特許第5955198号(P5955198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5955198-直噴式燃料噴射弁の支持構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955198
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】直噴式燃料噴射弁の支持構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/14 20060101AFI20160707BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20160707BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   F02M61/14 320A
   F02M55/02 330B
   F02M55/02 350H
   F02F1/24 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-242534(P2012-242534)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-92061(P2014-92061A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】釜洞 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮下 純一
(72)【発明者】
【氏名】住舎 宣明
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−196293(JP,A)
【文献】 特表2001−511867(JP,A)
【文献】 特表2011−501020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
F02F 1/00− 1/42
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に弁座(8)を有する弁ハウジング(1)と,この弁ハウジング(1)の後端に連設される固定コア(6)と,この固定コア(6)の後端に連なる燃料入口筒(7)と,前記固定コア(6)前端の吸引面(6a)に対置される可動コア(16)と,前記固定コア(6)の外周に配設されるコイル(37)と,前記弁ハウジング(1)に収容されて前記弁座(8)と協働する弁体(15)と,前端を前記弁ハウジング(1)に結合して前記コイル(37)を収容するコイルハウジング(38)と,このコイルハウジング(38)から前記固定コア(6)にわたりモールド成形される合成樹脂製の被覆層(40)とを備え,前記コイル(37)への通電により前記固定コア(6)に前記可動コア(16)を吸引させて前記弁体(15)を開弁し,エンジン(E)の燃焼室(Ea)に燃料を直接噴射する直噴式燃料噴射弁の支持構造において,
金属製の前記弁ハウジング(1)に,その軸方向においてエンジン(E)に支持される第1荷重受け部(4a)を設ける一方,前記固定コア(6)の後端部に,その軸方向において弾性保持部材(13)に支持される第2荷重受け部(6c)を設け,前記燃料入口筒(7)に嵌装されてエンジン(E)に固定される燃料分配管(D)により前記弾性保持部材(13)に前方へのセット荷重を付与して,前記第1及び第2荷重受け部(4a,6c)をエンジン(E)及び前記弾性保持部材(13)間で挟持したことを特徴とする,直噴式燃料噴射弁の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,前端に弁座を有する弁ハウジングと,この弁ハウジングの後端に連設される固定コアと,この固定コアの後端に連なる燃料入口筒と,前記固定コア前端の吸引面に対置される可動コアと,前記固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁ハウジングに収容されて前記弁座と協働する弁体と,前端を前記弁ハウジングに結合して前記コイルを収容するコイルハウジングと,このコイルハウジングから前記固定コアにわたりモールド成形されてコイルハウジング及び固定コア間をシールする合成樹脂製の被覆層とを備え,前記コイルへの通電により前記固定コアに前記可動コアを吸引させて前記弁体を開弁し,エンジンの燃焼室に燃料を直接噴射する直噴式燃料噴射弁の支持構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,かゝる直噴式燃料噴射弁の支持構造として,弁ハウジングに,その軸方向においてエンジンに支持される第1荷重受け部を設ける一方,合成樹脂製の被覆層の後端部に,その軸方向において弾性保持部材に支持される第2荷重受け部を設け,前記燃料入口筒に嵌装して,エンジンに固定される燃料分配管により前記弾性保持部材に前方へのセット荷重を付与して,第1及び第2荷重受け部をエンジン及び前記弾性保持部材間で挟持したものが,特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−99456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かゝる直噴式燃料噴射弁の支持構造では,エンジンの燃焼室の高圧力に抗する必要から,弾性保持部材に付与するセット荷重は非常に大きい。ところが,従来のものでは,合成樹脂製の被覆層の後端部に,その軸方向において弾性保持部材に支持される第2荷重受け部を設けているため,弾性保持部材に付与した大きなセット荷重により,長期間のうちに被覆層に塑性変形を来し,これに伴ない弾性保持部材のセット荷重が減少し,燃料噴射弁の支持が不安定となる虞がある。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,燃料噴射弁を長期間,安定的に支持し得る前記直噴式燃料噴射弁の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,前端に弁座を有する弁ハウジングと,この弁ハウジングの後端に連設される固定コアと,この固定コアの後端に連なる燃料入口筒と,前記固定コア前端の吸引面に対置される可動コアと,前記固定コアの外周に配設されるコイルと,前記弁ハウジングに収容されて前記弁座と協働する弁体と,前端を前記弁ハウジングに結合して前記コイルを収容するコイルハウジングと,このコイルハウジングから前記固定コアにわたりモールド成形される合成樹脂製の被覆層とを備え,前記コイルへの通電により前記固定コアに前記可動コアを吸引させて前記弁体を開弁し,エンジンの燃焼室に燃料を直接噴射する直噴式燃料噴射弁の支持構造において,金属製の前記弁ハウジングに,その軸方向においてエンジンに支持される第1荷重受け部を設ける一方,前記固定コアの後端部に,その軸方向において弾性保持部材に支持される第2荷重受け部を設け,前記燃料入口筒に嵌装されてエンジンに固定される燃料分配管により前記弾性保持部材に前方へのセット荷重を付与して,前記第1及び第2荷重受け部をエンジン及び前記弾性保持部材間で挟持したことを特徴とする。
【0007】
尚,前記第1荷重受け部は,後述する本発明の実施形態中の磁性円筒体のヨーク部4aに,前記第2荷重受け部は,固定コア6の後端面6cにそれぞれ対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の特徴によれば,金属製の弁ハウジングに,その軸方向においてエンジンに支持される第1荷重受け部を設ける一方,固定コアの後端部に,その軸方向において弾性保持部材に支持される第2荷重受け部を設け,燃料入口筒に嵌装されてエンジンに固定される燃料分配管により前記弾性保持部材に前方へのセット荷重を付与して,前記第1及び第2荷重受け部をエンジン及び前記弾性保持部材間で挟持したので,第1及び第2荷重受け部間には,全て金属製の弁ハウジング及び固定コアが介在することになり,これら金属製の部材に弾性保持部材の強力なセット荷重が作用し続けても,これら金属製の部材に変形を来すことはなく,したがって弾性保持部材のセット荷重にも変化を来すこともないから,燃料噴射弁を長期間,安定的に支持することができる。一方,コイルハウジング及び固定コアにモールド成形される被覆層は,前記第1及び第2荷重受け部の内側に配置され,弾性保持部材のセット荷重を受けることはないから,セット荷重による変形を生じることもなく,コイルハウジング及び固定コアに対するシール性を長期間,確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る電磁式燃料噴射弁をエンジンに装着した状態で示す正面図。
図2図1の2−2線断面図。
図3図2の3部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0011】
図1及び図2において,エンジンのシリンダヘッドEには,燃焼室Eaに開口する装着孔Ebが設けられており,この装着孔Ebに電磁式の燃料噴射弁Iが装着される。この燃料噴射弁Iは,燃焼室Eaに向かって燃料を噴射し得る。尚,燃料噴射弁Iにおいて,燃料の噴射側を前方,燃料の流入側を後方とする。
【0012】
この燃料噴射弁Iの弁ハウジング1は,金属製で中空円筒状の弁ハウジングボディ2と,この弁ハウジングボディ2の前端部内周面に嵌合して溶接される有底円筒状の弁座部材3と,弁ハウジングボディ2後端の大径部2aの外周に嵌合して溶接される磁性円筒体4と,この磁性円筒体4の後端に同軸に結合される金属製の非磁性円筒体5とで構成される。非磁性円筒体5の後端には固定コア6が同軸に結合され,この固定コア6の後端に燃料入口筒7が同軸に一体に連設される。固定コア6は,燃料入口筒7の内部に連通する中空部6bを有する。
【0013】
磁性円筒体4は,軸方向中間部にフランジ状のヨーク部4aを一体に有しており,このヨーク部4aが,シリンダヘッドEの前記装着孔Ebの上端開口部を囲繞する荷重受け孔Ecにクッション部材11を介して支承される。而して,ヨーク部4aは,燃料噴射弁Iの軸方向においてシリンダヘッドEに支持される第1荷重受け部を構成する。
【0014】
燃料入口筒7の入口には燃料フィルタ14が装着され,燃料入口筒7の外周には,高圧力の燃料を分配する燃料分配管Dがシール部材9を介して嵌装される。この燃料分配管Dと固定コア6の後端面6cとの間には,板ばねよりなる弾性保持部材13が介装され,この弾性保持部材13に所定のセット荷重(圧縮荷重)を付与するようにして,燃料分配管DのブラケットDaが,シリンダヘッドEに設けられる支持部Edにボルト12で固着される。而して,固定コア6の後端面6cは,燃料噴射弁Iの軸方向において弾性保持部材13に支持される第2荷重受け部を構成する。こうして,燃料噴射弁Iは,弾性保持部材13のセット荷重をもって,シリンダヘッドE及び弾性保持部材13間で挟持され,エンジンの燃焼室Eaの高圧力に抗するようになっている。
【0015】
弁座部材3は,その前端壁に円錐状の弁座8と,この弁座8の中心近傍に開口する複数の燃料噴孔10とが設けられる。
【0016】
弁座部材3から非磁性円筒体5に至る弁ハウジング1内には弁体15及び可動コア16よりなる弁組立体17が収容される。弁体15は,前記弁座8と協働して燃料噴孔10を開閉する球状の弁部15aと,この弁部15aを支持して固定コア6の中空部6bの前端部まで延出する弁杆15bとで構成され,その弁杆15bの中間部外周面に,固定コア6の前端面,即ち吸引面6aに後端面を対向させる可動コア16が嵌合して固着される。
【0017】
弁部15aは,弁座部材3の内周面に摺動自在に支承されるが,その弁部15aの外周には,燃料の通過を許容する複数の平坦面が形成される。一方,可動コア16には,磁性円筒体4の内周面に摺動自在に支承される。したがって,弁組立体17は,弁座部材3及び磁性円筒体4の二箇所で軸方向摺動自在に支承される。
【0018】
可動コア16には,その後端面より突出する非磁性体のカラー18が埋設され,このカラー18が固定コア6の吸引面6aに当接することにより,弁体15の開弁ストロークが規定される。
【0019】
可動コア16には,固定コア6の中空部6bを弁ハウジング1内に連通する複数の通孔22が設けられる。可動コア16の,弁杆15b周りの後端面はばね座31とされ,固定コア6の中空部6bに圧入されるパイプ状のリテーナ32と上記ばね座31との間に可動コア16を弁体15の閉弁側に付勢する弁ばね33が縮設される。その際,リテーナ32の固定コア6への嵌合深さにより弁ばね33のセット荷重が調整される。
【0020】
磁性円筒体4の後端部から固定コア6に至る外周面にコイル組立体35が嵌装される。このコイル組立体35は,上記外周面に嵌合するボビン36と,これに巻装されるコイル37とからなっており,このコイル組立体35を収容するコイルハウジング38の前端部が磁性円筒体4の前記ヨーク4a上に載置され,溶接される。
【0021】
図2及び図3に明示するように,前記コイルハウジング38の後端部外周面には環状のアンカ溝45が形成される。このアンカ溝45は,平坦で環状の前部内側面45aと,この前部内側面45aより小径且つ平坦で環状の後部内側面45bと,これら前部及び後部内側面45a,45b間を接続する環状の溝底45cとで構成され,その溝底45cは,少なくとも一部が前方に向かって拡径するテーパ面45c1に形成される。図示例では,その溝底45cは,後部内側面45bに連なるテーパ面45c1と,このテーパ面45c1の大径部を前部内側面45aに接続する円筒面45c2とで構成される。一方,固定コア6の外周面には,複数の環状溝46が形成される。そして上記アンカ溝45を含むコイルハウジング38の後端部から,上記環状溝46を含む固定コア6の後端部に至り,それらを被覆する合成樹脂製の被覆層40がモールド成形される。而して,被覆層40は,固定コア6の外周面に結合される厚肉で円筒状の第1シール部40aと,この第1シール部40aの前端に連なり,前記アンカ溝45に充填される薄肉で環状の第2シール部40bと,第1シール部40aの前端に連なり,コイル組立体35に含浸する絶縁部40cとを備える。
【0022】
また第1シール部40aには,その一側方に突出して前記コイル37に連なる端子42を保持するカプラ41が一体に成形される。
【0023】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0024】
コイル37の非通電状態では,弁体15は,弁ばね33のセット荷重により前方に押圧され,弁座8に着座して燃料噴孔10を閉鎖する。即ち閉弁状態にあり,可動コア16は,固定コア6の吸引面6aとの間に所定の間隙を保っている。
【0025】
コイル37に通電すると,それにより生ずる磁束が固定コア6,コイルハウジング38,磁性円筒体4及び可動コア16を順次走り,その磁力により,可動コア16が弁ばね33のセット荷重に抗して固定コア6の吸引面6aに吸引され,非磁性のカラー18が吸引面6aに当接して停止する。その間に弁体15は弁座8から離座し,開弁状態となる。弁体15が開弁すると,図示しない燃料ポンプから燃料入口筒7に圧送された燃料は,パイプ状のリテーナ32内部,固定コア6の中空部6b,可動コア16の通孔22,弁ハウジング1の内部,弁座8を順次経て燃料噴孔10からエンジンの燃焼室Eaに直接噴射される。
【0026】
エンジンの運転中,燃焼室Eaの高圧力は,弁ハウジング1にこれを後方へ押圧する荷重として作用し,この後方荷重は,固定コア6及び燃料分配管D間に介装される弾性保持部材13のセット荷重により支持され,燃料噴射弁Iの第1及び第2荷重受け部4a,6cは,シリンダヘッドEと弾性保持部材13との間で挟持される。
【0027】
ところで,上記第1及び第2荷重受け部4a,6c間には,全て金属製の弁ハウジング1及び固定コア6が介在することになり,これら金属製の部材に弾性保持部材13の強力なセット荷重が作用し続けても,これら金属製の部材に変形を来すことはなく,したがって弾性保持部材13のセット荷重にも変化を来すこともないから,燃料噴射弁Iを長期間,安定的に支持することができる。
【0028】
コイルハウジング38の後端部から固定コア6の後端部にわたりモールド成形される合成樹脂製の被覆層40は,固定コア6の外周面に結合される厚肉で円筒状の第1シール部40aと,この第1シール部40aの前端に連なり,前記アンカ溝45に充填される薄肉で環状の第2シール部40bと,第1シール部40aの前端に連なり,コイル組立体35に含浸する絶縁部40cとを備えるので,雨水や洗浄水等がコイルハウジング38及び固定コア6の外周面からコイル37側に浸入するのを防ぐことができる。
【0029】
エンジンの運転中のコイル37の発熱と,エンジンの運転停止時のコイル37の放熱により,その周囲の固定コア6,コイルハウジング38及び被覆層40において加熱と冷却が繰り返されるとき,磁性体のコイルハウジング38及び固定コア6と合成樹脂製の被覆層40との熱膨張係数の相違により,被覆層40が大きく膨張及び収縮を繰り返す。特に,被覆層40における第1シール部40aは,第2シール部40bに比して厚肉であるから,その膨張及び収縮量は,第2シール部40bより大きい。しかも第1シール部40aの固定コア6との密着面積は,第2シール部40bのコイルハウジング38との密着面積より大であり,したがって第1シール部40aの固定コア6との結合力は,第2シール部40bのコイルハウジング38との結合力よりも大であるから,第1シール部40aの膨張及び収縮は,第2シール部40bに変位を生じさせる。
【0030】
而して,第2シール部40bは,第1シール部40aの前端部外周に位置しているため,第1シール部40aの軸方向及び半径方向の膨張時には,第2シール部40bに図3に示すように,前方外向きの力F1が加わり,第1シール部40aの軸方向及び半径方向の収縮時には,第2シール部40bに後方内向きの力F2が加わることになる。
【0031】
このような力F1,F2を受ける第2シール部40bは,コイルハウジング38の環状のアンカ溝45の溝底45cのテーパ面45c1に密着しており,そのテーパ面45c1は,前方に向かって拡径するように形成され,上記力F1,F2の方向に沿う形状をなしているから,上記テーパ面45c1と第2シール部40bとの間に滑りを生じても密着状態を維持することができる。したがって,第1シール部40aの膨張及び収縮により,第2シール部40bがアンカ溝45の平坦な前部及び後部内側面45a,45bの一方との間に隙間を発生させることがあっても,溝底45cのテーパ面45c1と第2シール部40bとが密着状態を保持している以上,第2シール部40bはコイルハウジング38に対するシール機能を維持することができる。
【0032】
また第2シール部40bは,第1シール部40aに比して薄肉で膨張及び収縮量が少ないとは言え,低温時には収縮して,コイルハウジング38外周のアンカ溝45の溝底45cに対する密着力を強めるので,コイルハウジング38に対するシール性を高めることができる。特に,低温時には,付着する水滴が蒸発し難いから,第2シール部40bのシール性の向上は有効である。
【0033】
このような被覆層40は,コイルハウジング38及び固定コア6の外周面に形成され,前記第1及び第2荷重受け部4a,6cの内側に配置されるので,弾性保持部材13のセット荷重を受けることはなく,したがってセット荷重による変形を生じることもなく,コイルハウジング38及び固定コア6に対するシール性を長期間,確保することができる。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
D・・・・・・燃料分配管
E・・・・・・エンジン(シリンダヘッド)
I・・・・・・燃料噴射弁
1・・・・・・弁ハウジング
4a・・・・・第1荷重受け部(ヨーク部)
6・・・・・・固定コア
6a・・・・・固定コアの吸引面
6c・・・・・第2荷重受け部(固定コアの後端面)
8・・・・・・弁座
13・・・・・弾性保持部材
15・・・・・弁体
16・・・・・可動コア
37・・・・・コイル
38・・・・・コイルハウジング
40・・・・・被覆層
図1
図2
図3