特許第5955224号(P5955224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5955224分散染料及びそれを用いる疎水性繊維材料の染色法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955224
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】分散染料及びそれを用いる疎水性繊維材料の染色法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/22 20060101AFI20160707BHJP
   D06P 1/16 20060101ALI20160707BHJP
   C09B 1/22 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 1/503 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 1/514 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 1/58 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 5/10 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 25/00 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 57/00 20060101ALN20160707BHJP
   C09B 57/12 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
   C09B67/22 D
   C09B67/22 Z
   D06P1/16
   !C09B1/22
   !C09B1/503
   !C09B1/514
   !C09B1/58
   !C09B5/10
   !C09B25/00 Z
   !C09B57/00 Z
   !C09B57/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-546763(P2012-546763)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2011076414
(87)【国際公開番号】WO2012073696
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-266511(P2010-266511)
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 信孝
(72)【発明者】
【氏名】徳山 博満
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−8871(JP,A)
【文献】 特開2005−23254(JP,A)
【文献】 特開2004−67933(JP,A)
【文献】 特開昭61−207681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00−69/10
D06P 1/00−7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される分散染料、
式(2)で表される分散染料、並びに、
式(3)で表される分散染料、式(4)で表される分散染料及び式(5)で表される分散染料からなる群から選ばれる1〜3の分散染料からなる染料を含有する黄色系分散染料組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【請求項2】
黄色系分散染料組成物の全重量に対して、式(1)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、式(2)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、並びに、式(3)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び/又は式(4)で表される分散染料を5.0〜30.0重量%、及び/又は式(5)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%の割合で含有する請求項1に記載の黄色系分散染料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の黄色系分散染料組成物と、式(6)及び/又は式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【化6】

【化7】
【請求項4】
赤色系分散染料組成物の全重量に対して、式(6)で表される分散染料を5.0〜40.0重量%、及び式(7)で表される分散染料を10.0〜60.0重量%の割合で含有する請求項3に記載の混合分散染料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の黄色系分散染料組成物と、式(8)及び/又は式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【化8】

【化9】
【請求項6】
青色系分散染料組成物の全重量に対して、式(8)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び式(9)で表される分散染料を1.0〜15.0重量%の割合で含有する請求項5に記載の混合分散染料組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の黄色系分散染料組成物と、請求項3に記載の式(6)及び/又は式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物と、請求項5に記載の式(8)及び/又は式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする繊維材料の染色法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散染料組成物を含む、繊維材料の染色物を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料組成物及びそれを用いる染色法に関する。更に詳しくは、特定の染料を含有した黄色系、赤色系及び青色系分散染料組成物、並びにそれを用いる疎水性繊維材料の染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材料に用いられる合成繊維材料は、自動車内が高温多湿になることや、太陽光に露光される時間が他の一般衣料繊維材料に較べ格段に長いため、強い耐温度性能や耐光性能を要求される。これを解決するために、耐光堅牢度の強い染料を用いて繊維材料を染色する方法がとられている。しかしながら、黄色染料、赤色染料、青色染料の各々の耐光堅牢度のバランスが異なっていると、長時間の露光により一部の色の染料だけが褪色を起こし当初の色と異なってくるため、染色当初に比べて色変色がより大きく見えるという欠点が有る。このため使用される黄色染料、赤色染料、青色染料には、同じように褪色してゆくバランスの取れた耐光堅牢度が要求される。
【0003】
また、これらの合成繊維材料の糸の太さや、糸の形状の違い、使われるポリエステル繊維に他の繊維材料を混紡した混紡繊維等の違いにより、同じ染色方法においても染色濃度、染色色調等が異なってくる。このように形状、性質の異なる合成繊維材料を毎回同じように染色加工するためには、各種染色条件でも染色再現性に優れた染料が要求される。
自動車内装材料を染色するときには出来るだけ耐光堅牢度の強い分散染料を使用して染色を行うが、これに加えて、黄色染料、赤色染料、青色染料の染色特性(染色速度等)が揃っていないと、染色された合成繊維材料の染色再現性に違いが出てしまう。そのため、三原色の染料間で染色特性が揃っていることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23254号公報
【特許文献2】特開2004−168950号公報
【特許文献3】国際公開第2007/058209号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題点を解決するために、黄色染料、赤色染料、青色染料の各色の耐光堅牢度が強く且つその強度が揃っていて、各色の染色再現性がよい分散染料組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、各種分散染料の成分を適宜組みあわせることにより、各色の耐光堅牢度が強いだけでなく三原色のバランスよい耐光堅牢度を持ち、且つ、染色時の染色特性が揃った混合分散染料組成物を与えることができる特定の分散染料組成物、該混合分散染料組成物、それを用いた染色方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の諸態様は、以下の1)から10)に関する。
1)式(1)で表される分散染料、
式(2)で表される分散染料、並びに、
式(3)で表される分散染料、式(4)で表される分散染料及び式(5)で表される分散染料からなる群から選ばれる1〜3の分散染料からなる染料を含有する黄色系分散染料組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【0008】
2)黄色系分散染料組成物の全重量に対して、式(1)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、式(2)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、並びに、式(3)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び/又は式(4)で表される分散染料を5.0〜30.0重量%、及び/又は式(5)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%の割合で含有する前記1)に記載の黄色系分散染料組成物。
【0009】
3)前記1)又は2)に記載の黄色系分散染料組成物と、式(6)及び/又は式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【化6】

【化7】

4)赤色系分散染料組成物の全重量に対して、式(6)で表される分散染料を5.0〜40.0重量%、及び式(7)で表される分散染料を10.0〜60.0重量%の割合で含有する前記3)に記載の混合分散染料組成物。
【0010】
5)前記1)又は2)に記載の黄色系分散染料組成物と、式(8)及び/又は式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【化8】

【化9】

6)青色系分散染料組成物の全重量に対して、式(8)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び式(9)で表される分散染料を1.0〜15.0重量%の割合で含有する前記5)に記載の混合分散染料組成物。
【0011】
7)前記3)に記載の式(6)及び/又は式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物と、前記5)に記載の式(8)及び/又は式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
8)前記1)又は2)に記載の黄色系分散染料組成物と、前記7)に記載の混合分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物。
【0012】
9)前記1)〜8)のいずれか一項に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする繊維材料の染色法。
10)前記9)に記載の染色法により染色された繊維材料を含む物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の黄色系分散染料組成物、赤色系分散染料組成物及び青色系分散染料組成物は、各々強い耐光堅牢度を有する。加えて、それらの所定の組み合わせを含む混合分散染料組成物として用いる際に、各色において、耐光堅牢度が揃っており、且つ、三原色の染色時の再現性がよく染色特性が揃っている。これらの分散染料組成物及び混合分散染料組成物は、特に、高温多湿で耐光性能が要求される自動車内に使用する疎水性繊維の染色に適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の黄色系分散染料組成物は、前記式(1)で表される分散染料、前記式(2)で表される分散染料、並びに、前記式(3)で表される分散染料、前記式(4)で表される分散染料及び前記式(5)で表される分散染料からなる群から選ばれる1〜3の分散染料とからなる染料を含有する。
【0015】
式(1)で表される分散染料は、C.I.Disperse Yellow 71であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。ベンゾイミダゾール構造のフェニル基に置換しているメトキシ基の置換位置は、特に限定されない。
式(2)で表される分散染料は、C.I.Disperse Yellow 64であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
式(3)で表される分散染料は、C.I.Solvent Yellow 163であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
式(4)で表される分散染料は、C.I.Disperse Yellow 65であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
式(5)で表される分散染料は、C.I.Disperse Yellow 42であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
【0016】
該黄色系分散染料組成物は、この組成物の全重量に対して、好ましくは、式(1)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、式(2)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%、並びに、式(3)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び/又は式(4)で表される分散染料を5.0〜30.0重量%、及び/又は式(5)で表される分散染料を1.0〜20.0重量%の割合で含有する。
【0017】
該黄色系分散染料組成物と、前記式(6)及び/又は前記式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物もまた、好ましく使用される。
式(6)で表される分散染料は、C.I.Disperse Red 91であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
式(7)で表される分散染料は、C.I.Disperse Red 86であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
該赤色系分散染料組成物は、この組成物の全重量に対して、好ましくは、式(6)で表される分散染料を5.0〜40.0重量%、及び式(7)で表される分散染料を10.0〜60.0重量%の割合で含有する。
【0018】
該黄色系分散染料組成物と、前記式(8)及び/又は前記式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物もまた、好ましく使用される。
式(8)で表される分散染料は、C.I.Disperse Blue 77であり、公知文献に基づいて製造することができる。または、市販の染料を使用することもできる。
式(9)で表される分散染料は、フェニル基の置換基がメトキシ基とエトキシ基の等モル程度の混合物である。この分散染料は、特開平4−164968号公報等の公知文献に記載の染料であり、市販されている染料を使用してもよい。
該青色系分散染料組成物は、この組成物の全重量に対して、好ましくは、式(8)で表される分散染料を10.0〜40.0重量%、及び式(9)で表される分散染料を1.0〜15.0重量%の割合で含有する。
【0019】
また、前記式(6)及び/又は前記式(7)で表される分散染料を含有する赤色系分散染料組成物と、前記式(8)及び/又は前記式(9)で表される分散染料を含有する青色系分散染料組成物とからなる混合分散染料組成物もまた、好ましく使用される。この際、赤色系分散染料組成物と青色系分散染料組成物それぞれの好ましい組成も、前記と同様である。一態様として、この混合分散染料組成物は、前記黄色系分散染料組成物と混合せずに使用することもできる。
【0020】
更に、前記の黄色系分散染料組成物、前記の赤色系分散染料組成物、及び前記の青色系分散染料組成物の混合分散染料組成物もまた、好ましく使用される。この場合の各分散染料組成物の好ましい組成も、前記と同様である。
【0021】
本発明の分散染料組成物は、前記の分散染料の各原末を適当な配合比率で混合した後に後記の微粒子化(分散化)処理を施して使用してもよいし、又は、前記の分散染料の各原末を別個に微粒子化(分散化)処理を施した後に適当な割合で混合して使用してもよい。後者にあっては、染浴に微粒子化(分散化)処理が施された各分散染料を適当な量で添加し、本発明の分散染料組成物を染浴中にて形成させて使用してもよい。また、微粒子化された分散染料組成物に、必要に応じて分散剤を後から加えてもよい。
【0022】
本発明の分散染料組成物の染料以外の成分としては、後記の分散剤や水等が挙げられる。これらの成分の添加の時点は、特に限定されない。
【0023】
本発明における黄色系分散染料組成物、赤色系分散染料組成物、青色系分散染料組成物及びそれらの混合分散染料組成物には色調を調整するため、若しくは、耐光堅牢度、染色特性等を調整するために他の分散染料を混合して使用することが出来る。
また、染色時に他の分散染料を加えて使用することも出来る。同様に分散染料以外の染料を混合して使用することが出来る。また、染色時に他の染料や染色薬剤を加えて使用することも出来る。
【0024】
微粒子化(分散化)処理は、ナフタレンスルホン酸とアルキルベンゼンスルホン酸のホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールと2−ナフトール−6−スルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸等のアニオン分散剤;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、ポリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン分散剤、又は、これらのアニオン分散剤と非イオン分散剤との混合物、及び、少量の水の存在下に、分散染料の原末を、ボールミルあるいはサンドミル等の粉砕機を用いて通常0.2〜2μ程度になるまで十分に湿式粉砕することにより行なわれる。本発明の分散染料組成物は、微粒子化されたままの液状乃至ペースト状で、あるいは、スプレ−乾燥法等により乾燥して染色に供される。
【0025】
次に、本発明の分散染料組成物を用いる染色方法について説明する。該染色方法により染色し得る疎水性繊維としては、ポリエステル(PET)繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維及びこれら同士の混紡品が挙げられる。これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品であってもよい。また、上記疎水性繊維の太さとしては、平均の太さが0.1〜10d(デニ−ル)程度が好ましい。
【0026】
該繊維を浸漬した水性媒体中で、加圧下105℃以上、好ましくは110℃〜140℃で30分〜1時間染色を行うのが好ましい。また、o−フェニルフェノールやトリクロロベンゼン等のキャリヤーの存在下に比較的高温、例えば、水の沸騰状態で染色することも出来る。あるいは本発明の分散染料組成物の染料分散液を布にパディングし、150〜230℃、30秒〜1分間の乾熱処理を施す所謂サーモゾル方式での染色も可能である。
一方、本発明の分散染料組成物を用いて、天然糊剤(例えば、ローカストビーンガム、グアーガム等)、加工糊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、加工ローカストビーンガム等)又は合成糊剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸等)等とともに捺染糊を調製し、布に印捺した後にスチーミング又はサーモゾル処理を施す捺染法による染色を行なってもよい。又、本発明の分散染料組成物にグリセリンあるいはジエチレングリコール等の不乾性剤を添加して得たインクを調製し、パディング等によって予め糊剤等が付与された布にインクジェット方式のプリンターを用いてプリントした後に、スチーミング又はサーモゾル処理するインクジェット捺染法による染色を行ってもよい。
【0027】
本発明の分散染料組成物を用いて染色する際の該染料原末としての使用量は任意であるが、好ましい態様において、例えば、3デニ−ルの繊維の場合は0.05〜20%o.w.f.(on weight of fiber:対繊維重量)、好ましくは0.2〜10%o.w.f.である。
【実施例】
【0028】
以下の実施例により、本発明を詳細に説明する。実施例において、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
実施例中の分散剤は、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のナトリウム塩を使用した。
【0029】
[実施例1]分散染料組成物の製造
式(1)の原末5.0%、式(2)の原末1.6%、式(3)の原末26.0%に分散剤67.4%を加え微粒子化処理を行い、黄色分散染料組成物を得た。
式(6)の原末7.5%、式(7)の原末27.5%に分散剤65.0%を加え微粒子化処理を行い、赤色分散染料組成物を得た。
式(8)の原末22.5%、式(9)の原末2.1%に分散剤75.4%を加え微粒子化処理を行い、青色分散染料組成物を得た。
【0030】
[実施例2]分散染料組成物の製造
式(1)の原末6.0%、式(2)の原末1.6%、式(4)の原末12.0%、式(5)の原末4.9%に分散剤75.5%を加え微粒子化処理を行い、黄色分散染料組成物を得た。
式(6)の原末7.5%、式(7)の原末27.5%に分散剤65.0%を加え微粒子化処理を行い、赤色分散染料組成物を得た。
式(8)の原末22.5%、式(9)の原末2.1%に分散剤75.4%を加え微粒子化処理を行い、青色分散染料組成物を得た。
【0031】
[実施例3]
実施例1の黄色分散染料組成物0.570%o.w.f.、赤色分散染料組成物0.370%o.w.f.及び青色分散染料組成物0.400%o.w.f.を純水中で酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、紫外線吸収剤(サンライフ LPX−50;日華化学(株)製)2.0%o.w.f.を加えて2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で30分間染色後、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(アニオン性界面活性剤;日華化学(株)製)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施し、水洗後に乾燥してベージュ色の染色物を得た。得られた染色物について後記の耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い各条件での色目を観察し比較した。
【0032】
[実施例4]
実施例2の黄色分散染料組成物0.588%o.w.f.、赤色分散染料組成物0.400%o.w.f.及び青色分散染料組成物0.400%o.w.f.にて、実施例3と同様に染色と後処理を行い、ベージュ色の染色物を得た。得られた染色物について実施例3と同様に耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い、各条件での色目を観察し比較した。
【0033】
[比較例1]
市販のクラリアントジャパン社の分散染料Foron Yellow AS−3L 0.476%o.w.f.、Foron Red AS−3L 0.345%o.w.f.及びForon Blue AS−3L 0.446%o.w.f.にて、実施例3と同様に染色と後処理を行い、ベージュ色の染色物を得た。得られた染色物について実施例3と同様に耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い、各条件での色目を観察し比較した。
【0034】
[実施例5]
実施例1の黄色分散染料組成物0.370%o.w.f.、赤色分散染料組成物0.340%o.w.f.及び青色分散染料組成物0.620%o.w.f.にて、実施例3と同様に染色と後処理を行い、グレー色の染色物を得た。得られた染色物について実施例3と同様に耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い、各条件での色目を観察し比較した。
【0035】
[実施例6]
実施例2の黄色分散染料組成物0.360%o.w.f.、赤色分散染料組成物0.370%o.w.f.及び青色分散染料組成物0.620%o.w.f.にて、実施例3と同様に染色と後処理を行い、グレー色の染色物を得た。得られた染色物を実施例3と同様に耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い、各条件での色目を観察し比較した。
【0036】
[比較例2]
市販のクラリアントジャパン社の分散染料Foron Yellow AS−3L 0.279%o.w.f.、Foron Red AS−3L 0.279%o.w.f.及びForon Blue AS−3L 0.615%o.w.f.にて、実施例3と同様に染色と後処理を行い、グレー色の染色物を得た。得られた染色物について実施例3と同様に耐光堅牢度試験を行い、表裏差を観察した。また、後記の染足試験を行い、各条件での色目を観察し比較した。
【0037】
[試験法]
・耐光堅牢度試験
染色物にフェードメーター(ブラックパネル温度89℃±3℃、84メガジュール)キセノンランプを用いて光照射し、照射部分の変褪色をJIS L−0804の変褪色用グレースケールにて判定した。その結果を表1に示す。
【0038】
・表裏差
染色されたポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)の表側と裏側との色相差を、視感で判定した。その結果を表1に示す。
【0039】
表1
【0040】
・染足試験
135℃での30分間の染色処理に代えて、60℃から1分間毎に1℃の割合で昇温し、100℃、110℃、120℃、130℃及び135℃の各温度の時点で、並びに、135℃に達した後に同温度にて30分処理後の時点で、それぞれ布を取り出す点を除いて、実施例3と同様に染色を実施し、各染色物を得た。各温度で得られた染色物の色目をみることで黄色、赤色、青色分散染料の各温度での染色性の違いが判る。黄色、赤色、青色分散染料の各温度での染色性が揃っているほど、均一に染色する場合に温度コントロールが安易となる。
【0041】
表2
【0042】
以上の結果から明らかなように、本発明の分散染料組成物による染色物は、耐光堅牢度が強く表裏の繊維の太さの違いに拘らず色がほぼ揃っており、また、染色条件に拘らずほぼ三原色の染め足が揃っている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の黄色系分散染料組成物、赤色系分散染料組成物及び青色系分散染料組成物は、各々強い耐光堅牢度を有し、加えて、それらの所定の組み合わせを含む混合分散染料組成物として用いる際に、各色において、耐光堅牢度が揃っており、且つ、三原色の染色時の再現性がよく染色特性が揃っている。従って、これらの分散染料組成物及び混合分散染料組成物は、特に、高温多湿となる自動車内に使用する疎水性繊維の染色に適している。