転伝達部材は中間回転体と共に所定方向へ回転する。この第1回転伝達部材の回転はスプール側回転体との摩擦によってスプール側回転体に伝わりスプール側回転体を所定方向に回転させる。このようにスプール側回転体が所定方向に回転することによってスプールが巻取方向に回転し、ウェビングがその基端側からスプールに巻取られる。
【0009】
一方、例えば、直接又は間接的にスプール側回転体の所定方向への回転が規制され、又は、スプール側回転体に所定方向とは反対方向への回転力が付与された状態で中間回転体が所定方向へ回転すると、第1回転伝達部材とスプール側回転体との間の摩擦が小さくされる。これによって、第1回転伝達部材がスプール側回転体との摩擦に抗して滑り、スプール側回転体に対して第1回転伝達部材が所定方向へ相対回転する。これにより、スプール側回転体が所定方向へ回転すること、ひいては、スプールが巻取方向に回転することを抑制できる。
【0010】
また、このようにモータの駆動力でスプールが巻取方向に回転している状態でモータが停止し、これにより、中間回転体の所定方向への回転が停止すると第1回転伝達部材が中間回転体を所定方向とは反対方向へ回転させる。この状態では、第2回転伝達部材が中間回転体に係合しておりモータ側回転体の所定方向への回転を中間回転体に伝達できる状態であるが、第1回転伝達部材が中間回転体を所定方向とは反対方向へ回転させると、中間回転体に対する第2回転伝達部材の係合が解消される。これにより、モータが再びモータ側回転体を所定方向へ回転させるまでは、中間回転体とモータ側回転体との間における回転伝達可能な機械的連結が解消される。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、前記中間回転体に係止された前記一端が前記中間回転体から前記所定方向への回転力を受けた状態で、当該回転力に抗する付勢力を有すると共に当該付勢力によって弾性変形が可能な弾性部材によって前記第1回転伝達部材を構成している。
【0012】
請求項2に記載のウェビング巻取装置では、第1回転伝達部材を構成する弾性部材は、中間回転体が所定方向へ回転すると弾性変形すると共に、この所定方向とは反対方向への付勢力が生じる(又は、このような付勢力が増加する)。このため、中間回転体の所定方向の回転が停止すると弾性部材はその一端で中間回転体を所定方向とは反対方向へ押圧する。これにより、中間回転体が所定方向とは反対方向へ回転して第2回転伝達部材による中間回転体とモータ側回転体との連結が解消される。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項2に記載の本発明において、軸方向が前記スプール側回転体の軸方向に沿ったコイル状に形成されて、その内側に前記スプール側回転体が配置されて前記スプール側回転体の外周部に圧接すると共に、前記中間回転体に係止される前記一端が他端に対して前記所定方向に回転することによって巻締まりが弛むように弾性変形するコイルばねを前記弾性部材としている。
【0014】
請求項3に記載のウェビング巻取装置によれば、第1回転伝達部材を構成する弾性部材としてのコイルばねは、軸方向がスプール側回転体の軸方向に沿ったコイル状に形成される。このコイルばねの内側にスプール側回転体が設けられてコイルばねがスプール側回転体の外周部に圧接する。中間回転体が所定方向に回転することで中間回転体に係止されたコイルばねの一端がコイルばね全体を伴い所定方向に相対回転すると、コイルばねとスプール側回転体の外周部との間の摩擦がスプール側回転体を所定方向へ回転させる。これにより、スプールを巻取方向に回転させることができる。
【0015】
また、中間回転体の所定方向への回転が停止すると、コイルばねは弾性によって元の形状に復元しようとする。これによりコイルばねの一端は他端に対して所定方向とは反対方向へ相対回転し、これにより、コイルばねの一端が中間回転体を所定方向とは反対方向へ回転させ、中間回転体とモータ側回転体との間における回転伝達可能な機械的連結を解消させる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係るウェビング巻取装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記モータ側回転体に対して前記所定方向及びその反対方向へ相対回転可能に設けられると共に、前記モータ側回転体が前記所定方向へ回転することで前記第2回転伝達部材に干渉し、前記モータ側回転体の回転に伴い前記第2回転伝達部材を前記中間回転体に連結させる向きに前記第2回転伝達部材を移動させる干渉手段と、前記第2回転伝達部材に対する前記干渉手段の干渉が解除されることにより、その付勢力で前記第2回転伝達部材を前記中間回転体に連結させる向きとは反対向きに前記第2回転伝達部材を移動させる付勢手段と、を備えている。
【0017】
請求項4に記載のウェビング巻取装置によれば、モータの駆動力でモータ側回転体が所定方向へ回転すると、このモータ側回転体に対して相対回転可能な干渉手段が第2回転伝達部材に干渉する。この状態でモータ側回転体が更に所定方向へ回転すると、干渉手段に干渉された第2回転伝達部材が中間回転体に連結する向きへ第2回転伝達部材が移動させられる。これにより、第2回転伝達部材が中間回転体に連結すると、モータ側回転体の所定方向の回転力が第2回転伝達部材を介して中間回転体に伝わり、中間回転体が所定方向へ回転する。
【0018】
一方、モータが停止して第1回転伝達部材が中間回転体を所定方向とは反対方向へ回転させると、第2回転伝達部材が干渉手段から離間して、干渉手段による第2回転伝達部材への干渉が解消される。この状態では第2回転伝達部材が中間回転体に連結する向きとは反対向きへ付勢手段の付勢力が第2回転伝達部材を付勢しているので、これにより、第2回転伝達部材が移動すると、第2回転伝達部材によるモータ側回転体と中間回転体との連結が解消される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係るウェビング巻取装置は、モータを逆転駆動させることなくモータとスプールとの連結を解消でき、しかもその構成を簡素にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の要部の構成を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の要部の構成を拡大した側面図である。
図3】第2回転伝達部材が中間回転体に係合した状態を示す図2に対応した側面図である。
図4】第1回転伝達部材の付勢力で中間回転体が所定方向とは反対方向へ回転した状態を示す図2に対応した側面図である。
図5】干渉手段をギヤボックスに装着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置10の構成が分解斜視図により示されている。
【0022】
この図に示されるように、ウェビング巻取装置10は、例えば、車両の骨格部材や補強部材等の車体構成部材に固定されるフレーム12を備えている。フレーム12は車体への取付状態で略車両前後方向に沿って互いに対向する脚板14、16を備えている。
【0023】
これらの脚板14、16の間にはスプール18が設けられている。スプール18は軸方向が脚板14と脚板16との対向方向に沿った略円筒形状に形成されている。このスプール18には長尺帯状に形成されたウェビング20の長手方向基端部が係止されている。スプール18は、その中心軸線周りの一方である巻取方向に回転することで、ウェビング20をその長手方向基端側から巻取って格納し、例えば、乗員が身体にウェビング20を装着するにあたってウェビング20を引っ張ると、スプール18に巻取られているウェビング20が引出されつつ、巻取方向とは反対の引出方向にスプール18が回転する。
【0024】
スプール18の内側には図示しないトーションシャフトが設けられている。トーションシャフトは軸方向がスプール18の軸方向に沿った棒状の部材とされている。トーションシャフトは、脚板14側の端部よりも脚板16側でスプール18に対して同軸的な相対回転が不能な状態でスプール18に連結されている。
【0025】
また、脚板14の脚板16とは反対側にはロック手段としてのロック機構22のハウジング24が脚板14に取り付けられており、上記のトーションシャフトの脚板14側の端部は、スプール18の中心軸線周りに回転自在にハウジング24に直接又は間接的に支持されている。ハウジング24の内側には、車両が急減速状態になった場合に作動し、作動することでトーションシャフトの脚板14側の端部が引出方向へ回転することを規制する所謂「VSIR機構」を構成する各種部品や、引出方向へのトーションシャフトの回転加速度が所定の大きさを超えた場合に作動し、作動することでトーションシャフトの脚板14側の端部が引出方向へ回転することを規制する所謂「WSIR機構」を構成する各種部品が収容されている。
【0026】
さらに、脚板14の脚板16とは反対側には強制引張手段としてのプリテンショナ26が設けられている。プリテンショナ26は車両急減速状態で作動し、作動することで、上記のトーションシャフトの脚板14側の端部又はスプール18に対して巻取方向への回転力を付与して、スプール18を強制的に巻取方向へ回転させる。
【0027】
一方、脚板14と脚板16との間のスプール18の下側にはモータ40が設けられている。モータ40は図示しない制御手段としてのECUを介して車両に搭載されたバッテリーと、車両の前方で走行する他の車両や、車両前方の障害物までの距離を測定するレーダ装置等の前方監視装置に電気的に接続されている。前方監視装置から出力された電気信号に基づき、車両の前方で走行する他の車両や車両前方の障害物までの距離が一定値未満になったとECUが判定すると、ECUがモータ40を作動させる。モータ40は出力軸42の軸方向がスプール18の軸方向と同じ向きとされており、出力軸42の先端側は脚板16に形成された図示しない透孔を通過して脚板16の外側(脚板16の脚板14とは反対側)に突出している。
【0028】
さらに、脚板16の脚板14とは反対側には駆動力伝達機構50が設けられている。駆動力伝達機構50は脚板16の脚板14とは反対側で脚板16に取り付けられた保持手段としてのギヤボックス52を備えている。ギヤボックス52は脚板16とは反対側へ向けて開口した凹形状に形成されている。このギヤボックス52の底部には孔部54が形成されており、脚板16の孔部を通過したモータ40の出力軸42が孔部54を通過してギヤボックス52の内側に入り込んでいる。
【0029】
ギヤボックス52に入り込んだ出力軸42の先端側には、外歯で平歯のギヤ56が出力軸42に対して同軸的且つ一体的に取り付けられている。このギヤ56の側方では、ギヤボックス52の底部に支持軸58が形成されている。支持軸58は軸方向が出力軸42の軸方向と同じ向きとされている。
【0030】
この支持軸58には二段ギヤ60が支持軸58周りに回転自在に支持されている。二段ギヤ60は外歯で平歯の大径ギヤ62を備えている。大径ギヤ62はギヤ56よりも大径で且つギヤ56よりも歯数が多く設定されておりギヤ56に噛み合っている。大径ギヤ62の軸方向側方には、大径ギヤ62よりも小径とされた外歯で平歯の小径ギヤ64が大径ギヤ62に対して同軸的且つ一体的に形成されている。この二段ギヤ60の回転半径方向側方では、ギヤボックス52の底部に支持軸68が形成されている。
【0031】
支持軸68は軸方向が出力軸42や支持軸58の軸方向と同じ向きとされている。この支持軸68には二段ギヤ70が支持軸68周りに回転自在に支持されている。二段ギヤ70は外歯で平歯の大径ギヤ72を備えている。大径ギヤ72は小径ギヤ64よりも大径で且つ小径ギヤ64よりも歯数が多く設定されており小径ギヤ64に噛み合っている。大径ギヤ72の軸方向側方には、大径ギヤ72よりも小径とされた外歯で平歯の小径ギヤ74が大径ギヤ72に対して同軸的且つ一体的に形成されている。
【0032】
この二段ギヤ70の回転半径方向側方では、ギヤボックス52の底部に支持軸78が形成されている。支持軸78は軸方向が出力軸42や支持軸58、68の軸方向と同じ向きとされている。この支持軸78には外歯で平歯のギヤ80が支持軸78周りに回転自在に支持されている。ギヤ80は小径ギヤ74よりも大径で且つ小径ギヤ74よりも歯数が多く設定されており小径ギヤ74に噛み合っている。
【0033】
ギヤ80の回転半径方向側方にはクラッチ90が設けられている。クラッチ90はモータ側回転体としての入力ギヤ92を備えている。入力ギヤ92は底壁部94を備えている。底壁部94には円孔96が形成されている。円孔96に対応してギヤボックス52に底部にはリング状の支持部98が形成されている。円孔96は入力ギヤ92の底部から脚板14とは反対側へ向けて立設されている。また、支持部98は、その中心軸線が上記のスプール18の中心軸線に対して略同軸となるように形成されている。
【0034】
この支持部98は円孔96を貫通しており、底壁部94、すなわち、入力ギヤ92を支持部98の中心軸線周りに回転自在に支持している。底壁部94の外周部には、外歯で平歯のギヤ部100が形成されている。ギヤ部100は、底壁部94の円孔96に対して同軸的に形成されていると共に、上記のギヤ80よりも大径で、しかも、ギヤ80よりも歯数が多く、ギヤ80に噛み合っている。上記のように、ギヤ80は、二段ギヤ70、60を介してモータ40の出力軸42に設けられたギヤ56に機械的に連結されているため、モータ40が作動し、その駆動力で出力軸42が回転すると、出力軸42の回転が減速されてギヤ部100に伝わり、ギヤ部100、すなわち、入力ギヤ92が回転する。
【0035】
一方、ギヤ部100の内側には一対の支持軸102が設けられている。各支持軸102は軸方向が円孔96の軸方向と同じ向きとされ、入力ギヤ92の底壁部94から脚板16とは反対側へ向けて突出形成されている。これらの支持軸102は、円孔96の中心を介して互いに対向するように形成されている。これらの支持軸102には、第2回転伝達部材としての連結パウル110が設けられている。各連結パウル110には円孔112が形成されている。円孔112には上記の支持軸102が通過しており、各連結パウル110は、対応する円孔112によって円孔112の中心軸線周りに回動可能に支持されている。
【0036】
ギヤ部100の内側には中間回転体としてのラチェットギヤ114が設けられている。ラチェットギヤ114は底壁部94の円孔96を通過してギヤ部100の内側に入り込んでいるスプール側回転体としてのアダプタ116に取り付けられている。アダプタ116は上述したトーションシャフトに対して相対回転不能な状態でトーションシャフトの脚板16側の端部に装着されている。このアダプタ116の外周形状はスプール18に対して略同軸の円形とされており、ラチェットギヤ114の中央に形成された円孔118をアダプタ116が貫通するようにラチェットギヤ114が設けられている。
【0037】
このアダプタ116には付勢部材として第回転伝達部材を構成する捩じりコイルばね(コイルばね)130が設けられている。捩じりコイルばね130はその本体部分を円筒形状とみなすと捩じりコイルばね130は内径寸法がアダプタ116の外径寸法に略等しく、外径寸法がラチェットギヤ114の円孔118に略等しい形状とされている。図2に示されるように、捩じりコイルばね130は、その内側をアダプタ116が貫通した状態でアダプタ116の外周部に圧接しており、更に、この状態で捩じりコイルばね130はアダプタ116と共にラチェットギヤ114の円孔118を貫通する。
【0038】
図1及び図2に示されるように、捩じりコイルばね130の本体部分(コイル部分)の一端からは係止片132が連続して形成されている。係止片132は捩じりコイルばね130の本体部分における半径方向外方へ延出されている。捩じりコイルばね130は、この係止片132(すなわち、一端側)を巻取方向に押圧すると本体部分の巻締まりが弛むように本体部分における螺旋の向きが設定されている。
【0039】
この捩じりコイルばね130の係止片132に対応してラチェットギヤ114には係止溝134が形成されている。係止溝134は開口幅が係止片132の外径寸法よりも僅かに大きな溝で、係止溝134におけるラチェットギヤ114の回転半径方向中央側端部はラチェットギヤ114の円孔118に繋がっている。捩じりコイルばね130は係止片132がラチェットギヤ114の係止溝134に入り込んでいる。このため、ラチェットギヤ114が巻取方向に回転して係止溝134の内壁が係止片132を巻取方向に押圧すると捩じりコイルばね130の本体部分が巻取方向に回転する。
【0040】
さらに、捩じりコイルばね130の本体部分は内側がその付勢力でアダプタ116に圧接している。このため、捩じりコイルばね130の本体部分が巻取方向に回転すると、捩じりコイルばね130とアダプタ116との間の摩擦が回転力をアダプタ116に伝えてアダプタ116を巻取方向に回転させる。
【0041】
一方、上記のラチェットギヤ114の外周部には外歯のラチェット歯が形成されている。このラチェットギヤ114のラチェット歯に対応して、上記の連結パウル110には噛合部122が形成されている。連結パウル110は円孔112を貫通する支持軸102周りの一方へ回動することで、図3に示されるように、噛合部122がラチェットギヤ114の外周部へ接近して、ラチェットギヤ114のラチェット歯に噛合部122が噛み合う。ラチェットギヤ114のラチェット歯に噛合部122が噛み合った状態で入力ギヤ92が支持部98周りに巻取方向に回転すると、入力ギヤ92と共に巻取方向に回転する連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114を巻取方向に押圧して、ラチェットギヤ114を入力ギヤ92と共に巻取方向に回転させる。
【0042】
ここで、一方の支持軸102に対して他方の支持軸102は、入力ギヤ92の回転中心周りに130度ずれた状態で形成されている。これに対して、ラチェットギヤ114に形成された外歯のラチェット歯は奇数とされている。このため、一方の支持軸102に支持された連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114のラチェット歯に噛み合うと、他方の支持軸102に支持された連結パウル110の噛合部122は、ラチェットギヤ114の回転周方向に沿ったラチェット歯の斜面の中間部に接してラチェット歯に噛み合わない。このような構成では、ラチェット歯の形成間隔の半分の角度だけラチェットギヤ114が回転すれば、何れかの連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114のラチェット歯に噛み合う。
【0043】
なお、本実施の形態では、上記のようにラチェットギヤ114のラチェット歯の数を奇数に設定すると共に、両方の支持軸102を入力ギヤ92の回転中心周りに130度ずれた状態で形成することによって何れかの連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114のラチェット歯に噛み合う構成とした。ラチェットギヤ114のラチェット歯の数や連結パウル110を支持する支持軸102の形成位置がこのような態様に限定されるものではない。したがって、両方の連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114の各ラチェット歯に略同時に噛み合うようにラチェットギヤ114のラチェット歯の数や連結パウル110を支持する支持軸102の形成位置等を設定してもよい。また、本実施の形態は2つの連結パウル110を有する構成であったが、連結パウル110を3つ以上備える構成であってもよいし、連結パウル110を1つしか設けない構成であってもよい。
【0044】
一方、上記の支持軸102に対する入力ギヤ92の回転周方向に沿った引出方向側では、底壁部94に支持ピン124が形成されている。これらの支持ピン124の各々には付勢手段としてのリターンスプリング126が取り付けられている。リターンスプリング126は中間部がコイル状とされた捩じりコイルばねで、その一端は底壁部94に形成された図示しない係止部に係止されている。これに対して、リターンスプリング126の他端側は連結パウル110のスプリング当接部128に圧接しており、支持軸102周りの他方、すなわち、噛合部122をラチェットギヤ114の外周部から離間させる向きに連結パウル110を付勢している。
【0045】
また、クラッチ90は各々が干渉手段としての一対の干渉片140を備えている。図5に示されるように、干渉片140は基部142を備えている。基部142は幅方向が干渉片140の高さ方向、更に言えばスプール18の軸方向に沿った細幅の板状に形成されている。この基部142に対応して上記のギヤボックス52の底部には外側保持リング146と内側保持リング148とが形成されている。
【0046】
これらの外側保持リング146及び内側保持リング148は上記の支持部98に対して同軸のリング状に形成されており、脚板16とは反対側へ向けてギヤボックス52の底部から立設されている。上記の干渉片140の基部142は、この外側保持リング146と内側保持リング148との間に入り込んでいると共に、そのばね性によって外側保持リング146の内周部や内側保持リング148の外周部に圧接している。
【0047】
また、基部142の幅方向一端部(すなわち、基部142が外側保持リング146と内側保持リング148との間に入り込んだ状態で支持部98の底部とは反対側の基部142の幅方向端部)における基部142の長手方向中央側からは干渉部152が延出されている。図1及び図2に示されるように、干渉部152に対応して入力ギヤ92の底壁部94には透孔154が形成されている。透孔154は支持軸102に支持された連結パウル110の噛合部122の近傍に形成されている。外側保持リング146と内側保持リング148との間に基部142が配置された干渉片140は、干渉部152が透孔154を通過しており、特に干渉片140の初期状態では入力ギヤ92の回転周方向に沿った噛合部122の巻取方向側で干渉部152が噛合部122と対向している。
【0048】
一方、図1に示されるように、ギヤボックス52の脚板16とは反対側の開口端側には閉止板162が設けられている。閉止板162は図示しないボルトやねじ等の締結手段によってギヤボックス52に一体的に取り付けられている。ギヤボックス52に取り付けられた閉止板162は、ギヤボックス52の脚板16とは反対側の開口を閉止して、二段ギヤ60、70、80や入力ギヤ92(クラッチ90)の脱落を規制している。また、ギヤボックス52に取り付けられた閉止板162は、ギヤボックス52の開口を閉止するのみならず、入力ギヤ92における連結パウル110やリターンスプリング126を収容している側を閉止しており、入力ギヤ92内からの連結パウル110やリターンスプリング126の脱落を規制している。
【0049】
さらに、閉止板162には閉止板162の厚さ方向に貫通した透孔164が形成されており、スプール18に対して同軸的にアダプタ116から突出形成された軸部166が透孔164を通過して閉止板162の外側に突出している。閉止板162の外側(閉止板162のギヤボックス52とは反対側)にはスプリングハウジング172が設けられている。
【0050】
スプリングハウジング172はギヤボックス52に一体的に連結されている。透孔164を通過した軸部166はスプリングハウジング172の内側に入り込んで、スプリングハウジング172内に形成された図示しない軸受け部に回転自在に支持されている。また、スプリングハウジング172には図示しない渦巻きばねが収容されている。この渦巻きばねの渦巻き方向外側の端部はスプリングハウジング172に直接又は間接的に係止され、渦巻き方向内側の端部がスプリングハウジング172に入り込んだ軸部166に直接又は間接的に係止されている。
【0051】
この渦巻きばねは、軸部166が引出方向に回転すると巻締められ、軸部166を巻取方向に付勢する。通常の状態でスプール18から引出されたウェビング20をスプール18に巻取らせて格納する際には、この渦巻きばねの付勢力でスプール18を巻取方向に回転させる。
【0052】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウェビング巻取装置10の動作の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0053】
本ウェビング巻取装置10では、前方監視装置から出力された電気信号に基づき、車両の前方で走行する他の車両や、車両前方の障害物までの距離が一定値未満になったとECUが判定すると、ECUがモータ40を通電してモータ40を作動させる。モータ40が作動することで出力軸42が回転すると、出力軸42に設けられたギヤ56が出力軸42の回転を二段ギヤ60の大径ギヤ62に伝えて二段ギヤ60を回転させる。さらに、二段ギヤ60の小径ギヤ64は二段ギヤ70の大径ギヤ72に噛み合っているので、二段ギヤ60の回転は二段ギヤ70に伝えられて二段ギヤ70が回転する。この二段ギヤ70の回転は、小径ギヤ74に噛み合うギヤ80に伝えられ、更に、ギヤ80に噛み合うギヤ部100に減速して伝えられ、これにより、入力ギヤ92が巻取方向に回転する。
【0054】
入力ギヤ92が巻取方向に回転することで、入力ギヤ92の底壁部94に形成された支持軸102が巻取方向に回転し、これにより、支持軸102に支持されている連結パウル110が入力ギヤ92と共に巻取方向に回転する。ここで、上記のように、連結パウル110を構成する噛合部122の巻取方向側には、初期状態での干渉片140の干渉部152が位置しているので、入力ギヤ92と共に連結パウル110が巻取方向に回転すると噛合部122が干渉部152に当接して干渉部152を巻取方向に押圧する。
【0055】
干渉片140は自らの弾性に抗して基部142が湾曲した状態で外側保持リング146と内側保持リング148の間に入り込んで外側保持リング146と内側保持リング148とに圧接している。このため、基部142と外側保持リング146との接触部分及び基部142と内側保持リング148との接触部分における最大静止摩擦力を上回る大きさの力で基部142が押圧されないと、基部142が外側保持リング146と内側保持リング148との間を、その周方向に移動することはない。
【0056】
このため、この状態では連結パウル110の噛合部122が干渉片140の干渉部152からの押圧反力を受けることでリターンスプリング126の付勢力に抗して支持軸102周りに回動し、噛合部122はラチェットギヤ114の外周部に接近する。各連結パウル110が上記のように回動することで、図3に示されるように、一方の連結パウル110の噛合部122がラチェットギヤ114のラチェット歯に噛み合うと、噛合部122がラチェットギヤ114のラチェット歯を巻取方向に押圧する。
【0057】
さらに、この状態では、連結パウル110はこれ以上の回動が規制されているため、連結パウル110の噛合部122が干渉片140の干渉部152を押圧し続けることで干渉片140の干渉部152に付与される巻取方向への押圧力が基部142と外側保持リング146との接触部分及び基部142と内側保持リング148との接触部分における最大静止摩擦力を上回ると、干渉片140は外側保持リング146と内側保持リング148とに案内されて巻取方向に回転する。
【0058】
これにより、入力ギヤ92が巻取方向に更に回転し、巻取方向への入力ギヤ92の回転が連結パウル110を介してラチェットギヤ114に伝わり、ラチェットギヤ114を巻取方向に回転させる。ラチェットギヤ114が巻取方向に回転することでラチェットギヤ114の係止溝134が係止片132を巻取方向に押圧すると、捩じりコイルばね130の本体部分が巻取方向に回転する。捩じりコイルばね130の本体部分は内側がアダプタ116の外周部に圧接(密着)している。
【0059】
このため、捩じりコイルばね130の本体部分が巻取方向に回転すると、捩じりコイルばね130の本体部分とアダプタ116の外周部との間の摩擦によってアダプタ116が巻取方向に回転する。このようにアダプタ116が巻取方向に回転することでスプール18が巻取方向に回転し、スプール18が巻取方向に回転することで、ウェビング20がスプール18に巻取られ、車両の乗員の身体に装着されているウェビング20の僅かな弛み、所謂「スラック」が除去される。
【0060】
このように、本実施の形態は、モータ40の駆動力によるラチェットギヤ114の巻取方向の回転力が捩じりコイルばね130を介してとアダプタ116に伝わってスプール18を巻取方向に回転させる構成である。このようなモータ40の駆動状態でスプール18がウェビング20をそれ以上巻取ることができなくなると(すなわち、スプール18の巻取方向への回転が規制されると)、ラチェットギヤ114と共に捩じりコイルばね130の本体部分が巻取方向に回転する。
【0061】
この状態で、アダプタ116が巻取方向に回転しないと捩じりコイルばね130の本体部分はアダプタ116との摩擦で巻締まりを弛める(すなわち、捩じりコイルばね130の本体部分における内径寸法及び外径寸法を拡大する)ように弾性変形する。これにより、捩じりコイルばね130の本体部分とアダプタ116との間の摩擦が小さくなり、捩じりコイルばね130はアダプタ116に対して巻取方向に滑るように相対回転する。これにより、ラチェットギヤ114からアダプタ116への巻取方向への回転力の伝達を遮断又は軽減でき、スプール18の巻取方向への回転が規制された状態で、それ以上、スプール18が巻取方向に回転することを防止又は抑制できる。
【0062】
また、モータ40が上記のように駆動した状態で、ウェビング20を装着した乗員が車両前方側へ慣性移動すると、ウェビング20が引っ張られて、スプール18が巻取方向とは反対の引出方向に回転する。このような場合に、スプール18によってアダプタ116が引出方向(すなわち所定方向とは反対方向)に回転すると、上記のように捩じりコイルばね130の本体部分はアダプタ116との摩擦で巻締まりを弛めるように弾性変形する。これにより、ラチェットギヤ114からモータ40側における駆動力伝達機構50の二段ギヤ60、70等の各ギヤ列の歯に大きな荷重が作用することを防止又は抑制できる。これにより、駆動力伝達機構50を構成する各ギヤの機械的強度を特別に高く設定しなくてもよく、小型化や軽量化が可能になる。
【0063】
一方、上記のように、モータ40の駆動力でスプール18を巻取方向に回転させてウェビング20を巻取らせた状態では上記のように捩じりコイルばね130はその本体部分における巻締まりが弛むように弾性変形している。この状態でモータ40を停止させると、捩じりコイルばね130は元の形状に復元しようとして捩じりコイルばね130の係止片132側は係止片132とは反対側に対して引出方向に相対回転する。これにより、捩じりコイルばね130の係止片132はラチェットギヤ114の係止溝134を引出方向に押圧してラチェットギヤ114を引出方向に回転させる。
【0064】
ラチェットギヤ114が、そのラチェット歯に係合している連結パウル110、ひいては、入力ギヤ92を引出方向に回転させると、図4に示されるように、干渉片140の干渉部152に対して連結パウル110が引出方向に離間する。このように干渉片140の干渉部152から連結パウル110が引出方向に離間することによって干渉部152の干渉が解除されると、連結パウル110はリターンスプリング126の付勢力によって噛合部122がラチェットギヤ114の外周部から離間する向きに回動する。これにより、連結パウル110を介した入力ギヤ92とラチェットギヤ114との機械的な連結が解除される。
【0065】
このように、本実施の形態では、捩じりコイルばね130の付勢力によりモータ40を停止させた際に連結パウル110を介した入力ギヤ92とラチェットギヤ114との機械的な連結を解除できる。このため、連結パウル110を介した入力ギヤ92とラチェットギヤ114との機械的な連結を解除するためにモータ40を逆転駆動させなくてもよい。したがって、基本的には、モータ40の駆動制御は一方向(例えば、正転駆動のみ)の制御でよく、モータ40の制御回路の回路構成や、ECU等におけるモータ40の制御プログラムを簡素化できる。このため、部品点数を少なくでき、コストも安価になる。
【0066】
しかも、捩じりコイルばね130は、スプール18の巻取方向への回転が規制された際にモータ40の駆動力がスプール18に伝わることを防止又は抑制するための構成である。このように、互いに異なる複数の機能を1つの捩じりコイルばね130で実現できるので、この意味でも部品点数を少なくでき、コストを安価にできる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、アダプタ116に捩じりコイルばね130が設けられ、この捩じりコイルばね130が弛むこと(弾性変形すること)によってラチェット114からアダプタ116への巻取方向の回転力の伝達やアダプタ116からラチェット114への引出方向への回転力の伝達を防止又は抑制する構成である。このような構成では、駆動力伝達機構50を構成するギヤ列(すなわち、二段ギヤ60等)がラチェットよりもモータ40側にある。このため、駆動力伝達機構50のギヤ列を構成する各ギヤの全てに対して不要に大きな荷重が作用することを防止又は抑制できる。
【符号の説明】
【0068】
10 ウェビング巻取装置
18 スプール
20 ウェビング
40 モータ
92 入力ギヤ(モータ側回転体)
110 連結パウル(第2回転伝達部材)
114 ラチェットギヤ(中間回転体)
116 アダプタ(スプール側回転体)
126 リターンスプリング(付勢手段)
130 捩じりコイルばね(コイルばね、付勢部材、第1回転伝達部材)
140 干渉片(干渉手段)
図1
図2
図3
図4
図5