【実施例1】
【0015】
図において、1は本実施例構造が採用された軽トラックであり、これは車室2と、これに続く荷台3とを備えている。前記車室2は、これの底壁,後壁,前壁,天壁をそれぞれ構成するフロア4、キャブバックパネル5、フロントパネル6、ルーフパネル7及び左,右ドア13,13を備えている。
【0016】
前記車室2内には、運転席シート8及び助手席シート(図示省略)が配設され、前記キャブバックパネル5には、運転席用,助手席用ヘッドレスト9,9がバックウインド5aを上下に跨ぐように配設されている。
【0017】
前記ヘッドレスト9はベースプレート11a上にクッション材11bを配設し、該クッション材11bを表皮11cで覆った概略構造のものである。前記ベースプレート11aの上部には上部ステー10が配設され、下部には下部ステー12が配設されている。
【0018】
前記下部ステー12は、丸棒を略コ字形状に折り曲げてなるもので、その横辺部12aが前記ベースプレート11aの下部に回動可能に支持され、その左,右の脚部12b,12bが前記キャブバックパネル5の、前記バックウインド5a下縁部にボルト12cで固定されている。これにより、前記ヘッドレスト9は前記横辺部12aを中心に車両前後方向に回動可能となっている。
【0019】
前記上部ステー10は丸パイプを略U字形状に折り曲げ成形したものであり、その屈曲部10bには上部取付け部10cが形成されている。この上部取付け部10cは、前述の丸パイプを平板状をなすように押しつぶして形成されたもので、ボルト孔10dが貫通形成されている。
【0020】
前記キャブバックパネル5の、前記ヘッドレスト9の前記上部取付け部10cが取り付けられる部分には、凹部15が形成されている。該凹部15は、前記バックウインド5aを囲むように形成されており、車両後方に突出する凹溝状をなしている。詳細には、前記凹部15は、上壁15a,下壁15b及び該上,下壁15a,15bを接続する底壁15cを有し、車幅方向に見たとき、前記底壁15cは車両後方に位置し、また前記上壁15a及び下壁15bは車両後方に行くほど互いに近接するように傾斜している。
【0021】
前記凹部15の、前記運転席シート8,助手席シートの後方部位には、前記ヘッドレスト9の上部取付け部10cをキャブバックパネル5のバックウインド5a上縁部に取り付けるための板金製の取付けブラケット16が配設されている。
【0022】
前記取付けブラケット16は、一対の側壁16a,16aと、該両側壁16a,16aを接続する底壁16bと、前記側壁16a,16aから車幅方向に延びるフランジ部16c,16cとを有するハット形状をなしている。前記底壁16bにはボルト孔16fが形成され、その裏面にはナット17aが溶接固定されている。
【0023】
前記取付けブラケット16は、前記底壁16bが車両前方に位置し、かつ前記両側壁16a,16aが車幅方向に対面するように配設され、前記左,右のフランジ部16c,16cが前記凹部15の底壁15cにスポット溶接により固定されている。
【0024】
そして前記取付けブラケット16の側壁16a,16aの上端面16d,下端面16eは、前記凹部15の上壁15a,下壁15bと略平行をなす傾斜状に形成され、かつ前記側壁16aの上,下端面16d,16e及び前記底壁16bの上,下端面16d′,16e′は小さな隙間aを空けて該上,下壁15a,15bに近接している。
【0025】
前記取付けブラケット16の底壁16b上に、前記ヘッドレスト9の上部取付け部10cが、ボルト17bを前記ボルト孔10d,16fを通して前記ナット17aに締め付けることで取り付けられている。
【0026】
本実施例に係るヘッドレスト9をキャブバックパネル5に取り付けるには、該ヘッドレスト9を前方に回動させた状態で下部ステー12の左,右の脚部12b,12bをボルト12c,12cでキャブバックパネル5のバックウインド5a下縁に締め付け固定する。続いてヘッドレスト9を起立状態になるように後方に回動させて上部ステー10の上部取付け部10cを取付けブラケット16の底壁16bに当接させ、ボルト17bをボルト孔10d,16fを通してナット17aに締め付け固定する。
【0027】
本実施例構造では、取付けブラケット16をキャブバックパネル5の車室2内側に配置するとともに、該取付けブラケット16のキャブバックパネル5から前方に離れた底壁16bにヘッドレスト9の上部取付け部10cを取り付けるようにしたので、キャブバックパネル5に取付けボルトの貫通孔を形成する必要がなく、従って雨水等による錆びの発生を防止でき、見栄えを改善できる。
【0028】
そして本実施例構造においては、後面衝突時のように、ヘッドレスト9上部に大きな衝撃荷重Fが作用すると(
図9(a)参照)、前記取付けブラケット16の左,右の側壁16a,16aが車両後方に座屈し(同図(b)参照)、また該座屈に伴って取付けブラケット16は、これの側壁16aの上端面16d,下端面16e及び底壁16bの上,下端面16d′,16e′が前記凹部15の上壁15a,下壁15bと当接しながら上下方向に座屈し(同図(c)参照)、さらに該座屈に伴って前記凹部15の上壁15a,下壁15bが上下に広がる方向に座屈するとともに、底壁15cが後方に膨らむ方向に座屈する(同図(d)参照)。このように3段階の座屈が段階的に又は連続的に発生することで、前記衝撃荷重Fの高い吸収効果が得られる。
【0029】
また、前記衝撃吸収効果の大きさを調整(チューニング)する場合は、前記取付けブラケット16の板厚、該取付けブラケット16の上端面16d,下端面16eと前記凹部15の上壁15a,下壁15b との隙間aの大きさ、前記凹部15を構成するキャブバックパネル5の板厚等を適宜変更することにより、前記衝撃吸収効果の大きさを確実に調整できる。
【0030】
また、前記作用効果を、取付けブラケット16とキャブバックパネル5の形状を工夫するだけで実現しているので、エアバッグや高反発材の付加、弾性材や専用の座屈構造の採用の場合のようなコスト,重量の増加、生産性の悪化が生じることもない。
【0031】
さらにまた、キャブバックパネル5に取付けブラケット16を固定した状態で車体の塗装が行われるが、取付けブラケット16とキャブバックパネル15との間には塗料が十分に行き渡らず、特にキャブバックパネル5側に色むらが生じるおそれがある。本実施例では、前記取付けブラケット16の上,下端面16d,16eと凹部15の上,下壁15a,15bとを近接させているので、前記バックパネル5の色むらが見え難く、この点でも見栄えを改善できる。
【0032】
なお、前記実施例では、ヘッドレスト9をキャブバックパネル5にボルト締結したが、溶接により固定しても良い。
【0033】
また、ヘッドレスト9の上部ステー10の取付け部に取付け構造を設けた場合を説明したが、本発明の取付け構造は下部ステー12に適用することも可能である。さらに上部ステー及び下部ステーの両方に前記取付け構造を適用することも可能であり、このようにすれば前記衝撃荷重をより確実に吸収できる。