特許第5955239号(P5955239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955239
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 15/00 20060101AFI20160707BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
   B23B15/00 N
   !B23Q7/04 L
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-26624(P2013-26624)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-155968(P2014-155968A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】浅井 隆平
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−206303(JP,A)
【文献】 特開昭59−102501(JP,A)
【文献】 特開平10−080837(JP,A)
【文献】 特開平10−193237(JP,A)
【文献】 特開2001−009666(JP,A)
【文献】 特開2004−330336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 15/00
B23Q 7/00−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主軸を備える加工手段と、被加工物を反転させる被工作物反転装置と、被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、を備える工作機械であって、
前記被工作物反転装置は、所定方向に並んで配置された第1反転チャック及び第2反転チャックを備え、
前記被加工物搬送装置は、前記所定方向に並んで配置された第1ローダチャック及び第2ローダチャックを備え、
前記所定方向における前記第1反転チャックと前記第2反転チャックの間隔は、前記所定方向における前記第1ローダチャックと前記第2ローダチャックの間隔と実質同一であり、
前記被加工物搬送装置が所定位置に維持された状態において、前記第1ローダチャックから前記第1反転チャックへの被加工物の受け渡しと、前記第2ローダチャックによる前記第2反転チャックからの被加工物の受け取りとが行われることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記被加工物搬送装置は、横方向及び前後方向へ移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1ローダチャックから前記第1反転チャックへの被加工物の受け渡しと、前記第2ローダチャックによる前記第2反転チャックからの被加工物の受け取りとが、同時に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記2つの主軸は横方向に並んで配置され、前記第1及び第2ローダチャックは上下方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記2つの主軸は横方向に並んで配置され、前記第1及び第2反転チャックも横方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の工作機械。
【請求項6】
2つの主軸を備える加工手段と、被加工物を反転させる被工作物反転装置と、被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、を備える工作機械であって、
前記被工作物反転装置は、所定方向に並んで配置された第1反転チャック及び第2反転チャックを備え、
前記被加工物搬送装置は、前記所定方向に並んで配置された第1ローダチャック及び第2ローダチャックを備え、
前記所定方向における前記第1反転チャックと前記第2反転チャックの間隔は、前記所定方向における前記第1ローダチャックと前記第2ローダチャックの間隔と実質同一であり、
前記第1ローダチャックは、前記第2ローダチャックに対して相対的に旋回可能に構成され、前記第1ローダチャックの旋回中心線は、前記所定方向に対して垂直且つ前記第1ローダチャックのチャック面に対して平行であることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面及び裏面を順次加工する工作機械と、これに用いられる被加工物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被加工物の表面及び裏面を順次加工する工作機械として、2つの主軸を備えた旋盤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の工作機械の一例を図8に示す。図8に示す工作機械201は、横方向に並べて配置された2つの主軸223a、223bと、横方向に並べて配置された2つの反転チャック241a,241bを有する被工作物反転装置204と、被加工物を搬送するための搬送装置232と、を備え、被加工物は一方の主軸チャック225aに把持された状態で表面に加工が施された後に、被工作物反転装置204により表裏反転され、他方の主軸チャック225bに把持された状態で裏面に加工が施され、このようにして被加工物の両面が順次加工される。搬送装置232のローダヘッド236は、縦方向に並べて配置された2つのローダチャック236a,236bを有し、ローダチャック236a,236bが後ろを向いた状態(図8に示す状態)から下を向いた状態へ旋回可能にされている。
【0003】
また、特許文献2には異なる構成を有する被加工物搬送装置が開示されており、この被加工物搬送装置においては、2つのローダチャックが旋回台の側面と底面とに設けられ、旋回台を傾斜中心周りに旋回させることにより、互いの位置を入れ替え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2001−9666号公報
【特許文献2】特開第2012―110997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、被加工物搬送装置が有するローダの走行速度や加速度を上げることで、被加工物搬送装置の搬送サイクルの短縮化が図られてきた。しかしながら、ローダの走行速度や加速度の向上による搬送サイクルの短縮化には限界があった。
【0006】
また、図8に示す従来の構成においては、ローダヘッド236を下向きに旋回させると(図示せず)、2つのローダチャック236a,236bが水平方向に並ぶため、ローダヘッド236が嵩張り、その分だけ周辺装置(例えば両面加工後の被加工物を洗浄する洗浄装置等)が大型化してしまうという問題があった。一方、特許文献2に記載の被加工物搬送装置においては、ローダヘッドが嵩張ることによる周辺装置の大型化という問題は生じないが、主軸チャック等に対する被加工物の受け渡しに際して旋回台の旋回が行われることから、図8に示すような被加工物搬送装置を用いた場合と比較して、被加工物の受け渡しに時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、被加工物搬送装置を所定位置に維持した状態で、一方のローダチャックが一方の反転チャックへ被加工物を受け渡す動作と、他方のローダチャックが他方の反転チャックから被加工物を受け取る動作の双方を行うことにより、被加工物搬送装置の動作回数を減らして、搬送サイクルを短縮した工作機械を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、一方のローダチャックが他方のローダチャックに対して旋回可能に構成された被加工物搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の工作機械は、2つの主軸を備える加工手段と、被加工物を反転させる被工作物反転装置と、被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、を備える工作機械であって、前記被工作物反転装置は、所定方向に並んで配置された第1反転チャック及び第2反転チャックを備え、前記被加工物搬送装置は、前記所定方向に並んで配置された第1ローダチャック及び第2ローダチャックを備え、前記所定方向における前記第1反転チャックと前記第2反転チャックの間隔は、前記所定方向における前記第1ローダチャックと前記第2ローダチャックの間隔と実質同一であり、前記第1ローダチャックは被加工物を前記第1反転チャックへ受け渡し、前記第2ローダチャックは前記第2反転チャックから被加工物を受け取るように構成され、前記被加工物搬送装置が所定位置に維持された状態において、前記第1ローダチャックから前記第1反転チャックへの被加工物の受け渡しと、前記第2ローダチャックによる前記第2反転チャックからの被加工物の受け取りとが行われることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載の工作機械は前記被加工物搬送装置は、横方向及び上下方向へ移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載の工作機械は、前記第1ローダチャックから前記第1反転チャックへの被加工物の受け渡しと、前記第2ローダチャックによる前記第2反転チャックからの被加工物の受け取りとが、同時に行われることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載の工作機械は、前記2つの主軸は横方向に並んで配置され、前記第1及び第2ローダチャックは上下方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に記載の工作機械は、前記2つの主軸は横方向に並んで配置され、前記第1及び第2反転チャックも横方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に記載の工作機械は、2つの主軸を備える加工手段と、被加工物を反転させる被工作物反転装置と、被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、を備える工作機械であって、前記被工作物反転装置は、所定方向に並んで配置された第1反転チャック及び第2反転チャックを備え、前記被加工物搬送装置は、前記所定方向に並んで配置された第1ローダチャック及び第2ローダチャックを備え、前記所定方向における前記第1反転チャックと前記第2反転チャックの間隔は、前記所定方向における前記第1ローダチャックと前記第2ローダチャックの間隔と実質同一であり、前記第1ローダチャックは、前記第2ローダチャックに対して相対的に旋回可能に構成され、前記第1ローダチャックの旋回中心線は、前記所定方向に対して垂直且つ前記第1ローダチャックのチャック面に対して平行であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の工作機械によれば、第1及び第2反転チャックの並び方向と、第1及び第2ローダチャックの並び方向とが同一であって、第1及び第2反転チャック間の間隔と第1及び第2ローダチャック間の間隔とが実質同一であるため、第1反転チャックを第1ローダチャックに対向させるのと同時に、第2反転チャックを第2ローダチャックに対向させることができる。よって、被加工物搬送装置を所定位置に維持した状態において、第1ローダチャックから第1反転チャック間への被加工物の受け渡しと、第2ローダチャックによる第2反転チャックからの被加工物の受け取りとを同時に行うことができ、従来のように、第1ローダチャックから第1反転チャックへの被加工物の受け渡しが行われてから、第2ローダチャックによる第2反転チャックからの被加工物の受け取りを行うまでの間に被加工物搬送装置を移動させる必要がなく、これにより被加工物搬送サイクルを短縮することができる。
【0019】
また、被加工物搬送装置が所定位置に維持された状態において、第1ローダチャックから第1反転チャックへの被加工物受け渡しと、第2ローダチャックによる第2反転チャックからの被加工物受け取りとが行われるので、被加工物搬送装置の無駄な移動を排除することができ、これにより被加工物搬送サイクルを短縮することができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械によれば、第1ローダチャックから第1反転チャックへの被加工物受け渡しと、第2ローダチャックによる第2反転チャックからの被加工物受け取りとが同時に行われるので、これらの動作を異なるタイミングで行われていた従来の構成と比較して、被加工物搬送サイクルを短縮することができる。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械によれば、2つの主軸が横方向に並べて配置されるのに対し、第1及び第2ローダチャックは上下方向に並べて配置されるので、これら第1及び第2ローダチャックを備えるローダヘッドの横幅を小さくすることができ、第1及び第2ローダチャックと工作機械が備える各種部品との干渉を比較的容易に回避することができる。
【0022】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械によれば、第1及び第2反転チャックが横方向に並んで配置されるので、被工作物反転装置の高さ寸法を抑えることができ、第1及び第2反転チャックが上下方向に並んで配置された構成と比較して、工作機械全体を小型化することができる。
【0023】
また、本発明の請求項6に記載の工作機械によれば、第1ローダチャックは第2ローダチャックに対して相対的に旋回可能であって、第1ローダチャックの旋回中心線は所定方向に対して垂直且つ第1ローダチャックのチャック面に対して平行であるので、第1ローダチャックを第2ローダチャックに対して相対的に旋回させることにより、第1及び第2ローダチャックを備えるローダヘッドを小型化することができ、比較的狭い空間における被加工物の受け渡し動作を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械の主要部を示す斜視図。
図2図1の工作機械が備えるローダヘッドの簡略図であって、(a)は基本状態、(b)は旋回状態、(c)は折畳状態を示す。
図3図2に示すローダヘッドの斜視図。
図4図1に示す工作機械において実行される被加工物搬送サイクルを示すフローチャート。
図5図4に示す被加工物搬送サイクルにおけるローダヘッドの移動を説明するための簡略図。
図6図2に示すローダヘッドが折り畳まれて周辺装置に挿入される様子を示す斜視図。
図7図1に示す工作機械の変形例を示す斜視図。
図8】従来の工作機械の主要部を示す斜視図。
図9図8に示す従来の工作機械において実行される被加工物搬送サイクルを示すフローチャート。
図10図9に示す従来の被加工物搬送サイクルにおけるローダヘッドの移動を説明するための簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械の一実施形態について説明する。図1を参照して、工作機械の一例としての図示のNC旋盤1は、被加工物(図示せず)に所要の加工を施す加工手段としての加工装置2と、被加工物を所要の通りに搬送する被加工物搬送装置3と、被加工物を表裏反転させるための被加工物反転装置4と、を備える。
【0029】
加工装置2は、工場の床面等に設置されるベッド本体21と、ベッド本体21の横方向(X軸方向)中央に平行に搭載された2つの主軸台22a,22bと、これら2つの主軸台22a,22bの各々に回転自在に支持された2つの主軸23a,23bと、これら2つの主軸23a,23bの各々に対応する2つのタレット型刃物台(以下、単に「タレット」と称する)24a,24bと、を備える。
【0030】
2つの主軸23a,23bはそれぞれ前後方向(Z軸方向)に延びると共に、横方向に並んで配置され、主軸モータ(図示せず)で回転駆動される。また、2つの主軸23a,23bの各々には被加工物を把持するための主軸チャック25a,25bが装着されている。各々の主軸チャック25a,25bは回転シリンダ(図示せず)により駆動され、被加工物の把持及びその解除を行うようにされている。2つの主軸台22a,22bの左右両側には、送り台26a,26bが前後方向及び横方向に移動自在にベッド本体21上に配置されており、これら送り台26a,26bの各々に2つのタレット24a,24bが割出回転可能に搭載されている。この加工装置2においては、一方の主軸チャック(左主軸チャック)25aに把持された被加工物には、これに対応するタレット24aに装着された加工工具(図示せず)により所要の加工が施され、他方の主軸チャック(右主軸チャック)25bに把持された被加工物には、これに対応するタレット24bに装着された加工工具(図示せず)により所要の加工が施される。
【0031】
被加工物搬送装置3は、加工装置2の上方に横方向に架設された架設レール31と、架設レール31に沿って移動自在に支持されたローダ32とを備え、ローダ32は、架設レール31に沿って移動する走行台33と、走行台33に前後方向へ移動可能に設置された移動台34と、移動台34に昇降可能に設置された昇降ロッド35と、昇降ロッド35の下端に設けられたローダヘッド36から構成されている。ローダヘッド36には、被加工物を把持するための2つのローダチャック36a,36bが縦方向(上下方向:Y軸方向)に並べて設けられており、これら2つのローダチャック36a,36bは被加工物の把持及びその解除を行うように構成されている。
【0032】
図2を参照して、2つのローダチャック36a,36bは支持部材37により各々が独立して旋回可能に支持されている。これにより、本実施形態におけるローダヘッド36は、図1及び図2(a)に示す様にローダチャック36a,36b(より厳密にはローダチャック36a,36bのチャック面36A,36B)が共に後ろを向いた状態から、図2(b)に示す様にローダチャック36a,36bが共に旋回して下を向いた旋回状態と、図2(c)に示す様に一方のローダチャック36aのみが旋回してローダチャック36aが下を向き、他方のローダチャック36bが後ろを向いた状態とへ、選択的に状態を変化させることができる。
【0033】
より具体的に、図3を参照して、上記支持部材37は、左右一対の支持部材37a,37bを有する。一方のローダチャック(第1ローダチャック)36aは、連結部材38aを介してシリンダ39aの出力軸40aに接続されており、連結部材38aは回転軸41aを介して支持部材37a及び他方のローダチャック(第2ローダチャック36b)に対して相対的に旋回可能に構成されている。かかる構成において、図2(a)に示す状態からシリンダ39aの出力軸40aが上方へ退避すると、連結部材38aが第1ローダチャック36aと共に回転軸41aを中心に図3における時計回りに旋回し、これにより第1ローダチャック36aが下を向き、図2(c)に示す状態となる。この状態でシリンダ39aの出力軸40aが下方へ進出すると、連結部材38aは逆方向に旋回し、第1ローダチャック36aが後ろを向き、図2(a)の状態へ戻る。ここで、回転軸41aは横方向に延びており、これはローダチャック36a,36bの並び方向である縦方向に対して垂直且つローダチャック36aのチャック面36Aと水平な方向である。
【0034】
同様に、第2ローダチャック36bは、連結部材38bを介してシリンダ39bの出力軸40bに接続されており、連結部材38bは横方向に延びる回転軸41bを介して支持部材37b及び第2ローダチャック36bに対して相対的に旋回可能に構成されている。図2(c)に示す状態において、シリンダ39bの出力軸40bが上方へ退避すると、連結部材38bが第2ローダチャック36bと共に回転軸41bを中心に図3における時計回りに旋回し、これにより第2ローダチャック36bが下を向き、図2(b)に示す状態となる。この状態でシリンダ39bの出力軸40bが下方へ進出すると、連結部材38bが逆方向へ旋回し、これにより第2ローダチャック36bが後ろを向き、図2(c)の状態へ戻る。なお、連結部材38a、 シリンダ39a、回転軸41aが第1旋回手段を構成し、連結部材38b、シリンダ39b、回転軸41bが第2旋回手段を構成する。
【0035】
ここで、第1ローダチャック36aの旋回中心線(回転軸41aの軸線)と第2ローダチャック36bの旋回中心線(回転軸41bの軸線)とは一致しており、これにより図2(a)に示す状態と図2(b)に示す状態とにおいて、2つのローダチャック36a,36bの相対位置は一定とされている。
【0036】
図1を参照して、被加工物反転装置4は、架設レール31の下面に設置された本体部(図示せず)と、本体部に支持された2つの反転チャック41a,41bを備え、これら2つの反転チャック41a,41bは、横方向における2つの主軸23a,23bの中間位置上方に縦に並べて配置され、被加工物の把持及びその解除を行うように構成されている。反転チャック41a,41bは、正面を向いた状態と互いに対面する状態との間で姿勢変換可能とされると共に、反転チャック41bが縦方向に移動可能とされている。この被加工物反転装置4においては、被加工物の反転は次の様にして行われる。即ち、2つの反転チャック41a,41bは互いに離隔して正面を向いた状態で待機し(待機状態)、この待機状態にて一方の反転チャック(第1反転チャック)41aがローダ32から被加工物を受け取る。次に、反転チャック41a,41bは対面姿勢へ切り替わり、他方の反転チャック(第2反転チャック)41bが第1反転チャック41aへ向かって下降し、第1反転チャック41aから被加工物を受け取る。第2反転チャック41bが元の位置まで上昇すると、反転チャック41a,41bが共に正面を向いた待機状態へ戻る。このように、被加工物を第1反転チャック41aから第2反転チャック41bへ受け渡すことにより、被加工物の表裏反転が行われる。
【0037】
このように構成された工作機械1においては、次のようにして被加工物の両面に加工が施される。即ち、未加工の被加工物(未加工被加工物)が第2ローダチャック36bに把持されて左主軸チャック25aへ供給され、その片面(表面)がタレット24aに装着された加工工具により加工される。このように表面のみが加工された被加工物(片面加工済被加工物)は、第1ローダチャック36aに把持されて被加工物反転装置4の第1反転チャック41aへ搬送され、上述のようにして第1反転チャック41aから第2反転チャック41bへ受け渡されて表裏反転される。表裏反転された片面加工済被加工物は、第2ローダチャック36bに把持されて第2反転チャック41bから右主軸チャック25bへ搬送され、その他面(裏面)がタレット24bに装着された加工工具により加工される。このようにして両面が加工された被加工物(両面加工済被加工物)は、第1ローダチャック36aに把持されて右主軸チャック25bから機外へ搬送されて排出される。
【0038】
ここで、2つのローダチャック36a,36b間の距離と、待機状態における2つの反転チャック41a,41b間の距離とが等しく、また2つのローダチャック36a,36bの並び方向と、2つの反転チャック41a,41bの並び方向が共に縦方向とされているため、ローダヘッド36が被工作物反転装置4と対向する所定位置(後述する図5に示す反転装置対向位置P5)に位置づけられると、第1ローダチャック36aと第1反転チャック41aとが対向すると共に、第2ローダチャック36bと第2反転チャック41bとが対向する。よって、ローダヘッド36を反転装置対向位置P5に維持した状態で、第1ローダチャック36aから第1反転チャック41aへの被加工物の受け渡しと、第2反転チャック41bから第2ローダチャック36bへの被加工物の受け渡しとを同時に行うことができる。
【0039】
次に、上述した被加工物搬送装置3の被加工物搬送サイクルについて図4及び図5を参照して説明する。ここでは、発明の理解を容易にするため、2つの被加工物が2つの主軸チャック25a,25bによりそれぞれ把持されると共に、両面加工済被加工物が第1ローダチャック36aにより把持されている状態から説明を始める。
【0040】
この被加工物搬送サイクルでは、ローダヘッド36はまず原点P1へ戻る(ステップ1)。原点P1は、例えばベッド本体2の側方に配置された給排装置(図示せず)の上方に規定される。次に、ローダヘッド36は被加工物給排位置P2へ移動して、ここで第1ローダチャック36aが把持していた両面加工済被加工物を給排装置へ渡すと共に、給排装置から未加工被加工物を第2ローダチャック36bで受け取る(ステップS2)。その後、ローダヘッド36は原点P1を通過して(ステップS3)、左側の主軸23aの上方に規定された第1中間位置P3まで移動する(ステップS4)。次に、ローダヘッド36は左主軸チャック25aと対向する第1主軸対向位置P4まで移動し、ここで左主軸チャック25aとの間で被加工物の受け渡しを行う(ステップ5)。ここでは、第1ローダチャック36aが左主軸チャック25aから片面加工済被加工物を受け取り、第2ローダチャック36bが左主軸チャック25aへ未加工被加工物を渡す。詳細は後述する。
【0041】
次に、ローダヘッド36は第1中間位置P3へ上昇した後に(ステップS6)、反転装置対向位置P5まで後方(右斜め後方)へ移動して、第1ローダチャック36aから第1反転チャック41aへ片面加工済被加工物を渡すのと同時に、第2ローダチャック36bが第2反転チャック41bから表裏反転済の片面加工済み被加工物を受け取る(ステップS7)。本実施形態においては、上述したように、ローダヘッド36が反転装置対向位置P5に位置づけられた状態において、第1ローダチャック36aが第1反転チャック41aに対向し、第2ローダチャック36bが第2反転チャック41bに対向するため、第1ローダチャック36aと第1反転チャック41a間における被加工物の受け渡しと、第2ローダチャック36bと第2反転チャック41b間における被加工物の受け渡しとを同時に行うことができる。
【0042】
次に、ローダヘッド36は右側の主軸25bの上方に位置する第2中間位置P6まで前方(右斜め前方)へ移動し(ステップS8)、右主軸チャック25bと対向する第2主軸対向位置P7まで移動して、ここで右主軸チャック25bとの間で被加工物の受け渡しを行う(ステップ9)。即ち、第1ローダチャック36aが右主軸チャック25bから両面加工済被加工物を受け取り、第2ローダチャック36bから右主軸チャック25bへ片面加工済被加工物を渡す。その後、ローダヘッド36は第2中間位置P6まで上昇し(ステップS10)、これにより1回分の被加工物搬送サイクルが完了し、ステップS1へ戻って被加工物搬送サイクルを繰り返す。このように被加工物搬送サイクルを繰り返し実行することで、給排装置から供給された未加工被加工物の両面に対して順に加工が施され、両面加工済被加工物が給排装置へ排出される。
【0043】
ここで、本発明の効果を確認するため、図8に示す従来の工作機械201における被加工物搬送サイクルについて説明すると、次の通りである。図9及び図10を参照して、上述したステップS1〜ステップS6を実行した後、ローダヘッド236は第1反転チャック対向位置P5aまで後方に移動して第1ローダチャック236aから左反転チャック241aへ片面加工済被加工物を渡す(ステップS71)。このとき、第1ローダチャック236aと左反転チャック241aとは互いに対向しているが、第2ローダチャック236bと右反転チャック241bとは対向していないため、右反転チャック241bから第2ローダチャック236bへの片面加工済被加工物の受け渡しを行うことはできない。そこで、ローダヘッド236は一旦第1中間位置P3まで前進して(ステップS72)、第2ローダチャック236bが右反転チャック241bに対向する第2中間位置P6まで横移動した後に(ステップS73)、第2反転チャック対向位置P5bまで再び後方へ移動して第2ローダチャック236bが右反転チャック241bから反転済の片面加工済被加工物を受け取る(ステップS74)。その後、上述したステップS8〜ステップS10を実行して1回分の被加工物搬送サイクルが完了する。
【0044】
このように、従来の工作機械201においては、第1ローダチャック236aと左反転チャック241a間における被加工物受け渡し後に、ローダヘッド236を一旦移動させ、その後に第2ローダチャック236bと右反転チャック241b間における被加工物の受け渡しを行っていた。これに対し、本実施形態においては、ローダヘッド36を所定位置(反転装置対向位置P5)に維持した状態で第1ローダチャック36aから第1反転チャック41aへの被加工物の受け渡しと、第2ローダチャック36bによる第2反転チャック41bからの被加工物の受け取りとを行うことができるので、これらの被加工物引き渡し動作を同時に行うことができ、ローダヘッド36と被工作物反転装置4との間で行われる被加工物の受け渡しに要するローダ32の動作回数を減らすことができ、被加工物搬送サイクル全体のサイクル時間を短縮することができる。
【0045】
次に、上述したステップS5におけるローダヘッド36と左主軸チャック25aとの間で行われる被加工物の受け渡しについて説明すると、次の通りである。ステップS5では、ローダヘッド36はまず、第1ローダチャック36aが左主軸チャック25aに対向する位置まで移動し、その後所定距離だけ後方へ移動して、第1ローダチャック36aが左主軸チャック25aから片面加工済被加工物を受け取る。次に、ローダヘッド36が所定距離だけ前方へ移動した後に、第2ローダチャック36bが左主軸チャック25aに対向する位置まで下降する。ローダヘッド36は所定距離だけ後方へ移動して、第2ローダチャック36bが左主軸チャック25aへ未加工被加工物を引き渡した後に、再び所定距離だけ前方へ移動し、これによりローダヘッド36と左主軸チャック25aとの間で行われる被加工物の受け渡しが完了する。上述したステップS9においてローダヘッド36と右主軸チャック25bとの間で行われる被加工物の受け渡しも同様に行われる。
【0046】
このように、ローダヘッド36は直線移動のみによって2つのローダチャック36a,36bを順に主軸チャック25a(25b)に対向させるので、例えば特許文献2に開示のローダのように旋回台を旋回させることにより2つのローダチャックを主軸チャックに順に対向させる構成と比較して、被加工物の受け渡しに要する時間を短縮できる。
【0047】
また、ローダヘッド36と主軸チャック25a,25b又は反転チャック36a,36b間における被加工物の受け渡しの際は、ローダヘッド36は図2(a)に示す状態に維持され、例えば両面加工済み被加工物を周辺装置(例えば洗浄装置)まで搬送する場合には、ローダヘッド36を折畳状態とすることでローダヘッド36を小型化することができ、これにより周辺装置を小型化することができる。例えば、両面加工済被加工物を洗浄装置で洗浄する場合、図6に示すようにローダヘッド36を折畳状態とすることで、ローダヘッド36が挿入される洗浄槽50をコンパクトにできる。即ち、洗浄槽50は、図2(b)に示すような旋回状態のローダヘッド36を受け入れるだけの前後幅(Z軸方向長さ)を有する必要がなく、これにより洗浄装置51全体を小型化できる。
【0048】
このように、本実施形態においては、ローダヘッド36を折り畳み可能としたことから、周辺装置を小型化することができると共に、主軸チャック25a,25bへの被加工物受け渡しに要する時間を短縮することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係る工作機械について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、第1ローダチャック36aを独立して旋回させる旋回手段と、第2ローダチャック36bを独立して旋回させる旋回手段とを設けたが、本発明は係る構成に限定されず、例えば、2つのローダチャック36a,36bを同時に旋回させる旋回手段と、2つのローダチャック36a,36bの何れか一方を他方に対して相対的に旋回させる旋回手段とを設けてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、2つの反転チャック41a,41bの並び方向を縦方向としたが、図7に示すように横方向に並べて配置してもよく、この場合には図7に示すように、2つのローダチャック36a,36bの並び方向も横方向とすればよい。このように、2つの反転チャックの並び方向を横方向とすることにより、被工作物反転装置ひいては工作機械全体の高さを低く抑えることができ、工作機械全体を小型化できる。
【0052】
また、このように2つのローダチャック36a,36bの並び方向を横方向とした場合においても、2つのローダチャック36a,36bが後方を向く状態(図7に示す状態)と、2つのローダチャック36a,36bが共に下を向く状態と、一方のローダチャック36bが後方を向き、他方のローダチャック36aが下を向く状態とへ選択的に切り替え可能とするのが好ましく、これにより上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
更に、上記実施形態においては、刃物台としてタレット型刃物台24a,24bを用いたが、異なるタイプの刃物台を用いてもよく、例えば図7に示すように、櫛歯型の刃物台124a,124bを用いることもできる。このように櫛歯型の刃物台124a,124bを用いた場合には、各主軸23a,23bの前方空間が横方向に広がるため、図7に示すように反転チャック41a,41b及びローダチャック36a,36bをそれぞれ横並びに配置した場合であっても、ローダヘッド36が刃物台124a,124bと干渉するのを容易に回避できる。
【0054】
また、上記実施形態においては、横方向における被工作物反転装置4の配置位置を2つの主軸23a,23bの中間位置としたが、本発明は係る構成に限定されず、例えば主軸23a或いは主軸23bの真上としても良い。
【0055】
上記実施形態においては、前後方向に延びる2つの主軸23a,23bを横方向に並べて配置したが、かかる構成に代えて、2つの主軸チャック同士が互いに対面するように、横方向に延びる2つの主軸を横方向に並べて配置しても良い。また、上記実施形態においては、ローダ32は横方向、前後方向、及び上下方向の3方向に移動自在な所謂3軸ローダとして構成されたが、横方向及び上下方向の2方向に移動自在とされ、前後方向へは移動しない所謂2軸ローダとして構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 NC旋盤
2 加工装置
3 被加工物搬送装置
4 被加工物反転装置
25a,25b 主軸チャック
32 ローダ
36 ローダヘッド
36a,36b ローダチャック
37 支持部材
41a,41b 反転チャック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10