(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1にかかる回転式電子部品において、回転つまみ(10)にクリック板(70)と摺動子(110)を固定するには、回転つまみ(10)の軸部(17)の下端面上にクリック板(70)を載置し、その際、軸部(17)の下端面に設けた各取付部(19)にクリック板(70)の各被取付部(81)を挿入し、次にクリック板(70)の下面上に摺動子(110)を載置し、その際、前記クリック板(70)を貫通した各取付部(19)に摺動子(110)の各取付固定部(113)を挿入し、最後に各取付部(19)の先端を熱かしめして潰す方法が用いられていた。
【0006】
しかしながら上記取付方法によれば、クリック板(70)の被取付部(81)へ回転つまみ(10)の取付部(19)を挿入した後、さらに摺動子(110)の取付固定部(113)へ回転つまみ(10)の取付部(19)を挿入する必要があった。つまり回転つまみ(10)へのクリック板(70)の取り付けと、摺動子(110)の取り付けとを、それぞれ個別に行う必要があって煩雑で作業効率が悪いという問題があった。特に最近の回転式電子部品は小型化が進んでおり、この問題は大きくなっていた。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、クリック板等の摺動子取付板と摺動子とを回転つまみ等の取付部材に重ね合わせて取り付ける際に、その組み立て作業効率を向上させることができる
、摺動子と摺動子取付板の取付部材へ
の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
かしめ兼用取付孔とガイド兼用取付孔とを設けてなる摺動子と、前記摺動子のかしめ兼用取付孔に対向する位置にかしめ兼用取付穴を設け、且つ前記摺動子のガイド兼用取付孔に対向する位置にガイド兼用取付穴を設けてなる摺動子取付板と、前記摺動子及び摺動子取付板を取り付ける取付面を設けてなる取付部材と、を用意し、前記摺動子のかしめ兼用取付孔又は摺動子取付板のかしめ兼用取付穴の何れかの内周辺の少なくとも一部から板面に対して立設するように折り曲げてなる突起を設け、且つ前記摺動子のガイド兼用取付孔又は摺動子取付板のガイド兼用取付穴の何れかの内周辺から板面に対して立設するように折り曲げてなるガイド突起を設けておき、前記摺動子と摺動子取付板を重ね合わせ、その際に、前記摺動子に設けたかしめ兼用取付孔と、摺動子取付板に設けたかしめ兼用取付穴の位置を合わせて、前記突起をこれに位置合わせした他方のかしめ兼用取付孔又はかしめ兼用取付穴に挿入すると同時に、前記摺動子に設けたガイド兼用取付孔と、摺動子取付板に設けたガイド兼用取付穴の位置を合わせて、前記ガイド突起をこれに位置合わせした他方のガイド兼用取付孔又はガイド兼用取付穴に挿入する工程と、前記突起の先端をかしめることで摺動子と摺動子取付板を一体化する工程と、前記一体化した摺動子及び摺動子取付板を前記取付部材の取付面に載置し、その際、前記かしめた後のかしめ兼用取付孔又はかしめ兼用取付穴の開口に、取付部材の取付面に設けた取付突起を挿入すると同時に、前記ガイド突起を挿入したガイド兼用取付孔又はガイド兼用取付穴の開口に、取付部材の取付面に設けた取付突起を挿入することで、摺動子及び摺動子取付板を取付部材に取り付ける工程と、を有することで摺動子と摺動子取付板を取付部材へ取り付けた。
なお、前記摺動子取付板は、クリック板であることが好ましい。また前記突起は、前記摺動子取付板のかしめ兼用取付穴の内周辺に設けられており、一方、前記ガイド突起は、前記摺動子取付板のガイド兼用取付穴の内周辺に設けられていることが好ましい。
このようにして構成された摺動子と摺動子取付板の一体板は、回転つまみ等の取付部材に対して1回の工程で容易に取り付けることが可能となり、その組み立て作業性が向上する。
特に突起を設けるかしめ兼用取付孔又はかしめ兼用取付穴は、突起をかしめることで両者を一体化してもその中央に開口がそのまま残るので、この開口をそのまま取付部材への取り付け用の開口として用いることができる。つまり摺動子と摺動子取付板を一体化するために用いる取付部分を、一体化した摺動子と摺動子取付板を取付部材に取り付ける取付部分に兼用できる。これによってスペースを有効活用でき、この一体板の小型化、ひいてはこの一体板を用いる電子部品の小型化を図ることができる。
【0009】
またこのようにして摺動子と摺動子取付板の一体板を製造すれば、一体板の製造が容易に行え、その製造の自動化にも容易に対応できるようになる。
【0010】
またこのようにかしめた後のかしめ兼用取付孔又はかしめ兼用取付穴の開口を利用して、一体化した摺動子と摺動子取付板を取付部材に取り付けるので、摺動子と摺動子取付板間の固定部分と、一体化した摺動子と摺動子取付板と取付部材間の固定部分が同一部分となり、これによってスペースを有効活用でき、この摺動子と摺動子取付板及び取付部材の小型化、ひいてはこれらを用いる電子部品の小型化を図ることができる。
【0011】
またこのようにして摺動子と摺動子取付板の一体板を取付部材に取り付ければ、その取付作業が容易に行える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリック板等の摺動子取付板と摺動子とを回転つまみ等の取付部材に重ね合わせて取り付ける際に、その組み立て作業効率を向上させることができ、また電子部品の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかる摺動子取付板(以下「クリック板」という)10と摺動子(摺動子板)30の斜視図、
図2はクリック板10と摺動子30を下側から見た斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは摺動子30からクリック板10を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0015】
図1,
図2に示すようにクリック板10は、1枚の弾性金属板(例えばステンレス板)製であり、リング形状に形成され中央に開口12を有する取付部11と、取付部11の外周を囲むように設置された一対の円弧形状の弾接アーム部21とを、一対の連結部27によって連結して構成されている。一対の連結部27は180°対向する位置において、取付部11の外周辺と弾接アーム部21両端の基部22の内周辺とを連結している。基部22の部分は取付部11と同一の平面となっている。一対の弾接アーム部21はそれらの両端が前記一対の基部22の部分に連結されており、各円弧状の部分の中央(前記連結部27より90°回転した位置)にそれぞれ上方向に向かって凸状に湾曲・突出してなるクリック弾接部23を設けている。また両弾接アーム部21はその両端部分(基部22に接続する部分)を折り曲げることで、上方向に向けて傾いている。
【0016】
取付部11には、その等間隔の複数位置(120°間隔で3か所、下記する摺動子30のかしめ兼用取付孔33とガイド兼用取付孔34に対向する位置)に、1つの小孔からなるかしめ兼用取付穴13と2つのガイド兼用取付穴14が設けられている。そしてかしめ兼用取付穴13には、その内周辺から取付部11の板面に対して下方向(摺動子30方向)に向かって立設するように折り曲げてなる略筒状の突起15が設けられている。この突起15には、円周方向の4か所(90°間隔)の位置において上下方向に向かうスリット17が設けられている。スリット17は取付部11の上面から突起15の下端まで貫通するように形成されている。
【0017】
一方上記ガイド兼用取付穴14には、その内周辺から取付部11の板面に対して下方向(摺動子30方向)に向かって立設するように折り曲げてなる略筒状のガイド突起19が設けられている。ガイド突起19の高さは、前記突起15の高さよりも低く、取付部11の厚みと略同じ程度の高さに形成されている。
【0018】
摺動子30は弾性金属板製であり、前記クリック板10の取付部11の外径寸法と略同一の外径寸法を有する略円形の平板リング状に形成され、中央に開口部31を設けると共に、等間隔(120°間隔)の複数(3か所)の位置(前記クリック板10のかしめ兼用取付穴13とガイド兼用取付穴14に対向する位置)に、小孔からなるかしめ兼用取付孔33とガイド兼用取付孔34を設け、またかしめ兼用取付孔33とガイド兼用取付孔34の側部から3本ずつの摺接ブラシ35を摺動子30の円形の外形に沿うように配置して構成されている。各組の摺接ブラシ35の先端近傍部分は接点部37となっている。
【0019】
そしてこれらクリック板10と摺動子30を一体化するには、
図3に示すように、クリック板10と摺動子30とを重ね合わせる。その際、摺動子30に設けたかしめ兼用取付孔33及びガイド兼用取付孔34と、クリック板10に設けたかしめ兼用取付穴13及びガイド兼用取付穴14の位置を合わせる。このとき
図3に示すように、前記突起15はこれに位置合わせした摺動子30のかしめ兼用取付孔33に挿入されて貫通し、突起15の先端は摺動子30の下面から突出する。一方ガイド兼用取付穴14の周囲に設けたガイド突起19は、これに対向する摺動子30の各ガイド兼用取付孔34に挿入される。以上のように、クリック板10の突起15とガイド突起19を、摺動子30のかしめ兼用取付孔33とガイド兼用取付孔34に挿入するので、両者の位置合わせが精度良く確実に行える。
【0020】
次に
図4に示すように、前記突起15の先端をかしめ兼用取付穴13の外側(かしめ兼用取付穴13から離れる方向)に向けて広げるように折り曲げてかしめることでクリック板10と摺動子30とを一体化する。一体化したクリック板10と摺動子30を一体板50という。
【0021】
このようにして構成されたクリック板10と摺動子30の一体板50は、下記する回転つまみ110に取り付ける際、1回の工程で容易に取り付けることができる。このためその組み立て作業性が向上する。
【0022】
特に突起15を設けるかしめ兼用取付穴13は、突起15をかしめることで両者を一体化してもその中央に開口40(前記かしめ兼用取付穴13)がそのまま残る。このためこの開口40をそのまま下記する回転つまみ110への取り付け用の穴として用いることができる。つまりクリック板10と摺動子30を一体化するために用いる取付部分を、一体板50を回転つまみ110に取り付ける取付部分に兼用できる。これによってスペースを有効活用でき、この一体板50の小型化、ひいてはこの一体板50を用いる電子部品の小型化を図ることができる。
【0023】
また上述の方法によってクリック板10と摺動子30の一体板50を製造すれば、一体板50の製造が容易に行え、その製造の自動化にも容易に対応できるようになる。即ち例えば、帯状の金属板に連続してクリック板10を打ち抜き加工した図示しないクリック板保持板(各クリック板10はその一部がクリック板保持板に接続されている)と、帯状の金属板に連続して摺動子30を打ち抜き加工した図示しない摺動子保持板(各摺動子30はその一部が摺動子保持板に接続されている)とを用意し、クリック板保持板の上に摺動子保持板を、両者が交差して上下に重なるように配置し、交差した位置において上下の摺動子30とクリック板10を位置合わせし(
図1のクリック板10と摺動子30を上下逆にした状態)、上側の摺動子30を摺動子保持板から切り離してクリック板10上に落とし、その際クリック板10の突起15とガイド突起19をそれぞれ、摺動子30のかしめ兼用取付孔33とガイド兼用取付孔34に挿入して重ね合わせることで精度よく位置合わせをし、この状態で突起15をかしめて両者を一体化した後、クリック板10をクリック板保持板から切り離すことで一体板50を製造する。なおクリック板保持板と摺動子保持板の上下の位置を逆にしてクリック板10を先に切り離してもよい。このようにクリック板10の突起15を摺動子30のかしめ兼用取付孔33に挿入して位置合わせを行ってから突起15先端をかしめて一体板50を製造するので、その製造の自動化を容易に図ることができる。さらに言えば、従来のように小さなクリック板10と摺動子30を別々に下記する成形品の回転つまみ110に取り付けようとすると、それらの取り付け作業が煩雑で作業性が悪い。一方何れも平板状の金属板からなるクリック板10と摺動子30を予め一体化する作業はこれらが小さくても上述のように容易に行える。そして一体板50の回転つまみ110への取り付けは一回の取り付け作業で良くなる。これらのことからクリック板10と摺動子30の下記する回転つまみ110への取り付け作業も容易に行えるようになる。
【0024】
次に
図5は上記一体板50を用いて構成される回転式電子部品(押釦スイッチ及び揺動スイッチ付き回転式電子部品)1の一例を示す斜視図、
図6は回転式電子部品1の概略断面図(
図5のA−A概略断面図)、
図7は回転式電子部品1の分解斜視図、
図8は回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(但し第1,第2フレキシブル回路基板180,210と保持板230の記載は省略)である。これらの図に示すように回転式電子部品1は、取付部材(以下「回転つまみ」という)110と、押釦つまみ130と、ケース150と、前記クリック板10と、前記摺動子30と、支持部材170と、第1回路基板(以下「第1フレキシブル回路基板」という)180と、取付台190と、第2回路基板(以下「第2フレキシブル回路基板」という)210と、保持板230とを具備して構成されている。
【0025】
回転つまみ110は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部111の中央に円形の開口部113を設けて構成されている。回転つまみ110の開口部113は、内部に下記する押釦つまみ130の本体部131をほぼぴったり挿通できる寸法に形成されている。本体部111の外周には下方向に突出する筒状の外周側壁部115が形成され、また本体部111の下面の開口部113の周囲には筒状に突出する軸部117が形成されている。軸部117の下端面は前記一体板50を取り付ける取付面119となっており、この取付面119の複数位置(この例では3か所)には、この取付面119に一体板50を取り付けるための小突起状の取付突起121が設けられている。各取付突起121は、前記一体板50を構成するクリック板10のかしめ兼用取付穴13とガイド兼用取付穴14に略ぴったり挿入される外形寸法に形成されている。
【0026】
押釦つまみ130は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部131と、本体部131の下面中央から下方向に向かって突出する柱状の押圧部133とを具備し、本体部131の上面を指などで押圧操作する操作部135とし、本体部131の外周面の下部に薄板リング状に突出するつば部137を設けて構成されている。押圧部133の外周側面には上下方向に沿って延びる柱状の一対の回り止め139が設けられている。
【0027】
ケース150は合成樹脂の成形品であり、円形平板状の上面部151を備え、上面部151の中央に回転つまみ110の軸部117をその内部に挿入して回動自在に軸支する円形の開口部153を設け、また上面部151の下面の開口部153の周囲にリング状の凹凸からなるクリック係合部155を設けている。またケース150の上面部151の外周に下方向に向かって突出する筒状の側壁部157を設け、さらに側壁部157の下端辺から外方に広がるつば部159の下面に下記する取付台190に取り付けられる小突起状の取付台取付部161を設けている。開口部153の内周部分は下方向に少し筒状に突出しており、そのリング状の下端面が一体板当接部163となっている。
【0028】
支持部材170は合成樹脂を略矩形状に成形し、その中央に開口171を設けて構成されている。支持部材170の下面の4つの角部近傍には、開口171につながる4つの凹状の係合部173を設けている。係合部173の寸法形状は下記する取付台190の係合片197を所定の短い寸法だけ上下動自在で平面方向には移動しない状態で挿入できる寸法形状である。支持部材170の下面の所定位置(4か所)には、下方向に突出する小突起状の取付部175が設けられている。
【0029】
取付台190は合成樹脂を略矩形板状に成形して構成されている。取付台190の中央には押釦つまみ130の押圧部133と回り止め139を挿通して軸支する開口部191が設けられ、上面の開口部191の周囲には上方向に向かって突出する円柱状の軸部193が設けられている。一方前記ケース150の各取付台取付部161に対向する複数の位置(この例では4か所)には、貫通孔からなる取付部195が設けられ、また外周の所定位置(この例では各取付部195の外側の4か所の位置であって、前記支持部材170の各係合部173に対向する位置)には、外方に向かって舌片状に突出する係合片197が設けられている。取付台190の下面の各取付部195間の中間位置には、下方向に向かって突出する柱状の押圧部199が設けられている。
【0030】
第1フレキシブル回路基板180は可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを形成して構成されている。即ち第1フレキシブル回路基板180は前記取付台190と略同じ形状寸法に形成され、中央に取付台190の軸部193を挿通する円形の開口部181を設け、また開口部181の周囲には摺接パターン183を設けている。摺接パターン183は、図では詳細な記載を省略しているが、スイッチパターンや抵抗体パターン等である。第1フレキシブル回路基板180の前記ケース150の各取付台取付部161に対向する4か所の位置には挿通部185が設けられている。なお図示は省略しているが、第1フレキシブル回路基板180の外周の所定位置と第2フレキシブル回路基板210の外周の所定位置間は帯状の連結部によって連結されており、摺接パターン183に接続される図示しない回路パターンは連結部を通して第2フレキシブル回路基板210に引き出されている。
【0031】
第2フレキシブル回路基板210は第1フレキシブル回路基板180と同じ合成樹脂フイルムを用いており、その上面の中央に中央スイッチ211を設置し、中央スイッチ211の周囲の複数の位置(この例では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4か所の位置)に押圧スイッチ213を設置して構成されている。中央スイッチ211と押圧スイッチ213は何れも同一構造であり、第2フレキシブル回路基板210上の図示しない一対のスイッチ接点上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)211a,213aを取り付けて構成されており、反転板211a,213aを押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造となっている。また第2フレキシブル回路基板210の前記支持部材170の4つの取付部175に対向する位置には、貫通孔からなる挿通部215が形成されている。
【0032】
保持板230は硬質板で構成され、この例では金属板(ステンレス板)を用いているが、合成樹脂板等の他の材料を用いても良い。保持板230は第2フレキシブル回路基板210を載置する寸法形状に形成され、前記支持部材170の4か所の取付部175に対向する位置に貫通孔からなる挿入取付部231を設けている。
【0033】
次に回転式電子部品1の組立方法を説明する。まず前述のように、クリック板10と摺動子30を一体化して一体板50を組み立てる。次に回転つまみ110の開口部113の下側から押釦つまみ130の本体部131を挿入し、操作部135を開口部113から回転つまみ110の上面側に露出させる。次に回転つまみ110及び押釦つまみ130の下側にケース150を設置し、その際ケース150の開口部153内に上側から回転つまみ110の軸部117を挿入することでケース150の上部に回転つまみ110を回動自在に設置する。
【0034】
次にケース150の下面側に一体板50を設置し、その際押釦つまみ130の押圧部133及び回り止め139を一体板50の中央の孔(開口12と開口部31)に挿通させながらクリック板10の取付部11を回転つまみ110の取付面119に載置し、同時に各取付突起121を前記かしめた突起15中央の開口40と、ガイド突起19によって位置合わせしたガイド兼用取付穴14及びガイド兼用取付孔34とに挿通する。そして各取付突起121の先端を熱かしめすることで潰し、これによって回転つまみ110にクリック板10と摺動子30の一体板50を取り付ける。このときクリック板10の取付部11はその外周近傍部分がケース150の一体板当接部163に当接しており、従って回転つまみ110と一体板50はケース150を挟んでその上下に位置し、ケース150に対して一体に回転自在となる。また開口部113の下部は一体板50によって一部が塞がれるので、押釦つまみ130のつば部137を含む本体部131は開口部113内から抜け出ることはない。
【0035】
以上説明したように、かしめた後のかしめ兼用取付穴13の開口40を利用して、一体板50を回転つまみ110に取り付けるので、このかしめ兼用取付穴13(かしめ兼用取付孔33)の部分を、クリック板10と摺動子30間の固定に用いるのみならず、この一体板50と回転つまみ110間の固定にも兼用して用いることができる。つまり摺動子30とクリック板10間の固定部分と、一体板50と回転つまみ110間の固定部分が同一部分となり、これによって一体板50とこの一体板50を取り付ける回転つまみ110の取付面119間を確実に固定でき、一体板50及び回転つまみ110の小型化、ひいてはこれらを用いる回転式電子部品1の小型化を図ることが可能となる。また一体板50の回転つまみ110への取付作業も容易に行える。即ちもし上述のように兼用しないとすると、突起15を設けた部分に取付突起121を設けることができないので、取付突起121による一体板50の取付強度が弱くなり、両者間の固定が確実でなくなる。一方強度を考慮して取付突起121を3つ設ける場合は、突起15を設ける部分以外の位置に新たにガイド兼用取付穴14(ガイド兼用取付孔34)を別途設けなければならなくなり、その分クリック板10等が大型化し、ひいては回転式電子部品1の小型化が図れない。
【0036】
引き続き回転式電子部品1の組み立て方法を説明すると、第1フレキシブル回路基板180を取付台190上に載置し、その際第1フレキシブル回路基板180の開口部181に取付台190の軸部193を挿通し、これらを前記回転つまみ110等を取り付けたケース150の下側に設置する。その際ケース150の各取付台取付部161を第1フレキシブル回路基板180の各挿通部185と取付台190の各取付部195に挿入し、取付台190の下面から突出する各取付台取付部161の先端を熱かしめして固定する。このとき押釦つまみ130の押圧部133と回り止め139は取付台190の開口部191内に挿入され押圧部133の下端は取付台190の下面に露出する。次に第2フレキシブル回路基板210を取付台190の下面側に設置し、さらに第2フレキシブル回路基板210の下面側に保持板230を設置した上で、回転つまみ110の上部から被せるように支持部材170を第2フレキシブル回路基板210上に設置する。このとき支持部材170の開口171内に前記ケース150や取付台190等が設置され、また支持部材170の各係合部173内に取付台190の各係合片197が所定の短い寸法上下動自在に挿入され、さらに支持部材170の各取付部175が第2フレキシブル回路基板210の各挿通部215と保持板230の各挿入取付部231に挿入される。そして保持板230の下面から突出する各取付部175の先端を熱かしめすれば、回転式電子部品1の組み立てが完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0037】
そして回転つまみ110を指などで回転すれば、クリック板10と摺動子30の一体板50が回転つまみ110と一体に回転し、摺動子30の接点部37が摺接パターン183上を摺動して摺接パターン183の電気的出力が変化する。同時にクリック板10のクリック弾接部23がケース150のクリック係合部155に弾接係合してクリック感触を生じる。
【0038】
一方押釦つまみ130の操作部135を押圧すれば、押釦つまみ130が下降してその押圧部133が中央スイッチ211の反転板211aを押圧して反転し、中央スイッチ211がオンする。押釦つまみ130への押圧を解除すれば反転板211aの弾性復帰力によって中央スイッチ211はオフする。また回転つまみ110の本体部111上面の前記取付台190の4か所の押圧部199の何れかに対応する部分を押圧すれば、ケース150や押釦つまみ130等、取付台190上に設置されている構成部品が取付台190と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部199が対向する押圧スイッチ213の反転板213aを押圧して反転し、押圧スイッチ213がオンする。回転つまみ110への押圧を解除すれば、反転している反転板213aの弾性復帰力によって回転つまみ110及び取付台190等の各構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ213がオフする。
【0039】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、クリック板10と摺動子30を一体化して一体板50を構成したが、クリック板10として用いる代りに、そのクリック弾接部23を弾接部とし、これが弾接するケース150のクリック係合部155を凹凸の無い平面状の弾接面とすることで、回転つまみ110を回転した時の摺動トルクを出すための摺動板として用いても良い。またクリック板10のクリック弾接部23及び弾接アーム部21を省略して取付部11のみとすることで、回転つまみ110のケース150からの抜けを防止する抜け防止板のみの機能を有するものとして用いても良い。要は、摺動子30を取り付ける板材であれば、クリック板10以外の機能を有する各種摺動子取付板であってもよい。
【0040】
また上記実施形態では、クリック板10のかしめ兼用取付穴13に摺動子30方向を向く突起15を設けたが、逆に、摺動子30のかしめ兼用取付孔33に、その内周辺から摺動子30の板面に対して上方向(クリック板10方向)に向かって立設するように折り曲げてなる略筒状の突起を設け、この突起をクリック板10のかしめ兼用取付穴13に挿入してかしめるように構成しても良い。この場合、かしめた後のかしめ兼用取付孔33の開口に取付突起121を挿入することになる。
【0041】
また突起15は必ずしも筒状に形成しなくても良く、例えばかしめ兼用取付穴13(かしめ兼用取付孔33)の内周辺からクリック板10(摺動子30)の板面に対して立設するように折り曲げてなる突起であれば、円筒の一部のみの形状でも、舌片状の形状でも、さらに棒状等の他の各種形状でも良い。
【0042】
また上記クリック板10では取付部11の外周を囲む位置に弾接アーム部21を設置したが、その代りに取付部11の内側(開口12内)に弾接アーム部21を設置する構造のクリック板であっても良い。同様に摺動子30の形状、構造も種々の変形が可能である。かしめ兼用取付穴13やかしめ兼用取付孔33の設置個数も1又は複数であればよく、実施形態に限定されない。これに伴って突起15の数も複数であっても良い。
【0043】
また上記実施形態では、本発明を回転式電子部品1に用いた例を示したが、本発明はスライド式電子部品等の他の各種電子部品にも適用できる。例えばスライド式電子部品に用いる場合は、摺動子とクリック板を本発明のように一体化したものを、スライド移動するスライド移動体に取り付け、このスライド移動体をケースに設けた直線凹状の収納部内に収納し、収納部内面に露出させた直線状の摺接パターンと直線状の凹凸からなるクリック係合部に前記摺動子の接点部とクリック板のクリック弾接部を弾接させる構成等が考えられる。なおスライド移動方向は、円弧方向やその他の曲線方向など、直線方向以外の各種方向を含む概念である。
【0044】
また上記クリック板10のガイド兼用取付穴14には、ガイド突起19を設けて、摺動子30のガイド兼用取付孔34に自動的に位置合わせできる構成とし
た。またガイド突起19はガイド兼用取付穴14ではなく、ガイド兼用取付孔34側に設けても良い。
【0045】
また上記例では、かしめた後のかしめ兼用取付穴13(又はかしめ兼用取付孔33)の開口40に挿入した回転つまみ110の取付突起121を熱かしめしたが、熱かしめをしないで、圧入のみで取り付けても良い。